説明

極細繊維不織布の製造方法

【課題】 極細繊維を含有した不織布の製造方法に関し、フィルタやワイピング材などに用いられ、特に微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、均一な繊維構造を有するとともに保形性に優れた極細繊維不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】 アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することによってアルカリ不溶性樹脂成分からなる極細繊維束を形成し、次いで水流の作用によって前記極細繊維束から極細繊維を発生させ且つ分散させるとともに、前記極細繊維を絡合することを特徴とする極細繊維不織布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極細繊維を含有した不織布の製造方法に関し、特にはフィルタやワイピング材などに用いられ、特に微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、均一性に優れた極細繊維不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から極細繊維の特性を利用した不織布が提案されており、例えば微細な塵埃を除去するためのフィルタ用の不織布、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピング材用の不織布、電池用セパレータ、あるいは化粧前又は化粧後に肌の表面に浮き出した皮脂分を吸い取り、化粧ののりを良くすることや、化粧直し、化粧落し、洗顔等に使用できる皮膚洗浄用シートがある。
【0003】
これらの用途の中で、特にフィルタ用の不織布としては、例えばメルトブロー法による不織布がある。しかし、メルトブロー法によって形成される極細繊維は延伸されていないため強度が弱く、そのままでは実用に耐えないという問題があった。また、強度が弱いため風圧などの圧縮力が加わると簡単に嵩高性が失われてしまい、粉じん保持容量が低下するという問題があった。また、極細繊維の太さが均一になり難く、濾過性能が安定しないという問題があった。
【0004】
このような、メルトブロー法による不織布を改良した技術として、特許文献1のフィルター用濾材が提案されている。この特許文献1によれば、ポリオレフィンまたはポリエステルからなる繊維径5μm以下の極細繊維90〜30重量%、並びにポリオレフィンまたはポリエステルからなる繊維径12〜30μmのバインダー繊維10〜70重量%からなり、嵩密度0.05〜0.3g/cmであるフィルター用濾材が提案されている。また、このフィルター用濾材の製造方法として、海島型断面複合繊維の海成分として熱可塑性ポリビニルアルコールを用いた複合繊維と熱バインダー繊維からなり、該熱バインダー繊維を熱接着させることにより形態が保たれている乾式不織布から該熱可塑性ポリビニルアルコールを抽出除去することを特徴とした製造方法が示されている。
【0005】
また、フィルターとして腰のあるものとするため、ケミカルバインダータイプの乾式不織布やスパンボンド不織布等の不織布と組み合わせてフィルターとすることが好ましいことが示されており、具体的には、実施例9に、海島型原綿とバインダー繊維とからなるカードウエッブを、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布とメルトブローン不織布とメルトブローン不織布とスパンボンド不織布(目付15g/m、旭化成株式会社製)からなる積層不織布に重ねあわせ、エンボス加工後に、海島型原綿のポリビニルアルコールを95℃の熱水で抽出処理し、濾過材を得たことが示されている。しかし、この複合された不織布はエンボス加工が施されているため、接着部分が圧密化しており、この部分で流体が通過しないため、フィルタとして用いると圧力損失が大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献1の実施例10には、海島型原綿とバインダー繊維とを70:30の混率で混綿し、メルトブローン不織布2枚からなる積層品の上にエアレイド法で積層した後に、150℃の熱風で熱接着し、95℃で熱水抽出して、極細繊維とバインダー繊維とからなる濾過材を得たことが示されている。しかし、この複合された不織布は、メルトブローン不織布の上に単にバインダー繊維を含有するエアレイド不織布が重ねあわされているだけであるため、バインダー繊維による両不織布間の接着力は小さなものであり、二層剥離し易いという問題があった。
【0007】
そこで、特に微細な塵埃を除去するためのフィルタとして、圧力損失が小さく、粉じん保持容量が大きく、均一な繊維構造を有するとともに保形性に優れた極細繊維不織布が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−319347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決して、極細繊維を含有した不織布の製造方法に関し、フィルタやワイピング材などに用いられ、特に微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、均一な繊維構造を有するとともに保形性に優れた極細繊維不織布の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することによってアルカリ不溶性樹脂成分からなる極細繊維束を形成し、次いで水流の作用によって前記極細繊維束から極細繊維を発生させ且つ分散させるとともに、前記極細繊維を絡合することを特徴とする極細繊維不織布の製造方法である。この発明により、微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、均一な繊維構造を有するとともに保形性に優れた極細繊維不織布の製造方法を提供することが可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記繊維ウエブを構成する繊維の繊維長が19〜105mmであることを特徴とする請求項1に記載の極細繊維不織布の製造方法である。この発明により、カード機やエアレイ装置などを使用した乾式法不織布の製造が可能となり、湿式法不織布と比較して、熱接着性繊維の配合比率が少なくても、保形性に優れた極細繊維不織布を製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
