説明

構造体、その製造方法、および家具

【課題】 板状部材が任意の角度で交差する交差部を含む構造体を、簡単な製造工程で、容易かつ確実に得ることができる製造方法、その構造体、およびその構造体を用いた家具を提供する。
【解決手段】1枚のボード1の一方の面または両面にシート3を貼り付ける工程と、ボードに、少なくとも1つの断面V字状の溝を、該ボードの幅方向に沿って幅全体に形成する工程と、V字状の溝の一方の斜面と他方の斜面とを当接することで、ボードを角度をなすように折り曲げる工程とを備え、断面V字状の溝の形成工程では、いずれか1つの面に貼付されたシートを該断面V字の底の下に残して、そのシート以外の部分を、幅方向に沿って断面V字状に切削することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、その製造方法、および家具に関し、より具体的には、部材が角度をもって交差する交差部を含む構造体、その製造方法、および家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木工製品などにおいては、板同士が一定の角度で交差して外壁を形成する構造が用いられることが多い。とくにデザイン性を重視する壁固定の収納棚など、たとえば蜂の巣状の6角形を基本とする飾り異形収納壁などにおいては、背板を介在させて設けられた棚の外板は他の外板と120°で交差し、その交差部で終端し接合される構造が多用される。角度120°でなく、デザイン性を重視して他の角度、たとえば45°、135°、30°、150°などの角度の交差接合部も数多くある。また、実用的には、直交する交差部、すなわち90°の交差部が非常に重要である。また、デザインの種類によっては、一方の端と他方の端とが結合しないような波状の構造体の飾り棚もあり、このような波状の飾り棚の場合には、交差部は特定の角度である必要はない。
【0003】
上記の交差部のうち、特定の角度をもつ交差部については、板部材が所定の角度をもって交差することを可能にする構造は数多く知られている。たとえば、古来より木造建築に用いられる伝統的な木組みの工法は、凹凸を形成した板端部同士を組むものであるが、美観に優れ、かつ耐久性にも富んでいる。また、交差する部材の両方に相手側へと断面が小さくなる溝を第3の方向に延在するように形成し、その溝に嵌め合わせる連結部材を挿入して固定する方法も、強固に2枚の板の交差角を保持することができる(特許文献1)。この他、隅木または谷木の組立において、135°の角度で折れ曲がる金具が開示されている(特許文献2)。この金具によれば、所定の角度で木材部品同士を接続することができる。この金具は、通常の釘を用いて、一方の木材部品に金具を固定する構造が採用されている。一方、金具を用いることなく、広義に釘と解釈されるような金属部品により2つの木材部品を接続可能なものとして、コ字状の釘の提案がなされている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2007−50629号公報
【特許文献2】特開2002−242316号公報
【特許文献3】登録実用新案第3125899号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の伝統的な木組み工法、連結部材、および金具は、しかしながら、連結部材等の構造が複雑であり、板の接続に多大の工数を要し、簡単に板部品同士を接続することができない。また、上記の飾り壁収納箱のように交差部も含めて、交差部の板側面(飾り壁収納箱の正面)に装飾性の高いシートを粘着して仕上げる場合に、表面に金具等に起因する凸凹が生じ、美観上、好ましくない。さらに、上記のコ字状の釘は、上記の問題に加えて、木口側から当該釘を簡単に打ち込むことはできるが、角度を変えようとする力に抗する効果は非常に小さく、角度固定力が弱い欠点を有する。
【0005】
本発明は、板状部材が任意の角度で交差する交差部を含む構造体を、簡単な製造工程で、容易かつ確実に得ることができる製造方法、その構造体、およびその構造体を用いた家具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構造体の製造方法は、板状部材が角度をもって交差する交差部を備える構造体の製造方法である。この製造方法は、1枚のボードの一方の面または両面にシートを貼り付ける工程と、ボードに、少なくとも1つの断面V字状の溝を、該ボードの幅方向に沿って幅全体に形成する工程と、V字状の溝の一方の斜面と他方の斜面とを当接することで、ボードを角度をなすように折り曲げる工程とを備える。そして、断面V字状の溝の形成工程では、いずれか1つの面に貼付されたシートを該断面V字の底の下に残して、当該シート以外の部分を、幅方向に沿って断面V字状に切削することを特徴とする。
【0007】
