説明

極性検出回路

【課題】交流電圧の極性に応じた信号を誤出力しないようにする。
【解決手段】交流電源から出力される交流電圧の極性を示す信号を出力する極性検出回路であって、前記交流電源から出力される第1相の交流電圧がアノードに印加される第1ダイオードと、前記交流電源から出力される前記第1相とは位相が逆の第2相の交流電圧がアノードに印加される第2ダイオードと、正の定電圧を出力する定電圧電源と、前記第1相の交流電圧が正極である場合は前記定電圧に応じた電圧を出力し、前記第1相の交流電圧が負極である場合は前記第2ダイオードのカソードの電圧に応じた電圧を出力する第1基準電圧出力回路と、前記第1ダイオードのカソードの電圧に応じた第1電圧と、前記第1基準電圧出力回路から出力される電圧と、を比較し、比較の結果に応じて、前記第1相の交流電圧の極性を示す信号を出力する第1信号出力回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、交流電圧を直流電圧に変換する電源装置として、小型化や軽量化、効率化の面で優れた特性を持つスイッチング方式の電源装置が広く用いられている。スイッチング方式の電源装置では、まず交流電圧を直流電圧に変換し、その後、負荷を駆動するのに必要な電圧になるように昇圧や降圧を行う。
【0003】
このようなスイッチング方式の電源装置に関して、出力電圧の安定化や効率の向上、小型化などを推進すべく様々な技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−64432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなスイッチング方式の電源装置(以下スイッチング電源回路とも記す)には、交流電圧の極性に応じた制御を行うために、交流電圧の極性を検出し、検出した極性を示す信号を出力する極性検出回路が広く用いられている。
【0006】
このようなスイッチング電源回路の一例を図8に示す。図8に示すスイッチング電源回路300は、整流回路400と、電圧変換回路500と、極性検出回路600とを備えている。
【0007】
整流回路400は、交流電源100のL端子及びN端子間の交流電圧を直流電圧に変換する回路である。電圧変換回路500は、整流回路400から出力された直流電圧を、負荷200に応じて定められる所定電圧に昇圧あるいは降圧する回路である。極性検出回路600は、スイッチング電源回路300に印加される交流電源100からの交流電圧の極性を検出し、極性に応じて整流回路400を制御するための各種制御信号を出力する回路である。
【0008】
まず整流回路400の構成例を図9に示す。図9に示す整流回路400は、4つのトランジスタTr1〜Tr4(401〜404)と、コンデンサC1(405)と、を含んで構成される同期整流回路である。
【0009】
整流回路400は、交流電源100のL端子側の電圧がN端子側の電圧よりも高い場合に、トランジスタTr1(401)とTr4(404)とをオンにし、トランジスタTr2(402)とTr3(403)とをオフにする。これにより、整流回路400は、交流電源100のL端子から整流回路400に流れ込む電流によりコンデンサC1(405)をチャージする。
【0010】
反対に、交流電源100のN端子側の電圧がL端子側の電圧よりも高い場合には、整流回路400は、トランジスタTr1(401)とTr4(404)とをオフにし、トランジスタTr2(402)とTr3(403)とをオンにする。これにより、整流回路400は、交流電源100のN端子から整流回路400に流れ込む電流によりコンデンサC1(405)をチャージする。
このようにコンデンサC1(405)をチャージするようにして、整流回路400は直流電圧を出力する。
【0011】
次に電圧変換回路500の構成例を図10に示す。図10に示す電圧変換回路500は、コイルL(503)と、トランジスタTr5(501)と、ダイオードD3(502)と、コンデンサC2(504)と、を備えて構成されるチョッパ式ブーストコンバータである。
【0012】
電圧変換回路500は、トランジスタTr5(501)を所定周波数及び所定デューティ比の制御信号でスイッチングすることにより、電圧変換回路500に印加される電圧を所定の電圧に昇圧して出力する。
【0013】
