説明

構造物の架設方法及び撤去方法

【課題】長尺かつ大型の構造物の高所への架設や高所からの撤去を、経済的に短時間で実施可能な構造物の架設方法及び撤去方法を提供する。
【解決手段】構造物12を縦長の自走式搬送台車15、16上に、複数の昇降用架台22〜24を介して載置する第1工程と、自走式搬送台車15、16により構造物12を支持部材10、11間に移動させ、構造物12の長手方向中央部を平面視して支持部材10、11間の中央に位置させる第2工程と、仮設架台32〜37が載置された自走式搬送台車15、16を構造物12の幅方向両側に配置し、各仮設架台32〜37に設けられた引き上げジャッキ38により昇降用架台22〜24を引き上げる第3工程と、構造物12の底部13、14が支持部材10、11の上方に位置するまで自走式搬送台車15、16を旋回移動させる第4工程と、構造物12を支持部材10、11の上に載せる第5工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所に架け渡される長尺かつ大型の構造物(例えば、橋梁や建屋内の天井クレーン等)の架設方法及び撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、跨道橋の架設方法として、例えば、特許文献1には、ジャッキ装置付架台(テーブルリフター)を載設した自走式トランスポーターを使用する方法が開示されている。具体的には、跨道橋の鋼桁をジャッキ装置付架台に載上して、ジャッキダウンした状態で架設現場まで運搬し、架設現場にてジャッキ装置付架台をジャッキアップして、跨道橋の鋼桁を橋台に架設する方法である。なお、撤去は、上記した架設方法とは逆の手順で行う。
しかし、上記したジャッキ装置付架台では、ジャッキアップできる高さに限度があり(例えば、2m程度)、高所にある橋梁や天井クレーンなどの長尺かつ大型の構造物の架設は不可能であった。このため、高所への構造物の架設は、自走式搬送台車であるユニットドーリで構造物を架設現場に搬入した後、大型クレーンを用いて架設する等の方法により、行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−98512号公報(図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、短時間で行うことが要求される橋梁の架設において、ユニットドーリと大型クレーンの双方を用いる方法では時間がかかり、また架設現場によっては、大型クレーンを設置できないという問題がある。
また、天井クレーンの架設は、天井クレーンが配置される建屋の屋根や壁に開口が必要な場合が多く、莫大な費用や工期が必要になる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、長尺かつ大型の構造物の高所への架設や高所からの撤去を、経済的に短時間で実施可能な構造物の架設方法及び撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る構造物の架設方法は、距離を有して対向配置された支持部材に、長尺かつ大型の構造物の長手方向両側をそれぞれ載せて、該構造物を高所に架け渡す構造物の架設方法であって、
前記構造物を、並べて配置された対となる縦長の第1の自走式搬送台車上に、該対となる第1の自走式搬送台車に跨がって所定間隔で載置された複数の昇降用架台を介して、該第1の自走式搬送台車の長手方向に向けて載置する第1工程と、
前記第1の自走式搬送台車により、前記構造物を前記対向する支持部材間に移動させ、前記構造物の長手方向中央部が、平面視して前記対向する支持部材間の中央に位置するように、前記構造物を前記昇降用架台と共に前記第1の自走式搬送台車から降ろす第2工程と、
複数の仮設架台が所定間隔でそれぞれ載置された対となる縦長の第2の自走式搬送台車を、平面視して前記構造物の幅方向両側に配置し、該構造物の幅方向両側に対向して配置された前記各仮設架台に各々設けられた引き上げジャッキによって、前記第2の自走式搬送台車の台部の上昇により前記構造物の長手方向の両側底部が前記支持部材の上端より高くなる高さ位置になるまで、前記昇降用架台を引き上げる第3工程と、
前記構造物の長手方向の両側底部が、前記支持部材の上端より高くなるまで前記第2の自走式搬送台車の台部を上昇させ、前記構造物の長手方向の両側底部が前記支持部材の上方に位置するまで、前記第2の自走式搬送台車を、前記構造物の長手方向中央部を中心として旋回移動させる第4工程と、
前記構造物を降下させて前記支持部材の上に載せる第5工程とを有する。
【0007】
第1の発明に係る構造物の架設方法において、前記構造物は、クラブトロリー及び該クラブトロリーが載置されるクレーンガーダーを有する天井クレーンであり、該天井クレーンを前記各支持部材上に配置されたレール上に載せることができる。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る構造物の撤去方法は、距離を有して対向配置された支持部材の高所位置に架け渡された長尺かつ大型の構造物を撤去する構造物の撤去方法であって、
複数の仮設架台が所定間隔でそれぞれ載置された対となる縦長の第1の自走式搬送台車を、平面視して前記構造物の幅方向両側に、該構造物の長手方向に向けて配置する第1工程と、
前記構造物の幅方向両側に対向して配置された前記仮設架台に各々設けられた引き上げジャッキによって、前記構造物を支持する昇降用架台を引き上げて該昇降用架台に前記構造物を載置し、更に該昇降用架台を該構造物の長手方向の両側底部が前記支持部材の上端より高くなるまで上昇させる第2工程と、
前記構造物の長手方向の両側底部が平面視して前記支持部材とは異なる位置まで、前記第1の自走式搬送台車を、前記構造物の長手方向中央部を中心として旋回移動させる第3工程と、
前記引き上げジャッキによって、前記構造物を降下させ、該構造物を前記昇降用架台を介して地面に配置する第4工程と、
前記構造物を、対となる縦長の第2の自走式搬送台車上に、前記昇降用架台を介して、該第2の自走式搬送台車の長手方向に向けて載置し搬送する第5工程とを有する。
【0009】