上記の方法によれば、V字状溝の形成箇所では、シートによってつながれるので、一体物として取り扱うことができる。断面V字状溝の両方の斜面の角度は、目的とする構造体ができるように設定する。その上で、シートで連結されたV字状溝付きボードを折り曲げ、V字状溝の両斜面を当接させることで、交差部を含む構造体を、能率よく、容易に、かつ確実に得ることができる。なお、両斜面を当接させる際には、両斜面を接着剤によって接着してもよい。交差部で折り曲げて固定する手段としては、上記の両斜面の接着剤による接着や、ほかの部材による固定などどのような固定手段であってもよい。なお、ボードの面とは、主面をさし、上面もしくは下面、または表面もしくは裏面をいう。また、側面は、上面と下面とに挟まれ、長手方向成分を含む面をいい、したがって幅方向成分に直交する。ボードの端とは、長手方向の端をいう。
【0008】
上記のボードの両面および一方の側面に、シートを貼り付け、ボードに、断面V字状の溝を、複数、いずれか1つの面の側にのみ、または両面それぞれの側に、形成する際に、シートで覆われた一方の側面から、シートで覆われていない他方の側面に向けて切削するのがよい。これによって、シートにかかる切削刃の力をシートの自由端に、ある程度、逃がすことができる。その結果、シートがボードから剥がれる事態が生じるのを防止することができる。
【0009】
上記の構造体を一定幅または一定の奥行きをもつN角形の筒状体とし、ボードを該一定幅の長尺のボードとして、そのボードに(N−1)個の断面V字状の溝を形成し、かつそのボードの両端それぞれに斜面を形成して、(N−1)個の断面V字状の溝の両側の斜面を当接し、また両端の斜面を当接することで、N角形の筒状体になるようにすることができる。これによって、非常に簡単な工程で、確実に、デザイン性に富んだ多角形、たとえば六角形の筒状体を製造することができる。
【0010】
上記の構造体の形状に合わせた背板を準備し、幅方向と交差するように長手方向溝を設け、断面V字状の溝の両斜面を当接させて構造体に折り曲げながら、またはその前に、長手方向溝に背板を嵌め込んで固定することができる。この背板によって、非常に堅固に固定することができ、信頼性の高い高品質の構造体を得ることができる。
【0011】
本発明の構造体は、板状部材が角度をもって交差する交差部を備える。この構造体では、交差部の両側の板状部材は斜め断面で当接し、交差部の外周面にシートが貼り付けられていることを特徴とする。
【0012】
上記の構造によれば、釘や金具を用いることなく上記の交差部をシンプルに形成しており、表面の美観に優れた構造体を得ることができる。ここで、一般に交差部においては、交差部の両側の板状部材がなす角度は、一方の側で測定すれば180°より小さく、その反対側では180°より大きくなる。180°より小さくなる側を内角または内角側といい、180°より大きくなる側を外面側といい、その面を外周面などという。本説明における内角や外面等の用語については、すべて定義して用いているわけではない。定義が欠如している場合には、ここでの説明の趣旨に沿うように解釈されるべきである。
【0013】
上記の構造体を形成するすべての板状部材の両面および一方の側面に、シートが貼り付けられており、交差部の内角が、複数個所、いずれか1つの面の側にのみ、または両面それぞれに、形成される構成をとることができる。これによって、壁に取り付ける場合、装飾性に優れたシートで視覚対象面(板状部材の両面および一方の側面)のすべてを端整に被覆することができる。シートが貼り付けられていない他方の側面は、壁に対面する配置とする。上記の交差部の内角の配置については、つぎの場合が考えられる。いずれか1つの面の側にのみ内角が設けられる場合は、始端と終端とが当接する場合は多角形の筒状体になり、そうでない場合は、角張った渦巻状になる。また複数の内角が、両面それぞれに設けられる場合は、波状、山並み状、尖塔状になる。
【0014】
上記の構造体は一定幅または一定の奥行きをもつN角形の筒状体であり、N個の交差部の板状部材は斜め断面で当接しており、筒状体の少なくとも外周面にシートが貼り付けられ、N個の交差部のうちの1つの交差部のみにおいて、その外周面の交差線に沿って一定幅全体にわたって、シートに不連続部がある構成をとることができる。これによって、簡単な工程で、容易にN角形の筒状体を得ることができる。外周側のシートに不連続部(切れ目)がある交差部は、ボードの始端と終端とが当接して形成される箇所であり、当然、外周側のシートにも不連続部(切れ目)がある。上記1つの交差部のみで、その外周側のシートにも不連続部があるのは、本発明の構造体の製造方法で、多角形の筒状体が製造された場合に、その多角形の筒状体が備える特徴である。当然のことであるが、すべての交差部において、内周側のシートには不連続部(切れ目)がある。
【0015】
上記の交差部の交差線に交差する方向に延在する溝を備え、その溝に構造体の形状に合わせた背板が嵌め込まれた構造をとることができる。これによって、より堅固な、高品質の製品を得ることができる。
