説明

極低酸度超安定Y型ゼオライト及び均質無定形シリカ−アルミナを含む水素化分解触媒並びに水素化分解方法

【課題】炭化水素系油類をより小さい平均分子量でより低い平均沸点の生成物へ転化するための触媒、並びにこの触媒を使って炭化水素系油類をより小さい平均分子量でより低い平均沸点の生成物へ転化する方法。
【解決手段】約5未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して約1〜20μモル/g、好ましくは約1〜10μモル/gのブレンステッド酸度を有する、低酸度で高度に脱アルミニウムされた少量の超安定Y型ゼオライトと、約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下、好ましくは5%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む触媒組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系油類をより小さい平均分子量でより低い平均沸点の生成物へ転化するための触媒、並びにこの触媒を使って炭化水素系油類をより小さい平均分子量でより低い平均沸点の生成物へ転化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の水素化分解触媒は一般に、シリカ−アルミナ、マグネシア、アルミナなどの耐火性酸化物に基づく以前の材料に勝る利点を有する、ゼオライト系の材料に基づいている。無定形触媒は活性が比較的乏しいが、留出油範囲の生成物を得るための選択性はより高く、一方、ゼオライト触媒は、より高い活性を与えるが、留出油、特に重質留出油を得るための選択性はより劣る。本発明は、とりわけ、無定形シリカ−アルミナ共ゲル触媒の優れた重質油選択性及び未転化油の品質を維持しながら、無定形共ゲル触媒に勝る優れた全般的触媒性能を伴う水素化分解方法を提供する。
【0003】
従来技術の共ゲル水素化分解触媒では、周期律表のVIB族金属及びVIII族金属、その酸化物、並びに硫化物の様々な組合せを塩基を用いて沈殿させ、又は共ゲル化していた。したがって、共ゲル化による金属の析出は、基材への金属の含浸(後金属含浸(post−metal impregnation))よりも優れていると考えられていた。後者の方法では、活性金属の不均一な析出を生じる傾向があったからである。共ゲル化法又は沈殿法では、より良い留出油選択性を有し、優れた品質の製品を生成する、より均一な触媒を得るための、固有の製造コストが高くついていた。
【0004】
本発明は、とりわけ、均質シリカ−アルミナ及び高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライト(USY)を用いて作成され、後金属含浸された新規な水素化分解触媒を提供する。この触媒は、触媒活性が従来技術による無定形共ゲル触媒より大幅に改善されていること、及び同時に全留出油収率が上昇することを含めて、いくつかの予想されなかった利益をもたらす。本発明の触媒は、非常に安定であり、また共ゲル触媒よりも大幅に低い汚染速度を示した。
【0005】
共ゲル水素化分解触媒にUSYを添加すると、一般に留出油、特に沸点範囲が550°F〜700°Fの重質油留分の収率が低下することは周知である。本発明の触媒は、特に重質留出油の収率を維持することに関して有効である。減圧ガスオイルから水素化分解で得た重質留出油は、一般的に60〜80という非常に高いセタン価を示し、一方、沸点範囲が250°F〜550°Fの軽質油留分は40〜55のセタン価を示す。合わせたディーゼル燃料において高いセタン価を達成するためには、留分を合わせたプール中の重質留出油含有量を高めることが望ましい。さらに、本発明による方法で未転化の700°F画分は、高い粘度指数を示し、この画分から高品質潤滑油のベースストックが製造できることを示唆している。
【0006】
初期の合成Y型ゼオライトは、1964年4月21日発行の米国特許第3,130,007号明細書に記載されており、これを参照により本明細書に組み込む。この材料に関していくつかの改良が報告されており、その1つは、1970年10月27日発行の米国特許第3,536,605号明細書に記載されている超安定Y型ゼオライトであり、この特許を参照により本明細書に組み込む。Y型ゼオライトは、水素化分解触媒の性能向上の目的で、アンモニウムイオン交換及び酸抽出、並びに様々の形での焼成のような技法によって、絶えず改良されてきた。
【0007】
合成Y型ゼオライトの有用性をさらに高めるために、解決を求められる水素化工程上の問題に応じて、追加の成分が当業界で公知の方法によって添加されてきた。参照により本明細書に組み入れるWardらの米国特許第3,835,027号明細書は、少なくとも1種の無定形耐火性酸化物と、結晶性ゼオライト系アルミノケイ酸塩と、VI族金属及びVIII族金属、それらの硫化物及び酸化物から選択した水素化成分とを含む触媒を記載している。Wardらは、添加された材料が、触媒の触媒活性及び脱窒素活性を高めることを教示している。
【0008】
参照により本明細書に組み入れる、Wardの米国特許第3,897,327号明細書は、Y型ゼオライトナトリウムを用いた水素化分解法を記載しており、そこではY型ゼオライトは、大部分のナトリウムイオンがアンモニウムイオンで置換されるように、あらかじめアンモニウムでイオン交換されている。次に、セルサイズを24.40〜24.64Åの範囲に縮小するために、この生成物を少なくとも0.2psiの水蒸気の存在下で十分な時間焼成する。この特許は、この触媒が焼成、水蒸気又は高温水蒸気への暴露の後に、結晶性及び表面積を維持することによって熱水安定性を高めたことを教示している。
【0009】
様々な触媒組成に加えて、調製の技法もまた触媒作用の選択性に影響を及ぼすことが見出されている。参照により本明細書に組み込むWardの米国特許第3,867,277号明細書は、低圧水素化分解法でのY型ゼオライト触媒の使用を開示している。この特許に記載されている触媒は、Y型ゼオライトが2回イオン交換され、かつ2回焼成されることを必要とし、最初の焼成段階では比較的高温(950°F〜1800°F)を用い、2回目の焼成段階では比較的低温(750°F〜1300°F)を用いるとアンモニア環境で安定な触媒をもたらす。
【0010】
参照により本明細書に組み入れる、Youngの米国特許第3,853,747号明細書は、水素化成分を、ゼオライト晶子又は粒子の内部吸着領域まで含浸しないようにゼオライト中に組み入れたとき、触媒の水素化活性がより高くなることを教示している。たとえば、混合は、撹拌、混練、磨砕、又はよく混合された固体材料混合物を得るためのいかなる通常の手順からなるものでもよい。VIB族金属水素化成分の分散は、細かく分割されてはいるが本質的に溶解はしていない形でゼオライトに添加することによって達成される。この特許は、ある場合には、含浸によってゼオライトに添加された可溶性のモリブデン化合物又はタングステン化合物が、その後の乾燥及び焼成の段階でゼオライトの結晶構造を破壊する傾向があることを教示している。しかし、Youngは、粒子サイズが0.5μ〜5μでなければならないと教示している。
【0011】
参照により本明細書に組み入れる、Hoekらの米国特許第4,857,171号明細書は、炭化水素油類を転化する方法であって、本質的に、単位セルサイズが24.40Å未満のY型ゼオライト、シリカを基材とする無定形の分解(cracking;熱分解)成分、結合剤、並びにVI族金属及び(又は)VIII族金属及びそれらの混合物から選択された少なくとも1つの水素化成分からなる触媒に油を接触させることを含む方法を教示している。
