説明

構成部品または器具を位置決めおよび移動するためのロボット化された装置およびそのような装置を含む治療装置

患者の頭部の領域またはその周りで、診断または外科治療のための構成部品または器具を、ガイドおよび制御しながら位置決めおよび移動するためのロボット化された装置が提供され、前記装置は、一連の運動連鎖を生成し、その自由端であり制御された端部に、上記の構成部品または器具を担持する、ロボットデバイスを含む。装置1は、前記ロボットデバイス5が、互いに連続して連結された3つの運動サブアセンブリ7、7’、7”から構成され、1つには、回転関節を有する機構の形態であり、3自由度の連続様式の球面運動配置に対応し、関節要素すべてが患者を収容するための容積の外部に置かれ、それらの回転軸が治療位置にある患者の頭部の仮定中心にほぼ対応する焦点と同一点で交わる、第1のサブアセンブリ7と、もう1つには、焦点を通る軸に沿って線形並進するための機構の形態である第2のサブアセンブリ7’と、最後に、回転関節を備えた第2の機構の形態であり、第2のサブアセンブリ7’の可動部分と一体に連結されており、3自由度の連続様式の球面運動配置とも対応する第3のサブアセンブリ7”とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用分野に導入することができる、高精度であり使用の安全性が非常に高いロボット装置およびデバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、より詳細には、構成部品または器具の位置決めおよび移動のためのロボット化された装置、そのようなロボット化された装置を含む経頭蓋磁気刺激デバイスおよび上記のデバイスを導入する経頭蓋磁気刺激プロセスである。
【0003】
患者の治療または医療用画像処理のための数多くの手順では、必要であればしばしば長時間にわたって(数十分間)、構成部品または器具の位置決めおよび移動を正確に、かつ繰り返して行う必要がある。
【0004】
これらの試みは、実行を容易にするために機械的支援を用いていたとしても、操作者にとっては冗長であり疲労が大きい。
【0005】
さらに、操作者は、問題の構成部品および実行される治療または検査のタイプによって、必ず専門の人間、すなわち、一般的には外科医、神経科医、放射線科医、または類似する専門家でなければならない。
【0006】
さらに、ナビゲーションシステムによって提供される視覚的リターンを任意で利用することができる熟練した操作者であっても、位置決めまたは移動を、あらかじめ計算されたデータと、またはもっと強い理由から所定の手順の同一の繰り返しと、最適に一致させることはできず、効果を得るためには何回か同様の連続的な適用を必要とする。
【0007】
最後に、実行する治療または検査のタイプによっては、構成部品または器具を手動で取り扱う操作者は、有害な放射線に曝される。
【0008】
これらの様々な要因は、医師がロボット化された装置を導入する必要性を説明している。
【0009】
上記で開示されたいくつかの問題は、特に大脳皮質への電気刺激を与えるように設計された経頭蓋磁気刺激に関して、述べられている。
【0010】
このプロセスの効果はうつ病の場合について実証されており、外傷後不安症、強迫神経症、統合失調症、およびある特定のタイプのてんかん症以外の病理についての研究が現在行われている。
【0011】
しかし、主に既存の種類の刺激システムの取扱いが困難であることが原因の、同じ手順を再現することをほぼ不可能とする、患者によって大きな、効果のばらつきが観察されている。
【0012】
実際、現在の手順の実行では、MRI画像の機能的使用によって皮質の標的ゾーンを画定するとすぐに、空間での正確な経路を追跡するために、神経科医が、磁気刺激コイルを一体に備えたプローブを、患者の頭部の上で手動で移動させることになる。
【0013】
しかし、コイルの位置決めを容易にする目的で、ナビゲーションシステムによって視覚的フォローアップが神経科医に提供されたとしても、実際には、プローブの精密な移動を得ることは不可能であることが分かっている。
【0014】
さらに、そのような手動の治療は、操作者の必要資格および一連のそれぞれの治療にかかる長い時間を考慮すると、処置にかかる費用も非常に問題である。
【0015】
患者に対して構成部品または器具を位置決めおよび/または移動するように設計された、医療用のロボット化されたデバイスの様々な導入が、すでに知られている。
【0016】
しかし、これらの既存のシステムは、工業用ロボットデバイスをもとにすることが多く、患者の体の表面でツールまたは器具を移動させるには適しておらず、移動に関して十分な精度が得られず、および/または医療用途では安全性のレベルが不十分である。
【0017】
さらに、Samuel K.Moore、「Psychiatry’s Shocking New Tools」、IEEE Spectrum(2006年3月)という文献によると、パルスを加えられる磁場でのプローブの適用を支持する関節構造を含む経頭蓋磁気刺激デバイスの理論的な説明が知られている。
【0018】
自動的に操縦され、または操作者によって遠隔に制御されるこの構造は、伸縮式ブラケットを含み、その端部に環状の連結によって、プローブを担持する関節サブアセンブリが支持されている。
【0019】
サブアセンブリ自体は可動の円形レールを含み、その一端は、環状の連結によって、スライドレールと一体になっており、その上にプローブがスライド式に取り付けられている。
【0020】
したがって、これらの異なる関節連結の組合せは、5自由度のみしかもたらさず、それにより、この文献によれば、このデバイスのプローブは頭蓋キャップの上側部分の位置にしか到達しない。
【0021】
さらに、この構造では患者の頭部の前側から後側へのスキャンを実施することが不可能であると思われ、頭蓋の上側表面全体をスキャンすることができるように水平面での並進の可動性を2自由度追加することによって、前記構造を完全にする必要があろう。
【0022】
さらに、接触位置の周りで、経頭蓋磁気刺激プローブの向きを制御するための機構が提供されていない。
【0023】
最後に、接触動作の管理は、任意で設けられていても(IEE Spectrumの文献はこれについて述べていない)、この構造の構造様式を考慮すると実行は困難であることに留意されたい。また、停電などの事故の場合、患者の頭部とぶつかる危険を冒すことなくプローブを単一の軸に沿って移動することは不可能であり、片持ち梁の数を増やすことでは構造の剛性およびプローブの移動精度にマイナスの影響を及ぼすことにも留意されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Samuel K.Moore、「Psychiatry’s Shocking New Tools」、IEEE Spectrum、(2006年3月)
【非特許文献2】Lebosse,C.et al.、「Robotic Image−Guided Transcranial Magnetic Stimulation」、Computer−Assisted Radiology and Surgery、日本、大阪(2006)、第1巻
【非特許文献3】Kavraki,L.et al.、「Probabilistic Road Maps for Path Planning in High Dimensional Configuration Spaces」、IEE Transaction on Robotics and Automation(1996)、第12巻、566から580頁
