説明

極厚壁構造

【課題】極厚の板状部材の特性を考慮した合理的な設計思想に基づいて、コストの低減および施工性の向上を達成する。
【解決手段】地震時水平力に対する平均せん断応力度が、打設するコンクリートの短期許容せん断応力度以下である極厚壁構造1において、前記極厚壁の表層部11にひび割れ分散帯20を設けるとともに、表層部11に挟まれる内部領域12を無補強コンクリート13にて構成し、ひび割れ分散帯20を、表層部11の表面から所定のかぶり厚さt3以上離間した位置に配される横材21と、この横材21に接して内部領域12側に配される縦材22とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽性能を有すると共に、耐震設計上必要な耐力をコンクリートで担保する極厚壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電施設、PET施設やRI施設等の放射線利用施設で、放射線を遮蔽する区画部分で用いられる遮蔽壁の厚さは、耐震設計上必要な耐力からよりも、放射線の遮蔽要求から決まる場合が多い。
【0003】
一般に、鉄筋コンクリート構造耐震壁に配される壁筋量は、躯体断面積の0.25%以上とすることが通例として定められており、この通例が極厚壁にもそのまま適用されている(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】日本建築学会編集著作「鉄筋コンクリート構造計算基準・同解説−許容応力度設計法−」,社団法人日本建築学会,1999年,p.218−220
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した耐震壁の最小鉄筋比0.25%は、一般的な建物の付帯ラーメンに囲まれた耐震壁を対象として設定された数値であり、放射線の遮蔽性能から厚さが定まるような極厚壁を想定したものではない。そのため、この数値をそのままこの種の極厚壁に適用すると、壁厚に比例して壁筋を増やすことになり、施工費用の上昇を招くという問題がある。
【0005】
一方、本発明者らは、原子力発電施設、PET(陽電子放射断層撮影)施設やRI(放射線同位元素)施設等の放射線利用施設で放射線を遮蔽する区画部分で遮蔽壁や遮蔽スラブ等を有する建屋について解析的検討を行った。その結果、耐震設計上要求される壁本体の平均せん断応力度が、コンクリートの短期許容せん断応力度以下になるような壁体に対しては、壁筋が剛性や保有せん断耐力に及ぼす効果は小さく、ほとんど無筋にした場合でも必要な構造性能が得られるという結論を得た。
【0006】
そこで、本発明は前記の問題を解決すべく案出されたものであって、極厚の板状部材の特性を考慮した合理的な設計思想に基づいて、コストの低減および施工性の向上を達成できる極厚壁構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、地震時水平力に対する平均せん断応力度が、打設するコンクリートの短期許容せん断応力度以下である極厚壁構造において、前記極厚壁の表層部にひび割れ分散帯を設けるとともに、前記表層部に挟まれる内部領域を無補強コンクリートにて構成したことを特徴とする極厚壁構造である。ここで地震時水平力とは、通り芯ごとの平面架構に対して、一次設計で想定しているベースシアから定まる水平力である。
【0008】
すなわち、本発明は、遮蔽壁や遮蔽スラブ等の極厚壁構造では、荷重−変形性状や保有せん断耐力に及ぼす壁筋の効果は小さく、無筋でも必要な耐力が得られるという特性を活用している。言い換えると、コンクリートの乾燥や収縮によるひび割れが生じ易い壁の表層部において、主としてひび割れの拡幅を抑え、内部への進行を防止して耐久性を高めるためにひび割れ分散帯を設け、地震時水平力は内部のコンクリートだけで負担させるという、合理的な設計思想に基づいた構造である。また、外気に接する表層部に設けたひび割れ分散帯は、水や炭酸ガスなどの浸入を防いでコンクリートの中性化を遅らせるとともに、遮蔽性能も向上させることができる。
【0009】
請求項2に係る極厚壁構造は、前記ひび割れ分散帯が、前記表層部の表面から所定のかぶり厚さ以上離間した位置に配される横材と、該横材に接して前記内部領域側に配される縦材とで構成されることを特徴とする。
【0010】
