説明

楔式軸受体

楔式軸受体はシャフトを取り囲む割筒型のアダプタスリーブを備えている。このスリーブは放射状外側に向かうテーパー面を有している。内部リングは、アダプタスリーブを取り囲み、アダプタスリーブのテーパー面と係合する放射状内側に向かう面を有している。一実施形態では、アダプタスリーブ及び内部リングと接続するロックナットに固定された視覚表示装置は、アダプタスリーブがシャフトに十分締め付けられたことを表示する。別の実施形態では、ポジティブロックキーは内部リングがアダプタスリーブに対して回転するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸受けに関し、より詳細には、楔式軸受体を取り付けたシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、軸受体の内部リングをシャフトに固定する位置決めねじや偏心環を用いることによって、シャフトに軸受体を取り付けることが知られている。かかる構造では、軸受体の内部リングが軸に沿って縦方向に延び、また、シャフトに対して内部リングをシールするための機構や軸受体をシャフトに固定するための機構が組み込まれる。
【0003】
また、軸受体に、内部リングを貫いて広がるテーパー穴を有し、シャフトを緩く取り囲んだ内部リングを設けることが知られている。また、かかる軸受体の構造は、円筒型の楔形状又はテーパー形状のアダプタスリーブを備えており、このアダプタスリーブもシャフトに配置されている。このスリーブは、そこに縦方向に延びるスリットを有し、このスリットによってスリーブがシャフト上に配置可能とされるが、このスリーブは圧縮又は締めつけてシャフトに摩擦係合される。一般に、このスリーブは、スリーブに対して軸方向に固定され、内部リングと螺合するロックナットによって、軸受体の内部リングのテーパー穴と係合するように入れられている。ロックナットをスリーブの回りで回転させることで、スリーブ上で内部リングが引っ張られ、テーパー形状のスリーブとテーパー穴の間で楔のような係合がなされる。この楔状の係合は、スリーブと内部リングの間を締まり嵌めし、スリーブを押しつけてシャフトと固定係合させる。内部リングとスリーブ間のこの固定係合は、従って、スリーブとシャフト間の固定係合は、シャフトに対して内部リングを固定する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受体をシャフトに取り付けるために、テーパー形状の内部リングとともにテーパー形状のスリーブを用いることは、特定の呼び円周と異なる円周を有するシャフトの場合でも、この形式の軸受体を取り付けるのに適用できる点で有利である。しかしながら、スリーブに対して内部リングが軸方向に移動することなく、内部リングがナットとともに回転する傾向にあることや、ナットの締めが過剰であるのか締めつけ状態にあるのか判断するのが容易でないことや、スリーブに対してナットを軸方向に固定するのが困難なことから、これらの楔式軸受体をシャフトに取り付けるのが困難である。それ故に、これら問題の一つ以上を解消する楔式軸受体を取り付けたシャフトの存在が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの問題の全てを解決する楔式軸受体を提供するものである。この軸受体は、シャフトの周りを取り囲む割筒型のアダプタスリーブを備えている。このスリーブは放射状外側に向かうテーパー面を有している。内部リングは、アダプタスリーブを取り囲み、アダプタスリーブのテーパー面と係合する放射状内側に向かう面を有している。
【0006】
本出願の目的の一つは、シャフトと摩擦係合するスリーブと無関係に内部リングが回転することのない軸受体を取り付けたシャフトを提供することにある。一実施形態では、軸受体は、スリーブと無関係に内部リングが回転するのを防止するため、スリーブに対して内部リングを回転自在に固定するポジティブロックキー(positive locking key)を設けることでこの目的を達成している。
【0007】
本発明の別の目的は、アダプタスリーブがシャフトに十分に締めつけられたときをユーザが容易に判断することのできる軸受体を取り付けたシャフトを提供することにある。別の実施形態では、軸受体は、アダプタスリーブがシャフトに十分締めつけられたことを表示するため、視覚表示装置を設けることによってこの目的を達成している。
【0008】
本発明の前述及びその他の目的および利点は、以下の説明から明らかとなるであろう。本明細書では、その一部を構成する添付図面を参照して説明するが、これは本発明の好ましい実施形態を説明するために示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1から図3に示したように、楔式軸受体10は、縦方向の軸14を有するシャフト12に取り付けられている。この軸受体10は、シャフト12と摩擦係合するアダプタスリーブ16と、シャフト12に対してアダプタスリーブ16を押しつける内部リング18と、アダプタスクリーブ16に対して軸方向に固定され、内部リング18と係合するロックナット20を有するロックナット組立体と、を備えている。ロックナット20を第1の回転方向に回転させると、軸受体10をシャフト12に取り付けるようにアダプタスリーブ16上を内部リング18が引っ張られる。ロックナット20を逆の第2の回転方向に回転させると、軸受体10をシャフト12から取り外すように、アダプタスリーブ16から内部リング18が押し戻される。
