説明

極細長繊維不織布の製造方法および極細長繊維不織布

【課題】ポリアミド重合体とポリエステル重合体の2成分からなる剥離分割型繊維を分割処理してなる極細長繊維不織布の製造方法において、分割処理を容易ならしめる方法およびそれによって得られる高品質な極細長繊維不織布を提供する。
【解決手段】ポリアミド系重合体1として吸水率が10重量%以上30重量%未満のものを用い、ポリエステル系重合体2として吸水率が1重量%以上5重量%未満のものを用いて長繊維不織布となし、該長繊維不織布を水存在下で分割処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的応力を作用させることにより、2成分交互貼り合わせ剥離分割型繊維を分割極細化させる極細長繊維不織布の製造方法およびそれによって得られた極細長繊維不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、極細繊維不織布は生活関連資材、衣料用など多岐の分野にわたって使用され、数多くの種類が提案なされている。
極細繊維不織布の製造方法としては、従来より孔径の小さな紡糸口金を用いて、直接吐出されたポリマーを高速紡糸する方法があるが、直接紡糸法では単糸繊度は0.3dtex程度が限界であり、これより細い極細繊維を製造することは技術的に困難である上、例え可能であっても生産性が著しく低下するためにコストが増大するという問題がある。
【0003】
又他の方法として、複数種の高分子重合体から構成される海島型複合繊維の海成分を溶出除去して島成分を極細化する方法、または2成分交互貼り合わせ剥離分割型複合繊維(以後単に剥離分割型複合繊維と略称する)に機械的外力を与え、極細繊維に分割して不織布を製造する方法等がある。
【0004】
なかでも2成分交互貼り合わせ剥離分割型複合繊維をスパンボンド法と組み合わせることにより得られる長繊維不織布を、一方の重合体成分を溶出しないで極細繊維化する方法は、エネルギーコストや環境面への配慮の点でも優れた方法である。
【0005】
例えば、特開平4−300351号公報、特開平10−53948号公報等には、剥離分割型複合繊維からなる長繊維不織布を、高圧水流機で処理して該剥離分割型複合繊維を極細繊維に剥離分割して極細長繊維不織布を得る方法が提案されている。しかし、これらの分割方法だけでは簡単に分割されるものではなく、分割率は低く、又繊維の分割斑が生じやすく、均一で風合いの良い不織布は得られにくいという問題点や、また、特殊な高圧柱状水流を必要とし、高目付のものでは水流が不織布厚み中心部まで到達せず分割困難であるという問題点がある。
【0006】
このため剥離分割型複合繊維の分割処理法に関して様々な試みが提案されている。剥離分割型複合繊維の分割極細化を容易にする対策として、例えば特開平5−331758号公報には、ポリエステルとポリアルキレングリコール類を含むポリエステルの2成分を交互貼り合わせた剥離分割型複合繊維からなる不織布に、水存在下で機械的応力を負荷して、剥離分割を行い極細繊維とする方法が提示されている。確かに2成分の界面にブリードアウトしたポリアルキレングリコール類が水分により膨潤し界面剥離しやすくなり、分割率は向上する。しかし、この方法では、剥離分割を十分に発現させるためには剥離分割型複合繊維の重合体成分に対して実際上数十%という大量のポリアルキレングリコール類を含有させる必要があるため、繊維物性が低下するという問題がある。
【0007】
又特開2003−3359号公報には、ポリアミド重合体を一成分、ポリエステル重合体をもう一成分とした剥離分割型複合繊維からなる長繊維不織布に関して、剥離分割型繊維の外周に占めるポリアミドの割合を規定し、且つ少なくとも一成分の重合体にポリアルキレングリコール類を含有することにより分割性が向上することが開示されている。
【0008】
又特開2004−8501号公報ではポリアミドとポリエステルの2成分からなる剥離分割型複合繊維の分割性向上としてポリアミド成分を吸水率10〜30%とすることにより分割率が向上することが示されている。
【0009】
これらの方法、ポリアミド、ポリエステルという異成分貼り合わせ型とすることや、成分に親水性ポリアルキレングリコールを含有させること、或いはポリアミド成分の吸水率を高めること等により確かに2成分の界面分割が促進されて剥離分割率はある程度は向上するものの、やはり分割率は十分でなく、分割後の繊度を更に細繊度とする場合は分割性が悪いとか又ロットにより分割率がばらつくという問題点があり、更なる分割性を向上させる方法が求められていた。