【0012】
参照により本明細書に組み込むWardの米国特許第4,419,271号明細書は、活性な水素化金属成分を担持するための、又は酸触媒炭化水素転化反応に対して触媒作用を及ぼすための触媒基材として有用な組成物であって、(1)炭化水素接触分解活性を有し、24.25〜24.35Åの単位セルサイズを有し、水蒸気分圧4.6mm及び25℃においてゼオライトの8重量%未満の水吸収能力を有する、修飾された結晶性アルミノケイ酸水素Y型ゼオライトと、(2)ガンマアルミナマトリクス中のシリカ−アルミナ分散体とを、よく混合された不均質混合物として含む組成物を開示している。
【0013】
参照により本明細書に組み込むPartridgeらの米国特許第4,820,402号明細書は、留出油選択性が改善された方法で触媒の酸性成分として高シリカ含量大孔径ゼオライトを使用することを開示している。
【0014】
参照により本明細書に組み込むKirkerらの米国特許第5,171,422号明細書は、シリカ:アルミナ比が50:1より大きいUSY触媒を用いた、高品質潤滑油ベースストックの製造方法を開示している。
【0015】
参照により本明細書に組み込む国際特許公開WO 00/40675号公報は、骨格のシリカ:アルミナモル比が少なくとも200:1、好ましくは2000:1より大きいUSYゼオライトと水素化成分とを含む触媒を用いる、低圧水素化分解法を開示している。
【0016】
英国特許第2,014,970号明細書は、2回のアンモニウムイオン交換ステップとその中間でのスチーム中550℃〜800℃での焼成ステップによって、24.20〜24.45Åの単位セルの大きさを与えられた、超疎水性Y型ゼオライトを開示している。欧州特許第0,028,938号明細書は、沸点が371℃を超える炭化水素を、留出範囲が149°〜371℃の中間留分燃料製品へ選択的に転化させるための、このような修飾ゼオライトの使用を開示している。単位セルサイズが24.25〜24.35ÅのY型ゼオライトを生産するための改良された製造方法が、Linstenらの米国特許第5,059,567号明細書で開示されている。
【0017】
シリカ−アルミナ化合物は、炭化水素の転化方法で用いられる触媒として周知である。本発明におけるようなシリカ−アルミナ触媒は、特に酸性触媒を必要とする反応においては、「そのまま」使用することができるが、場合によっては、流動接触分解装置や水素化分解装置などの分解反応装置で液体炭化水素を分解するために、ゼオライト、粘土又は他の結合剤、及び無機酸化物と組み合わせて使用することもできる。シリカ−アルミナ複合物は、分解、脱硫、脱金属、及び脱窒素などの様々な炭化水素加工用途で商業的に使われてきた。
【0018】
これまで、無定形のシリカ−アルミナは、ゲル化ステップ中には水素化金属を添加しない修正共ゲル法によって調製されてきた。スプレー乾燥した無定形シリカ−アルミナ触媒は、Pecoraroの米国特許第4,988,659号明細書に記載されている炭化水素転化法で使用する触媒の製造方法によって作成された。
【0019】
シリカ−アルミナ触媒の調製方法は、触媒の化学的特性及び物理的特性すなわち活性(分解活性及び異性化活性など)及び物理的特性(細孔構造、容積、表面積、密度、及び触媒の強度など)などに影響を与える。本発明のようなシリカ−アルミナ触媒は、特に酸性触媒を必要とする反応においては、「そのまま」使用することができるが、場合によっては、流動接触分解装置などの分解反応装置で液体炭化水素を分解するために、ゼオライト、粘土又は他の結合剤、及び無機酸化物と組み合わせることもできる。
【0020】
多数のシリカ−アルミナ触媒組成物及びそれらの調製方法が特許文献に記載されている。特許文献では、これらの組成物の調製方法をいくつか教示している。
【0021】
Seeseらの米国特許第4,499,197号明細書は、無機酸化物ヒドロゲル、より詳細には、触媒活性のある無定形シリカ−アルミナ及びシリカ−アルミナ希土酸化物共ゲルの調製方法を記載している。活性な共ゲルは、アルミン酸塩溶液及びケイ酸塩溶液を反応させてシリカ−アルミナプレゲルを得て、次にこのプレゲルを酸性希土酸化物及びアルミニウム塩溶液と完全に混合しながら反応させることによって調製する。Alfandiらの米国特許第4,239,651号明細書は、イオン交換したアンモニウム共ゲルの調製方法を開示している。
【0022】
Jaffeの米国特許第4,289,653号明細書は、以下の方法による押出し成型した触媒の調製を教示している。硫酸アルミニウム及び硫酸をケイ酸ナトリウムと混合してpHが1〜3のアルミナ塩溶液中のシリカゾルを形成し、pHを少なくとも4〜6と実質的に一定に保ちながらNHOHを添加し、共ゲルを形成させるためにさらにNHOHを添加してpH7.5〜8.5とし、共ゲル化した塊を洗浄し、この塊を解膠剤、VI−B族金属化合物及びVIII族金属化合物と共に混練して押出し成型可能な軟塊とし、押出し成型し、乾燥して焼成する。
【0023】
Pecoraroの米国特許第4,988,659号明細書は、下記の方法で調製した共ゲル化したシリカ−アルミナマトリックスを教示している。その方法は、ケイ酸塩溶液を酸性アルミニウム塩及び酸の水溶液と混合して前記アルミニウム塩溶液中のシリカゾルを形成させ、前記シリカゾル/アルミニウム塩溶液混合物をpH約1〜4の範囲に調節し、激しく撹拌しながらゆっくりと前記酸性化したシリカゾル/アルミニウム塩溶液混合物に十分な量の塩基を加えてシリカとアルミナとの共ゲルスラリーを形成させ、前記スラリーをpH約5〜9の範囲に調節し、前記共ゲルスラリーを周囲温度〜95℃で熟成させ、前記共ゲルスラリーのpHを約5〜9に調節し、共ゲル化した塊を前記スラリーから取り出し、前記共ゲル化した塊を洗浄し、前記共ゲルの塊のpHを約4〜7に調節し、離液(syneresis)を誘発するように条件を制御し、前記複合体を粒状に成形することを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一実施形態は、炭化水素系油類をより小さい平均分子量及びより低い平均沸点の生成物へ転化する方法であって、前記炭化水素系油類を水素化分解条件下で触媒と接触させることを含み、この触媒は、(1)約5未満の、好ましくは3未満のアルファ値、及び約1〜20、好ましくは約1〜10μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、(2)表面Si/Alと内部Si/Alの比(Surface to Bulk Si/Al ratio)(SB比)が約0.7〜約1.3であり、結晶性アルミナ相が約10%以下、好ましくは5%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、(3)VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む方法である。
【0025】
本発明のもう1つの実施形態は、重質ガスオイルから高品質の留出油をより高い重質油収率で製造する方法であって、重質ガスオイルを水素化分解条件下で触媒と接触させることを含み、この触媒は、(1)約5未満の、好ましくは約3未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して約1〜20、好ましくは約1〜10μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、(2)約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下、好ましくは5%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、(3)VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む方法である。