【非特許文献4】Nakamura,Y.、「Advanced Robotics:Redundancy and Optimization」、Addison−Wesley Longman Publishing,Boston(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、上記に開示された欠点の少なくとも一部を排除し、上記で示唆された、比較的制御が単純であり精度および安全性の必要基準を満たす、様々な試みによってロボット化による解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的のために、本発明の目的は、患者の頭部またはその周りで、特に画像プローブまたは経頭蓋磁気刺激プローブ等、診断または外科治療のための構成部品または器具を、ガイドおよび制御しながら位置決めおよび移動するためのロボット化された装置を提供することであり、前記装置は基本的に支持構造を含み、該支持構造に、一連の運動連鎖を生成してその自由端であり位置制御される端部に上記の構成部品または器具を担持するロボットデバイスの構成要素と、前記支持構造の一部でありまたはそれと組み合わされている、基本的に座位にある患者を支持し保持するための調整可能なデバイスとが取り付けられており、装置は、前記ロボットデバイスが互いに連続して連結された少なくとも2つ、好ましくは3つの運動サブアセンブリからなることを特徴とし、1つには、回転−関節機構の形態であり、第1の関節によって支持構造と一体化されており、3自由度の連続様式の球面運動配置に対応する、関節要素すべてが、患者を収容することのできる空間の外部に置かれ、それらの回転軸が治療位置の患者の頭部の仮定中心にほぼ対応する焦点と同一点で交わる、第1のサブアセンブリと、もう1つには、上記の焦点を通る軸に沿って線形並進する機構の形態であり、第1のサブアセンブリと連続して第3の関節の可動部分と一体化されている、第2のサブアセンブリと、最後に、必要であれば、第2のサブアセンブリの可動部分と一体化され、3自由度の連続様式の球面運動配置とも対応する、第2の回転−関節機構の形態である第3のサブアセンブリとを含み、この第3のサブアセンブリの関節要素が同一点で交わる回転軸を有する。
【0027】
本発明は、非限定的な例によって示され、添付の図面を参照して説明される、好ましい実施形態に関する以下の説明を使用すると、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】経頭蓋磁気刺激プローブに関連して使用される、本発明によるロボット化された装置の斜視図である。
【図2】経頭蓋磁気刺激プローブに関連して使用される、本発明によるロボット化された装置の側面図である。
【図3】経頭蓋磁気刺激プローブに関連して使用される、本発明によるロボット化された装置の前面図である。
【図4】経頭蓋磁気刺激プローブに関連して使用される、本発明によるロボット化された装置の上面図である。
【図5A】図1から図4のロボット化された装置を、覆いのケーシングを取り除いて、2つのわずかに異なる角度に沿って見た斜視図である。
【図5B】図1から図4のロボット化された装置を、覆いのケーシングを取り除いて、2つのわずかに異なる角度に沿って見た斜視図である。
【図6A】図1から図5Bに示すロボット化された装置の一部であるロボットデバイスまたはこのデバイスを構成する2つのサブアセンブリの、一実施形態の4自由度の同等の運動を示す図である。
【図6B】図1から図5Bに示すロボット化された装置の一部であるロボットデバイスの、別の実施形態の7自由度の同等の運動を示す図である。
【図7A】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第1の回転関節の端部位置、それぞれ上端および下端位置、およびこの関節のレベルにおける移動を示す、図1から図5Bのロボット化された装置の斜視図である。
【図7B】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第1の回転関節の端部位置、それぞれ上端および下端位置、およびこの関節のレベルにおける移動を示す、図1から図5Bのロボット化された装置の斜視図である。
【図8A】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節から連続的に90度オフセットした4つの位置、およびこの関節のレベルにおける移動を示す、図7Aおよび図7Bと同様の図である。
【図8B】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節から連続的に90度オフセットした4つの位置、およびこの関節のレベルにおける移動を示す、図7Aおよび図7Bと同様の図である。
【図8C】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節から連続的に90度オフセットした4つの位置、およびこの関節のレベルにおける移動を示す、図7Aおよび図7Bと同様の図である。
【図8D】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節から連続的に90度オフセットした4つの位置、およびこの関節のレベルにおける移動を示す、図7Aおよび図7Bと同様の図である。
【図9A】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第3の回転関節の(展開時の)端部位置、およびこの関節のレベルにおける移動を示す、図8Dと同様の図である。
【図9B】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第3の回転関節の(折り畳み時の)端部位置、およびこの関節のレベルにおける移動を示す、図8Dと同様の図である。
【図10】ロボットデバイスに担持された構成部品または器具が、患者と干渉せずに到達可能なゾーンを示す、患者の頭部の網目掛けした立体模型図である。
【図11A】図1から図5Bのロボット化された装置の一部である、ロボットデバイスの第2および第3のサブアセンブリを示し、ロボットデバイスの第2のサブアセンブリの並進における2つの端部位置および移動軸を示す、2つの異なる角度に沿って見た部分斜視図である。
【図11B】図1から図5Bのロボット化された装置の一部である、ロボットデバイスの第2および第3のサブアセンブリを示し、ロボットデバイスの第2のサブアセンブリの並進における2つの端部位置および移動軸を示す、2つの異なる角度に沿って見た部分斜視図である。
【図12】ロボットデバイスの第3のサブアセンブリの一部である第1、第2および第3の関節における可能な回転移動を示す、図11Aおよび図11Bの対象の部分側面図である。
【図13】構成要素のいくつかが、図11A、図11Bおよび図12に示す第3のサブアセンブリとわずかに異なる構造および配置を有する、ロボット化された装置の一部であるロボットデバイスの第3のサブアセンブリの部分斜視図である。
【図14】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの関節のある特定の要素を部分的に示す、図5Aおよび図5Bに示すものと同様の、ロボット化された装置の部分上面図である。