極細繊維を含有した不織布の製造方法に関し、フィルタやワイピング材などに用いられ、特に微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、均一な繊維構造を有するとともに保形性に優れた極細繊維不織布の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の例
【図2】(a)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(b)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(c)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(d)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る極細繊維不織布の製造方法の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の極細繊維不織布の製造方法は「アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成する工程」(以下、ウエブ形成工程と称することがある。)を有している。
【0016】
前記繊維ウエブは、その構成繊維が実質的にアルカリ不溶性繊維のみからなっている。アルカリ不溶性繊維としては、例えばアルカリ不溶性の樹脂成分から形成されるナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ビニロン繊維などを挙げることができる。また、アルカリ不溶性の樹脂成分を2成分以上複合して形成される、複合型の繊維を挙げることができる。また、芯鞘型の複合繊維で、鞘部にアルカリ不溶性の樹脂成分を有する複合繊維を挙げることができる。
【0017】
ここで、「実質的に」とは、後述するように、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して極細繊維を形成する際に、アルカリ可溶性樹脂成分が好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満残留した状態を含むことを意味する。
【0018】
本発明では、前記繊維ウエブはアルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有している。ここで、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維の形態としては、例えば、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型などを挙げることができるが、これらの中では特に極細の繊維を発生することが可能な海島型が好ましい。
【0019】
海島型の複合繊維としては、例えば図1に断面を例示するように海を形成する樹脂成分1と島を形成する樹脂成分2とからなる複合繊維があり、例えば紡糸口金部で海成分中に口金規制して島成分を押出して複合する方法などの複合紡糸法で得られる海島型複合繊維を適用可能である。また、一般的に混合紡糸法といわれる、島成分を構成する樹脂と海成分を構成する樹脂とを混合した後に紡糸する方法によって得られた海島型複合繊維も可能である。複合紡糸法による複合繊維の場合、海成分を溶解除去することによって同一の繊維径の極細繊維を得ることが可能であるという利点がある。一方、混合紡糸法による複合繊維の場合、同一の繊維径の極細繊維を得ることが困難であるが、より極細の繊維を発生することが可能であるという利点がある。以上説明した海島型の複合繊維の島成分をアルカリ不溶性樹脂成分とし、海成分をアルカリ可溶性樹脂成分とし、この海成分であるアルカリ可溶性樹脂成分を除去することで、島成分から極細繊維を形成することができる。
【0020】
また、オレンジ型、多重バイメタル型の複合繊維としては、例えば一成分を他成分間に放射状に配した断面形状をもつ菊花型繊維、異なる成分を交互に層状に積層した断面形状をもつバイメタル型繊維があり、具体的には、例えば図2の(a)、(b)、(c)、(d)に断面を例示するように樹脂成分1と樹脂成分2とからなる複合繊維を挙げることができる。なお、図2の(a)では、樹脂成分1をアルカリ不溶性樹脂成分とし樹脂成分2をアルカリ可溶性樹脂成分とすることができる。このような断面形状の分割性複合繊維の樹脂成分1または樹脂成分2を、アルカリ液を用いて溶解除去することによって、断面形状が扁平形状の極細繊維を形成することができる。また、アルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維であるので、単に水流により分割して発生した極細繊維と異なりほぼ完全に分割した極細繊維であり、極細繊維としての効果を十分に発揮できるという利点がある。
【0021】
また、前記複合繊維から発生する極細繊維の繊維径は、0.1〜7μmであることが好ましく、0.2〜3μmがより好ましく、0.3〜1μmが更に好ましい。7μmを超えると微細な粉じんを除去する効果が低下する場合がある。また、0.1μm未満では、極細繊維の強度が低下して、その結果不織布の保形性が低下する場合がある。