【0016】
また、上記の構造体は、それ単独で、家具として用いることができる。また、壁に係止板を固定して、その係止板に構造体が取り付けられ、次のような家具の使い方もできる。
(1)壁装飾品、陳列棚または収納棚として用いる。
(2)交差部に囲まれるように前面に透光性散乱板が設けられ、その奥に発光体が配置されて、照明具として用いる。この場合、ボードまたは板状部材には、乳白色の透光性樹脂を用いるのがよい。シートを貼着する接着剤についても、透光性にするのがよい。
(3)交差部に囲まれるように前面に鏡が設けられ、鏡として用いる。
上記の家具は、居住空間のデザイン性を高め、快適にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、板状部材が交差する交差部を含む構造体を、簡単な工程で、容易かつ確実に得ることができ、また、その構造体を用いたデザイン性に優れた家具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における構造体である6角形の筒状体10を示す図である。図1において、六角筒状体10は、板状部材1と、その板状部材1に貼り付けられた樹脂製シート3とによって構成されている。板状部材1は、集成材、合板、無垢材などどのような木質の材料でもよいが、MDF(Medium Density Fiberboard)などが好適に用いられる。また、板状部材は、紙を圧縮して形成した厚紙などであってもよい。あとで説明するが、筒状体10を形成する複数の板状部材1は、平坦な1枚のボードから形成されている。樹脂製のシート3には、木目模様など任意の化粧パターンが施されており、その材質な何でもよいが、オレフィン樹脂などが好適に用いられる。塩ビ樹脂などを用いてもよい。シート3は連続した一枚のシートであり、六角筒状体の内周面、外周面、および一方の端面(前面)を被覆している。後で説明する理由により、他方の端面(後面)はシートによって被覆されていない。六角筒状体10には、板状部材が交差する6個の交差部11〜16がある。六角筒状体10の奥行きは、このあと説明するように、原料となる一枚のボードの幅Wに等しい。
【0019】
図2は、図1の六角筒状体10を、シート3で被服されていない後面側から見た図である。6個の交差部11〜16のうち5個12〜16は、同じ当接部を持つが、交差部11は、ほかの当接部と異なる当接部を呈する。図3は、交差部11の当接部を示す図である。交差部11の当接部Eでは、斜め断面が当接して形成される当接線Eが、(外周側のシート3/板状部材1/内周側のシート2)のすべてにわたっている。これに対して、たとえば交差部16では、上記の当接線Mは、(板状部材1/内周側のシート2)に生じているが、外周側のシート3には及んでいない。このような交差線Mは、ほかの交差部12〜15においても同様に認められる。これは、上記の六角筒状体10が、本発明の製造方法にしたがって製造されたことを示す証拠となる。上記のシート3の上に、当接部Eの外周面の不連続部(切れ目)を隠すために、補助シートまたは補助テープを、切れ目が覆い隠されるように貼り付けることがあるかもしれない。その場合でも、板状部材またはボード1に、直接、貼り付けられたシート3の当接部Eの切れ目は、消失することはなく、どのような場合でも特定することができる。図3および図4は、六角形の筒状体10を裏面側から見た図である。前面側から見たときは、シート3がすべて被覆しているだけで、当接線の位置は、裏面側から見たものと同じである。
【0020】
図5〜図7にしたがって、図1に示す六角筒状体の製造方法について説明する。まず、図5に示すように、木質のボード1と、シート3とを用意する。シート3は、ボード1の両面と1方の側面を覆う形状とする。他方の側面は被覆しないほうがよい。次いで、図6および図7に示すように、断面がV字状の溝7を5個、形成する。図7は、図6のVII−VII線に沿う断面図である。V字状溝7は、図6に示すように、2つの斜面7a,7bと、V字の底7cとから構成される。
【0021】
V字状溝7の形成には、高精度のNC( Nemerical Control)加工機を用いるのがよい。高精度のNC加工機を用いて、1枚の外周側のシート3のみを残して、その上のボード1および内周側のシート3を切削加工で除去して、断面V字状の溝7を形成する。切削加工の際、シート3に被覆されている一方の側面から、シート被覆のない他方の側面へと幅方向に切削刃を移動させるのがよい。切削の際に、切削刃からシート3に力が加わり、切削刃が切削状態から外れるときに、累積した力の逃げ場がなく、切削刃とシート3との間に摩擦力または引っ掛かりが生じるようになる。このため、シートが切削刃によって切られるのではなく変形させられて、ボード1から剥がれる事態を生じる。他方の側面がシート被覆されていないでフリーな場合、他方の側面でシート3は応力等を開放して、切削刃との間に摩擦力を増大させない。このため、ボード1の1つの側面はシート3で被覆しないで、切削加工では、シート3で被覆された一方の側面から、被覆されていないほうの側面へと、幅方向に切削刃を走らせるのがよい。本発明の構造体の製造方法は、高精度のNC加工機によるところが大きい。
