説明

構造体構成材料

【課題】軽量であり、低コストで、且つ建築物の構造を簡素にできて、しかも建築部材の点数を少なくでき、工事も簡単な構造体構成材料を提供する。
【解決手段】木製の土台25の角部に木製の柱20を立て、この柱20に保持部22を固定する。保持部22は直角をなすように一体に連結された一対の側板32と、一対の側板32の両端部に対し一体に連結された嵌合板28とによって構成されている。 次いで、構造体構成材料3を土台25の上に載せ、また、構造体構成材料3の端部を一対の嵌合板28の間に差し込む。そして、その構造体構成材3の上にさらに構造体構成材料3を載せて、その端部を一対の嵌合板28に差し込む。また、載置する側の構造体構成材料3の外側凸条23、23を載置される側の構造体構成材料3の内側凸条21、21の外側に嵌合して固定する。この作業を繰り返して構造体構成材料3を順次積み上げていくことで壁1を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、工場等の建築物の構造体を構成する金属製の構造体構成材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の構造体構成材料を用いた建築物には、鉄骨建築に代表されるように特許文献1に記載されているような中実材料が用いられている。
また、金属製の構造体構成材料が使用されるのは、柱や梁に限られ、壁や床は木製材料によって構成されることが殆どである。
【0003】
【特許文献1】特開2006−144241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記金属製の構造体構成材料は中実であるため重量が重く、運搬、工事における扱いが非常に大変であるばかりか、金属材料のコストが嵩むという問題もある。
特に、鉄製の構造体構成材料は、比重が大きいため重量が重くなってしまうことになる。このため、地震時においては鉄製の構造体構成材料どうしの連結部分等に相当な荷重が加わることになり、この連結部分等をかなり強固に補強する必要から、梁や壁等の躯体を含む建築物の構造が複雑になり、建築部材の点数が多くなるばかりか、工事も煩雑なものとなる問題点がある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、軽量であり、低コストで、且つ建築物の構造を簡素にできて、しかも建築部材の点数を少なくでき、工事も簡単な構造体構成材料を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、建築物の構造体を構成する構造体構成材料において、軽合金によって構成され、且つ中空部を有することを特徴とする構造体構成材料である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した構造体構成材料において、外側筒状体と、前記外側筒状体の内部に備えられた内側筒状体と、前記外側筒状体と内側筒状体とを連結する連結部とによって構成されていることを特徴とする構造体構成材料である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した構造体構成材料において、嵌合部と被嵌合部が設けられており、互いに連結される構造体構成材料の一方の構造体構成材料の嵌合部が他方の構造体構成材料の被嵌合部に嵌合されることを特徴とする構造体構成材料である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した構造体構成材料において、軽合金はマグネシウム系またはアルミニウム系合金で形成されていることを特徴とする構造体構成材料である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した構造体構成材料において、押し出し工法によって製造されたものであることを特徴とする構造体構成材料である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した構造体構成材料によって構造体の少なくとも一部が構成されたことを特徴とする建築物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構造体構成材料は、軽量なので、運搬や工事において扱いが容易となる。また、金属材料のコストを抑えることができるようになる。
更に、鉄製の構造体構成材料よりも比重がかなり軽いため、地震時においては構造体構成材料どうしの連結部分等に荷重があまり加わらない。従って、この連結部分等を強固に補強する必要性が少なく、建築物の構造を簡素にでき、建築部材の点数を少なくできる。よって、工事も簡単に行うことが可能となる。
また、構造体構成材料を軽合金によって構成したので、建築物を解体した場合い等において容易にリサイクルすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態1に係る構造体構成材料3を図1と図2にしたがって説明する。
構造体構成材料3は建築物の構造体を構成するものである。本明細書において建築物の「構造体」とは、屋根瓦材を除いた建築物の柱、梁等から成る躯体、更に壁、床をさすものである。
構造体構成材料3はマグネシウム系合金からなり、中空部5を有する。よって、構造体構成材料3は長尺でも軽量であり、運搬や工事において扱い易く、金属材料のコストが抑えられる。また構造体構成材料3は押し出し工法によって製造されているので、いずれの部位においても同じ横断面形状となっている。また、構造体構成材料3には防錆塗装が施されている。なお、実施の形態2以下に説明する構造体構成材料も同様に防錆塗装が施されている。