【図15】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2および第3の回転関節、ならびにロボットデバイスの第2のサブアセンブリを形成するスライド関節をより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の部分側面図である。
【図16】患者を支持し保持するためのデバイスを形成する椅子、ならびにそれと組み合わされた垂直および水平調整のためのデバイスをより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図17】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第1の回転関節と組み合わされ、一定張力の戻り機構の形態で製造された、安全デバイスの構成要素をより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図18】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第1の回転関節と組み合わされ、一定張力の戻り機構の形態で製造された、安全デバイスの構成要素をより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図19】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第1および第2の回転関節の構成要素をより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図20】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第1および第2の回転関節の構成要素をより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図21A】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節における、プローブを冷却するための空気循環回路の要素、ならびにプローブの電力ケーブルをより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図21B】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節における、プローブを冷却するための空気循環回路の要素、ならびにプローブの電力ケーブルをより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図21C】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節における、プローブを冷却するための空気循環回路の要素、ならびにプローブの電力ケーブルをより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図21D】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節における、プローブを冷却するための空気循環回路の要素、ならびにプローブの電力ケーブルをより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図21E】ロボットデバイスの第1のサブアセンブリの第2の回転関節における、プローブを冷却するための空気循環回路の要素、ならびにプローブの電力ケーブルをより詳細に示す、図5Aに示すものと同様の、ロボット化された装置の詳細な部分斜視図である。
【図22】図1から図5Bに示すロボット化された装置を含む治療デバイスの一部である、経頭蓋磁気刺激プローブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1から図5Bは、患者3’の頭部3またはその周りで、特に画像プローブまたは経頭蓋磁気刺激プローブ等、診断または外科治療のための構成部品または器具2を、ガイドおよび制御しながら位置決めおよび移動するためのロボット化された装置1を示す。
【0030】
この装置1は、カバーおよび保護ケーシング4’によって覆われた支持構造(フレーム)4を基本的に含み、そこに、一連の運動連鎖を生成し、その自由端であり位置制御される端部に、上記の構成部品または器具2を担持する、ロボットデバイス5の構成要素7から31が取り付けられている。さらに、基本的に座位にある患者3’を支持し保持するための調整可能なデバイス6が支持構造4の一部となり、またはそれと組み合わされている。
【0031】
本発明によれば、前記ロボットデバイス5は、互いに連続して連結された少なくとも2つの運動サブアセンブリ7、7’、好ましくは3つの運動サブアセンブリ7、7’、7”からなり、1つには、回転関節機構8、8’、8”の形態であり、第1の関節8によって支持構造4と一体化されており、3自由度の連続様式の球面運動配置に対応する、関節要素8、8’、8”が、患者3’を収容することのできる空間9の外部に置かれ、それらの回転軸、軸1、軸2、軸3が、治療位置にある患者3’の頭部3の仮定中心に基本的に対応する焦点PFと同一点で交わるサブアセンブリ7と、もう1つには、上記の焦点PFを通る軸(軸4)に沿って線形並進する機構の形態であり、第1のサブアセンブリ7と連続して第3の関節8”の可動部分10と一体化されている第2のサブアセンブリ7’と、最後に、必要であれば、第2の回転−関節機構の形態であり、第2のサブアセンブリ7’の可動部分12と一体化されており、3自由度の連続様式の球面運動配置とも対応し、その関節要素11、11’、11”が同一点で交わる回転軸、軸5、軸6、軸7を有する第3のサブアセンブリ7”とを含む。
【0032】
ロボットデバイス5を、独立であり互いに連続して連結する2つ、さらには3つのサブアセンブリ7、7’、7”に分解することによって、位置決めおよび移動の制御を容易にし、最終的な移動の精度を高め、これを構成する関節要素のそれぞれを個々に固定することを可能にする。
【0033】
特に、連続する3つの回転または環状連結によって形成され(8/軸1、8’/軸2、8”/軸3)、患者3’を収容する空間9と干渉せずに球面移動する第1のサブアセンブリ7と、第1のサブアセンブリ7によって到達することのできる位置の球面または球面部分に対して、径方向軸(軸4)に沿って並進移動する第2のサブアセンブリ7’との組合せは、任意でこの第2のサブアセンブリ7’を単一で確実に制御することによって、ロボットデバイス5の安全性の最適化された管理を可能にする。
【0034】
本発明の第1の特徴と同様に、特に図5A、図5B、図14、図17、図19、および図20から明らかなように、第1のサブアセンブリ7の第1の回転関節8は、円形スライドとの連結からなり、支持構造4と一体化された、基本的に半円弧形状の好ましくは二重レールであるガイドレール13、および前記レール13上を循環でき、その移動がアクチュエータ16に連結されたトランスミッションリンケージ15によって制御される、可動キャリッジ14を含み、円形移動は治療位置にある患者3の正中面で実行され、前記ガイドレール13は患者3’の頭部3の周りを基本的に頭蓋の後側下部から前頭部まで延びるように、位置決めされ延長されている。
【0035】
レール13は、患者を支持し保持するための調整可能な椅子6の形態のデバイスの上に張り出したブラケット形態の上側部分のレベルで、支持構造4のいくつかの位置に、堅固に設置されている。
