説明

楽器又は楽器部品の製造方法

【課題】楽器部品の製造方法の提供。
【解決手段】1.少なくとも一種類の金属粉末と粘着剤を混合し並びに混練して粉状物となし、粘着剤の占める体積百分率は7%〜61%とする。 2.前述の粒状物を成形してプレ成形物胚材となす。 3.前述のプレ成形物胚材中の粘着剤を除去する。 4.焼結し、胚材を収縮させてプレ成形物サイズとなす。 5.成形物の全て或いは一部を鍛造して最終的なサイズ及び密度となす。 以上の1乃至5の工程を包含する楽器部品の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種の楽器又は楽器部品の製造方法に属し、特に、一体成形された金属或いは合金の楽器又は楽器部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は管楽器中のキーガードの立体図であり、図2には二つの部品(キーガードには部品数が更に多いものがある)で構成された該キーガードの分解図である。このように、伝統的な管楽器の部品、例えば前述の図2中のキーガードは、二つ或いはそれ以上の部品がソルダリングされて図1のようなキーガード製品とされ、各部品は鍛造或いは脱蝋モールディングにより形成される。
【0003】
前述の周知の管楽器部品の製造方法には以下のような欠点がある。
1.ソルダリング部分の外観が良くなく、且つ手作業の二次加工による修飾が必要である。
2.ソルダリングの高温後のアニール問題により、ソルダリング部分の強度が低くなる。
3.ソルダリング時に、銀、カドミウム、亜鉛合金のソルダー材を使用する必要があり、そのうちの重金属が環境の厳重な汚染を形成しうる。
4.ソルダリング時に使用されるソルダー材と楽器自身の材料の密度が異なるため、製品化後の全体の楽器材料自身の均一度が低くなり、音波の共振と伝播に影響が生じ、ゆえに楽器の表現する音質及び共鳴性が低くなり、予期された効果を達成できなくなる。
5.各材料が表示する音質も異なり、前述の周知の楽器材料ソースは主に型材とされ、ゆえに選択性が低く、例えば材料の共鳴性、伝播性等の特性に最も適合する材料を探す要求に応えることができない。
6.前述の周知の楽器の製造方法は、作業時間が長く、生産速度が遅く、製造コストが高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は一種の楽器又は楽器部品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、一種の、前述の製造方法により得られる楽器又は楽器部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、楽器又は楽器部品の製造方法において、
少なくとも一種類の金属粉末と粘着剤を混合し並びに混練して粉状物となし、粘着剤の占める体積百分率は7%〜61%とする工程、
前述の粒状物を成形してプレ成形物胚材となす工程、
前述のプレ成形物胚材中の粘着剤を除去する工程、
焼結し、胚材を収縮させてプレ成形物サイズとなす工程、
以上の工程を包含することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法であるとしている。
請求項2の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、金属粉末は、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、モリブデン、白金、パラジウム、ロジウム、錫、鉛、アンチモン、タングステン、或いはその合金より選択することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項3の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、粘着剤は熱可塑性材料、石ろう、或いはその混合物とされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項4の発明は、請求項3記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、熱可塑性材料は、ポリプロピレン、ポリスチレン、樹脂のいずれかとされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項5の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、射出成形法或いは押出成形法により粒状物をプレ成形物胚材に成形することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項6の発明は、請求項5記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、粒状物を射出成形機中で摂氏220度以下まで加熱し、並びに約45〜360MPaの圧力下で型内に注入し成形することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項7の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、溶剤により粘着剤を溶解し、胚材中の粘着剤を除去することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項8の発明は、請求項7記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、溶剤はトリクロルエタンとされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項9の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、加熱設備中で、胚材に対して加熱を行い粘着剤を分解し、粘着剤を除去すると共に、焼結のプロセスも合併進行することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項10の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、金属粉末顆粒のサイズは50μ以下とされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