説明

検査装置、検査方法及びパターン基板の製造方法

【課題】 正確に検査を行うことができる検査装置、検査方法及びそれを用いたパターン基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかる検査装置は光源11と、光源11から入射した入射光を集光してペリクル22に入射させる対物レンズ16であって、入射光が対物レンズ16の半分の領域である第1の領域16aに入射するよう、入射光の光軸からずれて配置された対物レンズ16と、ペリクル22の表面で散乱して反射された散乱光であって、対物レンズ16の第1の領域16aを通過した散乱光を、共焦点光学系を介して検出する光検出器32と、ペリクル22の表面で反射され、対物レンズ16の第1の領域16aと異なる第2の領域16bに入射した反射光を検出して、ペリクルの表面に焦点を合わせる自動焦点合わせ機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査装置及び検査方法並びにそれを用いたパターン基板の製造方法に関し、特に詳しくはコンフォーカル光学系を用いた検査装置及び検査方法並びにそれを用いたパターン基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、パターンに欠陥があると、配線の絶縁不良や短絡などの不良原因となり、歩留まりが低下する。従って、半導体基板やその製造工程で使用するフォトマスクなどのパターン基板を検査する検査装置が利用されている。この検査装置には主に、明視野光学系を用いたものと、暗視野光学系を用いたものがある。暗視野光学系では被検査対象となる物体に対物レンズの外側から照明し、物体での散乱光を検出することにより検査が行っている。暗視野光学系では、バックグラウンドノイズが低減されるため、検出感度を向上することができるという利点がある。
【0003】
暗視野光学系を用いた従来の検査装置では、例えば、被検査物の表面に光ビームを斜めに入射している。そして、被検査物の表面と光ビームとを相対的に移動することによって、被検査物の表面上を光ビームで二次元的に走査する。被検査面からの反射光を複数の光電手段(フォトマルチプライヤー等)によって受光し、光電手段からの各光電信号に基づいて、欠陥の有無および大きさを検査していた。さらに詳細には、パターンからの反射光は指向性が強い回折光であるのに対し、異物からの反射光は指向性の弱い散乱光であることに着目し、すべての光電信号が所定の大きさ以上のときには異物が存在すると判定し、その異物の大きさを光電信号の大きさに基づいて求めていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−105203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体装置や液晶表示装置の製造において、異物付着防止のためフォトマスクにペリクルを装着することがある。そして、ペリクルが装着されたフォトマスクを用いて、回路パターンをフォトレジストに転写するフォトリソグラフィ工程がある。このフォトリソグラフィ工程において、ペリクル上にごみなどの異物が存在すると、異物も同時に基板上に転写されてしまい、製造時の歩留りが低下してしまう。このためペリクルの表面に付着した異物を検査する必要がある。このペリクルの表面に付着した異物を上述の検査装置で検査する場合の問題点について以下に説明する。
【0006】
ペリクル表面上に付着した異物を検査する場合、たとえば対物レンズの外側から光ビームをペリクル表面上に集光する。そして、ペリクル表面上に付着した異物からの散乱光の強度が所定の基準値より大きいとき異物有りとして判断される。このとき、外部からの振動などにより、光の焦点位置がペリクル表面位置とずれている場合、ペリクル表面上の光ビームの輝度(単位面積当たりの光量)が減ってしまう。従って、異物から得られる散乱光の光量が減って正常状態(ペリクル表面に集光している状態)において検出されるべきサイズの異物も検出することができなくなる。すなわち、検出感度が低下する。
【0007】
また、ペリクルが取り付けられているフォトマスクのパターンからの散乱光が検出され、散乱光の輝度が増加するおそれがある。この散乱光が検出されてしまうと、正常な箇所でも異物有りとしまう。よって、誤って異物を検出してしまうおそれがある。さらに、対物レンズの外側から光を照射するため、光学系の構成が複雑になってしまう。
【0008】
