構造物内部の破断を検出する方法及びその方法を実施するシステム
本発明は、少なくとも1つの構造物の部分(6,12,13,15)であって、構造物の第1の基準点(7,16)と第2の基準点(7,17)とによって範囲が定められ、破断がない状態で所定の剛性を有し、引張力または圧縮力(F)が加えられている部分の内部の破断を検出する方法を提案する。本方法は、部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量(ΔF)に応じて、構造物の部分の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出するステップと、検出された長さの変化から、構造物の部分の内部に破断があるかどうかを推定するステップと、を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物内部の破断の検出に関する。本発明は、特に、吊橋の主サスペンションケーブルなど、ケーブルの内部の破断検出に適用されるが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
図1に、吊橋の主要部分を概略的に再説明している。図1は、支持される路面と力の分布の連続性を保証するデッキ1を備えた吊橋を示している。ハンガーケーブル2は、デッキを支持し、ハンガーケーブル環によって主サスペンションケーブル3にしっかりと取り付けられており、力を主サスペンションケーブル3に伝達する。
【0003】
放物線の外観を呈する主ケーブル3は支持機能を提供する。力は、タワー5に吸収される鉛直反力と、アンカーにしっかりと取り付けられた固定ケーブル4によって伝達される引張力とに分割される。
【0004】
このような構造物の構造健全性は、主ケーブル3、ハンガーケーブル2、及びアンカーの、力の伝達によって生じた応力に長期間に渡り耐える能力に依存している。
【0005】
従って、これらの部材は吊橋の弱点を構成する。そのため、このような構造物には冗長性のある荷重経路がないので、安全性と耐久性は、一般に適切な安全係数を採用することにより確保されている。
【0006】
主サスペンションケーブル3は、通常、実質的に平行な、一般に鋼で作られた複数の金属撚線(綯われる場合もある。)からなっている。これらの撚線は、様々な手段、すなわち熱処理、化学処理、塗料の塗布、被覆等により腐食から保護されている。
【0007】
しかし、例えば酸化の結果、このような主サスペンションケーブルの破断を生じさせる可能性のある撚線を完全に回避することはできない。この現象は、水が蒸発により除去されずかつ直接目に見えずに浸透、滞留する可能性のある内部の撚線に主として悪影響を及ぼすので注意が必要である。
【0008】
主サスペンションケーブルの金属撚線の実質的に平行な形状は、これらの撚線が互いにある程度擦れ合うことを意味しているので、破断した撚線が、破断点を囲む領域から離れて後退する範囲を制限することになる。
【0009】
そして、再固定、すなわち、破断区域を越えて、破断した撚線が力の伝達に寄与し続け、再度応力を受ける状態になる現象が言われている。破断区域のみが、破断した撚線の断面積だけ少なくなった断面積を持つので、より高い応力が破断区域の残りの撚線に働く。この応力は、許容応力を超えた場合には破断区域の残りの撚線を破断させる可能性がある。最初の1本または複数本の撚線の破断の原因がこの区域に残存している場合、この危険性はさらに現実的なものになる。
【0010】
従って、これらの理由により、このようなケーブルの内部で、あるいは考えられる引張力または圧縮力を受ける他のあらゆる構造物の内部で発生する可能性のある破断を早期に信頼できる方法で検出することは重要である。
【0011】
ケーブルの音響検査を利用して、ケーブル内部の破断の開始を検出する方法は公知である。ケーブルを構成する撚線の破断時に解放されたエネルギーが、これによりマイクロホンを用いて収集、記録される。しかし、この技術は、破断が生じる瞬間で破断を検出できるだけである。この技術は、破断回数の履歴を直接提供しないのみならず、ケーブルの状態に関するいかなる決定論的な徴候も与えるものではない。さらに、この技術は、発生した破断の特徴を、特に破断位置及び破断の程度の点で直接明らかにすることもできない。
【発明の開示】
【0012】
本発明の第1の目的は、公知の技術の不都合を解消することである。
【0013】
より具体的には、本発明の1つの目的は、ケーブルなどの構造物の内部で生じている可能性のある破断を検出することである。
【0014】
本発明の他の目的は、特に破断位置及び破断の程度の点から破断の特徴を明らかにすることである。
【0015】
従って、本発明は、少なくとも1つの構造物の部分であって、構造物の第1の基準点と第2の基準点とによって範囲が定められ、破断がない状態で所定の剛性を有し、引張力または圧縮力が加えられている部分の内部の破断を検出する方法を提案する。本方法は、
部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量(ΔF)に応じて、構造物の部分の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出するステップと、
検出された長さの変化から、構造物の部分の内部に破断があるかどうかを推定するステップと、
を有している。
【0016】
このように、本方法は、構造物の内部に存在しうる、起こり得るあらゆる破断の検出を可能にする。
【0017】
以下の実施形態も、本願発明の範囲内のものとして提供され、それらは単独で、または考えうる任意の組み合わせとして提供される。
−部分に加えられる引張力または圧縮力の変化量はあらかじめ定められており、構造物の部分の内部に破断があるかどうかの推定は、さらに部分の所定の剛性と、部分に加えられた引張力または圧縮力のあらかじめ定められた変化量と、に基づいてなされる。
−少なくとも2つの区域が、構造物の部分の全長の中で定められ、区域の少なくともいくつかの区域における長さの変化が検出され、検出された長さの変化から、区域の少なくともいくつかの区域の内部に破断があるかどうかが推定される。
−ワイヤが、その一部が区域の各々の端部と構造物の部分の第1の基準点に結合された各回転素子との間に、残りの一部が回転素子と構造物の部分の第2の基準点との間に張られ、区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、構造物の部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量に応じて各回転素子に生じる回転から検出される。
−構造物の部分の第1の基準点に結合された回転素子は、各ワイヤが通過するプーリを有する。
−プーリに生じる回転は、プーリの回転軸に取り付けられた回転センサーを用いて検出される。
−プーリに生じる回転は、プーリに連結された直線変位トランスデューサを用いて検出される。
−プーリに生じる回転は、プーリの径に沿って伸びるレバーアームと協働する直線変位トランスデューサを用いて検出される。
−力測定装置がプーリの回転軸に連結され、各ワイヤの変位を測定するようにされており、区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、さらに各ワイヤの変位の測定からも検出される。
−構造物の部分の第1の基準点に結合された回転素子は、各ワイヤの撚線が両端にそれぞれ結合される回転アームを有する。
−力センサーが、各回転素子の両側でワイヤに働く力を測定するように各ワイヤに関連づけられており、区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、さらに各ワイヤに働く力の測定からも検出される。
