説明

極低温システム中に材料を導入する装置及び方法

提供されるのは、エアロックチャンバ(20)と、エアロックチャンバに接続された第1の端及び極低温ヘリウム浴に接続された第2の端を有するサンプル経路(10)と、サンプル経路の中に入れられてエアロックと極低温浴(72)の間に配置され、極低温ヘリウム浴へのサンプルの通過を可能にする平衡装置(60)と、平衡装置の温度を制御するように平衡装置に結合された冷却ユニットと、を含む、サンプルを極低温システム(70)の中に導入するための装置及び方法である。コントローラによって実行されるとき、サンプルを極低温システム内に位置付けする命令を含む機械可読媒体がまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温システム中に材料を導入する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動的核分極(DNP)は、その他の向きに比べて1核スピンを過剰に発生させる技術である。この過剰は、極低温度で数千倍程度、室温で数十万倍程度になることがある。その他に比べて1核スピンのこの個体数増加は、磁気共鳴撮像装置(MRI)のような核磁気共鳴(NMR)システムにおいて測定の信号対雑音比の向上として認められる。
【0003】
DNPによって高濃度の分極を実現するためには、材料又はサンプルを極めて低い温度に、しばしば4ケルビンよりも低く、最適には1ケルビンの範囲に冷却しなければならない。この低温は、一般に、大量の液体ヘリウムの上の圧力を下げることによって達成される。ヘリウム浴の圧力が下がるにつれて、浴の温度は、液体ヘリウムの飽和曲線によって定められるように低下する。温かいサンプルをこの環境中に導入すると、既にその浴中に存在していた任意のサンプルの分極だけでなくヘリウム浴の温度にもかなりの影響を与える。その上、サンプルを冷却するプロセスは、結果としてヘリウム浴から液体ヘリウムの蒸発を生じさせて、ヘリウム浴を維持することができる持続時間及び処理可能なサンプルの数に影響を与える。
【0004】
ヘリウム浴の圧力を下げる従来の手段は、1以上の機械ポンプを使用することである。このポンプが、そのポンピングプロセスの結果としてヘリウムを周囲環境中に放出し、寒剤を再使用することを困難にかつ高価にしている。この浴中のヘリウムの量は、ポンピングが開始される前に一杯に満たされて静的であるか、ニードルバルブのような調節された通路を介してポンプ領域に接続された第2のヘリウムタンクを使用するために動的であるかのどちらかである。静的システムは、しばしば、ヘリウム浴のサイズの制約のために稼動時間が限られている。動的システムは、より順応性があるが、極低温環境内に機械部品を含み、そのデバイスの頑丈さが限られる可能性がある。
【0005】
寒剤(液体ヘリウム)量を解き放つことなしに1ケルビンの温度を発生させるように設計された密閉サイクル極低温システムで、ソープションポンプが使用されることがある。このソープションポンプは、低温で気体ヘリウムを吸収する炭ベースの吸着剤を含み、したがって大量の液体ヘリウムの圧力を下げる手段として作用する。炭の温度が上昇するとき、気体ヘリウムがソープションポンプから解放されて、液体ヘリウム浴のためのヘリウム源として作用する。このソープションポンプは、最初に液体ヘリウムを凝縮し、次に、低下した温度を発生させながらヘリウムを再吸収する周期的なやり方で動作することができる。この周期的な動作方法では、全寒剤量は一定のままである。このシステムが寒剤量を失うことなく動作するということは、寒剤購入を無くすることによるコスト節約だけでなく頻繁な寒剤移動の必要を無くすることによっても、動作の容易さにとって大いにためになる。
【0006】
しかし、このシステムの限界は、ソープションポンプサイクルの凝縮部分において、発生する液体ヘリウムの量が、炭の量と、炭の中に詰め込まれた気体ヘリウムの量と、凝縮されたヘリウムが入る容器の物理的サイズなどのいくつかの幾何学的要件によって制限されることである。液体ヘリウムの量がこのように限られるために、ヘリウム浴に向けられる熱量が、一熱サイクル中に冷却し分極させることができる材料の量又はサンプルの数に直接影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2008/242974号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液体ヘリウム浴から遠く離して導入された材料から熱を冷却ユニットに向けて、システムの熱的性能に与える影響を最小限に抑えて極低温システム中に材料を導入する装置及び方法を提供することによって、本発明は、前述の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、サンプルを極低温システム中に導入するための装置が提供される。本装置は、エアロックチャンバと、エアロックチャンバに流体連通するように接続された第1の端及び極低温ヘリウム浴に流体連通するように接続された第2の端を有するサンプル経路と、サンプル経路の中に入れられてエアロックと極低温ヘリウム浴の間に配置され、サンプルが極低温ヘリウム浴に通過することを可能にする平衡装置と、平衡装置の温度を制御するように平衡装置に結合された冷却ユニットと、を備えている。