このように、従来の検査装置では、ペリクル上の異物の正確なサイズや位置を特定することが困難であり、正確に検査を行うことができないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で正確に検査を行うことができる検査装置及び検査方法並びにそれを用いたパターン基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様にかかる検査装置は、光源(例えば、本発明の実施の形態にかかる光源11)と、前記光源から入射した入射光を集光して試料に入射させる対物レンズであって、前記入射光が当該対物レンズの半分の領域である第1の領域(例えば、本発明の実施の形態にかかる第1の領域16a)に入射するよう、前記入射光の光軸からずれて配置された対物レンズ(例えば、本発明の実施の形態にかかる対物レンズ16)と、前記第1の領域から前記試料の照射された光のうち、前記試料の表面で反射され、前記第1の領域に入射した反射光を前記入射光と分岐する光分岐手段(例えば、本発明の実施の形態にかかるPBS14)と、共焦点光学系を介して、前記光分岐手段によって分岐された反射光を検出する光検出器(例えば、本発明の実施の形態にかかる光検出器32)と、と、前記試料の表面で反射され、前記対物レンズの前記第1の領域と異なる第2の領域(例えば、本発明の実施の形態にかかる第2の領域16b)に入射した反射光を検出して、前記試料の表面に焦点を合わせる自動焦点合わせ機構とを備えたものである。これにより、正確に検査を行うことができる。
【0011】
本発明の第2の態様にかかる検査装置は、上述の検査装置において、前記試料を載置するステージ(例えば、本発明の実施の形態にかかるステージ24)をさらに備え、前記ステージが移動可能に設けられているものである。これにより、試料の任意の位置を検査することができる。
【0012】
本発明の第3の態様にかかる検査装置は、上述の検査装置において、前記光源からの光をライン状の光に変換して前記対物レンズに出射する光変換手段(例えば、本発明の実施の形態にかかるシリンドリカルレンズ12)をさらに備え、前記光検出器が前記試料表面と共役な結像関係になるように配置されたラインセンサであり、前記ラインセンサが前記ライン状の光に対応して配置されているものである。これにより、正確な検査を高速に行うことができる。
【0013】
本発明の第4の態様にかかる検査装置は、上述の検査装置において、前記ライン状の光と垂直な方向に前記試料を走査させることを特徴とするものである。これにより、正確な検査を高速に行うことができる。
【0014】
本発明の第5の態様にかかる検査方法は、共焦点光学系を介して、試料表面で反射する反射光を検出して前記試料の検査を行う検査方法であって、光源からの光を前記光源からの光の光軸とずれて配置された対物レンズに入射させるステップであって、前記対物レンズの半分の領域である第1の領域に光を入射させるステップと、前記対物レンズの第1の領域に入射した光を前記試料に照射させるステップと、前記第1の領域から前記試料に照射された光のうち、前記試料の表面で前記第1の領域の方向に反射された反射光を、共焦点光学系を介して検出するステップとを備え、前記試料の表面で反射され、前記対物レンズの前記第1の領域と異なる第2の領域に入射した反射光を検出して、前記試料の表面が合焦点位置となるよう前記光源からの光を前記試料に照射するものである。これにより、正確に検査を行うことができる。
【0015】
本発明の第6の態様にかかる検査装置は、上述の検査方法において、前記試料を走査しながら前記反射光の検出を行うものである。これにより、試料全面を検査することができる。
【0016】
本発明の第7の態様にかかる検査装置は、上述の検査方法において、前記光源からの光をライン状の光に変換して、前記対物レンズに出射するステップとをさらに備え、前記反射光が前記ライン状の光に対応して配置されたラインセンサにより検出されるものである。これにより、正確な検査を高速に行うことができる。
【0017】
本発明の第8の態様にかかる検査装置は、上述の検査方法において、前記試料を前記ライン状の光と垂直な方向に走査しながら前記反射光の検出を行うことを特徴とするものである。これにより、正確な検査をより高速に行うことができる。
【0018】
本発明の第9の態様にかかる検査装置は、上述の検査方法において、上述の検査方法により、フォトマスクに装着されたペリクルを検査する検査ステップと、前記検査ステップによって検査されたペリクルの異物を除去する異物除去ステップと、前記異物除去ステップで異物を除去したペリクルが装着されたフォトマスクを介して基板を露光する露光ステップと、前記露光された基板を現像する現像ステップとを有するものである。これにより、パターン基板の生産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、正確に検査を行うことができる検査装置及び検査方法並びにそれを用いたパターン基板の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる検査装置について図1を使用して説明する。なお、これらの図および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。また、試料として、フォトマスクにフレームを介して装着されたペリクルを例に出して説明するが、本発明に合致する限り、他の形態も本発明の範疇に属しえることは言うまでもない。