また、第2の発明に係る構造物の撤去方法において、前記構造物は、クラブトロリー及び該クラブトロリーが載置されるクレーンガーダーを有する天井クレーンであり、該天井クレーンを前記支持部材上に配置されたレール上から撤去することができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る構造物の架設方法は、複数の仮設架台が載置された縦長の第2の自走式搬送台車を構造物の幅方向両側に配置し、構造物の両側に対向して配置された各仮設架台に各々設けられた引き上げジャッキによって、構造物を昇降用架台を介して引き上げるため、例えば、クレーン車等の大型の重機が不要であり、簡単な構成で、構造物を高所まで上昇させることができる。
また、構造物の長手方向の両側底部が、支持部材の上端より高くなるまで第2の自走式搬送台車の台部を上昇(ジャッキアップ)させ、その後、構造物の長手方向の両側底部が支持部材の上方に位置するまで、第2の自走式搬送台車を、構造物の長手方向中央部を中心として旋回移動させ、この構造物を支持部材の上に載せるので、短時間で作業性よく、高所への構造物の設置を実施できる。
従って、長尺かつ大型の構造物の高所への架設を、経済的に短時間で実施できる。
【0011】
第2の発明に係る構造物の撤去方法は、複数の仮設架台が載置された縦長の第1の自走式搬送台車を構造物の幅方向両側に配置し、構造物の両側に対向して配置された各仮設架台に各々設けられた引き上げジャッキによって、昇降用架台に構造物を載せ、構造物の長手方向の両側底部が支持部材とは異なる位置まで、第1の自走式搬送台車を、構造物の長手方向中央部を中心として旋回移動させるので、例えば、クレーン車等の大型の重機が不要であり、短時間で作業性よく、支持部材からの構造物の撤去を実施できる。
また、各仮設架台に設けられた引き上げジャッキによって、昇降用架台に載せた構造物を降下させるため、簡単な構成で、構造物を高所から降下させることができる。
従って、長尺かつ大型の構造物の高所からの撤去を、経済的に短時間で実施できる。
【0012】
第1の発明に係る構造物の架設方法、及び第2の発明に係る構造物の撤去方法において、構造物が、クラブトロリー及びこのクラブトロリーが載置されるクレーンガーダーを有する天井クレーンである場合、クレーン車等の大型の重機を使用することなく、制限された場所や空間内で、構造物を高所に配置されたレール上に上架(架設)、又はレール上から撤去できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る構造物の架設方法の第1工程及び第2工程の平面図である。
【図2】同構造物の架設方法の第2工程の正面図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ同構造物の架設方法の第3工程の平面図、正面図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ同構造物の架設方法の第3工程の平面図、正面図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ同構造物の架設方法の第4工程の平面図、正面図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ同構造物の架設方法の第5工程の平面図、正面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る構造物の架設方法の第1工程及び第2工程の平面図である。
【図8】同構造物の架設方法の第2工程の平面図である。
【図9】同構造物の架設方法の第2工程の正面図である。
【図10】同構造物の架設方法の第3工程の平面図である。
【図11】同構造物の架設方法の第3工程の正面図である。
【図12】同構造物の架設方法の第4工程及び第5工程の平面図である。
【図13】図12のa−a矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図6に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る構造物の架設方法は、距離を有して対向配置された橋桁(支持部材の一例)10、11に、長尺かつ大型の橋梁(構造物の一例)12の長手方向の両側底部13、14をそれぞれ載せて、この橋梁12を高所に架け渡す方法である。以下、詳しく説明する。
【0015】
上架する橋梁12は、例えば、線路や道路を敷設するためのものであり、長さが、例えば、10〜30m程度、重量が、例えば、100〜1000トン程度のものである。
この橋梁12が架け渡される高さ(高所)は、例えば、7m以上(好ましくは、10m以上、更には13m以上)であり、従来のテーブルリフター(押し上げ式)では上昇不可能な高さである。なお、高さの上限は、特に限定されないが、現実的には30m以下(好ましくは、20m以下)程度である。
【0016】
まず、上記した橋梁12を縦長の対となる第1の自走式搬送台車の一例であるドーリ15、16上に載置する第1工程について説明する。
通常、架設する橋梁12が、架設現場(設置現場)17のすぐ近くで組立てられることはまれであり、図1に示すように、架設場所から離れた組立て作業場18で組立てられる場合が多い。
その場合、作業場18では、ドーリ15、16の台部20とほぼ同じ高さの支持台27、28を対となるように必要数並べ、それぞれの支持台27、28間に昇降用架台22〜24を架け渡し、その上で架設する橋梁12を組立てる。なお、対となる支持台27、28の間隔は、ドーリ15、16が後から、昇降用架台22〜24の下に入ることができる距離となっている。
【0017】
橋梁12の組立てが完了したら、作業場18にドーリ15、16を搬入し、縦に連結して2列のドーリ15、16の編成を組立てる。組立てられたドーリ15、16は、その台部20を低くし、昇降用架台22〜24の下に進入させた後、所定位置で台部20を上昇させ、支持台27、28が取り付けられた昇降用架台22〜24ごと橋梁12を架設現場17まで輸送する準備を行う。
なお、昇降用架台22〜24上での橋梁12の組立ては、橋梁12の長手方向の向きが、ドーリ15、16の長手方向となるように行う。このため、各昇降用架台22〜24はそれぞれ、橋梁12の幅方向(橋梁12の長手方向とは直交する方向)に、その両側が平面視して橋梁12の側方に突出している。