次に極性検出回路600の構成例を図11に示す。図11に示す極性検出回路600は、ダイオードD11、D12(602、606)と、抵抗R11〜R14(603、604、607、608)と、定電圧電源DC(609)と、2つのコンパレータ601、602と、を備えて構成される。
【0014】
コンパレータ601の非反転入力端子には、交流電源100のL端子から出力される電圧をダイオードD11(602)により半波整流した上で、抵抗R11(603)とR14(604)とで分圧した電圧が印加される。またコンパレータ601の反転入力端子には、定電圧電源DC(609)からの電圧が印加される。
【0015】
その場合、交流電源100のL端子側の電圧が上昇してきた際に、コンパレータ601の非反転入力端子の電圧が定電圧電源DC(609)の電圧を超えると、コンパレータ601は、A端子から、一方の論理レベル(例えばHi)の制御信号(制御信号A)を出力する(以下、制御信号Aを出力する、とも記す)。
【0016】
反対に、交流電源100のL端子側の電圧が降下してきた際に、コンパレータ601の非反転入力端子の電圧が定電圧電源DC(609)の電圧を下回ると、コンパレータ601は、制御信号Aの論理レベルを他方の論理レベル(例えばLo)に切り替えて出力する(以下、制御信号Aの出力を停止する、とも記す)。
【0017】
コンパレータ605は、コンパレータ601と同様に、交流電源100のN端子側の電圧に応じてB端子から制御信号(以下、制御信号Bとも記す)を出力、あるいは出力を停止する。
【0018】
図11に示す極性検出回路600では、いずれのコンパレータ601、605も、反転入力端子には定電圧電源DC(609)が接続されており、非反転入力端子の電圧が定電圧電源DC(609)からの電圧値を超えない限り、制御信号A、Bが出力されないようになっている。これにより、交流電源100のL端子側の電圧とN端子側の電圧の高低が入れ替わる際などに、2つのコンパレータ601、605から制御信号Aと制御信号Bが同時に出力されるのを防止している。
【0019】
以上のようにして、極性検出回路600は、交流電源100から出力される交流電圧の極性に応じて、制御信号Aまたは制御信号Bのいずれか一方のみを交互に出力する。そして制御信号Aを整流回路400のトランジスタTr1、Tr4(401、404)のゲート端子に印加し、制御信号BをトランジスタTr2、Tr3(402、403)のゲート端子に印加することにより、整流回路400は、上述した交流電圧から直流電圧への整流を行う。
【0020】
しかしながら、例えば落雷や、外部の電力供給設備の故障などが発生すると、交流電源100のL端子側とN端子側の両方の電圧が大きく上昇する場合がある。その場合には、2つのコンパレータ601、605のうち、本来交流電源100から負の電圧が出力されている方のコンパレータ601又はコンパレータ605の非反転入力端子に印加される電圧が、定電圧電源DC(609)からの電圧を超えてしまい、本来出力されるはずのない制御信号A又は制御信号Bが出力される可能性がある。
【0021】
あるいは、図11に示すように、交流電源100に設けられるX−capと呼ばれるノイズ防止用のコンデンサ101に電荷が蓄積されていた場合には、スイッチング電源回路300を交流電源100に接続した際に、このコンデンサ101から放出される電荷に起因して、本来交流電源100から負の電圧が出力されている方のコンパレータ601又はコンパレータ605の非反転入力端子に印加される電圧が、定電圧電源DC(609)からの電圧を超えてしまい、本来出力されるはずのない制御信号A又は制御信号Bが出力される可能性がある。
【0022】
これらの場合、2つのコンパレータ601、605から制御信号Aと制御信号Bとが同時に出力されてしまうことになる。そうすると、整流回路400の内部回路がショートし、整流回路400、あるいはスイッチング電源回路300を破壊してしまう可能性もある。
【0023】
そのため、交流電源から出力される交流電圧の極性に応じた信号を出力する極性検出回路において、極性を示す信号を誤出力しないようにする技術が求められている。