【0026】
本発明のもう1つの実施形態は、水素化分解触媒組成物であって、(1)約5未満の、好ましくは約3未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して約1〜20、好ましくは約1〜10μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、(2)約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下、好ましくは5%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、(3)VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む触媒組成物である。
【0027】
とりわけ、約5未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して約1〜20のブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトが、約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分、並びにVI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分と共存すると、予想されなかった利益を生み出すことが見出された。そうした利益には、(1)触媒活性が大幅に改善されること、(2)USY濃度の広い範囲に渡って全留出油収率が維持されること、(3)USYの濃度を変化させることによって軽質留出油と重質留出油のそれぞれの収率を調節することができること、及び(4)触媒がはるかに安定になり汚染速度が大幅に低くなったことが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態によれば、本触媒は、(1)約5未満の、好ましくは約3未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して約1〜20、好ましくは約1〜10μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、(2)約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下、好ましくは5%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、(3)VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む。
【0029】
本発明による触媒組成物中の高度に脱アルミニウムされたUSYゼオライトの量は、金属を含めた完成触媒に対して約0.5〜70重量%、好ましくは約0.5〜50%、最も好ましくは約1〜20%である。
【0030】
本発明による触媒組成物のゼオライト成分としては、シリカとアルミナのモル比が50より大きい高度に脱アルミニウムされたUSYゼオライトが有用である。シリカ:アルミナのモル比が60より大きいUSYゼオライトが好ましく、最も好ましくは、シリカ:アルミナのモル比が80より大きい。
【0031】
本発明の水素化分解触媒は、USYの酸度が極度に低いため、第二の無定形分解成分の添加を必要とする。したがって、本発明の触媒はまた、約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下、好ましくは5%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分からなる均質無定形分解成分をも含む。
【0032】
本発明による触媒組成物中の無定形分解成分の量は、金属を含めた完成触媒(finished catalyst)に基づいて約10重量%〜80重量%の範囲であり、好ましくは約30重量%〜70重量%、最も好ましくは約40重量%〜60重量%である。シリカ−アルミナ中のシリカの量は約10重量%〜70重量%の範囲である。好ましくは、シリカ−アルミナ中のシリカの量は約20重量%〜60重量%の範囲であり、最も好ましくは、シリカ−アルミナ中のシリカの量は約25重量%〜50重量%の範囲である。
【0033】
触媒組成物中に存在する結合剤は、適切には無機酸化物を含む。無定形結合剤及び結晶性結合剤の両方が適用できる。適切な結合剤の例には、シリカ、アルミナ、粘土、及びジルコニアが含まれる。結合剤としてアルミナを用いることが好ましい。本発明の触媒組成物中の結合剤の量は、金属を含めた完成触媒に基づいて10重量%〜30重量%の範囲であり、好ましくは約15重量%〜25重量%である。
【0034】
本発明の触媒はまた、水素化成分をも含む。ここで用いられる水素化成分とは、主に周期律表のVI族の金属及びVIIIの族金属、たとえばクロム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、及び類似の金属、並びにこれらの金属の酸化物及び硫化物である。これらの金属は2種以上を組み合わせて用いることができる。たとえば、ニッケル−タングステン、ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、白金−パラジウムなどの組合せなどがある。
【0035】
触媒組成物中の水素化成分の量は、触媒全体の重量100部に対してVIII族金属成分は約0.2重量%〜約10重量%の範囲、VI族金属成分は約5重量%〜約30重量%の範囲が適切である。
【0036】
触媒組成物中の水素化成分は、酸化物及び(又は)硫化物の形になっていればよい。少なくとも1つのVI族金属成分及び少なくとも1つのVIII族金属成分の組合せが(混合)酸化物として存在する場合は、それを水素化分解で適当に使用するためにはその前に硫化物化処理を施す。
【0037】
本発明による触媒組成物は、約1重量%〜10重量%のニッケル及び約5重量%〜40重量%のタングステンを含む。本発明による触媒組成物は、好ましくは、金属に換算して、全触媒重量100部に対して約2重量%〜8重量%のニッケル及び約8重量%〜30重量%のタングステンを含む。
【0038】
貴金属を使用する場合には、本発明の触媒組成物は、約0.1重量%〜5重量%の白金、又はパラジウム、或いはPtとPdの組合せを含む。本発明による触媒組成物は、好ましくは、金属に換算して、全触媒重量100部に対して約0.2重量%〜2重量%の白金、又はパラジウム、或いはPtとPdの組合せを含む。
【0039】
本発明による触媒を用いると、性能及び活性に関して、予想されなかった優れた結果を得られることが見出された。これらの結果のうちには、本発明の触媒が、沸点範囲550°F〜700°Fの重質留出油をより多く製造するのに特に良いこと、本発明の触媒が、参照触媒と同等又はより低いガス生成を示すこと、及び本発明の触媒では、望ましくない過剰分解反応を抑制することによって水素化分解法におけるナフサの生成量がより少なくなることが含まれる。
【0040】
加えて、本発明は、炭化水素系油類をより小さい平均分子量でより低い平均沸点の生成物に転化する方法を提供する。この方法は、前記炭化水素系油類を水素化分解条件下で触媒と接触させることを含み、この触媒は、約5未満のアルファ値、及び約1〜20μモル/gのブレンステッド酸度を有する、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約5%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む。