また、各ドーリ15、16の長さは、載置する橋梁12の長さや重量に応じて調整し、また、ドーリ15とドーリ16の間隔は、橋梁12の幅に応じて調整する。
【0018】
この縦長のドーリ15、16は、例えば、特開2001−180461号公報に開示された従来公知のものである。図1、図2に示すように、ドーリ15(ドーリ16も同様)は、下部に設けられ、それぞれ独立して方向を変えることができる多数の車輪19の上に、昇降可能な台部20を有し、後部には動力源21を設けている。なお、本ドーリは、リモコンで運転できるが、前部に運転席を取り付けて運転することもある。
このドーリ15は、載置物を昇降させ、任意の向きに車輪19を向けて移動することができ、また、任意の点に旋回中心を設定して、その回りを回動させ、車体の向きを変えることが可能である。
【0019】
各昇降用架台22〜24は、間隔を有して平行に配置される2本の支持ロッド25、26を連結することで構成され、ドーリ15、16に跨がって(橋梁12の長手方向と直交する方向に各昇降用架台22〜24の長手方向を合わせて)、橋梁12の長手方向に間隔(所定間隔)を有して配置されている。なお、昇降用架台22〜24の設置範囲は、対向する橋桁10、11の内側距離内とする。
この昇降用架台の個数(間隔)は、橋梁の長さや重量に応じて調整でき、橋梁12の長手方向に隣り合う昇降用架台の間隔は、同一であることが好ましいが、異なってもよい。
【0020】
次に、ドーリ15、16上に昇降用架台22〜24を介して載置された橋梁12を、その架設現場17まで搬送して、ドーリ15、16上から降ろす第2工程について説明する。
まず、各昇降用架台22〜24の支持台27、28が、地面29から離れるように、ドーリ15、16の台部20を上昇させる。
そして、ドーリ15、16を同期移動させ、図1、図2に示すように、橋梁12を対向する橋桁10、11間まで搬送し、橋梁12の長手方向中央部が、平面視して対向する橋桁10、11間の中央に位置するように、ドーリ15、16を停止する。
【0021】
ドーリ15、16を停止した後は、ドーリ15、16の台部20を低くし、各支持台27、28を地面29上に降ろして、橋梁12を各昇降用架台22〜24と共にドーリ15、16から降ろす。
ここで、橋梁12は、その長手方向が、平面視して橋桁10、11を結ぶ線とは直交する方向に配置しているが、橋梁12が橋桁10、11と接触しなければ、平面視して橋桁10、11を結ぶ線と交差するように配置することもできる。
【0022】
続いて、橋梁12を設置及び撤去設備30で高所へ上昇させる第3工程について説明する。
橋梁12の搬送が終了した各ドーリ15、16を、橋梁12の下方から退避させた後、図3(A)、(B)に示すように、小型クレーン車等の重機31を用いて、橋桁10の近傍に配置された複数の仮設架台32〜34を所定間隔で一方のドーリ15(第2の自走式搬送台車の一例)の台部20上に、橋桁11の近傍に配置された複数の仮設架台35〜37を所定間隔で他方のドーリ16(第2の自走式搬送台車の一例)の台部20上に、それぞれ配置する。
なお、各仮設架台32〜34と各仮設架台35〜37の設置ピッチは、上記した各昇降用架台22〜24の設置間隔に合わせている。
また、第1の自走式搬送台車及び第2の自走式搬送台車として、同一台車のドーリ15、16を使用したが、別々の台車を用いることもできる。
【0023】
設置及び撤去設備30は、仮設架台32〜37と、この各仮設架台32〜37に各々設けられたワイヤージャッキ(引き上げジャッキの一例)38と、このワイヤージャッキ38によって引き上げられる昇降用架台22〜24を有している。
仮設架台32、35は対となって昇降用架台22を、仮設架台33、36は対となって昇降用架台23を、仮設架台34、37は対となって昇降用架台24を、それぞれ昇降することができる。なお、対となる仮設架台の台数は、橋梁の長さや重量に応じて調整する。
【0024】
仮設架台32(仮設架台33〜37も同様)は、ベント材39を複数段積み上げて形成され、対となるドーリ15、16上に設置される。なお、仮設架台32は、積み上げられるベント材39の数によって、その高さ調整がなされる。
各ベント材39は、周知の固定ピン等によって連結され、複数段に積み上げられる。このベント材39は折り畳み式であり、分離され折り畳まれた状態にすることができるので、搬送の際の取扱いが容易である。
【0025】
仮設架台32〜37の上端部には、ジャッキ受フレーム40がそれぞれ設けられ、このジャッキ受フレーム40の両側(ドーリ15、16の長手方向の両側)であって、対となる仮設架台32、35、仮設架台33、36、仮設架台34、37が対向する側に、2つのワイヤージャッキ38が設けられている。
この各ワイヤージャッキ38のワイヤー41は、各昇降用架台22〜24の支持ロッド25、26の長手方向両側に設けられた取り付け部42、43に、取り付け取り外し可能な構成となっている。
なお、仮設架台32〜37とワイヤージャッキ38は、重機31により、予め組み立てておく。
【0026】
上記した仮設架台32〜37が載置されたドーリ15、16を、図3(A)、(B)に示す橋桁10側のように、橋梁12の幅方向両側に、橋梁12とは間隔を有して平行配置されるように移動させる。次に、ドーリ15、16を、平面視して橋梁12の幅方向両側に位置するように、図3(A)、(B)に示す矢印の方向に移動させ、各仮設架台32〜37を、各昇降用架台22〜24の対向する支持ロッド25、26間に配置する。このとき、図3(A)、(B)に示す橋桁11側のように、各仮設架台32〜37に設けられたワイヤージャッキ38の位置を、平面視して昇降用架台22〜24の支持ロッド25、26に設けられたワイヤー41の取り付け部42、43の位置に一致させている。
なお、このとき、ドーリ15、16は、動力源21が前後方向同一向きとなるように配置しているが、互いに逆向きとなるように配置してもよい。
【0027】