【0024】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたもので、交流電圧の極性を検出し、極性に応じた信号を出力する極性検出回路において、極性を示す信号を誤出力しない極性検出回路を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するための一つの手段である極性検出回路は、交流電源から出力される交流電圧の極性を示す信号を出力する極性検出回路であって、前記交流電源から出力される第1相の交流電圧がアノードに印加される第1ダイオードと、前記交流電源から出力される前記第1相とは位相が逆の第2相の交流電圧がアノードに印加される第2ダイオードと、正の定電圧を出力する定電圧電源と、前記第1相の交流電圧が正極である場合は前記定電圧に応じた電圧を出力し、前記第1相の交流電圧が負極である場合は前記第2ダイオードのカソードの電圧に応じた電圧を出力する第1基準電圧出力回路と、前記第1ダイオードのカソードの電圧に応じた第1電圧と、前記第1基準電圧出力回路から出力される電圧と、を比較し、比較の結果に応じて、前記第1相の交流電圧の極性を示す信号を出力する第1信号出力回路と、を備える。
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄の記載、及び図面の記載等により明らかにされる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、交流電圧の極性を検出し、極性に応じた信号を出力する極性検出回路において、極性を示す信号を誤出力しないようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るスイッチング電源回路の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る極性検出回路の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る極性検出回路の動作を説明するための図である。
【図4】本実施形態に係る極性検出回路の動作を説明するための図である。
【図5】本実施形態に係るスイッチング電源回路の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る同期整流回路の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態に係るブリッジレスブースト回路の構成例を示す図である。
【図8】本実施形態に係るスイッチング電源回路の構成例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る整流回路の構成例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る電圧変換回路の構成例を示す図である。
【図11】本実施形態を説明するための極性検出回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本実施形態に係る極性検出回路700を構成要素とするスイッチング電源回路1200の構成図を図1に示す。
【0029】
スイッチング電源回路1200は、交流電源100から出力される交流電圧を、負荷200に応じた所定の直流電圧に変換して、負荷200に出力する回路である。
【0030】
交流電源100は、例えば商用の3線式単相交流電源100とすることができる。図1に示す交流電源100は、例えばL(ライブ)端子からは第1相の交流電圧が出力され、N(ニュートラル)端子からは、第1相とは位相が逆の第2相の交流電圧が出力される。第1相及び第2相の各交流電圧は互いに位相が逆なので、交流電源100の中性相の電圧に対して、一方が正極にあるときは他方は負極にあり、他方が正極にあるときは一方は負極にある。
【0031】
もちろん交流電源100は、多相(例えば3相)の交流電源100から出力される各相の交流電圧を組み合わせて生成される単相の交流電圧を出力するものであっても良い。
【0032】
負荷200は、直流電圧により動作する電子機器である。負荷200は、例えば、コンピュータや、デジタルカメラ、携帯電話機、音楽再生機、ゲーム機など、様々な電子機器とすることができる。
スイッチング電源回路1200は、整流回路400と、電圧変換回路500と、極性検出回路700とを備えている。
【0033】
整流回路400は、交流電源100のL端子及びN端子間の交流電圧を直流電圧に変換する。整流回路400は、例えばダイオードを用いたブリッジ整流回路であってもよいし、トランジスタ等のスイッチング素子を用いた同期整流回路であってもよい。
【0034】
本実施形態に係る整流回路400の構成例を図9に示す。図9に示す整流回路400は、4つのトランジスタTr1〜Tr4(401〜404)と、コンデンサC1(405)と、を含んで構成される同期整流回路である。
