説明

極低温剤容器を断熱するシステムおよび方法

【課題】MRIシステム用の冷却および断熱システムを使用して、超電導マグネットコイルの過熱の可能性を最小限にすることを提供する。
【解決手段】1つのシステムは、第1の複数の反射体層と第1の複数の反射体層における隣接する層の間の非変形スペーサ層とを有する断熱材50を含む。断熱材50は、第2の複数の反射体層と第2の複数の反射体層における隣接する層の間の変形スペーサ層とをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題は、概して、磁気共鳴撮像(MRI)システム用等、極低温に冷却された超伝導マグネットに関し、より詳細には、超電導マグネット用の極低温剤容器または熱シールドを断熱するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導コイルMRIシステムでは、超電導マグネットを形成するコイルは、極低温剤容器、通常はヘリウム容器(クライオスタットとも呼ばれる)を用いて極低温に冷却される。MRIシステムの一定の動作状態または移送の間、発生する熱が、コイルの局所領域を過熱し、常伝導領域を生成する可能性があり、そこでは、導体が超伝導特性を喪失し、常伝導抵抗状態に移る。常伝導領域は、ジュール熱および熱伝導のためにコイルを通して広がり、それによりクエンチ事象がもたらされる。クエンチには、マグネットコイルが浸漬されている極低温槽から漏れるヘリウムの急速なボイルオフが伴う。クエンチ毎にマグネットの再充填および再ランピングがなされるため、クエンチは費用がかかりかつ時間がかかる事象である。したがって、MRIシステム用の冷却および断熱システムを使用して、超電導マグネットコイルの過熱の可能性が最小限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,270,295号明細書
【発明の概要】
【0004】
たとえば、これらのMRIシステムのうちのいくつかの極低温冷却システムは、システム動作中に超伝導マグネットコイルを連続的に冷却するように蒸発した極低温剤を再凝縮するように動作する、コールドヘッドスリーブ内のコールドヘッド等、クライオクーラを含む。さらに、外部熱放射または他の形態のヘリウム容器内外への熱伝達等から、ヘリウムを断熱するために、ヘリウム容器の周辺に断熱材を設けることができる。しかしながら、断熱材を提供するかまたはこれらの従来の断熱材の断熱特性を増大させるために、追加の熱層または費用のかかる変更が必要である。
【0005】
さまざまな実施形態によれば、第1の複数の反射体層と、第1の複数の反射体層における隣接する層の間の非変形スペーサ層とを有する、超電導マグネット用の断熱材が提供される。断熱材は、第2の複数の反射体層と、第2の複数の反射体層における隣接する層の間の変形スペーサ層とをさらに有する。
【0006】
他の実施形態によれば、内部に液体ヘリウムがある容器と容器内の超伝導マグネットとを含む、磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムが提供される。MRIマグネットシステムはまた、ヘリウム容器を包囲する熱シールドも含む。MRIマグネットシステムはまた、容器または熱シールドのうちの少なくとも一方の少なくとも一部を包囲する断熱材も含み、断熱材は、隣接するもの同士の間に非変形スペーサ層がある複数の反射体層と、隣接するもの同士の間に変形スペーサ層がある複数の反射体層とを備えている。
【0007】
さらに他の実施形態では、磁気共鳴撮像システム(MRI)用の断熱材を形成する方法が提供される。本方法は、複数のスペーサ層を変形させるステップと、第1の複数の反射体層をそれらの間の非変形スペーサ層とともに積層するステップとを含む。本方法はまた、第2の複数の反射体層をそれらの間の変形スペーサ層とともに積層するステップを含む。本方法は、第1複数の反射体層および第2の複数の反射体層により多層断熱材を形成するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】さまざまな実施形態によって形成される断熱を示す磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムの簡易ブロック図である。
【図2】さまざまな実施形態によって形成される極低温剤容器用の断熱構成を示す図である。
【図3】一実施形態によって形成される断熱構成を示す簡易図である。
【図4】さまざまな実施形態によって形成される断熱材の一部のブロック図である。
【図5】一実施形態によって形成されるスペーサ層の立面図である。
【図6】図5のスペーサ層の斜視図である。
【図7】別の実施形態によって形成されるスペーサ層の立面図である。
【図8】図7のスペーサ層の斜視図である。
