説明

極端子のための支承装置

本発明は、電子または電気機器のケーシング壁(6)に極端子(2,3)を支承するための支承装置であって、前記支承装置(1)は前記極端子(2,3)を収容するための極端子収容部を有する、支承装置に関する。本発明によれば、前記支承装置(1)は固体伝播音を減衰させる材料を有しており、取り付け状態では、前記極端子収容部が前記固体伝播音を減衰させる材料を介して前記ケーシング壁に支承されていることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器または電子機器のケーシング壁にて極端子を支承するための支承装置であって、極端子を収容するための極端子収容部を有する支承装置に関する。
【0002】
極端子の多くは、例えばケーブル線を介してスピーカをアンプに結合させるために家庭用電気機械器具で使用される。極端子は手動で容易に結合および分離できることが特徴である。従来の極端子は通常、対応する家庭用電気機械器具のケーシング壁に直接ネジ留めされる。このような極端子は、例えばDE10217082A1から公知である。極端子は結局のところ、非常に一般的には、ケーブル線と装置との間の(単極または多極の)分離可能な電気的な接続を形成するための電気機械装置であると理解すべきである。
【0003】
2つの導体が極端子を介して機械的に接続されると、これら2つの導体の間の移行部に電気的な抵抗が発生する。この抵抗は様々な要因に依存しており、とりわけ導体同士を互いに押し合わせる機械的な圧力にも依存している。
【0004】
コンタクト箇所が振動または揺動されると、この圧力は振動のリズムによって一時的に著しく変化してしまう。このことはつまり、このリズムによって信号が良好に伝送されたり劣悪に伝送されたりするということを意味する。この作用はとりわけスピーカの場合に生じ、信号の歪みとして顕著に聞こえてしまう。
【0005】
極端子を電子機器のケーシング壁に直接配置することは、当該機器の固体伝播音が直接的に極端子に伝播してしまうという欠点を有する。したがってとりわけスピーカの形態の電気機器の場合にはこの固体伝播音の伝播により極端子が絶えず機械的に振動されてしまい、これによって極端子と、該極端子に直接固定された対応するケーブル、または、極端子にプラグ(例えばバナナプラグ)を介して接続された対応するケーブルとの間のコンタクト面における導電接触点の大きさおよび数が変化してしまう。
【0006】
極端子と、該極端子に固定されたケーブルとの間のコンタクト面におけるコンタクト圧力の上昇は、微視的に視るとせいぜい導電接触点の数を増加させるだけであるが、しかしながらコンタクトの安定性は改善しない。
【0007】
電気コンタクト部の機械的固体伝播音による負荷のせいで生じる変調プロセスは、広帯域において非線形である。つまり、固体伝播音によって引き起こされる歪みは修正不能である。
【0008】
したがって本発明の課題は、極端子と、該極端子に固定された対応する導体エレメントとの間のコンタクト面における接触抵抗を最適化することである。
【0009】
この課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明によれば、電子機器のケーシング壁にて極端子を支承するための支承装置であって、前記支承装置は、前記極端子を収容するための極端子収容部を有する支承装置において、前記支承装置は固体伝播音を減衰させる材料を有しており、取り付け状態では、前記極端子収容部が前記固体伝播音を減衰させる材料を介してケーシング壁に支承されていることを特徴とする支承装置が提供される。
【0011】
本発明の実施形態は、電子機器における極端子の機械的固体伝播音による負荷が最小化されるという利点を有する。固体伝播音を減衰させる材料を介して極端子を支承することによって、発生する固体伝播音は十分に吸収される。この結果、極端子は実質的に振動なく極端子収容部の中に収容されることとなる。したがってケーシング壁の機械的振動は対応する極端子に伝達されないので、極端子と対応する電気導体またはプラグとのコンタクトにおける、機械的固体伝播音による変動性の負荷は、最小化される。
【0012】
「取り付け状態」とは、支承装置が、機能に応じた使用のために電子機器のケーシング壁に固定されている状態を意味する。
【0013】
本発明の1つの実施形態によれば、極端子収容部は、実質的に剛性のプレートとして構成されている。この剛性のプレートは例えば射出成形法によってプラスチックから製造することができる。剛性のプレートは極端子のための切欠部を有しているので、ここに従来構造の極端子を使用することができる。
【0014】
