極端紫外光源装置
【課題】ターゲット物質又はプラズマによって反射されてドライバレーザに戻る反射光(戻り光)によるドライバレーザの故障を防止する極端紫外光源装置を提供する。
【解決手段】この極端紫外光源装置は、チャンバ内にターゲットを供給するターゲット供給部と、ドライバレーザから出射されるレーザ光をターゲットに集光することによってプラズマを発生させるレーザ集光光学系と、プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するEUV集光光学系と、所定の光路を通過したレーザ光の第1の直線偏光成分を円偏光成分に変換しながら反射し、集光されたレーザ光がターゲット又はプラズマによって反射されて生じた戻り光の円偏光成分を第2の直線偏光成分に変換しながら反射するリターダーと、レーザ光の光路に配置され、第1の直線偏光成分を反射して第2の直線偏光成分を吸収するコーティングミラーとを具備する。
【解決手段】この極端紫外光源装置は、チャンバ内にターゲットを供給するターゲット供給部と、ドライバレーザから出射されるレーザ光をターゲットに集光することによってプラズマを発生させるレーザ集光光学系と、プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するEUV集光光学系と、所定の光路を通過したレーザ光の第1の直線偏光成分を円偏光成分に変換しながら反射し、集光されたレーザ光がターゲット又はプラズマによって反射されて生じた戻り光の円偏光成分を第2の直線偏光成分に変換しながら反射するリターダーと、レーザ光の光路に配置され、第1の直線偏光成分を反射して第2の直線偏光成分を吸収するコーティングミラーとを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置の光源として用いられる極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィにおける微細化が急速に進展しており、次世代においては、100nm〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、ターゲットにレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(laser produced plasma:レーザ励起プラズマ)光源(以下において、「LPP式EUV光源装置」ともいう)と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
ここで、LPP方式によるEUV光の生成原理について説明する。真空チャンバ内に供給されるターゲット物質に対してレーザ光を照射することにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化する。このプラズマから、EUV光を含む様々な波長成分が放射される。そこで、所望の波長成分(例えば、13.5nmの波長を有する成分)を選択的に反射するEUVコレクタミラーを用いてEUV光が反射集光され、露光器に出力される。
【0005】
そのようなLPP式EUV光源装置においては、一般に、駆動用光源(ドライバレーザ)として短パルスレーザが用いられる。短パルスレーザは、LPP型EUV光源装置において高いCE(conversion efficiency:照射レーザ光からEUV光への変換効率)を得るのに適しているからである。
【0006】
図22は、LPP式EUV光源装置において用いられるドライバレーザの構成例を示す概略図である。ドライバレーザ13は、レーザ光を発生する発振器13aと、発振器13aが発生したレーザ光を増幅する増幅器13bとによって構成される。このような構成のレーザは、発振増幅型レーザと呼ばれている。
【0007】
ここで、増幅器13bが光共振器を持たない場合に、そのような構成を有するレーザシステムは、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)システムと呼ばれる。増幅器13bは、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、さらに、必要に応じて、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、キセノン(Xe)等を含むCO2レーザガスを放電によって励起する放電装置を有している。なお、図22に示す増幅器13bとは異なり、増幅段に共振器を設ける場合には、増幅段単体によるレーザ発振が可能である。そのような構成を有するレーザシステムは、MOPO(Master Oscillator Power Oscillator)システムと呼ばれる。
【0008】
発振器13aから出射したエネルギーAを有するレーザ光は、増幅器13bにおいて所望のエネルギーBを有するレーザ光に増幅される。このエネルギーBを有するレーザ光は、レーザ集光光学系によって集光されて、ターゲット物質に照射される。ここで、図22においては、レーザエネルギーAをレーザエネルギーBまで増幅するために、増幅器を1段しか設けていないが、所望のレーザエネルギーBが得られない場合には、複数段の増幅器を用いても良い。
【0009】
次に、発振器13aとして用いられる短パルスCO2レーザの構成例について説明する。特許文献1には、短パルスRF(Radio Frequency励起)−CO2レーザの構成が開示されている(特許文献1の図5)。このRF−CO2レーザにおいては、100kHz程度までレーザパルスの高繰り返し運転が可能である。実用上は、100W級のEUV発光を得る必要があるが、CO2レーザによるCEを0.5%と見積り、さらに伝播損失を70%と見積もると、CO2レーザに求められる出力は60kW程度になる。60kWの出力を短パルスレーザにおいて達成するためには、光学素子等の耐久性等を考慮すると、50kHz〜100kHz程度の繰り返し周波数が必要となる。なお、発振器から出射されるレーザ光のパルス幅は、100ns以下が望ましい。
【0010】
その理由は次の通りである。CO2レーザの出力をEtotal、パルス発振の繰返し周波数をfi(i=1,2,3,…)、1つのパルスの光エネルギーをEpj(j=1,2,3,…)とすると、Etotal=f1×Ep1=f2×Ep2という関係がある。ここで、Epが大きい場合には、レーザ光が透過する光学素子に与えられるダメージも大きくなるので、光学素子の劣化が早くなる。そのため、Epは小さい方が望ましい。そこで、所望のEtotalを得るためにEpを小さくして、繰返し周波数fを大きくすれば良い。
【0011】
このように高い繰返し周波数を実現するためには、RF(Radio Frequency励起)−CO2レーザを用いることが適当である。その理由は、パルスCO2レーザとしては、この他にもTEA(Transverse Excitation Atmospheric)−CO2レーザがあるが、現状の技術では、2kHz程度の繰返し動作が限界だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許6,697,408(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記したように、ドライバレーザからターゲット物質に対してレーザ光を照射することにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化し、このプラズマから、EUV光が放射される。ここで、ドライバレーザから出射されたレーザ光がターゲット物質又はプラズマによって反射され、その反射光がドライバレーザに戻ることによって、増幅器13b内で増幅され、発振器13aの故障の原因になることが考えられる。
【0014】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、ターゲット物質又はプラズマによって反射されてドライバレーザに戻る反射光(戻り光)によるドライバレーザの故障を防止することができる極端紫外光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る極端紫外光源は、ターゲットにレーザ光を照射することにより極端紫外光を発生する極端紫外光源装置であって、極端紫外光の生成が行われるチャンバと、チャンバ内の所定の位置にターゲットを供給するターゲット供給部と、少なくとも1つの光学素子を含み、ドライバレーザから出射されるレーザ光をターゲットに集光することによってプラズマを発生させるレーザ集光光学系と、プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するEUV集光光学系と、ドライバレーザから出射されて所定の光路を通過したレーザ光の第1の直線偏光成分を円偏光成分に変換しながら反射し、集光されたレーザ光がターゲット又はプラズマによって反射されて生じた戻り光の円偏光成分を第2の直線偏光成分に変換しながら反射するリターダーと、ドライバレーザから出射されるレーザ光の光路に配置され、第1の直線偏光成分を反射して第2の直線偏光成分を吸収するコーティングミラーとを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ターゲット物質又はプラズマによって反射されてドライバレーザに戻る反射光(戻り光)を低減することにより、ドライバレーザの故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の内部構造を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の内部構造を示す平面図である。
【図3】集光レンズの位置と戻り光との関係を示す図である。
【図4】戻り光を測定するための実験において使用した装置を示す図である。
【図5】実験によって測定された戻り光量とEUV光量との関係を示す図である。
【図6】レーザ入射方向に対するターゲットの角度を変化させて戻り光量の変化を測定した結果を示す図である。
【図7】ターゲットをレーザ光の入射方向に対して30度傾けた状態においてターゲットによって反射されるレーザ光を示す図である。
【図8】プラズマによって反射・散乱されるレーザ光を示す図である。
【図9】入射レーザ光と戻り光の波形を示す図である。
【図10】ターゲットに対するレーザ光の入射角が0度の状態における戻り光量の実験値と計算値を示す図である。
【図11】ターゲットに対するレーザ光の入射角が0度、30度、45度の状態における戻り光量の計算値を示す図である。