【0036】
レール13は、二重構造(図1から図3、図7Aから図9B、図17、図19および図20)または単一レール構造(図5A、図5Bおよび図14)のいずれかとすることができる。第1のケースでは、キャリッジ14は、ローラースキッドまたはキャリッジ14の両面にあるスライドの一部を介して、互いに平行な2つの同一のレール上の適切な溝のレベルで循環し、上記の第2のケースでは、キャリッジ14は、少なくとも2つのローラースキッドまたは片面に互いに隣り合わせに置かれたスライドを使用して、単一のレール上を循環する。
【0037】
キャリッジ14がレール13上を移動できるようにする、トランスミッションリンケージ15は、図5Aおよび図5Bから明らかなように、一端がキャリッジ14に連結され、他端が支持構造14を垂直にスライドする第2のキャリッジに連結された、一対の連結ロッドを含むことができる。この第2のキャリッジは、ワイヤーナットで前記第2のキャリッジに係合するボールスクリューおよびエンドレスリードスクリューを使用して、モータ16によって並進させることができる(図5B)。
【0038】
第1の連続する球面の関節機構タイプの3自由度のサブアセンブリ7を使用することは、患者の頭部の周りの空間など、球面形状の作動体積に特に適しており、構成部品2の位置決めは、患者の頭部上で中心合わせされた球面のレベルで実行される。
【0039】
本発明によると、サブアセンブリ7は円形ガイドの特定の配置からなり(円形ガイドを有する2つの同心のサブアセンブリが回転軸によって互いに連結されている)、したがって患者との衝突を回避し、構成部品2の精密な取扱いを容易にするように、デバイスの剛性を最適化する。
【0040】
3つの回転関節8、8’および8”と組み合わされた安全機構が、事故の場合の患者の安全性を確保する。
【0041】
本発明の別の特徴によると、図14、図17、図19、図20、図21Aおよび図21Bに示すように、第1のサブアセンブリ7の第2の回転関節8’は、第1の回転関節8の一部である可動キャリッジ14内に設けられた軸受18内で回転するように取り付けられたシャフト17を有する軸方向関節からなり、前記シャフトの回転における移動は、前記キャリッジ14によって担持された、例えば歯車付きモータユニットなどのアクチュエータ19によって制御される。
【0042】
本発明の別の特徴によると、特に図5A、図5B、図9A、図9B、図15および図19から明らかなように、第1のサブアセンブリ7の第3の回転関節8”は、摺動式に作用するそれぞれ円弧形状に製造された、好ましくは2つのレール20、21の形態の円形スライド連結からなり、レール20および21は、基本的に互いに重なり合って置かれ、または長さ全体にわたって重複する折り畳み配置と、わずかな部分以外は互いに重なり合わない展開配置との間を、互いに対して動くことができる。
【0043】
実際の実施例を使用して図15に示すように、固定レール20はその長さ全体にわたって延びる回転部分33を備えることができ、レール21はその長さ全体にわたって分布された数セットのボール軸受またはニードル軸受を備えることができる。
【0044】
さらに、固定レール20は光学ルール34を備えることができ、可動レール21は対応する光学センサ34’を備えることができる。
【0045】
可動レール21の固定レール20に対する移動は、例えば、可動レール21に担持された電気モータによって適合されたトランスミッションを使用して駆動される、ラックシステムまたはドライブローラシステムによって、実行することができる。
【0046】
上記の図にも示すように、固定レール20は第2の回転関節8’のシャフト17と堅固に組み立てられ、2つのレール20および21は、機械的連結によって、またはアクチュエータをロックすることによって、互いに対して定位置で構造的にロックすることができ、相互の相対的移動が確保される。
【0047】
この第3の回転関節8”をロックする場合は、第1のサブアセンブリ7が、構成部品または器具2の可動性を抑制する必要のある特定の用途にとって十分となり得る、2自由度の球面関節機構を構成する。
【0048】
関節8”のロックは最終的または一時的とすることができ、後者の場合は、レール20に対するレール21の可動性を確保する、電気モータの制御ユニットのソフトウェアプログラミングに対応して連続的に行うことができる。
【0049】
レール20をキャリッジ14に回転式に連結するシャフト17は、2つの連結された要素間の片持ち梁を短くするように、および製造された関節アセンブリの高い剛性を確保するように、好ましくは比較的長さが短くなっている。
【0050】
ロボットデバイス5が空間9内へと下がらないように、およびデバイスの上方へ自動解除が行われるように、例えばケーブル22’を使用して、一定の張力の戻り機構22によって、第1の回転関節8の可動キャリッジ14の上端位置に常に力を加えることが、有利でありうる(図5A、図5B、図17および図18)。
【0051】
さらに、シャフト17に取り付けられ、任意で患者3’と干渉することができる要素が、制御されずに動くことがないように、シャフト17の回転をロックするためのデバイス23が、例えば電磁気タイプの、例えばアクチュエータ17のレベルで停電時に能動的ブレーキの形態となる、アクチュエータ19と組み合わされており、前記デバイス23は、シャフト17が回転軸、軸2の周りで自由に回転できるように、操作者が電流供給に手動で指示することによって、ロック解除することができる(図20および図21D)。
【0052】
第1のサブアセンブリ7のレベルで追加の安全装置を使用することによって、停電時に、第1のサブアセンブリ7の第3の回転関節8”のアクチュエータ21’が2つのレール20および21の相互位置をロックするようにすることもできる。
【0053】
本発明の特徴によると、特に図11A、図11Bおよび図15から明らかなように、構成部品または器具2が患者3’の頭部3に加える圧力を制御可能であり、ストレスセンサが、治療位置にいる患者3’の頭部3の表面に基本的に垂直である並進方向(軸4)で前記第2のサブアセンブリ7’の力を制御可能にする、第2のサブアセンブリ7’と組み合わされており、このサブアセンブリ7’はまた、例えば患者3’の頭部3の表面から遠隔的に構成部品または器具2に力を加える、機械的タイプの戻り機構も含む。
【0054】
ストレスセンサは、サブアセンブリ7’に取り付け、または構成部品または器具2と直接一体化することもできる。
【0055】
特に、経頭蓋磁気刺激等のためのプローブタイプの構成部品2の場合(構成部品2を患者の頭部に使用するように設計されている)、前記ストレスセンサはロボットデバイス5に担持されている構成部品または器具2内に一体化することができ、前記ストレスセンサは前記デバイス5の第2のサブアセンブリ7’の力制御の一部となる。
【0056】
ストレスセンサは、例えばTekscan CompanyのFlexiForce(登録商標)またはInterlink Electronics CompanyのFSRという名称で知られているセンサなど、シート部分の薄型センサの形態とすることができる。このセンサは、構成部品2によって任意で照射される放射線は感知しない。
【0057】
図15は、第2のサブアセンブリ7’を形成するスライド連結の制御された作動を確保するモニター/コーダユニット35、ならびにこの連結の安全機構を形成する戻りばねを示す図(部分切断図)である。
