説明

極端紫外光用ミラー、極端紫外光用ミラーの製造方法及び極端紫外光源装置

【課題】本発明のEUV光源装置は、EUV光以外の他の光を取り除き、EUV光のみを露光機に供給することができる。
【解決手段】EUV集光ミラー130の表面131には、Mo/Siの多層膜が設けられており、この多層膜にブレーズド溝133が形成される。プラズマ201から放射された光202は、EUV集光ミラー130に入射し、反射または回折する。EUV反射光203(EUV回折光を含む)は、中間集光点IFに向けて進む。他の波長の光は、反射角度または回折角度が異なるため、IFから外れた位置に進む。IFには、開口部151を有するSPF用アパーチャ150が設けられている。従って、EUV光のみが開口部151を通過して露光機に供給され、他の光はアパーチャ150により遮光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光を反射させるためのミラー、極端紫外光用ミラーを製造するための方法、及び、極端紫外光用ミラーを備える光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レジストを塗布したウエハ上に、回路パターンの描かれたマスクを縮小投影し、エッチングや薄膜形成等の処理を繰り返すことにより、半導体チップが生成される。半導体プロセスの微細化に伴い、より短い波長の光が求められている。
【0003】
そこで、13.5nmという極端に波長の短い光と縮小光学系とを使用する、半導体露光技術が研究されている。この技術は、EUVL(Extreme Ultra Violet Lithography:極端紫外線露光)と呼ばれる。以下、極端紫外光をEUV光と呼ぶ。
【0004】
EUV光源としては、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)式の光源と、DPP(Discharge Produced Plasma)式の光源と、SR(Synchrotron Radiation)式の光源との三種類が知られている。LPP式光源とは、ターゲット物質にレーザ光を照射してプラズマを生成し、このプラズマから放射されるEUV光を利用する光源である。DPP式光源とは、放電によって生成されるプラズマを利用する光源である。SR式光源とは、軌道放射光を使用する光源である。以上三種類の光源のうち、LPP式光源は、他の方式に比べてプラズマ密度を高くすることができ、かつ、捕集立体角を大きくできるため、高出力のEUV光を得られる可能性が高い。
【0005】
ここで、EUV光は波長が短く、物質に吸収されやすいため、EUVLでは、反射光学系が採用される。反射光学系は、例えば、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)とを用いた多層膜を使用して構築される。Mo/Siの多層膜は、13.5nm付近の反射率が高いため、EUVLでは13.5nmのEUV光を使用する。
【0006】
しかし、多層膜の反射率は70%程度のため、反射を繰り返すにつれて出力が次第に低下する。露光装置内でEUV光は十数回反射するため、EUV光源装置は、高出力のEUV光を露光装置に供給する必要がある。そこで、EUV光源装置として、LPP式の光源に期待が寄せられている(特許文献1)。
【0007】
さらに、EUV光源装置は、より純度の高いEUV光を露光装置に供給しなければならない。EUV光源装置から露光装置に供給される光の中に、EUV光以外の他の光が混入していると、露光コントラストが低下したり、パターニングの精度が低下したりする可能性がある。
【0008】
そこで、EUVLに不要な成分を除くために、スペクトル純度フィルタ(以下、SPF:Spectrum Purity Filter)を用いる第2従来技術が提案されている(特許文献2)。この第2従来技術に明示の記載は無いが、第2従来技術をLPP式の光源装置に適用する場合を想定して説明する。この場合、例えば、ターゲット供給装置から真空チャンバ内に、ターゲットとして、錫(Sn)の液滴を供給し、炭酸ガスレーザ光を錫液滴に照射してプラズマ化させ、プラズマから放射される光を集光ミラーで集めて反射型の平面回折格子に入射させ、平面回折格子によって分光させる。第2従来技術では、波長13.5nmを中心とするEUVの回折光のみを露光機へ導く。
【0009】
ここで、プラズマから放射される光のスペクトラムの内、波長130nm(DUV:Deep Ultraviolet)〜400nm(UV:Ultraviolet)の光は、露光機で使用される露光用レジストを感光させてしまう。従って、130nm〜400nmの光が露光機に入射すると、露光コントラストを下げる原因となる。また、赤外光(IR:Infrared)は、露光機内の光学部品、マスク、ウエハ等に吸収されて熱的膨張を引き起こし、パターニングの精度を低下させる可能性がある。
【0010】
特に、炭酸ガスパルスレーザ(波長10.6μmの赤外光。以下、CO2レーザと表記)を錫ターゲットの励起源とするEUV光源装置の場合、高出力のCO2レーザ光がターゲットにおいて散乱、反射するため、この散乱するCO2レーザ光をSPFによって除去する必要がある。例えば、中心波長13.5nmのEUV光の強度を1とした場合、CO2レーザ光の強度を0.01以下に抑える必要がある。
【0011】
そこで、第2従来技術では、反射型の平面回折格子を設けてEUV光とそれ以外の光とを分離し、EUV光のみを露光機に供給する。EUV光以外の光は、出射口近傍に設けられるダンパによって吸収され、熱エネルギに変換される。
【0012】
ここで、錫ドロップレットのような固体ターゲットを用いる場合、CO2レーザでドロップレットターゲット全てがプラズマに励起されるのではなく、数μm以上のデブリ(debris)が発生する。つまり、ターゲットの一部は、プラズマとならずにゴミとなって放出される。そこで、第2従来技術では、その図1に示すように、露光機と真空チャンバとの間に薄膜フィルタを設け、デブリが露光機内に流入するのを防止している。EUV光の透過率が比較的高いジルコニウム(Zr)やシリコン等の材料から薄膜フィルタを形成することにより、薄膜フィルタをフィルム型SPFとして機能させることができる。
【0013】
一方、第3従来技術(特許文献3)に示すように、反射型回折格子を用いるSPFの場合、EUVの回折光の効率を高めるべく、ブレーズド溝を設ける必要がある。しかし、ピッチが数μm、溝の高さが数十nmという非常に微細な溝を形成する必要があり、かつ、回折するEUV光の収差を排除するために、ピッチの変化する湾曲した溝が必要である(非特許文献1)。
【0014】
従って、第4従来技術(特許文献4)に記載されているように、ミラーの表面にコーティングされたMo/Si多層膜をブレーズド溝状に加工することにより、反射型SPFを生成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−80255号公報
【特許文献2】米国特許第6,809,327号明細書
【特許文献3】米国特許第6,469,827号明細書
【特許文献4】米国特許第7,050,237号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】“EUV spectral purity filter: optical and mechanical design, grating fabrication, and testing” H.Kierey, et al., Advances in Mirror Technology for X-Ray, EUVLithography, Laser and Other Applications, edited by Ali M.Khounsary, Udo Dinnger, Kazuya Ohta, Proceeding of SPIE Vol.5193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来技術では、以下の課題が存在する。第1の課題は、薄膜フィルム型SPFの効率や信頼性に問題がある点である。露光機とEUV光源との間を隔離する薄膜フィルム型SPFの透過率は、40%程度と低いため、EUV光の出力効率が低下する。また、薄膜フィルム型SPFは、デブリが飛び込んでくることにより容易に破損する。さらに、薄膜フィルム型SPFは、EUV光やその他の波長の光を吸収して温度が上昇すると、熱によって溶けてしまう可能性ある。このように、薄膜フィルム型SPFは、EUV光の透過率、信頼性、使い勝手の点で問題がある。