【0021】
本発明に係る検査装置の構成について図1を用いて説明する。図1(b)は、本発明にかかる異物検査装置の構成を示す概略図である。図1(a)は、図1(b)を側面から見た図である。なお、試料であるペリクルに平行な方向をXY方向とし、垂直な方向をZ方向とする。本発明にかかる検査装置では、ペリクルの表面状態及びフォトマスクの裏面(パターンが形成された面と反対側の面)の状態を検査する光学系とともに、対物レンズを調整して焦点合わせを行う光学系が備えられている。そして、ペリクルの表面状態及びフォトマスクの裏面の状態を検査するための光学系はコンフォーカル光学系を構成している。
【0022】
11は光源、12はシリンドリカルレンズ、13はレンズ、14はPBS(偏光ビームスプリッタ)、15は1/4波長板、16は対物レンズ、21は対物レンズ駆動機構、22はペリクル、23はフォトマスク、24はステージ、25はステージ24のコントローラ、31はレンズ、32は受光素子、33は信号検出回路、41はミラー、42はレンズ、43は2分割フォトダイオード、44はAF(オートフォーカス)サーボ制御回路を示している。
【0023】
レーザ光源などの光源11から射出された光ビームは、ビームエキスパンダなどのビーム径拡大手段(不図示)により、所定のビーム径に調整される。なお、レーザ光源には2W程度の出力のものを用いている。そして、所定のビーム径の光はシリンドリカルレンズ12によってライン状の光の変換される。このライン状の光はレンズ13によって屈折され、PBS14及び1/4波長板15を透過し、対物レンズ16に入射する。ここで、ライン状の光が対物レンズ16の半分の領域に入射するよう、対物レンズ16が光軸に対してずれて配置されている。図1ではライン状の光が対物レンズ16の左半分を通過するように配置されている。
【0024】
対物レンズ16に入射した光ビームは屈折され、被検査対象であるペリクル22の方向に出射する。対物レンズ16から出射した光は、フォトマスク23にフレームを介して装着されているペリクル22に入射する。対物レンズ16が光軸に対してずれて配置されているため、ペリクル22に入射する光は片方向に傾斜して入射する。そして、ペリクル表面において、対物レンズ16の中心に対応する位置に集光される。ここでフォトマスク23は例えば、厚さ6.35mmの透明なガラス基板であり、その表面にはクロムからなる遮光膜がパターニングされている。また、ペリクル22は例えば、薄い透明なフッ素樹脂フィルムであり、フォトマスク23を覆うように設けられている。
【0025】
ペリクル22に入射する光ビームは、ペリクル22表面上で集光するように位置決めされている。ペリクル22はフォトマスク23を介してステージ24の上に載置されている。ステージ24はXYステージであり、ペリクルの任意の点を観察するため水平方向(XY方向)に移動することができる。コントローラ25等のステージ走査手段によりステージ24を水平方向に移動させ、ペリクル22の任意の点に光源11からの光を照射することができる。コントローラ25を用いてステージ24を移動させることで、フォトマスク23に装着されたペリクル22の任意の点を検査することができる。そして、ステージ24をペリクル全面にわたって走査することで、ペリクル22の全面を検査することができる。
【0026】
対物レンズ16はペリクル表面が合焦点位置となるよう配置されている。すなわち、ペリクル表面は対物レンズ16の焦点距離に対応した高さに配置される。さらに対物レンズ16は対物レンズ駆動機構21に取り付けられている。対物レンズ駆動機構21は例えば、対物レンズ16をZ方向に駆動させるピエゾアクチュエータを備えている。そして対物レンズ駆動機構21は対物レンズ16を光軸と平行な方向に移動させ、対物レンズ16とペリクル22との間の距離を調整する。
【0027】
対物レンズ駆動機構21はAFサーボ制御回路44と接続されている。AFサーボ制御回路44は後述する自動焦点合わせ機構(オートフォーカス機構)の2分割フォトダイオード43からの信号により、焦点がペリクル表面となるよう対物レンズ16の高さを調整する。すなわち、対物レンズ駆動機構21は、焦点がペリクル表面からずれると、焦点合わせのため対物レンズ16をZ方向に移動する。これにより、常時、ペリクル表面が合焦点位置となる。
【0028】
本発明にかかる検査装置では、いわゆる光てこ方式の自動焦点合わせ機構が用いられている。この自動焦点合わせ機構の光学系について説明する。対物レンズ16からペリクル22に入射した光は、対物レンズ16を介してミラー41の方向に反射される。ここで、ミラー41は対物レンズ16の右半分の領域を通過した光が入射されるよう配置されている。すなわち、光源11からの光は対物レンズ16の左半分の領域を通過するため、光源11から対物レンズ16に入射する入射光がミラー41の裏面に入射されないようにしている。従って、ペリクル22で反射され対物レンズ16の右半分の領域を透過した光がミラー41に入射されるようミラー41を配置する。これにより、ミラー41にはペリクル表面で正反射した光が入射する。