【0010】
他の実施形態では、サンプルを極低温システム中に導入する方法が提供され、本方法は、サンプルをエアロックチャンバの中に搬入するステップと、エアロックチャンバを排気するステップと、サンプルをエアロックチャンバからサンプル経路の中に入れるステップとを含む。本方法は、また、サンプルを下げてサンプル経路内に配置された平衡装置の中に入れるステップと、熱的結合を介して平衡装置に接続された冷却ユニットにサンプルから熱を伝導させるステップと、サンプルを平衡装置からサンプル経路のより低い区間に入れ、さらに極低温浴の中に入れるステップと、を含む。
【0011】
他の実施形態では、コントローラによって実行されたときサンプルを極低温システム内に位置付けさせる命令を含む機械可読媒体が提供される。
【0012】
図面は本発明を実施するために現在考えられる実施形態を図示している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】極低温システム内のサンプル経路を示す模式的な説明図である。
【図2】一方向サンプル搬入手順を使用する極低温ヘリウム浴及び冷却ユニットの温度プロフィールを示す図である。
【図3】双方向サンプル搬入手順を使用する極低温ヘリウム浴及び冷却ユニットの温度プロフィールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明は、例示であって、本発明の応用及び使用の発明を限定する意図でない。さらに、本発明の上記の背景又は図面についての以下の詳細な説明に示されるどんな理論によっても発明は制限されない。
【0015】
本明細書で提供されるのは、サンプルを周囲温度から極低温システム中に導入するための方法及び装置である。極低温システムは、医用画像、電力発生及び科学研究の用途で使用されることが多い。極低温システムは、また、サンプルを過分極化するための装置でも使用され、共有米国特許出願第11/692,642号及び米国特許出願第11/766,881号に記載されており、これらの出願は、これによって、参照して組み込まれる。
【0016】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態では、細長いサンプル経路10を通して周囲温度から極低温システム70中に材料を導入するための装置1が提供される。装置1は、望ましくは、想像線5によって表された動的核分極過分極システム中に組み込まれる。サンプル経路10は、一方の端でエアロックチャンバ20と流体連通し他方の端で極低温チャンバ70と流体連通して延び、冷却ユニット50に熱的につながっている。サンプル経路10の寸法及び形状は、用途に基づいて変えることができる。サンプル経路10は、一連の別個のセグメントからなることがある。一実施形態では、サンプル経路は、平衡装置60の相対する端に位置付けされた第1及び第2の薄肉管12及び14を備えている。平衡装置60は、銅などの高熱伝導性材料で構成された管状構造であり、冷却ユニット50に熱的につながれている。2つの薄肉管12及び14は、鋼のような低熱伝導性材料で構成されることがある。これらの管12及び14は、また、伝導性熱負荷を減らすように波形がつけられることもある。放射加熱を最小限にするために、サンプル経路は、第1の管12の入口から第2の管14の出口に直接見通し線が無いようにサンプル経路10の相対する端で管12と14を幾何学的にずらすように構成されている。そのようなずれは、2つの管12と14を互いに平行であるが平衡装置60に対して横方向にずらして固定することによって設けることができる。管12及び14の直径は、熱負荷を制限するために最小にされるが、サンプルを通過させるのに十分な直径であることがある。
【0017】