−ワイヤが、構造物の部分の第1の基準点と区域の各々の一端とに交互に結合されている複数の回転素子のネットワークの形態で、構造物の部分の第1の基準点と第2の基準点の間に張られており、区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、構造物の部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量に応じて、ネットワークの少なくとも1つの対応する回転素子に生じる回転から検出される。
−ワイヤは、構造物の部分の第1の基準点の2つの点に結合されている。
−部分に加えられる引張力または圧縮力の変化量は事前に決められており、区域の少なくともいくつかにおいて破断が生じた構造物の部分の断面積の割合がさらに、部分に加えられた引張力または圧縮力の所定の変化量と、検出された長さの変化とからも推定される。
−構造物の部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量は段階的であり、方法の少なくともいくつかのステップは、この段階的な変化中の複数の時点で繰り返される。
−構造物の部分の全長の中で、内部に破断が既に検出された区域の周囲に、より集中した新たな区域が次に規定され、方法の少なくともいくつかのステップが新たな区域に対して繰り返される。
−構造物は実質的に平行な複数の金属撚線を有するケーブルである。
−構造物は吊橋の主サスペンションケーブルであり、ケーブルの部分の範囲を定める第1の基準点及び第2の基準点は、ハンガーケーブル環に位置している。
−ケーブルの部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量は、基準車両集団を用いて、吊橋に荷重をかけることによって得られる。
【0018】
本発明は、さらに上記方法を実施するようにされたシステムを提案する。このシステムは、少なくとも1つの構造物の部分の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出する検出手段を有し、部分は、構造物の第1の基準点と第2の基準点とによって範囲を定められ、破断がない状態で所定の剛性を有しており、部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量に応じて、検出手段によって検出された長さの変化が、構造物の部分の内部に破断があるかどうかについての指標を与える。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した、非限定的で例示的ないくつかの実施形態についての以下の説明によって明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図2は、本発明によるシステム及び方法を適用できるケーブルの部分または区間6を示している。本発明は橋梁、スラブ等の所定の剛性を持つあらゆる種類の構造物にも適用できることが理解されよう。
【0021】
図1のケーブルは、例えば、実質的に平行な金属撚線(綯われる場合もある。)からなる吊橋の主サスペンションケーブルである。区間6は、このようにハンガーケーブル8がしっかりと取り付けられている2つのハンガーケーブル環7の間を延びている。区間は長さLと、断面積Sと、弾性係数Eとを有している。ケーブルを構成する撚線が鋼で作られている場合、弾性係数Eは鋼の弾性係数となる。従って、ばねと同様に、すなわち次式
K=E×S/L (1)
を用いて、区間6の剛性Kを計算することができる。
【0022】
ケーブル区間6は、通常、力Fを受けている。力の変動ΔFがケーブルに生じると、この変動は、ΔFに比例し剛性Kに反比例する長さの変化ΔLを区間6に引き起こす。すなわち、
ΔL=ΔF/K (2)
である。
【0023】
ケーブルの1本以上の撚線が区間6内で破断していると、この区間の断面積は、破断点を囲む区域において、破断した撚線の断面積に対応する断面積、すなわちΔSだけ減少する。上述したように、この破断区域は、撚線間の内部摩擦によって限定される。従って、この区間は、各々のばねがその断面積に応じた剛性を持つ、直列に連結された複数のばねのように挙動すると考えることができる。
【0024】
図3はこのモデルを示している。図3は、2つのハンガーケーブル環7間を延びるケーブル区間12を示している。
【0025】
この区間の全長Lは、各々の長さがL1,L2,L3である3つの連続する区域9〜11に分割されている。区域10は破断区域、すなわちケーブルの撚線が破断した区域である。つまり、区間12の断面積が、破断による影響を受けなかった区域9,11のSと比較して、この区域ではS-ΔSとなることを意味している。
【0026】
式(1)より、区域9〜11の剛性は、それぞれ、
K1=E×S/L1
K2=E×(S-ΔS)/L2
K3=E×S/L3 (3)
となる。
【0027】
従って、区間12の全体剛性K'は、これらのばねの直列に組み合わせとして記述でき、
1/K'=1/K1+1/K2+1/K3 (4)
として与えられる。
【0028】
剛性K'は、「正常な」部分、すなわち図2の区間6のようにその内部にいかなる破断も生じていない区間の剛性よりも小さくなる。
【0029】
その結果、区間12で力を増やすと、局所的な断面積の欠損がない部分よりも大きい伸びが生じる。余分な伸びは、力の増加と断面積の欠損によって影響を受けた部分の長さに比例する。
【0030】
従って、追加の力ΔFが加えられたときの区間12の長さの増加ΔL'を検出することによって、この区間の内部に破断があることが結論付けられる。追加の力ΔFの値と破断がないときの当該区間の剛性Kとを知ることにより、伸びΔL'が正常な区間の伸びΔLより大きいことを確認することができ、従って、このことから区間12の内部に破断が生じていることが推定できる。
【0031】
このような計算によってケーブルのある区間内の破断の検出が可能になるが、当該区間の長さの変動増加は欠損した断面積または破断区域の長さが比較的大きい場合にのみ顕著になるので、この検出方法は、実際に適用するには早過ぎるとされる場合があろう。このような場合には、区間長さの変動の測定精度が制限要因となる可能性がある。
【0032】
図4は、前のケースで得られた破断の検出よりもより良好な破断の検出を得るように、一連の差分測定法が行われるケーブル区間13を示している。
【0033】
区間13は、各々の長さがL1〜L7である7つの区域に分割されている。区間13には初期引張力Fが加えられている。前のケースと同様、力Fを値ΔFだけ増加し、区間13の様々な区域における長さの変化を検出することができる。
【0034】
図5は、区間13の7つの区域の各々で得られた長さの変化の値の例を示している。長さの変化は、相対値として、すなわちnが1から7まで変わるとして式ΔLn/Lnを用いて表現するのが有利である。図5から、区間13の長さ区域3に対して得られた長さの変化が最大となっていることが理解できよう。上述の説明によれば、これは、この区域の剛性が他の区域の剛性よりも低いことを意味しており、この区域では、破断の結果断面積が減少したことを示している。
【0035】
あるいは、定義された全区域の長さの変化を互いに直接比較するのではなく、各区域の長さの変化を検討対象区間全体の長さの変化と比較してもよい。次に、各区域が区間の長さの変化にどれだけ寄与しているかを判定し、これより各検討対象区域に破断が生じているかどうかを推定することができる。
【0036】
このように、本発明の本実施形態は、ケーブルのある区間内の、発生可能性のある破断の存在について結論付けることを可能にしている。本実施形態によれば、区間の長さに沿って定義された区域の数に応じて、存在する可能性のある破断位置をある程度の正確さで特定することも可能となる。最後に、検出された長さの変化を比較することにより、上述の実施形態の中で述べているような測定の正確さの問題をある程度免れることができる。
【0037】