【0022】
上記のV字状溝7および両端の斜面9を形成したのち、V字状溝7の箇所で折り曲げて、両端の斜面9を当接させつつ、V字状溝7の両斜面7a,7bを当接させて、固定する。
V字状溝7の開き角度は60°(斜面の斜面角度は60°)とし、また、両端の斜面の直交線からの角度は、上記V字状溝の開き角度の半分の30°(斜面角度は60°)とする。固定は、V字状溝の斜面に接着剤を塗布するなどして、接着剤によって固定してもよい。
【0023】
上記のNC加工機による5個のV字状溝7、および両端の斜面9の加工は、1分のオーダーで行なうことができる。このため、上記の六角筒状体10は、非常に簡単な工程により、容易に、かつ確実に製造することができる。そして、金具等を使用しないので、化粧シートが交差部で凹凸状になることはなく、審美性の高い快適な外観を得ることができる。
【0024】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における構造体である6角形の筒状体10を示す図である。また図9は、図8のIX−IX線に沿う断面図である。この六角筒状体10は、背板5が用いられている点で、実施の形態1の六角筒状体と相違する。背板5は、図10および図11に示すような、シート貼付ボード1,3に設けた背板用溝8に嵌め込まれる。図11は、V字状溝7と、背板用溝8とが交差する箇所を拡大して示す平面図である。背板用溝8は、V字状溝の底7cと同じ深さまたはそれより深い部分をもたない。背板用溝8および/または背板5の縁に接着剤を塗布しておくことによって、強固に六角筒状体の形状を確保することができる。
【0025】
その他の部分の形態および製造方法は、実施の形態1と同じである。したがって、実施の形態1の作用効果を得ながら、背板5を用いることによって、より強固に六角筒状体の形状を確保することができる、という効果を得ることができる。これによって、たとえば各V字状溝7の斜面7a,7bを当接させる場合、接着剤による接着を省略することが可能である。
【0026】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3では、六角筒状体以外の筒状体に関する。図12は、四角形の筒状体10を示す図であり、また、図13は台形の筒状体10を示す図である。いずれの場合も、前面(一方の側面)および外周側と内周側の面は、シート3が貼付されている。いずれの場合も、上記実施の形態1に示した製造方法にしたがって製造することができる。ただし、四角形の筒状体では、V字状溝の開き角は、90°とする。図13に示す台形の場合、台形の形状の扁平度などに応じて、V字状溝の開く角を変える必要がある。原則的に、V字状溝の一方の斜面7aの角度と、他方の斜面7bの角度とを異なるようにする。したがって、各辺の長さ、内角などを設定して、三角関数を用いて斜面7a,7b,9の正確な角度を求めるのがよい。
【0027】
実施の形態1に示した製造方法で、N角形の筒状体を製造する場合、N個の交差部のうち、必ず1個の交差部では、上記の当接部Eと同じ当接部が形成され、残りの(N−1)個の交差部では、上記の当接部Mと同じ当接部が形成される。このような交差部の当接部の生成は、本発明の構造体を多角形の筒状体とする場合の製造方法に特有のものである。したがって、その筒状体の交差部の当接部の形態を調べることにより、本発明の構造体か否か特定することができる。
【0028】
(実施の形態4)
図14は、本発明の実施の形態4における構造体10を示す図である。本実施の形態における構造体10は、両端が当接しないでフリーな状態である。このため、交差部のすべてにおいて当接部は、上記当接部Mと同じものである。図15は、図14に示す構造体10を製造する際の、シート貼付ボード1,3にV字状溝7を形成した状態を示す図である。V字状溝7は、両面に貼り付けられたシート3のいずれか一方を残して、交互に、一方の面側と他方の面側に形成されている。この場合、V字状溝の斜面7a,7bが当接するとき、接着剤を用いて両斜面を接着するのがよい。
【0029】
図14に示す構造体10は、壁などに取り付けて、装飾品として用いたり、装飾性の変わり棚などとして用いることができる。図14の構造体10の場合も、NC加工機を用いて短時間でV字状溝を加工して、非常に簡単な工程で、容易に、かつ確実に製造することができる。