図1に示されるように、装置1は、サンプル経路10を通して周囲温度及び圧力から極低温システム70中に材料を導入することができるようにする。この通路は、サンプルを周囲圧力から極低温システムのより低い圧力環境の中に移すようにするエアロック20と、このシステムの熱負荷を減少させるために複数のサンプルを共通経路に向けて入れるファネル30と、ファネル30と極低温ヘリウム浴72の間に延びる細長い管40とから成る。ファネル30は、エアロックチャンバ20と流体連通した円錐領域32と、第1の管12と流体連通した細くなった領域34とを含む。管40は、第1及び第2の管12及び14を含むように示されているが、本発明は、管40が平衡装置60を通り抜けて延びる単一の管で形成されることも予想している。したがって、サンプル経路10の1つの区間は、平衡装置60として機能し、銅などの高熱伝導率の材料で作られている。平衡装置60は、冷却ユニット50に熱的につながっており、冷却ユニット50は一般に10ケルビンよりも低い温度で動作する。平衡装置60及び冷却ユニット50は、サンプルを極低温ヘリウム浴72の中に導入する前に、周囲条件で導入されたサンプルが極低温システム70と平衡を保つことができるようにする。冷却ユニット50は、貯蔵液体又は固体寒剤冷却システムなどの冷凍ユニット又は連続流クライオスタットであることがある。冷却ユニット50は、熱冷凍連結金具80によって平衡装置60に接続されている。冷凍連結金具80は、銅などの高熱伝導性材料から構成されることがある。ある実施形態では、冷凍連結金具80は、編組銅であることがある。
【0018】
複数のサンプルを極低温ヘリウム浴72に入れることになっている場合には、共通経路を使用することができる。そのような共通経路は、第1の鋼管12の入口のファネル30を使用して、複数のサンプルを極低温ヘリウム浴72に向けて送る。サンプル経路10の1つの例は、内径0.75インチの銅管に接続された2本の内径0.75インチの波形管である。第1の波形鋼管12は、4個以上のサンプルをヘリウム浴に向けて同時に送ることができるようにするファネル30に取り付けられている。これらのサンプルは、外径0.500インチのバルブが遠位端に位置付けされた外径0.125インチの管である。サンプル経路の内径は、1個のサンプルバルブと3個のサンプル管を同時に収容できるだけ十分に大きい。この構成によって、4個のサンプルが同時にヘリウム浴72中に存在することができるが、与えられた時点にたった1つのサンプルだけを内径0.75インチのサンプル経路を通して移動させることができることが決定される。この配列で使用される冷却ユニット50は、2段SumitomoSRDK−415D極低温冷却システムであることがある。他の実施形態では、冷却ユニット50は、任意のGifford−McMahon(GM)型cyrocoolerのような、ほぼ4ケルビンの温度で動作する極低温冷却システムであることがある。
【0019】
最初に、周囲空気が除去されてヘリウムのような極低温ガスに置換されたエアロック20中に、1以上のサンプルを搬入することができる。このエアロック中の圧力は下げられて、極低温システム70内の圧力といっそうぴったり釣り合っている。圧力を維持するために動的シール又はバッフルを使用することができる。1以上のサンプルをエアロックチャンバ20から下げてサンプル経路10の近位端に入れ、平衡装置60に向けて送る。このサンプルは平衡装置60の中に位置付けされ、そこで、平衡装置60の高伝導性材料と接触することによって、サンプルから冷却ユニットに熱が伝導することができるようになる。
【0020】
サンプル及び平衡装置60の表面の欠陥が、伝導によって伝達される熱の量を制限することがあるので、サンプルから平衡装置60に熱を伝達するために対流冷却も使用することができる。対流に適した環境を生じさせるために、ある限られた量の熱が極低温ヘリウム浴72に向けて送られ、結果としてサンプル経路10内に圧力の適度な上昇を生じさせることができる。
【0021】
一実施形態では、極低温浴72は、液体ヘリウムを含む。この圧力上昇の大きさは液体ヘリウムの温度に直接関係するので、浴中に存在する可能性のある他のサンプルの処理に影響を与えないために、この圧力上昇は一般に小さい。液体ヘリウム飽和蒸気圧力関係に基づいてヘリウム浴の温度をそれぞれ0.90及び0.95ケルビンにただ上昇させながら、サンプル経路内に0.055及び0.096ミリバールの圧力を実現することができる。実際には、この圧力を0.1ミリバールよりも低く維持することが望ましい。しかし、この最高温度逸脱は、急速なサンプル導入の必要によってバランスが保たれている。より高い圧力、したがってより高い温度は、温かいサンプルから極低温冷却器への熱流を高め、したがってサンプル導入を加速できるようにするが、極低温ヘリウム浴72内の温度変動の増加を犠牲にしている。
【0022】