破断検出の信頼性と、破断が存在する場合には破断の特徴を明らかにする信頼性をさらに向上させる本発明の他の実施形態を以下に説明する。
【0038】
図6は、基準点によって範囲が定められ、理解し易いようにまっすぐにされたケーブル区間15を示している。基準点は、吊橋の主サスペンションケーブルの場合には、例えばハンガーケーブル環16,17とすることができる。
【0039】
プーリ20が、ロッド21によってハンガーケーブル環16にしっかりと取り付けられている。このロッドは、環16の動きがすべてプーリに完全に伝達されるように、極めて堅固であることが好ましい。
【0040】
一定断面積のワイヤ19の一端22が中間環18上に、他端23がロッド24を介してハンガーケーブル環17上に固定されている。ロッド24もまた、ワイヤに加えられるいかなる引張力によっても変形しないように、極めて堅固であることが好ましい。ワイヤ19は、ロッド21で支えられた軸のまわりを回転可能なプーリ20を通っている。ワイヤ19は、例えば、ワイヤ端22,23に位置する装置を用いて、あるいはプーリ20に付属するアンチバックラッシュ手段によって張られている。プーリとその軸との間には大きな緩みはない。
【0041】
このように、所定の弾性係数を有するワイヤ19の一部は、中間環18とプーリ20の間を延びる区間15の一部区域に張られ(撚線19a)、一部は、区間15の全長に渡って、すなわちプーリ20とハンガーケーブル環17の間に張られる(撚線19b)。
【0042】
上述したように、図6のケーブルに追加の力ΔFが加えられると、環16と環17の間にこれに比例した長さの変化が生じる。この伸びはワイヤの撚線19bに伝えられ、撚線19bはこれに抵抗して、プーリを回転させようとする引張力をプーリ20に及ぼす。従って、図6に示した例では、ケーブルに働く追加の力ΔFが引張力である場合には、プーリは時計回り方向に回転しようとする。
【0043】
しかし、環18はケーブルにしっかりと取り付けられているので、ケーブルの伸びにより移動を生じる可能性がある。この移動は区間15内での位置に依存する。ワイヤの撚線19aは中間環18に結合されているので、撚線には、プーリを逆に反対方向に回転させようとする引張力をプーリ20に及ぼす同一量の伸びが生じる。従って、図6に示した例では、ケーブルに働く追加の力ΔFが引張力である場合には、プーリは反時計回り方向に回転しようとする。
【0044】
ワイヤ19の弾性係数をEf、その断面積をsとする。記号l1は撚線19bの長さ、記号l2は撚線19aの長さとする。Δl1は、環16と環17との相対運動の結果としての撚線19bの伸びとする。Δl2は、環16と環18との相対運動の結果としての撚線19aの伸びとする。
【0045】
ワイヤの撚線に生じた伸びは、撚線が取り付けられている環によって好ましくは完全に伝えられるので、撚線の伸びはケーブルの伸びと等しくなる。
【0046】
f1を撚線19bの伸びΔl1から生じた力、f2を撚線19aの伸びΔl2から生じた力とすると、以下の式
f1=Ef×s/l1×Δl1、またはf1=Ef×s×Δl1/l1
f2=Ef×s/l2×Δl2、またはf2=Ef×s×Δl2/l2 (5)
が得られる。
【0047】
f1とf2の力の差分は、これらの力が平衡に達するまでプーリ20を回転させる。なぜなら、この回転によってワイヤ19の撚線19a,19bの長さの変化が生じるからである。
【0048】
この現象は図7,8に示されている。図7は、プーリ20の両側でワイヤ19上の撚線に働く力f1,f2を示している。
【0049】
図示の例では、f1の値はf2の値より大きいので、プーリ20を時計回り方向に回転させることのできる差分Δfが生じる。
【0050】
図8は、力がいったん平衡に達した、すなわちプーリ20の両側でワイヤ19の2つの撚線に働く力f'1とf'2がいったん等しくなった同じ装置を示している。この結果、プーリ20は回転を止めて、ここで力の差分が0になる。なお、図8に示すように、差分Δfはプーリ20を角度αまで回転させていることに留意されたい。数式(5)に示すように、この角度αは力の差分Δfに比例し、差分Δfはそれ自体が撚線19a,19bの相対伸びに直接比例している。
【0051】
撚線19a,19bの相対伸びは、撚線が取り付けられているケーブルの環によって適切に伝達されるので、角度αは、ケーブルの相対伸びの差分を表している。言いかえれば、プーリの回転は、検討対象区間のある区域の長さの相対的な変化量についての信頼できる指標を与える。
【0052】
従って、ケーブルの当該区間が「正常」な場合、すなわちケーブルの当該区間の金属撚線が全く破断していない場合、その相対伸びは、引張力が変化しても金属撚線の全長に渡って一定である。特に、Δl1/l1=Δl2/l2となる。この場合、数式(5)により、力f1とf2が等しいので、プーリは全く回転しない。
【0053】
図9は、断面積の欠損が生じたケーブル区間に適用される、図6に示した破断検出システムと同じシステムを示している。この区間は3つの部分25〜27に分解できる。中間区域26は破断が生じた区域である。
【0054】
図9に示した例において、区間に追加の引張力が加えられると、撚線19bには撚線19aより大きな相対伸びを生じることが上述の説明から理解されよう。これによって、プーリ20はこの不均衡に比例して回転させられる。従って、プーリ20が回転する最終角度が、ケーブルの相対伸びの差を決定する。
【0055】
なお、ケーブルに働く引張力は、検討対象区間を伸ばすことに留意されたい。逆に、圧縮力は、区間を短くすることになるであろう。
【0056】
図10は、図9のシステム同様、ケーブル区間に適用される破断検出システムを示しているが、このシステムでは、様々な測定値を同時にまたは連続して得られるように、いくつかの中間環18,28,29がケーブル区間の全長に沿って配置されている。
【0057】
各中間環は、例えばハンガーケーブル環16と当該中間環との間を延びる、検討対象区間の各区域を定義している。存在する可能性のあるあらゆる破断は、このように定義された区域の各々に対して検出される。
【0058】
上述の説明によれば、ワイヤが、サスペンション環16に固定されたプーリ20を介して、中間環18,28,または29とハンガーケーブル環17との間に張られる。次に、ケーブルに働く力Fが値ΔFだけ増加させられ、それにより、区間に相対的な伸びが生じる。
【0059】
次に、定義された各区域に対して、相対的な長さの変化Δli/liが得られる。ここで、liは、環16と対応する中間環との間の検討対象区域の長さを表す。図10に示した例では、次に、各々が中間環18,28,または29の1つに関連して定義された区域の1つに対応する3つの長さ変動値が得られる。
【0060】
これらの測定値Δli/liは、liの関数として図10に示すようなグラフ上にプロットすることができる。このように区間の全長に沿った区間の長さの変化の曲線を、ケーブル区間の全長に沿って定義された区域の数、すなわち用いられる中間環の数に応じてある程度の精度で得ることができる。
【0061】
図10に示した曲線32はこのようにして得られた曲線の一例である。この曲線は、部分33において一定の相対伸びを示している。これは、ケーブルの幾何学的な特性がこの部分では変化しない、従って区間の対応する部位25の剛性は変化していないことを示している。言いかえれば、ケーブル区間の部位25の断面は損なわれていない、つまり、いずれの撚線もこの区域では破断していないことを示している。
【0062】
曲線32の第2の部分34はケーブル区間の部位26に対応している。部位26は、ケーブルの破断によって生じた断面積の変化を呈しており、それは、部分34において曲線が例えば放物線状に増加していることに現れている。ケーブル区間の部位26の剛性は、部位25の剛性より実際に低い。曲線32の増加は、直列に配置され互いに異なる剛性を持つケーブル区間の2つの部位25,26の影響を表している。
【0063】