【0041】
本発明はまた、重質ガスオイルから高品質の留出油及び潤滑油ベースストックをより高い収率で製造する方法をも対象とする。この方法は、重質ガスオイルを水素化分解条件下で触媒と接触させることを含み、その触媒は、約5未満の、好ましくは3未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して約1〜20、好ましくは約1〜10μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の低酸度で高度に脱アルミニウムされたY型ゼオライトと、約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下、好ましくは5%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む方法である。
【0042】
本発明による触媒は、沸点範囲が550°F〜700°Fの重質油留分の収率を増加させるのに特に好適である。減圧ガスオイルから水素化分解された重質油留分は、通常60〜80の非常に高いセタン価を示し、一方、沸点範囲が250°F〜550°Fの軽質留分は40〜55のセタン価を示す。合わせたディーゼル燃料で高いセタン価を達成するためには、合わせた留出油プールの重質留出油収率を高めることが望ましい。
【0043】
本発明はまた、潤滑油べースストックを製造するために、本発明の触媒を沸点が約650°Fより高い炭化水素原料油と水素化条件下で接触させることを含む、潤滑油ベースストックを製造する方法をも提供する。本発明から得られる未転化の700°F画分は、高い粘度指数を示し、高品質の潤滑油ベースストックが製造できることを示唆している。
【0044】
本発明による水素化転化法の構成は、供給原料を触媒組成物と接触させることによって、平均分子量及び平均沸点のかなりの低下が達成されるものであり、その触媒組成物は、約5未満のアルファ値、及び約1〜20μモル/gのブレンステッド酸度を有する、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む。
【0045】
本発明の触媒を使用することができる炭化水素転換法の例は当業者には周知であり、以下のものを含むが、これらに限定されるものではない。一段式水素化分解法、二段式水素化分解法、直列流水素分解法、マイルド水素化分解、潤滑油水素化分解、水素化処理、潤滑油水素化仕上げ、水素化脱硫、水素化脱窒素、接触脱ロウ、及び接触分解。
【0046】
本発明による方法に適切に適用できる原料は、ガスオイル、減圧ガスオイル、脱アスファルトオイル、ロングレジデュー(long residues)、接触分解サイクルオイル、コークス化ガスオイル、及びその他の熱的に分解されたガスオイル及び合成原油であって、随意にタールサンド、頁岩油、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成法又は残油改質法から得られるロウ質炭化水素、或いはバイオマスに由来するものを含む。また、様々な供給原料の組合せも適用できる。
【0047】
本発明による炭化水素転換法において使用する前に、供給原料の一部又は全部を1つ又は複数の(水素化)処理段階にかけることが望ましいこともある。供給原料を(部分的)水素化処理にかけるのが、しばしば好都合であると認められる。かなり重質な供給原料を加工処理する場合には、そのような供給原料を(水素化)脱金属処理にかけるのが有利である。
【0048】
適切に適用できる水素化分解条件は、約250℃〜約500℃の範囲の温度、約300バールまでの圧力、触媒1リットルにつき1時間当たり約0.1〜10kg(kg/l/h)の空間速度を含む。水素ガス量と供給量の比は約100〜約5000Nl/kg供給量(標準温度及び標準圧力における1キログラム当たりのノルマルリットル)が適切に使用できる。
【0049】
好ましくは、適用する水素化分解条件は、約300℃〜約450℃の範囲の温度、約25バール〜約200バールの圧力、触媒1リットルにつき1時間当たり約0.2〜約10kg(kg/l/h)の空間速度を含む。水素ガス量と供給量の比は、好ましくは約250〜約2000Nl/kgが適用できる。
【0050】
USYの特徴付けに粉末X線回折(XRD)法を使用することが、ASTM法D3942−80によって周知である。USY中の単位セルサイズは、Al含量と逆相関関係にある。USYがさらに脱アルミニウムされると、USYの単位セルサイズは24.70Å〜24.54Å以下になる。しかし、厳密に脱アルミニウムされた超安定化USYで全体のSiO/Al比が50より大きいものについては、USYの分解活性をXRDによる単位セルサイズで識別することはできなかった。その代わりに、FT−IR及びアルファ試験(モデル化合物試験による活性測定)をUSYサンプルの活性の分析に用いた。USYサンプルの品質を確実にするために、ICPによる全体組成の分析や表面積測定などの標準的な分析試験を用いた。
【0051】
USYサンプルの酸度を比較するには、他書で発表された方法によれば透過型IR分光分析が用いられてきた(T.R.Hughes,H.M.White,J.Phys.Chem.,71,2192,1967;M.A.Makarova,A.Garforth,V.L.Zholobenko,J.Dwyer,G.J.Earl,D.Rawlence,「表面科学と触媒作用の研究」(Studies in Surface Science and Catalysis),84,365,1994)。2つの方法が用いられている。(1)スペクトルの3,600cm−1領域にある酸性OH伸縮帯の計測、及び(2)ブレンステッド酸サイト濃度対ルイス酸サイト濃度を決定するためのピリジンの吸着である。重量約10mgの自己支持性(self−supporting)薄片を装置内で(in situ)He流中5℃/分(の昇温速度)で400℃まで加熱して1時間この温度で放置することによって脱水した。薄片を150℃まで冷却してIRスペクトルを記録した。このスペクトルをフィットして種々の酸サイトに対するOH帯の強度を得た。ピリジンも酸度を測定するために使用した。サンプルを上記の方法によって脱水した後、IRセルを切り離してから4μL(マイクロリットル)のピリジンを注入した。ピリジンを1時間吸着させてから、再度セルを開け、Heを流して物理吸着しているピリジンを脱着させた。通常は、12〜17時間脱着させてから、残留している化学吸着ピリジンを含むUSYサンプルのFT−IRスペクトルを得た。これらのスペクトルのピリジン環振動領域及びOH伸縮領域をフィットして、脱着時間の関数としてピーク面積を得た。最終ピーク面積は、無限大の脱着時間に外挿することによって得た。
【0052】
固体NMR及び塩基(たとえばNHTPAD)を用いた温度プログラム化脱着などの他のブレンステッド酸度測定法もまた最適範囲選択のために使用できると考えられる。
【0053】
USYの分解活性は、「モービルアルファ試験法」(Mobil Alpha test)(P.B.Weisz and J.N.Miale,J.Catal.,4,527−529,1965;J.N.Miale,N.Y.Chen,and P.B.Weisz,J.Catal.,6,278−87,1966)で発表されている記述に手直しを加えたアルファ試験法によって決定した。「アルファ値」は、問題のサンプルの分解速度を標準シリカ−アルミナサンプルの分解速度で割ったものである。得られた「アルファ」は、一般に酸サイトの数に関連する酸分解活性の尺度である。パラフィン系炭化水素を用いる他のモデル化合物試験法も、USY酸度の最適範囲を選択するために使用できるであろう。
