説明

検査装置

【課題】低コスト、迅速、且つ高精度に試料を検査可能な検査装置を提供すること。
【解決手段】測定されたスペクトルに基づいて取得される、含有率に相当する含有率判定値が、その検査対象成分について予め定められた閾値以上であるかがを判断され、その判断結果が表示装置16に表示出力される。よって、試料3を自動的に検査できるので、迅速な検査を実現できるので、管理者および管理区域を要さず、従来の蛍光X線分析法に比較して、低コスト且つ迅速に試料3を検査できる。さらに、レーザ光は微少部分に照射可能であると共に、試料の厚みが薄い場合にも対応可能であり、例えば、めっき、基板上はんだ接合部など薄膜、微少な特定領域であっても高精度に検査可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査装置に関し、特に、低コスト、迅速、且つ高精度に試料を検査可能な検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業廃棄物による環境汚染が深刻化してきており、産業界に対し、有害物質の使用を規制する要望が高まってきている。例えば、ヨーロッパでは、RoHS指令により、電気・電子機器における特定有害物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の使用が制限され、ELV指令により、自動車使用部品中の有害物質(カドミウム、鉛、水銀、六価クロム)の使用が制限される。
【0003】
このような社会情勢を受けて、電化製品等の製造現場では、部品内に含まれる有害物質の測定、検査が実施されている。有害物質の有無の検査方法としては、例えば、誘導結合プラズマ分析法、ガスクロマトグラフ質量分析法、蛍光X線分析法など様々な方法が知られている。特に、蛍光X線分析法は、試料を破壊せずに試料内の有害物質含有率を検査できるので、広く利用されている。
【特許文献1】特開2003−139750号公報
【特許文献2】特開2006−119108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、より厳正なる検査を行うためには、受入または出荷する全部品について全数検査することが望ましいが、上記従来の検査法では検査時間がかかり、またコストが高いため、全数検査は現実的には困難であり、抽出検査とせざるを得ないという問題点があった。上述した従来の検査方法のうち、誘導結合プラズマ分析法、ガスクロマトグラフ法などは、測定対象物を破壊しなければならないので、コストおよび時間を要する。また、蛍光X線分析法は、測定対象物の破壊を要しないが、X線を用いるため、測定対象物を管理区域まで移動させなければならず、また管理者を必要とするため、やはりコストおよび時間の観点から全数検査は困難であった。
【0005】
さらに、蛍光X線分析法は、検査対象がX線の照射領域より小さい場合や、厚みが薄い場合には、測定精度が低くなるという問題点がある。その結果、蛍光X線分析法では、薄膜(めっき)、微少部分の検査ができないという不都合があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、低コスト、迅速、且つ高精度に試料を検査可能な検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の検査装置は、レーザ光を試料に照射し、試料に含まれる成分をプラズマ化させて分析することにより、試料を検査するものであって、レーザ光を出力するレーザ光出力手段と、そのレーザ光出力手段から出力されたレーザ光を試料に集光照射する光学系と、前記試料が前記レーザ光を受けて生成するプラズマから放出されるプラズマ光を分光し、プラズマ光のスペクトルを測定する測定手段と、その測定手段により測定されたスペクトルと、検査対象成分の特徴波長とに基づいて、前記試料内における検査対象成分の含有率に相当する含有率判定値を取得する含有率判定値取得手段と、その含有率判定値取得手段により取得された検査対象成分の含有率判定値が、その検査対象成分について予め定められた閾値以上であるかを判断する含有率判断手段と、その含有率判断手段による判断結果を出力する判断結果出力手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の検査装置は、請求項1記載の検査装置において、前記測定手段によるプラズマ光の測定時間帯を制御するタイミング制御手段を備え、そのタイミング制御手段は、前記レーザ光出力手段によるレーザ光出力開始から所定時間経過後に、前記測定手段によるプラズマ光の測定を開始させるものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の検査装置は、請求項1または2に記載の検査装置において、前記含有率判定値取得手段は、前記検査対象成分として、鉛、水銀、カドミウム、クロム、臭素のうち、少なくともいずれか1の含有率判定値を取得するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の検査装置は、請求項1から3のいずれかに記載の検査装置において、前記試料は、電気製品または自動車の部品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の検査装置によれば、測定手段により、レーザ光を受けて生成するプラズマから放出されるプラズマ光が分光され、プラズマ光のスペクトルが測定される。