【0029】
ミラー31に反射された光はレンズ42によって屈折され2分割フォトダイオード43に入射する。ここで、ペリクル表面22で反射した光は2分割フォトダイオード43の受光面で結像する。2分割フォトダイオード43にはそれぞれ一定の受光領域を持つ2つのフォトダイオードが隣接して設けられている。ここで、ペリクル表面に焦点が合っているとき、2分割フォトダイオード43の中心に光が入射するよう2分割フォトダイオード43を配置している。すなわち、ペリクル表面に焦点が合っている光ビームが反射されて2分割フォトダイオード43に入射した場合、2分割フォトダイオードの2つのフォトダイオードの境界線をまたぐよう光が入射する。
【0030】
ここで、一方のフォトダイオードに入射した光に対応した出力信号をA、もう一方のフォトダイオードに入射した光に対応した出力信号をBとするとA=Bとなる。このように、ペリクル表面が合焦点となる位置で2つのフォトダイオードに入射する光の光量が等しくなるように配置する。ペリクル表面から焦点がずれると、2分割フォトダイオード43に入射する光は2分割フォトダイオード43の中心から位置がずれる。従って、2つのフォトダイオードに入射する光の光量に差が生じる。この場合、A>B又はB>Aとなる。
【0031】
2分割フォトダイオード43は、それぞれのフォトダイオードでの受光量にほぼ比例した光電信号をAFサーボ制御回路44に連続的に出力する。AFサーボ制御回路44ではこの2つの光電信号の差分すなわちA−Bを検出している。ペリクル表面に焦点が合っているとき、2分割フォトダイオード43の中心に光が入射するため、差分は0となる。一方、ペリクル表面から焦点がずれると、2分割フォトダイオード43に入射する光は中心からずれる。AFサーボ制御回路44はこの差分に基づいて、対物レンズ16をZ方向に移動させて焦点合わせを行っている。すなわち、差分が正の時と負の時で対物レンズ16の移動方向を反対にする。そして、常時、差分が0となるように対物レンズ16を調整する。このように、2分割フォトダイオード43から出力される信号に基づいて、AFサーボ制御回路44は対物レンズ16の位置を調整する。これにより、ペリクル表面から対物レンズ16までの高さが一定になるように調整され、自動焦点合わせを行うことができる。
【0032】
次にペリクル22の表面状態を検査するための光学系について説明する。ここでは、典型的な一例として、ペリクル表面に異物が付着しているか否かを判別する例を用いて説明する。具体的には、ペリクルの表面が正常な箇所では入射光が正反射されるものとする。さらに、ペリクルの表面に異物が付着している箇所では、入射光が散乱して反射されるものとする。本発明にかかる検査装置では暗視野光学系を用いている。従って、正常な箇所で正反射された光は光検出器によって検出されず、異物が付着している箇所で散乱して反射された光の一部が光検出器で検出される。
【0033】
本発明にかかる検査装置では、図1に示すように光源11から対物レンズ16に入射する入射光が対物レンズ16の左半分の領域を通過している。従って、正常な箇所で正反射された光は対物レンズ16の右半分の領域を通過する。この場合の反射光は、自動焦点合わせ機構の光学系の方向に反射される。一方、異物が付着した箇所で散乱された散乱光は、様々な方向に反射される。従って、対物レンズ16の全体の領域に入射するようペリクル表面で散乱して反射される。対物レンズ16の全体の領域に入射した散乱光のうち、対物レンズ16の右半分に入射した光はミラー41により2分割フォトダイオード43の方向に反射される。この散乱光に基づいて上述と同様に自動焦点合わせが行われる。
【0034】
一方、対物レンズ16の全体の領域に入射した散乱光のうち、対物レンズ16の左半分に入射した光は1/4波長板15を透過して、PBS14に入射する。PBS14に入射された光は、レンズ31を介して光検出器32に入射される。なお、PBS14及び1/4波長板15を用いることにより、光源11からの光を効率よく光検出器32に入射させることができる。すなわち、光源11からPBS14を透過したP偏光の光はペリクル表面で散乱して反射され、再度PBS14に入射する。この間、P偏光の光は往復で1/4波長板15を2回透過しているため、S偏光の光に偏光される。よって、PBS14で光検出器32に方向に効率よく反射される。そして、PBS14により、ペリクル22の表面で散乱した散乱光を取り出し、光検出器32に導く。PBS14によって入射光から分岐された散乱光はレンズ31によって屈折され光検出器32に入射する。この散乱光はレンズ31によって、光検出器の受光面に結像される。光検出器32は1次元リニアCCD等のラインセンサであり、複数の受光素子が1列に配列されている。この光検出器32が設けられている方向は、シリンドリカルレンズ12により変換されたライン状の光の方向に対応している。すなわち、光検出器32の受光面におけるライン状の光とラインセンサとが同じ方向になるように設けられている。