そして、各昇降用架台22〜24の取り付け部42、43に、ワイヤージャッキ38のワイヤー41を固定した後、図4(A)、(B)に示すように、各昇降用架台22〜24を、ワイヤージャッキ38により、次工程でのドーリ15、16の台部20の上昇によって橋梁12の長手方向の両側底部13、14が橋桁10、11の上端より高くなる高さ位置になるまで、水平状態を保った状態で引き上げる。具体的には、橋梁12の両側底部13、14が、橋桁10、11の上端と略同程度か、上端よりも高くなるまで引き上げる。
上記したように、ワイヤージャッキ38による橋梁12の引き上げ作業が完了した後は、対となるドーリ15、16に、互いの動きを拘束するワイヤーロープ又はビーム等の接続材44を設置しているが、必要に応じて(例えば、仮設架台28〜33の高さに応じて)、接続材44を設置しなくてもよい。
【0028】
続いて、対となるドーリ15、16を旋回移動させる第4工程について説明する。
橋梁12のワイヤージャッキ38による引き上げ作業が完了した後、橋梁12の底部13、14が、橋桁10、11の上端より高くなるまでドーリ15、16の台部20を上昇(ジャッキアップ)させる。そして、図5(A)、(B)に示すように、橋梁12の底部13、14が平面視して橋桁10、11の上方に位置するまで、ドーリ15、16を、橋梁12の長手方向中央部を中心として旋回移動(ここでは、旋回角度が90度)させる。
なお、各昇降用架台22〜24の設置範囲は、前記したように、対向する橋桁10、11の内側距離内としているため、橋梁12の旋回時に、両側に位置する昇降用架台22、24が橋桁10、11に接触することはない。
【0029】
最後に、橋梁12を橋桁10、11に設置する第5工程について説明する。
ドーリ15、16の旋回作業が完了した後、図6(A)、(B)に示すように、橋梁12を降下させ、一方の底部13を橋桁10の上に、また他方の底部14を橋桁11の上に、それぞれ載せる。
ここで、橋梁12の降下方法としては、ドーリ15、16のジャッキ機能を使用し、台部20を下降させることで実施できるが、ワイヤージャッキ38を使用して、橋梁12を降下させてもよい。
なお、橋梁12を橋桁10、11に載せる際の位置の微調整は、ドーリ15、16を前後左右に微速移動させることで行う。その際、安全対策として、橋梁12が橋桁10、11の上から大きく逸脱することを防ぐため、ワイヤーロープやストッパ等を橋梁12と橋桁10、11の間に設置することが好ましいが、この方法に限定されるものではない。
【0030】
このように、橋梁12の設置作業が完了した後は、ワイヤージャッキ38を使用して、各昇降用架台22〜24を地面29まで降下させ、昇降用架台22〜24に取り付けたワイヤージャッキ38のワイヤー41を取り外す。
通常、仮設架台35〜37を載せた片方のドーリ16は、架設現場17から退出する場合、架設が完了した橋梁12の下を通過する必要がある場合がほとんどであると考えられる。そのときに、橋梁12に接触しないよう、必要に応じて重機31を利用して各仮設架台35〜37の一部又は全部を解体し、これをドーリ16上に仮置きし、ドーリ15、16を架設現場17から移動(退出)させる。なお、支持台27、28と一体となった各昇降用架台22〜24は、重機31を使うか、又は各仮設架台35〜37を降ろし終わったドーリ15、16の上に仮置きし、架設現場17から撤去する。
以上の方法により、橋梁12の架設作業が完了する。
【0031】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る構造物の撤去方法について説明するが、この撤去方法は基本的に、前記した構造物の架設方法とは逆の手順で行うため、図1〜図6を参照しながら、同一部材には同一番号を付して説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る構造物の撤去方法は、距離を有して対向配置された橋桁10、11の高所位置に架け渡された長尺かつ大型の橋梁12を、橋桁10、11から撤去する方法である。
【0032】
まず、設置及び撤去設備30を、橋梁12の撤去現場(架設現場17)に配置する第1工程について説明する。
ここでは、図6(A)、(B)に示すように、支持台27、28と一体である橋梁12を受ける昇降用架台22〜24を、予め仮設架台32〜37を載せる前のドーリ15、16、又は重機31により、長手方向の両側底部13、14が橋桁10、11上に載置された橋梁12の橋桁10、11間に位置する部分の下方に、橋梁12の長手方向に間隔(所定間隔)を有して配置する。そして、重機31を用いて、複数の仮設架台32〜34を一方のドーリ15の台部20上に、複数の仮設架台35〜37を他方のドーリ16の台部20上に、それぞれ配置し、各ドーリ15、16を、平面視して橋梁12の幅方向両側に、橋梁12の長手方向にその向きを揃えて移動させ、停止させる。
【0033】
上記した仮設架台32〜37の上端部には、2つのワイヤージャッキ38が設けられている。なお、仮設架台32〜37とワイヤージャッキ38は、重機31により、予め組み立てておく。
この各仮設架台32〜34と各仮設架台35〜37の設置ピッチは、上記した各昇降用架台22〜24の間隔に合わせているため、各仮設架台32〜37を、各昇降用架台22〜24の対向する支持ロッド25、26間に配置できる。このとき、各仮設架台32〜37に設けられたワイヤージャッキ38の位置を、平面視して昇降用架台22〜24の支持ロッド25、26に設けられたワイヤー41の取り付け部42、43の位置に一致させている。
【0034】
次に、橋梁12を設置及び撤去設備30で撤去する第2工程について説明する。
各昇降用架台22〜24の取り付け部42、43に、ワイヤージャッキ38のワイヤー41を固定した後、各昇降用架台22〜24を、ワイヤージャッキ38により水平状態を保った状態で引き上げ、橋梁12の下面に各昇降用架台22〜24の上面を接触させる。このとき、橋梁12の荷重のほとんどが各昇降用架台22〜24にかかるまで、ジャッキ引き上げ操作を行う。そして、橋梁12と橋桁10、11との接続を取り外す。
このように、橋梁12のワイヤージャッキ38による引き上げ作業が完了した後、橋梁12の底部13、14が、橋桁10、11の上端より高くなるまでドーリ15、16の台部20を上昇(ジャッキアップ)させる。なお、この上昇には、ワイヤージャッキ38を使用してもよい。