【0010】
【特許文献1】特開平4−300351号公報
【特許文献2】特開平10−53948号公報
【特許文献3】特開平5−331758号公報
【特許文献4】特開2003−3359号公報
【特許文献5】特開2004−8501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、ポリアミドとポリエステルの2成分からなる剥離分割型繊維を分割処理してなる極細長繊維不織布の製造方法において、分割処理を容易ならしめる方法およびそれによって得られる高品質な極細長繊維不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一成分がポリアミド系重合体、他の一成分がポリエステル系重合体である、剥離分割型複合繊維を長繊維不織布とし、分割処理を施して極細繊維不織布とする方法において、該ポリアミド系重合体として吸水率が重合体に対して10〜30重量%のものを用い、該ポリエステル系重合体として吸水率が重合体に対して1〜5重量%のものを用い、該長繊維不織布に水存在下で機械的応力により分割処理する方法により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、剥離分割型複合繊維を構成する2成分の重合体に両方とも吸水率を付与し、且つ吸水率に差をつけて水膨潤時の歪みが強く発生するようにし、かつ予め水が付与された状態で分割極細繊維化処理を施すので、機械的応力によりきわめて効率よく分割極細繊維化を行なうことができ、容易に細繊度で均一性の優れた極細長繊維不織布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明で用いられる剥離分割型複合繊維は、繊維形成性ポリエステル系重合体と繊維形成性ポリアミド系重合体とから構成され、機械的処理などで各成分に剥離分割できるものであれば特に限定されない。好ましく用いられるポリアミド系重合体としては、例えばナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12等があげられ、一方ポリエステル系重合体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びこれらを主成分とする共重合ポリエステル等があげられる。中でもナイロン−6/ポリエチレンテレフタレートの組合わせが工程性、コスト等の面から好ましい。
【0015】
剥離分割型複合繊維の複合形態としては、ポリエステル系重合体とポリアミド系重合体の接合界面の少なくとも一部分が繊維表面に到達している複合形態で、機械的処理等により各成分に剥離分割できるものであれば特に限定されないが、お互いに一方成分が他方成分によって所定数に分割されている形態であることが、分割性の点で望ましい。なかでも、図1に示されるような1成分が他成分間に放射状に配置されている断面形状が好ましい。
【0016】
このように放射状に配置された剥離分割複合繊維は、その分割数は2成分を溶融後、口金内で合流させる方法により任意に設定可能であり、分割前の複合繊維の単糸繊度を考慮して決定されるが、4〜48、特に8〜24分割であることが製糸性と分割の容易さ及びその効果の観点から特に好ましい。
【0017】
なお、上記剥離分割型複合繊維の一方成分の全体に対する複合割合は、該複合繊維の製糸性及び後述する長繊維不織布とした後の分割極細繊維化の面から30〜70重量%の範囲、特に40〜60重量%の範囲が適当である。この範囲を外れる場合には、両重合体の粘度バランスの調整が困難となり、紡糸時のセクション不良が発生しやすくなり、また、分割極細繊維化の際の分割効率が低下しやすくなる。
【0018】
かかる剥離型複合繊維全体の断面形状は、丸断面形状、多葉断面形状、多角形形状等任意であり、また中空部を有する形態であってもよいが、中空部を有するものでは2成分の界面長さを減少させることができ、剥離分割性が向上するので好ましい。
【0019】
剥離分割処理後の単糸繊度は、0.01〜0.30dtexがの範囲が適当であり、0.01dtex未満のものは製造が困難であり、一方0.30dtexを超えると、得られる不織布のカバーファクターが下がって斑が大きくなりやすく、吸水性能など極細繊維としての機能が低下する。
【0020】