【図12】図1及び図2に示すフィルタ部として空間フィルタを用いた場合の戻り光量低減効果を示す図である。
【図13】図1及び図2に示すフィルタ部として空間フィルタとコリメート光学系との組合せを用いた構成を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図17】本発明の第5の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図18】本発明の第6の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図19】本発明の第7の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図20】図18に示すリターダーの動作を説明するための図である。
【図21】本発明の第8の実施形態に係る極端紫外光源装置における光学系の構成を示す図である。
【図22】LPP式EUV光源装置において用いられるドライバレーザの構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の内部構造を示す側面図であり、図2は、本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の内部構造を示す平面図である。本実施形態に係るEUV光源装置は、レーザ光をターゲット物質に照射して励起させることによりEUV光を生成するレーザ励起プラズマ(LPP)方式を採用している。
【0019】
図1及び図2に示すように、このEUV光源装置は、EUV光の生成が行われる真空チャンバ10と、ターゲット1を供給するターゲット供給装置11と、ターゲット1に照射される励起用レーザ光2を生成するドライバレーザ13と、少なくとも1つのレンズ又はミラー等の光学素子を含み、ドライバレーザ13によって生成される励起用レーザ光2をターゲット1に集光させることによってプラズマ3を発生させるレーザ集光光学系14と、プラズマ3から放出されるEUV光4を集光して出射するEUVコレクタミラー15と、ターゲット1を回収するターゲット回収装置16と、レーザ集光光学系14に含まれている少なくとも1つの光学素子の位置を調節する位置調節機構20とを有している。
【0020】
さらに、このEUV光源装置は、レーザ集光光学系14によって集光されたレーザ光がターゲット1及びプラズマ3によって反射されて生じる戻り光がドライバレーザ13に入射する量を低減させるフィルタ部30と、所定の位置において戻り光を検出する戻り光検出器40と、EUVコレクタミラー15を介さずに発光点におけるEUV光を検出するための多層膜ミラー51及びEUV光検出器52と、戻り光検出器40及び/又はEUV光検出器52の検出結果に基づいてドライバレーザ13及び/又は位置調節機構20を制御する制御部60とを有している。
【0021】
真空チャンバ10には、励起用レーザ光2を導入する導入窓18と、プラズマから放射されるEUV光を露光器に導出する導出窓19とが設けられている。なお、露光器の内部も、真空チャンバ10の内部と同様に、真空又は減圧状態に保たれる。ターゲット供給装置11は、ターゲット1の位置を調整しながら真空チャンバ10内の所定の位置にターゲット1を供給する。
【0022】
ドライバレーザ13は、高い繰り返し周波数(例えば、パルス幅が数n秒〜数十n秒程度、周波数が1kHz〜100kHz程度)でパルス発振可能なレーザ光源である。レーザ集光光学系14は、少なくとも1つのレンズ又はミラーを含んでおり、ドライバレーザ13から出射されるレーザ光を集光する。レーザ集光光学系14によって集光されたレーザ光2は、真空チャンバ10内の所定の位置において、ターゲット供給装置11によって供給されるターゲット1を照射する。これにより、ターゲット1の一部が励起してプラズマ化し、発光点から様々な波長成分が放射される。ここで、発光点とは、プラズマ3が発生する位置を意味する。
【0023】
EUVコレクタミラー15は、プラズマ3から放射される様々な波長成分の内から、所定の波長成分(例えば、13.5nm付近のEUV光)を選択的に反射することにより集光するEUV集光光学系である。EUVコレクタミラー15は、凹状の反射面を有しており、この反射面には、例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するためのモリブデン(Mo)及びシリコン(Si)の多層膜が形成されている。
【0024】
図1において、EUVコレクタミラー15によりEUV光が右方向に反射され、EUV中間集光点に集光された後、露光器に出力される。なお、EUV光の集光光学系は、図1に示すEUVコレクタミラー15に限定されず、複数の光学部品を用いて構成しても良いが、EUV光の吸収を抑えるために反射光学系とすることが必要である。
【0025】
ターゲット回収装置16は、発光点を挟みターゲット供給装置11に対向する位置に配置されており、プラズマ化しなかったターゲットを回収する。回収されたターゲットは、ターゲット循環装置によって再びターゲット供給装置11に戻し、再利用するようにしても良い。
【0026】
多層膜ミラー51には、例えば、13.5nm付近の波長に対して反射率が高いモリブデン及びシリコンの多層膜が形成されている。EUV光検出器52は、例えば、ジルコニウム(Zr)フィルタ及びフォトダイオードによって構成される。ジルコニウムフィルタは、波長が20nm以上の光をカットする。フォトダイオードは、入射した光の強度又はエネルギーに応じた検出信号を出力する。
【0027】
本実施形態においては、図22に示すように、ドライバレーザ13として、比較的波長の長い光を生成することができるCO2レーザによって構成される発振器13aと、発振器13aが発生したレーザ光を増幅する少なくとも1つの増幅器13bとによって構成される発振増幅型レーザが用いられる。長波長かつ短パルスレーザを用いることにより、EUV光の発生に寄与せずデブリを発生させる熱源となる低温高密度プラズマ領域の生成が抑制されるので、固体ターゲット表面の溶融が進まず、ターゲット1から放出されてEUVコレクタミラー15の反射面に付着する中性粒子が大幅に低減される。一方、プラズマ3からは高速イオンも放射されるので、EUVコレクタミラー15の反射面に形成されている多層膜が削り取られる。
【0028】
また、ターゲット1として、固体の錫(Sn)又はリチウム(Li)が用いられる。その場合には、ターゲットから発生する中性粒子が非常に少なくなるので、所定の条件の下で、EUVコレクタミラー15の反射面に付着する中性粒子の量(デポジション量)を、EUVコレクタミラー15の反射面から削り取られる多層膜の量(スパッタリング量)とバランスさせ、あるいは、デポジション量をスパッタリング量よりも小さくできることが検証された。これにより、EUVコレクタミラー15の反射面にデブリが付着するという問題を解決することができる。
【0029】
さらに、本実施形態においては、制御部60の制御の下で、位置調整機構20が、レーザ集光光学系14の集光焦点の位置がプラズマ3の発光点から所定の距離だけ外れるように、レーザ集光光学系14に含まれている少なくとも1つの光学素子の位置を調整する。これについて、レーザ集光光学系14として集光レンズを用いる場合を例にとって、以下に説明する。
【0030】
図3は、集光レンズの位置と戻り光との関係を示す図である。図3の(a)は、ベストフォーカスの状態を示しており、戻り光がコリメートされて高い指向性を有するようになり、長距離を伝播することが可能になって、ドライバレーザ13に入射される戻り光の量が最も大きくなる。図3の(b)は、集光レンズの位置がプラズマ3側に近付いたデフォーカス1の状態を示しており、戻り光が大きな広がり角を有するようになって、ドライバレーザ13に入射される戻り光の量が減少する。図3の(c)は、集光レンズの位置がプラズマ3側から遠のいたデフォーカス2の状態を示しており、戻り光が一端収束した後に大きな広がり角を有するようになって、ドライバレーザ13に入射する戻り光の量が減少する。以上のことは、レーザ集光光学系14として集光ミラーを用いる場合においても同様である。
【0031】
図4は、戻り光を測定するための実験において使用した装置を示す図である。この実験においては、ドライバレーザとして、波長10.6μmのレーザ光を発生するCO2レーザを使用し、P偏光成分のみを図4に示す装置に入射させるようにした。また、ターゲットとして、固体(平板)の錫(Sn)を使用した。集光レンズとしては、焦点距離が60mmのメニスカスレンズを使用した。
【0032】
戻り光の光路に配置された薄膜型偏光子(TFP)は、P偏光成分を透過させて、S偏光成分を反射する。図4の左側から入射するP偏光のレーザ光は、薄膜型偏光子を透過して、1/4波長板に入射する。P偏光のレーザ光は、1/4波長板を透過することにより、円偏光となる。集光レンズによって集光されたレーザ光は、真空容器内のターゲットに照射され、ターゲットをプラズマ化する。
【0033】
ターゲット又はプラズマによって反射された円偏光の戻り光は、集光レンズによってコリメートされ、1/4波長板を通過することにより、S偏光となる。S偏光となった戻り光は、薄膜型偏光子によって、フォトディテクタの方向に反射される。ここで、1/4波長板の直径は10mmであり、1/4波長板の周辺部は、直径50mm程度のレーザ光を透過しないホルダーで固定されているので、戻り光に対して直径10mmの空間フィルタとして作用する。薄膜型偏光子によって反射された戻り光はフォトディテクタに入射し、戻り光量が測定される。この実験によって測定された戻り光の量(光強度)と、同時に測定されたEUV光の量(光強度)との関係を、図5に示す。
【0034】
図5は、集光レンズの位置に対する戻り光量及びEUV光量の変化を示す図である。図5等においては、ベストフォーカスの位置を0μmとして、ターゲットに近い方がマイナスの値となっている。図5に示すように、戻り光量は、集光レンズの位置に大きく依存し、ベストフォーカスの位置で最大になることが明らかになった。また、集光レンズの位置をデフォーカスの位置とすることによって、戻り光量が大幅に低減される。一方、EUV光量は、ベストフォーカスの位置ではなく、デフォーカスの位置で最大となることが分る。従って、集光レンズの位置をデフォーカスの位置とすることによって、CE(照射レーザ光からEUV光への変換効率)を高くすることと、戻り光の量を低減することとを、両立させることができる。
【0035】