【図9】別の実施形態によって形成されるスペーサ層の立面図である。
【図10】図9のスペーサ層の斜視図である。
【図11】一実施形態によって形成される多層断熱材の概略図である。
【図12】MRIシステム内に一実施形態によって形成される多層断熱材の概略図である。
【図13】さまざまな実施形態による断熱材を形成する方法のフローチャートである。
【図14】さまざまな実施形態によって形成される断熱を実施することができるMRIシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述した要約、およびいくつかの実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面とともに読む場合により理解されるであろう。図面がさまざまな実施形態の機能ブロックの図を例示する程度まで、機能ブロックは、必ずしもハードウェア間の区分を示していない。したがって、たとえば、機能ブロックのうちの1つまたは複数を、単一のハードウェアかまたは複数のハードウェアで実施してもよい。さまざまな実施形態は、図面に示す構成および手段に限定されないことが理解されるべきである。
【0010】
本明細書で用いる、単数形で列挙されかつ「1つの(a、an)」という語が先行する要素またはステップは、複数の前記要素またはステップを排除することが明示的に述べられていない限り、このように排除するものとして理解されるべきではない。さらに、「一実施形態」と言及する場合、それは、列挙されている特徴を同様に組み込む追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されるようには意図されていない。さらに、反対の意味であるように明示的に述べられていない限り、特定の特性を有する1つの要素または複数の要素を「備えている」かまたは「有している」実施形態は、その特性を有していないさらなるこうした要素を含むことができる。
【0011】
さまざまな実施形態は、磁気共鳴撮像(MRI)システムを断熱し、特にMRIシステムの極低温剤容器を断熱するシステムおよび方法を提供する。特に、極低温剤容器内のMRIマグネットを断熱するために、反射体層およびスペーサ層を有する極低温剤容器用の多層断熱材(MLI)を設けることができる。さまざまな実施形態では、スペーサ層のうちの1つまたは複数を、略平滑または平面シート形態等から変形させる(たとえば、折ひだを付けるか、エンボス加工するかまたはしわをよせる)。本明細書で用いるスペーサ層を変形させるとは、スペーサ層の形状、テクスチャ等を変化させること等、あらゆるタイプの変形を指す。
【0012】
少なくとも1つの実施形態を実施することにより、MRI構造の隣接する層の間の厚み(loft)または伝導距離が増大し、スペーサと反射体層との間の接触表面積もまた低減し、それにより伝導熱漏れが低下する。さらに、層の数が低減することを用いて、同じレベルの熱漏れ性能を提供することも可能である。
【0013】
図1および図2は、さまざまな実施形態によって形成されるMLIを有する実施形態を示す。特に、図1および図2は、1つまたは複数の超伝導マグネットを含む、MRIマグネットシステム20等の超伝導マグネットシステムを示す簡易ブロック図である。同様の数字は図面を通して同様の部分を表すことが留意されるべきである。さらに、さまざまな実施形態の相対位置は、例示を容易にするために示されており、必ずしも、さまざまな実施形態においてさまざまな構成要素の位置決めまたは向きを表すものではないことが留意されるべきである。
【0014】
MRIマグネットシステム20は、液体ヘリウム等の液体極低温剤を保持する容器22を含む。したがって、この実施形態では、容器22はヘリウム容器であり、それはヘリウム圧力容器と呼ぶ場合もある。容器22は、真空容器24によって包囲され、その中にかつ/またはそれらの間に熱シールド26を有している。熱シールド26は、たとえば断熱放射熱シールドであってもよい。さまざまな実施形態ではクライオクーラであるコールドヘッド28が、コールドヘッドスリーブ30(たとえばハウジング)内において真空容器24に延在している。したがって、コールドヘッド28の低温端を、真空容器24内の真空に影響を与えることなくコールドヘッドスリーブ30内に配置することができる。コールドヘッド28は、1つまたは複数のフランジおよびボルト等の任意の適切な手段、または本技術分野において既知である他の手段を用いて、コールドヘッドスリーブ30内に挿入され(または受け入れられ)固定されている。さらに、真空容器24の外側に、コールドヘッド28のモータ32が設けられている。
【0015】