本発明者らの研究によれば、特にポリアミドとポリエステルを2成分とする剥離分割型複合繊維の分割性向上に関して、2繊維成分の吸水率を高めて水膨潤性を付与することにより、水膨潤時の歪みが大で、貼り合わせ界面の剥離が向上することが見出された。
【0021】
本発明はこうした経緯においてなされたものであり、つまり本発明においては、剥離分割型複合繊維を構成するポリアミドとポリエステルは、ポリアミド系重合体の吸水率が重合体に対して10〜30重量%、ポリエステル系重合体として吸水率が重合体に対して1〜5重量%のものを用い剥離分割型複合繊維化後、水存在下で機械応力により分割を促進することが肝要である。
【0022】
ここでポリアミド系重合体は吸水率が大きい為、水存在下で分割処理する際、吸水により膨潤し、ポリエステル系重合体との界面での剥離が容易となり、分割処理における効率を向上させる作用がある。吸水率が10重量%未満であるとその作用は十分でなく、逆に30重量%以上となると、機械応力により分割する際、繊維の切断や強度の低下が大きく好ましくない。又紡糸時安定性が困難となる為、10〜30重量%、好ましくは10〜20%重量%である。
【0023】
かかるポリアミド系重合体の製造方法としては、親水性を有する化合物を該ポリアミド系重合体に混合する方法、共重合させる方法など種々用いられる。一例としては、ポリアルキレングリコールやポリアクリル酸、ポリエーテルエステルアミドをブレンドする、またはポリアルキレングリコールやアクリル酸、ナイアミン(3,6−ジオキサオクタミチレンジアミン)を共重合したものなどが挙げられる。
【0024】
一方、本発明者はポリアミドだけでなく、ポリエステルにも吸水率をある程度付与することが、本発明の剥離分割型複合繊維の分割性向上に大きく寄与することを見出した。ポリエステル系重合体は吸水率が元々低いものの、上記親水性を有する化合物をブレンド、もしくは共重合させることである程度吸水率を向上させることができ、本発明においては該ポリエステル系重合体の吸水率は1〜5重量%であることが必要である。1重量%未満では分割性向上効果が十分でなく、5重量%を超えると、分割性はよいものの乾燥時の劣化や収縮が大きく好ましくない。又紡糸性が不安定となり剥離分割型繊維を製造することが困難となる。
【0025】
これらの親水性化合物をポリアミド系重合体あるいはポリエステル系重合体へ混合する方法としては、夫々の重合体を製造時に添加する方法、複合繊維を溶融紡糸する際に該添加対象重合体と該添加化合物とを混合した後に溶融混練する方法、別々に溶融した該添加対象重合体と該添加化合物とを溶融紡糸する前に混練する方法等任意の方法を採用することができるが、該添加化合物の耐熱性の点、溶融紡糸の作業が容易であること等の点から、該添加対象重合体チップと添加化合物とを混合後溶融複合紡糸することが望ましい。
【0026】
さらに本発明の目的を損なわない範囲内であれば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、マイカ、金属微細粉、有機顔料、無機顔料等をポリアミド系重合体およびポリエステル系重合体のどちらへ添加してもよく、これらの添加剤には熱可塑性重合体への着色効果と共に該重合体の溶融粘度を高く又は低くする効果もあり、繊維横断面形状を調節するのに有効である。
【0027】
本発明においては、上記の剥離分割型複合繊維を、スパンボンド法、又は、紡糸・延伸して一旦巻き取った延伸糸を高速の牽引流体により開繊しながら多孔補集面上にウエブとして捕集する等の公知の方法により、不織布となす。なかでも、口金より紡出された糸条を高速牽引し、補集ネット上に噴射・補集するスパンボンド法が、生産性の点から特に好ましい。ここで、高速牽引の速度としては、2000〜8000m/分の範囲、特に3000〜6000m/分の範囲が適当であり、紡糸口金から吐出された複合長繊維をエジェクターやエアサッカーなどにより上記範囲の速度にて高速牽引すればよい。高速牽引により細化された複合長繊維は、開繊されながら補集ネット上に補集される。その際、コロナ放電による帯電や接触帯電等の従来公知の方法により繊維を帯電させることが、より開繊性に優れたウエブを得るためには好ましい。
【0028】