固体伝播音を減衰させる材料は例えばエラストマ材料とすることができ、このエラストマ材料は、剛性のプレートの縁部を少なくとも部分的に包囲するフレームを形成している。例えばこのフレームは極端子収容部の剛性のプレートに射出成形することができる。こうして、このフレームを介して極端子収容部をケーシング壁に支承することができる。
【0015】
上述したように弾性のフレームは、ケーシングから極端子への固体伝播音の伝播を低減させる。その他の点では、極端子は、従来方法で剛性のプレートに取り付けることが可能である。
【0016】
有利には、弾性のフレームは環状溝を有しており、極端子収容部はこの環状溝を介してケーシング壁に形状接続によって固定されている。フレームの弾性に基づき、ケーシング壁に取り付けるための本発明の支承装置を、ケーシング壁の相応の切欠部の中に簡単にクリップ留めすることができる。
【0017】
本発明の別の1つの実施形態によれば、支承装置は複数の部分から構成されており、支承装置は、取り付け状態では、ケーシング壁に設けられた切欠部の縁部を、ケーシング壁の表面および裏面において把持している。支承装置は例えば2つの部分から構成することができ、一方の部分はケーシング壁の裏面から、他方の部分はケーシング壁の表面から、ケーシング壁に専用に設けられた切欠部へと嵌め込むことができる。それからこれら2つの部分は互いに固定される。これら2つの部分は、ケーシングの表面および裏面から切欠部の縁部を同時に把持することができ、これら2つの部分の間に(形状による接続および/または力による接続によって)収容する。こうすることによってケーシング壁への固定は、付加的な固定手段なしで特に簡単に形成される。
【0018】
本発明による固体伝播音の減衰に基づき、極端子と該極端子に接続すべき導体との間の相応のコンタクト面における導電接触点の大きさおよび数が実質的に一定になり、これによって極端子と電気導体との間の接触抵抗は変化しなくなる。したがって例えばHiFi信号のような伝達すべき電気信号に対する固体伝播音によって誘導される変調は確実に回避される。これによって相応のHiFiコンポーネントの音質は全体として向上する。
【0019】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、2つの極端子を備えた本発明の支承装置の立体図である。
【図2】図2は、本発明の2つの支承装置を備えた取り付けプレートの平面図である。
【図3】図3は、図2の取り付けプレートの側断面図である。
【0021】
図1では、本発明の支承装置全体が参照符号1で表されている。図示した実施例では、支承装置1は、スピーカまたはアンプのケーシング壁(図1には図示せず)にて2つの極端子2,3を支承するために使用される。極端子2を介してケーブル線と電気的な接続することができ、例えばプラグ開口部2’に挿入可能なバナナプラグまたはマルチスプリングワイヤプラグ等を介して行うことができる。極端子3は、絶縁除去されたケーブル端部を締め付けて接続させるために使用される。このためにケーブル端部はスロット3’に挿入され、該スロット3’にてクランプネジ3’’によって緊締される。
【0022】
支承装置1は、プラスチック(例えばグラスファイバ充填物を有するポリアミド)製の剛性のプレート4の形態の極端子収容部から構成されており、この極端子収容部は、図示した実施例においては2つの極端子2,3のための2つの切欠部を有する。剛性のプレート4の縁部は、例えばエラストマ材料(例えばショア硬度40から80のポリフェニレンサルファイド)のような固体伝播音を減衰させる材料からなるフレーム5によって取り囲まれている。剛性のプレート4はフレーム5を介してケーシング壁に支承されている。弾性のフレーム5はケーシングから極端子2,3への固体伝播音の伝播を低減させ、他方では、極端子2,3は従来方法によって剛性のプレート4に取り付けられる。極端子2,3は上から、対応する剛性のプレート4の切欠部を通して挿入され、下から雌ネジ(図示していない)によってネジ留めされる。
【0023】
図2は2つの支承装置を図示しており、これらの支承装置は自身のエラストマフレーム5を介して取り付けプレート6に固定されている。取り付けプレート6は支承装置1に対応する切欠部を有しており、スピーカまたはアンプのケーシングの中に挿入され、したがって本発明の意味でのケーシング壁を形成している。図2は、極端子を有しない支承装置1を図示している。極端子のための切欠部は、図2では参照符号7で表されている。切欠部7は縁部に溝を有しており、この溝に対応する極端子の突出部が噛み合うようになっていて、極端子を回動不能に固定することができる。
【0024】