曲線32の第3の部分35はケーブル区間の部位27に対応する。部分35では、曲線32は、例えば放物線状に減少している。これは、直列に配置されたケーブル区間の3つの部位25〜27の影響と、ケーブルの断面積が区間の部位26と部位27の間で増加し、部位27が破断による影響を受けていないという事実と、を表している。
【0064】
曲線32の最右端の値は、ハンガーケーブル環17の位置での長さの変化Δl1/l1に対応している。
【0065】
シミュレーションは、典型的な実施例での検証を可能とする。図3を参照して既に用いた表記L1,L2,L3,S,及びΔSを再び用いると、曲線32の部分33〜35はそれぞれ、A,B+(A-B).Li/li、A+(B-A).L2/liと表される。ここで、A=ΔF/(E×S)、B=ΔF/(E×(S-ΔS))である。
【0066】
従って、曲線32を解析することによって、内部に破断が生じたケーブル区間の区域を決定することが可能となる。曲線をより詳細に解析すれば、特に様々な部位の勾配または曲率の値に基づいて、破断位置及びその程度を正確に決定することも可能となる。ケーブルに加えられた追加の力ΔFをあらかじめ知ることで、金属撚線の破断の結果失われたケーブルの断面積を評価することが可能である。
【0067】
なお、曲線32は、上述の破断検出システムを用いて得ることができるが、この曲線は、値Δli/liを決定できる任意の測定手段を用いても得られることに留意されたい。
【0068】
用いられる破断検出システムが上述のシステムの場合、プーリの回転角αを表す曲線を長さliの関数として構成することが実際には有利であろう。このような曲線を図11に示している。プーリ10の回転角αとワイヤ19の2つの撚線に働く力の差分との関係のため、曲線は図10に示した曲線32に依存している。特に、異なった剛性を持つケーブル区間の連続する部位の直列効果を示す、異なった曲率を持つ曲線37〜39の3つの部分が再び現れている。特に、曲線の部分37と部分39はプーリの反対方向の回転に対応している。
【0069】
シミュレーションは、典型的な実施例での検証を可能とする。図2,3を参照して既に用いた表記L,L1,L2,L3,S,及びΔSを再び用いると、曲線36の様々な部分37〜39は、増倍係数を除いて、それぞれ、
(L-Li.f1(Li))/(1+f1(Li))、(L-Li.f2(Li))/(1+f2(Li))、(L-Li.f3(Li))/(1+f3(Li))となる。ここで、
f1(li)=L/li+((B-A).L2))/((A+1).Li)、
f2(li)=((A+1).L+(B-A).L2))/((B+1).Li+(A-B).L1))、
f3(li)=((A+1).L+(B-A).L2))/((A+1).L1+(B-A).L2))
であり、A=ΔF/(E×S),B=ΔF/(E×(S-ΔS))である。増倍係数はプーリ10の半径の逆数である。従って、プーリの半径が小さいほど、プーリが回転する角度αを測定できる感度は大きくなる。
【0070】
曲線36のような種類の曲線の利点は、プーリの回転角の値が読み取られると追加の計算をすることなく曲線を直接プロットできることである。このような曲線36の解析は、上述した曲線32の解析と同様な方法で行うことができる。特に、検討対象ケーブル区間の内部の断面積のより小さな区域を明らかにし、その程度を評価することができる。この曲線の各部分を解析することによって、ケーブルに加えられた追加の力が既知である場合には、欠損した断面積の割合を特定することも可能になる。
【0071】
このようなシステムは、得られた曲線における勾配または曲率の変化の数に一致する、区間に沿った断面積の変化の数を検出することもできる。
【0072】
得られたデータが十分に利用されるためには、ケーブルに加えられる追加の力はあらかじめ決められていることが望ましい。これを実現する1つの簡単な方法は、例えば、ケーブルがその一部を形成する吊橋などの構造物に基準車両集団によって荷重をかけることである。基準車両集団の特性は、その基準車両集団が存在することでケーブル区間に生じる力の増加をあらかじめ計算することにより既知となっている。このような作業は一般に、構造物を一時的に閉鎖する以外に、交通に対してなんら制約を与えない。
【0073】
図12,13は各々、上述した本発明による破断検出システムの側面図及び上面図を示している。このシステムでは、多数の中間環40〜44が端環16,17の間の検討対象ケーブル区間に沿って配置されている。ワイヤ45〜49が各々、これらの環の各々から、環16に固定された対応するプーリP1〜P5まで、そして更に反対の環17まで張られている。このように取り付けることで、中間環によって範囲が定められた区間の各区域に対して、長さの変動値(またはプーリの回転角)を同時に得ることが可能となる。この場合、必要なデータをすべて得るために、基準車両集団によって、その構造物に一度だけ荷重をかける必要がある。
【0074】
上述した図示のワイヤ19及びワイヤ45〜49のようなワイヤは、ケーブルに働く追加の力が直ちに撚線の伸びに変換される十分な張力まで、好ましくはプリテンションされている。このように「緩み」がなくされているため、測定は事象の開始から高感度で行われる。
【0075】
力測定装置は各プーリの軸と組み合わせられていてもよく、これにより、ワイヤのプリテンションを確実なものとするとともに、伸びの測定が可能となる。用いられるワイヤの特性は完全に知られているものとする。
【0076】
プーリの回転角測定を確実に行うために、撚線の緊張装置の位置(例えば、図6の点22,23で)または他の位置で、力センサーを撚線の各々に追加することも可能である。これによって、破断検出の信頼性が向上する。
【0077】
プーリの回転は、好ましくは、プーリ軸にしっかりと取り付けられた回転センサーを用いて測定される。あるいは、レバーアームを用いて感度を向上させることができる直線変位トランスデューサに測定を行わせてもよい。この最後の実施形態を図14,15に示す。
【0078】
図14は、このようにプーリ20の回転軸50上に取り付けられた直線変位トランスデューサ52を示している。このセンサーは、プーリの径に沿ってプーリに固定されたレバーアーム51に支持されて線形移動する可動フィンガ53を備えている。破断検出システムを支持するケーブル(不図示)に追加の力が働く前には、図14に示した例示的なプーリ20は、レバーアーム51が鉛直になる初期位置にある。
【0079】
追加の力がケーブルに働くと、ワイヤ19の移動により、プーリ20は例えば時計回り方向に角度αまで回転させられる。そして、レバーアーム51はプーリと共に移動し、フィンガ53はレバーアームに支持され続けるように、対応する長さdまで伸びる。この長さdは、角度αの測定の代わりにまたはそれに加えて、検討対象ケーブル区間の区域での相対的な長さの変化を決定するのに使用できる。
【0080】
図16は、プーリ20の代わりにまたはそれに加えて使用できる回転素子を示している。回転素子は、軸55のまわりで回転できるアーム54である。この実施形態において、破断検出システムで用いられるワイヤの撚線19a,19bは各々アーム55の両端の一方に結合されており、ケーブルの対応する区域が伸びる効果に基づいて、アームの各々に働く力に応じてアームを軸のまわりで回転させる。
【0081】
本発明の1つの有利な実施形態において、例えばケーブルがその一部を形成する構造物に基準車両集団を用いて荷重をかけることにより、ケーブルに加えられる追加の力ΔFを段階的に増やすという利用の仕方もある。次に、検討されるケーブル区間のある区域の長さの変化(あるいは対応する角度の測定値)が、載荷中の様々な段階で得られる。
【0082】