【0018】
第2の課題は、多層膜にブレーズド加工する第4従来技術では、Mo/Si多層膜を合計2000層以上積み重ねる必要がある点である。EUVの回折光と他の光の正反射光とを確実に分離するために、ブレーズド角を大きく設定する必要があり、ブレーズド角を大きくするために2000層以上の多層膜が必要とされる。
【0019】
第3の課題は、薄膜フィルム型SPFも反射型回折格子を用いたSPFも、EUV光の回折効率や透過率が低く、EUV光源の出力の30%程度がSPFで無駄に消費されている点である。
【0020】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的は、別体のスペクトル純度フィルタを用いることなく、EUV光だけを選択することのできる極端紫外光用ミラー、極端紫外光用ミラーの製造方法及び極端紫外光源装置を提供することにある。本発明の他の目的は、多層膜の層数及び形状の異なる複数の領域を積層化することにより、複数種類の回折効果を利用することができる極端紫外光用ミラー、極端紫外光用ミラーの製造方法及び極端紫外光源装置を提供することにある。本発明の更なる目的は、後述する実施形態の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第1の側面に従う極端紫外光用ミラーは、極端紫外光を反射させるミラーであって、基板部と、基板部の一面側に設けられる基礎部であって、基板部の一面側に設けられる第1多層膜から形成される基礎部と、基礎部の一面側に一体的に設けられる反射部であって、基礎部の一面側に設けられる第2多層膜に所定形状の溝を形成することにより生成される反射部と、を備える。
【0022】
好適な実施形態では、反射部は焦点を有するように形成されており、反射部により反射される極端紫外光は、焦点に集まるようになっている。
【0023】
好適な実施形態では、焦点の近傍には、極端紫外光を通過させるための開口部を有する遮光部材が設けられる。
【0024】
好適な実施形態では、第1多層膜及び第2多層膜は一体的に形成されており、第1多層膜及び第2多層膜をそれぞれ構成する複数のペア層の厚み寸法は、入射する極端紫外光の角度に応じて設定される。
【0025】
所定形状の溝は、ブレーズド状の溝として形成してもよい。または、所定形状の溝は、三角波状の溝として形成してもよい。あるいは、所定形状の溝は、波状の溝として形成してもよい。
【0026】
好適な実施形態では、所定形状の溝は、同心円状または平行線状に設けられる。
【0027】
好適な実施形態では、第1多層膜及び第2多層膜を構成するペア層の合計数は、100以上1000以下の範囲に設定される。
【0028】
本発明の第2の側面に従う、極端紫外光用ミラーを製造する方法は、所定層数の多層膜が一面側に形成された基板部を回転させながら、所定のマスクを介して加工用ビームを多層膜に照射することにより、多層膜の一部を除去して所定形状の溝を形成する。
【0029】
加工用ビームを所定の回動軸を中心として回動させながら多層膜に向けて照射させる構成でもよい。
【0030】
所定の回動軸は、プラズマの発生点に対応して設定することができる。
【0031】
反射部は焦点を有しており、所定の回動軸は、焦点の位置に対応して設定する構成でもよい。
【0032】
本発明の第3の側面に従う極端紫外光源装置は、レーザ光をターゲット物質に照射してプラズマ化させることにより、極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、第1排気ポンプが設けられている第1チャンバと、第1チャンバに接続され、第2排気ポンプが設けられている第2チャンバと、第1チャンバ内にターゲット物質を供給するターゲット物質供給手段と、ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化させて極端紫外光を放射させるためのレーザ光源と、プラズマから放射される極端紫外光を集光する極端紫外光用集光ミラーであって、プラズマから入射する極端紫外光を第2チャンバ内に設けられる焦点に向けて反射させる極端紫外光用ミラーと、焦点の近傍に設けられる遮光手段であって、極端紫外光を通過させるための開口部を有し、開口部以外の部分では極端紫外光以外の波長の電磁波を減衰させる遮光手段と、焦点に集まる極端紫外光を出力する出口部を連通または遮断するための遮断弁とを備え、さらに、極端紫外光用ミラーは、一面が少なくとも一つ以上の曲率を有して形成される基板部と、基板部の一面側に設けられる基礎部であって、基板部の一面側に設けられる第1多層膜から形成される基礎部と、基礎部の一面側に一体的に設けられる反射部であって、基礎部の一面側に設けられる第2多層膜に所定形状の溝を形成することにより生成される反射部と、を備えて構成される。
【0033】
反射部によって反射されるレーザ光が集光する位置に、この反射されたレーザ光を吸収するための吸収手段を設けてもよい。
【0034】
複数の磁場発生手段を備え、これら磁場発生手段から生じる磁場によって、プラズマから放出される荷電粒子を捕捉させる構成でもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、第1多層膜からなる基礎部と、第2多層膜に所定形状の溝を形成してなる反射部とを備えることができる。従って、複数種類の反射作用を利用して、極端紫外光を他の光から分離させることができる。そして、焦点近傍に位置する遮光部材によって、極端紫外光だけを通過させ、他の光の通過を阻止することにより、純度の高い極端紫外光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、第1実施形態に係るEUV集光ミラーを拡大して示す説明図。
【図2】図2は、EUV集光ミラーを備えるEUV光源装置の説明図。
【図3】図3は、EUV集光ミラーのブレーズド溝を拡大して示す断面図。
【図4】図4は、入射角度に応じてMo/Siペア層の厚みを設定するための特性図。
【図5】図5は、第2実施形態に係るEUV光源装置の説明図。
【図6】図6は、EUV集光ミラーを拡大して示す説明図。
【図7】図7は、EUV集光ミラーのブレーズド溝を拡大して示す断面図。
【図8】図8は、第3実施形態に係るEUV集光ミラーのブレーズド溝の例を示す説明図。
【図9】図9は、直線状のブレーズド溝をミラー全面に亘って形成する様子を示す説明図。
【図10】図10は、第4実施形態に係るEUV集光ミラーの製造法を示す説明図。
【図11】図11は、第5実施形態に係るEUV集光ミラーの製造法を示す説明図。
【図12】図12は、第6実施形態に係るEUV集光ミラーの製造法を示す説明図。
【図13】図13は、第7実施形態に係るEUV集光ミラーを拡大して示す断面図。
【図14】図14は、EUV集光ミラーを生成するために使用できるマスクの説明図。
【図15】図15は、EUV集光ミラーの生成に使用可能な別のマスクを示す説明図。
【図16】図16は、第8実施形態に係るEUV集光ミラーを拡大して示す断面図。
【図17】図17は、EUV集光ミラーを生成するために使用できるマスクの説明図。