符号7は外側筒状体としての角筒状の外筒を示し、外筒7の内部には内側筒状体としての角筒状の内筒9が備えられている。外筒7は横断面が長方形になっており、内筒9は横断面も長方形になっている。外筒7の内面と内筒9の外面は、4つの平板状の連結部11により連結されている。連結部11は、外筒7の4つの角部と内筒9の4つの角部とを連結している。連結部11は、外筒7の4つの角部から内筒9の角部方向を向く姿勢でそれぞれ放射状に配置されている。従って、内筒9の内部と、外筒7と内筒9の間で隣り合う2つの連結部11により仕切られた4つの部分が、それぞれ中空部5になっている。また、内筒9内も中空部5になっている。
中空部5の一つにはパイプ12が備えられており、このパイプ12はリブ14によって外筒7と内筒9に連結されている。
【0013】
外筒7の天板15には、上方に向かって突出する被嵌合部としての一対の内側凸条21、21が設けられている。内側凸条21、21は、天板15の両端部よりわずかに内側に寄った位置に配置されている。
また、外筒7の底板17には、下方に向かって突出する嵌合部としての一対の外側凸条23、23が設けられている。外側凸条23、23は、底板17の両端部に配置されている。外側凸条23、23の外側面と、外筒7の左右の側板13の外面とは同一面上に位置している。
外側凸条23、23の内側面の間の寸法は、内側凸条21、21の外側面の間の寸法よりわずかに小さい寸法に設定されており、外側凸条23、23が内側凸条21、21の外側に嵌り込むようになっている。
【0014】
次に、構造体構成材料3で構成された構造体としての壁1の構築作業について説明する。
基礎24に木製の土台25を固定する。そして、土台25の角部に木製の柱20を立て、この柱20に保持部22を固定する。保持部22は直角をなすように一体に連結された一対の側板32と、一対の側板32の両端部に対し一体に連結され対向配置される一対の嵌合板28とによって構成されている。
次いで、構造体構成材料3を土台25の上に載せ、構造体構成材料3の端部を一対の嵌合板28の間に差し込む。そして、その構造体構成材料3の上にさらに構造体構成材料3を載せて、その端部を一対の嵌合板28に差し込む。また載置する側の構造体構成材料3の外側凸条23、23を載置される側の構造体構成材料3の内側凸条21、21の外側に嵌合して固定する。この作業を繰り返して構造体構成材料3を順次積み上げていくことで壁1を構築する。
【0015】
上述したように、構造体構成材料3は軽量なので、構造体構成材料3どうしの連結部分等を強固に補強する必要性が少なく、内側凸条21、21と外側凸条23、23とを嵌合させるだけで、耐震性の高い壁1を構築することが可能となる。また、このような構造体構成材料3を用いることで建築物の構造を簡素にでき、建築部材の点数を少なくできる。よって、工事も簡単に行うことが可能となる。
【0016】
次いで、壁1の外側に図示しないビスによって外壁材26を取り付け、また壁1の内側に内装材27を貼り付ける。
上記のように、構造体構成材料3で構築した構造体すなわち壁1を有する建築物を建設することが可能となる。
【0017】
図3に示す実施の形態2に係る構造体構成材料31について説明する。
この構造体構成材料31は、実施の形態1に係る構造体構成材料3と同様の構成部分を有するので、構造体構成材料3と同じ構成部分については、実施の形態1と同じ符号を付すことで説明を省略し、構造体構成材料3と相違する構成部分のみを説明する。
このことは、後述する実施の形態3から実施の形態8についても適用する。
構造体構成材料31は、実施の形態1で示した構造体構成材料3を、2つ積み重ねて一体化した構造となっており、実施の形態1の構造体構成材料3の天板15と底板17とを兼ねた共有板33を有する。
【0018】
図4に示す実施の形態3に係る構造体構成材料41について説明する。
構造体構成材料41は中空部42を有し、長尺に形成されている。
符号43は横断面が長方形の角筒状の外筒を示し、外筒43の内部には円筒状の内筒45が備えられている。外筒43の内面と内筒45の外面は、平板状の連結部47により連結されている。連結部47は、外筒43の4つの角部から内筒45の中心方向を向く姿勢でそれぞれ放射状に配置されている。従って、内筒45の内部と、外筒43と内筒45の間で隣り合う2つの連結部47により仕切られた4つの部分が、それぞれ中空部42になっている。また、内筒45内も中空部42になっている。
【0019】
図5に示す実施の形態4に係る構造体構成材料49について説明する。
構造体構成材料49は、実施の形態3に係る構造体構成材料41を2つ積み重ね一体化した構造となっている。実施の形態2と同様に共有板33を有する。
【0020】
図6に示す実施の形態5に係る構造体構成材料61について説明する。
仮想線で示す2つ構造体構成材料61は保持部62を介して柱20に連結されている。
構造体構成材料61は内側凸条21、外側凸条23を有していない点を除き、実施の形態1に係る構造体構成材料3と同様の構成部分を有するので、構造体構成材料3と同じ構成部分については、実施の形態1と同じ符号を付すことで説明を省略し、構造体構成材料3と相違する構成部分のみを説明する。
保持部62は直角をなすように一体に連結された一対の側板64と、一対の側板64の両端部に対し一体に連結され対向配置された一対の嵌合板68とによって構成されている。
この一対の嵌合板68に構造体構成材料61の端部を差し込むことで構造体構成材料61を挟持する。
なお、構造体構成材料61を水平、垂直のいずれの姿勢にも配置することが可能である。このことは以下に説明する実施の形態6から8においても同様である。
【0021】
図7に示す実施の形態6に係る構造体構成材料57について説明する。
構造体構成材料57は、仮想線で示す4つの構造体構成材料61を連結させるものである。
構造体構成材料57では、構造体構成材料61の外筒7をなす4つの側板13全ての両端部には一対の嵌合板55がそれぞれ連設されている。
【0022】
図8に示す、実施の形態7に係る保持構造について説明する。