ところで、戻り光の成分としては、プラズマ生成前にターゲットの表面において反射される成分と、プラズマ生成後にプラズマにおいて反射・散乱される成分とが存在する。そこで、それらの成分の内のいずれが主成分であるかを見極めるための実験を行った。この実験においては、ターゲットとして錫(Sn)の平板を用いて、レーザ入射方向に対するターゲットの角度(入射角)を、0度、30度、45度に変化させて、戻り光量の変化を測定した。その結果を、図6に示す。
【0036】
図6は、入射角をパラメータとして、集光レンズの位置に対する戻り光量の変化を示す図である。図7は、ターゲットをレーザ光の入射方向に対して30度傾けた状態においてターゲットによって反射されるレーザ光を示す図である。ターゲットは、レーザ光に対してミラーのように振る舞うと考えられるから、図7に示すようにターゲットをレーザ光の入射方向に対して30度傾けた状態においては、ターゲットの表面において反射される成分がレーザ入射方向に戻ることはあり得ない。しかしながら、図6に示すように、ターゲットをレーザ入射方向に対して30度又は60度傾けた状態においても、かなりの量の戻り光が観測された。この結果から、戻り光において、ターゲットの表面において反射された成分は非常に少ないと考えられる。
【0037】
図8は、プラズマによって反射・散乱されるレーザ光を示す図である。ターゲットをレーザ光の入射方向に対して傾けたことにより戻り光量が変化する原因としては、図8の(a)〜(c)に示すように、プラズマの生成方向が主にターゲット表面の法線方向に指向性を持つので、プラズマからレーザ光の入射方向に対して反射・散乱される光の量が変化することにより、戻り光量が変化すると考えられる。
【0038】
図9は、入射レーザ光と戻り光の波形を示す図である。これらの波形は、図4に示すフォトディテクタの位置に、レーザパルス波形を観測できる計測器を配置して測定したものである。図9に示すように、戻り光は、主にレーザパルスの後半部分で発生しており、プラズマ生成前にターゲットの表面において反射された成分(レーザパルスの前半部分に相当)は少なく、プラズマ生成後にプラズマによって反射・散乱された成分(レーザパルスの後半部分に相当)が主であることが分る。
【0039】
次に、光学シミュレーションを行うことによって、戻り光の集光レンズ位置に対する依存性を計算した。この光学シミュレーションは、図4に示す実験装置を再現しており、レーザ光の反射面を曲率半径0.1mmのマルチレンズアレイとして、プラズマによる反射・散乱を表したものである。
【0040】
図10は、ターゲットに対するレーザ光の入射角が0度の状態における戻り光量の実験値と計算値を示す図であり、光学シミュレーションの結果は、実験結果とほぼ一致している。図11は、ターゲットに対するレーザ光の入射角が0度、30度、45度の状態における戻り光量の計算値を示す図である。これらの結果から、戻り光量は、集光レンズの位置、即ち、集光光学系の配置に大きく依存することが分る。
【0041】
以上の実験により、次のことが明らかになった。
(1)戻り光は、ターゲットの表面よりも、主に、プラズマからの反射光である。
(2)プラズマからの戻り光は、集光レンズ(又は、集光ミラー)の位置に大きく依存する。集光レンズがベストフォーカスの位置にあるときに、ドライバレーザに入射する戻り光の量が最も大きくなることから、集光レンズによる戻り光のコリメート効果が大きく影響している。従って、戻り光をコリメートしないように、集光レンズをデフォーカスの位置に置くことにより、ドライバレーザに入射する戻り光の量を低減することができる。
(3)レーザ光の強度が十分な場合には、図3の(b)に示すように、集光レンズの位置がプラズマ3側に近付くデフォーカス1の状態としたときに、CE(照射レーザ光からEUV光への変換効率)が最大となる。従って、戻り光の量を低減することと、高いCEを実現することとを、両立させることができる。
【0042】
このように、集光レンズの位置がデフォーカスの状態としたときに戻り光が大きな拡がり角を有するので、レーザ光は透過するが戻り光は遮る空間フィルタを用いることによって、戻り光量を低減することが可能となる。
【0043】
図12は、図1及び図2に示すフィルタ部として空間フィルタを用いた場合の戻り光量低減効果を示す図である。図12の(a)に示すベストフォーカスの状態においては、空間フィルタ31を設けても戻り光量低減効果は得られないが、図12の(b)に示すデフォーカス1の状態及び図12の(c)に示すデフォーカス2の状態においては、空間フィルタ31を設けることにより光量低減効果が得られる。また、図12の(b)に示すように、レーザ集光光学系(集光レンズ)14の位置がプラズマ3側に近付くデフォーカス1の状態としたときに、CE(照射レーザ光からEUV光への変換効率)が最大となる(図5参照)。
【0044】
図13は、図1及び図2に示すフィルタ部として空間フィルタとコリメート光学系との組合せを用いた構成を示す図である。図13に示すように、コリメートされ、ビーム品質の良いレーザ光は、集光レンズ32によってピンホール以下のサイズに集光され、ピンホールが形成された空間フィルタ33を通過して、コリメートレンズ34によって再びコリメートされる。一方、戻り光は、大きな拡がり角を有するので、ピンホール以下のサイズに集光することが困難となり、空間フィルタ33によって大部分が遮られる。
【0045】
図5に示すように、戻り光量とレーザ集光光学系14の位置との間には、レーザ集光光学系14がターゲットに対してベストフォーカスの状態に近付くにつれて戻り光量が大きくなるという相関関係があるので、この相関関係を利用して戻り光量をモニターすることにより、レーザ集光光学系14の位置情報が得られることになる。そこで、図1に示す制御部60が、戻り光検出器40によって検出される戻り光の量に基づいて位置調整機構20を制御することにより、レーザ集光光学系14のデフォーカス状態を維持することができる。例えば、制御部60は、戻り光検出器40によって検出される戻り光の量を設定値に保つように、位置調整機構20をフィードバック制御する。これにより、ターゲット位置が変動した場合においても、レーザ集光光学系14が適切な位置に配置されるように制御することが可能となる。
【0046】
あるいは、制御部60は、戻り光検出器40によって検出される戻り光の量と、EUV光検出器52によって検出される極端紫外光の量とに基づいて、位置調節機構20を制御するようにしても良い。これにより、さらに高精度な制御を行うことができる。例えば、制御部60は、戻り光検出器40によって検出される戻り光の量が第1の設定値に近付き、かつ、EUV光検出器52によって検出される極端紫外光の量が第2の設定値に近付くように、位置調節機構20をフィードバック制御する。
【0047】
また、制御部60は、ドライバレーザ13の出力を制御すると共に、制御部60内に設けられた格納部に格納されているルックアップテーブルの値を参照しながら、ドライバレーザ13の出力に応じて設定値(第1及び第2の設定値)を設定するようにしても良い。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下の実施形態においては、レーザ集光光学系の位置をデフォーカスとなるようにして、空間フィルタによって戻り光量を低減することに加えて、戻り光量をさらに低減するための戻り光低減手段が設けられている。
【0049】
図14は、本発明の第2の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第2の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)が、P偏光成分主体のレーザ光を出射し、レーザ光の光路に、P偏光成分を透過させてS偏光成分を反射する偏光分離素子71と、空間フィルタの役割りを兼ねる1/4波長板72とが配置されている。偏光分離素子71としては、薄膜型偏光子(TFP)や、偏光ビームスプリッタや、ノーコートウインドウ基板等を用いることができる。偏光分離素子71は、入射レーザ光のP偏光成分を透過させ、1/4波長板72は、P偏光のレーザ光を円偏光に変換する。これにより、円偏光のレーザ光が、レーザ集光光学系14を介してターゲット1に照射され、プラズマ3が発生する。
【0050】
プラズマ3からの戻り光は円偏光であるが、1/4波長板72によってS偏光に変換され、S偏光の戻り光が偏光分離素子71によって反射されて、反射光の光路に配置されている戻り光モニター73に入射する。これにより、ドライバレーザ13に入射する戻り光が低減される。また、戻り光モニター73によって、戻り光の波形や発生タイミングを観察することができる。
【0051】
図15は、本発明の第3の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第3の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)が、S偏光成分主体のレーザ光を出射し、レーザ光の光路に、P偏光成分を透過させてS偏光成分を反射する偏光分離素子71と、空間フィルタの役割りを兼ねる1/4波長板72とが配置されている。偏光分離素子71は、入射レーザ光のS偏光成分を1/4波長板72の方向に反射し、1/4波長板72は、S偏光のレーザ光を円偏光に変換する。これにより、円偏光のレーザ光が、レーザ集光光学系14を介してターゲット1に照射され、プラズマ3が発生する。
【0052】
プラズマ3からの戻り光は円偏光であるが、1/4波長板72によってP偏光に変換され、P偏光の戻り光が偏光素子71を透過して、透過光の光路に配置されている戻り光モニター73に入射する。これにより、ドライバレーザ13に入射する戻り光が低減される。
【0053】
図16は、本発明の第4の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第4の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)が、P偏成分光主体のレーザ光を出射し、レーザ光の光路に、P偏光成分を透過させてS偏光成分を反射する複数の偏光分離素子71と、空間フィルタの役割りを兼ねる1/4波長板72とが配置されている。これにより、1枚目の偏光分離素子71を僅かに透過してしまったS偏光成分が、2枚目、3枚目、又は、4枚目の偏光分離素子71によって反射されるので、戻り光量がさらに低減される。また、2枚の偏光分離素子71をペアとして、各ペアの偏光分離素子71をハの字型に配置することにより、レーザ光の光路差をなくすことができる。
【0054】