【0022】
なお、前記極細繊維の繊維径は走査型電子顕微鏡の平面、又は断面の映像で確認できる直径で表すことができる。直径にバラツキがある場合は前記映像のうち例えば任意の100個の数平均値で表すことができる。繊維の断面形状が円形でない場合は、繊維断面と同じ面積を有する円の直径で表すことができる。なお、使用される原料の繊度(デシテックス)が分かっている場合は、次式で得られる繊維径で表すことができる。
【0023】
D=(4d/π・10・ρ)0.5・10
(ここで、D:繊維径(μm),ρ:繊維を構成する高分子重合体の密度(g/cm),d:繊維の繊度(デシテックス),π:円周率)
【0024】
本発明では、前記複合繊維の前記繊維ウエブ中に占める割合は60〜99質量%であることが好ましく、65〜99質量%であることがより好ましく、70〜98質量%であることが更に好ましい。60質量%未満であると、フィルタに用いた場合、微細な粉じんを除去する効果が充分に発揮されない場合があり、99質量%を超えると接着性繊維の割合が低下して、繊維間の接着が不十分となり極細繊維不織布の組織が崩れやすくなる場合がある。
【0025】
本発明では、前記繊維ウエブはさらに熱接着性繊維を含んでいる。当該熱接着性繊維としては、繊維ウエブの構成繊維の融点の中で最も低い融点を有する単一成分からなる熱接着性繊維が適用可能であり、また構成繊維の融点の中で最も低い融点を有する低融点成分と、この低融点成分よりも高い融点(好ましくは10℃以上高い融点、より好ましくは20℃以上高い融点)を有する高融点成分とからなる、2種類以上の樹脂成分からなるサイドバイサイド型、芯鞘型などの複合型の熱接着性繊維が可能である。なお、前記熱接着性繊維の接着温度は、複合繊維から発生した極細繊維を含有する構成繊維を接着により結合させる際に、極細繊維が変形や熱収縮しないように、極細繊維の融点よりも10℃以上低いことが好ましく、より好ましくは20℃以上低いことが好ましい。
【0026】
前述の単一成分からなる熱接着性繊維としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの樹脂を主体とする繊維を例示でき、複合型の熱接着性繊維の樹脂成分として、6ナイロン/ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体、6ナイロン/66ナイロン、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレンなどの組み合わせが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
また、前記熱接着性繊維の構成繊維中に占める割合が1〜40質量%であることが好ましく、1〜35質量%であることがより好ましく、2〜30質量%であることが更に好ましい。1質量%未満であると、構成繊維を充分に結合できず保形性に劣る極細繊維不織布になる場合があり、40質量%を超えると極細繊維不織布の微細な粉じんを除去する効果が低下する場合がある。
【0028】
また、本発明では、前記繊維ウエブは前記複合繊維と前記熱接着性繊維以外にも、他の機能性を付加する目的で、本発明の特性を大きく低下させない範囲で、他のアルカリ不溶性繊維を含有することも可能である。
【0029】
また、前記繊維ウエブの構成繊維の繊維長さは、不織布の各製造方法での繊維ウエブの形成に適した長さを適用可能であり、例えば乾式法やエアレイ法であればカード機に供給するステープル繊維として好適な19〜105mmであることが好ましく、またこのようなステープル繊維であれば捲縮がかかっているので絡合し易いという利点がある。また、スパンボンド法であれば連続した長繊維が適用可能である。これらの製法中でも、乾式法やエアレイ法であれば、スパンボンド法と比較して海島型複合繊維や分割性複合繊維と熱接着性繊維とを均一に混合可能である点で優れる。また湿式法と比較して熱接着性繊維の配合比率が少なくても、極細繊維不織布の強度が優れるため、保形性に優れた極細繊維不織布を製造することができる。したがって、これらの点から好ましい繊維長は19〜105mmであり、また繊維ウエブの形成の容易さの点から、より好ましい繊維長は31〜76mmである。
【0030】
また、前記繊維ウエブの面密度は、55〜250g/mであることが好ましく、70〜200g/mがより好ましく、90〜150g/mが更に好ましい。55g/m未満であると、後述する水流による絡合が不充分となり保形性に劣る場合があり、250g/mを超えると前記複合繊維からアルカリ可溶性樹脂成分を十分に溶出することができなくなる場合がある。また、極細繊維不織布の剛性が高くなり過ぎたり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0031】
本発明の極細繊維不織布の製造方法は前述のウエブ形成に次いで、「水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合する工程」(以下、水流絡合工程と称することがある。)を有している。
【0032】
この水流による絡合は、公知の方法で行うことが可能であり、例えば金属性ネットやプラスチックネットなどの多孔性支持体上に、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを載置して、その上方から繊維ウエブに向けて、高圧のノズルから水流を噴射する方法を適用することができる。
【0033】