サンプルをシステムの中に導入し、連続するステップで平衡装置60より低いところにサンプルを位置付けすることによって、対流冷却を利用することができ、その場合に、各ステップは、サンプルを極低温ヘリウム浴にいっそう近づける。サンプルの各再位置付けの後で、時間遅延のために、再位置付けプロセス中にサンプル経路のスペースに集められたヘリウムガスが対流によって熱をサンプルから平衡装置60に伝達することができるようになる。一実施形態では、このサンプル導入手順に関係した値には、移動間に5分の遅延がある3つの5センチメートルの移動(平衡装置より5、10及び15cm低いところに)がある。再位置付けステップの数、位置及び持続時間は、システムの動作条件及び形状に基づいて実験的に決定し、調節することができる。
【0023】
一実施形態では、サンプルから平衡装置60への伝導及び対流熱伝達を制御するやり方でこのサンプル経路10内にサンプルを位置付けするために、位置付けシステム55が使用されることがある。位置付けシステムは、サンプル搬送デバイスの目盛りマークに基づいた手操作の動きであることがある。代わりに、サンプル経路内のサンプルの位置を正確に制御するために、帰還制御を有するロボットシステムが使用されることがある。そのようなロボットシステムは、サンプル搬送デバイスをサンプル経路の中に送り込むピッチホイールで作られることがある。ピッチホイールは、サンプルの滑りを測定する遊動輪を使用することによってサンプル位置付けに関する帰還を与えることができる。
【0024】
最終再位置付けステップの後で、ヘリウム浴温度への影響を最小限に抑えて極低温ヘリウム浴の中にサンプルを導入することができる。この方法は、連続するステップの間ずっとサンプルと平衡装置の間の距離を制御することによってサンプルの温度調節を行う方法を提供し、この方法は、同時に極低温ヘリウム浴に熱伝達を向けるようにしながら平衡装置への熱の伝達を制限する。
【0025】
サンプル導入方法の一実施形態では、ヘリウムガスを集めることによってサンプル経路10内の圧力を高める短時間の間、サンプルは、平衡装置60より低いところ、すなわち平衡装置60と極低温ヘリウム浴70の間に位置付けされ、それから、平衡装置に戻されてサンプルから極低温ヘリウム浴72ではなく平衡装置への熱伝達を高めることができる。サンプル経路内のこの圧力上昇を発生させるために、サンプルは、連続してより低い位置に下げられ、その後で、熱伝達のために平衡装置に戻されることがある。例えば、サンプル導入手順は、6つのステップを含むことがあり、サンプルは、連続して平衡装置より3.75、5.00、5.65、5.63、5.75及び10cm低いところに5秒間位置付けされ、その後で、2分の遅延の間平衡装置に戻されて熱伝達を可能にする。これらのステップの数、位置、及び持続時間は、実験的に決定され、形状及び条件に基づいて変えることができる。
【0026】
サンプルの下げ及び再位置付けで連続するステップを使用することの有利点は、サンプルに関連する熱負荷が極低温浴の液体量ではなく冷却ユニットにほとんど向けられることである。サンプルの導入に起因する、極低温液体量の温度に及ぼす影響は、最小限になる。
【0027】
他の実施形態で、本発明は、平衡ステップ中に、サンプル経路内に極低温浴冷却剤のガス圧力の適度な上昇をもたらす方法を提供する。この圧力上昇は、温かいサンプルを極低温ヘリウム浴72のヘッドスペース中に導入することによって実現することができる。温かいサンプルから冷却されたヘリウム浴72への伝導、対流、及び放射加熱の組合せによって、局部的に圧力が上昇し、したがって周囲環境への対流による熱伝達が増大することになる。対流熱の一部は、サンプル経路10の高伝導部に向けられて、熱漏れ80を介して冷却ユニット50に伝達される。圧力上昇の大きさ及びサンプル経路10のこの高伝導部と温かいサンプルとの近さによって、極低温ヘリウム浴72に向けられる熱に対する、冷却ユニット50に向けられる熱の比率が決定される。冷却ユニット50への熱の流れは、圧力上昇後に温かいサンプルをサンプル経路10の平衡装置領域内に再位置付けすることによって増やすことができる。サンプルが十分に冷却されるまでこのプロセスを繰り返して、極低温ヘリウム浴72の特性に与える影響を最小限に抑えて極低温ヘリウム浴72にサンプルを導入することができる。
【0028】
代わりに、極低温ヘリウム浴72に限られた別個の熱源75を使用してサンプル経路内の圧力を高めることができる。この方式では、圧力上昇を生じさせるためにサンプルを再位置付けする必要が減るかもしれないが、この方式は、追加の熱源をシステム中に導入し、したがって寿命期間のヘリウム浴温度を含めて他のシステム特性にことによると影響を与える可能性がある。
【0029】