【図18】図18は、EUV集光ミラーの生成に使用可能な別のマスクを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態では、以下に述べるように、EUV光を反射するミラーとして、EUV集光ミラーを例示する。実施形態では、EUV集光ミラーに反射型回折格子を一体的に設け、集光ミラーに集光機能及びSPF機能を持たせる。さらに、実施形態では、集光ミラー上の多層膜に所定形状の溝を設けることにより、基礎部分の多層膜及び所定形状の溝が設けられた部分の多層膜によるブラッグ反射と、所定形状の溝の表面に出現する多層膜の繰り返し模様による回折と、所定形状の溝そのものによる回折との3種類の回折作用を利用することができる。実施形態では、所定形状の溝の例として、ブレーズド状の溝、三角波状の溝、波状の溝を説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図1〜図4に基づいて第1実施形態を説明する。図1は、EUV集光ミラー130を拡大して示す説明図、図2は、EUV集光ミラー130を備えるEUV光源装置1の説明図、図3は、EUV集光ミラー130に設けられるブレーズド溝の説明図、図4は、EUV光の入射角度に応じてペア層の厚みを設定するための特性図である。先に図2を参照してEUV光源装置1の構成を説明し、次に図1等を参照してEUV集光ミラー130の構成を説明する。
【0039】
図2に示すEUV光源装置1は、それぞれ後述するように、例えば、真空チャンバ100と、駆動用レーザ光源110と、ターゲット供給器120と、EUV集光ミラー130と、磁場発生用コイル140,141と、SPF用アパーチャ150と、隔壁用アパーチャ160,161と、真空排気ポンプ170,171と、ゲートバルブ180とを備えている。
【0040】
真空チャンバ100は、容積の大きい第1チャンバ101と、容積の小さい第2チャンバ102とを接続することにより構成される。第1チャンバ101は、プラズマの生成等を行うメインチャンバである。第2チャンバ102は、プラズマから放射されるEUV光を露光機に供給するための接続用チャンバである。
【0041】
第1チャンバ101には「第1排気ポンプ」としての第1真空排気ポンプ170が接続されており、第2チャンバ102には「第2排気ポンプ」としての第2真空排気ポンプ171が接続されている。これにより、各チャンバ101,102は、それぞれ真空状態に保たれている。各真空排気ポンプ170,171をそれぞれ別々のポンプとして構成してもよいし、同一のポンプを利用する構成でもよい。
【0042】
ターゲット供給器120は、例えば、錫(Sn)等の材料を加熱溶解することにより、固体または液体のドロップレットとして、ターゲット200を供給する。なお、本実施形態では、ターゲット物質として錫を例に挙げて説明するが、これに限らず、例えば、リチウム(Li)等の他の物質を用いてもよい。あるいは、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、水、アルコール等の材料を用い、気体、液体または固体のいずれかの状態でターゲットを供給する構成でもよい。さらには、スタナン(SnH4)、四塩化錫(SnCl4)等を液体または氷のドロップレットとして供給してもよい。
【0043】
駆動用レーザ光源110は、ターゲット供給器120から供給されるターゲット200を励起させるためのパルスレーザを出力する。駆動用レーザ光源110は、例えば、CO2(炭酸ガス)パルスレーザ光源として構成される。駆動用レーザ光源110は、例えば、波長10.6μm、出力20kW、パルス繰り返し周波数100kHz、パルス幅20nsecの仕様を有するレーザ光を出射する。なお、レーザ光源としてCO2パルスレーザを例に挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0044】
駆動用レーザ光源110から出力される励起用のレーザ光は、集光レンズ111と入射窓112を介して、第1チャンバ101内に入射する。第1チャンバ101内に入射したレーザ光は、EUV集光ミラー130に設けられた入射穴132を介して、ターゲット供給器120から供給されるターゲット200を照射する。
【0045】
ターゲットにレーザ光が照射されると、ターゲットプラズマ201が発生する。以下、便宜上、単にプラズマ201と呼ぶ。プラズマ201は、中心波長13.5nmのEUV光202を放射する。プラズマ201から放射されたEUV光202は、EUV集光ミラー130に入射して反射される。反射光203は、「焦点」としての中間集光点(IF:Intermediate Focus)に集光する。EUV集光ミラー130の詳細については、図を改めて後述する。IFに集光されたEUV光は、開状態のゲートバルブ180を介して、露光機へ導かれる。
【0046】
プラズマ201からEUV集光ミラー130を介してIFに向かうEUV光202,203の光路を上下から挟むようにして、一対の磁場発生用コイル140,141が設けられている。各コイル140,141の軸心は一致する。各コイル140,141は、例えば、超伝導コイルを有する電磁石のように構成される。各コイル140,141に同方向の電流を流すと、磁場が発生する。この磁場は、コイル140,141の近傍では磁束密度が高く、コイル140とコイル141の中間点では磁束密度が低い。
【0047】
ターゲットにレーザ光が照射されると、デブリが発生する。電荷を帯びているデブリ(プラズマ等のイオン)は、各コイル140,141によって発生する磁場に捕捉され、ローレンツ力により螺旋運動しながら図1中の下側に向けて移動する。下側に移動したデブリは、第1真空排気ポンプ170により吸引されて第1チャンバ101の外部で回収される。磁場発生装置(本例では、コイル140,141)の設置場所は、それらが作る磁力線によりイオン性のデブリが光学部品を回避して排出される位置であればよい。従って、図示する配置に限定されない。
【0048】
ターゲットに照射されたレーザ光は、ターゲットを励起する際に、ターゲットで反射したり、プラズマ201で反射して散乱する。そして、ターゲット等で反射したレーザ光は、EUV集光ミラー130に入射して反射及び回折する。しかし、レーザ光の反射光及び回折光は、EUV光と波長が異なり、IFから外れた別の位置に集光する。従って、レーザ光の反射光及び回折光は、SPF用アパーチャ150によって遮光される。即ち、SPF用アパーチャ150の開口部151(図1参照)は、IFに対応して設けられているため、IFから外れた位置に向かうレーザ光の反射光及び回折光301は、開口部151を通過できず、SPF用アパーチャ150の壁部によって遮光される。開口部151は、例えば、数mm程度の小円として形成される。
【0049】
レーザ光(IR)と同様に、プラズマ201から発生するDUV、UV、VIS(Visible:可視光)の他の光も、IFから外れた位置に集光されるため、IFに対応して設置されているSPF用アパーチャ150により遮光される。
【0050】
このように、SPF用アパーチャ150は、開口部151によってEUV光のみを通過させ、他の波長の光が露光機側に向かうのを遮断する。SPF用アパーチャ150は、DUV、UV、VIS、IRを吸収して熱に変換する。そこで、SPF用アパーチャ150を水冷して放熱させる。EUV集光ミラー130の基板部135(図3参照)もシリコンやニッケル(Ni)合金等の熱伝導性の良い材料から形成し、水冷ジャケット等で冷却することができる。
【0051】
各コイル140,141へ電流を供給するための電源装置、配線、SPF用アパーチャ150及びEUV集光ミラー130を冷却するための機構等は、説明の便宜上、図示を省略する。しかし、いわゆる当業者であれば、通電構造や冷却構造等を容易に理解することができ、実際に製作できる。
【0052】
IFの前後には、2つの隔壁用アパーチャ160,161が配置されている。つまり、EUV集光ミラー130で反射されたEUV光203の進行方向を基準とすると、IFの前側には第1隔壁用アパーチャ160が設けられており、IFの後側には第2隔壁用アパーチャ161が設けられている。各隔壁用アパーチャ160,161は、例えば、それぞれ数mm〜10mm程度の開口部を有する。