項11の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、高、中、低音により金属粉末の顆粒サイズを選択し、低音では比較的粒径が大きいものを、中音では粒径が中間のものを、高音では粒径が最小のものを選択することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項12の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、焼結温度が摂氏650度〜2100度とされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項13の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、プレ成形物の全部或いは一部を鍛造して最終的なサイズと密度となすことを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項14の発明は、請求項13記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、鍛造工程後にプレ成形物を焼結し、低温処理するか、反復して焼結し低温処理することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項15の発明は、請求項13記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、鍛造工程中、鍛造を行う部分に予め1〜30%の鍛造用の収縮厚さを保留することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項16の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、楽器が管楽器を包含することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項17の発明は、請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、獲得したい楽器の音質或いは共鳴性により一種類或いは数種類の金属粉末を楽器又は楽器部品の金属或いは合金材料として選択することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法としている。
請求項18の発明は、請求項1乃至請求項17のいずれかの楽器又は楽器部品の製造方法により製造される、楽器又は楽器部品としている。
請求項19の発明は、請求項18の楽器又は楽器部品の製造方法により製造され、管楽器を包含する楽器又は楽器部品としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明は楽器又は楽器部品の製造方法を提供し、本明細書中では管楽器のキーガードを実施例としているが、これはその他の楽器への使用を制限するものではない。
【0007】
総合すると、本発明の提供する製造方法とそれにより得られる楽器、楽器部品は、周知の楽器及び部品の発生する欠点と不便を改善し、また後述の多くの機能と実用価値を有し、このため本発明は高度に自然法則を利用した発明であり、同じ技術領域中に同じ或いは類似の製品の公開使用はなく、ゆえに本発明は特許の要件を具備するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の主要な製造工程は以下を包含する。
少なくとも一種類の金属粉末と粘着剤を混合し並びに混練して粉状物となし、粘着剤の占める体積百分率は7%〜61%とする。
前述の粒状物を成形してプレ成形物胚材となす。
前述のプレ成形物胚材中の粘着剤を除去する。
焼結し、胚材を収縮させてプレ成形物サイズとなす。
成形物の全て或いは一部を鍛造して最終的なサイズ及び密度となす。
以上の工程を包含する楽器部品の製造方法である。
【0009】
本発明の方法中で使用される金属粉末顆粒は、一般には粒度が50μ以下のものを選択するのがよい。且つこの方法中では、高、中、低音により金属粉末の顆粒粒度を選択し、そのうち、低音は顆粒粒度が比較的大きいものを、中音は顆粒粒度が中間であるものを、高音は顆粒粒度が比較的小さいものを選択する。
【0010】
本発明の製造方法中、獲得したい楽器の音質或いは共鳴性により一種類或いは数種類の金属粉末を選択して楽器又は楽器部品の金属或いは金属合金材料となす。
【0011】
前述の金属粉末は、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、モリブデン、白金、パラジウム、ロジウム、錫、鉛、アンチモン、タングステン、或いはその合金より選択する。
【0012】
本発明の製造方法中、使用される粘着剤の主要な機能は金属粉末を被覆し、並びに成形中に固形となすことにある。
【0013】
本発明中に使用される粘着剤は、熱可塑性材料、石ろう、或いはその混合物とされる。そのうち、熱可塑性材料は、ポリプロピレン、ポリスチレン、樹脂等とされる。
【0014】
このほか、本発明は成形の工程中に、射出成形法或いは押出成形法の二種類を使用するのがよい。
【0015】
このほか、本発明は射出成形法の実施例中にあって、粒状物を射出成形機中で摂氏220度以下まで加熱し、並びに約45〜360MPaの圧力下で型内に注入し成形する。
【0016】
本発明のプレ成形物胚材成形後には、胚材中の粘着剤を除去する必要があり、その方法は好ましくは以下の二種類を包含する。
一.第1種の方法は、溶剤により粘着剤を溶解し、胚材中の粘着剤を除去する。
そのうち、最も典型的な溶剤はトリクロルエタンであり、熱可塑性材料に対して非常に良好な効果を有している。
【0017】
二.第2種の方法は加熱設備中で、胚材に対して加熱を行い粘着剤を分解し、粘着剤を除去することである。この加熱過程中、焼結のプロセスも合併進行できる。
【0018】
本発明の製造工程中、焼結の温度は異なる金属或いは合金により異なるが、一般には摂氏650度〜2100度とされる。
【0019】
このほか、本案の方法中、必要に応じて、プレ成形物を全部或いは一部鍛造して最終的なサイズと密度となす。前述の鍛造工程中、鍛造を行う部分に予め1〜30%の鍛造用の収縮厚さを保留する必要がある。