【0030】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5では、壁に係止板を固定して、その係止板に上記の多角形の筒状体を取り付け、家具として用いる形態について説明する。図16は、壁に固定された係止板31を示す。壁への固定は、螺子33によって行うのがよい。係止板31の形状は四角形でも六角形でもよいが、筒状体10の内筒内に収まる大きさにするのがよい。図17は、図1に示した六角形の筒状体10を取り付けた状態を示す図である。筒状体10の係止板31への取り付けは、接着剤によっても、螺子によってもよい。図17に示す六角形の筒状体は、飾り陳列棚または収納棚の家具50として用いることができる。この六角形の筒状体10には、任意の化粧シートを用いることができる。六角形の筒状体という形態、およびその表面模様によって、居住空間に優れたデザイン性と、知的な快適性を与えることができる。この六角形の筒状体10は、上述のように、非常に簡単な工程で、容易に、確実に、したがって安価に製造することができる。
【0031】
図18は、筒状照明装置を示す図である。図18では、前面に散乱性透光板55を塞ぐように配置し、側部のボード1およびシート3には非透光性の材料を用いる。筒状体10の内部には発光体(図示せず)を配置する。シート3には、たとえば木目調の化粧シートを用いるのがよい。これによって、前面55から照明光が放射され、壁取り付けの筒状照明装置の家具50として用いることができる。また、図18に示す筒状照明装置の変形例として、図示はしないが、前面だけでなく、側部からも光を放射する筒状照明装置であってもよい。側部からも光を放射する場合には、ボードまたは板状部材1を透光性の白色樹脂板とし、シート3およびシートの接着剤を透光性とし、前面を散乱透光板55でふさぐ。筒状体10の内部には、同様に、発光体を配置する。
【0032】
図19は、4個の六角形の筒状体を接して壁に取り付け、そのうちの1個にはミラー51を取り付けて鏡として使用し、残りの3個には蝶番付きドアを取り付けて収納棚として、全体を1組の家具50として使用する。これらの家具50は、デザイン性に富み、居住空間を愉快で快適なものにすることができる。図19に示す六角形筒状体は、すべての六角形について、各六角形の向かい合う2辺が垂直方向に沿っている配置である。この変形例として、図19のすべての六角形について、各六角形の向かい合う2辺を水平方向に沿うように配置した組み合わせ家具としてもよい。すなわち、図19に示す六角形をすべて30°回転させて、4個の六角形の筒状体を相互に接するように組み合わせて、1個にはミラーを取り付けて鏡として、残りを収納棚とした、組み合わせ家具とする構成にしてもよい。六角形の筒状体の数は4個に限定されず、任意の数であってよい。
【0033】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、板状部材が任意の角度で交差する交差部を含む構造体を、簡単な製造工程で、容易かつ確実に得ることができる製造方法、その構造体、およびその構造体を用いた家具を得ることができ、デザイン性に富む家具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における六角形の筒状体を示す斜視図である。
【図2】図1に示す六角形の筒状体を裏面側から見た図である。
【図3】図1に示す六角形の筒状体の交差部の1つの当接部Eを示す図である(ボード両端の斜面が当接した部分)。
【図4】図1に示す六角形の筒状体の交差部の当接部Mを示す図である(ボードのV字状溝の両斜面が当接した部分)
【図5】図1に示す六角形の筒状体の製造において、ボードにシートを貼り付けるまでを示す図である。
【図6】ボードにV字状溝を形成した状態を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における背板付き六角形の筒状体を示す斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】V字状溝と背板用溝とが形成されたボードを示す平面図である。
【図11】V字状溝と背板用溝との交差する部分を示す拡大図である。
【図12】本発明の実施の形態3における四角形の筒状体を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態3における台形の筒状体を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態4における波状構造体を示す図である。
【図15】図14の波状構造体のV字状溝の配置を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態5における壁取り付けの家具を取り付ける係止板を示す図である。
【図17】壁に取り付けた六角形の筒状体の飾り陳列棚の家具を示す図である。
【図18】壁に取り付けた六角形の筒状体を照明装置の家具を示す図である。