長期荷重時には、壁のひび割れは鉛直方向よりも水平方向の方が生じ難く、また通常、階高さよりもスパンの方が長いためにコンクリートの収縮量は水平方向が大きくなり、ひび割れは、鉛直方向に生じ易い。したがって、横材を表面側に配置する上記の構成の方が、逆に配している従来の鉄筋コンクリート壁よりもひび割れ防止に効果的である。
【0011】
請求項3に係る極厚壁構造は、前記ひび割れ分散帯が、前記コンクリートよりもヤング係数の大きい材料で構成されることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、表層部にひび割れが発生しても、急に拡がることはなく、壁体としての剛性低下も最小限に留めることができる。
【0013】
請求項4に係る極厚壁構造は、当該鉄筋の配筋量は、必要保有水平耐力状態において前記極厚壁が負担する水平力を前記鉄筋のみで保持できる量であることを特徴とする。ここで必要保有水平耐力とは、二次設計において、柱梁架構の想定する部位に塑性ヒンジが形成されてメカニズム状態に達した時の水平耐力を表す。
【0014】
かかる極厚壁構造では、ひび割れ分散帯を構成する鉄筋だけでも、極厚壁に作用するメカニズム時の水平力を負担できるので、万一、終局時にコンクリートが損傷した場合でも、壁全体が破壊して耐力を失うことはなく、大地震に対しても高い安全率を確保できる。
【0015】
請求項5に係る極厚壁構造は、前記横材および前記縦材の定着長が、これらの材の降伏に必要な定着長よりも短いことを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る極厚壁構造は、前記横材の壁本体に対する断面積比が、前記縦材の断面積比よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
このように、横材を縦材よりも多く配することで、水平方向よりも発生しやすい鉛直方向のひび割れの拡大を効率的に防止することができる。
【0018】
請求項7に係る極厚壁構造は、ひび割れ分散帯が、プレキャスト部材で構成されていることを特徴とする。
【0019】
このように、ひび割れ分散帯を、予め工場などで製作したプレキャスト部材で構成することで、現場での施工が容易になり、工期の短縮に繋がる。
【0020】
なお、前記請求項4を除く極厚壁構造では、横材および縦材は、地震時せん断力を負担する必要がないので、定着長さが0でもよいが、各材の繋ぎ目にひび割れが集中するのを避けるために、最低限の定着を持つ重ね継手とする。通常、壁筋の重ね長さは、径の40倍で規定されているが、ここでは10倍程度の重ね長で十分である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、極厚の板状部材の特性を考慮した合理的な設計思想に基づいて、コストの低減および施工性の向上を達成できるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明に係る極厚壁構造を実施するための最良の形態を示した鉛直方向断面図、図2は本発明に係る極厚壁構造を実施するための最良の形態を示した水平方向断面図、図3は鉄筋コンクリート造建築物の構造計算フローである。
【0024】
本実施の形態においては、かかる極厚壁構造を、原子力発電施設、PET(陽電子放射断層撮影)施設やRI(放射線同位元素)施設等の放射線利用施設で放射線を遮蔽する遮蔽壁として用いた場合を例に挙げて説明する。この遮蔽壁は、放射線の遮蔽性能を確保するために、例えば、1メートル〜3メートル程度のコンクリート厚が要求される極厚壁構造となる場合がある。なお、本発明に係る極厚壁構造は、前記のような遮蔽壁に限られるものではなく、例えば、核シェルターなどの遮蔽壁などのような、要求される構造強度から算出される壁厚よりも厚く形成されたコンクリート製の壁にも適用可能である。
【0025】
図1および図2に示すように、極厚壁構造1は、必要耐力から算出される壁厚よりも厚く形成された極厚のコンクリート壁である。極厚壁構造1は、壁本体10の表層部11に配されたひび割れ分散帯20と、該表層部11に囲まれる内部領域12を無補強コンクリート13にて構成され、地震時水平力(例えば、一次設計で想定しているベースシアから定まる水平力)に対する平均せん断応力度が、打設するコンクリートの短期許容せん断応力度以下に制限されている。
【0026】
表層部11とは、壁本体10の厚さ方向両側の、外気と接する部分で所定の厚さの部分をいう。表層部11は、例えば、200〜400mm程度の厚さt1であって、放射線を遮蔽する遮蔽壁14以外の通常の構造壁15(図2参照)の厚さt2と同等の厚さt1で構成されている。