そして、測定されたスペクトルと、検査対象成分の特徴波長とに基づいて、含有率判定値取得手段により、前記試料内における検査対象成分の含有率に相当する含有率判定値が取得される。そして、含有率判断手段により、検査対象成分の含有率判定値が、その検査対象成分について予め定められた閾値以上であるかが判断され、判断結果出力手段により、その判断結果が出力される。その結果、試料内における検査対象成分の含有率を自動的に検査できるので、管理者および管理区域を要さず、従来の蛍光X線分析法に比較して、低コスト且つ迅速に試料を検査できるという効果がある。さらに、レーザ光は微少部分に照射可能であると共に、試料の厚みが薄い場合にも対応可能なので、例えば、めっき、基板上はんだ接合部など薄膜、微少な特定領域であっても高精度に検査可能であるという効果がある。
【0012】
請求項2記載の検査装置によれば、請求項1記載の検査装置の奏する効果に加え、タイミング制御手段は、前記レーザ光出力手段によるレーザ光出力開始から所定時間経過後に、前記測定手段によるプラズマ光の測定を開始させるので、プラズマ光の経次変化に応じた適切なタイミングでプラズマ光を測定し、高精度の検査が可能であるという効果がある。
【0013】
請求項3記載の検査装置によれば、請求項1または2に記載の検査装置の奏する効果に加え、前記含有率判定値取得手段は、前記検査対象成分として、鉛、水銀、カドミウム、クロム、臭素のうち、少なくともいずれか1の含有率判定値を取得するので、使用が厳しく制限される有害物質の含有率を検査できるという効果がある。
【0014】
請求項4記載の検査装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の検査装置の奏する効果に加え、前記試料は、電気製品または自動車の部品であるので、電気製品または自動車の部品の受入、出荷時における検査を迅速、低コスト、且つ高精度に実施できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である検査装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0016】
検査装置1は、レーザマイクロプローブ発光分光分析法(LMA:Laser Microprobe Analyzer)を利用した発光分析装置であり、試料3内に含まれる複数種類の有害物質(以下、検査対象成分と称する)の含有率を測定し、試料3を自動的に検査できる装置である。なお、本実施例の検査装置1は、試料3として、電気製品または自動車の部品を検査するものであり、また、検査対象成分として、鉛、水銀、カドミウム、クロム、臭素の含有率を測定するものとして説明する。
【0017】
図1に示すように、検査装置1は、レーザ光を出力するレーザ発振器2と、レーザ発振器2から出力されたレーザ光を試料3に集光照射する対物レンズ4と、レーザ光を受けた試料3が生成したプラズマから放射されるプラズマ光を集光する集光レンズ6と、集光レンズ6側から入射したプラズマ光を測定する分光器8と、ゲートコントローラ9と、分光器8から入力される測定結果に基づいて、試料3を検査するコンピュータ10と、を備える。
【0018】
レーザ発振器2は、例えば、レーザエネルギー90mJでパルス幅10nsのYAGレーザ光を出力する。このレーザ光の集光照射を受けると、試料3の一部が蒸発励起しプラズマ5を生成する。このプラズマ5は、レーザ光の照射終了と共に再結合が始まり、数μ秒から数十μ秒の間は試料3の構成元素が励起状態の原子となり、この励起状態の原子が下準位に遷移するとき、原子数に比例したプラズマ光を放射する。このプラズマから放射されるプラズマ光の所定の波長における強度から、目的とする検査対象成分の含有率を高い精度を得ることができる。
【0019】
ゲートコントローラ9は、コンピュータ10からトリガーが入力されると、レーザ光出力開始を指令するレーザ制御信号をレーザ発振器2に出力し、また、プラズマ光測定の測定時間帯(測定開始タイミングおよび測定時間幅)を規定する測定制御信号を分光器8へ出力する。これにより、レーザ光照射とプラズマ光の測定との同期をとることができる。さらに、ゲートコントローラ9はディレイ回路9aを備える。ゲートコントローラ9は、コンピュータ10からのトリガー入力を契機としてレーザ発振器2へレーザ制御信号を出力するが、ディレイ回路9aにより、レーザ制御信号に所定時間の遅れをもって、測定制御信号を出力する。したがって、レーザ光の照射によって生じ経時変化するプラズマ光に対して、その変化に適切に設定された遅れ時間をもって、分光器8にプラズマ光の測定を開始させることができる。
【0020】
分光器8は、ゲートコントローラ9からの測定制御信号に従った測定時間帯で、レーザ光照射に同期してプラズマ光を測定し、プラズマ光のスペクトルを生成する。そして生成したスペクトルをコンピュータ10へ出力する。
【0021】