【0054】
本発明のシリカ−アルミナ組成物は、無定形であり、かつ均質である。「表面のSi/Alと内部のSi/Alの比」(SB比)を、本発明のシリカ−アルミナ組成物の均質性という特質を規定し、それを他のシリカ−アルミナ組成物と比較するために用いる尺度として選択した。
【数1】

【0055】
SB比を求めるために、シリカ−アルミナ表面のSi/Al原子比をX線光電子分光分析法(XPS)を用いて測定する。XPSは、電子分光化学分析法(ESCA)としても知られている。XPSの貫通深度は50Å未満であるので、XPSで測定されるSi/Al原子比は表面の化学組成についてのものである。シリカ−アルミナを特徴付けるためにXPSを使用することは、W.Daneiellらの「Applied Catalysis A」196,2000,pp247−260に発表されている。したがって、XPS技法は触媒粒子の外層の化学組成を測定するのに有効である。オージェ電子分光分析法(AES)や二次イオン質量分析法(SIMS)など他の表面測定技法も表面組成の測定に使用できるであろう。
【0056】
これとは別に、組成物表面のSi/Al比は、ICP元素分析(の結果)から決定される。次に表面Si/A比を内部Si/Al比と比較して、SB比及びシリカ−アルミナの均質性を決定する。
【0057】
SB比がどのようにして粒子の均質性を表すかは、次のように説明される。SB比が1.0であれば、その材料は、粒子のあらゆる部分が完全に均質であることを意味する。SB比が1.0より小さければ、その粒子の表面はアルミニウムに富んでおり(又はシリカが乏しい)、かつアルミニウムの大部分は粒子の外部表面に存在することを意味する。SB比が1.0より大きければ、粒子表面はシリコンに富んでおり(又はアルミニウムが乏しい)、かつアルミニウムの大部分は粒子の内部領域に存在することを意味する。
【0058】
シリカ−アルミナ組成物は均質であり、表面対内部の比(SB比)、すなわち組成物のXPSによって測定した表面のSi/Al原子比と元素分析によって測定した内部のSi/Al原子比の比が、約0.7〜約1.3であるときに本発明に基づくものとなる。
【0059】
市販の2種のシリカ−アルミナ参照サンプル(SasolCondea社のSiral−40及びW.R.Grace社のMS−25)のSB比を測定し下記の値を得た。
Siral−40シリカ−アルミナのSB比=2.1〜2.8
MS−25シリカ−アルミナのSB比=0.2〜0.6
【0060】
上記の結果は、Siralタイプのシリカ−アルミナは、以前にDaneiellらが「Applied Catalysis A」196,2000、pp247−260.に発表したように、粒子表面がシリコンに富んでいる(Alが乏しい)ことを示している。一方、MS−25シリカ−アルミナは、粒子表面がシリコンに富んでいる。本発明によるシリカ−アルミナは、約0.7〜約1.3、好ましくは約0.9〜約1.1のSB比を有し、アルミニウムが粒子のあらゆる部分に本質的に一様に分布しているという点で、それぞれ均質であり、高度に均質である。シリカ−アルミナの活性を最大にするには、約1.0のSB比を有する高度に均質なシリカ−アルミナを入手することが最も好ましい。
【0061】
均質又は高度に均質であることに加えて、本発明のシリカ−アルミナ組成物は、無定形であり、合成ベーマイト(pseudoboehmite)相などの結晶性アルミナ相が約10%以下、好ましくは約5%以下の量で存在する。
【0062】
本発明によるシリカ−アルミナは、バッチ工程及び連続工程を様々な組合せで用いて様々な方法で調製できる。
【0063】
シリカ−アルミナ共ゲルの調製において最も重要な2つのステップは、
(1)シリカ及びアルミナを含む透明なゾルを調製すること、及び
(2)塩基溶液を用いてゾルをゲル化すること、
である。Jaffeの米国特許第4,289,653号明細書、及びPecoraroの米国特許第4,988,659号明細書を参照されたい。これら両特許を参照により本明細書に組み込む。また、本願の譲受人に譲渡され、本願と同時に出願され、参照により本願に組み込む標題「高度に均質な無定形シリカ−アルミニウム組成物の調製方法(Method for Preparing a Highly Homogenous Amorphous Silica−Aluminum Composition)」という名称の米国特許出願も参照されたい。
【0064】
ゾル調製ステップの出発原料は、アルミニウム塩、酸、及びシリカ供給源を含む。この合成法に使用できるアルミニウム塩供給源は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、沃化アルミニウム、酢酸アルミニウム、及び金属アルミニウム又は酸に溶解したアルミナを含む。使用できる酸供給源は、酢酸、ギ酸、硫酸、塩酸、及び硝酸を含む。ケイ酸塩供給源としては、ケイ酸ナトリウム、塩基に溶解した沈殿シリカ、及びコロイダルシリカが含まれるが、それだけには限らない。
【0065】
ゾルの調製は、バッチ式又は連続式いずれの方法によっても行える。pHを3.0より低く、好ましくは2.5より低く維持すること、及び好ましくないゲル又は粒子の形成を最小限に抑えるために、アルミニウム塩溶液とケイ酸塩溶液を勢いよく完全に混合することが不可欠である。
【0066】
次に、酸性化したゾル溶液に水酸化アンモニウムなどの塩基性沈殿剤を添加する。沈殿剤の添加は、ゾルのpHを3を超えて上昇させ、その結果シリカ種とアルミナ種が共ゲル化する。ゲル化のための塩基には、希薄なアンモニア溶液が好ましい。希薄なアンモニアに加えて、NaOH、NaAlO、KOHも使用できる。
【0067】
ゲル化ステップは、バッチ式又は連続式いずれの方法によっても行える。望ましいゲル化の最終pHは、5〜9の範囲、好ましくは6〜8の範囲である。Si−Al溶液と塩基性沈殿剤を勢いよく完全に混合すること、及び孤立したシリカ領域及びアルミナ領域の形成を最小限にするために、沈殿剤の添加中は混合物のあらゆる部分で一様なpHを維持することが不可欠である。
【0068】
沈殿させた共ゲルは、未反応のケイ酸塩及びアルミニウム塩をすべて除去するために洗浄する必要があり、次にナトリウムを除去するためにアンモニウムでイオン交換する。共ゲルは、室温で又は約90℃までの温度に昇温して2〜5時間熟成しなければならない。熟成した共ゲルは、取り扱い及び貯蔵の便宜のためにスプレー乾燥してもよく、或いは水分を含んだ状態からさらに最終触媒に加工してもよい。押出し成型すべき組成物がスプレー乾燥された粉末のように乾いた形態であれば、十分な水を酢酸と共に加えて水分含量を約60重量%としなければならない。場合によっては解膠性の酸又は塩基を存在させて、1時間ほど混練すると、材料は、市販の押し出し装置で押し出せる可塑性すなわちパン生地状になる。
【0069】
所望ならば、この材料を押出し成型し、乾燥及び焼成してシリカ−アルミナの触媒又は触媒担体を製造する。好ましい乾燥方法及び焼成方法は、空気を流通させたオーブン中65℃〜175℃での初期乾燥ステップ、及び炉又はキルン中480℃〜650℃で0.5〜5時間の最終焼成を含む。これらの材料仕上げ方法及びその他の仕上げ方法が、Jaffeの米国特許第4,289,653号明細書に記載されている。
【0070】
以下の実施例は本発明を例示するものであるが、いかなる形でも添付の特許請求の範囲に記載の内容を越えて本発明を限定することを意図するものではない。
【0071】
例1:USYゼオライト
望ましいUSYゼオライトの特性を以下にまとめて示す。
【表1】

【0072】