【0035】
ここで、光検出器32はそれぞれの受光素子が受光した光量に基づく光電信号を信号検出回路33に出力する。信号検出回路33は光検出器32からの光電信号に基づいて異物が付着しているか否かを判別する。例えば、光検出器32に入射した光の光量に基づく光源信号がしきい値より大きい場合、異物があると判別する。すなわち、暗視野光学系であるため異物箇所では光は散乱して反射され、光検出器32に入射する光量が増加する。一方、正常な箇所では、正反射するため、光検出器32に光が入射しない。従って、信号検出回路33は光検出器32に入射した光に基づく光電信号がしきい値より高い場合、異物箇所であると判別し、しきい値より低い場合、正常箇所であると判別する。
【0036】
信号検出回路33は異物箇所であるか否かを判別した結果に基づく検査信号をコントローラ25に出力する。すなわち、異物箇所である場合と、正常な箇所である場合とで異なる信号をコントローラ25に出力する。コントローラ25はフォトマスク23及びペリクル22を載置するステージ24に接続されており、ステージ24の位置情報(座標)を記憶している。そして、ステージ24の位置情報と検査信号とに基づいて、ペリクル上に異物が付着している箇所の位置を特定する。このようにして、異物箇所が検出され、ペリクルの表面状態の検査が行われる。
【0037】
コントローラ25はペリクル22の全面を検査するため、ステージ24を走査する。例えば、X方向に一定速度でステージ24を移動する。なお、ここではX方向をライン状の光と垂直な方向とする。そして、ペリクル22の端から端まで移動が終了したらステージをY方向すなわちライン状の光と平行な方向に移動する。このとき、Y方向の移動距離はライン状の光の長さに対応した距離とする。すなわち、ペリクル表面においてライン状の光が照射される領域に対応する距離だけ、Y方向にステージ24をずらす。そして、再度、X方向にステージ24を移動させ、ペリクル22の端から端まで走査する。これを繰り返しラスタスキャンすることにより、順次、ペリクル全面に光が照射される。
【0038】
上記のように、光検出器32がしきい値以上の散乱光を受光したとき、コントローラ25で異物の位置情報を求めることができる。そして、ステージ24をラスタスキャンしながらペリクル表面で反射した光を光検出器32で検出することにより、ペリクル全面を検査することができる。この間、自動焦点合わせ機構により、ペリクル表面が合焦点位置をなっている。測定した異物の位置情報及びサイズ情報を、処理装置(図示せず)のモニタを用いて表形式や2次元マップなどで表示する。
【0039】
ここで、ペリクル22の表面と光検出器32の受光面は共役な結像関係にあり、これらは共焦点光学系(コンフォーカル光学系)を構成している。光検出器32はこの共焦点光学系を介して入射した光を検出している。従って、焦点がずれた位置からの反射光は光検出器32の受光面の位置でぼやけてしまい、受光面の外側を通過するため光強度が弱くなる。これにより焦点から外れた像は消失してしまい、表面の異物の検出を精度よく行うことができる。よって、フォトマスク23に設けられたパターン等によって対物レンズ16の左半分の領域に反射された光は光検出器32まで到達しなくなる。また、光検出器32の受光面の大きさはフォトマスク23の表面で反射した光が受光されないような大きさとする。ここで光検出器のそれぞれの受光素子(画素)は数μm程度としている。これにより、フォトマスク23の表面及び裏面で多重反射した光やフレーム(不図示)の内壁に当たって散乱する光などが光検出器32に検出されるのを防ぐことができる。
【0040】
また、本発明では自動焦点合わせ機構によって、焦点合わせを行っている。従って、ペリクルに位置ずれが生じた場合であっても、即座に焦点を合わせることができ、正確に表面の異物を検出することができる。また、本発明では光源11からの光を対物レンズの半分の領域のみを通過させているため、暗視野光学系とした場合であっても、ペリクルに対して光を斜めから入射させる必要がなくなる。よって、光源11からの光の光軸を鉛直方向とすることができ、光学系の調整を容易に行うことができる。対物レンズ16の中心位置を光軸からずらずだけでよいため、光学部品点数を減らすことができる。本発明により、検査装置の光学系を簡易なものとすることができ、検査装置の製造コストを低減することができる。
【0041】