連続するステップを使用することによって、サンプル搬入に関連する熱が極低温ヘリウム浴中の極低温液体の量に及ぼす影響を最小限にすることができる。このことで、極低温システム中のソープションポンプの一サイクル中に処理できるサンプルの最大数を増すことができる。対流冷却と伝導冷却の組合せによって、また、伝導を高めるようにサンプルに圧力を加える平衡装置構成要素などの、極低温システム内の機械部品の物理的な動きを必要とせずに、サンプルを急速冷却できるようになる。
【0030】
一実施形態では、極低温システムに結合されたコントローラによって実行される命令を含む機械読取り可能媒体が使用されることがある。機械読取り可能媒体は、サンプルの搬入及びサンプル経路中のサンプルの位置を制御し、さらに極低温システム内の温度及び圧力を監視し制御するための手段を提供することができる。
【0031】
実施例
平衡装置60を動作させる方法は、サンプルを極低温システム中に繰り返し導入しさらに消費された液体ヘリウムの量だけでなく極低温ヘリウム浴72の温度を測定することによって開発した。極低温ヘリウム浴の温度は、ヘリウム浴容器に取り付けられた酸化ルテニウム温度センサを用いて監視した。各サンプルで消費された液体ヘリウムの量は、(1)知られた量の液体ヘリウムが寄生熱負荷の結果として浴72の極低温容器中に残っている期間を決定し、さらに(2)知られた数のサンプルを導入したことによるこの期間の減少を決定することによって、計算した。
【0032】
実施例1:一方向サンプル搬入手順
グリセリンの2.0gサンプルは、極低温システム内蔵装置1のエアロック20中に導入する前に、77Kに予め冷却した。このサンプルの温度は、その搬入プロセス中に上昇するが、サンプル経路10に入る前のサンプルの厳密な温度は分からない。このサンプルは、平衡装置60まで下げられ、そこに6分間留まることができた。次に、サンプルは、平衡装置60より5センチメートル低い位置まで下げられ、6分間留まることができた。次に、サンプルは、平衡装置60より10センチメートル低いところに位置付けされ、6分間留まることができた。最後に、サンプルは、極低温ヘリウム浴72の中に入れた。サンプル搬入中の極低温ヘリウム浴72の温度及び冷却ユニット50の温度の例が図2に示されている。
【0033】
実施例2:双方向サンプル搬入手順
ピルビン酸の0.8gサンプルは、極低温システム内蔵装置1中に導入する前に室温(通常293K)に温めた。このサンプルは、平衡装置60まで下げられ、そこに3分間留まった。次に、サンプルは、平衡装置60より3.75cm低いところに下げられ、そこに5秒間留まり、その後で平衡装置60に戻り、そこに2分間留まった。サンプルを平衡装置60から下げたり平衡装置60まで上げたりするこの手順を、連続するステップで平衡装置より5.00、5.56、5.63、及び5.75cm低い深さについて繰り返された。次に、サンプルは、平衡装置60より10cm低いところに下げられ、そこに2分間留まることができた。最後に、サンプルは、極低温ヘリウム浴72の中に入れた。サンプル搬入中の極低温ヘリウム浴72の温度及び冷却ユニット50の温度の例が図3に示されている。この方法を使用して、22cc/サンプルの消費されたヘリウムに対応してサンプルの熱のほぼ4%が極低温ヘリウム浴に向けられた。
【0034】
本発明は、本発明の精神又は本質的な特徴から逸脱することなしに他の特定の形で具現される可能性がある。したがって、前述の実施形態は、全ての点で、本明細書で説明された本発明を限定するものでなく例示するものであると考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内に入る全ての変化物は特許請求の範囲に含まれる意図である。
【符号の説明】
【0035】
1 極低温システム中に材料を導入するための装置(極低温システム内蔵装置)
5 想像線
10 サンプル経路
12 第1の薄肉管
14 第2の薄肉管
20 エアロックチャンバ
30 ファネル
32 円錐領域
34 細くなった領域
40 管
50 冷却ユニット
55 位置付けシステム
60 平衡装置
70 極低温システム
72 極低温ヘリウム浴
75 熱源
80 熱冷凍連結金具(熱漏れ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを極低温システムの中に導入するための装置であって、
エアロックチャンバと、
極低温ヘリウム浴と、
前記エアロックチャンバに流体連通して接続された第1の端と前記極低温ヘリウム浴に流体連通して接続された第2の端との間に延びるサンプル経路と
を備え、
前記サンプル経路が、さらに、
前記エアロックと前記極低温ヘリウム浴の間に配置され、前記極低温ヘリウム浴へのサンプルの通過を可能にする平衡装置と、
前記平衡装置の温度を制御するように前記平衡装置に結合された冷却ユニットと