保持部71は断面コの字状の樋状に形成された長尺部材であり、凹部73を有する。
この凹部73に仮想線で示す構造体構成材料3の一端部を嵌め込み、複数の構造体構成材料3を並べた状態で保持している。
【0023】
図9に示す実施の形態8に係る保持構造について説明する。
保持部75は断面H状の長尺部材であり、凹部73と凹部77が設けられている。
凹部73と凹部77に構造体構成材料3の一端部をそれぞれ嵌め込み、複数の構造体構成材料3を並べた状態で保持している。
【0024】
図10に示すように壁1を構成する構造体構成材料3の中空部5に水道、湯、電気配線等を通すための、或いは暖房用または冷房用の熱交換媒体(熱媒または冷媒)を循環させるためのパイプ81を通してもよい。
このようにすることで壁1内にパイプ81を容易に引き回すことができ、配管工事を簡単に行うことが可能となる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、構造体構成材料で構築できるものは壁だけに限られず、柱や梁や床等のその他の構造体を構築することも可能である。
構造体構成材料は、マグネシウム系合金で形成するだけでなく、アルミニウム系合金によって形成してもよい。
【0026】
外筒、内筒の形状は、断面四角形の角筒状や断面真円形の円筒状に限定されず、断面六角形等の断面四角形以外の多角形の筒状であってもよい。
実施の形態2と実施の形態4で示した構造体構成材料は、二段重ねだけでなく必要に応じ適宜その数を変更できる。
構造体構成材料は嵌合部と被嵌合部の形状は凸条に限らず、円柱状等の凸部と円形穴との組み合わせ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1に係る構造体構成材料で壁を構築する作業を説明するための図である。
【図2】実施の形態1に係る構造体構成材料によって構成した壁に外装材と内装材を備えた状態の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る構造体構成材料の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る構造体構成材料の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態4に係る構造体構成材料の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態5に係る構造体構成材料の斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態6に係る構造体構成材料の斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態7に係る構造体構成材料の保持構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態8に係る構造体構成材料の保持構造を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る構造体構成材料の使用方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0028】
1…壁
3…構造体構成材料 5…中空部
7…外筒 9…内筒
11…連結部 13…側板
15…天板 17…底板
20…柱 21、21…内側凸条
23、23…外側凸条 24…基礎
25…土台 26…外壁材
27…内装材 32…側板
31…構造体構成材料 33…共有板
41…構造体構成材料 42…中空部
43…外筒 45…内筒
47…連結部 49…構造体構成材料
57…構造体構成材料 61…構造体構成材料
62…保持部 64…側板
68…嵌合板 71…保持部
73…凹部 75… 保持部
77…凹部 81…パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の構造体を構成する構造体構成材料において、軽合金によって構成され、且つ中空部を有することを特徴とする構造体構成材料。
【請求項2】
請求項1に記載した構造体構成材料において、外側筒状体と、前記外側筒状体の内部に備えられた内側筒状体と、前記外側筒状体と内側筒状体とを連結する連結部とによって構成されていることを特徴とする構造体構成材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載した構造体構成材料において、嵌合部と被嵌合部が設けられており、互いに連結される構造体構成材料の一方の構造体構成材料の嵌合部が他方の構造体構成材料の被嵌合部に嵌合されることを特徴とする構造体構成材料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した構造体構成材料において、軽合金はマグネシウム系またはアルミニウム系合金で形成されていることを特徴とする構造体構成材料。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した構造体構成材料において、押し出し工法によって製造されたものであることを特徴とする構造体構成材料。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した構造体構成材料によって構造体の少なくとも一部が構成されたことを特徴とする建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−95885(P2010−95885A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266402(P2008−266402)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(308030503)
【Fターム(参考)】