ここで、対物レンズ16を通過する光について図2を用いて詳細に説明する。図2は光源11から見た対物レンズ16の構成を示す模式図である。図2において、光源11から対物レンズ16に入射した入射光及びペリクル表面で正反射した正反射光を投影して模式的に示している。この対物レンズ16に投影された入射光と正反射光をそれぞれ入射光51と正反射光52とする。また、図2において対物レンズ16の左半分の領域を第1の領域16aとし、右半分の領域を第2の領域16bとする。
【0042】
ライン状の入射光51は第1の領域16aに入射する。ここでライン状の入射光51はそのスポットが第1の領域16aと第2の領域16bとの境界線(図2における点線)に対して垂直な方向となるよう対物レンズ16に入射する。すなわち、入射光51は境界線(図2における点線)と垂直になる。この入射光51がペリクル22の正常な箇所に入射すると、ペリクル表面で正反射する。正反射光52は入射光51と対物レンズ16の中心点に対して対称な位置に入射する。従って、ペリクル表面での正反射した正反射光52は第2の領域16bの方向にのみ反射される。よって、正常な箇所では第1の領域16aに反射光が入射せず、第2の領域16bにのみ反射光が入射する。第2の領域16bに入射された正反射光52は屈折され、ミラー41に入射する。正反射光は上述のように自動焦点合わせ機構の光学系を伝播していく。
【0043】
一方、入射光51がペリクル22の異物が付着した箇所に入射すると散乱反射される。従って、ペリクル表面での散乱光は対物レンズ16の全面及び対物レンズ16の外側に反射される。対物レンズ16の方向に散乱光の内、第2の領域16bに入射した光は、正反射光と同様に屈折され、ミラー41に入射する。この反射光は上述のように自動焦点合わせ機構の光学系を伝播して、2分割フォトダイオード43に入射する。対物レンズ16の外側に反射された光は検査及び自動焦点合わせに寄与しない。
【0044】
対物レンズ16に入射した散乱光の内、第1の領域16aに入射した光は、入射光と同様の光路を反対方向に伝播して、1/4波長板15に入射する。なお、散乱光は第1の領域16aの全体に入射する。そして、1/4波長板15を透過して、PBS14に入射する。ペリクル22で反射され、PBS14に入射する反射光は2回1/4波長板15を通過しているのでP偏光からS偏光の光に変換されている。従って、散乱光はPBS14で反射され、上述のように検査用の光学系を伝播して、光検出器32に入射する。このとき、第1の領域16a全体に入射した散乱光が光検出器32に入射する。ペリクル表面で散乱した散乱光を正反射した光と分離して、異なる光学系を介して検出することにより、暗視野光学系で検査を行うことができる。これにより、バックグラウンドノイズが低減されるため、検出感度を向上することができる。また、ショットノイズを低減することができ、正確な検査を行うことができる。
【0045】
さらに、対物レンズ16の第2の領域16bを通過した反射光により、自動焦点合わせを行っているため、常時、焦点を合わせることができる。すなわち、正常箇所では正反射した光が第2の領域16bを通過し、異物箇所では乱反射した光の一部が第2の領域16bを通過する。よって、光は、常時、第2の領域16bを透過し、2分割フォトダイオード43に受光される。従って、2分割フォトダイオード43で検出された信号に基づいて、フィードバックを行うことにより、ペリクル表面が常に合焦点位置となる。従って、常時、反射光が光検出器の受光面に結像され、正確な検査を行うことができる。
【0046】
ステージ24は図2における矢印方向すなわちX方向に移動する。すなわち、ステージ24はライン状の光と垂直な方向に移動する。そして、ペリクルの端から端まで移動した後、ライン状の光の長さだけ、Y方向にステージ24をずらす。これを繰り返し、ジグザグスキャンすることにより、ペリクル全面の検査を高速に行うことができる。これにより検査時間を短縮でき、生産性を向上することができる。
【0047】
このように、光がオートフォーカス機構により合焦点位置となるように照明しているため、単純な光学系で検査装置を実現することができる。また、暗視野光学系であるので、ショットノイズを低減することができ、高感度で、高速度に異物の検出ができる。また、ペリクル22が装着されたフォトマスク23を上下反対にしてフォトマスク23の裏面を上面とし、フォトマスク23の裏面に焦点を合わせれば、フォトマスク裏面の状態を検査することができる。なお、上述の説明では水平方向に走査する例について説明したが、フォトマスクのガラス基板を垂直方向に配置する縦型ステージについても同様である。
【0048】
本発明の検査装置の被検査対象物はペリクル及びフォトマスクに限らず、様々な物体を被検査対象物とすることができる。また、表面上に付着した異物の検査に限らず、表面又は裏面の表面状態を検査することができる。例えば、表面状態の違いによりパターンの有無やパターン欠陥を検査することができる。さらに、表面での反射率を定量的に測定することができる。具体的には、ペリクルがケミカル汚染されると、表面での散乱が強くなる。この場合、本発明の検査装置により、その汚染度を定量的に測定することができる。