望ましいUSYゼオライトは、高度に脱アルミニウムされ、80を超えるSiO/Al比で安定化されている。粉末X線回折によって測定された単位セルサイズは、24.25Å以下の単位セルサイズを示す。加えて、本発明者らは、ブレンステッド酸度の非常に低いUSYが完成水素化分解触媒の性能に不可欠であることを見出した。本発明者らは、FT−IR法によるブレンステッド酸度の測定及びn−ヘキサンを用いたモデル化合物分解試験によって、望ましいUSYサンプルを識別できることを見出した。重質留出油選択性水素化分解に望ましいUSYは、5未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して1〜20μモル/gのブレンステッド酸度を示す。この種のUSYを含む水素化分解触媒は、5を越えるアルファ及び40μモル/gを越えるブレンステッド酸度を有するUSYを用いて作成した触媒に比べて大いに優れた留出油選択性を示す。
【0073】
これらの好ましいUSYの極端に低い酸度のために、この水素化分解触媒は、第2の均質な分解成分を含むことが必要である。最も望ましい均質分解成分は、異性化活性及び分解活性を有するシリカ−アルミナである。この均質分解成分と低酸度ゼオライトとを組み合わせることによって、本発明者らは、望ましい製品選択性、活性、及び安定性を備えた独特の触媒を作成することができた。
【0074】
例2:均質共ゲルシリカ−アルミナ
下記の3種の均質共ゲルシリカ−アルミナサンプルを触媒の調製に用いた。このシリカ−アルミナは、内部Si/Al原子比がほぼ1.0である。XPSによって測定した表面のSi/Al比が内部の組成比と一致するので、この組成は一様であり、XRDによって検出された分離した結晶性アルミナ相は10%未満である。この均質共ゲルシリカ−アルミナの特性を下の表にまとめて示す。
【表2】

【0075】
例3:均質共ゲルシリカ−アルミナを用いたNiW水素化分解触媒の調製(触媒A−基本ケース)
基本ケースとなる、表2の均質シリカ−アルミナサンプル#1を含む水素化分解触媒は、以下の手順に従って調製した。(特許出願XXXXに従って合成した)シリカ−アルミナ粉末#1の75部と(Vista社より入手した)結晶性アルミナ粉末25部をよく混合した。この混合物に希薄なHNO酸(粉末全量に対して3重量%のHNO)及び十分な量の脱イオン水を加えて、押出し成型可能なペーストを形成した。これらの重量は固体100%に基づく。このペーストを、1/16インチのシリンダーで押出し成型して、250°Fで一晩乾燥した。乾燥した押出成型物を、過剰の乾燥空気を送り込みながら1100°Fで1時間焼成し、室温まで冷却した。
【0076】
Ni及びWの含浸は、アンモニウムメタタングステン酸及び硝酸ニッケルを含む溶液を用いて、完成触媒中の金属の目標装填量、NiO4重量%、WO28重量%になるまで行った。溶液の全体積は、基本押出成型サンプルの水細孔容積の100%に合わせた(初期湿潤度法)。押出成型物をひっくり返しながら、金属溶液を徐々に基本押出成型物に加えた。溶液添加の完了後、液を吸い込んだ押出成型物を2時間熟成させた。次に、押出成型物を250°Fで一晩乾燥した。乾燥した押出成型物を、過剰の乾燥空気を送り込みながら935°Fで1時間焼成し、室温まで冷却した。この触媒を触媒Aと名付け、その物理的特性を表4にまとめて示す。
【0077】
例4:NiW USY水素化分解触媒(触媒B)の調製
触媒Bは、表1のUSY#1と表2のシリカ−アルミナ#2を含む本発明に有用なNiW USY触媒であり、以下の手順によって調製した。USY10部、シリカ−アルミナ粉末65部、及び合成ベーマイトアルミナ粉末25部をよく混合した。この混合物に希薄なHNO酸(粉末全量に対して3重量%のHNO)及び十分な量の脱イオン水を加えて、押出し成型可能なペーストを形成させた。これらの重量は固体100%に基づく。このペーストを、1/16インチのシリンダーで押出し成型し、250°Fで一晩乾燥した。乾燥した押出成型物を、過剰の乾燥空気を送り込みながら1100°Fで1時間焼成し、室温まで冷却した。
【0078】
Ni及びWの含浸は、アンモニウムメタタングステン酸及び硝酸ニッケルを含む溶液を用いて、完成触媒中の金属の目標装填量、NiO4重量%、WO28重量%になるまで行った。溶液の全体積は、基本押出成型サンプルの水細孔容積の100%に合わせた(初期湿潤度法)。押出成型物をひっくり返しながら、金属溶液を徐々に基本押出成型物に加えた。溶液添加の完了後、液を吸い込んだ押出成型物を2時間熟成させた。次に、押出成型物を250°Fで一晩乾燥した。乾燥した押出成型物を、過剰の乾燥空気を送り込みながら935°Fで1時間焼成し、室温まで冷却した。この触媒を触媒Bと名付け、その物理的特性を表4にまとめて示す。
【0079】
例5:種々のUSY及びシリカ−アルミナサンプルを用いた水素化分解触媒の調製(触媒C、D及びE)
触媒Cは、USYを含み本発明に有用なNiW触媒であり、触媒Bと類似の手順を用いて調製した。触媒Cについては、表1のUSY#1を3部、表2のシリカ−アルミナ#3を72部、及び合成ベーマイト(pseudoboehmite)アルミナ粉末を25部使用して基本押出成型物を調製した。次に、Ni及びWを例5に記載したように含浸によって装填した。金属の目標装填量、NiO4重量%、WO28重量%であった。触媒Cの物理的特性を表4にまとめて示す。
【0080】
触媒Dは、本発明に有用な貴金属USY触媒であり、触媒Cと同じH−型の基本押出成型物から調製した。Pt及びPdの含浸は、テトラアンミン硝酸白金及びテトラアンミン硝酸パラジウムを含む溶液を用いて、完成触媒中の金属の目標装填量、Pt0.2重量%、Pd0.15重量%になるまで行った。溶液の全体積は、基本押出成型サンプルの水細孔容積の100%に合わせた(初期湿潤度法)。押出成型物をひっくり返しながら、金属溶液を徐々に基本押出成型物に加えた。溶液添加の完了後、液を吸い込んだ押出成型物を2時間熟成させた。次に、押出成型物を250°Fで一晩乾燥した。乾燥した押出成型物を、過剰の乾燥空気を送り込みながら750°Fで1時間焼成し、室温まで冷却した。
【0081】
触媒Eは、USY#2及び表2に記載の特性を有する均質シリカ−アルミナを含み本発明に有用なNiW触媒であり、触媒Cとほぼ同一の手順を用いて調製した。
【0082】
触媒性能を評価するために以下の特性を有する石油供給原料を使用した。
【表3】

【0083】
例6:一回通過方式による留出油生産のための触媒性能の比較(触媒A対触媒B,C,及びD)
本発明の触媒(触媒B〜D)を一回通過型のマイクロユニットで参照触媒、すなわち触媒Aと比較した。触媒Aは、表2の均質なシリカ−アルミナ及びAl結合剤を用いて作成し、この基本処方にはゼオライトは加えなかった。触媒B、C、及びDは、完成触媒中に高度に脱アルミニウムされたUSYゼオライトを含む。触媒A、B、及びCは、VI族及びVIII族の卑金属(Ni及びW)を含み、触媒Dは、VIII族貴金属(Pd及びPt)を含む。
【0084】
触媒のマイクロユニット評価は、24/40(米国規格)のふるいに掛けた触媒6ccを入れた一回通過型降下流式のマイクロユニットで行った。操作条件は、反応器圧力、約2000psig;供給速度、1.5hr−1液空間速度(LHSV);及び一回通過H流速、オイル1bbl当たりH 5000SCF相当とした。触媒床の温度は、700°F供給物の700°F製品への転化率が60〜80重量%となるように変化させた。Cガス、ナフサ、軽質留出油、及び重質留出油といった各成分の収率を、D2887蒸留シミュレーション(Simdis)の解析結果を用いて計算した。全収率及び反応器温度のデータを転化率70重量%に内挿し、表4にまとめて示す。
【表4】

【0085】
