説明

楽器演奏用椅子

【課題】 従来の鍵盤楽器演奏用椅子に代表される楽器演奏用椅子は、座面が四角形の平面で、四本脚の椅子である。一部ドラム演奏用椅子ではサドルタイプで三本脚の椅子もあるが、何れも着座面が広く、臀部と大腿部を載置し、楽器演奏者の座位での安定を目的とした椅子であって、頭、胴、四股の動きを連携して演奏する椅子として問題がある。
【解決手段】 楽器演奏用椅子の臀部載置部を座骨付近に限定し、股間に幅狭部を設け、着座部を左右に回動する機構を備え、椅子の脚を床近くの低い位置に設けたことで、演奏者が椅子に跨いで座って、頭、胴、四股を自在に動かして演奏することが出来る。又、座面後方に斜め上方へ伸びる案内面と、腰椎後方に備えた背凭れは、乗馬用鞍の後橋と同じ、千変万化して動く演奏者の臀部や、腰椎を座骨の上に戻して、素早くバランスを取る為のサポーターの役目を持つ構成であって、演奏者が素早い動きで、繊細に正確な演奏する事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は楽器演奏用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
楽器演奏用椅子は、演奏者が座骨の上で、頭、胴、四股を動かして演奏する椅子で、手脚を使って演奏するピアノやドラムを演奏する椅子は当然であるが、オーボエ等上体を使う演奏者も上体の自由な動きは、脚の自由な動きに連携して可能である。これらの用件に対し、従来のピアノやオルガンに代表される鍵盤楽器演奏用椅子図10に示す60は、座面が四角形で平面な臀部と大腿部を載置する着座面を有する椅子であって、四隅に座面の高さを調整する機構を備えた、4脚を有する弦楽器演奏用椅子で、2脚は着座面最前縁から下方に立っている。(例えば特許文献1参照)
又、背中の上方までもたれ掛かれる、高い背凭れを着座部の後方に設けた楽器演奏用椅子もある。
【0003】
両手両足を使って、演奏者の周囲に複数の打楽器を並べて演奏する従来のドラム演奏用椅子図11に示す70は、先細の座板(71)を有するサドルタイプの椅子であって、演奏者の大腿部を載置する、なだらかな傾斜からなる凹(72)が設けてあり、又、座ったとき安定感を高める座板後部に凸(73)がある。(例えは特許文献2参照)
【0004】
前記従来の鍵盤楽器演奏用椅子やドラム演奏用椅子の、大腿部を載置する座面や部位、又、背の高い背凭れ、座面最前縁に垂直に立つ2脚等は、四股の自在な動きを妨げる構成であって、楽器演奏用椅子として問題がある。
【特許文献1】特開2004−121463公報
【特許文献2】特開2002−328674公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の楽器演奏用椅子が有していた問題を解決しようとするもので、座位で楽器を演奏する人が、頭、胴、四股を自在に動かして、バランスを取り、時にはアンバランスを利用して、繊細で、正確な素早い動きが出来て、しかも安全に安心して演奏に専念出来る、楽器演奏用椅子を実現する事を目的とするものである。
【課題を解決する為の手段】
【0006】
そして、本発明は上記目的を達成するための手段として、主脚の上方に着座部を有する楽器演奏用椅子の着座面の形状を、演奏者の座骨が、着座面と接する点から後方に、左右相似の円形に拡大形状をなす臀部載置部を設け、該載置部から前記楽器演奏者の股間に位置する前方向に、先端円弧縁と湾曲に結ぶ幅狭部を設け、前記楽器演奏者の臀部載置部後方、数字の3に倣う緩やかな円弧を描く部位から、斜め上方に伸びる扇形状の案内面を設けた構成とした。
【0007】
そして、本発明の目的を達成する第2の手段として、楽器演奏者の腰椎付近の後方に、着座部と共に回動する腰椎付近をサポートする背凭れを備えた。
【0008】
そして、本発明の目的を達成する第3の手段として、主脚の根本近くに、該主脚の根本近くを基点として4方向に伸びて、脚の先端が着床する4本の分脚を設け、該分脚の1本は着座面の先端の円弧縁下方位置内に着床部を設け、該分脚の反対、主脚の後方、第2の手段に記載する背凭れの外側下方位置に着床する分脚を設けた。又、他の2本の分脚を主脚の左右対称60度斜め後方、着座部の外側下方位置に着床部を設けた。
【0009】