図2に示すように、さまざまな実施形態におけるコールドヘッドスリーブ30は、ヘリウム容器22内に延在することができる部分を有するコールドヘッドスリーブ30の下端部に再凝縮器36を有している。再凝縮器36は、ヘリウム容器22からのボイルオフヘリウムガスを再凝縮する。再凝縮器36はまた、1つまたは複数の通路38を介してヘリウム容器22にも結合されている。たとえば、ボイルオフヘリウムガスをヘリウム容器22から再凝縮器36に移送するために、ヘリウム容器22から再凝縮器36に通路38を設けてもよく、再凝縮器36は、その後、再凝縮されたヘリウム液体をヘリウム容器22にその開放端部34において戻すことができる。
【0016】
さまざまな実施形態において超伝導マグネットであるマグネット46が、ヘリウム容器22の内側に設けられ、本明細書において後により詳細に説明するようにMRI画像データを取得するようにMRIシステムの動作中に制御される。さらに、MRIシステムの動作中、MRIマグネットシステム20のヘリウム容器22内の液体ヘリウムは、既知であるようにコイルアセンブリとして構成することができる超伝導マグネット46を冷却する。超伝導マグネット46を、たとえば4.2ケルビン(K)等、超伝導温度まで冷却することができる。冷却プロセスは、再凝縮器36によって、ボイルオフヘリウムガスのヘリウム容器22に戻される液体への再凝縮を含むことができる。ボイルオフヘリウムはまた、ヘリウム容器22を熱シールド26に接続する1つまたは複数の任意のガス通路(図示せず)も通過することができることも留意されるべきである。
【0017】
さまざまな実施形態では、ヘリウム容器22の周囲に、一実施形態ではMLI構造である断熱材50が設けられている。たとえば、MLI構造は、後述するように複数の反射体層および複数のスペーサ層を有することができる。
【0018】
さまざまな実施形態では、断熱材50は、ヘリウム容器22および/または熱シールド26のすべてまたは一部を包囲する(単に例示のために図1および図2ではヘリウム容器22および熱シールド26の両方を包囲しているように示す)断熱ブランケットを画定している。たとえば、断熱材50は、ヘリウム容器22(内部に液体ヘリウム56がある)の円周方向に延在することができ、ヘリウム容器22は、配置の簡易図を示す図3に示すように内径面52および外径面54を包囲することを含むことができる。しかしながら、断熱材50は、ヘリウム容器22の表面の部分のみに沿って、たとえばその端部には沿わず側部に沿って延在することができる。他の実施形態では、断熱材50は、熱シールド26の一部のみまたは熱シールド26のみを包囲する断熱ブランケットを画定している。さらに他の実施形態では、断熱材50は、ヘリウム容器22および熱シールド26を包囲する断熱ブラケット(たとえば、2つのブランケットであってもよくまたは単一ブランケット構造であってもよい)を画定している。断熱材50を、任意の適切な方法でヘリウム容器22、熱シールド26または両方を包囲するように設けるかまたは配置することができる。
【0019】
断熱材50は、図4に示すような複数の層を有し、そこでは、断熱材50の一部は、少なくとも1つの変形スペーサ層62を有し、その両側に少なくとも1つの反射体層60が設けられている。したがって、スペーサ層(複数可)62は、隣接する層等、2つの反射体層60の間に挟装されるかまたは配置されている。隣接する層は必ずしも当接する層ではないことが留意されるべきである。したがって、スペーサ層62は、2つの反射体層60の間に配置され、1つの反射体層60から次の反射体層60まで(または2つの反射体層60の間の距離未満で)その間に延在することができる。反射体層60およびスペーサ層62を、ヘリウム容器22および/または熱シールド26内外の熱伝達を低減することを含むことができる、ヘリウム容器22および/または熱シールド26の断熱を行う任意の適切な材料から形成することができる。後により詳細に説明するように、さまざまな実施形態における層の構成および配置は、断熱材50の低温端、すなわち、ヘリウム容器22および/または熱シールド26の表面に近い方の端部と、断熱材50の高温端、すなわち、ヘリウム容器22および/または熱シールド26の表面から遠い方の端部とにおいて、異なるように設けられている。
【0020】
単に例示の目的で、反射体層60を、ダブルアルミナイズドマイラー(Double−Aluminized Mylar)(DAM)材料から形成することができる。しかしながら、反射体層60を、たとえば、両面が反射材料でコーティングされているような反射面を有する異なるポリマーから形成することができる。スペーサ層62を、たとえば、特に、織布材料、絹またはレーヨンのネットまたはメッシュ、スパンボンデッドポリエステル等、任意のタイプの非導電性ポリマー層から形成することができる。スペーサ層62を、熱が1つの反射体層60から次の反射体層60に伝導するのを可能にする伝熱性を有する材料から形成することができる。スペーサ層62は、概して、隣接する反射体層60の間の空間を画定し、隣接するスペーサ層62の間の距離を維持する。