該複合長繊維をネット上に補集する際、他の短繊維を混綿したり、他の長繊維を積層、混合することも可能である。混綿又は積層、混合される他の繊維素材としては、特に限定はされないが、例えば、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ウール等の天然繊維、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等から任意に1あるいは2種以上選択して使用することができる。もちろん繊維形状等も限定されず、2種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせた芯鞘型複合繊維や剥離分割型複合繊維、その他断面形状を異形断面とした繊維等、任意のものを用いることができる。
【0029】
このようにして得られた長繊維ウエブは、必要に応じて複数枚を積層して、又は単独で、必要に応じて予備的に熱接着し、一旦巻き取った後に、又は、連続してニードルパンチ処理等の交絡処理を施して、長繊維不織布とする。
【0030】
本発明においては、上記交絡処理が施された長繊維不織布を処理して、該剥離分割型複合長繊維を分割極細化する必要があるが、その分割方法は、分割極細化が確実に遂行できる方法であれば任意であり、特に限定されず、また複数の方法を組合わせても構わない。例えば機械的な分割処理方法としては、ローラー間で加圧する方法、超音波処理を行なう方法、衝撃を与える方法、揉み処理をする方法を例示することができるが、これらの中で、シート状物打撃式揉み機による方法が最も効果的であり好ましい。なお、ここでいうシート状物打撃式揉み機とは、シートの厚み方向に剪断力を効率よく加えることができるものであり、剥離分割型複合繊維の分割極細繊維化を効率よく行なうことができる。これに対して、高圧柱状水流処理や衝撃のみによる方法では、不織布の目付が大きい場合には、剥離分割化がし難くなるので好ましくないが、他の分割極細繊維化の方法と組み合わせることができる。
【0031】
本発明においては、上記剥離分割型複合繊維の分割極細化に先立って、該長繊維不織布に予め水を付与することが肝要である。ここで、付与する水には該剥離分割型繊維の少なくとも一方成分を膨潤させる薬品が混合されていてもよく、また付与方法は、水中への浸漬処理する等、従来公知の方法を採用すればよい。但し、緻密化などを目的としている場合は、分割処理に引き続いて収縮熱処理を施すのが好ましいので、繊維の分割が遂行する前に熱がかかる分割処理方法は避けた方が好ましい。また、高圧水流による分割処理方法は、ニードルパンチング等により形成された交絡状態が崩されやすいので避けた方が好ましい。
【0032】
また、薄目付のものが必要な場合には、得られた高目付けのものをスライスすることにより効率的に生産することもできる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例中における部及び%は、特に断らない限り重量基準であり、また各測定値は、それぞれ以下の方法にしたがって求めたものであり、特に断らない限り、測定値は5点の平均値である。
【0034】
<分割率>
剥離分割型複合繊維の分割率は、不織布の断面を電子顕微鏡で200倍で撮影し、50本の繊維の断面を測定し、全体の面積と未分割(完全に分割していない、例えば、2個や3個程度に分割したものも含む)のフィラメントの断面積の差を全体の面積で除して求めた。該分割率が大きいほどよく分割していることを示す
【0035】
<分割後の繊度>
未分割の繊維の繊度を繊度測定器(SERCH CO.LTD、型式DC−21)にて試長2.5cm、荷重0.3gにて測定し、それを繊維断面を構成する分割数で除して求めた。
【0036】
<吸水率>
ポリアミド系重合体またはポリエステル系重合体チップを110℃、4時間乾燥した後の重量を測定し、次いで20℃、95%RHの雰囲気中に24時間放置した後の重量を測定して、両者の重量差から吸水率として求めて評価した。
【0037】
<ウェブの吸水性能>
ウェブを幅20mm、長さ500mmとし、一方の短辺側を長さ1cmだけ水に浸漬させた状態で3分間放置し、3分後の試料端からの吸上げ高さを測定した。ウェブの縦方向と横方向の平均値として算出した。
【0038】
<紡糸性>
不織布を連続的に3日間製造し、その際の口金からの吐出安定性を次の通り評価した。
○・・・問題なく良好
△・・・吐出孔周辺での異物付着が見られ、単糸切れが時々発生
×・・・吐出孔周辺での異物付着量が多く、ベンディングが発生し、単糸切れが頻発する。
【0039】
[実施例1]