【0035】
整流回路400は、交流電源100のL端子側の電圧がN端子側の電圧よりも高い場合に、トランジスタTr1(401)とTr4(404)とをオンにし、トランジスタTr2(402)とTr3(403)とをオフにする。これにより、整流回路400は、交流電源100のL端子から整流回路400に流れ込む電流によりコンデンサC1(405)をチャージする。
【0036】
反対に、交流電源100のN端子側の電圧がL端子側の電圧よりも高い場合には、整流回路400は、トランジスタTr1(401)とTr4(404)とをオフにし、トランジスタTr2(402)とTr3(403)とをオンにする。これにより、整流回路400は、交流電源100のN端子から整流回路400に流れ込む電流によりコンデンサC1(405)をチャージする。
このようにしてコンデンサC1(405)がチャージされることにより、整流回路400からは、直流電圧が出力される。
【0037】
この整流回路400による交流電圧から直流電圧への変換機能を有効に機能させるためには、交流電源100から出力される交流電圧の極性を正しく検知し、その極性に応じてトランジスタTr1〜Tr4(401〜404)を正しくスイッチングすることが必要である。
【0038】
詳しくは後述するが、本実施形態に係る極性検出回路700は、交流電源100から出力される交流電圧の極性に応じて、L端子側の電圧がN端子側の電圧よりも高い場合には制御信号Aを出力し、N端子側の電圧がL端子側の電圧よりも高い場合には制御信号Bを出力する。そして制御信号AをトランジスタTr1(401)とTr4(404)とに入力し、制御信号BをトランジスタTr2(402)とTr3(403)とに入力するようにしている。
【0039】
このようにして、交流電圧の極性に応じて、整流回路400内の各トランジスタTr1〜Tr4(401〜404)を正しくスイッチングすることにより、整流回路400において交流電圧から直流電圧への変換が行われる。
【0040】
電圧変換回路500は、整流回路400から出力された直流電圧を、負荷200に応じて定められる所定電圧に昇圧あるいは降圧する。
電圧変換回路500の構成例を図10に示す。図10に示す電圧変換回路500は、コイルL(503)と、トランジスタTr5(501)と、ダイオードD3(502)と、コンデンサC2(504)と、を備えて構成されるチョッパ式ブーストコンバータである。
【0041】
電圧変換回路500は、トランジスタTr5(501)を所定周波数及び所定デューティ比の制御信号でスイッチングすることにより、電圧変換回路500に印加される電圧を所定の電圧に昇圧して出力する。
【0042】
極性検出回路700は、スイッチング電源回路1200に印加される交流電源100からの交流電圧の極性を検知し、極性を示す信号を出力する。
本実施形態に係る極性検出回路700の構成例を図2に示す。図2に示す極性検出回路700は、ダイオードD1(第1ダイオード)703、ダイオードD2(第2ダイオード)709と、抵抗R1〜R10(703〜707、710〜714)と、定電圧電源DC(715)と、2つのコンパレータ(第1信号出力回路、第2信号出力回路)701、708と、を備えて構成される。
【0043】
極性検出回路700は、交流電源100のL端子側の電圧がN端子側の電圧よりも高い場合にはコンパレータ701から制御信号Aを出力し、N端子側の電圧がL端子側の電圧よりも高い場合にはコンパレータ708から制御信号Bを出力する。
【0044】
次に、図3及び図4を参照しながら本実施形態に係る極性検出回路700の動作を説明する。図3は、交流電源100から出力される交流電圧の極性に応じてコンパレータ701から制御信号Aが出力される場合の動作を説明するものである。コンパレータ708から制御信号Bが出力される場合の動作についても同様である。
【0045】
また図4は、極性検出回路700内各部の電圧波形を示す図である。なお図4において、ACINは、交流電源100の中性相の電位に対するL端子側の電位を示す。またa+はコンパレータ701の非反転入力端子、a−はコンパレータ701の反転入力端子、Aはコンパレータ701の出力端子を示す。またb+はコンパレータ708の非反転入力端子、b−はコンパレータ708の反転入力端子、Bはコンパレータ708の出力端子を示す。
【0046】