【0021】
スペーサ層62は、平面でないように変形する材料のシートから形成することができるように変形する。たとえば、スペーサ層62は、ヘリウム容器22および/または熱シールド26を包囲する場合に、ヘリウム容器22および/または熱シールド26の円周方向に延びるにつれて変わることのない直径または厚さを有さないように変形する。したがって、スペーサ層62は、その表面に沿って平滑ではなく、高さまたは厚さが変化する。
【0022】
スペーサ層62は、あらゆる形態または形状をとることができる。図5〜図10は、設けることができるスペーサ層62の種々の実施形態を示す。しかしながら、変形が考えられ、スペーサ層62は、いかなるタイプの変形層であってもよい。たとえば、図5および図6に示すように、スペーサ層62を、概して折返しまたは折ひだ構造70から形成してもよい。折ひだ72を、略三角形断面を有するように示しているが、折ひだ72は、異なる形状および形態をとることができることが留意されるべきである。たとえば、折ひだ72は、丸い端部または他の多角形形態を有することができる。さらに、折ひだ72の幅および高さを、たとえば隣接する反射体層60の間の所望の距離または必要な距離に基づいて変更してもよい。折ひだ72は、種々の程度まで(矢印Pによって示すように)互いに折り重ねてもよいか、または全く折り重ねられなくてよいことが留意されるべきである。さらに、折ひだ72は、スペーサ層62のすべてまたは一部に沿って延在するとともに、一方向にまたは複数の異なる方向に延在してもよい。折ひだ構造70の折ひだ付けを、特に、縫合プロセス、加圧プロセスまたは接着プロセスによる等、任意の適切な折ひだ付けプロセスを用いて行うことができる。
【0023】
図7および図8に示すように、スペーサ層62に対する変形の別の例として、エンボス加工構造80を設けてもよい。エンボス加工構造80は、隆起部82を含む。隆起部82に対し、異なるように寸法および形状を決めてもよく、それは、図7および図8に示す円形形状および間隔に限定されないことが留意されるべきである。たとえば、エンボス加工は、正方形、矩形、三角形、多角形または他の形状を有する隆起部82を形成することを含むことができる。さらに、隆起部82の間の間隔は、同じであっても異なっていてもよく、隆起部82の数を要望または必要に応じて変更してもよく、それらをエンボス加工構造80のすべてまたは一部に沿って設けてもよい。さらに、隆起部82の幅および高さを、たとえば隣接する反射体層60の間の所望のまたは必要な距離に基づいて変更してもよい。
【0024】
隆起部82を形成するエンボス加工を、エンボス加工構造80の基材の繊維等、エンボス加工構造80を組み合わせて変形させる(たとえば圧搾する)ダイ(たとえば、オスおよびメスの銅または真鍮のダイ)を用いて熱および/または圧力を加えることによる等、任意の適切なエンボス加工プロセスを用いて行うことができる。
【0025】
図9および図10に示すように、スペーサ層62に対する変形の別の例として、しわ構造90を設けてもよい。しわ構造90は、スペーサ層62を形成している基材内に折目92を含む。折目92は、たとえば、基材の高さまたは厚さが変化するように、基材のあらゆるタイプのしわ、小波または波であってもよいことが留意されるべきである。折目92の幅および高さを、たとえば隣接する反射体層60の間の所望のまたは必要な距離に基づいて変更してもよい。折目92を、図9および図10に示すように、高さまたは深さが異なるようにランダムに形成してもよく、または代替的に、一様に形成してもよいことが留意されるべきである。折目92は、同じ方向にまたは異なる方向に、かつしわ構造90の全体または一部に沿って延在してもよい。
【0026】
折目92を形成するしわよせを、基材の表面における数ある変形の中でも特に折目または折返しを形成すべく折目構造90を形成するように基材を操作することによる等、任意の適切なプロセスを用いて行うことができる。
【0027】
さまざまな実施形態では、変形するスペーサ層62は、断熱材50の一部において反射体層60の間に設けられる。さらに、変形しないスペーサ層100が、図11に概略的に示す断熱材50の一部のいて他の反射体層60の間に設けられる。スペーサ層100を、変形しない材料(たとえば非導電性ポリマー材料)の略平面シートから形成することができ、それにより、スペーサ層100は、ヘリウム容器22および/または熱シールド26の周囲に延在する場合に、ヘリウム容器22の周囲を円周方向に延びるにつれて変わることのない直径または厚さを有する。したがって、スペーサ層100は、高さまたは厚さが一定でありその表面に沿って略平滑である。
【0028】