ポリアミド系重合体として、ε−カプロラクタム100重量%に対して平均分子量4000のポリエチレングリコールの両末端をアミノ化したもの(日本油脂(株)社製)を15重量%添加したものを用いて常法により共重合ナイロン−6を得た。得られた重合体の吸水率は15重量%であった。またポリエステル重合体としてはポリエチレンテレフタレート(o−クロロフェノール中の固有粘度0.64)にポリエーテルエステルアミドを10重量%ブレンドした吸水率2重量%のものを用いて、それぞれ別々にエクストルーダーにて溶融後、口金内で合流させ、単孔当たりの吐出量を1.5g/分にして丸断面形状の吐出孔を有する口金より吐出し、空気圧力250kPaにてエアサッカーで高速牽引した後、図1に示す16分割の多層貼合せ型断面をもつ剥離分割型複合長繊維(両成分の重量率は48/52、単糸繊度は4.2デシテックス)からなるウェブとして、補集ネットコンベアーで幅1mで補集した。
【0040】
得られたウェブを連続で上下100℃のエンボスカレンダーにて軽く熱接着を行い得られたウェブをニードルパンチにて交絡処理を施した後、水に浸漬し、軽くマングルで絞った後シート状物打撃式揉み機にて剥離分割処理を行い目付300g/mの極細繊維不織布を得た。得られた極細繊維不織布の評価結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
実施例1においてポリアミド系重合体として、分子量10000のポリエチレングリコールの両末端をアミノ化したもの(日本油脂(株)社製)を10重量%共重合したナイロン−6を用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。これらの物性を表1示す。
【0042】
[比較例1〜4]
実施例1においてポリアミド系重合体へ添加するポリエチレングリコールの量およびポリエステル系重合体へ添加するポリエーテルエステルアミドの量を種々変更したものを用いて同様に極細繊維不織布を得た。これらの物性を表1示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、実施例1、2では、効率的に分割極細繊維化が進み、吸水性能に優れた極細不織布が得られている。これに対して、本発明の範囲外である比較例1、4では、どちらかの重合体の吸水率が低い為分割性に劣り、どちらかの重合体の吸水率が高すぎる比較例2、3では紡糸安定性が悪い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の方法で得られる極細繊維不織布は、吸水性に優れ、発塵が少ない為衣料用、医療用、およびワイピングクロスなどの工業用途や人工皮革などにも好適に使用することができ、その工業的価値はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の剥離分離型複合繊維の断面拡大図の一例を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 第一成分(ポリアミド重合体)
2 第二成分(ポリエステル重合体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体を一成分、ポリエステル系重合体を他の一成分とする剥離分割型複合繊維からなる長繊維不織布を分割極細化してなる極細長繊維不織布の製造方法において、該ポリアミド系重合体として吸水率が重合体全重量に対して10〜30重量%のものを用い、該ポリエステル系重合体として吸水率が重合体全重量に対して1〜5重量%のものを用いて長繊維不織布とし、該長繊維不織布に水存在下で分割処理することを特徴とする極細長繊維不織布の製造方法。
【請求項2】
ポリアミド系重合体を一成分、ポリエステル系重合体を他の一成分とする剥離分割型複合繊維を分割処理してなる極細長繊維不織布であって、該ポリアミド系重合体の吸水率が重合体に対して10〜30重量%、該ポリエステル系重合体の吸水率が重合体に対して1〜5重量%であり、単糸繊度が、0.01〜0.30dtexである極細長繊維不織布。

【図1】
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【公開番号】特開2008−202193(P2008−202193A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42707(P2007−42707)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(303000545)帝人コードレ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】