この実施形態を図17に示している。同図から、複数の測定点が連続的に得られ、追加の力ΔFが段階的に増えるにつれて曲線56〜59をプロットできることが理解できる。これらの様々な曲線を得ることによって、現象の解析、そしてケーブルの内部に存在する可能性のある破断の検出の信頼性を高めるだけのデータ量が得られる。力の増加段階中、測定値の連続的な取得を試みるのが有利である。測定値をより良くモニターし、解析するために、車両集団の位置、温度等の他のデータもセンサーを用いて得ることができる。
【0083】
図18は、本発明の他の有利な実施形態を示している。本実施形態では、先ず、検討対象ケーブル区間のある区域の長さの変化を表す角度αその他のパラメータに関する第1の曲線が、例えば図17の破断検出システムを用いて得られる。次に、ケーブル区間の特定の区域(図18の第1の曲線の部分61に対応する区域)における破断を検出した後、検出された破断区域の付近のさらに集中した領域で測定値が得ることができるように、破断検出システムが取り外され再度取り付けられる。
【0084】
このために、複数の中間環は、検出された破断区域の周囲で互いにより近接して再配置される。こうして、角度αの新しい値が得られ、得られた第1の曲線の精度を関連する区域でさらに高めることが可能となる。こうして、図18に示した例において、精度の高められた曲線は特に大きな減少を呈する区間62を有し、この大きな減少がケーブルの対応する区域で破断が生じていることを示していることが理解できよう。
【0085】
上述した一般的な原理から他の代替形態が導き出され、本発明の一部を形成することができるのはいうまでもない。特に、上で定義したパラメータΔli/li及びαに加えてまたはその代わりに、他の関連するパラメータを用いて、ケーブルに加えられた引張力または圧縮力の変化量に応じて、ケーブル内の長さの変化を検出してもよい。必要ならば、そのようなパラメータを測定するための破断検出システムの採用を計画することも可能であろう。
【0086】
図19,20は、本発明の他の有利な実施形態による他のシステムの例を示している。図12,13に示されたシステムと異なり、このシステムは、プーリP'1〜P'11のような複数の回転素子のネットワーク間を走る単一のワイヤだけを有している。
【0087】
図21は、内部に破断が生じているケーブルに取り付けられた、図19,20のシステムと類似のシステムを示している。載荷試験中、Δli/liの間の差異が増大する。次に、変化量の曲線を上述の原理に従ってプロットできる。この曲線が、使用されているプーリの少なくともいくつか(例えば、ケーブルの各区域に対する測定値を得るため、プーリP'1,P'3,P'5,P'7,P'9,P'11の各々)の回転角αの変化量を示す場合には、これから、断面積の減少を示す、勾配または曲率の逆転を検出することが可能である。
【0088】
勾配または曲率の逆転は、例えば勾配や曲率が単純に変化する場合と比べて破断区域の特に明確な検出が可能となるので好都合である。
【0089】
本発明の範囲内で他のシステムも考えられることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】既に注釈されている吊橋の簡略図である。
【図2】「正常な」ケーブルの部分の図である。
【図3】破断が生じているケーブルの部分の図である。
【図4】複数の区域が定義された長さ部分に沿ったケーブル部分の図である。
【図5】図4のケーブル部分の各区域における長さの変化を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態による破断検出システムの図である。
【図7】図6のシステムの作動原理を示す図である。
【図8】図6のシステムの作動原理を示す図である。
【図9】破断が生じているケーブル部分に適用された、本発明による破断検出システムの図である。
【図10】本発明の一実施形態による破断検出システム及びこのシステムによって与えられる長さの変化のグラフである。
【図11】本発明の一実施形態による破断検出システム及びこのシステムによって与えられる角度変化のグラフである。
【図12】本発明の一実施形態による破断検出システムの図である。
【図13】図12の検出システムの上面図である。
【図14】本発明の一実施形態に従って用いられる角度測定モジュールの図である。
【図15】本発明の一実施形態に従って用いられる角度測定モジュールの図である。
【図16】本発明の一実施形態で用いられる回転素子の図である。
【図17】破断検出システム、及び本発明の一実施形態によるシステムによって与えられる角度変化のグラフである。
【図18】破断検出システム、及び本発明の一実施形態によるシステムによって与えられる角度変化のグラフである。
【図19】本発明の一実施形態による破断検出システムの図である。
【図20】図19の検出システムの上面図である。
【図21】破断検出システム、及び本発明の一実施形態によるシステムによって与えられる角度変化のグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物内部の破断の検出に関する。本発明は、特に、吊橋の主サスペンションケーブルなど、ケーブルの内部の破断検出に適用されるが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
図1に、吊橋の主要部分を概略的に再説明している。図1は、支持される路面と力の分布の連続性を保証するデッキ1を備えた吊橋を示している。ハンガーケーブル2は、デッキを支持し、ハンガーケーブル環によって主サスペンションケーブル3にしっかりと取り付けられており、力を主サスペンションケーブル3に伝達する。
【0003】
放物線の外観を呈する主ケーブル3は支持機能を提供する。力は、タワー5に吸収される鉛直反力と、アンカーにしっかりと取り付けられた固定ケーブル4によって伝達される引張力とに分割される。
【0004】
このような構造物の構造健全性は、主ケーブル3、ハンガーケーブル2、及びアンカーの、力の伝達によって生じた応力に長期間に渡り耐える能力に依存している。
【0005】
従って、これらの部材は吊橋の弱点を構成する。そのため、このような構造物には冗長性のある荷重経路がないので、安全性と耐久性は、一般に適切な安全係数を採用することにより確保されている。
【0006】
主サスペンションケーブル3は、通常、実質的に平行な、一般に鋼で作られた複数の金属撚線(綯われる場合もある。)からなっている。これらの撚線は、様々な手段、すなわち熱処理、化学処理、塗料の塗布、被覆等により腐食から保護されている。
【0007】
しかし、例えば酸化の結果、このような主サスペンションケーブルの破断を生じさせる可能性のある撚線を完全に回避することはできない。この現象は、水が蒸発により除去されずかつ直接目に見えずに浸透、滞留する可能性のある内部の撚線に主として悪影響を及ぼすので注意が必要である。
【0008】
主サスペンションケーブルの金属撚線の実質的に平行な形状は、これらの撚線が互いにある程度擦れ合うことを意味しているので、破断した撚線が、破断点を囲む領域から離れて後退する範囲を制限することになる。
【0009】
そして、再固定、すなわち、破断区域を越えて、破断した撚線が力の伝達に寄与し続け、再度応力を受ける状態になる現象が言われている。破断区域のみが、破断した撚線の断面積だけ少なくなった断面積を持つので、より高い応力が破断区域の残りの撚線に働く。この応力は、許容応力を超えた場合には破断区域の残りの撚線を破断させる可能性がある。最初の1本または複数本の撚線の破断の原因がこの区域に残存している場合、この危険性はさらに現実的なものになる。
【0010】
従って、これらの理由により、このようなケーブルの内部で、あるいは考えられる引張力または圧縮力を受ける他のあらゆる構造物の内部で発生する可能性のある破断を早期に信頼できる方法で検出することは重要である。
【0011】