前記水流の発生に用いる好ましいノズルとしては、例えばノズル孔が一列又は複数列に配置されたノズルがあり、ノズル孔の列は生産方向と交差する方向に配置される。ノズル孔の孔径は直径0.05〜0.5mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましく、0.1〜0.18mmがさらに好ましい。また隣り合うノズル孔の間隔は0.2〜4mmが好ましく、0.3〜3mmが好ましく、0.4〜2mmがさらに好ましい。ノズルから噴射される水流の形状は柱状が好ましいが、ノズル孔から離れるほど水流の太さが広がるような円錐形状も可能である。またノズル内の圧力(以下、ノズル圧と称することがある。)は好ましくは0.1〜15MPaであり、より好ましくは3〜13MPaであり、更に好ましくは4〜11MPaである。また前記ノズルを複数配置しておくことも可能であるが、エネルギー消費効率から考慮すると全て合わせて10台以内のノズル台数で噴射処理することが好ましい。
【0034】
本発明の極細繊維不織布の製造方法は前述の水流絡合工程に次いで、「前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合する工程」(以下、ウエブ結合工程と称することがある。)を有している。
【0035】
前記熱接着性繊維を加熱する方法としては、絡合後の繊維ウエブを加熱したドライヤーに入れて加熱処理を行う方法や、絡合後の繊維ウエブを加熱した回転ベルト2枚の間に挿入して挟み込み、例えば所定の加圧下で加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合する方法がある。この加熱温度は、熱接着性繊維の低融点樹脂の融点以上であることが必要である。
【0036】
前記繊維ウエブのウエブ結合工程後の厚さは、0.6〜2.8mmが好ましく、0.8〜2.1mmがより好ましく、1.0〜1.7mmが更に好ましい。0.6mm未満であると、フィルタとして使用した場合、濾過性能が低下したり、粉じん保持容量が少なくなる場合がある。また、2.8mmを超えると、フィルタとして使用した場合、折り加工等の加工が難しくなる場合がある。また折り加工した後枠材を取付けてなるフィルタエレメントやフィルタユニットにおいて単位容積当りの収納濾過面積が小さくなり圧力損失が高くなる場合がある。なお、厚さは1cmあたり20gの荷重時の厚さで表すものとする。
【0037】
また、前記繊維ウエブのウエブ結合工程後の見掛け密度は、0.05〜0.19g/cmが好ましく、0.06〜0.14g/cmがより好ましく、0.08〜0.11g/cmが更に好ましい。0.05g/cm未満であると、繊維組織が崩れ易くなる場合があり、0.19g/cmを超えると剛性が高くなり過ぎたり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0038】
本発明の極細繊維不織布の製造方法は前述のウエブ結合工程に次いで、「アルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することによってアルカリ不溶性樹脂成分からなる極細繊維束を形成する工程」(以下、極細繊維束形成工程と称することがある。)を有している。
【0039】
前記アルカリ液としては、アルカリ水溶液を用いることが好ましく、アルカリ水溶液に、絡合し且つ結合した繊維ウエブを浸漬して、アルカリ可溶性樹脂成分を溶出して除去する。この処理に際しては、例えばアルカリ可溶性樹脂成分がポリエステル樹脂成分であれば、水酸化ナトリウムの6%水溶液を95℃に加温して、その水溶液中に30分間浸漬することにより、ほぼ100%の溶解除去が可能である。なお、本発明では、前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出した後、中和、水洗を行うことが好ましい。
【0040】
なお、アルカリ液によりアルカリ可溶性樹脂成分を溶出した後に、乾燥処理を行うことも可能であるが、その後の水流の作用を用いる工程を妨げない程度の温度で乾燥することが望ましい。すなわち、この乾燥処理の温度条件としては、前記熱接着性繊維の低融点樹脂成分の融点未満の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。
【0041】
本発明では、ウエブ結合工程に次いで、極細繊維束形成工程を適用することで、繊維組織の崩れを防止するとともに、アルカリ可溶樹脂成分の溶解処理後に柔軟性に優れるとともに保形性に富む極細繊維不織布を得ることができるという利点がある。すなわち、まず接着性繊維同士が繊維交点で確実に接着固定して、強固で保形性のある繊維構造の骨格を形成する。
【0042】
そして、複合繊維が海島型複合繊維の場合、その骨格の中で、複合繊維がアルカリ処理によって極細化するとともに、繊維間の接着交点は消失して、繊維の自由度が高まる。それと同時に、空隙が大きくなり、極細繊維の分散が促進される。また、その後の中和、水洗後の加熱乾燥で再度、繊維間の接着交点が生じて繊維組織が固定されて、繊維の離脱が防止される。このようにして、粉じん保持容量が増加したり、塵埃を捕捉する容量が大きくなるのである。
【0043】
また、複合繊維が分割性複合繊維の場合、その骨格の中で、複合繊維がアルカリ処理によって極細化して、分散が生じ、繊維の自由度が高まる。また、接着性繊維が複合繊維に対して融着して形成された融着樹脂からなる接着交点はアルカリ処理によって、アルカリ不溶性樹脂成分からなる極細繊維との小さな接着交点となり、すなわち融着樹脂の一部が剥離して小さな融着樹脂となることで、繊維の自由度が高まるとともに、空隙が大きくなり、粉じん保持容量が増加したり、塵埃を捕捉する容量が大きくなるのである。
【0044】
また、前記繊維ウエブの極細繊維束形成工程後の面密度は、25〜110g/mであることが好ましく、30〜85g/mがより好ましく、40〜70g/mが更に好ましい。25g/m未満であると、後述する水流の作用によって極細繊維を絡合する効果が不充分となり保形性に劣る場合があり、110g/mを超えると極細繊維不織布の剛性が高くなり過ぎたり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0045】