【0053】
第1隔壁用アパーチャ160は、第1チャンバ101と第2チャンバ102とを接続する位置近傍に設けられており、第2隔壁用アパーチャ161は、第2チャンバ102と露光機とを接続する位置近傍に設けられている。SPF用アパーチャ150は、各隔壁用アパーチャ160,161の中間付近に位置するIFに対応して設けられる。
【0054】
換言すれば、IFは、第1チャンバ101とは別の第2チャンバ102内に位置するように設定されており、IFの前後を仕切るようにして各隔壁用アパーチャ160,161が配置されている。
【0055】
第1チャンバ101内は第1真空排気ポンプ170によって高真空状態に保持され、第2チャンバ102内は第2真空排気ポンプ171によって真空状態に保持される。第1チャンバ101内の圧力は、第2チャンバ102内の圧力よりも低く設定される。さらに、第1チャンバ101内のイオン(帯電しているデブリ)は、コイル140,141により発生する磁場に捕捉される。
【0056】
従って、第1チャンバ101内で生じたデブリが第2チャンバ102内に流入するのを抑制することができる。さらに、第2チャンバ102内にデブリ等が流入した場合でも、このデブリ等を第2真空排気ポンプ171によって第2チャンバ102の外部で回収することができる。これにより、デブリ等が露光機に流入するのを防止できる。
【0057】
上述の通り、本実施形態では、プラズマ201から飛散するデブリから各種光学素子を保護するための保護手段として、コイル140,141による磁場を利用する。各種光学素子とは、EUV集光ミラー130、入射窓112、真空チャンバ100内の現象を観測するために設けられた各種光学センサの入射窓等である。
【0058】
プラズマ201から放出されるデブリのうちイオンは、電荷を有するため、磁場に捕捉されて第1真空排気ポンプ170によって排出される。しかし、電荷を有さない中性のデブリは、磁場で拘束することができない。
【0059】
従って、もしも何らの対策も施さない場合、中性デブリは、真空チャンバ100内の各種光学素子を徐々に汚染し、ダメージを与える。さらに、第1チャンバ101内の中性デブリが第2チャンバ102を介して露光機内に流入すると、露光機内の各種光学素子までが汚染される。
【0060】
これに対し、本実施形態では、真空チャンバ100を大容積の第1チャンバ101と小容積の第2チャンバ102とに分けて構成し、かつ、第1チャンバ101内の圧力を第2チャンバ102内の圧力よりも低く設定している。さらに、第1チャンバ101と第2チャンバ102との間を隔壁用アパーチャ160によって区切り、第1チャンバ101から第2チャンバ102への空間移動に制限を加えて、中性のデブリが第2チャンバ102内に流入する確率を低減させている。第2チャンバ102内に中性のデブリが侵入した場合でも、そのデブリは第2真空排気ポンプ171により外部に排出される。従って、本実施形態では、EUV光源装置1内のデブリが露光機内に侵入するのを未然に防止できる。
【0061】
露光機がデブリで汚染されるのを防止することはできるが、真空チャンバ100内には中性のデブリが徐々に拡散し堆積していく。従って、時間の経過に応じて、EUV集光ミラー130の表面131がデブリで徐々に汚染される可能性がある。その場合は、メンテナンス作業を行えばよい。
【0062】
メンテナンス作業では、例えば、EUV光源装置1の運転を停止し、ゲートバルブ180を閉じて露光機と真空チャンバ100との間を完全に遮断し、エッチャントガスによってEUV集光ミラー130を清掃する。
【0063】
エッチャントガスとしては、例えば、水素ガス、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス、アルゴンガス、あるいは、それらの混合ガスを用いることができる。EUV集光ミラー130を図示せぬ加熱装置によって加熱し、クリーニングを促進しても良い。さらに、RF(Radio Frequency)やマイクロ波によりエッチャントガスを励起して、クリーニングを促進させる構成でも良い。
【0064】
クリーニングが終了した場合、真空チャンバ100へのエッチャントガスの供給を停止し、各真空排気ポンプ170,171によって十分な真空度を得た後で、ゲートバルブ180を開き、EUV光源装置1の運転を再開する。
【0065】
次に、図1,図2及び図3を参照してEUV集光ミラー130を説明する。図1では、便宜上、レーザ光を通過させるための入射穴132を省略している。
【0066】
EUV集光ミラー130の表面131は、全体として少なくとも一つ以上の曲率を有するように構成される。例えば、EUV集光ミラー130の表面131は、回転楕円体のような凹面、放物面、球面、複数の曲率を有する凹面として構成される。
【0067】
表面131には、所定の波長を選択的に反射する多層膜が形成されている。本実施形態では、所定の波長は13.5nmである。多層膜は、モリブデンとシリコンとから構成されるペア層(Mo/Si)を多数積層させることにより構成される。さらに、図2にも示すように、表面131を覆う多層膜には、多数のブレーズド溝133が形成される。
【0068】
図1中に拡大して示すように、本実施形態のブレーズド溝133は、中心(軸AX)に向かうほど盛り上がるようにして形成されている。逆に言えば、各ブレーズド溝133は、中央側から外側に向けて傾斜するようにして、形成されている。なお、ブレーズド溝133の形状は、図1に示すものに限定されない。後述の実施形態で示すように、種々の形状でブレーズド溝133を形成することができる。
【0069】
既に述べた通り、プラズマ201で発生した光のうちEUV光202は、ブレーズド溝133を有するEUV集光ミラー130に入射して反射ないし回折され、第2チャンバ102内に設定されるIFに集光される。EUV集光ミラー130に入射するEUV光のうち、60%−70%程度のEUV光203がIFに集められて露光機に供給される。
【0070】
ターゲットに入射して散乱または反射したレーザ光は、EUV集光ミラー130に入射して反射または回折する。レーザ光の反射光301A及び回折光(−1次回折光)301Bのいずれも、IFと異なる位置に向かう。このため、レーザ光の反射光301A及び回折光301Bは、SPF用アパーチャ150の壁部によって遮光され、露光機への侵入が阻止される。同様に、DUV、UV、VISの各光も、SPF用アパーチャ150の壁部によって遮光され、露光機に供給されない。
【0071】
これに対し、EUV光は、開口部151を通過して露光機へ導かれる。EUV光がIFに集光するように光学的諸条件が予め設定されており、SPF用アパーチャ150の開口部151はIFに対応して設けられているためである。
【0072】
図3は、EUV集光ミラーの一部を拡大して示す断面図である。図2中、軸線AX1は、EUV集光ミラー130の基板部135に垂直な軸を示し、他の軸線AX2は、ブレーズド溝133の斜面に垂直な軸を示す。
【0073】
EUV集光ミラー130の基板部135は、シリコンやニッケル合金等の熱伝導性の良い材料から、回転楕円体のような、IFを有する凹面を備えるように、形成される。基板部135の表面(図2中の上面であり、「一面」に該当する)には、所定数の多層膜(Mo/Siペア層)がコーティングされる。本実施形態では、100層以上1000層以下の範囲で、Mo/Siペア層をコーティングする。好ましくは、本実施形態では、Mo/Siペア層を、表面131上に300個程度積み上げる。Mo/Siペア層とは、一つのモリブデン膜と一つのシリコン膜から構成される層であり、多数のMo/Siペア層を積層することにより、多層膜が形成される。
【0074】
300層(厚みH0)の多層膜のうち表面から250層分の多層膜にブレーズド溝133を加工し、底面側の50層はそのままにする。底面側の50層の多層膜(厚みΔH分の多層膜)は、「第1多層膜」に該当する。基礎部134は、厚みΔHの多層膜から形成される。基礎部134によってEUV光をブラッグ反射させるために、基礎部134を40−60層程度のMo/Siペア層で構成する。基礎部134の上側に位置する250層の多層膜(厚みH分の多層膜)は、「第2多層膜」に該当し、ブレーズド溝133は「反射部」に該当する。