【0058】
本発明の第1の変形実施形態によると、図および動き方を図6Aおよび図6Bに示すが、ロボット化された装置1は、第1および第2のサブアセンブリ7および7’を組み込んだ、4自由度のロボットデバイス5を含み、そのようなデバイスは、構成部品または器具2が図10に示すすべての位置に達することを可能にする。
【0059】
本発明の第2の変形実施形態によると、図1から図5Bおよび図7Aから図13から明らかなように、図および動き方を図6Bに示すが、ロボット化された装置1は、第1、第2および第3のサブアセンブリ7、7’および7”を組み込んだ、7自由度の冗長ロボットデバイス5を含み、第3のサブアセンブリ7”は、球面カフを形成する一連の3つの回転関節11、11’、11”を有する機構からなる。
【0060】
第2の変形例によるそのようなロボットデバイスは、上記の第1の変形例と同じ(これが組み込んでいる)特性を有するだけでなく、所与の基準点PRに対して、例えば、構成部品2と患者3’の頭部3の接触面の接触点または中心点など(任意で構成部品2の中心点と組み合わせて)、構成部品または器具2の局部的な向きを生成することも可能である。
【0061】
この第2の変形例の別の特性は、治療処置中にプローブ2および頭部3が接している状態を確保し、前記プローブの制御されたスキャン移動を要する経頭蓋磁気刺激の分野では、特に必要である。
【0062】
本発明の実際の実施例によると、特に添付の図面の図11Aから図13により詳細に示すが、球面カフを形成する第3のサブアセンブリ7”は、基本的に、第2のサブアセンブリ7’の可動部分12と一体化されたレール24によって円弧状に形成され、上をアクチュエータ26によって動きを制御されたキャリッジ25が循環する、第1の関節11、一方の端部によって可動キャリッジ25上に堅固に取り付けられ、両側の端部には、円弧状の可動レール部分29とともにそれぞれ作用(曲線スライド)する固定キャリッジ28をそれぞれ担持する、互いに平行な2つのアーム27によって形成される、第2の関節11’、および、可動レール29と一体化された、軸受プレート30の形態であり、構成部品または器具2と一体化されたハブ31を(軸7の周りでの)回転容易に収容することができる、第3の関節11”からなる。
【0063】
キャリッジ28内での可動レール29の移動を確保するアクチュエータ36(例えば、電気モータ)を、例えばアーム27によって担持することができ、後者(キャプスタン)を通って、またはその周りで移動の伝達が確保される。
【0064】
同様に、ハブ31(軸7)の周りでの構成部品2の回転を確保するアクチュエータ37(電気モータ)を、構成部品2を収容する軸受プレート30によって、直接担持することができる。
【0065】
第3のサブアセンブリ7”を形成する関節11、11’および11”、ならびに関節8、8’および8”の最大角度範囲は、プローブ2の前面が到達すべき頭部の様々な部分と確実に接するように、(例えば、MRI画像による患者の頭部の3次元再構成をもとにして)必要な角度を評価することによって、ロボットデバイス5の設計中に決定される。
【0066】
さらに、サブアセンブリ7”の製造を考慮して、患者の頭部の中心と焦点PFの間でオフセットすることも可能である。
【0067】
本発明の別の説明を、添付の図面に直接関連して、以下により詳細に、しかし限定的にではなく、経頭蓋磁気刺激の用途の範囲内で説明する。
【0068】
図1から図5Bおよび図7Aから図9Bに示すように、ロボット化された装置1は、基本的に、剛性の支持構造4(例えば、非磁気、金属部分のアセンブリ)、クランクケース(ケーシングまたはカバー4’)、調整可能な椅子6、および7自由度を有するロボットデバイス5を含む。ロボットデバイス5は、空間内で固定点PFの周りを動くことによって、構成部品または器具2の位置決めを可能にする。また、患者3’の頭部3の周りでの、画像処理または刺激のためのプローブ2の位置決めも可能にする。信頼できる方法で頭部と接触を維持するべき他のデバイスも考慮することができる。
【0069】
上記の図の場合、ロボットデバイス5は、経頭蓋磁気刺激(SMT)治療の実行を可能にするエフェクター(プローブ2)とともに示される。
【0070】
図1から図9B、図10から図15および図17から図20から明らかなように、ロボットデバイス5は、連続して取り付けられた3つのサブアセンブリ7、7’および7”:3自由度の主構造7、作動されるスライド連結7’および3自由度の球面カフ7”からなる。
【0071】
主構造7は、経頭蓋磁気刺激プローブ2の中心を、患者3’上で中心合わせされた球面上で配置および移動できるようにする。これは、運動レベルでは、球面連続するロボット構造(図6Aおよび図6B)を含む。
【0072】
第1および第3の回転関節8および8”の製造のために円形ガイドを使用すると、デバイス5の必要な剛性を確保することによって、患者3’と干渉せずに移動することが可能になる。
【0073】
関節8、8’および8”で得ることのできる最大移動を図7Aから図9Bに示す。これらの移動によって、図10に示す網目状の面に到達することが可能になる。この面は、脳(頭蓋の前側および上側部分、前頭部、側頭、耳)の境界を定めた、頭蓋全体に対応する。連結の配置(関節8、8’および8”)およびこれらの回転または環状連結で移動可能な範囲は、特に0.8より大きい、構造の等方性指数を得ることによって、SMT治療に適合性のある精度で、このゾーンにわたって確実に移動することを可能にする。
【0074】
図6A、図6B、図11A、図11B、図12および図15に示すように、作動されたスライド連結(第2のサブアセンブリ7’)は、プローブ2が患者3’と接触しながら移動することを可能にする。作動方向(軸4)は、患者の頭部3の表面で垂直線に近く、この単一の軸(軸4)を制御することによって力制御が達成されるという、単純な方法でプローブ/患者の接触する力を管理することを可能にする。スライド連結7’は、機械的デバイス(例えば、あらかじめ付勢されたばねタイプ)によって定位置に戻る。停電の場合は、プローブ2は患者を除去する傾向にあり、患者の安全を確保する。
【0075】
球面カフ(サブアセンブリ7”/図11A、図11B、図12および図13)は、治療に必要となる、プローブ2の面が患者の頭部3に接するという状態にすることが可能である。プローブ(軸7)の実際の回転は、磁界の向きを定め、可能な限り皮質の溝に刺激を与えることを可能にする。
【0076】
ロボットデバイス5の行動は、自発的または非自発的な停電(緊急停止、使用終了、電流障害)の場合に信頼性が高い。軸1の周りで回転移動する回転関節8は、一定張力の戻りシステム(図17および図18)によって、上方垂直位置に戻り(図7A)、デバイスが患者の上に落ちないようにしている。
【0077】
同様に、同様の事故の場合、スライド連結と組み合わされた戻りデバイスが、プローブを患者の頭部3から自動的に引き離す。
【0078】
図14、図15、図19および図20は、シャフト17(軸2)の軸の周りを回転移動する関節8’が、垂直軸(シャフト17)上に係合する電気モータを使用して、ガイドされることをより詳細に示す。この軸によって、例えば、シャフト17と一体化された歯車と係合する円錐状のピニオンなど、減少部分を使用して所望の回転を得ることが可能である。シャフト17はまた、停電によってブレーキデバイス23に連結される。電力が停止した場合、回転のブレーキおよびロックが確保され、関節8’の周りでの制御されない移動、および場合によっては患者との干渉を防止する。