ケーブルの音響検査を利用して、ケーブル内部の破断の開始を検出する方法は公知である。ケーブルを構成する撚線の破断時に解放されたエネルギーが、これによりマイクロホンを用いて収集、記録される。しかし、この技術は、破断が生じる瞬間で破断を検出できるだけである。この技術は、破断回数の履歴を直接提供しないのみならず、ケーブルの状態に関するいかなる決定論的な徴候も与えるものではない。さらに、この技術は、発生した破断の特徴を、特に破断位置及び破断の程度の点で直接明らかにすることもできない。
【発明の開示】
【0012】
本発明の第1の目的は、公知の技術の不都合を解消することである。
【0013】
より具体的には、本発明の1つの目的は、ケーブルなどの構造物の内部で生じている可能性のある破断を検出することである。
【0014】
本発明の他の目的は、特に破断位置及び破断の程度の点から破断の特徴を明らかにすることである。
【0015】
従って、本発明は、少なくとも1つの構造物の部分であって、構造物の第1の基準点と第2の基準点とによって範囲が定められ、破断がない状態で所定の剛性を有し、引張力または圧縮力が加えられている部分の内部の破断を検出する方法を提案する。本方法は、
部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量(ΔF)に応じて、構造物の部分の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出するステップと、
検出された長さの変化から、構造物の部分の内部に破断があるかどうかを推定するステップと、
を有している。
【0016】
このように、本方法は、構造物の内部に存在しうる、起こり得るあらゆる破断の検出を可能にする。
【0017】
以下の実施形態も、本願発明の範囲内のものとして提供され、それらは単独で、または考えうる任意の組み合わせとして提供される。
−部分に加えられる引張力または圧縮力の変化量はあらかじめ定められており、構造物の部分の内部に破断があるかどうかの推定は、さらに部分の所定の剛性と、部分に加えられた引張力または圧縮力のあらかじめ定められた変化量と、に基づいてなされる。
−少なくとも2つの区域が、構造物の部分の全長の中で定められ、区域の少なくともいくつかの区域における長さの変化が検出され、検出された長さの変化から、区域の少なくともいくつかの区域の内部に破断があるかどうかが推定される。
−ワイヤが、その一部が区域の各々の端部と構造物の部分の第1の基準点に結合された各回転素子との間に、残りの一部が回転素子と構造物の部分の第2の基準点との間に張られ、区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、構造物の部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量に応じて各回転素子に生じる回転から検出される。
−構造物の部分の第1の基準点に結合された回転素子は、各ワイヤが通過するプーリを有する。
−プーリに生じる回転は、プーリの回転軸に取り付けられた回転センサーを用いて検出される。
−プーリに生じる回転は、プーリに連結された直線変位トランスデューサを用いて検出される。
−プーリに生じる回転は、プーリの径に沿って伸びるレバーアームと協働する直線変位トランスデューサを用いて検出される。
−力測定装置がプーリの回転軸に連結され、各ワイヤの変位を測定するようにされており、区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、さらに各ワイヤの変位の測定からも検出される。
−構造物の部分の第1の基準点に結合された回転素子は、各ワイヤの撚線が両端にそれぞれ結合される回転アームを有する。
−力センサーが、各回転素子の両側でワイヤに働く力を測定するように各ワイヤに関連づけられており、区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、さらに各ワイヤに働く力の測定からも検出される。
−ワイヤが、構造物の部分の第1の基準点と区域の各々の一端とに交互に結合されている複数の回転素子のネットワークの形態で、構造物の部分の第1の基準点と第2の基準点の間に張られており、区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、構造物の部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量に応じて、ネットワークの少なくとも1つの対応する回転素子に生じる回転から検出される。
−ワイヤは、構造物の部分の第1の基準点の2つの点に結合されている。
−部分に加えられる引張力または圧縮力の変化量は事前に決められており、区域の少なくともいくつかにおいて破断が生じた構造物の部分の断面積の割合がさらに、部分に加えられた引張力または圧縮力の所定の変化量と、検出された長さの変化とからも推定される。
−構造物の部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量は段階的であり、方法の少なくともいくつかのステップは、この段階的な変化中の複数の時点で繰り返される。
−構造物の部分の全長の中で、内部に破断が既に検出された区域の周囲に、より集中した新たな区域が次に規定され、方法の少なくともいくつかのステップが新たな区域に対して繰り返される。
−構造物は実質的に平行な複数の金属撚線を有するケーブルである。
−構造物は吊橋の主サスペンションケーブルであり、ケーブルの部分の範囲を定める第1の基準点及び第2の基準点は、ハンガーケーブル環に位置している。
−ケーブルの部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量は、基準車両集団を用いて、吊橋に荷重をかけることによって得られる。
【0018】
本発明は、さらに上記方法を実施するようにされたシステムを提案する。このシステムは、少なくとも1つの構造物の部分の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出する検出手段を有し、部分は、構造物の第1の基準点と第2の基準点とによって範囲を定められ、破断がない状態で所定の剛性を有しており、部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量に応じて、検出手段によって検出された長さの変化が、構造物の部分の内部に破断があるかどうかについての指標を与える。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した、非限定的で例示的ないくつかの実施形態についての以下の説明によって明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図2は、本発明によるシステム及び方法を適用できるケーブルの部分または区間6を示している。本発明は橋梁、スラブ等の所定の剛性を持つあらゆる種類の構造物にも適用できることが理解されよう。
【0021】
図1のケーブルは、例えば、実質的に平行な金属撚線(綯われる場合もある。)からなる吊橋の主サスペンションケーブルである。区間6は、このようにハンガーケーブル8がしっかりと取り付けられている2つのハンガーケーブル環7の間を延びている。区間は長さLと、断面積Sと、弾性係数Eとを有している。ケーブルを構成する撚線が鋼で作られている場合、弾性係数Eは鋼の弾性係数となる。従って、ばねと同様に、すなわち次式
K=E×S/L (1)
を用いて、区間6の剛性Kを計算することができる。
【0022】
ケーブル区間6は、通常、力Fを受けている。力の変動ΔFがケーブルに生じると、この変動は、ΔFに比例し剛性Kに反比例する長さの変化ΔLを区間6に引き起こす。すなわち、
ΔL=ΔF/K (2)
である。
【0023】
ケーブルの1本以上の撚線が区間6内で破断していると、この区間の断面積は、破断点を囲む区域において、破断した撚線の断面積に対応する断面積、すなわちΔSだけ減少する。上述したように、この破断区域は、撚線間の内部摩擦によって限定される。従って、この区間は、各々のばねがその断面積に応じた剛性を持つ、直列に連結された複数のばねのように挙動すると考えることができる。