【0075】
なお、上述の300層、250層及び50層という各数値は、説明のための好ましい一例に過ぎず、本発明は上記の数値に限定されない。要するに、基礎部134がEUV光をブラッグ反射させる機能を発揮でき、ブレーズド溝133が多層膜の模様による回折機能及びブレーズド溝そのものによる回折機能をそれぞれ発揮することができるのであれば、100〜1000層の範囲で設定可能である。
【0076】
100層未満の場合は、必要なブレーズド角θBを得られず、EUV光を他の光から十分に分離できない場合がある。1000層を超える場合は、製造に手間がかかり、さらに、内部応力が増大して多層膜が剥離する可能性もある。
【0077】
そこで、本実施形態では、100層〜1000層の範囲から300層という値を一例として選択し、EUV集光ミラー130上に反射型回折格子を一体的に設けている。多層膜をより多く積むほど、ブレーズド角θBを大きくすることができ、EUV反射光203と他の光301A,301Bとを容易に分離することができる。
【0078】
本実施形態では、Mo/Si層の積層数を100〜1000内で設定することができ、多層膜内に生じる応力を減少させて、多層膜の剥離を防止することができる。さらに、EUV光の反射効率として、従来と同等の60%〜70%という性能を維持できるため、露光機に送り込むEUV光の効率を高めることができる。
【0079】
SPF機能を備えない通常のEUV集光ミラーと別体の反射型回折格子との両方を用いる構成の場合は、EUV集光ミラーでEUV光を30%程度損失し、さらに、別体の反射型回折格子でEUV光を30%程度損失する。つまり、この構成の場合は、EUV光を2回反射させて露光機に入射させるため、最終的に50%程度のEUV光しか露光機に供給することができない。これに対し、本実施形態のEUV集光ミラー130は、SPF機能を備えるため、一回の反射でEUV光を露光機に送り込むことができる。つまり、EUV光の損失は30%程度に止まる。さらに、本実施形態では、IFに対応して設けられるSPF用アパーチャ150によって、EUV光以外の余分な光が露光機に入射するのを抑制し、純度の高いEUV光を露光機に供給することができる。
【0080】
なお、ブレーズド溝133を加工した後のミラーの最表面をルテリウム(Ru)等でコーティングし、加工したMo/Si層の露出部分が酸化しないようにして、EUV光の回折効率の低下を防止する構成としてもよい。また、Mo/Siペア層の厚みは、図4で後述するように、EUV光の入射角度に応じて設定するのが好ましい。
【0081】
具体例を検討する。仮に、Mo/Siペア層の厚みを6.9nmとすると、300層の厚みHは、2.070μmとなる。250層の多層膜に、400μmのピッチPでブレーズド溝133を形成すると、ブレーズド角θBは4.3mradとなる。従って、2θBは、8.6mradである。
【0082】
例えば、EUV集光ミラー130の曲率半径を181.8mm、円錐定数(conic constant)を−0.67とすると、EUV集光ミラー130の楕円状の表面131(ミラー面)からIFまでの距離は、約1mとなる。
【0083】
プラズマ201からEUV集光ミラー130に入射するEUV光202の入射角度をαとすると、EUV光203は、ほぼ角度αで反射してIFに向かい、SPF用アパーチャ150の開口部151を通過する。
【0084】
これに対し、レーザ光301Aを始めとして、DUV、UV、VIS、IR光は、α+2θBの角度で正反射する。従って、約1m先のIFの位置では、EUV反射光203とレーザ光等の正反射光301Aとは、約8.6mmの間隔で分離する。
【0085】
さらに、レーザ光のようなIR光は、ブレーズド溝133によって、α+θdの角度で回折する。本実施形態では、波長10.6μmのレーザ光を使用するため、図3中の角度θdは、27.6mrad となる。
【0086】
便宜上図示を省略するが、DUV、UV、VISについては、ブレーズド溝133の斜面に現れるモリブデンとシリコンの周期的な縞模様(本実施形態では、1.54μmピッチの縞模様となる)により形成されるグレーティングによって回折し、EUV光203とは異なる角度で進む。
【0087】
従って、EUV光203の集まるIFの位置にサイズφ4〜6mm程度の開口部151を配置すれば、EUV光203のみを選択して露光機へと導くことができる。
【0088】
上述の通り、EUV集光ミラー130の表面には、多層のMo/Siペア層をブレーズド溝加工することにより構成される反射型回折格子が一体的に設けられている。EUV集光ミラー130は、図2に示すように、プラズマ201から角度αで光202が入射すると、中心波長13.5nmのEUV光をほぼ角度αで反射させる。反射効率は、60%〜70%である。
【0089】
DUV、UV領域の光は、Mo/Siペア層の多層膜をブレーズド溝状に加工した斜面に現れる、モリブデンとシリコンとの周期的な縞から形成される回折格子によって反射し、EUV光203とは異なる角度で回折する。
【0090】
VIS、IR領域の光、特に、駆動用レーザ光源110から照射されるレーザ光(波長10.6μm)は、ブレーズド溝133によってEUV光203とは異なる角度α+θd(または、α−θd)に回折する。
【0091】
さらに、ブレーズド溝133(ブレーズド角θB)により、EUV光203を除く、DUV、UV、VIS、IRは、角度θBの面によってα+2θBの角度で正反射する。従って、ほぼ角度αで反射または回折するEUV光203のみを取り出して露光機に供給することができる。つまり、EUV集光ミラー130は、SPFの機能を果たす。
【0092】
図4は、EUV集光ミラー130に入射する角度(α)に応じて、Mo/Siペア層の厚みを設定するための特性図を示す。図4に示す通り、入射角度が0度から50度に増加するにつれて、ペア層の厚みは6nm程度から10nm程度に増加する。入射角度αが12度の場合、ペア層の厚みは6.9nmとなる。入射角度50度を超えた付近からペア層の厚みの増加率が大きくなる。入射角度70度程度の場合に、ペア層の厚みは20nm程度となる。もっとも図4に示す特性は一例であって、本発明は図4に示す特性に限定されない。
【0093】
本実施形態のEUV集光ミラー130は、それぞれMo/Siの多層膜から形成される基礎部134及びブレーズド溝133を備えるため、以下に述べる三種類の回折作用を利用することができる。
【0094】
第1の回折作用は、ブラッグ反射である。EUV集光ミラー130の底面側に位置する基礎部134のMo/Si多層膜とブレーズド溝133が施された部分の多層膜とは、従来のEUV集光ミラーと同様に反射鏡として作用し、中心波長13.5nmのEUV光をブラッグ反射させる。基礎部134の多層膜とブレーズド溝133が施された部分の多層膜とは、図4で述べた通り、入射角度αに応じて、各ペア層の厚みが、例えば、6.9nm〜20nmの範囲で変化する。
【0095】
第2の回折作用は、ブレーズド溝133の表面(斜面)に現れる、モリブデンとシリコンの縞模様による回折である。この縞模様のピッチは、ペア層の厚みによっても異なるが、数百nm〜数μmの範囲で変化する。この第2の回折作用により、EUV、DUV、UV、VISが回折する。
【0096】
第3の回折作用は、ブレーズド溝133それ自体による回折である。ブレーズド溝133は、例えば、数百μm〜数mmの比較的大きなピッチで形成される。第3の回折作用により、VISやIRが回折される。
【0097】
ここで、Mo/Siペア層の厚みを入射角度αに応じて設定することにより(図4参照)、EUV光を第2の回折作用により、第1の回折作用とほぼ同じ角度で、回折させることができる。つまり、基礎部134によるEUV光の反射角度と、ブレーズド溝133の斜面に現れる縞模様による回折角度とを一致させて、効率的にEUV光をIFに向けて送り出すことができる。