【0027】
表層部11には、構造壁15と同等の量の鉄筋がひび割れ分散帯20として、配筋されている。構造壁15における鉄筋量は、構造壁15に対する断面積比が、略0.25パーセントとなるように設定されている。すなわち、ひび割れ分散帯20の鉄筋量は、構造壁15の厚さt2と同等の厚さt1を有する表層部11に対する断面積比が、略0.25パーセントとなる。したがって、壁本体10の全体で見れば、ひび割れ分散帯20の断面積比は、0.25パーセント未満となる。
【0028】
表層部11に配筋されるひび割れ分散帯20は、表層部11の表面から所定のかぶり厚さt3以上離間した位置に配される横材21と、この横材21に接して内部領域12側に配される縦材22とを有している。かぶり厚さt3は、耐火性および耐久性上の必要から構造部分の種別およびセメントと骨材の種別ごとに適宜(耐力壁では、通常30mm以上(建築基準法施行令第79条参照))定められている。横材21および縦材22は、ともに、コンクリートよりもヤング係数の大きい材質、例えば、鉄筋により構成されている。なお、横材21および縦材22は、コンクリートよりもヤング係数の大きいものであれば鉄筋に限られるものではなく、カーボン、アラミド、強化プラスチックなどから構成した棒材や撚り線材などを用いるようにしてもよい。
【0029】
横材21は、壁本体10の表層部11の表面で、鉛直方向に所定の間隔をあけて複数配設されている。横材21は、鉛直方向に発生するひび割れを分散させて、その拡大を防止する役目を果たす。通常、コンクリート内の補強筋は、横筋が主たるせん断補強筋であるため、壁の表面側に、縦筋を配置するのが一般的であるが、本実施の形態では、横材21が主材であるので、壁本体10の表層部11の表面側に横材21を配置している。これは、壁本体10の自重を考慮すると、水平方向のひび割れは鉛直方向のひび割れよりも生じ難く、また壁本体10は、通常、階高よりも水平方向に長く、収縮量は水平方向が大きくなるため、鉛直方向のひび割れの方が入り易くなることを考慮したものである。
【0030】
縦材22は、横材21の内部領域12側に、横材21と接して配置されており、水平方向に所定の間隔をあけて複数配設されている(図2参照)。縦材22は、その断面積比が横材21の断面積比よりも小さくなるように、配置されている。すなわち、本実施の形態におけるひび割れ分散帯20は、鉛直方向に発生するひび割れの拡大を防止することを主な目的としており、縦材22は、横材21を支持するのに必要な量を配筋すればよく、横材21よりも少ない配筋量で足りる。
【0031】
横材21および縦材22とからなるひび割れ分散帯20の定着長L1(図2の部分拡大図参照)は、応力伝達に必要な主筋や耐力壁の鉄筋などに規定される定着長(建築基準法施行令第73条参照)よりも短く設定されている。これは、ひび割れ分散帯20は、コンクリートのひび割れの拡大防止用あるいは劣化防止用に配筋されているので、応力伝達が不要であり、理屈上は定着長さがゼロでもよいが、横材21または縦材22の繋ぎ目にひび割れが集中するのを避けるために、所定の定着長L1でひび割れ分散帯20(横材21および縦材22)を重ねるようになっている。すなわち、ひび割れ分散帯20は、応力伝達に必要な定着長は必要としないので、耐力壁などの鉄筋よりも短い定着長L1で足りる。本実施の形態では、この点に着目して、ひび割れ分散帯20の定着長L1が、鉄筋径の10倍以下(例えば、5倍程度)となるように構成している。
【0032】
なお、ひび割れ分散帯20は、横材21および縦材22を工場などで予め打設したプレキャスト部材で構成し、型枠を兼用させることもできる。このような構成によれば、現場の所定の位置に建て方した後に内部にコンクリートを打設するだけで済み、型枠、配筋、脱型等の作業が省略されて、施工手間を大幅に低減することができる。
【0033】
また、鉄筋からなる横材21および縦材22の配筋量は、建物の必要保有水平耐力状態において極厚壁が負担する水平力を前記鉄筋のみで保持できる量とすることもできる。ここで必要保有水平耐力とは、二次設計において、柱梁架構の想定する部位に塑性ヒンジが形成されてメカニズム状態に達した時の水平耐力を表す。このような構成によれば、ひび割れ分散帯20を構成する鉄筋だけでも、極厚壁に作用するメカニズム時の水平力を負担できるので、万一、終局時にコンクリートが損傷した場合でも、壁全体が破壊して耐力を失うことはなく、大地震に対しても高い安全率を確保できる。