図3では、支承装置1がそれぞれ2つのパーツから構成されている様子が見て取れる。支承装置1は、それぞれ上側のプレート部分4’と下側のプレート部分4’’とからなる。上側のプレート部分4’には上側のフレーム部分5’が配置されており、下側のプレート部分4’’には下側のフレーム部分5’’が配置されている。
【0025】
図3に図示されている取り付け状態では、対になっている上側のフレーム部分5’と下側のフレーム部分5’’とが、互いの間にそれぞれ1つの環状溝を形成しており、この環状溝を介して支承装置1は、ケーシング壁6に、形状に基づく結合によって固定されている。上側の部分4’,5’はケーシング壁6の前面から、下側の部分4’’,5’’はケーシング壁6の裏面から、ケーシング壁6にそれぞれ専用に設けられた切欠部の中に挿入されている。上側のプレート部分4’と下側のプレート部分4’’にはガイドピン8が設けられており、ガイドピン8を介してこれらのプレート部分4’,4’’は互いにガイドされている。それからプレート部分4’、4’’は互いに固定され、このために係止突出部ないし係止陥没部9が使用される。(図3には図示されていない)極端子が嵌め込まれてネジ留めされた後、最終的にプレート部分4,4’’が相互に固定される。フレーム部分5’,5’’はそれぞれ、取り付けプレート6に設けられた切欠部の縁部を前面および裏面から把持しており、取り付けプレート6をこれら2つのフレーム部分の間に形状に基づく結合によって収容している。
【0026】
図3において示した実施例では、取り付けプレート6の上に付加的にフォームラバー層10が被着されているが、このフォームラバー層10は本発明の支承装置1の機能にとって重要なものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子または電気機器のケーシング壁(6)に極端子(2,3)を支承するための支承装置であって、前記支承装置(1)は前記極端子(2,3)を収容するための極端子収容部を有する、
支承装置において、
前記支承装置(1)は固体伝播音を減衰させる材料を有しており、
取り付け状態では、前記極端子収容部が前記固体伝播音を減衰させる材料を介して前記ケーシング壁に支承されている、
ことを特徴とする支承装置。
【請求項2】
前記極端子収容部は、前記極端子(2,3)を収容するための切欠部(7)を備えた実質的に剛性のプレート(4)を有しており、
前記固体伝播音を減衰させる材料は、前記剛性のプレート(4)の縁部を少なくとも部分的に取り囲むフレーム(5)を形成しており、
前記フレーム(5)を介して前記極端子収容部が前記ケーシング壁(6)に支承されている、
ことを特徴とする請求項1記載の支承装置。
【請求項3】
前記フレーム(5)は、環状溝を有しており、
前記環状溝を介して、前記支承装置(1)が、形状に基づく結合によって前記ケーシング壁(6)に固定されている、
ことを特徴とする請求項2記載の支承装置。
【請求項4】
前記固体伝播音を減衰させる材料はエラストマ材料である、
ことを特徴とする請求項2または3記載の支承装置。
【請求項5】
前記エラストマ材料からなるフレーム(5)は、前記極端子収容部の前記剛性のプレート(4)に射出成形されている、
ことを特徴とする請求項4記載の支承装置。
【請求項6】
前記支承装置(1)は複数のパーツから構成されており、
前記支承装置(1)は、取り付け状態では、前記ケーシング壁(6)に設けられた切欠部の縁部を、前記ケーシング壁(6)の前面および裏面にて把持している、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の支承装置。
【請求項7】
前記電気または電子機器は、家庭用電気機械器具である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の支承装置。
【請求項8】
前記電気または電子機器は、スピーカである、
ことを特徴とする請求項7記載の支承装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−520773(P2013−520773A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554239(P2012−554239)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000607
【国際公開番号】WO2011/101103
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(592007896)
【氏名又は名称原語表記】Wolfgang B.Thoerner
【住所又は居所原語表記】Im Teelbruch 103,D−45219 Essen,Germany
【Fターム(参考)】