一実施形態では、図11に示すように、ヘリウム容器22(図12に示すように)または熱シールド26に対して遠い方の(遠位の)端部である、断熱材50の高温端102において、隣接する反射体層60の間に複数のスペーサ層100が設けられている。隣接する反射体層60の間の1つまたは複数のスペーサ層100の配置が、たとえば30回繰り返されることにより、断熱材50の一部が形成される。その後、ヘリウム容器22(図12に示すように)または熱シールド26に近い方の(近位の)端部である、断熱材50の低温端104において、隣接する反射体層60の間に複数のスペーサ層62が設けられている。隣接する反射体層60の間の1つまたは複数のスペーサ層62の配置が、たとえば5回繰り返されて、断熱材50の一部が形成される。種々の配置が繰り返される回数を、変更してもよく、かつ2つの異なる部分のみでなく断熱材50に沿って種々の部分に設けることも可能である。たとえば、隣接する反射体層60の間の1つまたは複数のスペーサ層62の繰返し配置を、いくつかの実施形態では2回と5回との間で設けることができる。さまざまな層を、任意の適切な締結手段または接着手段を用いて接合しまたは結合することができる。その後、ヘリウム容器を包囲しかつそれと熱的に接触するか、または熱シールド26を包囲する等、MRIシステムの真空容器24内の別の位置に、断熱材50を設けてもよいことが留意されるべきである。
【0029】
さまざまな実施形態では、反射体層60は、変形せず、たとえば、反射体材料の平面シートから形成されることが留意されるべきである。しかしながら、適宜、反射体層60のうちの1つまたは複数を、スペーサ層62の変形と同様に変形させてもよい。層の厚さは同じであっても異なっていてもよく、断熱材50を通して変化していても一定であってもよいことも留意されるべきである。
【0030】
さまざまな実施形態によれば、たとえばMLIブランケットを画定することができる、断熱材50等の断熱材を形成するために、図13に示すような方法110もまた提供することができる。方法110は、112において、断面の厚さが変化するスペーサ層を形成する等、複数のスペーサ層を変形させることを含む。その後、114において、複数の反射体層を、それらの間の非変形スペーサ層(たとえば厚さが一定のスペーサ層)とともに積層して、MLIブランケットの高温端を形成し、116において、積層をMLIブランケットの低温端に向かって継続する。そして、118において、積層を継続して、複数の反射体層をそれらの間の変形スペーサ層とともに積層してMLIブランケットの低温端を形成する。所望のまたは必要な数の層(たとえば、ステップ114およびステップ116では30の挟装された層、およびステップ118では5つの挟装された層)が積層すると、120において、それらの層を互いに結合する。層を、積層されている際に互いに結合してもよく、または積層体が完成した後に結合してもよいことが留意されるべきである。さらに、MLIブランケットを封止する等、形成後プロセスを行ってもよい。
【0031】
したがって、さまざまな実施形態によれば、MRIシステム用の断熱材が提供される。たとえば、MRIシステムのヘリウム容器もしくは熱シールドまたは両方に対してMLIブランケットを形成してもよく、それは、可変密度MLIブランケットであってもよい。
【0032】
MRIシステム用の超伝導マグネットに関連していくつかの実施形態を説明することができるが、さまざまな実施形態を、超電導マグネットを有するいかなるタイプのシステムに関連して実施してもよいことが留意されるべきである。超伝導マグネットを、他のタイプの医用撮像装置および非医用撮像装置で実施してもよい。
【0033】
したがって、さまざまな実施形態を、MRIシステム用の超伝導コイル等、種々のタイプの超伝導コイルに関連して実施してもよい。たとえば、さまざまな実施形態を、図14に示すMRIシステム140で使用する超伝導コイルで実施してもよい。システム140を、シングルモダリティ撮像システムとして例示しているが、さまざまな実施形態を、マルチモダリティ撮像システム内でまたはそれとともに実施してもよいことが理解されるべきである。システム140は、MRI撮像システムとして例示されており、コンピュータ断層撮影(CT)、ポジトロン断層法(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、ならびに超音波システム、または画像、特に人間の画像を生成することができる他の任意のシステム等、種々のタイプの医用撮像システムと組み合わせることができる。さらに、さまざまな実施形態は、人間の対象を撮像する医用撮像システムに限定されず、非人間の対象、荷物等を撮像する獣医学システムまたは非医用システムを含むことができる。
【0034】