を備えてなる装置。
【請求項2】
前記エアロックチャンバが、前記極低温チャンバ中に真空を維持しながら前記極低温チャンバの中にサンプルを入れることを可能にする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
動的シール又はバッフルを備えてなる、請求項2記載のエアロックチャンバ。
【請求項4】
前記冷却ユニットが、冷凍ユニット、貯蔵液体又は固体極低温冷却システム又は連続流クライオスタットである、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記冷却ユニットが、10ケルビンより低い温度で熱的性能を有し、熱冷凍連結金具によって前記平衡装置に接続されてなる、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記熱冷凍連結金具が、高熱伝導性材料である、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記高熱伝導性材料が銅である、請求項8記載の装置。
【請求項8】
前記サンプル経路が、各々低熱伝導率を有する第1及び第2の管状構造をさらに備えてなる、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記平衡装置が、高熱伝導性材料で構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記高熱伝導性材料が銅である、請求項10記載の装置。
【請求項11】
前記エアロックチャンバと前記サンプル経路の間に配置されたファネルをさらに備え、前記ファネルが、前記エアロックチャンバと流体連通した円錐状領域及び前記第1の管状構造と流体連通した細い領域を備えてなる、請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記サンプル経路中の前記サンプルの位置を制御するための位置付けシステムをさらに備えてなる、請求項1記載の装置。
【請求項13】
前記位置付けシステムが、前記サンプル経路内の前記サンプルの位置を制御するための帰還制御を有するロボットシステムを備えてなる、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記サンプル経路内の圧力を高めるように前記極低温ヘリウム浴に結合された熱源をさらに備えてなる、請求項1記載の装置。
【請求項15】
前記極低温システムが、過分極装置システムの一部である、請求項1記載の装置。
【請求項16】
サンプルを極低温システムの中に導入するための方法であって、
前記サンプルをエアロックチャンバの中に搬入し、
前記エアロックチャンバを排気し、
前記サンプルを前記エアロックチャンバからサンプル経路の中に入れ、
前記サンプルを下げて、前記サンプル経路内に配置された平衡装置の中に入れ、
熱的結合を介して前記平衡装置に接続された冷却ユニットに前記サンプルから熱を伝導させ、
前記サンプルを前記平衡装置から前記サンプル経路のより低い区間に入れ、さらに極低温ヘリウム浴の中に入れること
を含んでなる方法。
【請求項17】
前記下げるステップが、連続するステップで前記サンプルを前記平衡装置から下げて前記極低温ヘリウム浴の中に入れることを含み、各ステップが、前記サンプル経路中の前記サンプルと前記極低温ヘリウム浴の間の距離を減少させる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記下げるステップが、各連続するステップの後で前記サンプルを前記平衡装置の中に引っ込めることをさらに含んでなる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記極低温システムが、過分極装置システムの一部である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
コントローラによって実行されるとき前記極低温システムに請求項16記載の方法を行わせる命令を含んでなる機械可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−522611(P2012−522611A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503777(P2012−503777)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/030044
【国際公開番号】WO2010/117983
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】