また、前記繊維ウエブの極細繊維束形成工程後の厚さは、0.2〜1.2mmが好ましく、0.3〜0.9mmがより好ましく、0.4〜0.7mmが更に好ましい。0.2mm未満であると、フィルタとして使用した場合、濾過性能が低下したり、粉じん保持容量が少なくなる場合がある。また、1.2mmを超えると、フィルタとして使用した場合、折り加工等の加工が難しくなる場合がある。また折り加工した後枠材を取付けてなるフィルタエレメントやフィルタユニットにおいて単位容積当りの収納濾過面積が小さくなり圧力損失が高くなる場合がある。
【0046】
また、前記繊維ウエブの極細繊維束形成工程後の見掛け密度は、0.05〜0.21g/cmが好ましく、0.06〜0.16g/cmがより好ましく、0.08〜0.12g/cmが更に好ましい。0.05g/cm未満であると、繊維組織が崩れ易くなる場合があり、0.21g/cmを超えると剛性が高くなり過ぎたり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0047】
また、前記繊維ウエブの極細繊維束形成工程後の通気量は、50〜280cm/cm・s[JIS L1096に規定されるフラジール法による]であることが好ましく、65〜210cm/cm・sであることがより好ましく、80〜170cm/cm・sであることが更に好ましい。
【0048】
本発明の極細繊維不織布の製造方法は前述の極細繊維束形成工程に次いで、「水流の作用によって前記極細繊維束から極細繊維を発生させ且つ分散させるとともに、前記極細繊維を絡合する工程」(以下、水流再処理工程と称することがある。)を有している。
【0049】
この水流再処理工程で用いる好ましいノズルとしては、前述の水流絡合工程で用いるノズルと同じノズルを用いることができる。また、ノズル圧も同様のノズル圧を適用することができる。具体的には、ノズル圧は好ましくは0.1〜15MPaであり、より好ましくは3〜13MPaであり、更に好ましくは4〜11MPaである。なお、ノズル圧が高くなると、水流の作用によって極細繊維束から極細繊維を発生させ且つ分散させる効果と、極細繊維を絡合する効果が共に高まるが、その反面極細繊維が破損して、破損した極細繊維が流出する傾向が高まる。そのため、極細繊維の材質と繊維径に応じた適切なノズル圧を選定することが望ましい。これに対して、水流絡合工程でのノズル圧は水流再処理工程の場合より高くすることは可能であるが、その後接着繊維による繊維ウエブの結合を行うことを考慮すると、必ずしも絡合の効果を高める必要はない。そのためエネルギー効率の点から、水流絡合工程でのノズル圧は水流再処理工程の場合より低く設定する方が望ましい場合がある。
【0050】
本発明では、前述の水流再処理工程によって、極細繊維束から極細繊維を発生させ且つ分散させる効果と、極細繊維を絡合する効果が生じる。その結果、極細繊維束形成工程において形成された極細繊維束ウエブを、極細繊維が分散し且つ絡合した緻密な構造とすることが可能となり、例えば水流再処理工程後に得られる極細繊維不織布の通気量を、極細繊維束ウエブの通気量の1/2〜1/20倍(好ましくは1/3〜1/15倍、より好ましくは1/3〜1/12倍)の通気量とすることができる。
【0051】
本発明では、水流再処理工程の後に、繊維ウエブを乾燥させる必要があり、この場合、この乾燥処理の温度条件としては、特に極細繊維不織布に柔軟性が要求される場合には、前記熱接着性繊維の低融点樹脂成分の融点未満の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。また、特に極細繊維不織布に保形性が要求される場合には、前記熱接着性繊維の低融点樹脂成分の融点以上の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。
【0052】
本発明では、以上説明した工程を経た後に、目的とする極細繊維不織布を製造することができる。本発明の製造方法によって得られる極細繊維不織布においては、繊維ウエブ中に占める極細繊維の割合は35〜97質量%であることが好ましく、40〜96質量%であることがより好ましく、50〜94質量%であることが更に好ましい。35質量%未満であると、フィルタに用いた場合、微細な粉じんを除去する効果が充分に発揮されない場合があり、97質量%を超えると接着性繊維の割合が低下して、繊維間の接着が不十分となり極細繊維不織布の組織が崩れやすくなる場合がある。
【0053】
また、繊維ウエブ中に占める熱接着性繊維の割合は3〜65質量%であることが好ましく、4〜60質量%であることがより好ましく、6〜50質量%であることが更に好ましい。3質量%未満であると、繊維ウエブを充分に結合できず保形性に劣る極細繊維不織布になる場合があり、65質量%を超えると極細繊維不織布の微細な粉じんを除去する効果が低下する場合がある。
【0054】
また、前記極細繊維不織布の面密度は、25〜110g/mであることが好ましく、30〜85g/mがより好ましく、40〜70g/mが更に好ましい。25g/m未満であると、保形性に劣る場合があり、110g/mを超えると剛性が高くなり過ぎたり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0055】
また、前記極細繊維不織布の厚さは、0.15〜1.0mmが好ましく、0.2〜0.7mmがより好ましく、0.25〜0.6mmが更に好ましい。0.15mm未満であると、フィルタとして使用した場合、濾過性能が低下したり、粉じん保持容量が少なくなる場合がある。また、1.0mmを超えると、フィルタとして使用した場合、折り加工等の加工が難しくなる場合がある。また折り加工した後枠材を取付けてなるフィルタエレメントやフィルタユニットにおいて単位容積当りの収納濾過面積が小さくなり圧力損失が高くなる場合がある。
【0056】