そして、本発明の目的達成する第4の手段として、着座部と背凭れを共に水平方向に回動する機構を備え、回動範囲を着座部前方に設けた分脚を基点に、左右60度の範囲内に規制する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、本発明の楽器演奏用椅子は、演奏者の座骨付近と後方に臀部載置部を限定して設けた事により、演奏者が座骨の上で自在に、頭、胴、四股を動かして協調させる事が出来る。幅狭部を座面前方に設けた事により、演奏者は椅子に跨いで座る事が出来るので、安心して安全に演奏する事が出来る。又、臀部載置部後方斜め上に伸びる扇状の傾斜面は、千変万化して動く演奏者の臀部を椅子の定位置に戻す機能を持たせる部位であって、演奏者が大きく速い動きの中でも、安定感を得て安心して演奏出来る。
【0011】
楽器演奏者の腰椎付近後方に備えた本発明の背凭れは、素早い動きで楽器を演奏する人の腰椎を、速やかに座骨の上に戻して、バランスを取るためのサポートをする背凭れであって、演奏者が繊細で正確な演奏をすることが出来る。
【0012】
本発明の楽器演奏用椅子は着座面最前縁に脚を立てるのでなく、一本の脚を後方から床面近い位置に、しかも座面の先端円弧縁の内側下方に着床部を設けた事により、演奏者が脚を左右前後広範囲に動かすことが出来る。又、別の三本の脚を重心の後方、着座面や背凭れの外側に着床部を設けたので、演奏者は座位での安定が得られ、安心して四股を動かして演奏する事が出来る。
【0013】
又、本発明の楽器演奏用椅子は、着座部と背凭れが共に水平方向に回動出来る機構を備え、回動範囲を規制する構成したことにより、演奏者は着座部を跨いだ姿勢で安心して、左右に移動範囲を広げて演奏する事が出来る。
【0014】
上述したように、本発明の楽器演奏用椅子は、座位で演奏する人が緊張を解き、座骨の上で自在に、頭、胴、四股を動かし協調させ、バランスを取り、時にはアンバランスを利用した動きで、安心して安全に楽器を演奏する事が出来る。
【発明を実施する為の最良の形態】

【実施例1】
【0015】
以下、発明の実施の形態について、図1及至図11により説明する。図1は本発明の実施の形態を示す、楽器演奏用椅子の側面図である。10は本発明の楽器演奏用椅子である。仮想線図100は、該椅子に座った楽器演奏者である。本発明の楽器演奏用椅子の主な構成について説明する。20は4本の分脚を持つ主脚、30は着座部、40は楽器演奏者100の腰椎後方に備えた背凭れ、50は着座部と背凭れの回転機構の本体である。
【0016】
図3は本発明の楽器演奏用椅子10の上面図である。31は着座面である。P1は演奏者100が着座部を跨いで座って、左右に動く為の着座部の回動中心である。P2は演奏者の座骨仮想接点で、P3は該演奏者の臀部後方の仮想線である。座骨仮想接点P2の近辺と臀部後方の仮想線P3の中に限定した範囲が、臀部載置部である。座面前方に設けた34は演奏者が跨いで座ることで、安心して演奏するための幅狭部であって、後述する演奏者が跨いだ姿勢で左右に回動するためのガイドの機能を合わせ持たせている。35は演奏者の臀部後方の仮想線P3に倣う緩やかな円弧を描く部位から、斜め上方に扇状に伸びる面で、幅狭部34同様に演奏者が安心して演奏に集中する目的の案内面である。案内面35は乗馬用鞍の後橋と同じ機能を有するので、演奏者の複雑な動きの中で素早く、座骨を正しい定位置に戻す事が出来る。実施例では幅狭部34から先端円弧縁33にかけて座面は水平であるが、股間の動きに支障の生じない範囲で、前方を高くする事も出来る。又、着座部の断面図5の38は着座部の側面で、39は座面31との交わる所で、角の不快感を無くす目的で丸みを付けてある。
【0017】
図1の40は本発明の楽器演奏用椅子で演奏する人の腰椎付近後方に設けた背凭れである。前述した幅狭部34、案内面35と同様に上体の大きな動きに対応し、腰椎を素早く座骨の上に戻して安定した姿勢を作り、次の演奏に移れるための機能する背凭れである。図6、40Aは背凭れ40の内蔵するクッション材であり、41は弾力性のある材料で構成した支えである。43はクランプである。42は支え45を内側に滑合する案内である。支え45を案内42により背凭れ40を前後に移動し、腰椎の後方適正な位置に調整し、クランプ43により固定する構造にした。25は回転軸を兼ねる椅子の脚で、20は主脚である。回転軸を兼ねる脚25は主脚20の内径に滑合している。座面を適正な高さに調整し、クランプ26で固定する構成であるが、高さ調整は公知のガススプリングの方式であっても良い。
【0018】
図7は本発明の実施形態を示す椅子10の脚の側面図である。図2、図7により脚の構成について説明する。21、22、23、24は主脚20の根本近くを基点に四方に伸びて、先端が着床する分脚である。分脚21は着床部を演奏者の動きを妨げないように、着座面の前方円弧縁の内側下方に設けた分脚である。分脚22は背凭れの後方に着床部を設けた分脚である。分脚22、24は主脚20の左右対称60度後方で、着座部の外側下方に着床部を設けた分脚である。本実施例は主脚の根本を基点として四方に伸びる分脚を設けて、椅子の安定性を増す構成にしたが、主脚の根本に円錐形の脚であっても良い。