図3に示すように、本実施形態に係る極性検出回路700のL端子は交流電源100のL端子に接続され、極性検出回路700のN端子は交流電源100のN端子に接続されている。
【0047】
まず、極性検出回路700のL端子に印加される電圧が正の場合は、ダイオードD1(702)のアノードには正の電圧が印加されるので、ダイオードD1(702)のカソードには交流電源100のL端子から出力されている電圧にほぼ等しい電圧が出力される。そのためコンパレータ701の非反転入力端子(a+)には、上記ダイオードD1(702)のカソードの電圧に応じた電圧(第1電圧)が印加される。
【0048】
具体的には、ダイオードD1(702)のカソードの電圧が、抵抗R1(703)、抵抗R3(704)、抵抗R5(705)、抵抗R8(713)、抵抗R10(714)、定電圧電源DC(715)により構成される回路により分圧されることにより、上記第1電圧が出力され、コンパレータ701の非反転入力端子(a+)に印加される。
【0049】
このとき、極性検出回路700のN端子に印加される電圧は負であるので、ダイオードD2(709)のアノードには負の電圧が印加されている。そのため、コンパレータ701の反転入力端子(a−)には、定電圧電源DC(715)から出力される定電圧に応じた電圧(第1基準電圧)が印加されることになる。具体的には、コンパレータ701の反転入力端子(a−)には、定電圧電源DC(715)から出力される定電圧を、抵抗R9(707)と、抵抗R7(706)及び抵抗R6(712)とで分圧した電圧(第1基準電圧)が印加されることになる。
【0050】
そして、コンパレータ701の非反転入力端子に印加される電圧(第1電圧)が、反転入力端子に印加される電圧(第1基準電圧)よりも高い場合には、コンパレータ701は、交流電源100のL端子から出力される交流電圧が正極である旨を示す信号を出力する。具体的にはコンパレータ701は、A端子から出力する信号のレベルを一方の論理レベル(例えばHi)にして出力する。その様子が図4のフェーズI、IIIのAで示す波形に示されている。
【0051】
一方、極性検出回路700のL端子に印加される電圧が負の場合は、ダイオードD1(702)のアノードには負の電圧が印加されるので、コンパレータ701の非反転入力端子(a+)の電圧は、ほぼゼロボルトになる。
【0052】
このとき、極性検出回路700のN端子に印加される電圧は正であるので、ダイオードD2(709)のアノードには正の電圧が印加される。そのためダイオードD2(709)のカソードには交流電源100のN端子から出力されている電圧にほぼ等しい電圧が出力される。
【0053】
そのため、コンパレータ701の反転入力端子(a−)には、ダイオードD2(709)のカソードの電圧に応じた電圧(第1基準電圧)が印加される。具体的には、ダイオードD2(709)のカソードの電圧が、抵抗R2(710)、抵抗R4(711)、抵抗R6(712)、抵抗R7(706)、抵抗R9(707)、定電圧電源DC(715)により構成される回路により分圧されることにより、上記第1基準電圧が出力され、コンパレータ701の反転入力端子(a−)に印加される。
【0054】
そして、コンパレータ701の非反転入力端子に印加される電圧(第1電圧)よりも、反転入力端子に印加される電圧(第1基準電圧)の方が高い場合には、コンパレータ701は、交流電源100のL端子から出力される交流電圧が負極である旨を示す信号を出力する。具体的にはコンパレータ701は、A端子から出力する信号のレベルを他方の論理レベル(例えばLo)にして出力する。その様子が図4のフェーズII、IVのAで示す波形に示されている。
【0055】
以上、コンパレータ701から制御信号Aが出力される場合の動作を説明したが、コンパレータ708から制御信号Bが出力される場合の動作についても同様である。
以上のように本実施形態に係る極性検出回路1200を構成することにより、極性を示す信号を誤出力しないようにすることが可能になる。
【0056】
例えば、交流電源100のL端子から出力される交流電圧が負極にあるときに、落雷や外部の電力供給設備の故障などが発生した場合や、X−cap(101)に電荷が残った状態で電源の投入が行われ、交流電源100のL端子側とN端子側の両方の電圧が大きく上昇した場合について説明する。
【0057】
この場合、極性検出回路700のL端子に印加される電圧が正となるので、コンパレータ701の非反転入力端子には、ダイオードD1(702)のカソードの電圧に応じた電圧が印加されることになる。