【0079】
しかしながら、空間9から出ることは、ロボット化された装置1が故障した場合であっても可能である。この時点で、プローブ2が例えば患者3’に面しており、患者が出ようとする動きを妨げる場合、操作者が手動で、ブレーキ23に選択的に電流を送り、手動でロボットデバイス5の向きを定める処置を行う(図8Aおよび図8Dの一方の位置)。
【0080】
図22は、一般的な構成であり、第3のサブアセンブリ7”を形成する球面カフの軸受プレート30での回転取付を可能にする後方手段31を含む、標準形態のSMTプローブを示す。
【0081】
能動的要素として、プローブは、8の形状の胴の回転を含み、強い磁界を生成することが可能である。プローブ2の良好な操作には、例えば空気の循環によって、冷却が必要である。
【0082】
実際、SMTプローブ2における磁界の生成によって、これを構成する銅導電体が加熱される。正しい操作を確保するために、冷却を必ず行う必要がある。
【0083】
さらに、外部探知器を使用して患者3’の移動が検出され、患者の頭部の位置および向きを判断することが可能になる。この探知器の良好な操作を確保するために、ロボットデバイス5の周りに、ケーブルおよびホースの存在を最小限にする必要がある。ケーブルの存在は、デバイスの使用中、患者または操作者の妨げとなることもある。
【0084】
したがって、ロボットデバイス5は、装置1に一体化された吸引器または同様の真空デバイスから空気を吸引することによって、SMTプローブ2の冷却を可能にするホース、ならびにプローブを操作することを可能にする電力ケーブルを、一体化するように設計されている。
【0085】
第2および第3の関節8’および8”(軸2および軸3)におけるホースの経路を管理する解決案の例が、図21Aから図21Fに示されている。2つの例では、電流および空気循環における電力機能が切り離されている。
【0086】
関節8’(軸2)では、関節8’を構成する枢動連結の周りにOリング状の回転ジョイントが形成される(軸2/図21Aおよび図21B)。このジョイントは、中空の円環状部分および気密性を確保するために円環状部分に対して平らにされたキャップからなる。空気は、関節8’のレベルで相対移動する2つのユニット間を通過するように、円環状部分の空洞内を循環する。
【0087】
この関節8’では、電力ケーブルは連結の回転軸を通過しない。
【0088】
ケーブルによる長さの多様性を管理するために、巻き取りシステムが設置されている。このシステムは、軸2を提供する回転シャフト17上に位置して周りにホースが巻き付けられる円柱面(図21Cおよび図21D)、および回転して呼び戻されるとケーブルがその上を前進するプーリからなる。ケーブルはこのプーリの内部を貫通し、回転軸でそこから出る。関節の周りでの回転によってケーブルの側面が伸長し、余分がプーリに自動的に巻き上げられる。
【0089】
関節8”(軸3)では、圧縮ホースを使用して空気を取り込むために多様な長さの円弧(図9A)が管理される。したがって、多様な長さはホースの見かけの長さを短くすることによって吸収される。電力ケーブルの多様な長さは、プーリの装置によりねじりばねによる戻りが考慮される。
【0090】
本発明によるロボット化された装置1のSMT用途または同様の用途での使用では、球面主要機構(第1のサブアセンブリ7)の中心PFを頭部3の中心とオフセットするように、患者3’を最初に位置決めする。したがって、椅子6は水平および垂直方向に2つの調節デバイス32および32’を備え、手動制御の各構成部品32”(例えば、クランク)とそれぞれ組み合わされている。位置決め処置は、2自由度に沿ってこの連続調節デバイスによって容易にされる手動の調節を含み、外部探知器による頭部の位置の推測に基づいて、または患者3’の上に投影される球面機構(サブアセンブリ7)の中心PFの光学的表示によって行われる。
【0091】
患者の頭部を空間9内で、第1および第2のサブアセンブリ7および7’の焦点PFに対して(患者の前頭部上での十字の投影)、初期調節した後、2つの外科的方法を考えることができる。
【0092】
第1の可能性によれば、プローブ2のあらかじめ定めた経路と治療されるゾーンとの間のオフセットを防ぐように、患者、特に患者の頭部を、調節後定位置に保持する。
【0093】
第2の可能性によれば、患者のある程度の移動が可能であり、患者は、対応する位置センサ(例えば、2つの赤外線または90度の光学カメラ)によって検出することができる、受動的マーカーを備える(例えば、マーカーが頭部に巻き付けられる頭部バンドまたは顔面に置かれるマスク)。これらのセンサからのデータが、ロボット化された装置1の制御およびガイドユニットに連続的に提供され、プローブ2のあらかじめ計算された経路を、患者の考えられる移動に基づいて、リアルタイム移動制御の方法で修正する。そのような位置決めシステムが追跡され、例えば、NDI,Inc.,CompanyによりPOLARISという名称で知られている。
【0094】
3つのサブアセンブリ7、7’および7”の回転関節の様々なアクチュエータは、好ましくは、移動の伝達および/または抑制のための機構およびロボット工学分野ではよく知られている位置センサおよび/またはコーダと組み合わせた電気モータ(例えば、直流または調和励振)からなり、これらのアクチュエータはすべて、適切な制御およびガイドユニット、例えば、プログラムされた、または以前の画像から推測されるデータから構成部品2の経路を計算し記憶する、コンピュータユニットによってガイドされる。
【0095】
したがって、本発明によるロボット化された装置1は、精度(ほぼ1mmでの位置決め)および安全性(能動的および受動的)のための上記の条件を満たし、医療環境での処置の自動化に関連する制限に従うことが可能である。
【0096】
本発明の目的はまた、経頭蓋磁気刺激による治療のためのデバイスであり、基本的に、磁気刺激コイルを含みロボット化された装置1に担持されるプローブ2を含む。
【0097】
このデバイスは、ロボット化された装置1が、上記で説明され添付の図の例を使用して例示された装置からなり、7自由度のロボットデバイス5を組み込み、制御およびガイドユニットの監視下で、あらかじめ決定された経路に基づいて、前記プローブを患者の頭部の周りで自動的に位置決めおよび移動することができることを特徴とする。
【0098】
ロボットデバイス5が7自由度、すなわち冗長な自由度を備えることによって、十分な運動を行い、各関節のレベルで移動および精密な位置決めを保証し、また最適化された安全な制御が可能になる。
【0099】
好ましくは、このデバイスは、ロボットデバイス5の第1のサブアセンブリ7の焦点PFに対する頭部3の調整を実行する目的で、制御およびガイドユニットとともに作用し、患者を収容する空間9内での患者3’の頭部3の好ましくは位置および向きについての位置決めシステムと、制御およびガイドユニットの監視下で、位置決めシステムによる信号またはデータに基づいて、ロボット化された装置1を使用してプローブ2の位置を頭部3の移動に基づいて制御する制御装置とをまた含む。
【0100】
そのようなデバイスは、SMT処置の間、必要な精度および安全性を確保しながら、操作者の代わりとなることが可能である。
【0101】