図2は、コンピュータ10の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、コンピュータ10は、CPU11と、ROM12と、RAM13と、HDD14と、入力装置15と、表示装置16と、分光器8に接続するインターフェース17(I/F17)と、ゲートコントローラ9に接続するインターフェース18(I/F18)とを備えている。
【0022】
CPU11は、このコンピュータ10を総括的に制御する中央演算処理であり、図3,図4のフローチャートで示す処理を実行するプログラムなどの各種プログラムを実行する。
【0023】
ROM12は、CPU11により実行される各種制御プログラムや、それらの制御プログラムをCPU11により実行する上で必要なデータなどを格納した書き換え不能なメモリである。なお、図3,図4のフローチャートで示す処理を実行するプログラムは、このROM12内に格納されている。
【0024】
RAM13は、CPU11により実行される各種処理に必要なデータやプログラムを一時的に記憶するためのメモリである。このRAM13は、測定結果メモリ13aを備える。測定結果メモリ13aは、後述するi回目測定結果取得処理(図4参照)の結果として得られる、試料3内の各検査対象成分毎の含有率を格納するメモリである。なお、本実施例ではN回の測定を行うものとし、N回分の測定結果が、測定結果メモリ13aに格納されるが、詳細は、図4を参照して説明する。
【0025】
HDD14は、ハードディスクであり、閾値メモリ14aを備える。閾値メモリ14aは、測定結果の精度を評価するための精度閾値と、含有率を評価するための含有率閾値とを格納するメモリである。精度閾値、含有率閾値は、検査の目的、試料3の種類などを考慮して、各検査対象成分毎に予め定められ閾値メモリ14aに格納される値である。閾値メモリ14aには、検査対象成分のそれぞれについて、その検査対象成分に特有の精度閾値と、含有率閾値とが記憶されている。
【0026】
入力装置15は、コンピュータ10にデータ又はコマンドを入力するものであり、キーボード、マウスなどにより構成されている。表示装置16は、コンピュータ10で実行される処理内容や入力されたデータなどを視覚的に確認するために、文字や画像などを表示するものであり、特に、各検査対象成分についての判定結果が表示される。表示装置16は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどにより構成されている。
【0027】
I/F17は、コンピュータ10を分光器8に接続し、分光器8からのデータの入力を制御するものである。
【0028】
I/F18は、コンピュータ10とゲートコントローラ9とを接続するものである。入力装置15から検査開始の指示が入力されると、コンピュータ10は、このI/F18を介することにより、所定のタイミングでゲートコントローラ9へトリガーを出力し、ゲートコントローラ9に、レーザ制御信号および測定制御信号を出力させ、試料3の検査を開始することができる。
【0029】
図2に示すように、上述したCPU11と、ROM12と、RAM13と、HDD14と、入力装置15と、表示装置16と、I/F17と、I/F18とは、バスライン19を介して互いに接続されている。
【0030】
次に、図3のフローチャートを参照して、上記のように構成されるコンピュータ10において実行される、検査判定処理について説明する。図3は、コンピュータ10で実行される検査判定処理を示すフローチャートである。この検査判定処理は、入力装置15から検査開始の指示がされると起動する処理であり、試料3に含まれる検査対象成分の含有率を測定し、試料3を自動的に検査する処理である。なお、この検査判定処理に加え、コンピュータ10は、所定のタイミングでゲートコントローラ9へトリガーを出力する処理を実行するが、図示および説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、検査判定処理では、まず、変数iを「1」とする(S2)。次に、第i回目の測定を行い、その測定の結果として得られる各検査対象成分毎の含有率を、測定結果メモリ13a(図2参照)に格納するi回目測定結果取得処理を実行する(S4)。なお、i回目測定結果取得処理の詳細は、図4を参照して後述する。次に、変数iに「1」を加算する(S6)。次に、変数iがNより大(Nは2以上の整数)となったか否かを判断する(S8)。変数iがN以下である場合(S8:No)、S4の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0032】
このようにしてN回分の測定が終了し、N回分の測定結果が測定結果メモリ13aに格納されると、変数iがNより大となるので(S8:Yes)、S10の処理に移行する。
【0033】
次に、N回分の測定結果を評価する。この評価では、まず、測定結果の精度が良好であるか否かを判断し、測定結果の精度が良好である場合には、その測定結果に基づいて、試料3内の含有率が正常であるか異常であるかを判断する。
【0034】