【0024】
図3はこのモデルを示している。図3は、2つのハンガーケーブル環7間を延びるケーブル区間12を示している。
【0025】
この区間の全長Lは、各々の長さがL1,L2,L3である3つの連続する区域9〜11に分割されている。区域10は破断区域、すなわちケーブルの撚線が破断した区域である。つまり、区間12の断面積が、破断による影響を受けなかった区域9,11のSと比較して、この区域ではS-ΔSとなることを意味している。
【0026】
式(1)より、区域9〜11の剛性は、それぞれ、
K1=E×S/L1
K2=E×(S-ΔS)/L2
K3=E×S/L3 (3)
となる。
【0027】
従って、区間12の全体剛性K'は、これらのばねの直列に組み合わせとして記述でき、
1/K'=1/K1+1/K2+1/K3 (4)
として与えられる。
【0028】
剛性K'は、「正常な」部分、すなわち図2の区間6のようにその内部にいかなる破断も生じていない区間の剛性よりも小さくなる。
【0029】
その結果、区間12で力を増やすと、局所的な断面積の欠損がない部分よりも大きい伸びが生じる。余分な伸びは、力の増加と断面積の欠損によって影響を受けた部分の長さに比例する。
【0030】
従って、追加の力ΔFが加えられたときの区間12の長さの増加ΔL'を検出することによって、この区間の内部に破断があることが結論付けられる。追加の力ΔFの値と破断がないときの当該区間の剛性Kとを知ることにより、伸びΔL'が正常な区間の伸びΔLより大きいことを確認することができ、従って、このことから区間12の内部に破断が生じていることが推定できる。
【0031】
このような計算によってケーブルのある区間内の破断の検出が可能になるが、当該区間の長さの変動増加は欠損した断面積または破断区域の長さが比較的大きい場合にのみ顕著になるので、この検出方法は、実際に適用するには早過ぎるとされる場合があろう。このような場合には、区間長さの変動の測定精度が制限要因となる可能性がある。
【0032】
図4は、前のケースで得られた破断の検出よりもより良好な破断の検出を得るように、一連の差分測定法が行われるケーブル区間13を示している。
【0033】
区間13は、各々の長さがL1〜L7である7つの区域に分割されている。区間13には初期引張力Fが加えられている。前のケースと同様、力Fを値ΔFだけ増加し、区間13の様々な区域における長さの変化を検出することができる。
【0034】
図5は、区間13の7つの区域の各々で得られた長さの変化の値の例を示している。長さの変化は、相対値として、すなわちnが1から7まで変わるとして式ΔLn/Lnを用いて表現するのが有利である。図5から、区間13の長さ区域3に対して得られた長さの変化が最大となっていることが理解できよう。上述の説明によれば、これは、この区域の剛性が他の区域の剛性よりも低いことを意味しており、この区域では、破断の結果断面積が減少したことを示している。
【0035】
あるいは、定義された全区域の長さの変化を互いに直接比較するのではなく、各区域の長さの変化を検討対象区間全体の長さの変化と比較してもよい。次に、各区域が区間の長さの変化にどれだけ寄与しているかを判定し、これより各検討対象区域に破断が生じているかどうかを推定することができる。
【0036】
このように、本発明の本実施形態は、ケーブルのある区間内の、発生可能性のある破断の存在について結論付けることを可能にしている。本実施形態によれば、区間の長さに沿って定義された区域の数に応じて、存在する可能性のある破断位置をある程度の正確さで特定することも可能となる。最後に、検出された長さの変化を比較することにより、上述の実施形態の中で述べているような測定の正確さの問題をある程度免れることができる。
【0037】
破断検出の信頼性と、破断が存在する場合には破断の特徴を明らかにする信頼性をさらに向上させる本発明の他の実施形態を以下に説明する。
【0038】
図6は、基準点によって範囲が定められ、理解し易いようにまっすぐにされたケーブル区間15を示している。基準点は、吊橋の主サスペンションケーブルの場合には、例えばハンガーケーブル環16,17とすることができる。
【0039】
プーリ20が、ロッド21によってハンガーケーブル環16にしっかりと取り付けられている。このロッドは、環16の動きがすべてプーリに完全に伝達されるように、極めて堅固であることが好ましい。
【0040】
一定断面積のワイヤ19の一端22が中間環18上に、他端23がロッド24を介してハンガーケーブル環17上に固定されている。ロッド24もまた、ワイヤに加えられるいかなる引張力によっても変形しないように、極めて堅固であることが好ましい。ワイヤ19は、ロッド21で支えられた軸のまわりを回転可能なプーリ20を通っている。ワイヤ19は、例えば、ワイヤ端22,23に位置する装置を用いて、あるいはプーリ20に付属するアンチバックラッシュ手段によって張られている。プーリとその軸との間には大きな緩みはない。
【0041】
このように、所定の弾性係数を有するワイヤ19の一部は、中間環18とプーリ20の間を延びる区間15の一部区域に張られ(撚線19a)、一部は、区間15の全長に渡って、すなわちプーリ20とハンガーケーブル環17の間に張られる(撚線19b)。
【0042】
上述したように、図6のケーブルに追加の力ΔFが加えられると、環16と環17の間にこれに比例した長さの変化が生じる。この伸びはワイヤの撚線19bに伝えられ、撚線19bはこれに抵抗して、プーリを回転させようとする引張力をプーリ20に及ぼす。従って、図6に示した例では、ケーブルに働く追加の力ΔFが引張力である場合には、プーリは時計回り方向に回転しようとする。
【0043】
しかし、環18はケーブルにしっかりと取り付けられているので、ケーブルの伸びにより移動を生じる可能性がある。この移動は区間15内での位置に依存する。ワイヤの撚線19aは中間環18に結合されているので、撚線には、プーリを逆に反対方向に回転させようとする引張力をプーリ20に及ぼす同一量の伸びが生じる。従って、図6に示した例では、ケーブルに働く追加の力ΔFが引張力である場合には、プーリは反時計回り方向に回転しようとする。
【0044】
ワイヤ19の弾性係数をEf、その断面積をsとする。記号l1は撚線19bの長さ、記号l2は撚線19aの長さとする。Δl1は、環16と環17との相対運動の結果としての撚線19bの伸びとする。Δl2は、環16と環18との相対運動の結果としての撚線19aの伸びとする。
【0045】
ワイヤの撚線に生じた伸びは、撚線が取り付けられている環によって好ましくは完全に伝えられるので、撚線の伸びはケーブルの伸びと等しくなる。
【0046】
f1を撚線19bの伸びΔl1から生じた力、f2を撚線19aの伸びΔl2から生じた力とすると、以下の式
f1=Ef×s/l1×Δl1、またはf1=Ef×s×Δl1/l1
f2=Ef×s/l2×Δl2、またはf2=Ef×s×Δl2/l2 (5)
が得られる。
【0047】
f1とf2の力の差分は、これらの力が平衡に達するまでプーリ20を回転させる。なぜなら、この回転によってワイヤ19の撚線19a,19bの長さの変化が生じるからである。
【0048】
この現象は図7,8に示されている。図7は、プーリ20の両側でワイヤ19上の撚線に働く力f1,f2を示している。
【0049】
図示の例では、f1の値はf2の値より大きいので、プーリ20を時計回り方向に回転させることのできる差分Δfが生じる。
【0050】
図8は、力がいったん平衡に達した、すなわちプーリ20の両側でワイヤ19の2つの撚線に働く力f'1とf'2がいったん等しくなった同じ装置を示している。この結果、プーリ20は回転を止めて、ここで力の差分が0になる。なお、図8に示すように、差分Δfはプーリ20を角度αまで回転させていることに留意されたい。数式(5)に示すように、この角度αは力の差分Δfに比例し、差分Δfはそれ自体が撚線19a,19bの相対伸びに直接比例している。