また、前記極細繊維不織布の見掛け密度は、0.06〜0.30g/cmが好ましく、0.08〜0.23g/cmがより好ましく、0.10〜0.18g/cmが更に好ましい。0.06g/cm未満であると、繊維組織が崩れ易くなる場合があり、0.30g/cmを超えると剛性が高くなり過ぎたり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0057】
また、前記極細繊維不織布の柔軟性の指標となる剛軟度の値は好ましくは140mm以下であることが好ましく、より好ましくは100mm以下であり、さらに好ましくは90mm以下である。なお剛軟度はJIS L1096に記載される、剛軟性8.19.1A法(45度カンチレバー法)に準じて測定した値を用い、タテ方向とヨコ方向の平均値を用いるものとする。
【0058】
また、前記極細繊維不織布の湿潤時の幅引きは10%以内であることが好ましく、より好ましくは8%以内であり、さらに好ましくは7%以内である。なお幅引きの試験は、250mm幅×500mm長さの試験片を水に浸漬し、端部をバーに固定して持ち上げた時の幅引きの値(mm)を測定し、その測定値の250mmに対する割合(%)で表すものとする。
【0059】
また、前記極細繊維不織布の通気量は、6〜55cm/cm・sであることが好ましく、7〜40cm/cm・sであることがより好ましく、9〜35cm/cm・sであることが更に好ましい。
【0060】
前記極細繊維不織布の用途としては、微細な塵埃を除去するためのフィルタ用の不織布、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピング材用の不織布、電池用セパレータ、あるいは化粧前又は化粧後に肌の表面に浮き出した皮脂分を吸い取り、化粧ののりを良くすることや、化粧直し、化粧落し、洗顔等に使用できる皮膚洗浄用シートなどを挙げることができる。なお、フィルタとしては、特に計数法で評価される中高性能のエアフィルタの用途を挙げることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例について説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例にすぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0062】
(繊維の非離脱性試験方法)
密閉容器に濃度6%のNaOH水溶液を3000cc入れ、その水溶液中に、円筒状の多孔体に巻回した1mの試験片を浸漬する。次いで水溶液を95℃に加温して、正逆回転させながら30分間アルカリ抽出処理を行う。次いで、NaOH水溶液を濾過して、NaOH水溶液中の離脱繊維の有無を目視により確認する。その結果、離脱繊維が認められない場合は○、認められる場合は×と評価する。
【0063】
(実施例1)
(1)ウエブ形成工程
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)97質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)3質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
(2)水流絡合工程
次いで、この繊維ウエブを金網コンベアー上に載置した後、金網コンベアーを移動させながら、この繊維ウエブの両面に対して、複数のノズル(ノズル孔の孔径が直径0.13mm、ノズル孔の間隔0.6mm、ノズル内圧力5〜8MPa)から柱状水流を噴射することによって、この繊維ウエブを絡合した。
(3)ウエブ結合工程
次いで、この絡合ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して絡合・結合繊維ウエブ(面密度124g/m、厚さ1.32mm、見掛け密度0.094g/cm)を得た。
(4)極細繊維束形成工程
次いで、この絡合・結合繊維ウエブをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥の各工程を経て、極細繊維束ウエブ(面密度48g/m、厚さ0.46mm、見掛け密度0.104g/cm、通気度96cm/cm・s)を得た。
(5)水流再処理工程
次いで、この極細繊維束ウエブを金網コンベアー上に載置した後、金網コンベアーを移動させながら、この繊維ウエブの両面に対して、複数のノズル(ノズル孔の孔径が直径0.13mm、ノズル孔の間隔0.6mm、ノズル内圧力8MPa)から柱状水流を噴射することによって、この極細繊維束ウエブの極細繊維束から極細繊維を発生させ且つ分散させるとともに、極細繊維を絡合した。次いで、145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は5%であった。また、水流再処理工程によって極細繊維の5質量%が亡失した。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が46g/mであり、厚さが0.30mmであり、見掛け密度が0.153g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が92質量%であり、熱接着性繊維の比率が8質量%であった。また、剛軟度は41mmであり、湿潤時の幅引きは5%であり、通気度は12.5cm/cm・sであり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
【0064】
(実施例2)