図17は、本発明の第5の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第5の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)が、S偏光成分主体のレーザ光を出射し、レーザ光の光路に、S偏光を反射しP偏光を吸収するコーティングが施されたコーティングミラー74と、空間フィルタの役割りを兼ねる1/4波長板72とが配置されている。コーティングミラー74としては、II−VI社製のATFRコーティングミラーを用いることができる。コーティングミラー74は、入射レーザ光のS偏光成分を1/4波長板72の方向に反射し、1/4波長板72は、S偏光のレーザ光を円偏光に変換する。これにより、円偏光のレーザ光が、レーザ集光光学系14を介してターゲット1に照射され、プラズマ3が発生する。
【0055】
プラズマ3からの戻り光は円偏光であるが、1/4波長板72によってP偏光に変換され、P偏光の戻り光がコーティングミラー74に吸収される。これにより、ドライバレーザ13に戻る戻り光が低減される。
【0056】
図18は、本発明の第6の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第6の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)から出射されるレーザ光の光路に、ブルースター窓等の偏光子75と、1/4波長板とミラーの役割りを兼ね備えるリターダー76とが配置されている。偏光子75は、入射レーザ光から出射されるレーザ光(S偏光)を入射し、部分偏光の成分を透過させてリターダー76に入射させ、平面偏光の成分を反射する。リターダー76は、部分偏光の成分を反射する際に、円偏光に変換する。これにより、円偏光のレーザ光が、レーザ集光光学系14を介してターゲット1に照射され、プラズマ3が発生する。
【0057】
プラズマ3からの戻り光は円偏光であるが、リターダー76によって反射される際に平面偏光に変換され、平面偏光の戻り光が偏光子75によって反射されて、反射光の光路に配置されている戻り光モニター73に入射する。これにより、ドライバレーザ13に戻る戻り光が低減される。
【0058】
図19は、本発明の第7の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第7の実施形態は、図18に示す第6の実施形態におけるリターダー76を凹面リターダー77に変更したものである。図18に示すリターダー76は、平面の反射面を有しているのに対し、図19に示す凹面リターダー77は、曲面の反射面を有している。これにより、凹面リターダー77は、レーザ集光光学系14の役割りを兼ねることができる。
【0059】
図20は、図18に示すリターダーの動作を説明するための図である。図20に示すように、リターダー76は、入射面に対して45°に直線偏光されている入射光を反射する際に、円偏光の光に変換する。逆に、リターダー76は、円偏光の光が入射されると、それを反射する際に、直線偏光に変換する。
【0060】
図21は、本発明の第8の実施形態に係る極端紫外光源装置における光学系の構成を示す図である。第8の実施形態においては、発振器13aと増幅器13bとの間に、偏光により異なる反射率を有する2つのミラー13cが配置されている。例えば、ミラー13cは、P偏光成分を吸収し、S偏光成分を高い反射率で反射する。ここで、発振器13aから供給されるレーザ光はS偏光にそろえておく必要があるが、これは従来技術によって容易に可能である。例えば、レーザ管の窓ガラス面を光軸に対してブルースター角に配置することによりP偏光のみのレーザ発振が得られる。これを波長板やミラーを用いて容易にS偏光に変換することができる。さらに、増幅器13bの出口側にも、同様のミラー13dが配置されている。
【0061】
ミラー13dによって反射されたレーザ光の光路には、1/2波長板13e及び2つの偏光分離素子71が配置されている。1/2波長板13eは、ミラー13dによって反射されたS偏光のレーザ光をP偏光に変換する。偏光分離素子71は、P偏光の光を透過して、S偏光の光を反射する。偏光分離素子71を透過したP偏光のレーザ光は、集光レンズ32によって集光され、空間フィルタ33に形成されているビンホールを通過し、コリメートレンズ34によってコリメートされて、リターダー76に入射する。リターダー76は、P偏光のレーザ光のレーザ光を反射する際に、円偏光に変換する。
【0062】
リターダー76によって反射されたレーザ光は、空間フィルタ31を通過して、レーザ集光光学系14によって集光されてターゲットに照射され、プラズマ3が発生する。レーザ集光光学系14は、ベストフォーカス位置よりも所定の距離だけターゲットに近付いて配置されているので、デフォーカス状態となって、戻り光は拡がりを有することになる。
【0063】
ただし、デフォーカス状態で最大のCEを得るためには、レーザ光照射条件として、ベストフォーカス時のレーザ強度(laser intensity)が最適値を上回る必要がある。ここで、レーザ強度は、次式で表される。
レーザ強度(W/cm2)=レーザパルスエネルギー(J)
/(パルス幅(s)×スポットサイズ(cm2))
即ち、レーザ強度を増加させるためには、(1)レーザ光のパルスエネルギーを増加する、(2)レーザ光のパルス幅を短くする、(3)スポットサイズを小さくする、の3つの方法がある。これらの内で、レーザ集光光学系14によって可変なパラメータは、スポットサイズである。レーザ強度は、最もスポットサイズの小さいベストフォーカス状態において最大となり、デフォーカス状態となってスポットサイズが大きくなるにつれて低下することになる。そこで、本実施形態においては、レーザ集光光学系14として、ベストフォーカス状態において最大のCEが得られるスポットサイズよりも小さなスポットサイズにレーザ光を集光することが可能な光学系を用いることにより、デフォーカス状態となってもCEを最大とするようにしている。
【0064】
戻り光は、レーザ集光光学系14を介して空間フィルタ31に入射するが、拡がりを有しているので、空間フィルタ31によって戻り光の量が低減される。空間フィルタ31を通過した戻り光は、リターダー76によって反射される際に、円偏光からS偏光に変換される。リターダー76によって反射された戻り光は、コリメートレンズ34、空間フィルタ33、集光レンズ32を通過するが、その際に、戻り光の量がさらに低減される。残った戻り光は、S偏光となっているので、2つの偏光分離素子71によって大部分が反射されて戻り光モニター73に入射する。図21には、2つの戻り光モニター73が示されているが、その内の一方を、戻り光を吸収するダンパーに替えても良い。
【0065】
残りの戻り光は、1/2波長板13eに入射して、S偏光からP偏光に変換され、ミラー13dに吸収されて、増幅器13bに入射して増幅されても発振器13aを故障させない程度まで低減される。さらに増幅器13bから僅かに戻る戻り光は、ミラー13cに吸収されて、発振器13aに入射される戻り光は、ほとんどなくなる。以上において、空間フィルタ31等のフィルタを構成する光学素子の数や配置場所は任意であるが、増幅器13bと発振器13aとの間にも戻り光の量を低減する光学素子を配置することによって、安全性をより高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、露光装置の光源として用いられる極端紫外光源装置において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…ターゲット、2…レーザ光、3…プラズマ、4…EUV光、10…真空チャンバ、11…ターゲット供給装置、13…ドライバレーザ、13a…発振器、13b…増幅器、13c、13d…ミラー、13e…1/2波長板、14…レーザ集光光学系、15…EUVコレクタミラー、16…ターゲット回収装置、18…導入窓、19…導出窓、20…位置調整機構、30…フィルタ部、31、33…空間フィルタ、32…集光レンズ、34…コリメートレンズ、40…戻り光検出器、51…多層膜ミラー、52…EUV光検出器、60…制御部、71…偏光分離素子、72…1/4波長板、73…戻り光モニター、74…コーティングミラー、75…偏光子、76…リターダー、77…凹面リターダー
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置の光源として用いられる極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィにおける微細化が急速に進展しており、次世代においては、100nm〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、ターゲットにレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(laser produced plasma:レーザ励起プラズマ)光源(以下において、「LPP式EUV光源装置」ともいう)と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
ここで、LPP方式によるEUV光の生成原理について説明する。真空チャンバ内に供給されるターゲット物質に対してレーザ光を照射することにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化する。このプラズマから、EUV光を含む様々な波長成分が放射される。そこで、所望の波長成分(例えば、13.5nmの波長を有する成分)を選択的に反射するEUVコレクタミラーを用いてEUV光が反射集光され、露光器に出力される。
【0005】
そのようなLPP式EUV光源装置においては、一般に、駆動用光源(ドライバレーザ)として短パルスレーザが用いられる。短パルスレーザは、LPP型EUV光源装置において高いCE(conversion efficiency:照射レーザ光からEUV光への変換効率)を得るのに適しているからである。
【0006】
図22は、LPP式EUV光源装置において用いられるドライバレーザの構成例を示す概略図である。ドライバレーザ13は、レーザ光を発生する発振器13aと、発振器13aが発生したレーザ光を増幅する増幅器13bとによって構成される。このような構成のレーザは、発振増幅型レーザと呼ばれている。
【0007】