【0058】
しかしながらこのとき、極性検出回路700のN端子に印加される電圧も正となっているので、コンパレータ701の反転入力端子には、ダイオードD2(709)のカソードの電圧に応じた電圧が印加されている。
【0059】
つまり、交流電源100のL端子から出力される交流電圧が本来負極にある場合に、コンパレータ701の非反転入力端子に印加される第1電圧が上昇したとしても、コンパレータ701の反転入力端子に印加される第1基準電圧も上昇するので、コンパレータ701は、交流電源100のL端子から出力される交流電圧が負極であることを正しく検知し、交流電圧の極性を示す信号を誤出力しない。
【0060】
本実施形態に係る極性検出回路700は、入力をAC電圧とし、ライブ(L)側とニュートラル(N)側にそれぞれ接続したダイオードD1(702)とD2(709)とによって、入力電圧を半波整流した後に比較器(コンパレータ)の+端子と−端子に入力される回路である。コンパレータはA(701)およびB(708)の2つを有し、コンパレータA(701)の+端子はL側に接続されたR1(703)に、−端子は抵抗R7(706)、R4(711)を介してN側に接続されたR2(710)に接続され、もう一方のコンパレータB(708)の+端子はN側に接続されたR2(710)に、−端子は抵抗R8(713)、R3(704)を介してL側に接続されたR1(703)に接続されている。また2つのコンパレータの−端子はDCバイアスにより電圧を持ち上げられている回路構成となる。
【0061】
これにより、極性検出回路700は、AC入力電圧が正極にあるのか負極にあるのかを、入力の極性に応じた信号をコンパレータより出力することで、ACの極性を検出する。そして極性検出回路700は、コンパレータの−端子に入力される基準電圧に+端子と逆位相となる電圧を、抵抗により電圧レベルを下げて入力している。
【0062】
例えば、正弦波である入力電圧をダイオードD1(702)、D2(709)にて整流した電圧が、コンパレータの+端子の入力となる。またその逆位相の電圧が抵抗を介した後、DCのバイアスによって電圧が持ち上げられ、コンパレータの−端子の入力とされている。+端子と−端子の2つの信号により、コンパレータは出力のタイミングを決定している。
【0063】
このとき、実際の電気回路では入力部にX−cap(101)と呼ばれるコンデンサ(C)などを組み合わせたノイズ防止用回路が存在するため、入力電圧の切断のタイミングによってはこのCに電荷が残った状態で投入が行われる場合がある。
【0064】
極性の振り分けが正しく行われていない場合には、Cに電荷が残った状態で投入した際、入力電圧の位相のタイミングによってはD1(702)とD2(709)のカソードの電圧が同時に発生し、2つのコンパレータが同時に信号を出力することがある。
【0065】
しかしながら、本実施形態に係る極性検出回路700では、コンパレータの検出端子には逆相の(相手方の)電圧が入力されているため、たとえばL側に正の電荷が残った状態でN側を正極で投入したとしても、D1(702)とD2(709)の電圧の差で位相を検出し出力するため、コンパレータ(701、708)の同時出力を避けることが出来る。
【0066】
なおかつ、コンパレータA(701)とB(709)から同時に信号が出力されないようにするために、コンパレータA(701)とB(709)の出力が切り替わる瞬間にはデッドタイムと呼ばれる無反応時間を設ける必要があるが、極性検出回路700では、DCバイアスを掛け、ACを整流した脈流の電圧変化を緩やかにし、−端子に注入することでデッドタイムの調整範囲を広げることが出来る。
【0067】
このように、交流電圧を入力として持つ電気回路において、交流電圧の極性を検出し、それぞれの極性に応じた動作を回路にさせることは、効率の改善や機能価値の追加において有効である。例えば整流を行う場合も、交流電圧の極性に応じた相のスイッチング素子を制御することで、損失を抑えることが可能であり、また停電などの理由で交流の相が抜け落ちた場合も、交流の電圧極性を検出することで対応可能である。
【0068】
そのような様々な回路に本実施形態に係る極性検出回路700を用いた例を、図5〜図7に示す。
図5に示す回路は、交流電源100から出力される交流電圧をAC/DCコンバータ800が直流に変換して負荷200に供給する回路において、極性検出回路700が交流電圧の極性を検出し、交流電圧の極性を示す信号A、Bを制御回路900に入力することにより、制御回路900が、交流電圧の極性に応じてAC/DCコンバータ800に対する制御を行う例である。