本発明の触媒(触媒B及びC)は、共ゲル触媒と比較して5〜12°Fの触媒活性の改善を示した。触媒A(基本ケース)と比較して、本発明の触媒は改善された活性を示しながら全留出油収率を維持した。ゼオライト含量を調節することによって、軽質留出油と重質留出油の各留分の収率を望ましいレベルに変化させることができる(ジェット燃料生産量対ディーゼル燃料生産量)。本発明の貴金属触媒(触媒D)は、触媒活性の更なる改善、並びに参照触媒及び対応する卑金属触媒を上回る全留出油収率を示した。
【0086】
触媒の安定性を、一回通過型マイクロユニットにおいて加速汚染条件(オイル流速50%増及び反応器圧力25%低下)で比較した。安定性データは、1000時間の運転時間について転化率70%を維持するのに必要な反応器温度の変化を用いて計算した。本発明の触媒は、共ゲル触媒の1/4〜1/3の速度でしか活性が低下しないという点で、優れた経時劣化特性を示す。
【0087】
要約すると、本発明の触媒は、水素化分解触媒中の少量の高度に脱アルミニウムされたUSYゼオライトと均質共ゲルシリカ−アルミナとの組合せが、次のような予想されなかった利益を生み出したことを示した。(1)触媒活性が大幅に改善されること、(2)USY添加量の広い範囲について全留出油収率が維持されること、(3)USY含量によって軽質留出油と重質留出油それぞれの収率が調節できること、及び(4)触媒がはるかに安定になり、大幅に低い汚染速度を示したこと。
【0088】
例7:最大留出油生産のための触媒性能の比較(共ゲル触媒対触媒B)
本発明の触媒Bを、従来技術の水素化分解法用触媒である触媒Fと再循環型パイロットユニットで比較した。
【0089】
再循環型パイロットユニット評価は、押出成型物触媒130ccを用いて、未転化の700°F残油とHガスを再循環させることによって行った。再循環された供給原料に新しい供給原料を加えて、通油前の転化率60%を維持するように調節した。再循環されたHガス流に新しい補充Hガスを加えて、5000SCF/bblの再循環ガス流量を維持した。操作条件は、次の通りであった。
圧力: 全反応器圧2300 psig
液空間流速:1.0 hr−1
再循環H:5000 SCF/bbl
ガス、ナフサ、軽質留出油、及び重質留出油といった各成分の収率は、D2887 蒸留シミュレーション(Simdis)の解析結果を用いて計算した。全収率及び反応器温度のデータを表5にまとめて示す。
【表5】

【0090】
本発明の触媒(触媒B)は、従来技術の共ゲル触媒(触媒F)の性能を上回る性能を示す。本発明の触媒は、触媒Bが同等又はより高い活性を有し、望ましくない軽質ガス及びナフサの生成が大幅に少なく、留出油留分の生成がより多い点で優位性を示す。触媒Bは、全留出油収率において2容量%を越える優位性を示し、その改善は主として軽質油留分に現れることを示した。USYゼオライトの含量をさらに減らすことによって、留出油の分布がより重質な留分の方へ移ると予想される。
【0091】
本発明の触媒を用いた製品の全般的な特性は、共ゲル触媒のものと同等又はそれらを上回る。本発明の触媒は、セタン価が改善された留出油を生成する。留出油製品のその他の特性、すなわち煙点、凝固点、及び曇り点などは同等である。
【0092】
本発明の触媒は、沸点範囲が550〜700°Fの重質留出油を(セタン価を70より高く)維持するのに好適である。この留分のセタン価は沸点範囲が250〜550°Fである軽質留出油のセタン価(約50)よりずっと高いので、留出油を合わせたプールに対する重質留出油の寄与を最大にすることが望ましい。
【0093】
要約すると、本発明の触媒は、ゼオライトを含む水素化分解触媒の長所を保ちながら、品質が改善された留出油製品を高収率で生成した。
【0094】
本発明者らは理論に束縛されたくはないが、本発明の触媒の性能上の利点は、少量の高度に脱アルミニウムされたUSYを添加することによって触媒の異性化活性が高まったことから生じたものと思われる。通常は、留出油選択性の無定形水素化分解触媒にUSYを添加すると、望ましくないナフサへの過剰分解を引き起こす。本発明の触媒系では、USYによる望ましくない過剰分解を抑えることができ、均質な共ゲルシリカ−アルミナとUSYの極度に低い酸度の相乗作用による性能上の利点を獲得することができた。
【0095】
例8:潤滑油生産のための未転化油(残油)の特性に関する触媒性能の比較(共ゲル対触媒E)
例7の再循環型パイロットユニット評価の一回通過当たりの転化率を40容量%に変更し、未転化油(700°F画分)の40重量%を抜き取った。次に、潤滑油のベースストック生産にこの方法が可能性があるか考察するために、製品の特性を評価した。
【表6】

【0096】
本発明の触媒から得られる未転化油の粘度指数(含蝋粘度指数(waxy VI))は、共ゲル触媒から得られる未転化油の粘度指数よりもかなり高い値を示す。ゼオライトを含む水素化触媒で無定形触媒よりも高い含蝋粘度指数を有する700°F残油が生成されることは全く予想されなかった。この画分をMEK/トルエン脱蝋ステップにかけると完成潤滑油ベースストック製品が得られる。本発明の触媒によって改善された粘度指数(VI)は溶剤脱蝋後も維持された。
【0097】
この例は、完成潤滑油ベースストックを生成するために溶剤脱蝋ステップを含んでいるが、高品質の潤滑油ベースストックを生成するためには接触脱蝋を行うことが好ましい。
【0098】
これら実施例は本発明を例示するものであるが、いかなる形でも添付の特許請求の範囲に記載の内容を越えて本発明を限定することを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系油類をより小さい平均分子量でより低い平均沸点の生成物へ転化する方法であって、前記炭化水素系油類を水素化分解条件下で触媒と接触させることを含み、前記触媒は、(1)約5未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して約1〜20μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、(2)約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、(3)VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む、上記方法。
【請求項2】
触媒組成物が、約0.5〜約30重量%の超安定Y型ゼオライトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒組成物が、約1〜約20重量%の超安定Y型ゼオライトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒が、さらに無機酸化物結合剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
均質シリカ−アルミナ分解成分が、高度に均質であって、約0.9〜約1.1のSBシリカ対アルミナ比を有し、結晶性アルミナ相は約5%以下の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
均質シリカ−アルミナ分解成分が、約1.0のSB比を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、約0.5重量%〜30重量%の超安定Y型ゼオライト、約10重量%〜80重量%の無定形分解成分、及び約10重量%〜30重量%の結合剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