実施例1の(1)ウエブ形成工程において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、絡合・結合繊維ウエブ(面密度126g/m、厚さ1.38mm、見掛け密度0.091g/cm)、極細繊維束ウエブ(面密度52g/m、厚さ0.50mm、見掛け密度0.104g/cm、通気度108cm/cm・s)及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は3%であった。また、水流再処理工程によって極細繊維の5質量%が亡失した。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が50g/mであり、厚さが0.35mmであり、見掛け密度が0.143g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が79質量%であり、熱接着性繊維の比率が21質量%であった。また、剛軟度は53mmであり、湿潤時の幅引きは3%であり、通気度は14.5cm/cm・sであり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
【0065】
(実施例3)
実施例1の(1)ウエブ形成工程において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと、及び(5)水流再処理工程において、極細繊維束ウエブの両面に対して、複数のノズル(ノズル孔の孔径が直径0.13mm、ノズル孔の間隔0.6mm、ノズル内圧力5MPa)から柱状水流を噴射したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、絡合・結合繊維ウエブ(面密度126g/m、厚さ1.38mm、見掛け密度0.091g/cm)、極細繊維束ウエブ(面密度52g/m、厚さ0.50mm、見掛け密度0.104g/cm、通気度108cm/cm・s)及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は3%であった。また、水流再処理工程によって極細繊維の3質量%が亡失した。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が51g/mであり、厚さが0.37mmであり、見掛け密度が0.138g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が80質量%であり、熱接着性繊維の比率が20質量%であった。また、剛軟度は51mmであり、湿潤時の幅引きは3%であり、通気度は27.5cm/cm・sであり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
【0066】
(実施例4)
実施例1の(1)ウエブ形成工程において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと、及び(5)水流再処理工程において、極細繊維束ウエブの両面に対して、複数のノズル(ノズル孔の孔径が直径0.13mm、ノズル孔の間隔0.6mm、ノズル内圧力12MPa)から柱状水流を噴射したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、絡合・結合繊維ウエブ(面密度126g/m、厚さ1.38mm、見掛け密度0.091g/cm)、極細繊維束ウエブ(面密度52g/m、厚さ0.50mm、見掛け密度0.104g/cm、通気度108cm/cm・s)及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は3%であった。また、水流再処理工程によって極細繊維の13質量%が亡失した。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が47g/mであり、厚さが0.32mmであり、見掛け密度が0.147g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が78質量%であり、熱接着性繊維の比率が22質量%であった。また、剛軟度は60mmであり、湿潤時の幅引きは3%であり、通気度は11.2cm/cm・sであり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
【0067】
(実施例5)
実施例1の(1)ウエブ形成工程において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと、及び(5)水流再処理工程において、極細繊維束ウエブの両面に対して、複数のノズル(ノズル孔の孔径が直径0.13mm、ノズル孔の間隔0.6mm、ノズル内圧力15MPa)から柱状水流を噴射したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、絡合・結合繊維ウエブ(面密度126g/m、厚さ1.38mm、見掛け密度0.091g/cm)、極細繊維束ウエブ(面密度52g/m、厚さ0.50mm、見掛け密度0.104g/cm、通気度108cm/cm・s)及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は3%であった。また、水流再処理工程によって極細繊維の40質量%が亡失した。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が36g/mであり、厚さが0.24mmであり、見掛け密度が0.150g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が71質量%であり、熱接着性繊維の比率が29質量%であった。また、剛軟度は82mmであり、湿潤時の幅引きは3%であり、通気度は14.7cm/cm・sであり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
【0068】
(実施例6)