【0035】
続いて、対となるドーリ15、16を旋回移動させる第3工程について説明する。
図4(A)、(B)、図5(A)に示すように、橋梁12の底部13、14が平面視して橋桁10、11とは異なる位置(整合しない位置)まで、対となるドーリ15、16を、橋梁12の長手方向中央部を中心として旋回移動させる。
ここで、ドーリ15、16の旋回は、橋梁12の長手方向が、平面視して橋桁10、11を結ぶ線とは直交する方向となるまで行っている(ここでは、旋回角度が90度)。しかし、橋梁12の底部13、14が平面視して橋桁10、11と異なる位置であれば、橋梁12の長手方向が、平面視して橋桁10、11を結ぶ線と交差するように行ってもよい。
【0036】
次に、橋梁12を高所から降下させる第4工程について説明する。
ドーリ15、16の旋回移動が完了した後、橋梁12が載置された各昇降用架台22〜24を、ワイヤージャッキ38により水平状態を保った状態で降下させ、図3(B)に示すように、橋梁12を各昇降用架台22〜24及び支持台27、28を介して地面29に載置する。
最後に、橋梁12を撤去現場から搬送する第5工程について説明する。
橋梁12を地面29まで降下させた後、各昇降用架台22〜24からワイヤージャッキ38のワイヤー41を取り外す。
【0037】
次に、仮設架台32〜37が載置されたドーリ15、16を、図3(A)、(B)に示す橋桁10側のように、橋梁12の幅方向両側に、橋梁12とは間隔を有するように移動させた後、撤去現場から退避させ、重機31を用いて、仮設架台32〜37をドーリ15、16の台部20上からそれぞれ取り外す。
そして、このドーリ15、16の台部20を下降させ、ドーリ15、16を、橋梁12を支持する昇降用架台22〜24の下方に進入させた後、各昇降用架台22〜24の支持台27、28が、地面29から離れるように、ドーリ15、16の台部20を上昇させる。
【0038】
このとき、橋梁12を、ドーリ15、16上に、各昇降用架台22〜24を介して、ドーリ15、16の長手方向にその向きを揃えて載置する。
そして、橋梁12を載置したドーリ15、16を同期移動させ、図1に示すように、橋梁12を作業場18まで搬送して、ドーリ15、16を停止した後、必要に応じて、橋梁12の解体作業を行う。
以上の方法により、橋梁12の撤去作業が完了する。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る構造物の架設方法について説明するが、この架設方法は基本的に、前記した第1の構造物の架設方法と同様であるため、同一部材には同一番号を付し、詳しい説明を省略する。
図7〜図13に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る構造物の架設方法は、建屋50の側壁部を構成する支持部材51、52上に配置されたレール53、54上に、長尺かつ大型の天井クレーン(構造物の一例)55の長手方向の両側に設けられたサドル(底部の一例)56、57をそれぞれ載せて、この天井クレーン55を高所に架け渡す方法である。
【0040】
レール53、54上に設置される天井クレーン55は、平行配置されたレール53、54の上に載せられるクレーンガーダー58と、このクレーンガーダー58に載置され、荷を吊ってクレーンガーダー58上を移動するクラブトロリー59を有している。
クレーンガーダー58は、レール53、54の上に間隔を有して平行配置される長尺の第1、第2のガーダー60、61を有している。この第1、第2のガーダー60、61は、レール53、54にそれぞれ移動可能に取り付けられるサドル56、57に両端部が連結され、レール53、54に沿った移動が可能になる。なお、レール53、54は、同一高さに配置され、第1、第2のガーダー60、61は、レール53、54に載った状態で水平姿勢となる。
【0041】
第1のガーダー60(第2のガーダー61も同様)は、サドル56、57に連結される両端部、即ち連結部が他の部分に比べて薄くなっている。
また、第1、第2のガーダー60、61の長手方向の長さは、レール53、54間の距離より長く、第1、第2のガーダー60、61がレール53、54に直交する向きでサドル56、57に固定される。
そして、クラブトロリー59は、下部に複数の車輪62を備えている。このクラブトロリー59は、車輪62を第1、第2のガーダー60、61の上部に接した状態で、第1、第2のガーダー60、61に載せられ、遠隔操作によって、第1、第2のガーダー60、61の長手方向に沿って移動する。
【0042】
まず、上記した天井クレーン55を縦長のドーリ15、16上に載置する第1工程について説明する。
図7に示すように、建屋50外に、対となるドーリ15、16を、その幅方向に間隔を有して平行に並べて配置した後、ドーリ15、16の台部20上に、複数(ここでは、2つ)の昇降用架台63、64(前記した昇降用架台22〜24と同様の機能を有する)を載せ、この昇降用架台63、64上に天井クレーン55を載置する。
【0043】
天井クレーン55は、クレーンガーダー58とクラブトロリー59が分離し、別々に積載できるため、架設現場65(図8参照)近くで大型クレーンを使ってドーリ15、16上に積載する場合が多いが、前記した橋梁12の場合のように、昇降用架台63、64上で予め組み立てることもできる。なお、天井クレーン55は、その長手方向の向きを、ドーリ15、16の長手方向に揃えて載置する。また、ドーリ15、16の台部20は、搬送に都合のよい高さ(台部20の最大高さ位置と最低高さ位置の中間高さ)に調整している。
【0044】
昇降用架台63、64は、ドーリ15、16に跨がって(天井クレーン55の長手方向と直交する方向に各昇降用架台63、64の長手方向を合わせて)、天井クレーン55の長手方向に間隔(所定間隔)を有して配置されている。なお、昇降用架台63、64の設置範囲は、対向する支持部材51、52(レール53、54)の内側距離内とする。
この昇降用架台の個数(間隔)は、天井クレーン55の長さや重量に応じて調整できる。
また、各昇降用架台63、64はそれぞれ、天井クレーン55の幅方向(天井クレーン55の長手方向とは直交する方向)に、その両側が平面視して天井クレーン55の側方に突出するように配置されている。