ここで、増幅器13bが光共振器を持たない場合に、そのような構成を有するレーザシステムは、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)システムと呼ばれる。増幅器13bは、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、さらに、必要に応じて、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、キセノン(Xe)等を含むCO2レーザガスを放電によって励起する放電装置を有している。なお、図22に示す増幅器13bとは異なり、増幅段に共振器を設ける場合には、増幅段単体によるレーザ発振が可能である。そのような構成を有するレーザシステムは、MOPO(Master Oscillator Power Oscillator)システムと呼ばれる。
【0008】
発振器13aから出射したエネルギーAを有するレーザ光は、増幅器13bにおいて所望のエネルギーBを有するレーザ光に増幅される。このエネルギーBを有するレーザ光は、レーザ集光光学系によって集光されて、ターゲット物質に照射される。ここで、図22においては、レーザエネルギーAをレーザエネルギーBまで増幅するために、増幅器を1段しか設けていないが、所望のレーザエネルギーBが得られない場合には、複数段の増幅器を用いても良い。
【0009】
次に、発振器13aとして用いられる短パルスCO2レーザの構成例について説明する。特許文献1には、短パルスRF(Radio Frequency励起)−CO2レーザの構成が開示されている(特許文献1の図5)。このRF−CO2レーザにおいては、100kHz程度までレーザパルスの高繰り返し運転が可能である。実用上は、100W級のEUV発光を得る必要があるが、CO2レーザによるCEを0.5%と見積り、さらに伝播損失を70%と見積もると、CO2レーザに求められる出力は60kW程度になる。60kWの出力を短パルスレーザにおいて達成するためには、光学素子等の耐久性等を考慮すると、50kHz〜100kHz程度の繰り返し周波数が必要となる。なお、発振器から出射されるレーザ光のパルス幅は、100ns以下が望ましい。
【0010】
その理由は次の通りである。CO2レーザの出力をEtotal、パルス発振の繰返し周波数をfi(i=1,2,3,…)、1つのパルスの光エネルギーをEpj(j=1,2,3,…)とすると、Etotal=f1×Ep1=f2×Ep2という関係がある。ここで、Epが大きい場合には、レーザ光が透過する光学素子に与えられるダメージも大きくなるので、光学素子の劣化が早くなる。そのため、Epは小さい方が望ましい。そこで、所望のEtotalを得るためにEpを小さくして、繰返し周波数fを大きくすれば良い。
【0011】
このように高い繰返し周波数を実現するためには、RF(Radio Frequency励起)−CO2レーザを用いることが適当である。その理由は、パルスCO2レーザとしては、この他にもTEA(Transverse Excitation Atmospheric)−CO2レーザがあるが、現状の技術では、2kHz程度の繰返し動作が限界だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許6,697,408(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記したように、ドライバレーザからターゲット物質に対してレーザ光を照射することにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化し、このプラズマから、EUV光が放射される。ここで、ドライバレーザから出射されたレーザ光がターゲット物質又はプラズマによって反射され、その反射光がドライバレーザに戻ることによって、増幅器13b内で増幅され、発振器13aの故障の原因になることが考えられる。
【0014】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、ターゲット物質又はプラズマによって反射されてドライバレーザに戻る反射光(戻り光)によるドライバレーザの故障を防止することができる極端紫外光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る極端紫外光源は、ターゲットにレーザ光を照射することにより極端紫外光を発生する極端紫外光源装置であって、極端紫外光の生成が行われるチャンバと、チャンバ内の所定の位置にターゲットを供給するターゲット供給部と、少なくとも1つの光学素子を含み、ドライバレーザから出射されるレーザ光をターゲットに集光することによってプラズマを発生させるレーザ集光光学系と、プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するEUV集光光学系と、ドライバレーザから出射されて所定の光路を通過したレーザ光の第1の直線偏光成分を円偏光成分に変換しながら反射し、集光されたレーザ光がターゲット又はプラズマによって反射されて生じた戻り光の円偏光成分を第2の直線偏光成分に変換しながら反射するリターダーと、ドライバレーザから出射されるレーザ光の光路に配置され、第1の直線偏光成分を反射して第2の直線偏光成分を吸収するコーティングミラーとを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ターゲット物質又はプラズマによって反射されてドライバレーザに戻る反射光(戻り光)を低減することにより、ドライバレーザの故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の内部構造を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の内部構造を示す平面図である。
【図3】集光レンズの位置と戻り光との関係を示す図である。
【図4】戻り光を測定するための実験において使用した装置を示す図である。
【図5】実験によって測定された戻り光量とEUV光量との関係を示す図である。
【図6】レーザ入射方向に対するターゲットの角度を変化させて戻り光量の変化を測定した結果を示す図である。
【図7】ターゲットをレーザ光の入射方向に対して30度傾けた状態においてターゲットによって反射されるレーザ光を示す図である。
【図8】プラズマによって反射・散乱されるレーザ光を示す図である。
【図9】入射レーザ光と戻り光の波形を示す図である。
【図10】ターゲットに対するレーザ光の入射角が0度の状態における戻り光量の実験値と計算値を示す図である。
【図11】ターゲットに対するレーザ光の入射角が0度、30度、45度の状態における戻り光量の計算値を示す図である。
【図12】図1及び図2に示すフィルタ部として空間フィルタを用いた場合の戻り光量低減効果を示す図である。
【図13】図1及び図2に示すフィルタ部として空間フィルタとコリメート光学系との組合せを用いた構成を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図17】本発明の第5の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図18】本発明の第6の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図19】本発明の第7の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。
【図20】図18に示すリターダーの動作を説明するための図である。
【図21】本発明の第8の実施形態に係る極端紫外光源装置における光学系の構成を示す図である。
【図22】LPP式EUV光源装置において用いられるドライバレーザの構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の内部構造を示す側面図であり、図2は、本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の内部構造を示す平面図である。本実施形態に係るEUV光源装置は、レーザ光をターゲット物質に照射して励起させることによりEUV光を生成するレーザ励起プラズマ(LPP)方式を採用している。
【0019】
図1及び図2に示すように、このEUV光源装置は、EUV光の生成が行われる真空チャンバ10と、ターゲット1を供給するターゲット供給装置11と、ターゲット1に照射される励起用レーザ光2を生成するドライバレーザ13と、少なくとも1つのレンズ又はミラー等の光学素子を含み、ドライバレーザ13によって生成される励起用レーザ光2をターゲット1に集光させることによってプラズマ3を発生させるレーザ集光光学系14と、プラズマ3から放出されるEUV光4を集光して出射するEUVコレクタミラー15と、ターゲット1を回収するターゲット回収装置16と、レーザ集光光学系14に含まれている少なくとも1つの光学素子の位置を調節する位置調節機構20とを有している。
【0020】
さらに、このEUV光源装置は、レーザ集光光学系14によって集光されたレーザ光がターゲット1及びプラズマ3によって反射されて生じる戻り光がドライバレーザ13に入射する量を低減させるフィルタ部30と、所定の位置において戻り光を検出する戻り光検出器40と、EUVコレクタミラー15を介さずに発光点におけるEUV光を検出するための多層膜ミラー51及びEUV光検出器52と、戻り光検出器40及び/又はEUV光検出器52の検出結果に基づいてドライバレーザ13及び/又は位置調節機構20を制御する制御部60とを有している。
【0021】
真空チャンバ10には、励起用レーザ光2を導入する導入窓18と、プラズマから放射されるEUV光を露光器に導出する導出窓19とが設けられている。なお、露光器の内部も、真空チャンバ10の内部と同様に、真空又は減圧状態に保たれる。ターゲット供給装置11は、ターゲット1の位置を調整しながら真空チャンバ10内の所定の位置にターゲット1を供給する。
【0022】
ドライバレーザ13は、高い繰り返し周波数(例えば、パルス幅が数n秒〜数十n秒程度、周波数が1kHz〜100kHz程度)でパルス発振可能なレーザ光源である。レーザ集光光学系14は、少なくとも1つのレンズ又はミラーを含んでおり、ドライバレーザ13から出射されるレーザ光を集光する。レーザ集光光学系14によって集光されたレーザ光2は、真空チャンバ10内の所定の位置において、ターゲット供給装置11によって供給されるターゲット1を照射する。これにより、ターゲット1の一部が励起してプラズマ化し、発光点から様々な波長成分が放射される。ここで、発光点とは、プラズマ3が発生する位置を意味する。
【0023】