【0049】
また、上述の説明では、光検出器32に散乱光が検出される例で説明したが、正反射光が第1の領域16aを通過し、光検出器32に検出されることもある。具体的には、試料表面に突起が形成されている場合、正反射光が第1の領域16aを通過し、光検出器32に検出されることがある。従って、表面に設けられた突起の位置を検査することができる。すなわち、表面に突起が設けられている場合、傾斜面が発生する。この傾斜面の角度によっては、正反射した光でも第1の領域16aの方向に正反射される。この場合、光検出器32に受光される光量が平坦面に比べて増加する。よって、この光を光検出器32により検出することにより、突起の位置を検出することができる。このように本発明の検査装置は試料表面で第1の領域16aの方向に反射された反射光を検出することにより、さまざまな検査を行うことができる。
【0050】
また、上述の説明では信号検出回路33で異物の有無のみを判別したが、ペリクル表面の暗視野画像を撮像するようにしてもよい。すなわち、ステージ24を走査して、光検出器32のそれぞれの画素が検出した光の強度信号をコントローラ25に順次、記憶させる。そして、ペリクル全面に対してステージを走査する。ペリクル22の全体を照明して、ペリクル全面に対するデータの取得が完了したら、コントローラ25に接続された処理装置(図示せず)によりこれらのデータを合成して2次元の画像を形成する。この2次元画像は処理装置に記憶されるとともに、ディスプレイ上に表示される。この撮像された2次元画像に基づいて検査を行うようにしてもよい。
【0051】
光源11はレーザ光源に限らず、ランプ光源等のその他の光源を用いることができる。ランプ光源の場合は、スリット等によりライン状の光に変換することが望ましい。シリンドリカルレンズやスリット等の光変換手段を用いてライン状の光に変換し、ステージの走査を行うことにより、試料全面を高速に検査することができる。この時、走査方向はライン状の光と垂直な方向にする。また、光検出器32は1次元リニアCCD以外にも、フォトダイオードアレイ、MOS型ラインセンサ等の他のラインセンサでもよい。もちろんスリットを備える2次元センサを光検出器32として用いてもよい。さらに、共焦点光学系であれば、ライン状の光に変換せず、レーザ等の点光源をそのまま用いることも可能である。この場合、光検出器32の前面にピンホールを設ければよい。あるいは、光検出器32をポイントセンサとすればよい。
【0052】
また、焦点合わせ機構は光てこ方式に限らず、非点収差方式等の他の自動焦点合わせ機構を用いてもよい。光源11からの入射光は、対物レンズ16の半分の領域のどこかを通過すればよい。例えば、図2に示す構成において、入射光51が第1の領域16aと第2の領域16bの境界線と垂直方向に限らず、平行方向に、あるいは傾いて入射されてもよい。もちろん、入射光は対物レンズ16の第1の領域16aの一部を通過すればよい。そして、この半分の領域に対応する位置にPBS14、ハーフミラーあるいはビームスプリッタ等の光分岐手段を配置して、入射光から分岐させればよい。また、PBS14やハーフミラー等の光分岐手段は正反射した光が入射されない位置に配置されればよい。
【0053】
光検出器32に入射する光量が小さい場合、光検出器32の前にイメージインテンシファイアを載置するようにしてもよい。また、ミラー41は対物レンズ16の半分の領域と一致してなくてもよい。すなわち、ペリクル表面で正反射して対物レンズ16を透過した光が入射する位置に、ミラー41が配置されていれば自動焦点合わせを行うことができる
【0054】
このように本発明では、対物レンズ16の片側半分を入射光が透過する領域としている。そして、対物レンズ16の片側半分を透過した散乱光を検出して検査を行い、反対側の片側半分を透過して正反射光又は散乱光を検出して焦点合わせを行っている。これにより、簡易な構成で暗視野光学系を構築できる。また、コンフォーカル光学系により光を検出しているため、焦点深度の浅い検査を行うことが可能である。これにより、焦点がずれたところからの反射光を除去することができ、正確な検査を行うことができる。従って、フォトマスク上に設けられたペリクルの検査に好適である。さらに、自動焦点合わせ機構を用いているため、より正確に検査を行うことができる。
【0055】