【0034】
無補強コンクリート13は、本実施の形態では、補強筋のないコンクリートにて構成されている。なお、コンクリート内に鉄筋が配されていても、その鉄筋が構造的上補強筋として機能するものでなければ、無補強コンクリート13に含まれる。
【0035】
ところで、本発明は、所定の条件下では、壁筋の断面積比が0.25パーセント未満でも、必要な構造強度を確保できるという点と、コンクリートが極端に厚い場合は、剛性や保有せん断耐力等の構造性能に与える壁筋の効果は小さく、無筋でも必要な耐力が得られるという点に着目して、表層部11にひび割れ分散帯20を設けるとともに、内部領域を無補強コンクリート13で構成したことを大きな特徴とする。
【0036】
ここでいう所定の条件下とは、「建築物の構造関係技術基準解説書(国土交通省住宅局建築指導課,日本建築主事会議,(財)日本建築センター編集,国土交通省建築研究所編集協力)」に記載された鉄筋コンクリート造建築物の構造計算フロー(図3参照)における計算ルート3によって構造設計を行った場合である。図3の太線矢印に示すように、計算ルート3は、建物の規模が2階建て以上で、延床面積が200m2で、かつ高さが60m未満の建物について適用される。この条件を満たすと、許容応力度計算による確認を行った後に、建築基準法施工令第82条の2および昭和55年建設省告示第1790号に定められた特定建築物に該当するかを判断する。その後、特定建築物である場合は、層間変形角が1/200以下であることが条件となる。そして、偏心率が15/100より大きい場合は、保有水平耐力を算出し、必要保有水平耐力以上であればよい。以上のように、計算ルート3で設計を行った場合には、せん断補強筋の断面積比が0.25パーセント以上必要であるといった規定はない。なお、図3の計算ルート1で構造設計できる物件は、計算ルート3によっても構造設計ができる。本発明を適用する場合には、計算ルート3で構造設計を行うようにする。
【0037】
保有水平耐力の検討について説明する。ここで、壁厚が1200〜1700mmの極厚壁構造において、せん断補強筋の断面積比が0.25パーセント(最小鉄筋比)であるケース1と、せん断補強筋の断面積比が最小鉄筋比の略半分となる0.13パーセントであるケース2と、計算上無筋に近い、せん断補強筋の断面積比が最小鉄筋比の1/100となる0.0025パーセントであるケース3について、保有水平耐力の検討を行った。その結果、ケース1、ケース2およびケース3ともに、せん断力係数に大きな差は出ず、ケース3において、骨組みの一部に脆性的な破壊(一般壁のせん断破壊)を生じるときにおける保有水平耐力の余裕度(Qu/Qun)が1.71〜2.95となり、極厚壁構造においては、せん断補強筋を配筋しなくても、層全体としての保有水平耐力には、十分に余裕があることが分かった。
【0038】
そして、ケース3の、各厚さ(1200mm、1300mm、1500mm、1700mm)の極厚壁構造において、下記の(1)式に示す壁せん断強度算定式「建築物の構造関係技術基準解説書(国土交通省住宅局建築指導課,日本建築主事会議,(財)日本建築センター編集,国土交通省建築研究所編集協力)」により、極厚壁個別の壁せん断耐力Qusを算定した。
【0039】
【数1】

【0040】
その結果、骨組みの一部に脆性的な破壊(一般壁のせん断破壊)を生じるときに極厚壁構造に作用するせん断力に対する、壁せん断耐力Qusの比は、2.3〜3.3倍となり、極厚壁構造は、十分な余裕を有することが分かった。
【0041】
以上の結果より、本実施の形態のようにコンクリートが極端に厚い場合は、剛性や保有せん断耐力等において、壁筋の効果は小さく、ほとんど無筋でも必要な構造強度が得られることが分かる。すなわち、地震時設計せん断力に対する壁本体10の平均せん断応力度は、コンクリートの短期許容せん断力度よりも小さいこととなる。また、この場合、層間変形角も十分に小さく、変形の問題はなく、計算ルート3の要件を満たす構造設計を行うことができる。
【0042】
本発明は、基本的に地震時水平力は内部のコンクリートだけで負担させるという設計思想に基づいて、コンクリートの乾燥や収縮によるひび割れが生じ易い壁の表層部11には、主としてひび割れの拡幅を抑え、内部への進行を防止して耐久性を高めるために、ひび割れ分散帯20を集中的に配して補強された壁構造である。
【0043】