EUVコレクタミラー15は、プラズマ3から放射される様々な波長成分の内から、所定の波長成分(例えば、13.5nm付近のEUV光)を選択的に反射することにより集光するEUV集光光学系である。EUVコレクタミラー15は、凹状の反射面を有しており、この反射面には、例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するためのモリブデン(Mo)及びシリコン(Si)の多層膜が形成されている。
【0024】
図1において、EUVコレクタミラー15によりEUV光が右方向に反射され、EUV中間集光点に集光された後、露光器に出力される。なお、EUV光の集光光学系は、図1に示すEUVコレクタミラー15に限定されず、複数の光学部品を用いて構成しても良いが、EUV光の吸収を抑えるために反射光学系とすることが必要である。
【0025】
ターゲット回収装置16は、発光点を挟みターゲット供給装置11に対向する位置に配置されており、プラズマ化しなかったターゲットを回収する。回収されたターゲットは、ターゲット循環装置によって再びターゲット供給装置11に戻し、再利用するようにしても良い。
【0026】
多層膜ミラー51には、例えば、13.5nm付近の波長に対して反射率が高いモリブデン及びシリコンの多層膜が形成されている。EUV光検出器52は、例えば、ジルコニウム(Zr)フィルタ及びフォトダイオードによって構成される。ジルコニウムフィルタは、波長が20nm以上の光をカットする。フォトダイオードは、入射した光の強度又はエネルギーに応じた検出信号を出力する。
【0027】
本実施形態においては、図22に示すように、ドライバレーザ13として、比較的波長の長い光を生成することができるCO2レーザによって構成される発振器13aと、発振器13aが発生したレーザ光を増幅する少なくとも1つの増幅器13bとによって構成される発振増幅型レーザが用いられる。長波長かつ短パルスレーザを用いることにより、EUV光の発生に寄与せずデブリを発生させる熱源となる低温高密度プラズマ領域の生成が抑制されるので、固体ターゲット表面の溶融が進まず、ターゲット1から放出されてEUVコレクタミラー15の反射面に付着する中性粒子が大幅に低減される。一方、プラズマ3からは高速イオンも放射されるので、EUVコレクタミラー15の反射面に形成されている多層膜が削り取られる。
【0028】
また、ターゲット1として、固体の錫(Sn)又はリチウム(Li)が用いられる。その場合には、ターゲットから発生する中性粒子が非常に少なくなるので、所定の条件の下で、EUVコレクタミラー15の反射面に付着する中性粒子の量(デポジション量)を、EUVコレクタミラー15の反射面から削り取られる多層膜の量(スパッタリング量)とバランスさせ、あるいは、デポジション量をスパッタリング量よりも小さくできることが検証された。これにより、EUVコレクタミラー15の反射面にデブリが付着するという問題を解決することができる。
【0029】
さらに、本実施形態においては、制御部60の制御の下で、位置調整機構20が、レーザ集光光学系14の集光焦点の位置がプラズマ3の発光点から所定の距離だけ外れるように、レーザ集光光学系14に含まれている少なくとも1つの光学素子の位置を調整する。これについて、レーザ集光光学系14として集光レンズを用いる場合を例にとって、以下に説明する。
【0030】
図3は、集光レンズの位置と戻り光との関係を示す図である。図3の(a)は、ベストフォーカスの状態を示しており、戻り光がコリメートされて高い指向性を有するようになり、長距離を伝播することが可能になって、ドライバレーザ13に入射される戻り光の量が最も大きくなる。図3の(b)は、集光レンズの位置がプラズマ3側に近付いたデフォーカス1の状態を示しており、戻り光が大きな広がり角を有するようになって、ドライバレーザ13に入射される戻り光の量が減少する。図3の(c)は、集光レンズの位置がプラズマ3側から遠のいたデフォーカス2の状態を示しており、戻り光が一端収束した後に大きな広がり角を有するようになって、ドライバレーザ13に入射する戻り光の量が減少する。以上のことは、レーザ集光光学系14として集光ミラーを用いる場合においても同様である。
【0031】
図4は、戻り光を測定するための実験において使用した装置を示す図である。この実験においては、ドライバレーザとして、波長10.6μmのレーザ光を発生するCO2レーザを使用し、P偏光成分のみを図4に示す装置に入射させるようにした。また、ターゲットとして、固体(平板)の錫(Sn)を使用した。集光レンズとしては、焦点距離が60mmのメニスカスレンズを使用した。
【0032】
戻り光の光路に配置された薄膜型偏光子(TFP)は、P偏光成分を透過させて、S偏光成分を反射する。図4の左側から入射するP偏光のレーザ光は、薄膜型偏光子を透過して、1/4波長板に入射する。P偏光のレーザ光は、1/4波長板を透過することにより、円偏光となる。集光レンズによって集光されたレーザ光は、真空容器内のターゲットに照射され、ターゲットをプラズマ化する。
【0033】
ターゲット又はプラズマによって反射された円偏光の戻り光は、集光レンズによってコリメートされ、1/4波長板を通過することにより、S偏光となる。S偏光となった戻り光は、薄膜型偏光子によって、フォトディテクタの方向に反射される。ここで、1/4波長板の直径は10mmであり、1/4波長板の周辺部は、直径50mm程度のレーザ光を透過しないホルダーで固定されているので、戻り光に対して直径10mmの空間フィルタとして作用する。薄膜型偏光子によって反射された戻り光はフォトディテクタに入射し、戻り光量が測定される。この実験によって測定された戻り光の量(光強度)と、同時に測定されたEUV光の量(光強度)との関係を、図5に示す。
【0034】
図5は、集光レンズの位置に対する戻り光量及びEUV光量の変化を示す図である。図5等においては、ベストフォーカスの位置を0μmとして、ターゲットに近い方がマイナスの値となっている。図5に示すように、戻り光量は、集光レンズの位置に大きく依存し、ベストフォーカスの位置で最大になることが明らかになった。また、集光レンズの位置をデフォーカスの位置とすることによって、戻り光量が大幅に低減される。一方、EUV光量は、ベストフォーカスの位置ではなく、デフォーカスの位置で最大となることが分る。従って、集光レンズの位置をデフォーカスの位置とすることによって、CE(照射レーザ光からEUV光への変換効率)を高くすることと、戻り光の量を低減することとを、両立させることができる。
【0035】
ところで、戻り光の成分としては、プラズマ生成前にターゲットの表面において反射される成分と、プラズマ生成後にプラズマにおいて反射・散乱される成分とが存在する。そこで、それらの成分の内のいずれが主成分であるかを見極めるための実験を行った。この実験においては、ターゲットとして錫(Sn)の平板を用いて、レーザ入射方向に対するターゲットの角度(入射角)を、0度、30度、45度に変化させて、戻り光量の変化を測定した。その結果を、図6に示す。
【0036】
図6は、入射角をパラメータとして、集光レンズの位置に対する戻り光量の変化を示す図である。図7は、ターゲットをレーザ光の入射方向に対して30度傾けた状態においてターゲットによって反射されるレーザ光を示す図である。ターゲットは、レーザ光に対してミラーのように振る舞うと考えられるから、図7に示すようにターゲットをレーザ光の入射方向に対して30度傾けた状態においては、ターゲットの表面において反射される成分がレーザ入射方向に戻ることはあり得ない。しかしながら、図6に示すように、ターゲットをレーザ入射方向に対して30度又は60度傾けた状態においても、かなりの量の戻り光が観測された。この結果から、戻り光において、ターゲットの表面において反射された成分は非常に少ないと考えられる。
【0037】
図8は、プラズマによって反射・散乱されるレーザ光を示す図である。ターゲットをレーザ光の入射方向に対して傾けたことにより戻り光量が変化する原因としては、図8の(a)〜(c)に示すように、プラズマの生成方向が主にターゲット表面の法線方向に指向性を持つので、プラズマからレーザ光の入射方向に対して反射・散乱される光の量が変化することにより、戻り光量が変化すると考えられる。
【0038】
図9は、入射レーザ光と戻り光の波形を示す図である。これらの波形は、図4に示すフォトディテクタの位置に、レーザパルス波形を観測できる計測器を配置して測定したものである。図9に示すように、戻り光は、主にレーザパルスの後半部分で発生しており、プラズマ生成前にターゲットの表面において反射された成分(レーザパルスの前半部分に相当)は少なく、プラズマ生成後にプラズマによって反射・散乱された成分(レーザパルスの後半部分に相当)が主であることが分る。
【0039】
次に、光学シミュレーションを行うことによって、戻り光の集光レンズ位置に対する依存性を計算した。この光学シミュレーションは、図4に示す実験装置を再現しており、レーザ光の反射面を曲率半径0.1mmのマルチレンズアレイとして、プラズマによる反射・散乱を表したものである。
【0040】
図10は、ターゲットに対するレーザ光の入射角が0度の状態における戻り光量の実験値と計算値を示す図であり、光学シミュレーションの結果は、実験結果とほぼ一致している。図11は、ターゲットに対するレーザ光の入射角が0度、30度、45度の状態における戻り光量の計算値を示す図である。これらの結果から、戻り光量は、集光レンズの位置、即ち、集光光学系の配置に大きく依存することが分る。
【0041】
以上の実験により、次のことが明らかになった。
(1)戻り光は、ターゲットの表面よりも、主に、プラズマからの反射光である。
(2)プラズマからの戻り光は、集光レンズ(又は、集光ミラー)の位置に大きく依存する。集光レンズがベストフォーカスの位置にあるときに、ドライバレーザに入射する戻り光の量が最も大きくなることから、集光レンズによる戻り光のコリメート効果が大きく影響している。従って、戻り光をコリメートしないように、集光レンズをデフォーカスの位置に置くことにより、ドライバレーザに入射する戻り光の量を低減することができる。
(3)レーザ光の強度が十分な場合には、図3の(b)に示すように、集光レンズの位置がプラズマ3側に近付くデフォーカス1の状態としたときに、CE(照射レーザ光からEUV光への変換効率)が最大となる。従って、戻り光の量を低減することと、高いCEを実現することとを、両立させることができる。
【0042】
このように、集光レンズの位置がデフォーカスの状態としたときに戻り光が大きな拡がり角を有するので、レーザ光は透過するが戻り光は遮る空間フィルタを用いることによって、戻り光量を低減することが可能となる。
【0043】