【0010】
円筒形のアダプタスリーブ16は、シャフト12の軸14に沿ってアダプタスリーブの第1端22から第2端24まで広がっており、放射状内側に向かう面26と放射状外側に向かう面28を有している。この放射状内側に向かう面26によって、シャフト12の外面30と係合する均一な円筒穴の形状が定められている。スリット端を有する縦スリット(図示せず)がスリーブ16の軸の長さ全体に延びている。このスリット端は、スリーブ16の形が損なわれていない(即ち、内部リング18によって押しつけられていない)場合に、その両スリット端間のギャップ形状を定めている。このギャップは、アダプタスリープ16が、内部リング18によって放射状に押しつけられるに従って狭められる。スリーブ16は、形が損なわれていない場合は、シャフト12上をスライドするようなサイズに形成されており、スリーブ16に沿って設けられたスリットによって、スリーブ16が圧縮され、以下説明するやり方で、シャフト12と摩擦係合して固定される。
【0011】
スリーブ16の放射状外側に向かう面28は、内部リング18と係合可能なテーパー面40およびロックナット20と係合可能な放射状外側に延びる円周キー(circumferential key)を含む。テーパー面40は、スリーブ16の第1端22から反対側のスリーブ16の第2端に向けて延びており、スリーブ16の第1端22近辺では、第1の比較的小さな径を有する円錐台形をしている。このテーパー面40の径は、スリーブの第2端に向かって均等に大きくなっている。様々なテーパー角度、例えば3°から4°、を用いることができる。
【0012】
放射状外側に延びる円周キー42は、アダプタスリーブ16の第2端24近傍の放射状外側に向かう面28から延びている。このキー42は、ロックナット20をアダプタスリーブ16に対して軸方向に固定するようロックナット20と回転摺動自在に係合し、その上、ロックナット20がアダプタスリーブ16に対して回転可能である。
【0013】
放射状外側に向かう面28から放射状に延びるポジティブロックキー(positive locking key)54は、内部リング18に形成された軸方向に延びるキー溝(keyway)56に嵌め込まれる。軸方向に延びるキー溝56に嵌め込まれたポジティブロックキー54は、アダプタスリーブ16に対し内部リング18が回転するのを防止し、その上、内部リング18がアダプタスリーブ16に対して軸方向にスライドするようにできるため有利である。このポジティブロックキー54は、好ましくは、アダプタスリーブ16に形成された凹形の丸いスロットに受容される取り外しの可能な半月キー(Woodruff key)であると、軸受体10を簡単な構造にできるため好ましい。しかしながら、このポジティブロックキー54は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、どのような形でも良く、および/又はアダプタスリーブ16の一体部分として形成しても良い。さらに、ポジティブロックキー54は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、内部リング18から延ばして、アダプタスリーブに形成されたキー溝に入るようにしても良い。
【0014】
軸受体10の内部リング18は、軸受体10がシャフト12に固定されるように、スリーブ16に合わせて構成されている。一般に環状の内部リング18は、アダプタスリーブ16とシャフト12を取り囲み、シャフトの軸14とほぼ同軸の軸を有している。内部リング18は、放射状外側に向かう面44と、放射状内側に向かう面46を有し、この両面は、軸方向で対向する内部リング第1端48と第2端50によって結びつけられている。放射状外側に向かう面44は、ローラー52用のベアリング面を与える。
【0015】
内部リング18の放射状内側に向かう面46は、内部リング18の第1の軸端48では第1の径を有し、第2の軸端50近傍では第2の径を有する。この第1の径は第2の径より小さく、内部リング18の軸端48と50の間には内部リング18を貫通して広がるテーパー穴(tapered bore)が形成されている。放射状外側に向かう面44の第2軸端50近傍に形成された雄ねじ58は、ロックナット20に形成された雌ねじとかみ合い、アダプタスリーブ16上で内部リング18を引っ張る。内部リング18の放射状内側に向かう面46は、軸14に対して、スリーブ16のテーパー面40とほぼ同じ角度で置かれるのが好ましい。内部リング18がアダプタスリーブ16上を引っ張られるとき、スリーブ16のテーパー面40は、内部リング18の放射状内側に向かう面46に沿ってスライドするとともに係合し、アダプタスリーブ16をシャフト12に対して押しつける。