上記の経頭蓋磁気刺激デバイスの主な特徴は、特に、Lebosse,C.et al.、「Robotic Image−Guided Transcranial Magnetic Stimulation」、Computer−Assisted Radiology and Surgery、日本、大阪(2006)、第1巻から明らかであり、その全体の内容を参照によって援用する。
【0102】
最後に、本発明はまた、上記のデバイスを使用する経頭蓋磁気刺激のためのプロセスにも関する。
【0103】
このプロセスでは基本的に、次の段階を連続的に実行する。
【0104】
治療するべき患者の脳および頭部のいくつかの画像を、例えばMRIまたはfMRIによって、生成する。
【0105】
患者の脳および頭部の3次元モデルを生成する。
【0106】
刺激するべき皮質領域、および一連の刺激のそれぞれの順番、ならびに周波数、長さ、場合によっては各領域への刺激の力を決定する。
【0107】
所定の特異性に基づいて、対象となる各皮質領域を最適に刺激するように、デバイスの制御およびガイドユニットによって、または患者の頭部の周りでプローブのコイルの機能中心の経路を外部計算するユニットによって、計算する。
【0108】
ロボット化された装置内での患者の位置決め、およびロボット化された装置の焦点および3次元モデルに対して、頭部の調整またはフレーミングを実施する。
【0109】
ロボットデバイスによってプローブの移動を制御しながら、治療後の分析のためにプローブの位置および向きを任意に取得して、刺激処置を開始し自律的に実行する。
【0110】
より詳細には、刺激するべき皮質領域を識別した後、プローブ2のコイルの中心からの経路、ならびに、患者の頭部の3次元再構成に基づいて、前記領域での最適な刺激のために、経路を通るプローブの向きを計算する。
【0111】
プローブの移動速度、ならびに力、周波数、刺激するべき領域あたりの刺激の連続の回数が、計算またはプログラムされる。
【0112】
ロボットデバイスの物理的および機械的制限も考慮した、必要な経路の計算(関節の回転角度の制限、関節の回転速度の制限、衝突の防止)は、例えばサンプルを使用するアルゴリズムおよびKavraki,L.et al.、「Probabilistic Road Maps for Path Planning in High Dimensional Configuration Spaces」、IEE Transaction on Robotics and Automation(1996)、第12巻、566から580頁に基づいて、例えば制御およびガイドユニットで、確率的移動計画アルゴリズムによって算出することができる。
【0113】
さらに、疑似逆速度監視法を使用してプローブ2の移動を実行することができる(例えば、Nakamura,Y.、「Advanced Robotics:Redundancy and Optimization」、Addison−Wesley Longman Publishing,Boston(1991)を参照)。
【0114】
もちろん、本発明は添付の図面に説明され図示された実施形態に限定されない。特に様々な要素の組合せに関して、または同等な技術による置換によって、本発明の保護から逸脱することなく、修正が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭部またはその周りで、特に画像プローブまたは経頭蓋磁気刺激プローブ等、診断または外科治療のための構成部品または器具を、ガイドおよび制御しながら位置決めおよび移動するためのロボット化された装置にして、前記装置が、基本的に支持構造を含み、該支持構造に、一連の運動連鎖を生成してその自由端であり位置制御される端部に上記の構成部品または器具を担持するロボットデバイスの構成要素と、前記支持構造の一部でありまたはそれと組み合わされている、基本的に座位にある患者を支持し保持するための調整可能なデバイスとが取り付けられている、装置(1)であって、前記ロボットデバイス(5)が互いに連続して連結された少なくとも2つ(7、7’)、好ましくは3つ(7、7’、7”)の運動サブアセンブリからなり、1つには、回転関節機構(8、8’、8”)の形態であり、第1の関節(8)によって支持構造(4)と一体化されており、3自由度の連続様式の球面運動配置に対応し、関節要素(8、8’、8”)すべてが、患者(3’)を収容することのできる空間(9)の外部に置かれ、それらの回転軸(軸1、軸2および軸3)が治療位置の患者(3’)の頭部(3)の仮定中心にほぼ対応する焦点(PF)と同一点で交わる、第1のサブアセンブリ(7)と、もう1つには、上記の焦点(PF)を通る軸(軸4)に沿って線形並進する機構の形態であり、第1のサブアセンブリ(7)と連続して第3の関節(8”)の可動部分(10)と一体化されている、第2のサブアセンブリ(7’)と、最後に、必要であれば、第2のサブアセンブリ(7’)の可動部分(12)と一体化され、3自由度の連続様式の球面運動配置とも対応する、第2の回転関節機構の形態である第3のサブアセンブリ(7”)とを含み、この第3のサブアセンブリ(7”)の関節要素(11、11’、11”)が同一点で交わる回転軸(軸5、軸6および軸7)を有することを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
第1のサブアセンブリ(7)の第1の回転関節(8)が円形スライドとの連結にあり、支持構造(4)と一体化された、基本的に半円弧形状の、好ましくは二重レールであるガイドレール(13)、および前記レール(13)上を循環でき、その移動がアクチュエータ(16)に連結されたトランスミッションリンケージ(15)によって制御される、可動キャリッジ(14)を含み、円形移動が治療位置にある患者(3)の正中面で実行され、前記ガイドレール(13)が前記患者(3’)の頭部(3)の周りを基本的に頭蓋の後側下部から前頭部まで延びるように、位置決めされ延長されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1のサブアセンブリ(7)の第2の回転関節(8’)が、第1の回転関節(8)の一部である可動キャリッジ(14)内に設けられた軸受(18)内で回転するように取り付けられたシャフト(17)を有する軸方向関節からなり、前記シャフトの回転における移動が、前記キャリッジ(14)によって担持された、例えば歯車付きモータユニットなどのアクチュエータ(19)によって制御される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1のサブアセンブリ(7)の第3の回転関節(8”)が、摺動式に作用するそれぞれ円弧形状に製造された、好ましくは2つのレール(20、21)の形態の円形スライド連結からなり、前記レール(20および21)が、基本的に互いに重なり合って置かれ、または長さ全体にわたって重複する折り畳み配置と、わずかな部分を除き互いに重なり合っていない展開配置との間を、互いに対して動くことができる、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
第3の回転関節(8”)を形成するレール(20、21)の一方(20)が、機械的連結によって、またはアクチュエータをロックすることによって、互いに対して定位置で構造的にロックすることができる2つのレール(20および21)の第2の回転関節(8’)のシャフト(17)と堅固に組み立てられ、相互の相対的移動を確保する、請求項3および4に記載の装置。
【請求項6】