【0045】
次に、ドーリ15、16上に昇降用架台63、64を介して載置された天井クレーン55を、その架設現場65まで搬送して、ドーリ15、16上から降ろす第2工程について説明する。
まず、重機31により、仮設架台66〜69(仮設架台32〜37と同様の機能を有する)とワイヤージャッキ38を予め組み立て、図7、図8に示すように、架設現場65の対向する支持部材51、52間であって、一方の支持部材51側に複数の仮設架台66、67を所定間隔で、他方の支持部材52側に複数の仮設架台68、69を所定間隔で、それぞれ配置する。
【0046】
このとき、各仮設架台66〜69は、搬送される天井クレーン55の長手方向中央部が、平面視して対向する支持部材51、52間の中央に位置するように設置する。なお、各仮設架台66〜69は、対となる仮設架台66と仮設架台68の間隔、及び対となる仮設架台67と仮設架台69の間隔を、天井クレーン55の幅に合わせ、隣り合う仮設架台66と仮設架台67の間隔、及び隣り合う仮設架台68と仮設架台69の間隔を、隣り合う昇降用架台63と昇降用架台64の間隔に合わせた状態で、門型架台70上に設置されている。なお、各門型架台70は、ドーリ15、16が進入可能な空間を有している。
【0047】
次に、ドーリ15、16を同期移動させ、図7に示すように、対となる仮設架台66と仮設架台68の間に昇降用架台63が、対となる仮設架台67と仮設架台69の間に昇降用架台64が、それぞれ配置されるように、天井クレーン55を搬送して、ドーリ15、16を停止する。
ドーリ15、16を停止した後は、ドーリ15、16の台部20を低くし、予め地面71上に配置された対となる仮置台72上に昇降用架台63、64を降ろして、天井クレーン55を各昇降用架台63、64と共にドーリ15、16から降ろす。
【0048】
ここで、天井クレーン55は、その長手方向が、平面視して支持部材51、52とは平行となるように配置しているが、天井クレーン55が支持部材51、52と接触しなければ、平面視して支持部材51、52と交差する方向に配置することもできる。
また、上記したように、各仮設架台66〜69を、予め定位置にセットしておいた場合は、作業時間の短縮が図れるが、この場合、昇降用架台の長手方向両側がドーリ15、16の進入の支障となるため、昇降用架台を接続組み立て式とし、搬入時は仮設架台66と仮設架台68との間、及び仮設架台67と仮設架台69との間を通過できる長さとし、ドーリ15、16を停止した後、図8、図9に示すように、昇降用架台の接続及び組み立て、即ち長さの延長を行うことが好ましい。
【0049】
続いて、天井クレーン55を設置及び撤去設備30で高所へ上昇させる第3工程について説明する。
天井クレーン55の搬送が終了した各ドーリ15、16を、天井クレーン55の下方から退避させた後、図10、図11に示すように、一方の支持部材51側の門型架台70の下方にドーリ15を、他方の支持部材52側の門型架台70の下方にドーリ16を、それぞれ進入させる。このとき、ドーリ15、16は、その移動範囲(図10の二点鎖線で示す旋回領域)を考慮して、動力源21が互いに逆向きとなるように配置しているが、同一向きとなるように配置してもよい。
なお、仮置台72は、各昇降用架台63、64と接合し、各昇降用架台63、64と一体で上昇させてもよい。また、各昇降用架台63、64と接合しない場合は、天井クレーン55の上架後、仮置台72は地面に残ることになり、後に行うドーリ15、16の旋回工程の支障になるので、小型重機31等で撤去する。
【0050】
そして、図10、図11に示すように、各昇降用架台63、64の取り付け部42、43に、ワイヤージャッキ38のワイヤー41を固定した後、各昇降用架台63、64を、ワイヤージャッキ38により、ドーリ15、16の台部20の上昇によって天井クレーン55のサドル56、57がレール53、54の上端より高くなる高さ位置になるまで、水平状態を保った状態で引き上げる。具体的には、天井クレーン55のサドル56、57が、レール53、54の上端と略同程度か、上端よりも高くなるまで引き上げる。
上記したように、ワイヤージャッキ38による天井クレーン55の引き上げ作業が完了した後は、各仮設架台66〜69に、互いの動きを拘束するワイヤーロープ等の接続材73を設置し、対向配置された門型架台70に、互いの動きを拘束する継ぎ板材74を設置しているが、必要に応じて(例えば、仮設架台66〜69の高さに応じて)、設置しなくてもよい。
【0051】
続いて、対となるドーリ15、16を旋回移動させる第4工程について説明する。
天井クレーン55のワイヤージャッキ38による引き上げ作業が完了した後、ドーリ15、16のジャッキ機能を使用して、天井クレーン55のサドル56、57が、レール53、54の上端より高くなるまで、門型架台70を地面71から持ち上げる。
そして、図12、図13に示すように、対となるドーリ15、16を、天井クレーン55のサドル56、57が、平面視してレール53、54の上方に位置するまで、天井クレーン55の長手方向中央部を中心として旋回移動(ここでは、旋回角度が90度)させる。
なお、各昇降用架台63、64の設置範囲は、前記したように、対向するレール53、54の内側距離内としているため、天井クレーン55の旋回時に、昇降用架台63、64がレール53、54に接触することはない。
【0052】
最後に、天井クレーン55をレール53、54に設置する第5工程について説明する。
ドーリ15、16の旋回作業が完了した後、図13に示すように、天井クレーン55を降下させ、一方のサドル56をレール53の上に、また他方のサドル57をレール54の上に、それぞれ載せる。
ここで、天井クレーン55の降下方法としては、ドーリ15、16のジャッキ機能を使用し、台部20を下降させることで実施できるが、ワイヤージャッキ38を使用して、天井クレーン55を降下させてもよい。
なお、天井クレーン55をレール53、54上に載せる際の位置の微調整は、ドーリ15、16を微速で前後走行させることで行う。
【0053】
このように、天井クレーン55の設置作業が完了した後は、ワイヤージャッキ38を使用して、各昇降用架台63、64を地面71まで降下させ、昇降用架台63、64に取り付けたワイヤージャッキ38のワイヤー41を取り外す。