【0016】
放射状内側に向かう面46に形成された軸方向に広がるキー溝56は、スリーブ16の放射状外側に向かう面28から放射状に広がるポジティブロックキー54を嵌め込む。好都合なことに、軸方向に広がるキー溝56に嵌め込まれたこのポジティブロックキー54は、スリーブ16が回転するのを防止し、その上、スリーブ16を内部リング18に対して軸方向に動かすことを可能とする。無論、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、内部リング18から延びるポジティブロックキー54を嵌め込むキー溝56をアダプタスリーブ16に形成するようにしても良い。
【0017】
ロックナット組立体の円筒形のロックナット20は、アダプタスリーブ16を取り囲み、アダプタスリーブ16に対して内部リング18を軸方向に動かすようにアダプタスリーブ16と内部リング18の両方と係合している。このロックナット20は、放射状内側に向かう面66と放射状外側に向かう面68を有し、その両方の面とも第1ロックナット端70と第2ロックナット端72の間に広がっている。第1ロックナット端70近傍の放射状内側に向かう面66に形成された雌ねじ60は、内部リング18の放射状外側に向かう面44に形成された雄ねじ58と螺合している。
【0018】
ロックナット20の放射状外側に向かう面68は、戻り止め74を有している。この戻り止め74は、第2ロックナット端72近傍で、ロックナット20の放射状外側に向かう面68の円周上に一定間隔をあけて配置されており、ロックナット20を内部リング18とアダプタスリーブ16に対してロックナット20を回転させるようにねじることで係合可能である。内部リング18に対してロックナット20を回転させると、内部リング18に形成された雄ねじ58が、ロックナット20に形成された雌ねじ60と螺合し、アダプタスリーブ16に対して内部リング18をいずれかの軸方向に動かす。
【0019】
雌ねじ60に隣接し、ロックナット20の第2の端72近傍の放射状内側に開口する円周キー溝76は、アダプタスリーブ16の円周キー42と係合し、ロックナット20をアダプタスリーブ16に対して軸方向に固定している。好都合なことに、キー溝76はロックナット20をアダプタスリーブ16に対して軸方向に固定するとともに、ロックナット20を回転させて、内部リング18の雄ねじ58をロックナット20の雌ねじ60と螺合させることができる。内側に開口するキー溝76を開示したが、ロックナットをアダプタスリーブ16に対して軸方向に固定するとともに、ロックナット20にアダプタスリーブ16の周りを回転させることの可能な他の構造体を設けても良い。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、アダプタスリーブ16に形成された放射状外側に開口するキー溝に係合する、放射状内側に延びるロックナット20のキーなどでも良い。
【0020】
放射状内側に向かう面66の近くにあり、ロックナット20の第2の端72の軸方向に向かう面78に形成された軸方向に開口するキャビティ94には、視覚表示装置が収容されており、この視覚表示装置は、軸受体10がシャフト12に摩擦固定するのに十分にしっかり締まっていることを表示している。このキャビティ94は、軸方向に向かう面78に形成するのが好ましいが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、軸受体10をシャフト12に摩擦固定するため、ロックナット20を締めることによって生じるロックナット20にかかる力が表せればロックナット20のいずれの場所に形成しても良い。
【0021】
視覚表示装置80は、例えば、ノースカロライナ州、ローリーのヴィシェイ マイクロ メジャーメンツ(Vishay Micro Measurements)から入手できるヴィシェイ マイクロ メジャーメンツ モデル(Vishay Micro Measurements Model) No. PS−1 Sheetなどの光弾性の感光材料(photoelastic sensitive material)82から作られていることが好ましく、この材料82は、力を加えた際に、偏向レンズ84を通してみると、色が変化するものである。この視覚表示装置80は、ロックナット20のキャビティ94にエポキシ樹脂、ゴム系接着剤などの接着剤で固定される。これら接着剤は、ロックナット20に加わる力を光弾性の感光材料82に感度を失わずに伝達するため、光弾性の感光材料82とほぼ同等の弾性特性を有している。視覚表示装置80がロックナット20から外れないよう保護するため、ロックナット20に形成されたキャビティ94に視覚表示装置80を固定するのが好ましいが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、ロックナット20のいずれの面に視覚表示装置80を固定しても良い。
【0022】