実施例1の(1)ウエブ形成工程において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維75質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維25質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、絡合・結合繊維ウエブ(面密度110g/m、厚さ1.22mm、見掛け密度0.090g/cm)、極細繊維束ウエブ(面密度57g/m、厚さ0.60mm、見掛け密度0.095g/cm、通気度142cm/cm・s)及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は1%であった。また、水流再処理工程によって極細繊維の5質量%が亡失した。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が56g/mであり、厚さが0.48mmであり、見掛け密度が0.114g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が50質量%であり、熱接着性繊維の比率が50質量%であった。また、剛軟度は72mmであり、湿潤時の幅引きは0%であり、通気度は18.7cm/cm・sであり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
【0069】
(比較例1)
(1)ウエブ形成工程
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)100質量%をカード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
(2)水流絡合工程
次いで、この繊維ウエブを金網コンベアー上に載置した後、金網コンベアーを移動させながら、この繊維ウエブの両面に対して、複数のノズル(ノズル孔の孔径が直径0.13mm、ノズル孔の間隔0.6mm、ノズル内圧力5〜8MPa)から柱状水流を噴射することによって、この繊維ウエブを絡合して、絡合ウエブ(面密度132g/m、厚さ1.39mm、見掛け密度0.095g/cm)を得た。
(4)極細繊維束形成工程
次いで、この絡合ウエブをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥の各工程を経て、極細繊維束ウエブを得た。その後、この極細繊維束ウエブに対して(5)水流再処理工程を行わず、この極細繊維束ウエブを極細繊維不織布とした。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が52g/mであり、厚さが0.40mmであり、見掛け密度が0.130g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が100質量%であった。また、剛軟度は26mmであり、湿潤時の幅引きは12%であり、通気度は75cm/cm・sであり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められ×であった。
【0070】
(比較例2)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長0.5mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)の海成分をアルカリ液にて溶出することで得られた繊維径が600nmの極細繊維15質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長5mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)85質量%を混合したスラリーを形成した後、湿式法により抄造して繊維ウエブを形成した。
次いで、この絡合した繊維ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合した。次いで、表面平滑なスチールロールと樹脂ロールからなる一対の加熱ロール(スチールロール温度80℃)の間に通過させて、極細繊維不織布を得た。
得られた極細繊維不織布は、面密度が55g/mであり、厚さが0.13mmであり、見掛け密度が0.423g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が15質量%であり、熱接着性繊維の比率が85質量%であった。また、剛軟度は128mmであり、湿潤時の幅引きは0%であり、通気度は5.1cm/cm・sであり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であったが、極細繊維の比率が少なく微細な塵埃を除去するためのフィルタとして不適であった。
なお、この比較例2では、繊維ウエブが湿式法によるため、繊維長が短いことが必要であった。そこで離脱繊維を防止するため、60質量%以上の接着繊維が必要となり、さらに加熱ロールにより見掛け密度を上昇させて接着性を向上させることが必要となり、その結果、極細繊維の比率が少なく微細な塵埃を除去するためのフィルタとして不適なものしか得られなかった。
【符号の説明】
【0071】
1 樹脂成分
2 他の樹脂成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することによってアルカリ不溶性樹脂成分からなる極細繊維束を形成し、次いで水流の作用によって前記極細繊維束から極細繊維を発生させ且つ分散させるとともに、前記極細繊維を絡合することを特徴とする極細繊維不織布の製造方法。
【請求項2】
前記繊維ウエブを構成する繊維の繊維長が19〜105mmであることを特徴とする請求項1に記載の極細繊維不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−6812(P2011−6812A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150479(P2009−150479)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】