図12は、図1及び図2に示すフィルタ部として空間フィルタを用いた場合の戻り光量低減効果を示す図である。図12の(a)に示すベストフォーカスの状態においては、空間フィルタ31を設けても戻り光量低減効果は得られないが、図12の(b)に示すデフォーカス1の状態及び図12の(c)に示すデフォーカス2の状態においては、空間フィルタ31を設けることにより光量低減効果が得られる。また、図12の(b)に示すように、レーザ集光光学系(集光レンズ)14の位置がプラズマ3側に近付くデフォーカス1の状態としたときに、CE(照射レーザ光からEUV光への変換効率)が最大となる(図5参照)。
【0044】
図13は、図1及び図2に示すフィルタ部として空間フィルタとコリメート光学系との組合せを用いた構成を示す図である。図13に示すように、コリメートされ、ビーム品質の良いレーザ光は、集光レンズ32によってピンホール以下のサイズに集光され、ピンホールが形成された空間フィルタ33を通過して、コリメートレンズ34によって再びコリメートされる。一方、戻り光は、大きな拡がり角を有するので、ピンホール以下のサイズに集光することが困難となり、空間フィルタ33によって大部分が遮られる。
【0045】
図5に示すように、戻り光量とレーザ集光光学系14の位置との間には、レーザ集光光学系14がターゲットに対してベストフォーカスの状態に近付くにつれて戻り光量が大きくなるという相関関係があるので、この相関関係を利用して戻り光量をモニターすることにより、レーザ集光光学系14の位置情報が得られることになる。そこで、図1に示す制御部60が、戻り光検出器40によって検出される戻り光の量に基づいて位置調整機構20を制御することにより、レーザ集光光学系14のデフォーカス状態を維持することができる。例えば、制御部60は、戻り光検出器40によって検出される戻り光の量を設定値に保つように、位置調整機構20をフィードバック制御する。これにより、ターゲット位置が変動した場合においても、レーザ集光光学系14が適切な位置に配置されるように制御することが可能となる。
【0046】
あるいは、制御部60は、戻り光検出器40によって検出される戻り光の量と、EUV光検出器52によって検出される極端紫外光の量とに基づいて、位置調節機構20を制御するようにしても良い。これにより、さらに高精度な制御を行うことができる。例えば、制御部60は、戻り光検出器40によって検出される戻り光の量が第1の設定値に近付き、かつ、EUV光検出器52によって検出される極端紫外光の量が第2の設定値に近付くように、位置調節機構20をフィードバック制御する。
【0047】
また、制御部60は、ドライバレーザ13の出力を制御すると共に、制御部60内に設けられた格納部に格納されているルックアップテーブルの値を参照しながら、ドライバレーザ13の出力に応じて設定値(第1及び第2の設定値)を設定するようにしても良い。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下の実施形態においては、レーザ集光光学系の位置をデフォーカスとなるようにして、空間フィルタによって戻り光量を低減することに加えて、戻り光量をさらに低減するための戻り光低減手段が設けられている。
【0049】
図14は、本発明の第2の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第2の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)が、P偏光成分主体のレーザ光を出射し、レーザ光の光路に、P偏光成分を透過させてS偏光成分を反射する偏光分離素子71と、空間フィルタの役割りを兼ねる1/4波長板72とが配置されている。偏光分離素子71としては、薄膜型偏光子(TFP)や、偏光ビームスプリッタや、ノーコートウインドウ基板等を用いることができる。偏光分離素子71は、入射レーザ光のP偏光成分を透過させ、1/4波長板72は、P偏光のレーザ光を円偏光に変換する。これにより、円偏光のレーザ光が、レーザ集光光学系14を介してターゲット1に照射され、プラズマ3が発生する。
【0050】
プラズマ3からの戻り光は円偏光であるが、1/4波長板72によってS偏光に変換され、S偏光の戻り光が偏光分離素子71によって反射されて、反射光の光路に配置されている戻り光モニター73に入射する。これにより、ドライバレーザ13に入射する戻り光が低減される。また、戻り光モニター73によって、戻り光の波形や発生タイミングを観察することができる。
【0051】
図15は、本発明の第3の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第3の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)が、S偏光成分主体のレーザ光を出射し、レーザ光の光路に、P偏光成分を透過させてS偏光成分を反射する偏光分離素子71と、空間フィルタの役割りを兼ねる1/4波長板72とが配置されている。偏光分離素子71は、入射レーザ光のS偏光成分を1/4波長板72の方向に反射し、1/4波長板72は、S偏光のレーザ光を円偏光に変換する。これにより、円偏光のレーザ光が、レーザ集光光学系14を介してターゲット1に照射され、プラズマ3が発生する。
【0052】
プラズマ3からの戻り光は円偏光であるが、1/4波長板72によってP偏光に変換され、P偏光の戻り光が偏光素子71を透過して、透過光の光路に配置されている戻り光モニター73に入射する。これにより、ドライバレーザ13に入射する戻り光が低減される。
【0053】
図16は、本発明の第4の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第4の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)が、P偏成分光主体のレーザ光を出射し、レーザ光の光路に、P偏光成分を透過させてS偏光成分を反射する複数の偏光分離素子71と、空間フィルタの役割りを兼ねる1/4波長板72とが配置されている。これにより、1枚目の偏光分離素子71を僅かに透過してしまったS偏光成分が、2枚目、3枚目、又は、4枚目の偏光分離素子71によって反射されるので、戻り光量がさらに低減される。また、2枚の偏光分離素子71をペアとして、各ペアの偏光分離素子71をハの字型に配置することにより、レーザ光の光路差をなくすことができる。
【0054】
図17は、本発明の第5の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第5の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)が、S偏光成分主体のレーザ光を出射し、レーザ光の光路に、S偏光を反射しP偏光を吸収するコーティングが施されたコーティングミラー74と、空間フィルタの役割りを兼ねる1/4波長板72とが配置されている。コーティングミラー74としては、II−VI社製のATFRコーティングミラーを用いることができる。コーティングミラー74は、入射レーザ光のS偏光成分を1/4波長板72の方向に反射し、1/4波長板72は、S偏光のレーザ光を円偏光に変換する。これにより、円偏光のレーザ光が、レーザ集光光学系14を介してターゲット1に照射され、プラズマ3が発生する。
【0055】
プラズマ3からの戻り光は円偏光であるが、1/4波長板72によってP偏光に変換され、P偏光の戻り光がコーティングミラー74に吸収される。これにより、ドライバレーザ13に戻る戻り光が低減される。
【0056】
図18は、本発明の第6の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第6の実施形態においては、ドライバレーザ13(図1参照)から出射されるレーザ光の光路に、ブルースター窓等の偏光子75と、1/4波長板とミラーの役割りを兼ね備えるリターダー76とが配置されている。偏光子75は、入射レーザ光から出射されるレーザ光(S偏光)を入射し、部分偏光の成分を透過させてリターダー76に入射させ、平面偏光の成分を反射する。リターダー76は、部分偏光の成分を反射する際に、円偏光に変換する。これにより、円偏光のレーザ光が、レーザ集光光学系14を介してターゲット1に照射され、プラズマ3が発生する。
【0057】
プラズマ3からの戻り光は円偏光であるが、リターダー76によって反射される際に平面偏光に変換され、平面偏光の戻り光が偏光子75によって反射されて、反射光の光路に配置されている戻り光モニター73に入射する。これにより、ドライバレーザ13に戻る戻り光が低減される。
【0058】
図19は、本発明の第7の実施形態における戻り光低減手段を示す図である。第7の実施形態は、図18に示す第6の実施形態におけるリターダー76を凹面リターダー77に変更したものである。図18に示すリターダー76は、平面の反射面を有しているのに対し、図19に示す凹面リターダー77は、曲面の反射面を有している。これにより、凹面リターダー77は、レーザ集光光学系14の役割りを兼ねることができる。
【0059】
図20は、図18に示すリターダーの動作を説明するための図である。図20に示すように、リターダー76は、入射面に対して45°に直線偏光されている入射光を反射する際に、円偏光の光に変換する。逆に、リターダー76は、円偏光の光が入射されると、それを反射する際に、直線偏光に変換する。
【0060】
図21は、本発明の第8の実施形態に係る極端紫外光源装置における光学系の構成を示す図である。第8の実施形態においては、発振器13aと増幅器13bとの間に、偏光により異なる反射率を有する2つのミラー13cが配置されている。例えば、ミラー13cは、P偏光成分を吸収し、S偏光成分を高い反射率で反射する。ここで、発振器13aから供給されるレーザ光はS偏光にそろえておく必要があるが、これは従来技術によって容易に可能である。例えば、レーザ管の窓ガラス面を光軸に対してブルースター角に配置することによりP偏光のみのレーザ発振が得られる。これを波長板やミラーを用いて容易にS偏光に変換することができる。さらに、増幅器13bの出口側にも、同様のミラー13dが配置されている。
【0061】
ミラー13dによって反射されたレーザ光の光路には、1/2波長板13e及び2つの偏光分離素子71が配置されている。1/2波長板13eは、ミラー13dによって反射されたS偏光のレーザ光をP偏光に変換する。偏光分離素子71は、P偏光の光を透過して、S偏光の光を反射する。偏光分離素子71を透過したP偏光のレーザ光は、集光レンズ32によって集光され、空間フィルタ33に形成されているビンホールを通過し、コリメートレンズ34によってコリメートされて、リターダー76に入射する。リターダー76は、P偏光のレーザ光のレーザ光を反射する際に、円偏光に変換する。