【0098】
このように構成される本実施形態では、EUV集光ミラー130に所定数のMo/Siペア層を積み上げてブレーズド溝133を形成するため、EUV集光ミラー130に、EUV光を反射させるミラーとしての機能のみならず、EUV光と他の光とを分離するSPF機能も持たせることができる。さらに、本実施形態では、EUV光が集光するIFにSPF用アパーチャ150を設けるため、EUV光のみを露光機に供給できる。これにより、本実施形態では、別体の反射型回折格子を用いる場合に比べて、より多くのEUV光を露光機に供給することができ、かつ、部品点数を低減してEUV光源装置1の製造コストを下げることができる。
【0099】
本実施形態では、薄膜フィルム型のSPFを用いる必要がないため、デブリや熱によって薄膜フィルム型SPFが破損等するおそれがなく、使い勝手及び信頼性が向上する。
【0100】
本実施形態では、Mo/Siペア層を100〜1000層の範囲で基板部135に積層し、ブレーズド溝133を形成する。従って、2000層以上のMo/Siペア層を積み上げる従来技術に比べて、多層膜内の応力で多層膜が剥離するおそれがなく、信頼性及び使い勝手が向上する。また、層数が少ないため、EUV集光ミラー130の製造コストを低減することができる。
【0101】
本実施形態では、EUV集光ミラー130がSPF機能を備えるため、一回の反射で純度の高いEUV光を露光機に供給することができる。従って、EUV光を複数回反射させる従来技術よりも高い効率で、EUV光を露光機に供給することができる。
【0102】
(第2実施形態)
以下、図5〜図7に基づいて第2実施形態を説明する。以下に述べる各実施形態は、第1実施形態の変形例に相当する。従って、第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態と第1実施形態との相違点は、ブレーズド溝の角度が逆である点と、その相違点に伴ってダンパ105が新たに設けられている点とにある。
【0103】
図5は、本実施形態によるEUV光源装置1Aの説明図である。ダンパ105は、光軸AX上に位置して設けられており(図6参照)、ブレーズド溝133により偏向した正反射光301Aを吸収して熱エネルギに変換する。ダンパ105は、真空チャンバ100内に入射するレーザ光を吸収するためのダンパと兼用してもよい。ダンパ105は、水冷ジャケット等の冷却機構によって冷却されるのが好ましい。なお、SPF用アパーチャ150Aは、隔壁用アパーチャを兼用している。
【0104】
図6は、EUV集光ミラー130A等を拡大して示す説明図である。図6に示すように、ダンパ105は、プラズマ201の発生点とSPF用アパーチャ150Aとの間に位置して、光軸AX上の反射光301Aが集まる位置に設けられている。
【0105】
図6中に拡大して示すように、ブレーズド溝133は、図1に示すブレーズド溝と異なり、内側から外側に向けて盛り上がるように形成されている。換言すれば、外側から内側に向けて下り坂となるように、ブレーズド溝133が形成される。
【0106】
図7は、EUV集光ミラー130Aの一部を拡大して示す説明図である。本実施形態では、基板部135の上にMo/Siペア層を850層積み上げる。1層の厚みを6.9nmとすると、寸法H0は5.865μmとなる。そして、本実施形態では、上から800層(この場合、5.520μmの厚みとなる)について、400μmのピッチでブレーズド溝133を形成する。この結果、θB は13.8mradとなり、2θB は27.6mrad となる。
【0107】
EUV集光ミラー130Aのミラー面(131)が、例えば、曲率半径181.8mm、円錐定数−0.67の楕円面の場合、ミラー面からIFまでの距離は約1mである。EUV集光ミラー130Aに入射する光202の入射角度をαとすると、EUV光203は角度αで反射してIFに向かい、レーザ光を始めとするDUV、UV、VIS、IRの光301Aは、α−2θBの角度で正反射する。
【0108】
従って、EUV集光ミラー130Aから約1m離れたIFの位置では、EUV光203と正反射光301Aとは、約27.6mmの間隔で分離する。しかし、本実施形態では、光軸AX上にダンパ105を設けて正反射光301Aを吸収するため、実際には、IFの位置でEUV光とレーザ光等の正反射光とが共に現れることはない。上記の数値27.6mmというのは、ダンパ105を設けなかった場合の試算である。つまり、ダンパ105が存在しない場合でも、IFの付近でEUV反射光203と他の正反射光301Aとを十分離間させることができ、SPF用アパーチャ150AでEUV光のみを取り出すことができる。
【0109】
CO2レーザ光のようなIR光は、ブレーズド溝(ピッチ400μm)によって、α−θdの角度で回折する。本実施形態では、CO2レーザの波長を10.6μmに設定しているので、θdは27.6mradとなる。
【0110】
便宜上図示はしないが、DUV、UV、VIS光は、ブレーズド溝状にカットした表面に現れるモリブデンとシリコンとの周期的な縞(実施形態では、0.5μmピッチ)により形成されるグレーティングで回折し、EUV光203とは異なる角度で進む。従って、IFの位置にサイズφ4〜6mmの開口部151を有するSPF用アパーチャ150Aを配置することにより、EUV光203のみを選択して露光機に供給できる。このように構成される本実施形態も第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0111】
(第3実施形態)
図8,図9に基づいて第3実施形態を説明する。本実施形態では、ブレーズド溝の変形例について説明する。図8は、EUV集光ミラー130を正面からみた図である。図8(a)に示すように、ブレーズド溝133を同心円状に形成してもよいし、あるいは、図8(b)に示すように平行な直線状に形成してもよい。
【0112】
図8(b)に示すように平行な直線状にブレーズド溝133を形成する場合は、図9に示すように、EUV集光ミラー130のミラー全面に亘って同一方向にブレーズド溝を形成してもよい。このように構成される本実施形態も第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0113】
(第4実施形態)
図10に基づいて第4実施形態を説明する。以下、SPF機能を有するEUV集光ミラー130の製造方法について幾つかの例を説明する。
【0114】
図10(a)に示すように、所定数の多層膜を基板部135にコーティングしてなるミラー部材137を回転台400に載せて回転させる。イオンミリング装置410及びマスク420を用いて、イオンビーム430を多層膜に照射することにより、ブレーズド溝を形成するための切削加工を行う。
【0115】
図10(b)に示すように、マスク420には、イオンビーム430を透過させる三角形状のパターン421が形成されている。従って、パターン421とイオンビーム430との相対的位置関係によって、ブレーズド溝の幅P1またはP2を調整できる。
【0116】
図10(b)の左側に示すように、三角形状のパターン421とイオンビーム430とが重なる面積を小さくすると、その下側に示すように、幅P1の狭いブレーズド溝を形成することができる。図10(b)の右側に示すように、三角形状のパターン421の全面にイオンビーム430を重ねると、幅P2の広いブレーズド溝を形成できる。
【0117】
イオンミリング装置410及びマスク420は、一つのブレーズド溝を形成し終わるたびに、溝のピッチ分だけ径方向(図10中の横方向)に移動し、イオンビームを照射して新たなブレーズド溝を形成する。
【0118】
図3に示すようなブレーズド溝を形成する場合は、図10(c)に示すように、三角形状のパターン421の向きを変えたマスク420を用いる。このように構成される本実施形態では、第1実施形態で述べたEUV集光ミラー130を容易に製造できる。
【0119】