なお、各検査対象成分毎に、要求される精度、および許容される(正常であると評価される)含有率は異なる。よって、精度判定値および含有率判定値の演算および評価は、全て、各検査対象成分毎に行う。
【0035】
まず、複数の検査対象成分のうち、1つの検査対象成分についての精度判定値を演算する(S10)。本実施例では、N回の測定が行われているので、1つの検査対象成分について測定されたN個の値(含有率)が測定結果メモリ13aに格納されている。これらを読み出し、それらN個の含有率の標準偏差を、精度判定値として演算する。
【0036】
次に、演算により得られた精度判定値が精度閾値より大であるか否かを判断する(S12)。上述したように、閾値メモリ14aには、各検査対象成分毎に、それぞれ固有の精度閾値が格納されている。よって、該当する検査対象成分の精度閾値を閾値メモリ14aから読み出し、演算により得られた精度判定値と比較する。
【0037】
精度判定値が精度閾値よりも大である場合(S12:Yes)、すなわち、N個の含有率のばらつきが大きい場合、N回の測定結果の精度は悪かったと判断できる。試料の種類(金属であるか、樹脂であるかなど)、検出する検査対象成分の種類(検出感度が高いものと低いものがある)、検出する検査対象成分以外の成分の影響、レーザーの精度、分光器8の精度などにより、測定結果の精度が得られない場合がある。よって、そのような場合は、後述するように含有率の正常または異常を評価せず、その検査対象成分についての判定結果を「不明」とし(S22)、S24の処理に移行する。このように測定結果の精度が得られない場合は、測定結果を「不明」であるとすることにより、判定結果の信頼性を高めることができる。
【0038】
一方、精度判定値が精度閾値以下である場合(S12:No)、すなわち、N個の含有率のばらつきが小さい場合、N回の測定結果の精度は良好であったと判断できる。よって、S14の処理に移行し、測定結果に基づいて、検査対象成分の含有率が正常であるか異常であるかを判定する。
【0039】
次に、N回の測定結果として得られたN個の含有率の平均値(含有率判定値)を演算する(S14)。次に、その含有率判定値が含有率閾値より大であるか否かを判断する(S16)。上述したように、閾値メモリ14aには、各検査対象成分毎に、それぞれ固有の含有率閾値が格納されている。よって、該当する検査対象成分の含有率閾値を閾値メモリ14aから読み出し、演算により得られた含有率判定値と比較する。
【0040】
含有率判定値が含有率閾値以下である場合(S16:No)、その検査対象成分の判定結果を「正常」とし(S18)、S24の処理に移行する。一方、含有率判定値が含有率閾値より大である場合(S16:Yes)、判定結果を「異常」とし、S24の処理に移行する。
【0041】
次に、全ての検査対象成分について評価したか否かを判断する(S24)。未だ全ての検査対象成分について評価していない場合、S10の処理に戻り、次の検査対象成分について評価する。このようにして処理を繰り返すうちに、全ての検査対象成分についての評価が終了すると(S24:Yes)、全ての検査対象成分についての判定結果を表示装置16(図2参照)に表示出力し(S26)、処理を終了する。したがって、使用者は、表示装置16を視認することにより、試料3に含まれる各検査対象成分についての判定結果(正常であるか、異常であるか、不明であるか)を知ることができる。
【0042】
図4を参照して、i回目測定結果取得処理(S4)について説明する。図4は、i回目測定結果取得処理(S4)を示すフローチャートである。
【0043】
まず、変数jを「0」とする(S42)。次に、分光器8からスペクトルが入力されたか否かを判断する(S44)。分光器8から1つのスペクトルが入力されると(S44:Yes)、次に変数jに「1」を加算する(S46)。
【0044】
次に、変数「j」がM(Mは1以上の整数)と等しくなったか否かを判断する(S48)。変数「j」がMより小の場合(S48:No)、S44の処理に戻り、分光器8から次のスペクトルが入力されるまで待機する。
【0045】
このようにして、M個分のスペクトルが分光器8から入力されると、変数「j」がMとなるので(S48:Yes)、次に、入力されたM個のスペクトルから、これらM個のスペクトルの平均である平均スペクトルSiを生成する(S50)。そして、平均スペクトルSiから、各検査対象成分の含有率を取得する(S52)。平均スペクトルSiから含有率を取得するので、スペクトル波形のノイズが除去され、精度を向上することができる。
【0046】
図5を参照して、平均スペクトルSiから、検査対象成分の含有率を取得(定量)する処理の一例について、鉛(Pb)を例にとって説明する。
【0047】
図5(a)は、平均スペクトルSiの一例を示すグラフであり、図5(b)は、予め実験的に求められた鉛(Pb)のスペクトル線強度と含有率との関係を示す検量線である。このスペクトル線強度と含有率との関係は、実験により予め求められる。鉛(Pb)の特徴波長は、405.78(nm)であるから、これに基づいて、平均スペクトルSiにおける鉛(Pb)の特徴波長のスペクトル線強度を得る。そして、図5(b)に示す検量線に表わされるように、スペクトル線強度と含有率とは略比例の関係にあるから、この相関関係を用いて、スペクトル線強度から鉛(Pb)の含有率を取得することができる。図5においては、鉛(Pb)を例にとって説明したが、各検査対象成分についても同様に、その検査対象成分の特徴波長と、その検査対象成分について予め求められたスペクトル線強度と含有率との相関関係に基づいて、試料3における含有率を取得することができる。