【0019】
図8は本発明の実施形態を示す椅子10の、着座部30の回転機構の断面図である。図9はX−X矢視図であって、着座部の回動範囲を規制する範囲を示す。50は回動機構の本体である。本体50はボルト53により、着座部の底板30Aに固定してあり、回動軸25との間にベアリング54を介して回動する。図9矢視Aは前方に設けた分脚21の方向を示す。52は回動範囲を決める溝で矢視Aの反対、回動本体50の後方外径に沿って、左右60度の間に設けてある。51は回動範囲を決めるピンで、回動範囲を規制する溝52の中心に対応する、回動軸25の位置に固定してある。着座部30は、分脚21を基点に左右60度の範囲を回動部する構成である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の実施形態を示す楽器演奏用椅子の側面図
【図2】 本発明の実施形態を示す楽器演奏用椅子の上面図
【図3】 図1における着座部の上面図
【図4】 図3のにおけるA−A矢視断面図
【図5】 図4におけるB−B矢視断面図
【図6】 図2におけるC−C矢視背凭れの断面図、及び着座部の仮想線図
【図7】 本発明の実施形態を示す楽器演奏用椅子の脚及び回動部を示す側面図
【図8】 図7における回動機構断面図
【図9】 図8におけるX−X矢視図
【図10】 従来の鍵盤楽器演奏用椅子の斜視全体図
【図11】 従来のドラム演奏用椅子の斜視全体図
【符号の説明】
【0021】
10 楽器演奏用椅子
20 主脚
21、22、23、24 分脚
25 回転軸を兼ねる椅子の脚
26、43 クランプ
30 着座部
31 着座面
32 臀部載置部
33 先端円弧縁
34 幅狭部
35 案内面
36 前面
37 後面
38 側面
39 座面と側面の交差部
30A 着座部底板
40 背凭れ
41 支え
42 案内
40A ウレタンのクッション材
50 回動機構本体
51 ピン
52 溝
53 ボルト
54 ベアリング
71 座板
72 凹
73 凸
P1 着座部の回動中心
P2 座骨の仮想接点
P3 臀部後方の仮想線で臀部載置部後方
100 楽器演奏者
101 楽器演奏者の座骨
102 楽器演奏者の腰椎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主脚(20)の上方に着座部(30)を有する楽器演奏用椅子(10)であって、着座面(31)の形状を演奏者(100)の座骨(101)が、着座面(31)と接する点(P2)から後方に、左右相似の円形に拡大形状をなす臀部載置部(32)を設け、該載置部から前記楽器演奏者(100)の股間に位置する前方向に、先端円弧縁(33)と湾曲に結ぶ幅狭部(34)を設け、前記楽器演奏者(100)の臀部載置部後方、数字の3字状(P3)に倣う緩やかな円弧を描く部位から斜め上方に伸びる扇形状の案内面(35)に形成した事を特徴とする楽器演奏用椅子。
【請求項2】
楽器演奏者(100)の腰椎(102)付近の後方に、着座部(30)と共に回動する背凭れ(40)を備えた事を特徴とする、請求項1に記載する楽器演奏用椅子。
【請求項3】
主脚(20)の根本近くを基点として4方向に伸びて、脚の先端が着床する4本の分脚(21、22、23、24)を設け、該分脚の1本(21)は着座面(31)の先端の円弧縁(33)下方位置内に着床部を設け、該分脚(21)の反対、主脚(20)の後方、請求項2に記載する背凭れ(40)の外側下方位置に着床する分脚(22)を設けた。又、他の2本の分脚(23、24)を主脚(20)の左右対称60度斜め後方、着座部(30)の外側下方位置に着床部を設けた事を特徴とする、請求項1又は2に記載する楽器演奏用椅子。
【請求項4】
着座部(30)と背凭れ(40)を共に水平方向に回動する機構を備え、回動範囲を分脚(21)を基点に左右60度の範囲内に規制する構成(51、52)とした事を特徴とする、請求項1又は2又は3に記載する楽器演奏用椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−236874(P2007−236874A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95678(P2006−95678)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(598117492)
【Fターム(参考)】