そして、各仮設架台66〜69が天井クレーン55に接触しないように、必要に応じて、重機31を使用し各仮設架台66〜69の一部又は全部を解体して、これをドーリ15、16上に仮置きし、ドーリ15、16を架設現場65から移動(退出)させる。なお、各昇降用架台63、64は、重機31を使うか又はドーリ15、16上に仮置きして、架設現場65から撤去する。
以上の方法により、天井クレーン55の架設作業が完了する。
【0054】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る構造物の撤去方法について説明するが、この撤去方法は基本的に、前記した構造物の架設方法とは逆の手順で行うため、図7〜図13を参照しながら、同一部材には同一番号を付して説明する。
本発明の第2の実施の形態に係る構造物の撤去方法は、距離を有して対向配置された支持部材51、52の高所位置にあるレール53、54に架け渡された長尺かつ大型の天井クレーン55を撤去する方法である。
【0055】
まず、複数の仮設架台66〜69が載置されたドーリ15、16を、天井クレーン55の撤去現場(架設現場65)に配置する第1工程について説明する。
ここでは、天井クレーン55を受ける昇降用架台63、64を、予め小型クレーン車等の重機31により、図12、図13に示すように、レール53、54間に位置する天井クレーン55の下方に、天井クレーン55の長手方向に間隔を有して配置する。そして、重機31を用いて、門型架台70を介して仮設架台66、67を一方のドーリ15の台部20上に、門型架台70を介して仮設架台68、69を他方のドーリ16の台部20上に、それぞれ配置し、各ドーリ15、16を、平面視して天井クレーン55の幅方向両側に、天井クレーン55の長手方向にその向きを揃えて移動させ、停止させる。
【0056】
上記した仮設架台66〜69の上端部には、2つのワイヤージャッキ38が設けられている。なお、仮設架台66〜69とワイヤージャッキ38は、重機31により、予め組み立てておく。
この各仮設架台66、67と各仮設架台68、69の設置ピッチは、上記した各昇降用架台63、64の間隔に合わせているため、各仮設架台66〜69を、各昇降用架台63、64の対向する支持ロッド25、26間に配置できる。このとき、各仮設架台66〜69に設けられたワイヤージャッキ38は、平面視して昇降用架台63、64の支持ロッド25、26に設けられたワイヤー41の取り付け部42、43に一致させている。
【0057】
次に、天井クレーン55を支持部材51、52のレール53、54上から撤去する第2工程について説明する。
各昇降用架台63、64の取り付け部42、43に、ワイヤージャッキ38のワイヤー41を固定した後、各昇降用架台63、64を、ワイヤージャッキ38により水平状態を保った状態で引き上げ、天井クレーン55の下面に各昇降用架台63、64の上面を接触させる。このとき、天井クレーン55の荷重のほとんどが各昇降用架台63、64にかかるまで、ジャッキ引き上げ操作を行い、各昇降用架台63、64上に天井クレーン55を載置する。そして、レール53、54とサドル56、57の接触を外す。
更に、各昇降用架台63、64を、水平状態を保った状態で、ドーリ15、16のジャッキ機能を使って更に上昇させ、図12、図13に示すように、各昇降用架台63、64で天井クレーン55を支持する。この上昇方法としては、原則ドーリ15、16のジャッキ機能を使うが、ワイヤージャッキ38の機能も使用できる。
【0058】
続いて、対となるドーリ15、16を旋回移動させる第3工程について説明する。
図10、図11に示すように、天井クレーン55のサドル56、57が平面視してレール53、54とは異なる位置(整合しない位置)まで、対となるドーリ15、16を、天井クレーン55の長手方向中央部を中心として旋回移動させる。
ここで、ドーリ15、16の旋回は、天井クレーン55の長手方向が、平面視してレール53、54に平行となるまで行っている(ここでは、旋回角度が90度)。しかし、天井クレーン55のサドル56、57が平面視してレール53、54と異なる位置であれば、天井クレーン55の長手方向が、平面視してレール53、54の長手方向と交差するように行ってもよい。
【0059】
次に、天井クレーン55を高所から降下させる第4工程について説明する。
ドーリ15、16の旋回移動が完了した後、重機31を用いて所定の場所に仮置台72を設置し、ドーリ15、16の台部20を降下させ、門型架台70を地面71に載置した後、天井クレーン55が載置された各昇降用架台63、64を、ワイヤージャッキ38により水平状態を保った状態で降下させ、図8、図9に示すように、天井クレーン55を各昇降用架台63、64と共に、仮置台72を介して地面71に載置する。
最後に、天井クレーン55を撤去現場から搬送する第5工程について説明する。
天井クレーン55を地面71まで降下させた後、各昇降用架台63、64からワイヤージャッキ38のワイヤー41を取り外す。
【0060】
次に、ドーリ15、16を、天井クレーン55を支持する昇降用架台63、64の下方に進入させ、各昇降用架台63、64が、仮置台72から離れるように、ドーリ15、16の台部20を上昇させる。
このとき、天井クレーン55をドーリ15、16上に、各昇降用架台63、64を介して、ドーリ15、16の長手方向にその向きを揃えて載置する。
そして、天井クレーン55を載置したドーリ15、16を同期移動させ、図7に示すように、天井クレーン55を建屋50外まで搬送する。
【0061】
なお、各仮設架台66〜69は、天井クレーン55を建屋50外まで搬送した後、ドーリ15、16を使用して建屋50外まで搬送して撤去できるが、天井クレーン55を地面71まで降下させた後(第4工程終了後)、ドーリ15、16に載置した状態で、建屋50外まで搬送して撤去することもできる。
以上の方法により、天井クレーン55の撤去作業が完了する。
以上に示したように、本発明の構造物の架設方法及び撤去方法を用いることで、長尺かつ大型の構造物の高所への架設や高所からの撤去を、経済的に短時間で実施できる。