(第5実施形態)
図11に基づいて第5実施形態を説明する。本実施形態では、EUV光の集まる中間集光点IFに対応する位置を回動軸412(IF)とし、イオンミリング装置410及びマスク420を回動させる。
【0120】
イオンミリング装置410及びマスク420は、長い筒状の支持装置411に、軸方向に移動可能に取り付けられている。支持装置411は、回動軸412(IF)を中心に、図11中の左右方向に回動可能となっている。回動軸412(IF)は、ミラー部材137のミラー面(完成予定のミラー面)の中心からIFだけ離れた距離に設定される。イオンミリング装置410及びマスク420は、軸方向及び左右方向に移動しながら、ブレーズド溝を形成する。
【0121】
回動軸412(IF)がEUV集光ミラー130に対するIFと同一の位置に設定されるため、イオンミリング装置410からは、図1中の光線203の方向と逆向きにイオンビームが照射される。これにより、イオンビームが多層膜に入射する角度を一定にすることができ、ブレーズド溝を一定形状で加工することができる。これにより、プラズマ201から放射されるEUV光がブレーズド溝の縁に邪魔されて入射できなくなるという影の部分がEUV集光ミラー130に生じるのを防止することができる。
【0122】
(第6実施形態)
図12に基づいて第6実施形態を説明する。本実施形態では、図12(a)に示すように、回動412(201)の位置を、プラズマ201の発生点に設定する。さらに、図12(b)に示すように、EUV集光ミラー130の半径に相当する長さのマスク420Aを用い、この長いマスク420Aには各ブレーズド溝に対応するパターン421をそれぞれ設けておく。従って、イオンミリング装置410を径方向に揺動させながらイオンビームを照射するだけで、各ブレーズド溝を形成することができる。
【0123】
このように構成される本実施形態も第5実施形態と同様に、いわゆる影の部分の発生を抑制することができ、EUV光をより効率よく集光し選別することができる。
【0124】
(第7実施形態)
図13〜図15に基づいて第7実施形態を説明する。本実施形態のEUV集光ミラー130Bは、ブレーズド溝に代えて、三角波状の溝133Bを備える。本実施形態のEUV集光ミラー130Bでは、基板部135の表面を覆う多層膜に、三角波状の溝133Bを一体的に形成する。第1実施形態と同様に、本実施形態においても、Mo/Siペア層の多層膜を例えば300層積層し、表面から250層分を三角波状または三角屋根型に形成する。図13中、軸線AX1a,AX1bは、基板部135に垂直な軸を示し、他の軸線AX2a,AX2bは、三角波状の溝133Bの斜面に垂直な軸を示す。
【0125】
三角波状の溝133Bは、2つの斜面133B1,133B2を備える。各斜面133B1,133B2の傾斜角θb2は、同一に設定することができる。説明の便宜上、図13中左側の斜面を第1斜面133B1と、図13中右側の斜面を第2斜面133B2と、それぞれ呼ぶ。
【0126】
三角波状の溝133Bは、例えば、800μm程度のピッチP10で形成することができる。この場合、第1斜面133B1と第2斜面133B2とは、基板部135に平行な方向に400μm(=P10/2)間隔で出現する。換言すれば、本実施形態のEUV集光ミラー130Bでは、ピッチP10/2毎に、斜面の向きが反対方向に変化する。
【0127】
各斜面133B1,133B2の傾きに応じて、EUV光以外の他の光(駆動用レーザ光、DUV、UV、VIS、IR)は、斜面で正反射し、EUV光の反射光203とは異なる方向に向かう。EUV光は、基礎部135及び三角波状の溝133Bが施された部分の表面に積まれた10層〜50層のMo/Siペア層により、ブラッグ回折する。この回折の効率は、Mo/Siペア層が設けられたミラーと同様である。
【0128】
さらに、三角波状または三角屋根型の800um周期のグレーティング構造によって、上述のVIS光やIR光は、EUV光と異なる方向に回折する。さらに、各斜面133B1,133B2に露出するMo/Siペア層の縞模様によって形成されるグレーティングにより、EUV光及びIR以外の比較的短い波長の光(DUV、UV、VIS)は、EUV光の反射光202とは異なる方向に回折する。
【0129】
800μmに代えて、ピッチP10を400μm等の他の値に設定してもよい。例えば、ピッチP10を400μmに設定する場合、第1実施形態と同様に、400μmピッチのグレーティングとしての光学的回折作用を得ることができる。これに対し、ピッチP10を800μmに設定する場合は、800μmピッチのグレーティングとしての光学的回折作用を得ることができる。さらに、ピッチは一定である必要はなく、三角波状の溝133Bの形成される位置に応じて変化させてもよい。また、例えば、133B1のピッチを300μmに設定し、133B2のピッチを500μmに設定する場合のように、133B1のピッチと133B2のピッチとを違える構成でもよい。
【0130】
図14は、本実施形態による三角波状の溝133Bを形成するためのマスク420Bを示す平面図である。上述の第4実施形態に従って、三角波状の溝133Bを形成する場合、図14に示すマスク420Bを用いる。マスク420Bは、三角波状の溝133Bに対応する三角形状の開口パターン421Bを有する。
【0131】
図15は、本実施形態による三角波状の溝133Bを形成するための他のマスク420Cを示す平面図である。上述の第6実施形態に従って、三角波状の溝133Bを形成する場合、図15に示すように、EUV集光ミラー130Bの半径に相当する長さのマスク420Cを用いる。このマスク420Cには、各三角波状の溝133Bに対応する三角形状の開口パターン421Bをそれぞれ設けておく。このように構成される本実施形態も第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0132】
(第8実施形態)
図16〜図18に基づいて第8実施形態を説明する。本実施形態のEUV集光ミラー130Cは、波状の溝133Cを備える。波状の例として、正弦波状を挙げることができる。本実施形態においても、Mo/Siペア層の多層膜を例えば300層積層し、表面から250層分を波状に形成する。図13中、軸線AX1L,AX1Rは、基板部135に垂直な軸を示し、他の軸線AX2L,AX2Rは、円弧状の面に垂直な軸を示す。符号133C1は波の頂上を、符号133C2は波の谷をそれぞれ示す。
【0133】
本実施形態のEUV集光ミラー130Cでは、正弦波のように、面の傾きがピッチP10(例えば600μm)毎に連続して変化する。円弧状の面の傾きに応じて、EUV光以外の光(駆動用レーザ光、DUV、UV、VIS、IR)は、EUV光の反射光203と異なる方向に反射する。
【0134】
但し、頂上133C1のように、その傾きが部分的に水平に近い場所では、EUV光とその他の光(駆動用レーザ光、DUV、UV、VIS、IR)は、EUV光と同じ方向に正反射する。
【0135】
上述の通り、EUV光は、基礎部135及び波状の溝133Cが施された部分の表面に積まれた10層〜50層のMo/Siペア層により、ブラッグ回折する。回折の効率は、Mo/Siペア層が設けられたミラーと同様である。また、波状の600um周期のグレーティング構造によって、VIS光やIR光は、EUV光と異なる方向に回折する。さらに、円弧状の面に露出するMo/Siペア層の縞模様から形成されるグレーティングにより、EUV光及びIR以外の比較的短い波長の光(DUV、UV、VIS)は、EUV光の反射光202とは異なる方向に回折する。
【0136】
図17は、本実施形態による波状の溝133Cを形成するためのマスク420Dを示す平面図である。第4実施形態に従って、波状の溝133Cを形成する場合、図17に示すマスク420Dを用いる。マスク420Dは、波状の溝133Cに対応する波状のパターン421Dを有する。
【0137】