光弾性の感光材料82に作用する力は、この光弾性の感光材料82を通り抜ける光の波長を変化させ、ユーザが偏向レンズ84を通してみた場合、光弾性の感光材料82の色を変えて見えるようにして示す。この偏向レンズ84を通して見ることのできる特定の色は、光弾性の感光材料82が受けた力の量に依存している。光弾性の感光材料82が受ける力は、ロックナット20によってアダプタスリーブ16と内部リング18の間に加えられる荷重に依存する。軸受体10をシャフトに摩擦によって固定すべくアダプタスリーブ16と内部リング18の間に加えられるこの荷重は、ロックナット20を回転するのに必要なトルクに依存する。その結果、ロックナット20に加えられたトルク総量は、偏向レンズ84を通して光弾性の感光材料82の色を見ることによって判断することができる。
【0023】
この偏向レンズ84は、好ましくは、例えば、ニュージャージ州、バーリントンのエドムント オプティクス社(Edmund Optics, Inc.)から入手できる光偏向フィルムを光弾性の感光材料82の外表面に貼り付けたものである。無論、偏向レンズ84を設けなくとも良く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、光弾性の感光材料82を観察するために、ユーザが偏向レンズを用意するようにしても良い。
【0024】
ロックナット20を貫いて形成された一対の放射状に延びるねじ貫通孔86は、位置決めねじと螺合し、シャフト12にアダプタスリーブ16を固定するため、いったんロックナット20が十分しっかり締められると、アダプタスリーブ16に対してロックナット20を回転するように固定する。このねじ貫通孔86は、放射状内側に開口する円周キー溝76から放射状の延びており、位置決めねじ88をアダプタスリーブ16から延びる円周キー42と一列に並べている。一対のねじ貫通孔を約90°の角度で間隔をあけて配置したものを示したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、1以上の位置決めねじ88を嵌め込むために、ロックナット20の周囲にランダム又は均等に間隔をあけて1以上の貫通孔を設けても良い。さらに、貫通孔86がキー溝76およびキー42に対してほぼ垂直に延びるように示したが、本発明の要旨を逸脱しないで範囲で、貫通孔86をキー溝76および/又はキー42に対してどんな角度に定めても良い。
【0025】
各位置決めねじ88は、ねじ貫通孔86の一つと螺合し、回転して円周キー42に当たってアダプタスリーブ16に対してロックナット20を固定する。図1から図3に示した実施形態では、各貫通孔86は位置決めねじ88の一つを嵌め込む。しかしながら、本発明の要旨を逸脱せずに、貫通孔86を位置決めねじ88の数より多く設けても良い。
【0026】
軸受体10は、内部リング18から放射状に間隔をあけて設けられた外部リング64をさらに有し、内部リング18と外部リング64の間に複数のローラー52がサンドイッチ状にされている。ローラー52はリング18および64が相互に動作できるようにしている。ここで使用した用語「ローラー」とは、例えば、ボールベアリング、円筒ころ、テーパーローラー、これと同等のローラーなど、内部リング18と外部リング64の相互の動作を可能とする、本技術分野で使用されるどのようなローラーでも良い。保持リング(図示せず)が、内部リング18と外部リング64の間にローラー52を一定の間隔で配置するため設けられている。
【0027】
ローラ−52の対向する両側に位置する内部リング18と外部リング64の間に広がるシールリング90は、ローラー52の周りを滑らかにシールする。外部リング64と螺合するシールリング90の一つに固定されたシール取付リング92は、シールリング90を軸受体10に取り付けるために設けられる。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、内部リング18とローラー52を取り囲む筐体(図示せず)を設け、この筐体を外部リング64に固定するようにしても良い。
【0028】
使用に際し、軸受体10はアダプタスリーブ16を押しつけることによってシャフト12に取り付けられ、ロックナットキー溝76をアダプタスリーブ16の円周キー42と係合させる。その際、アダプタスリーブ16とロックナット20は軸方向にシャフト12上を滑らされる。さらに、テーパー穴を形成する内部リング18の放射状内側に向かう面46が、アダプタスリーブ16の放射状外側に向かう面28のテーパー面40と一致するように、ローラ−52および外部リング64とともに内部リング18は、シャフト12上を軸方向に滑らされる。内部リング18の雄ねじ58がロックナット20の雌ねじ60と螺合するまで、内部リング18はアダプタスリーブ16に沿って軸方向に滑らされる。
【0029】