【0062】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の構造物の架設方法及び撤去方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、構造物の一例として、橋梁と天井クレーンについて説明したが、長尺かつ大型であれば、これに限定されるものではない。特に、長時間、工場の稼働を停止することができない場所や、長時間の通行止めができず、なおかつ狭隘なため、大型クレーンが使えない場所における構造物の架設や撤去については、本発明の効果がより顕著となる。
【0063】
そして、前記実施の形態においては、自走式搬送台車としてドーリを使用した場合について説明したが、構造物を載置して移動及び旋回が可能な自走式搬送台車であれば、これに限定されない。
また、第1、第2工程で使う自走式搬送台車は、(その場旋回が可能な)ドーリのような自走式搬送台車でなくても搬送が可能なので、別の台車を使用することもできる。つまり、構造物の架設において、第1、第2工程では、その場旋回のできない一般的な搬送台車を使い、第3〜第5工程でその場旋回ができるドーリのような搬送車両を使えば、限られた時間内での自走式搬送台車への仮設架台の設置作業が可能となり、構造物の架設に要する作業時間の更なる短縮が図れる。また、構造物の撤去においても、第1〜第4工程では、その場旋回ができるドーリのような搬送車両を使い、第5工程でその場旋回のできない一般的な搬送台車を使えば、自走式搬送台車からの仮設架台の撤去作業が不要となり、構造物の撤去に要する作業時間の更なる短縮が図れる。
【符号の説明】
【0064】
10、11:橋桁(支持部材)、12:橋梁(構造物)、13、14:底部、15、16:ドーリ(第1、第2の自走式搬送台車)、17:架設現場、18:作業場、19:車輪、20:台部、21:動力源、22〜24:昇降用架台、25、26:支持ロッド、27、28:支持台、29:地面、30:設置及び撤去設備、31:重機、32〜37:仮設架台、38:ワイヤージャッキ(引き上げジャッキ)、39:ベント材、40:ジャッキ受フレーム、41:ワイヤー、42、43:取り付け部、44:接続材、50:建屋、51、52:支持部材、53、54:レール、55:天井クレーン(構造物)、56、57:サドル(底部)、58:クレーンガーダー、59:クラブトロリー、60:第1のガーダー、61:第2のガーダー、62:車輪、63、64:昇降用架台、65:架設現場、66〜69:仮設架台、70:門型架台、71:地面、72:仮置台、73:接続材、74:継ぎ板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を有して対向配置された支持部材に、長尺かつ大型の構造物の長手方向両側をそれぞれ載せて、該構造物を高所に架け渡す構造物の架設方法であって、
前記構造物を、並べて配置された対となる縦長の第1の自走式搬送台車上に、該対となる第1の自走式搬送台車に跨がって所定間隔で載置された複数の昇降用架台を介して、該第1の自走式搬送台車の長手方向に向けて載置する第1工程と、
前記第1の自走式搬送台車により、前記構造物を前記対向する支持部材間に移動させ、前記構造物の長手方向中央部が、平面視して前記対向する支持部材間の中央に位置するように、前記構造物を前記昇降用架台と共に前記第1の自走式搬送台車から降ろす第2工程と、
複数の仮設架台が所定間隔でそれぞれ載置された対となる縦長の第2の自走式搬送台車を、平面視して前記構造物の幅方向両側に配置し、該構造物の幅方向両側に対向して配置された前記各仮設架台に各々設けられた引き上げジャッキによって、前記第2の自走式搬送台車の台部の上昇により前記構造物の長手方向の両側底部が前記支持部材の上端より高くなる高さ位置になるまで、前記昇降用架台を引き上げる第3工程と、
前記構造物の長手方向の両側底部が、前記支持部材の上端より高くなるまで前記第2の自走式搬送台車の台部を上昇させ、前記構造物の長手方向の両側底部が前記支持部材の上方に位置するまで、前記第2の自走式搬送台車を、前記構造物の長手方向中央部を中心として旋回移動させる第4工程と、
前記構造物を降下させて前記支持部材の上に載せる第5工程とを有することを特徴とする構造物の架設方法。
【請求項2】
請求項1記載の構造物の架設方法において、前記構造物は、クラブトロリー及び該クラブトロリーが載置されるクレーンガーダーを有する天井クレーンであり、該天井クレーンを前記各支持部材上に配置されたレール上に載せることを特徴とする構造物の架設方法。
【請求項3】
距離を有して対向配置された支持部材の高所位置に架け渡された長尺かつ大型の構造物を撤去する構造物の撤去方法であって、
複数の仮設架台が所定間隔でそれぞれ載置された対となる縦長の第1の自走式搬送台車を、平面視して前記構造物の幅方向両側に、該構造物の長手方向に向けて配置する第1工程と、
前記構造物の幅方向両側に対向して配置された前記仮設架台に各々設けられた引き上げジャッキによって、前記構造物を支持する昇降用架台を引き上げて該昇降用架台に前記構造物を載置し、更に該昇降用架台を該構造物の長手方向の両側底部が前記支持部材の上端より高くなるまで上昇させる第2工程と、
前記構造物の長手方向の両側底部が平面視して前記支持部材とは異なる位置まで、前記第1の自走式搬送台車を、前記構造物の長手方向中央部を中心として旋回移動させる第3工程と、
前記引き上げジャッキによって、前記構造物を降下させ、該構造物を前記昇降用架台を介して地面に配置する第4工程と、
前記構造物を、対となる縦長の第2の自走式搬送台車上に、前記昇降用架台を介して、該第2の自走式搬送台車の長手方向に向けて載置し搬送する第5工程とを有することを特徴とする構造物の撤去方法。
【請求項4】
請求項3記載の構造物の撤去方法において、前記構造物は、クラブトロリー及び該クラブトロリーが載置されるクレーンガーダーを有する天井クレーンであり、該天井クレーンを前記支持部材上に配置されたレール上から撤去することを特徴とする構造物の撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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