図14を参照すると、MRIシステム140は、概して、撮像部142と、プロセッサまたは他のコンピューティングデバイスまたはコントローラデバイスを含むことができる処理部144とを有している。MRIシステム140は、クライオスタット146内に、コイルから形成される超伝導マグネット46を有し、それを、マグネットコイル支持構造で支持することができる。ヘリウム容器22は、超電導マグネット46を包囲し、液体ヘリウムで充填されている。
【0035】
ヘリウム容器22および/または熱シールド26(図1および図2に示す)の外面のすべてまたは一部を包囲する断熱材152が設けられている。断熱材152は、本明細書に記載するような断熱材50の形態をとることができる。超伝導マグネット46の内側に複数の磁場傾斜コイル154が設けられ、複数の磁場傾斜コイル154内にRF送信コイル156が設けられている。いくつかの実施形態では、RF送信コイル156の代りに送受信コイルを使用してもよい。ガントリ146内の構成要素は、概して撮像部142を形成している。超伝導マグネット46は円筒形状であるが、他の形状のマグネットを使用することができることが留意されるべきである。
【0036】
処理部144は、概して、コントローラ158、主磁場制御部160、傾斜磁場制御部162、メモリ164、表示装置166、送受信(T−R)スイッチ168、RF送信機170および受信機172を含んでいる。
【0037】
動作時、撮像される患者または模型等の物体の本体を、適切な支持体、たとえば患者台の上のボア174に配置する。超伝導マグネット46は、ボア174にわたって一様かつ静的な主磁場Boを生成する。ボア174におけるかつ対応して患者における電磁場の強度は、主磁場制御部160を介してコントローラ158によって制御され、主磁場制御部160はまた、超電導マグネット46への励磁電流の供給も制御する。
【0038】
磁場傾斜を、3つの直交方向x、yおよびzのうちの任意の1つまたは複数において超電導マグネット46内のボア174における磁場Boに課すことができるように、1つまたは複数の傾斜コイル要素を含む磁場傾斜コイル154が設けられている。磁場傾斜コイル154は、傾斜磁場制御部162によって励磁され、コントローラ158によっても制御される。
【0039】
複数のコイルを含むことができるRF送信コイル156は、磁気パルスを送信し、かつ/または適宜、RF受信コイルとして構成される表面コイル等、受信コイル要素も設けられている場合は、同時に患者からのMR信号を検出するように構成されている。RF受信コイルを、いかなるタイプまたは構成としてもよく、たとえば別個の受信表面コイルとしてもよい。受信表面コイルは、RF送信コイル156内に設けられるRFコイルのアレイであってもよい。
【0040】
RF送信コイル156および受信表面コイルは、T−Rスイッチ168によって、それぞれRF送信機170または受信機172のうちの一方に選択的に相互接続される。RF送信機170およびT−Rスイッチ168は、RF磁場パルスまたは信号がRF送信機170によって生成され、患者の磁気共鳴を励起するために患者に選択的に印加されるように、コントローラ158によって制御される。RF励起パルスが患者に印加されている間、T−Rスイッチ168はまた、受信機172から受信表面コイルを切断するようにも駆動される。
【0041】
RFパルスの印可に続き、T−Rスイッチ168は再び、RF送信コイル156をRF送信機170から切断し、受信表面コイルを受信機172に接続するように駆動される。受信表面コイルは、患者における励起核からもたらされるMR信号を検出するかまたは検知するように動作し、MR信号を受信器172に通信する。これらの検出されたMR信号は、その後、コントローラ158に通信される。コントローラ158は、たとえば患者の画像を表す信号を生成するようにMR信号の処理を制御するプロセッサ(たとえば画像再構成プロセッサ)を含む。
【0042】
画像を表す処理信号はまた、画像の視覚表示を提供するように表示装置166にも送信される。特に、MR信号は、可視画像を得るようにフーリエ変換されるであるk空間を充填するかまたは形成する。そして、画像を表す処理信号は、表示装置166に送信される。
【0043】
さまざまな実施形態および/または構成要素、たとえば、MRIシステム140の等、内部のモジュール、または構成要素およびコントローラを、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサの一部として実装することも可能である。コンピュータまたはプロセッサは、コンピューティングデバイス、入力デバイス、ディスプレイユニット、およびたとえばインターネットにアクセスするためのインタフェースを含むことができる。コンピュータまたはプロセッサは、マイクロプロセッサを含むことができる。マイクロプロセッサを通信バスに接続することができる。コンピュータまたはプロセッサはメモリも有することができる。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリメモリ(ROM)を含むことができる。コンピュータまたはプロセッサは、ハードディスクドライブ、またはフロッピディスクドライブ、光ディスクドライブ等のリムーバブル記憶ドライブであり得る、記憶装置をさらに含むことができる。記憶装置はまた、コンピュータプログラムまたは他の命令をコンピュータまたはプロセッサにロードする他の同様の手段であり得る。