例えばケーブル(22’)など、一定の張力の戻り機構(22)によって、第1の回転関節(8)の可動キャリッジ(14)の上端位置に常に力を加えられる、請求項2、3および5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
シャフト(17)の回転をロックするためのデバイス(23)が、例えば電磁気タイプの、例えばアクチュエータ(19)のレベルで停電時に能動的ブレーキの形態となる、アクチュエータ(19)と組み合わされており、前記デバイス(23)が、シャフト(17)が回転軸(軸2)の周りで自由に回転できるように、操作者が電流供給に手動で指示することによって、ロック解除することができる、請求項3および5のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
第1のサブアセンブリ(7)の第3の回転関節(8”)のアクチュエータが、停電時に、2つのレール(20および21)の相互位置のロックを実行する、請求項4および5のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
特に圧力センサであるストレスセンサが、治療位置にいる患者(3’)の頭部(3)の表面に基本的に垂直である並進方向(軸4)で前記第2のサブアセンブリ(7’)の制御力を生成することを可能にする、第2のサブアセンブリ(7’)と組み合わされており、このサブアセンブリ(7’)はまた、患者(3’)の頭部(3)の表面から遠隔的に構成部品または器具(2)に力を加える、例えば機械的タイプの戻り機構も含む、請求項1から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
第1および第2のサブアセンブリ(7および7’)を組み込む、4自由度のロボットデバイス(5)を含む、請求項1から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
第1、第2、および第3のサブアセンブリ(7、7’および7”)を組み込んだ、7自由度の冗長ロボットデバイス(5)を含み、第3のサブアセンブリ(7”)が、球面カフを形成する一連の3つの回転関節(11、11’、11”)を有する機構からなる、請求項1から9のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
球面カフを形成する第3のサブアセンブリ(7”)が、基本的に、第2のサブアセンブリ(7’)の可動部分(12)と一体化されたレール(24)によって円弧状に形成され、上をアクチュエータ(26)によって動きを制御されたキャリッジ(25)が循環する、第1の関節(11)、一方の端部によって可動キャリッジ(25)上に堅固に取り付けられ、両側の端部には、円弧状の可動レール部分(29)とともにそれぞれ作用する固定キャリッジ(28)をそれぞれ担持する、互いに平行な2つのアーム(27)によって形成される、第2の関節(11’)、および、可動レール(29)と一体化された、軸受プレート(30)の形態であり、構成部品または器具(2)と一体化されたハブ(31)を(軸7の周りでの)回転容易に収容することができる、第3の関節(11”)からなる、請求項1から9のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
特に圧力センサであるストレスセンサが、ロボットデバイス(5)に担持された構成部品または器具(2)に一体化され、前記ストレスセンサが第2のサブアセンブリ(7’)の力制御の一部である、請求項1から8および10から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
磁気刺激コイルを含み、ロボット化された装置に担持されたプローブを基本的に含む、経頭蓋磁気刺激による治療のためのデバイスであって、ロボット化された装置(1)が請求項1から9および11から13のいずれかによる装置からなり、7自由度のロボットデバイス(5)を組み込み、制御およびガイドユニットの監視下で、あらかじめ決定された経路に基づいて、前記プローブ(2)を患者(3’)の頭部(3)の周りで自動的に位置決めおよび移動することができることを特徴とする、デバイス。
【請求項15】
ロボットデバイス(5)の第1のサブアセンブリ(7)の焦点(PF)に対する頭部(3)の調整を実行する目的で、制御およびガイドユニットとともに作用し、患者を収容する空間(9)内での患者(3’)の頭部(3)の好ましくは位置および向きについての位置決めシステムと、制御およびガイドユニットの監視下で、位置決めシステムによる信号またはデータに基づいて、ロボット化された装置(1)を使用してプローブ(2)の位置を頭部(3)の移動に基づいて制御する制御装置をまた含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
治療するべき患者の脳および頭部のいくつかの画像を、例えばMRIまたはfMRIによって、生成する、
患者の脳および頭部の3次元モデルを生成する、
刺激するべき皮質領域、および一連の刺激のそれぞれの順番、ならびに周波数、長さ、場合によっては各領域への刺激の力を決定する、
所定の特異性に基づいて、対象となる各皮質領域を最適に刺激するように、デバイスの制御およびガイドユニットによって、または患者の頭部の周りでプローブのコイルの機能中心の経路を外部計算するユニットによって、計算する、
ロボット化された装置内での患者の位置決め、およびロボット化された装置の焦点および3次元モデルに対して、頭部の調整またはフレーミングを実施する、
ロボットデバイスによってプローブの移動を制御しながら、治療後の分析のためにプローブの位置および向きを任意に取得して、刺激処置を開始し自律的に実行する
という段階を連続的に実行する、請求項14または15に記載のデバイスを使用する、経頭蓋磁気刺激のための、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図21E】
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【図22】
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【公表番号】特表2009−540999(P2009−540999A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517348(P2009−517348)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051518
【国際公開番号】WO2008/001003
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509000769)ユニベルシテ・ルイ・パストウール(エタブリスマン・ピユブリツク・ア・キアラクテール・シアンテイフイク・キユルチユレル・エ・プロフエツシヨネル) (1)
【出願人】(509001250)サントル・ナシオナル・ドウ・ラ・ルシエルシユ・シアンテイフイク(エタブリスマン・ピユブリツク・ア・キアラクテール・シアンテイフイク・エ・テクノロジーク) (2)
【出願人】(509000758)アンステイテユ・ナシオナル・デ・シアンス・アプリケ(エタブリスマン・ピユブリツク・ア・キアラクテール・シアンテイフイク・キユルチユレル・エ・プロフエツシヨネル) (1)
【Fターム(参考)】