次に、アダプタスリーブ16のポジティブロックキー54を、内部リング18の軸方向のキー溝56に滑り入れ、例えば、ユーザがアダプタスリーブ16上で内部リング18を手で押すことによって、内部リング18がアダプタスリーブ16上を軸方向に推し進められ、初めのうちは、アダプタスリーブ16を押しつけ、アダプタスリーブ16に対して内部リング18が回転しないようにシャフト12に摩擦係合させる。それから、ロックナット20を第1の方向へ回転させて、ロックナット20の雌ねじ60を内部リング18の雄ねじ58と螺合させ、アダプタスリーブ16上で内部リング18をロックナット20の方へ引っ張る。アダプタスリーブ16のテーパー面40および内部リング18のテーパー穴は一緒に押し込まれるので、スリーブ16は圧縮され、スリット端34、36によって定められるギャップ38は、スリーブ16がシャフト12と摩擦係合するにつれ狭くなる。ロックナット20は、アダプタスリーブ16をシャフト12に固定するため、従って、軸受体10をシャフト12に固定するため、十分な量のトルクがロックナット20に加えられるまで、回転される。好都合なことに、ロックナット20に取り付けた視覚表示装置80は、ロックナット20の締めすぎや、締めつけ状態を避けるため、十分な量のトルクがロックナット20に加えられると、ユーザに色を変えて表示する。
【0030】
ロックナット20が十分に締められるとすぐに視覚表示装置80によって表示されるので、ロックナット20は、ロックナット20を貫いて形成された放射状に延びるねじ貫通孔86と螺合する一対の位置決めねじ88を回転させることによって、アダプタスリーブ16に対して適切な所に固定される。位置決めねじ88は、ロックナット20をアダプタスリーブ16に対して固定し、かつ、ロックナット20がアダプタスリーブ16に対して回転しないように、アダプタスリーブ16の円周キー42に対してしっかり締められる。これによって、内部リング18がアダプタスリーブ16に対して軸方向に移動可能となり、アダプタスリーブ16をシャフト12からはずす、従って、軸受体10をシャフト12からはずすことが可能となる。
【0031】
軸受体10は、ロックナット20を第1の回転方向と逆の第2の回転方向に回転させることによって、シャフト12から取り外される。ロックナット20を第2の方向に回転することは、アダプタスリーブ16に対して内部リング18を軸方向に引っ張る力を弱め、アダプタスリーブ16のテーパー面40および内部リング18のテーパー穴の押し込みを弱める。内部リング18がアダプタスリーブ16に対して軸方向に引っ張られないと、アダプタスリーブ16はシャフト12上でその引きつける力を解放して広がる。
【0032】
図4から図7に示した別の実施形態では、軸受体110は、非ねじロックナット120を含むロックナット組立体によってアダプタスリーブ116上で付勢された内部リング118によってシャフト112上に押しつけられた軸方向に細長いアダプタスリーブ116を有する。内部リング118は、上述したように、テーパー穴を含む放射状内側に向かう面146を有する。内部リング118のテーパー穴はアダプタスリーブ116とスライドするように係合し、アダプタスリーブ116をシャフト112に押しつけている。この実施形態において、アダプタスリーブ116の外側に向かう面128は、放射状外側に開口する円周キー溝176を有し、そのキー溝は、ロックナット組立体の一部を構成する放射状内側に延びるキー142をはめ込む。
【0033】
図4から図6に開示した実施形態において、ロックナット組立体は、アダプタスリーブ116を取り囲むロックナット120と、内部リング118に固定されたロックナットアダプタ158と、固定位置決めねじ188と、複数の取付位置決めねじ186を備えている。ロックナット120は、固定位置決めねじ188によってアダプタスリーブ116に対して軸方向に固定され、ロックナット120を貫いて軸方向に延びる取付位置決めねじ186は、ロックナットアダプタ158と螺合し、内部リング118をアダプタスリーブ116上で引っ張っている。
【0034】
ロックナットアダプタ158は、内部リング118を取り囲み、そこを貫通して形成された放射状に延びるねじ穴102を有している。このねじ穴102は、放射状に延びる固定位置決めねじ104と螺合しており、この固定位置決めねじ104は内部リング118に突き当たり、内部リング118に対してロックナットアダプタ158を軸方向に固定している。都合の良いことに、固定位置決めねじ104によって、ロックナットアダプタ158を取り除いたり、あるいは、ロックナットアダプタ158を内部リングに容易に取り付けたりすることが可能である。内部リング118にロックナットアダプタ158を軸方向に取り付けるために、例えば、ロックナットアダプタ158を貫いて形成された放射状に延びる穴を介して内部リング118に形成された穴に軸方向に延びるピンを差し込む、ロックナットアダプタ158を内部リング118に溶接するなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、他の方法を用いても良い。
【0035】