【0044】
本明細書で用いる用語「コンピュータ」または「モジュール」は、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、ロジック回路、および本明細書に記載する機能を実行することができる他のあらゆる回路またはプロセッサを用いるシステムを含む、あらゆるプロセッサベースシステムまたはマイクロプロセッサベースシステムを含むことができる。上記例は単に例示的なものであり、したがって、用語「コンピュータ」の定義および/または意味を決して限定するように意図されていない。
【0045】
コンピュータまたはプロセッサは、入力データを処理するために1つまたは複数の記憶素子内に格納される命令のセットを実行する。記憶素子はまた、要望または必要に応じてデータまたは他の情報も格納することができる。記憶素子は、処理機械内の情報源または物理メモリ素子の形態であり得る。
【0046】
命令のセットは、処理機械としてのコンピュータまたはプロセッサに対し、本発明のさまざまな実施形態の方法およびプロセス等の特定の動作を実行するように命令するさまざまなコマンドを含むことができる。命令のセットは、有形の非一時的な1つまたは複数のコンピュータ可読媒体の一部を形成することができる、ソフトウェアプログラムの形態であり得る。ソフトウェアは、システムソフトウェアまたはアプリケーションソフトウェア等、さまざまな形態であり得る。さらに、ソフトウェアは、別個のプログラムもしくはモジュールの集まり、より大きいプログラム内のプログラムモジュール、またはプログラムモジュールの一部の形態であり得る。ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態でモジュールプログラミングを含むことも可能である。処理機械による入力データの処理は、オペレータコマンドへの応答、または先の処理の結果に対する応答、または別の処理機械による要求への応答であり得る。
【0047】
本明細書で用いる用語「ソフトウェア」および「ファームウェア」は、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリおよび不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含む、コンピュータによって実行されるようにメモリに格納されたあらゆるコンピュータプログラムを含むことができる。上記メモリタイプは単に例示的なものであり、したがって、コンピュータプログラムの記憶に使用可能なメモリのタイプに関して限定するものではない。
【0048】
上記説明は、限定的なものではなく例示的なものであるように意図されていることが理解されるべきである。たとえば、上述した実施形態(および/またはその態様)を、互いに組み合わせて用いることができる。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料をさまざまな実施形態の教示に適合させるように多くの変更を行うことができる。本明細書に記載する材料の寸法およびタイプは、さまざまな実施形態のパラメータを定義するように意図されているが、それらは決して限定するものではなく単に例示的なものである。上記説明を検討することにより当業者には他の多くの実施形態が明らかとなろう。したがって、さまざまな実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲に、およびこうした特許請求の範囲に権利が与えられる均等物の完全な範囲に関連して確定されるべきである。添付の特許請求の範囲において、用語「含む(including)」および「in which」は、それぞれの用語「備える(comprising)」および「wherein」の平易な英語の相当語として用いられている。さらに、以下の特許請求の範囲では、用語「第1の」、「第2の」および「第3の」等は、単に標識として用いられており、それらの対象物に対して数値的要件を課すように意図されていない。さらに、以下の特許請求の範囲の限定は、ミーンズプラスファンクション(means−plus−function)形式で書かれてはおらず、こうした特許請求の範囲の限定が、さらなる構造を含まない機能の言明が後に続く語句「〜するための手段(means for)」を明示的に使用しない限り、米国特許法第112条第6項に基づいて解釈されるようには意図されていない。
【0049】