【0069】
図6に示す回路は、交流電源100から出力される交流電圧を同期整流回路400により直流に整流して負荷200に供給する回路において、極性検出回路700が交流電圧の極性を検出し、交流電圧の極性を示す信号A、Bを同期整流回路400内のスイッチング素子に入力する例である。
【0070】
図7に示す回路は、交流電源100から出力される交流電圧を、ブリッジ回路を用いずに直流電圧に変換すると共に、負荷200に応じた所定電圧に昇圧するブリッジレスブースト回路1000に、極性検出回路700を適用した例である。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る極性検出回路700によれば、交流電圧の極性を検出し、極性に応じた信号を出力する極性検出回路において、極性を示す信号を誤出力しないようにすることが可能になる
【0072】
また本実施形態に係る極性検出回路700によれば、低損失な整流回路を利用でき、回路の消費電力を抑えることが可能となる。また入力だけでなく交流の出力も検出可能であるため、モータドライブ等のインバータ出力も検出可能である。
【0073】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲を本実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
100 交流電源
700 極性検出回路
701 コンパレータ
702 ダイオード
708 コンパレータ
709 ダイオード
715 定電圧電源
1200 スイッチング電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から出力される交流電圧の極性を示す信号を出力する極性検出回路であって、
前記交流電源から出力される第1相の交流電圧がアノードに印加される第1ダイオードと、
前記交流電源から出力される前記第1相とは位相が逆の第2相の交流電圧がアノードに印加される第2ダイオードと、
正の定電圧を出力する定電圧電源と、
前記第1相の交流電圧が正極である場合は前記定電圧に応じた電圧を出力し、前記第1相の交流電圧が負極である場合は前記第2ダイオードのカソードの電圧に応じた電圧を出力する第1基準電圧出力回路と、
前記第1ダイオードのカソードの電圧に応じた第1電圧と、前記第1基準電圧出力回路から出力される電圧と、を比較し、比較の結果に応じて、前記第1相の交流電圧の極性を示す信号を出力する第1信号出力回路と、
を備えることを特徴とする極性検出回路。
【請求項2】
請求項1に記載の極性検出回路であって、
前記第1信号出力回路は、前記第1電圧の方が前記第1基準電圧出力回路から出力される電圧よりも高い場合に、前記第1相の交流電圧が正極であることを示す信号を出力する
ことを特徴とする極性検出回路。
【請求項3】
請求項1に記載の極性検出回路であって、
前記第2相の交流電圧が正極である場合は、前記定電圧に応じた電圧を出力し、前記第2相の交流電圧が負極である場合は、前記第1ダイオードのカソードの電圧に応じた電圧を出力する第2基準電圧出力回路と、
前記第2ダイオードのカソードの電圧に応じた第2電圧と、前記第2基準電圧出力回路から出力される電圧と、を比較し、比較の結果に応じて、前記第2相の交流電圧の極性を示す信号を出力する第2信号出力回路と、
を備えることを特徴とする極性検出回路。
【請求項4】
請求項3に記載の極性検出回路であって、
前記第1信号出力回路は、前記第1電圧の方が前記第1基準電圧出力回路から出力される電圧よりも高い場合に、前記第1相の交流電圧が正極であることを示す信号を出力し、
前記第2信号出力回路は、前記第2電圧の方が前記第2基準電圧出力回路から出力される電圧よりも高い場合に、前記第2相の交流電圧が正極であることを示す信号を出力する
ことを特徴とする極性検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−157197(P2012−157197A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15469(P2011−15469)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】