VIII族金属水素化成分が、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択され、かつVI族金属水素化成分が、モリブデン、タングステン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
水素化成分が、金属に換算して、触媒全重量100部に対して約2重量%〜約8重量%のニッケル及び約8重量%〜約30重量%のタングステンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水素化成分が、金属に換算して、触媒全重量100部に対して0.2重量%〜約2重量%の白金、又は約0.2重量%〜約2重量%のパラジウム、又は0.2重量%〜約2重量%の白金とパラジウムの組合せを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
重質ガスオイルから高品質の留出油をより高い重質留出油収率で製造する方法であって、重質ガスオイルを水素化分解条件下で触媒と接触させることを含み、前記触媒は、(1)約5未満のアルファ値、及びFT−IR法で測定して約1〜20μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、(2)約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、(3)VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む、上記方法。
【請求項12】
触媒組成物が、約0.5〜約30重量%の超安定Y型ゼオライトを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
触媒組成物が、約1〜約20重量%の超安定Y型ゼオライトを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
触媒が、さらに無機酸化物結合剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
均質シリカ−アルミナ分解成分が、高度に均質であって、約0.9〜約1.1のSBシリカ対アルミナ比を有し、結晶性アルミナ相は約5%以下の量で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
均質シリカ−アルミナ分解成分が、約1.0のSB比を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
触媒が、約0.5重量%〜30重量%の超安定Y型ゼオライト、約10重量%〜80重量%の無定形分解成分、及び約10重量%〜30重量%の結合剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
VIII族金属水素化成分が、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択され、VI族金属水素化成分が、モリブデン、タングステン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
水素化成分が、金属に換算して、触媒全重量100部に対して約2重量%〜約8重量%のニッケル及び約8重量%〜約30重量%のタングステンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水素化成分が、金属に換算して、触媒全重量100部に対して0.2重量%〜約2重量%の白金、又は約0.2重量%〜約2重量%のパラジウム、又は0.2重量%〜約2重量%の白金とパラジウムの組合せを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
水素化分解触媒組成物であって、(1)約5未満のアルファ値、及び約1〜20μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、(2)約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、(3)VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む、上記触媒組成物。
【請求項22】
触媒が、約0.5〜約30重量%の超安定Y型ゼオライトを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
触媒が、約1〜約20重量%の超安定Y型ゼオライトを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
触媒が、さらに無機酸化物結合剤を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
均質シリカ−アルミナ分解成分が、高度に均質であって、約0.9〜約1.1のSBシリカ対アルミナ比を有し、結晶性アルミナ相は約5%以下の量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
均質シリカ−アルミナ分解成分が、約1.0のSB比を有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
触媒が、約0.5重量%〜30重量%の超安定Y型ゼオライト、約10重量%〜80重量%の無定形分解成分、及び約10重量%〜30重量%の結合剤を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
VIII族金属水素化成分が、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択され、VI族金属水素化成分が、モリブデン、タングステン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
水素化成分が、金属に換算して、触媒全重量100部に対して約2重量%〜約8重量%のニッケル及び約8重量%〜約30重量%のタングステンを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
水素化成分が、金属に換算して、触媒全重量100部に対して0.2重量%〜約2重量%の白金、又は約0.2重量%〜約2重量%のパラジウム、又は0.2重量%〜約2重量%の白金とパラジウムの組合せを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
潤滑油ベースストックを製造する方法であって、
(a)供給原料を水素化条件下において、約5未満のアルファ値、及び約1〜10μモル/gのブレンステッド酸度を有する、少量の、低酸度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトと、約0.7〜約1.3のSB比を有し、結晶性アルミナ相が約10%以下の量で存在する均質無定形シリカ−アルミナ分解成分と、VI族金属、VIII族金属、及びそれらの混合物からなる群から選択された触媒量の水素化成分とを含む触媒と接触させること、及び
(b)水素化分解された生成物を加工処理して、潤滑油ベースストックを提供すること、
を含む、上記方法。

【公開番号】特開2010−137227(P2010−137227A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48629(P2010−48629)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2004−551510(P2004−551510)の分割
【原出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】