この明細書は、例を用いて、最良の形態を含むさまざまな実施形態を開示し、当業者が、あらゆる装置またはシステムを作成しかつ使用し、あらゆる組み込まれた方法を実行することを含む、さまざまな実施形態の実施を行うことを可能にする。さまざまな実施形態の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者であれば想起される他の例を含むことができる。こうした他の例は、特許請求の範囲の文字通りの文言とは異ならない構造的要素を有するか、または特許請求の範囲の文字通りの文言との相違がわずかである均等な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内にあるように意図されている。
【符号の説明】
【0050】
20 MRIマグネットシステム
22 ヘリウム容器
24 真空容器
26 熱シールド
28 コールドヘッド
30 コールドヘッドスリーブ
32 モータ
34 開放端部
36 再凝縮器
38 通路
46 超伝導マグネット
50 断熱材
52 内径面
54 外径面
56 液体ヘリウム
60 反射体層
62 スペーサ層
70 折ひだ構造
72 折ひだ
80 エンボス加工構造
82 隆起部
90 しわ構造
92 折目
100 スペーサ層
102 高温端
104 低温端
110 方法
112 スペーサ層を変形させる
114 反射体層および非変形スペーサを積層してMLIブランケットの高温端を形成する
116 反射体層および非変形スペーサ層の積層をMLIブランケットの低温端に向かって継続する
118 反射体層および変形スペーサ層を積層してMLIブランケットの低温端を形成する
120 層を結合してMLIブランケットを形成する
140 MRIシステム
142 撮像部
144 処理部
146 ガントリ
152 断熱材
154 磁場傾斜コイル
156 RF送信コイル
158 コントローラ
160 主磁場制御部
162 傾斜磁場制御部
164 メモリ
166 表示装置
168 T−Rスイッチ
170 RF送信機
172 受信機
174 ボア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導マグネット用の断熱材(50)であって、
第1の複数の反射体層(60)と、
前記第1の複数の反射体層における隣接する層の間の非変形スペーサ層(100)と、
第2の複数の反射体層(60)と、
前記第2の複数の反射体層における隣接する層の間の変形スペーサ層(62)と、
を具備する断熱材(50)。
【請求項2】
前記第1の複数の反射体層(60)が、ヘリウム容器(22)または熱シールド(26)のうちの少なくとも一方に対して遠位に配置されるように構成された多層断熱材(MLI)ブランケットの高温端(102)を画定する、請求項1記載の断熱材(50)。
【請求項3】
前記第2の複数の反射体層(60)が、ヘリウム容器(22)または熱シールド(24)のうちの少なくとも一方に対して近位に配置されるように構成された多層断熱材(MLI)ブランケットの低温端(104)を画定する、請求項1記載の断熱材(50)。
【請求項4】
前記変形スペーサ層(62)が折ひだ構造(70)を備える、請求項1記載の断熱材(50)。
【請求項5】
前記変形スペーサ層(62)がエンボス加工構造(80)を備える、請求項1記載の断熱材(50)。
【請求項6】
前記変形スペーサ層(62)がしわ構造(90)を備える、請求項1記載の断熱材(50)。
【請求項7】
前記変形スペーサ層(62)が、厚さが変化する、請求項1記載の断熱材(50)。
【請求項8】
前記第1の複数の反射体層(60)の数が、前記第2の複数の反射体層(60)の数より多い、請求項1記載の断熱材(50)。
【請求項9】
前記第1の複数の反射体層(60)および前記第2の複数の反射体層(60)が、略平面材料シートから形成される、請求項1記載の断熱材(50)。
【請求項10】
磁気共鳴撮像システム(MRI)用の断熱材を形成する方法(110)であって、
複数のスペーサ層を変形させるステップ(112)と、
第1の複数の反射体層をそれらの間の非変形スペーサ層とともに積層するステップ(114)と、
第2の複数の反射体層をそれらの間の変形スペーサ層とともに積層するステップ(118)と、
前記第1複数の反射体層および前記第2の複数の反射体層により多層断熱材を形成するステップ(120)と、
を含む方法(110)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−582(P2013−582A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−125547(P2012−125547)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】