【0048】
図4に戻り説明する。平均スペクトルSiから各検査対象成分の含有率が取得されると(S52)、その取得した各検査対象成分の含有率を、i回目の測定結果として、測定結果メモリ13aに書き込み(S54)、処理を終了する。すなわち、M個分のスペクトルから1回分の測定結果を得る。これにより、各スペクトルのノイズが抑制され、検査精度を向上することができる。
【0049】
検査装置1によれば、測定されたスペクトルに基づいて取得される、含有率に相当する含有率判定値が、その検査対象成分について予め定められた閾値以上であるかがを判断され、その判断結果が表示装置16に表示出力される。よって、試料3を自動的に検査できるので、迅速な検査を実現できるので、管理者および管理区域を要さず、従来の蛍光X線分析法に比較して、低コスト且つ迅速に試料3を検査できる。さらに、レーザ光は微少部分に照射可能であると共に、試料の厚みが薄い場合にも対応可能であり、例えば、めっき、基板上はんだ接合部など薄膜、微少な特定領域であっても高精度に検査可能である。
【0050】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0051】
例えば、上記実施例では、試料3として、電気製品または自動車の部品を検査するものとして説明したが、試料3の種類はこれに限られるものではなく、例えば、その他装置の部品、土壌、水質、原材料、素材を検査しても良い。
【0052】
また、検査装置1は、検査対象成分として、鉛、水銀、カドミウム、クロム、臭素の含有率を測定するものとして説明したが、これ以外の検査対象成分について検査するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例である検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図3】コンピュータで実行される検査判定処理を示すフローチャートである。
【図4】i回目測定結果取得処理(S4)を示すフローチャートである。
【図5】(a)は、平均スペクトルSiの一例を示すグラフであり、(b)は、予め実験的に求められた鉛(Pb)のスペクトル線強度と含有率との関係を検量線である。
【符号の説明】
【0054】
1 検査装置
2 レーザ発振器(レーザ光出力手段)
3 試料
4 対物レンズ(光学系)
5 プラズマ
8 分光器(測定手段)
9 タイミング制御手段
S14 含有率判定値取得手段
S16 含有率判断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を試料に照射し、試料に含まれる成分をプラズマ化させて分析することにより、試料を検査する検査装置であって、
レーザ光を出力するレーザ光出力手段と、
そのレーザ光出力手段から出力されたレーザ光を試料に集光照射する光学系と、
前記試料が前記レーザ光を受けて生成するプラズマから放出されるプラズマ光を分光し、プラズマ光のスペクトルを測定する測定手段と、
その測定手段により測定されたスペクトルと、検査対象成分の特徴波長とに基づいて、前記試料内における検査対象成分の含有率に相当する含有率判定値を取得する含有率判定値取得手段と、
その含有率判定値取得手段により取得された検査対象成分の含有率判定値が、その検査対象成分について予め定められた閾値以上であるかを判断する含有率判断手段と、
その含有率判断手段による判断結果を出力する判断結果出力手段とを備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記測定手段によるプラズマ光の測定時間帯を制御するタイミング制御手段を備え、
そのタイミング制御手段は、前記レーザ光出力手段によるレーザ光出力開始から所定時間経過後に、前記測定手段によるプラズマ光の測定を開始させるものであることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記含有率判定値取得手段は、前記検査対象成分として、鉛、水銀、カドミウム、クロム、臭素のうち、少なくともいずれか1の含有率判定値を取得するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記試料は、電気製品または自動車の部品であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−322405(P2007−322405A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156718(P2006−156718)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(597143960)テクノシステム株式会社 (6)
【出願人】(506192283)
【Fターム(参考)】