説明

構造物への荷重軽減構造

【課題】一般的地盤材料より軽量かつ低コストで、しかも耐熱性、強度および柔軟性に優れ、さらには透水性にも優れた効果を奏する、橋台やその杭さらには岸壁等の構造物への荷重軽減構造を提供する。
【解決手段】構造物11にかかる荷重を軽減するために、構造物11に対する裏込め材として気泡混合軽量土10が使用されている、構造物への荷重軽減構造1である。破砕ゴム片4の集合体が、構造物11の裏込め材の気泡混合軽量土20内に緩衝材として埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物への荷重軽減構造に関し、詳しくは、橋台やその杭さらには岸壁等の構造物にかかる荷重を軽減するために、該構造物に対する裏込め材として気泡混合軽量土が使用されている、構造物への荷重軽減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤の箇所において、橋台やその杭さらには岸壁等の構造物にかかる荷重を軽減するために裏込め材を使用することが一般に行われている。かかる裏込め材には、セメントおよび気泡剤を主原料にした気泡混合軽量土が用いられている。しかしながら、気泡混合軽量土のみでは橋台等の構造物背面に作用する土圧がなお発生するため、気泡混合軽量土に埋設される緩衝材が一般に併用されている。
【0003】
この緩衝材は軽量でなおかつ強度のある材料が好ましい。また、地盤の不同沈下により撓みや伸縮が発生しやすいため、柔軟性のある材料が好ましい。そのため、現在、強度および軽量性を有する発泡プラスチック、例えば、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)が緩衝材として一般的に用いられている。
【0004】
EPS自体は、以前より、盛土や車輌重量の荷重に耐え、沈下や側方流動を起こし難くする地盤改良体などの原材料として広く知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−212619号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、EPSは高価であり、またEPSを気泡混合軽量土内において橋台等の構造物背面に緩衝材として使用する場合には、当該気泡混合軽量土の固化熱によりEPSが溶融しないようにする必要があった。このため、従来石膏ボード等の断熱材の併設が必要であり、作業性等の問題もあった。さらに、EPSを気泡混合軽量土内に埋設した場合には、透水性の観点からも改良の余地が残されていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、一般的地盤材料より軽量かつ低コストで、しかも耐熱性、強度および柔軟性に優れ、さらには透水性にも優れた効果を奏する、橋台やその杭さらには岸壁等の構造物への荷重軽減構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、EPS緩衝材の代替として破砕ゴム片を用いることにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の構造物への荷重軽減構造は、構造物にかかる荷重を軽減するために、該構造物に対する裏込め材として気泡混合軽量土が使用されている、構造物への荷重軽減構造において、
破砕ゴム片の集合体が、前記構造物の裏込め材の気泡混合軽量土内に緩衝材として埋め込まれていることを特徴とするものである。
本発明の、構造物への荷重軽減構造においては、前記集合体が、好ましくは破砕ゴム片同士をバインダー樹脂により空隙を保ったまま互いに固着させて形成した破砕ゴム片ブロックであり、より好ましく前記バインダー樹脂が熱硬化性樹脂である。あるいはまた、前記集合体が、破砕ゴム片が収納された土嚢であってもよい。また、前記破砕ゴム片は、好ましくは廃タイヤの破砕片である。さらに、前記集合体は、前記気泡混合軽量土内において前記構造物に対し土圧がかかる背面に配設され、前記緩衝材を構成することが好ましい。さらにまた、前記構造物を好適には橋台または岸壁とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一般的地盤材料より軽量かつ低コストで、しかも耐熱性、強度および柔軟性に優れ、さらには透水性にも優れた効果を奏する、橋台やその杭さらには岸壁等の構造物への荷重軽減構造が得られる。また、廃タイヤをリサイクルして用いることでコストの削減にもつながり、大量使用にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適実施形態に係る橋台への荷重軽減構造を示す断面概念図である。
【図2】破砕ゴム片ブロックの斜視図である。
【図3】本発明の他の好適実施形態に係る岸壁への荷重軽減構造を示す断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適実施の形態を図面に基づいて説明する。
図示する橋台11への荷重軽減構造1は、気泡混合軽量土10により橋台11に作用する土圧により、また地盤Aの不同沈下により変形する気泡混合軽量土10の作用により、橋台11および基礎杭14へかかる荷重を低減させるために、軽量な裏込め材として、セメント及び気泡剤を主原料にした気泡混合軽量土10が盛土15との間に用いられている。この気泡混合軽量土10としては地盤改良に慣用されている既知のものを適宜用いることができる。この気泡混合軽量土10の上面には舗装12が配設されている。
【0013】
図示する好適例では、気泡混合軽量土10により橋台11の背面に発生する土圧を更に軽減するための緩衝材として、破砕ゴム集合体としての破砕ゴム片構造物2が気泡混合軽量土10内に埋め込まれている。この破砕ゴム片構造物2は、破砕ゴム片4同士を角柱状に樹脂バインダーにより空隙を保ったまま互いに固着させて形成した破砕ゴム片ブロック3を積み重ねて形成されたものである。
【0014】