本発明にかかる検査方法によって検査されたペリクル及びフォトマスクを用いることによって、半導体デバイス等の製造歩留まりを向上させることができる。すなわち、検査方法によりペリクルを検査し、その検査結果に基づいて異物を除去する。そして、この異物が除去されたペリクルが取り付けられたフォトマスクを露光装置にセットして露光処理を実施する。露光処理がなされた半導体ウェハは現像処理が施され、レジストパターンがウェハ上に形成される。このパターンに従って、広く知られた薄膜堆積処理、エッチング処理、酸化処理、イオン注入処理などがなされ、半導体デバイスが形成される。本発明の検査装置あるいは検査方法を用いて検査されたペリクル付きマスクによって、半導体デバイスの製造における露光処理を実施することができる。本発明の検査方法により、半導体デバイスに限らずパターン基板の製造歩留まりを向上させることができる。よって、パターン基板の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明にかかる検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】光源側から見た対物レンズの構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0057】
11 光源、12 シリンドリカルレンズ、13 レンズ、14 PBS
15 1/4波長板、16 対物レンズ、16a 対物レンズの第1の領域
16b 対物レンズの第2の領域、21 対物レンズ駆動機構、22 ペリクル
23 フォトマスク、24 ステージ、25 コントローラ、31 レンズ
32 光検出器、33 信号検出回路、41 ミラー、42 レンズ
43 2分割フォトダイオード、44 AFサーボ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から入射した入射光を集光して試料に入射させる対物レンズであって、前記入射光が当該対物レンズの半分の領域である第1の領域に入射するよう、前記入射光の光軸からずれて配置された対物レンズと、
前記第1の領域から前記試料の照射された光のうち、前記試料の表面で反射され、前記第1の領域に入射した反射光を前記入射光と分岐する光分岐手段と、
共焦点光学系を介して、前記光分岐手段によって分岐された反射光を検出する光検出器と、
前記第1の領域から前記試料の照射された光のうち、前記試料の表面で反射され、前記対物レンズの前記第1の領域と異なる第2の領域に入射した反射光を検出して、前記試料の表面に焦点を合わせる自動焦点合わせ機構とを備えた検査装置。
【請求項2】
前記試料を載置するステージをさらに備え、
前記ステージが移動可能に設けられている請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記光源からの光をライン状の光に変換して前記対物レンズに出射する光変換手段をさらに備え、
前記光検出器が前記試料表面と共役な結像関係に配置されたラインセンサであり、前記ラインセンサが前記ライン状の光に対応して配置されている請求項1又は2記載の検査装置。
【請求項4】
前記ライン状の光と垂直な方向に前記試料を走査させることを特徴とする請求項3記載の検査装置。
【請求項5】
共焦点光学系を介して、試料表面で反射した反射光を検出して前記試料の検査を行う検査方法であって、
光源からの光を前記光源からの光の光軸とずれて配置された対物レンズに入射させるステップであって、前記対物レンズの半分の領域である第1の領域に光を入射させるステップと、
前記対物レンズの第1の領域に入射した光を前記試料に照射させるステップと、
前記第1の領域から前記試料に照射された光のうち、前記試料の表面で前記第1の領域の方向に反射された反射光を、共焦点光学系を介して検出するステップとを備え、
前記試料の表面で反射され、前記対物レンズの前記第1の領域と異なる第2の領域に入射した反射光を検出して、前記試料の表面が合焦点位置となるよう前記光源からの光を前記試料に照射する検査方法。
【請求項6】
前記試料を走査しながら前記反射光の検出を行う請求項5記載の検査方法。
【請求項7】
前記光源からの光をライン状の光に変換して、前記対物レンズに出射するステップとをさらに備え、
前記反射光が前記ライン状の光に対応して配置されたラインセンサにより検出される請求項5又は6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記試料を前記ライン状の光と垂直な方向に走査しながら前記反射光の検出を行うことを特徴とする請求項7記載の検査方法。
【請求項9】
請求項4乃至請求項8いずれか一項に記載の検査方法により、フォトマスクに装着されたペリクルを検査する検査ステップと、
前記検査ステップによって検査されたペリクルの異物を除去する異物除去ステップと、
前記異物除去ステップで異物を除去したペリクルが装着されたフォトマスクを介して基板を露光する露光ステップと、
前記露光された基板を現像する現像ステップを有するパターン基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−10334(P2006−10334A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183805(P2004−183805)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】