3つの軸方向に延びる半円形のねじ穴190が、取付位置決めねじ186と螺合するように、ロックナットアダプタ158に形成されている。この半円形のねじ穴190は、ロックナットアダプタ158の外径の周りに均等に間隔をあけて配置されており、取付位置決めねじ186と螺合し、アダプタスリーブ116上で内部リング118を引っ張っている。3つの均等に間隔を開けて配置された半円形のねじ穴190が好ましいが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、どんな数の半円形のねじ穴190を使用しても良い。
【0036】
ロックナット120は、アダプタスリーブ116に対して軸方向に固定され、放射状内側部分192と放射状外側部分194を有する。放射状内側部分192は、放射状外側部分194より軸方向の長さが短く、この放射状外側部分は、内部リング118に固定されたロックナットアダプタ158の一部分に至るまで延びている。放射状内側に延びるキー142は、ロックナット120の放射状内側部分192から放射状外側に開口する円周キー溝176に放射状内側に延びており、ロックナット120をアダプタスリーブ116に対して軸方向に固定している。好都合なことに、外側に開口するキー溝176に嵌め込まれたこの内側に延びるキー142は、ロックナット120をアダプタスリーブ116に対し軸方向に固定するとともに、ロックナット120に形成された取付穴196を、ロックナットアダプタ158に形成された半円形のねじ穴190と一列に並べて、ロックナット120がアダプタスリーブ116の周りを回転するようにできる。
【0037】
円周上に3つ間隔をあけて配置された軸方向に延びる取付穴196は、ロックナット120の放射状内側部分192を貫通し、ロックナット120の放射状外側部分194の放射状内側に向かう面198に形成されている。取付穴196は、ロックナット120の放射状外側部分194を通しての延びが急に止まっており、そこには、取付位置決めねじ186がロックナットアダプタ158の半円形のねじ穴190と螺合する際、取付位置決めねじ186がロックナット120を貫通しないように止め具262が形成されている。図6に示したように、各取付穴196は、ロックナットアダプタ158に形成されている軸方向に延びる半円形のねじ穴190の一つと係合する取付位置決めねじ186の一つを受けている。取付穴196に螺合された取付位置決めねじ186を回転させると、アダプタスリーブ116上を内部リング118が引っ張られ、シャフト112にアダプタスリーブ116が摩擦により固定される、従ってシャフト112に軸受体110が固定される。
【0038】
3つの円周上に間隔をあけて配置された軸方向に延びる非取付ねじ穴204が、ロックナット120の放射状内側部分192を貫き、ロックナット120の放射状外側部分194の放射状内側に向かう面198に形成されている。各非取付ねじ穴204には、このねじ穴204に形成された雌ねじと螺合される取付位置決めねじ186の一つが嵌め込まれる。図7に示したように、非取付ねじ穴204は、位置決めねじ186がロックナットアダプタ158の端206と接するように、取付穴196から円周上に一定間隔をあけてロックナット120を貫いて形成されている。非取付ねじ穴204に螺合された取付位置決めねじ186を回転させることで、アダプタスリーブ116に内部リング118を押しつけるのを弱め、シャフト112からアダプタスリーブ116が外される、従って、シャフト112から軸受体110が外される。
【0039】
ロックナット120を貫いて形成された放射状に延びるねじ貫通孔208は、ロックナットの固定位置決めねじ188を嵌め込む。この位置決めねじ188は、アダプタスリーブ116に突き当たって、ロックナット120をアダプタスリーブ116に固定する。都合の良いことに、この固定位置決めねじ188は、一度、軸方向に延びる取付穴196がロックナットアダプタ158に形成された半円形のねじ穴190と一列に並べられると、ロックナット120をアダプタスリーブ116に対して固定する。
【0040】
図4から図7に開示した実施形態において、軸受体110は、アダプタスリーブ116を押しつけて、ロックナットアダプタ156およびロックナット120をアダプタスリーブ116上でスリップさせ、アダプタスリーブのキー溝176をロックナット120の円周キー142と係合させることによって、シャフト112に取り付けられている。その際、アダプタスリーブ116およびロックナット120はシャフト112上を軸方向に滑らされる。さらに、ローラー152および外部リング164と共に内部リング118は、テーパー穴が形成されている内部リング118の放射状内側に向かう面126が、アダプタスリーブ116の放射状外側に向かう面128のテーパー面140と一致(mate)するように、シャフト112上を軸方向に滑らされる。内部リング118は、ロックナットアダプタ158が内部リング118を取り囲むまで、アダプタスリーブ116に沿って軸方向に滑らされる。ロックナットアダプタのねじ穴102と螺合する固定位置決めねじ104は、回転されて内部リング118に突き当たり、ロックナットアダプタ158を内部リング118に対して軸方向に固定している。
【0041】