【0062】
リターダー76によって反射されたレーザ光は、空間フィルタ31を通過して、レーザ集光光学系14によって集光されてターゲットに照射され、プラズマ3が発生する。レーザ集光光学系14は、ベストフォーカス位置よりも所定の距離だけターゲットに近付いて配置されているので、デフォーカス状態となって、戻り光は拡がりを有することになる。
【0063】
ただし、デフォーカス状態で最大のCEを得るためには、レーザ光照射条件として、ベストフォーカス時のレーザ強度(laser intensity)が最適値を上回る必要がある。ここで、レーザ強度は、次式で表される。
レーザ強度(W/cm2)=レーザパルスエネルギー(J)
/(パルス幅(s)×スポットサイズ(cm2))
即ち、レーザ強度を増加させるためには、(1)レーザ光のパルスエネルギーを増加する、(2)レーザ光のパルス幅を短くする、(3)スポットサイズを小さくする、の3つの方法がある。これらの内で、レーザ集光光学系14によって可変なパラメータは、スポットサイズである。レーザ強度は、最もスポットサイズの小さいベストフォーカス状態において最大となり、デフォーカス状態となってスポットサイズが大きくなるにつれて低下することになる。そこで、本実施形態においては、レーザ集光光学系14として、ベストフォーカス状態において最大のCEが得られるスポットサイズよりも小さなスポットサイズにレーザ光を集光することが可能な光学系を用いることにより、デフォーカス状態となってもCEを最大とするようにしている。
【0064】
戻り光は、レーザ集光光学系14を介して空間フィルタ31に入射するが、拡がりを有しているので、空間フィルタ31によって戻り光の量が低減される。空間フィルタ31を通過した戻り光は、リターダー76によって反射される際に、円偏光からS偏光に変換される。リターダー76によって反射された戻り光は、コリメートレンズ34、空間フィルタ33、集光レンズ32を通過するが、その際に、戻り光の量がさらに低減される。残った戻り光は、S偏光となっているので、2つの偏光分離素子71によって大部分が反射されて戻り光モニター73に入射する。図21には、2つの戻り光モニター73が示されているが、その内の一方を、戻り光を吸収するダンパーに替えても良い。
【0065】
残りの戻り光は、1/2波長板13eに入射して、S偏光からP偏光に変換され、ミラー13dに吸収されて、増幅器13bに入射して増幅されても発振器13aを故障させない程度まで低減される。さらに増幅器13bから僅かに戻る戻り光は、ミラー13cに吸収されて、発振器13aに入射される戻り光は、ほとんどなくなる。以上において、空間フィルタ31等のフィルタを構成する光学素子の数や配置場所は任意であるが、増幅器13bと発振器13aとの間にも戻り光の量を低減する光学素子を配置することによって、安全性をより高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、露光装置の光源として用いられる極端紫外光源装置において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…ターゲット、2…レーザ光、3…プラズマ、4…EUV光、10…真空チャンバ、11…ターゲット供給装置、13…ドライバレーザ、13a…発振器、13b…増幅器、13c、13d…ミラー、13e…1/2波長板、14…レーザ集光光学系、15…EUVコレクタミラー、16…ターゲット回収装置、18…導入窓、19…導出窓、20…位置調整機構、30…フィルタ部、31、33…空間フィルタ、32…集光レンズ、34…コリメートレンズ、40…戻り光検出器、51…多層膜ミラー、52…EUV光検出器、60…制御部、71…偏光分離素子、72…1/4波長板、73…戻り光モニター、74…コーティングミラー、75…偏光子、76…リターダー、77…凹面リターダー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットにレーザ光を照射することにより極端紫外光を発生する極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
前記チャンバ内の所定の位置にターゲットを供給するターゲット供給部と、
少なくとも1つの光学素子を含み、ドライバレーザから出射されるレーザ光を前記ターゲットに集光することによってプラズマを発生させるレーザ集光光学系と、
前記プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するEUV集光光学系と、
前記ドライバレーザから出射されて所定の光路を通過したレーザ光の第1の直線偏光成分を円偏光成分に変換しながら反射し、集光されたレーザ光が前記ターゲット又は前記プラズマによって反射されて生じた戻り光の円偏光成分を第2の直線偏光成分に変換しながら反射するリターダーと、
前記ドライバレーザから出射されるレーザ光の光路に配置され、第1の直線偏光成分を反射して第2の直線偏光成分を吸収するコーティングミラーと、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項2】
前記レーザ集光光学系によって集光されたレーザ光が前記ターゲット又は前記プラズマによって反射されて前記ドライバレーザに入射する戻り光を検出する戻り光検出器と、
前記レーザ集光光学系に含まれている少なくとも1つの光学素子の位置を調節する位置調節機構と、
前記戻り光検出器によって検出される戻り光の量に基づいて前記位置調節機構を制御する制御部と、
をさらに具備する、請求項1記載の極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記プラズマから放射される極端紫外光を検出する極端紫外光検出器をさらに具備し、
前記制御部が、前記戻り光検出器によって検出される戻り光の量と、前記極端紫外光検出器によって検出される極端紫外光の量とに基づいて、前記位置調節機構を制御する、請求項2記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
前記ドライバレーザが、第1の直線偏光成分を主成分とするレーザ光を出射する、請求項1〜3のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項5】
前記リターダーが、曲面の反射面を有することにより、前記レーザ集光光学系の役割りを兼ねる、請求項1〜4のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項6】
前記ドライバレーザが、CO2レーザによって構成される発振器と、前記発振器が発生したレーザ光を増幅する少なくとも1つの増幅器とを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項1】
ターゲットにレーザ光を照射することにより極端紫外光を発生する極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
前記チャンバ内の所定の位置にターゲットを供給するターゲット供給部と、
少なくとも1つの光学素子を含み、ドライバレーザから出射されるレーザ光を前記ターゲットに集光することによってプラズマを発生させるレーザ集光光学系と、
前記プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するEUV集光光学系と、
前記ドライバレーザから出射されて所定の光路を通過したレーザ光の第1の直線偏光成分を円偏光成分に変換しながら反射し、集光されたレーザ光が前記ターゲット又は前記プラズマによって反射されて生じた戻り光の円偏光成分を第2の直線偏光成分に変換しながら反射するリターダーと、
前記ドライバレーザから出射されるレーザ光の光路に配置され、第1の直線偏光成分を反射して第2の直線偏光成分を吸収するコーティングミラーと、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項2】
前記レーザ集光光学系によって集光されたレーザ光が前記ターゲット又は前記プラズマによって反射されて前記ドライバレーザに入射する戻り光を検出する戻り光検出器と、
前記レーザ集光光学系に含まれている少なくとも1つの光学素子の位置を調節する位置調節機構と、
前記戻り光検出器によって検出される戻り光の量に基づいて前記位置調節機構を制御する制御部と、
をさらに具備する、請求項1記載の極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記プラズマから放射される極端紫外光を検出する極端紫外光検出器をさらに具備し、
前記制御部が、前記戻り光検出器によって検出される戻り光の量と、前記極端紫外光検出器によって検出される極端紫外光の量とに基づいて、前記位置調節機構を制御する、請求項2記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
前記ドライバレーザが、第1の直線偏光成分を主成分とするレーザ光を出射する、請求項1〜3のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項5】
前記リターダーが、曲面の反射面を有することにより、前記レーザ集光光学系の役割りを兼ねる、請求項1〜4のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項6】
前記ドライバレーザが、CO2レーザによって構成される発振器と、前記発振器が発生したレーザ光を増幅する少なくとも1つの増幅器とを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−147022(P2012−147022A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95210(P2012−95210)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2012−30228(P2012−30228)の分割
【原出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2012−30228(P2012−30228)の分割
【原出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]