このように、前記計算ルート3によって構造設計を行うことによって、必要な性能に応じた合理的な配筋構造とすることができる。特に、本実施の形態の極厚壁構造1では、ほとんど無筋であっても必要な構造強度を得ることができるので、表層部11にひび割れの拡大防止用の必要最小限のひび割れ分散帯20を配筋するだけで済み、鉄筋量を大幅に低減することができる。
【0044】
また、表層部11の表面側に横材21を設けるとともに、横材21に接して内部領域12側に縦材22を設けたことによって、壁本体10において発生しやすい鉛直方向のひび割れを分散してその拡大を効果的に防止することができる。これによって、極厚壁構造1の内部に水や炭酸ガスなどが浸入するのを防止できるとともに、コンクリートの中性化を遅らせ、構造的な欠陥が生じるのを防止でき、さらに遮蔽性能も向上させることができる。さらに、横材21の断面積比を、縦材22の断面積比よりも大きくすることで、鉛直方向のひび割れの拡大を効率的に防止できる。
【0045】
さらに、ひび割れ分散帯20は、コンクリートよりもヤング係数の大きい材料で構成されているので、表層部11にひび割れが発生しても、ひび割れ分散帯20が破断することはなく、ひび割れの拡大を確実にすることが防止できる。
【0046】
ひび割れ分散帯20の定着長L1を、その目的から主筋や耐力壁の鉄筋に規定される定着長よりも短くなるように構成することで、鉄筋量を減らして、施工費用を低減することができる。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る極厚壁構造を実施するための最良の形態を示した鉛直方向断面図である。
【図2】本発明に係る極厚壁構造を実施するための最良の形態を示した水平方向断面図である。
【図3】鉄筋コンクリート造建築物の構造計算フローである。
【符号の説明】
【0049】
1 極厚壁構造
10 壁本体
11 表層部
12 内部領域
13 無補強コンクリート
20 ひび割れ分散帯
21 横材
22 縦材
t1 表層部の厚さ
t2 構造壁の厚さ
t3 かぶり厚さ
L1 定着長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震時水平力に対する平均せん断応力度が、打設するコンクリートの短期許容せん断応力度以下である極厚壁構造において、
前記極厚壁の表層部にひび割れ分散帯を設けるとともに、前記表層部に挟まれる内部領域を無補強コンクリートにて構成したことを特徴とする極厚壁構造。
【請求項2】
前記ひび割れ分散帯は、前記表層部の表面から所定のかぶり厚さ以上離間した位置に配される横材と、該横材に接して前記内部領域側に配される縦材とで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の極厚壁構造。
【請求項3】
前記ひび割れ分散帯は、前記コンクリートよりもヤング係数の大きい材料で構成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の極厚壁構造。
【請求項4】
前記横材および前記縦材は、鉄筋にて構成され、
当該鉄筋の配筋量は、必要保有水平耐力状態において前記極厚壁が負担する水平力を前記鉄筋のみで保持できる量であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の極厚壁構造。
【請求項5】
前記横材および前記縦材の定着長は、これらの材の降伏に必要な定着長よりも短いことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の極厚壁構造。
【請求項6】
前記横材の断面積比は、前記縦材の断面積比よりも大きいことを特徴とする、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の極厚壁構造。
【請求項7】
前記ひび割れ分散帯は、プレキャスト部材で構成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の極厚壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−192010(P2007−192010A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155527(P2006−155527)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】