それから、ロックナット120を回転し、取付穴196の各々をロックナットアダプタ158に形成された半円形のねじ穴190の一つと一列に並べる。取付穴196と半円形のねじ穴190が一列に並べられると、軸方向に延びるロックナットの固定位置決めねじ212を回転してアダプタスリーブ116にロックナット120が固定される。その後、各取付位置決めねじ186は、取付穴196の一つに差し込まれ、一列に並べられた半円形のねじ穴190と螺合される。取付位置決めねじ186を回転させると、アダプタスリーブ116上を内部リング118が引っ張られ、アダプタスリーブ116がシャフト112に固定される、従って、軸受体110がシャフト116に固定される。好都合なことに、上述のような視覚表示装置は、取付位置決めねじ186が十分にしっかり締められ、アダプタスリーブ116がシャフト112に固定され、従って、軸受体110がシャフト112に固定されたことを判断するため、ロックナット120に取り付けることができる。
【0042】
軸受体110は、取付位置決めねじ186をねじ切りした半円形のねじ穴190から解き、取付穴196から取付位置決めねじ186を取り外すことで、シャフト112から取り外される。それから、各取付位置決めねじ186は、各取付位置決めねじ186がロックナットアダプタ158の端206と係合するまで、非取付ねじ穴204の一つに螺合される。その後、取付位置決めねじ186が回転され、アダプタスリーブ116から内部リング118を推し進める力が弱められる。内部リング118をアダプタスリーブ116から軸方向に推し進める力が弱められるにつれ、アダプタスリーブ116は、シャフト112への締め付けが解放されて広がり、シャフト112から軸受体110が解かれる。
【0043】
図8に示した他の実施形態では、楔式軸受体310が縦軸314を有するシャフト312に取り付けられている。この軸受体310は、シャフト312と摩擦係合するアダプタスリーブ316と、シャフト312に対してアダプタスリーブ316を押しつける内部リング318と、アダプタスリーブ316に対して軸方向に固定されたロックナット320を有し内部リング318と螺合するロックナット組立体と、を備えている。ロックナット320を第1の回転方向に回転させると、アダプタスリーブ316上で内部リング318が引っ張られ、軸受体310がシャフト312に取り付けられる。ロックナット320を第2の逆回転方向に回転させると、内部リング318がアダプタスリーブ316から押し戻され、軸受体310がシャフト312から取り外される。
【0044】
アダプタスリーブ316と内部リング318は、実質的に図1から図3に開示したアダプタ16と内部リング18と同様である。加えて、図1から図3に開示した実施形態と同様に、軸受体310は、内部リング318と外部リング364の間に設けられたローラー352を備えており、また、一対のポジティブロックキー354が内部リング318とアダプタスリーブ316の間に設けられ、ロックナット320によって内部リング318がアダプタスリーブ316上で軸方向に推し進められる際に、内部リング318がアダプタスリーブ316に対して回転するのを防いでいる。その上、一対の視覚表示装置380がロックナット329に取り付けられ、十分な量のトルクがロックナット320に加えられると、ロックナット320が過剰に締め付けられ、もしくは締め付け状態のままにされるのを避けるため、ユーザに表示する。
【0045】
ロックナット組立体の円筒型のロックナット320は、アダプタスリーブ316と内部リング318の両方と係合し、内部リング318をアダプタスリーブ316に対していずれかの軸方向に移動する。ロックナット320は、放射状内側に向かう面366と放射状外側に向かう面368を有し、その両方の面が、第1ロックナット端370から第2ロックナット端372までの間に広がっている。第1ロックナット端370近傍で放射状内側に向かう面366に形成された雌ねじ360は、内部リング318の放射状外側に向かう面344に形成された雄ねじ358と螺合する。内部リング318に対するロックナット320の回転によって、内部リング318に形成された雄ねじ358をロックナット320に形成された雌ねじ360と螺合し、内部リング318をアダプタスリーブ316に対していずれかの軸方向に移動させる。
【0046】
雌ねじ360に隣接したロックナット320の第2ロックナット端372近傍の放射状内側に向かう面366から放射状内側に延びる円周キー376は、アダプタスリーブ316の円周キー342と係合し、一方の軸方向にロックナット320をアダプタスリーブ316に対し軸方向に固定する。放射状内側に向かう面366に形成された円周上で放射状内側に開口するスロット356は、止め輪362を受ける。この止め輪362は、アダプタスリーブ316の円周キー342と係合し、逆の軸方向にロックナット320をアダプタスリーブ316に対して軸方向に固定する。アダプタスリーブ316の円周キー342を、ロックナット320の円周キー376と止め輪362の間に固定することで、アダプタスリーブ316に対してロックナット320を軸方向に固定することは、シャフト312上の軸受体310の構造を簡単にする。好都合なことに、止め輪362と円周キー376によって、ロックナット320を回転させ、内部リング318の雄ねじ358を、ロックナット320の雌ねじ360と螺合するようにできる。