【図19】壁に取り付けた4個一組の六角形の筒状体の家具を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 板状部材(ボード)、3 シート、5 背板、5e 背板の縁、7 V字状溝、7a,7b V字状溝の斜面、7c V字状溝の底、8 背板用溝、9 ボード両端の斜面、10 構造体、11〜16 交差部、31 係止板(壁取付用)、33 螺子、50 家具、51 ミラー、53蝶番付きドア、55 透光性散乱板、E ボード両端が当接する当接部、M V字状溝の両斜面が当接する当接部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材が角度をもって交差する交差部を備える構造体の製造方法であって、
1枚のボードの一方の面または両面にシートを貼り付ける工程と、
前記ボードに、少なくとも1つの断面V字状の溝を、該ボードの幅方向に沿って幅全体に形成する工程と、
前記V字状の溝の一方の斜面と他方の斜面とを当接することで、前記ボードを前記角度をなすように折り曲げる工程とを備え、
前記V字状の溝の形成工程では、いずれか1つの面に貼付されたシートを該断面V字の底の下に残して、当該シート以外の部分を、幅方向に沿って断面V字状に切削することを特徴とする、構造体の製造方法。
【請求項2】
前記ボードの両面および一方の側面に、シートを貼り付け、前記ボードに、前記断面V字状の溝を複数、いずれか1つの面の側にのみ、または両面それぞれの側に、形成する際に、前記シートで覆われた一方の側面から、前記シートで覆われていない他方の側面に向けて切削することを特徴とする、請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項3】
前記構造体を一定幅または一定の奥行きをもつN角形の筒状体とし、前記ボードを該一定幅の長尺のボードとして、そのボードに(N−1)個の前記断面V字状の溝を形成し、かつそのボードの両端それぞれに斜面を形成して、前記(N−1)個の断面V字状の溝の両側の斜面を当接し、また前記両端の斜面を当接することで、前記N角形の筒状体になるようにすることを特徴とする、請求項1または2に記載の構造体の製造方法。
【請求項4】
前記構造体の形状に合わせた背板を準備し、前記幅方向と交差するように長手方向溝を設け、前記断面V字状の溝の両斜面を当接させて前記構造体に折り曲げながら、またはその前に、前記長手方向溝に前記背板を嵌め込んで固定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項5】
板状部材が角度をもって交差する交差部を備える構造体であって、
前記交差部の両側の板状部材は斜め断面で当接し、
前記交差部の外周面にシートが貼り付けられていることを特徴とする、構造体。
【請求項6】
前記構造体を形成するすべての板状部材の両面および一方の側面に、前記シートが貼り付けられており、前記交差部の内角が、複数個所、いずれか1つの面の側にのみ、または両面それぞれに、形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の構造体。
【請求項7】
前記構造体が一定幅または一定の奥行きをもつN角形の筒状体であり、N個の交差部の板状部材は斜め断面で当接しており、前記筒状体の少なくとも外周面にシートが貼り付けられ、前記N個の交差部のうちの1つの交差部のみにおいて、その外周面の交差線に沿って前記一定幅全体にわたって、シートに不連続部があることを特徴とする、請求項5または6に記載の構造体。
【請求項8】
前記交差部の交差線に交差する方向に延在する溝を備え、その溝に前記構造体の形状に合わせた背板が嵌め込まれていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の構造体を用いた家具であって、前記壁に係止用板を固定して、その係止用板に前記構造体が取り付けられ、壁装飾品、陳列棚または収納棚として用いることを特徴とする、家具。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の構造体を用いた家具であって、前記壁に係止用板を固定して、その係止用板に前記構造体が取り付けられ、前記交差部に囲まれるように前面に透光性散乱板が設けられ、その奥に発光体が配置されて、照明具として用いることを特徴とする、家具。
【請求項11】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の構造体を用いた家具であって、前記壁に係止用板を固定して、その係止用板に前記構造体が取り付けられ、前記交差部に囲まれるように前面に鏡が設けられ、鏡として用いることを特徴とする、家具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−248439(P2009−248439A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98818(P2008−98818)
【出願日】平成20年4月5日(2008.4.5)
【出願人】(506270455)株式会社アップ (3)
【Fターム(参考)】