【0020】
前述の鍛造工程は全部鍛造或いは部分鍛造を選択可能である。そのうち、全部鍛造は密度が一致した楽器材料を得ることができ、一部鍛造は異なる密度の楽器材料を得ることができる。異なる密度の選択性を利用することで、異なる伝導性及び共鳴性の楽器材料を取得する。
【0021】
最後に、本発明は鍛造工程後に、必要によりプレ成形物に対して焼結、低温処理或いは反復した焼結及び低温処理を行い、材料を更に結実となす。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】周知の管楽器のキーガードの立体図である。
【図2】図1の分解図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器又は楽器部品の製造方法において、
少なくとも一種類の金属粉末と粘着剤を混合し並びに混練して粉状物となし、粘着剤の占める体積百分率は7%〜61%とする工程、
前述の粒状物を成形してプレ成形物胚材となす工程、
前述のプレ成形物胚材中の粘着剤を除去する工程、
焼結し、胚材を収縮させてプレ成形物サイズとなす工程、
以上の工程を包含することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法である。
【請求項2】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、金属粉末は、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、モリブデン、白金、パラジウム、ロジウム、錫、鉛、アンチモン、タングステン、或いはその合金より選択することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、粘着剤は熱可塑性材料、石ろう、或いはその混合物とされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、熱可塑性材料は、ポリプロピレン、ポリスチレン、樹脂のいずれかとされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、射出成形法或いは押出成形法により粒状物をプレ成形物胚材に成形することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、粒状物を射出成形機中で摂氏220度以下まで加熱し、並びに約45〜360MPaの圧力下で型内に注入し成形することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、溶剤により粘着剤を溶解し、胚材中の粘着剤を除去することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、溶剤はトリクロルエタンとされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、加熱設備中で、胚材に対して加熱を行い粘着剤を分解し、粘着剤を除去すると共に、焼結のプロセスも合併進行することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、金属粉末顆粒のサイズは50μ以下とされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、高、中、低音により金属粉末の顆粒サイズを選択し、低音では比較的粒径が大きいものを、中音では粒径が中間のものを、高音では粒径が最小のものを選択することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項12】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、焼結温度が摂氏650度〜2100度とされることを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項13】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、プレ成形物の全部或いは一部を鍛造して最終的なサイズと密度となすことを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、鍛造工程後にプレ成形物を焼結し、低温処理するか、反復して焼結し低温処理することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項15】
請求項13記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、鍛造工程中、鍛造を行う部分に予め1〜30%の鍛造用の収縮厚さを保留することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項16】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、楽器が管楽器を包含することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項17】
請求項1記載の楽器又は楽器部品の製造方法において、獲得したい楽器の音質或いは共鳴性により一種類或いは数種類の金属粉末を楽器又は楽器部品の金属或いは合金材料として選択することを特徴とする、楽器又は楽器部品の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれかの楽器又は楽器部品の製造方法により製造される、楽器又は楽器部品。
【請求項19】
請求項18の楽器又は楽器部品の製造方法により製造され、管楽器を包含する楽器又は楽器部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−52155(P2007−52155A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236299(P2005−236299)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(505310943)台灣真珠樂器股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】