【0047】
使用に際し、軸受体310は、ロックナット320をアダプタスリーブ316上で滑らせ、ロックナットキー376をアダプタスリーブ316の円周キー342と係合させることで、シャフト312に取り付けられる。その際、この止め輪362は、ロックナット320の円周上のスロット356にカッチと入り、ロックナット320をアダプタスリーブ316に軸方向に固定する。さらに、アダプタスリーブ316とロックナット320を、シャフト312上を軸方向に滑らす。図1から図3に示した軸受体10に関して上述したように、軸受体310の残りの部分はシャフト312上で組み立てられ、また、この軸受体310はシャフト312から取り外される。
【0048】
現在考え得る本発明の好ましい実施形態について示し説明したが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲により規定される本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な変更や改良を為し得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を組み込んだ軸受体を取り付けたシャフトの端面図である。
【図2】図1のライン2−2に沿った断面図である。
【図3】図2のライン3−3に沿った詳細断面図である。
【図4】本発明を組み込んだ軸受体を取り付けた別のシャフトの端面図である。
【図5】図4のライン5−5に沿った断面図である。
【図6】図5のライン6−6に沿った詳細図である。
【図7】非取付ねじ穴を示す図5の詳細図である。
【図8】本発明を組み込んだ軸受体を取り付けたもう一つ別のシャフトの断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10、110、310 軸受体
12、112、312 シャフト
14、314 軸
16、116、316 アダプタスリーブ
18、118、318 内部リング
20、120、320 ロックナット
22 アダプタスリーブの第1端
24 アダプタスリーブの第2端
26 アダプタスリーブの放射状内側に向かう面
28、128 アダプタスリーブの放射状外側に向かう面
30 シャフトの外側面
40、140 テーパー面
42、142、342 円周キー
44 内部リングの放射状外側に向かう面
46、146 内部リングの放射状内側に向かう面
48 内部リング第1端
50 内部リング第2端
52、152、352 ローラー
54、354 ポジティブロックキー
56 キー溝
58、358 雄ねじ
60、360 雌ねじ
64、164、364 外部リング
66、366 ロックナットの放射状内側に向かう面
68、368 ロックナットの放射状外側に向かう面
70、370 第1ロックナット端
72、372 第2ロックナット端
74 戻り止め
76、176 円周キー溝
78 軸方向に向かう面
80、380 視覚表示装置
82 光弾性の感光材料
84 偏向レンズ
86 貫通孔
88、186、188 位置決めねじ
90 シールリング
92 シール取付リング
94 キャビティ
102、190 ねじ穴
158 ロックナットアダプタ
362 止め輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパー面を含む放射状外側に向かう面を有し、シャフトの周りを取り囲む割筒型のアダプタスリーブと、
該アダプタスリーブを取り囲み、該アダプタスリーブの前記テーパー面と係合する放射状内側に向かう面を有する内部リングと、
前記アダプタスリーブと前記内部リングの間に設けられ、該内部リングを前記アダプタスリーブに対して回転自在に固定するポジティブロックキーと、
を備える楔式軸受体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−535590(P2009−535590A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509598(P2009−509598)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/009778
【国際公開番号】WO2007/133390
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(506224746)レックスノード インダストリーズ, エルエルシー (14)
【氏名又は名称原語表記】Rexnord Industries, LLC
【住所又は居所原語表記】4701 West Greenfield Avenue, Milwaukee, WI 53214−1498, U.S.A.
【Fターム(参考)】