図18は、本実施形態による波状の溝133Cを形成するための他のマスク420Eを示す平面図である。第6実施形態に従って、波状の溝133Cを形成する場合、図18に示すように、EUV集光ミラー130Cの半径に相当する長さのマスク420Eを用いる。マスク420Eには、波状の溝133Cに対応する波状の開口パターン421Dをそれぞれ設けておく。ところで、第7実施形態及び第8実施形態に示す形状の溝が図8(a)に示すような同心円状に配置されているEUV集光ミラー130を使用する場合、図6に示すようなダンパ105とSPF用アパーチャ150Aとを用いて、EUV光以外の光を遮光するのが望ましい。
【0138】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、所望のSPFとしての効果が得られるのであれば、基板となるミラーの形状は平面であっても良いし、溝のピッチPが一定の大きさである必要もない。さらに、本発明の極端紫外光用集光ミラーは、LPP式EUV光源に限らず、例えば、DPP光源用の集光ミラーとして使用することもできる。
【0139】
あるいは、本発明の極端紫外光用ミラーを、SPFの機能を併せ持った反射ミラーとして、露光装置内に組み込むこともできる。この場合、本発明の極端紫外光反射ミラーは、平面鏡、凹面鏡、放物面鏡、回転楕円体等のように構成することができる。本発明の極端紫外光用ミラーは、例えば、露光装置内の光学系の一部として組み込まれ、純度の高い極端紫外光を所定方向に送り出すために用いられる。なお、本発明は、極端紫外光源や露光装置(EUVL)の用途に限定されず、極端紫外光を反射及び/または集光させる種々の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0140】
1,1A:EUV光源装置、α:入射角度、θB:ブレーズド角、100:真空チャンバ、101:第1チャンバ、102:第2チャンバ、105:ダンパ、110:駆動用レーザ光源、111:集光レンズ、112:入射窓、120:ターゲット供給器、130,130A,130B,130C:EUV集光ミラー、131:ミラー表面、132:入射穴、133:ブレーズド溝、134:基礎部、135:基板部、137:ミラー部材、140,141:磁場発生用コイル、150,150A:SPF用アパーチャ、151:開口部、160,161:隔壁用アパーチャ、170,171:真空排気ポンプ、180:ゲートバルブ、200:ドロップレット、201:ターゲットプラズマ、410:イオンミリング装置、411:支持装置、412:回動軸、420,420A,420B,420C,420D:マスク、421,421B,421D:パターン、430:イオンビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外光を反射させるミラーであって、
基板部と、
前記基板部の前記一面側に設けられる基礎部であって、前記基板部の前記一面側に設けられる第1多層膜から形成される基礎部と、
前記基礎部の一面側に一体的に設けられる反射部であって、前記基礎部の前記一面側に設けられる第2多層膜に所定形状の溝を形成することにより生成される反射部と、
を備える極端紫外光用ミラー。
【請求項2】
前記反射部は焦点を有するように形成されており、前記反射部により反射される極端紫外光は、前記焦点に集まるようになっている請求項1に記載の極端紫外光用ミラー。
【請求項3】
前記焦点の近傍には、前記極端紫外光を通過させるための開口部を有する遮光部材が設けられる請求項1または請求項2に記載の極端紫外光用ミラー。
【請求項4】
前記第1多層膜及び前記第2多層膜は一体的に形成されており、前記第1多層膜及び前記第2多層膜をそれぞれ構成する複数のペア層の厚み寸法は、入射する極端紫外光の角度に応じて設定される請求項1または請求項2に記載の極端紫外光用ミラー。
【請求項5】
前記所定形状の溝は、ブレーズド状の溝として形成される請求項1に記載の極端紫外光用ミラー。
【請求項6】
前記所定形状の溝は、三角波状の溝として形成される請求項1に記載の極端紫外光用ミラー。
【請求項7】
前記所定形状の溝は、波状の溝として形成される請求項1に記載の極端紫外光用ミラー。
【請求項8】
前記所定形状の溝は、同心円状または平行線状に設けられる請求項1に記載の極端紫外光用ミラー。
【請求項9】
前記第1多層膜及び前記第2多層膜を構成するペア層の合計数は、100以上1000以下の範囲である請求項1に記載の極端紫外光用ミラー。
【請求項10】
極端紫外光用ミラーを製造するための方法であって、
所定層数の多層膜が一面側に形成された基板部を回転させながら、所定のマスクを介して加工用ビームを前記多層膜に照射することにより、前記多層膜の一部を除去して所定形状の溝を形成する、極端紫外光用ミラーの製造方法。
【請求項11】
前記加工用ビームを所定の回動軸を中心として回動させながら前記多層膜に向けて照射させる請求項10に記載の極端紫外光用ミラーの製造方法。
【請求項12】
前記所定の回動軸は、前記プラズマの発生点に対応して設定される請求項11に記載の極端紫外光用ミラーの製造方法。
【請求項13】
前記反射部は焦点を有しており、
前記所定の回動軸は、前記焦点の位置に対応して設定される請求項11に記載の極端紫外光用ミラーの製造方法。
【請求項14】
レーザ光をターゲット物質に照射してプラズマ化させることにより、極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、
第1排気ポンプが設けられている第1チャンバと、
前記第1チャンバに接続され、第2排気ポンプが設けられている第2チャンバと、
前記第1チャンバ内に前記ターゲット物質を供給するターゲット物質供給手段と、
前記ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化させて極端紫外光を放射させるためのレーザ光源と、
前記プラズマから放射される前記極端紫外光を集光する極端紫外光用集光ミラーであって、前記プラズマから入射する前記極端紫外光を前記第2チャンバ内に設けられる焦点に向けて反射させる極端紫外光用ミラーと、
前記焦点の近傍に設けられる遮光手段であって、前記極端紫外光を通過させるための開口部を有し、前記開口部以外の部分では前記極端紫外光以外の波長の電磁波を減衰させる遮光手段と、
前記焦点に集まる前記極端紫外光を出力する出口部を連通または遮断するための遮断弁とを備え、さらに、
前記極端紫外光用ミラーは、一面が少なくとも一つ以上の曲率を有して形成される基板部と、前記基板部の前記一面側に設けられる基礎部であって、前記基板部の前記一面側に設けられる第1多層膜から形成される基礎部と、前記基礎部の一面側に一体的に設けられる反射部であって、前記基礎部の前記一面側に設けられる第2多層膜に所定形状の溝を形成することにより生成される反射部と、を備えて構成されることを特徴とする極端紫外光源装置。
【請求項15】
前記所定形状の溝は、ブレーズド状の溝、または、三角波状の溝として形成される請求項14に記載の極端紫外光源装置。
【請求項16】
前記反射部によって反射される前記レーザ光が集光する位置に、この反射されたレーザ光を吸収するための吸収手段を設けた請求項14に記載の極端紫外光源装置。
【請求項17】
複数の磁場発生手段を備え、これら磁場発生手段から生じる磁場によって、前記プラズマから放出される荷電粒子を捕捉させる請求項14または請求項15に記載の極端紫外光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−182492(P2012−182492A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132160(P2012−132160)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2008−212787(P2008−212787)の分割
【原出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】