具体的には、破砕ゴム片構造物2は、気泡混合軽量土10内において橋台11に対し土圧がかかる背面に配設され、緩衝材としての機能を果たす。この破砕ゴム片構造物2は、図2に示す破砕ゴム片ブロック3を複数垂直状態に連結した垂直部5と、破砕ゴム片ブロック3を複数水平状態に連結した水平部6とからなり、全体が略T字状の断面形状に形成されている。破砕ゴム片構造物2の垂直部5の基端は橋台11の背面にて、基端側面に接して立設されている。また、水平部6上面には踏掛け板13が配設されている。このように破砕ゴム片構造物2を設けることで、気泡混合軽量土10により橋台11に作用する土圧により、また地盤の不同沈下により変形する気泡混合軽量土10の作用により橋台11および基礎杭14へかかる荷重を、より効果的に低減させることが可能となる。また、破砕ゴム片構造物2は、一般的地盤材料より軽量かつ低コストであり、しかも耐熱性、強度および柔軟性に優れている。さらに、透水材としても優れた機能を有する。
【0015】
本発明においては、施工性の観点から破砕ゴム片ブロック3を使用することが好ましいが、破砕ゴム片ブロック3の代わりに、破砕ゴム集合体として破砕ゴム片4を収納した土嚢を使用することもできる。また、破砕ゴム片4をそのまま橋台11の背面に気泡混合軽量土10の施工とともに順次埋め込んでも、所望の効果を得ることができる。
【0016】
本発明において、破砕ゴム片4は、廃タイヤをカットもしくは破砕して得られる破砕片で、例えば、20mm〜60mmサイズのランダム破砕品の使用が好適である。また、ギロチンカッターにより1/16、1/32等に裁断した俗称カット品と呼ばれる扇形の均一形状破砕品も大型サイズチップとして使用することができる。
【0017】
破砕ゴム片ブロック3は、破砕ゴム片4同士を樹脂バインダー、好ましくは熱硬化性樹脂、例えば、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることにより空隙を保ったまま互いに固着させ、いわゆる「あわおこし」状に形成する。このように形成することで、軽量で、かつ強度および柔軟性に優れた破砕ゴム片ブロック3が得られる。また、空隙が存在することにより透水材としても優れた機能を有する。
【0018】
破砕ゴム片ブロック3の各辺の長さは、使用目的に応じ適宜変更し得るものであるが、所望の効果を得る上で、例えば、500mm×500mm×1000mm程度の寸法とすることが好ましい。かかるサイズに形成することで、製造や施工の際の作業性が向上するとともに、複数個連結させた際に良好に緩衝材として機能する。
【0019】
本発明においては、橋台21への荷重軽減構造1全体の補強性を高めるために、破砕ゴム片ブロック3による破砕ゴム片構造物2の水平方向断面が略エ字状または略1字状となるように、橋台の大きさや形状に応じて適宜破砕ゴム片ブロック3を垂直方向や水平方向に複数連結することができる。
【0020】
図3に、本発明の他の好適実施の形態として、岸壁21への荷重軽減構造30を示す。
図示する岸壁21への荷重軽減構造30は、気泡混合軽量土20により岸壁21に作用する土圧により、また地盤Aの不同沈下により変形する気泡混合軽量土20の作用により、岸壁21へかかる荷重を低減させるために、気泡混合軽量土20が盛土25との間に用いられている。
【0021】
図示する好適例では、気泡混合軽量土20により岸壁21の背面に発生する土圧を更に軽減するための緩衝材として、破砕ゴム片構造物2が気泡混合軽量土20内に埋め込まれている。気泡混合軽量土20は岸壁21に接して、または適宜間隙をもって埋設することができる。破砕ゴム片構造物2については、前記好適実施形態に挙げたものと同様のものを適宜用いることがでる。
【0022】
このように破砕ゴム片構造物2を設けることで、気泡混合軽量土20により岸壁21に作用する土圧により、また地盤の不同沈下により変形する気泡混合軽量土20の作用により岸壁21へかかる荷重を、より効果的に低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1 橋台への荷重軽減構造
2 破砕ゴム片構造物
3 破砕ゴム片ブロック
4 破砕ゴム片
5 垂直部
6 水平部
10、20 気泡混合軽量土
11 橋台
12、22 舗装
13 踏掛け板
14 基礎杭
15、25 盛土
21 岸壁
30 岸壁への荷重軽減構造
A 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物にかかる荷重を軽減するために、該構造物に対する裏込め材として気泡混合軽量土が使用されている、構造物への荷重軽減構造において、
破砕ゴム片の集合体が、前記構造物の裏込め材の気泡混合軽量土内に緩衝材として埋め込まれていることを特徴とする構造物への荷重軽減構造。
【請求項2】
前記集合体が、破砕ゴム片同士をバインダー樹脂により空隙を保ったまま互いに固着させて形成した破砕ゴム片ブロックである請求項1記載の、構造物への荷重軽減構造。
【請求項3】
前記バインダー樹脂が熱硬化性樹脂である請求項2記載の、構造物への荷重軽減構造。
【請求項4】
前記集合体が、破砕ゴム片が収納された土嚢である請求項1記載の構造物への荷重軽減構造。
【請求項5】
前記破砕ゴム片が、廃タイヤの破砕片である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の、構造物への荷重軽減構造。
【請求項6】
前記集合体が、前記気泡混合軽量土内において前記構造物に対し土圧がかかる背面に配設され、前記緩衝材を構成する請求項1〜5のうちいずれか一項記載の、構造物への荷重軽減構造。
【請求項7】
前記構造物が橋台または岸壁である請求項1〜6のうちいずれか一項記載の、構造物への荷重軽減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−180678(P2010−180678A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27893(P2009−27893)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)
【Fターム(参考)】