【0051】
撚線19a,19bの相対伸びは、撚線が取り付けられているケーブルの環によって適切に伝達されるので、角度αは、ケーブルの相対伸びの差分を表している。言いかえれば、プーリの回転は、検討対象区間のある区域の長さの相対的な変化量についての信頼できる指標を与える。
【0052】
従って、ケーブルの当該区間が「正常」な場合、すなわちケーブルの当該区間の金属撚線が全く破断していない場合、その相対伸びは、引張力が変化しても金属撚線の全長に渡って一定である。特に、Δl1/l1=Δl2/l2となる。この場合、数式(5)により、力f1とf2が等しいので、プーリは全く回転しない。
【0053】
図9は、断面積の欠損が生じたケーブル区間に適用される、図6に示した破断検出システムと同じシステムを示している。この区間は3つの部分25〜27に分解できる。中間区域26は破断が生じた区域である。
【0054】
図9に示した例において、区間に追加の引張力が加えられると、撚線19bには撚線19aより大きな相対伸びを生じることが上述の説明から理解されよう。これによって、プーリ20はこの不均衡に比例して回転させられる。従って、プーリ20が回転する最終角度が、ケーブルの相対伸びの差を決定する。
【0055】
なお、ケーブルに働く引張力は、検討対象区間を伸ばすことに留意されたい。逆に、圧縮力は、区間を短くすることになるであろう。
【0056】
図10は、図9のシステム同様、ケーブル区間に適用される破断検出システムを示しているが、このシステムでは、様々な測定値を同時にまたは連続して得られるように、いくつかの中間環18,28,29がケーブル区間の全長に沿って配置されている。
【0057】
各中間環は、例えばハンガーケーブル環16と当該中間環との間を延びる、検討対象区間の各区域を定義している。存在する可能性のあるあらゆる破断は、このように定義された区域の各々に対して検出される。
【0058】
上述の説明によれば、ワイヤが、サスペンション環16に固定されたプーリ20を介して、中間環18,28,または29とハンガーケーブル環17との間に張られる。次に、ケーブルに働く力Fが値ΔFだけ増加させられ、それにより、区間に相対的な伸びが生じる。
【0059】
次に、定義された各区域に対して、相対的な長さの変化Δli/liが得られる。ここで、liは、環16と対応する中間環との間の検討対象区域の長さを表す。図10に示した例では、次に、各々が中間環18,28,または29の1つに関連して定義された区域の1つに対応する3つの長さ変動値が得られる。
【0060】
これらの測定値Δli/liは、liの関数として図10に示すようなグラフ上にプロットすることができる。このように区間の全長に沿った区間の長さの変化の曲線を、ケーブル区間の全長に沿って定義された区域の数、すなわち用いられる中間環の数に応じてある程度の精度で得ることができる。
【0061】
図10に示した曲線32はこのようにして得られた曲線の一例である。この曲線は、部分33において一定の相対伸びを示している。これは、ケーブルの幾何学的な特性がこの部分では変化しない、従って区間の対応する部位25の剛性は変化していないことを示している。言いかえれば、ケーブル区間の部位25の断面は損なわれていない、つまり、いずれの撚線もこの区域では破断していないことを示している。
【0062】
曲線32の第2の部分34はケーブル区間の部位26に対応している。部位26は、ケーブルの破断によって生じた断面積の変化を呈しており、それは、部分34において曲線が例えば放物線状に増加していることに現れている。ケーブル区間の部位26の剛性は、部位25の剛性より実際に低い。曲線32の増加は、直列に配置され互いに異なる剛性を持つケーブル区間の2つの部位25,26の影響を表している。
【0063】
曲線32の第3の部分35はケーブル区間の部位27に対応する。部分35では、曲線32は、例えば放物線状に減少している。これは、直列に配置されたケーブル区間の3つの部位25〜27の影響と、ケーブルの断面積が区間の部位26と部位27の間で増加し、部位27が破断による影響を受けていないという事実と、を表している。
【0064】
曲線32の最右端の値は、ハンガーケーブル環17の位置での長さの変化Δl1/l1に対応している。
【0065】
シミュレーションは、典型的な実施例での検証を可能とする。図3を参照して既に用いた表記L1,L2,L3,S,及びΔSを再び用いると、曲線32の部分33〜35はそれぞれ、A,B+(A-B).Li/li、A+(B-A).L2/liと表される。ここで、A=ΔF/(E×S)、B=ΔF/(E×(S-ΔS))である。
【0066】
従って、曲線32を解析することによって、内部に破断が生じたケーブル区間の区域を決定することが可能となる。曲線をより詳細に解析すれば、特に様々な部位の勾配または曲率の値に基づいて、破断位置及びその程度を正確に決定することも可能となる。ケーブルに加えられた追加の力ΔFをあらかじめ知ることで、金属撚線の破断の結果失われたケーブルの断面積を評価することが可能である。
【0067】
なお、曲線32は、上述の破断検出システムを用いて得ることができるが、この曲線は、値Δli/liを決定できる任意の測定手段を用いても得られることに留意されたい。
【0068】
用いられる破断検出システムが上述のシステムの場合、プーリの回転角αを表す曲線を長さliの関数として構成することが実際には有利であろう。このような曲線を図11に示している。プーリ10の回転角αとワイヤ19の2つの撚線に働く力の差分との関係のため、曲線は図10に示した曲線32に依存している。特に、異なった剛性を持つケーブル区間の連続する部位の直列効果を示す、異なった曲率を持つ曲線37〜39の3つの部分が再び現れている。特に、曲線の部分37と部分39はプーリの反対方向の回転に対応している。
【0069】
シミュレーションは、典型的な実施例での検証を可能とする。図2,3を参照して既に用いた表記L,L1,L2,L3,S,及びΔSを再び用いると、曲線36の様々な部分37〜39は、増倍係数を除いて、それぞれ、
(L-Li.f1(Li))/(1+f1(Li))、(L-Li.f2(Li))/(1+f2(Li))、(L-Li.f3(Li))/(1+f3(Li))となる。ここで、
f1(li)=L/li+((B-A).L2))/((A+1).Li)、
f2(li)=((A+1).L+(B-A).L2))/((B+1).Li+(A-B).L1))、
f3(li)=((A+1).L+(B-A).L2))/((A+1).L1+(B-A).L2))
であり、A=ΔF/(E×S),B=ΔF/(E×(S-ΔS))である。増倍係数はプーリ10の半径の逆数である。従って、プーリの半径が小さいほど、プーリが回転する角度αを測定できる感度は大きくなる。
【0070】
曲線36のような種類の曲線の利点は、プーリの回転角の値が読み取られると追加の計算をすることなく曲線を直接プロットできることである。このような曲線36の解析は、上述した曲線32の解析と同様な方法で行うことができる。特に、検討対象ケーブル区間の内部の断面積のより小さな区域を明らかにし、その程度を評価することができる。この曲線の各部分を解析することによって、ケーブルに加えられた追加の力が既知である場合には、欠損した断面積の割合を特定することも可能になる。
【0071】
このようなシステムは、得られた曲線における勾配または曲率の変化の数に一致する、区間に沿った断面積の変化の数を検出することもできる。
【0072】
得られたデータが十分に利用されるためには、ケーブルに加えられる追加の力はあらかじめ決められていることが望ましい。これを実現する1つの簡単な方法は、例えば、ケーブルがその一部を形成する吊橋などの構造物に基準車両集団によって荷重をかけることである。基準車両集団の特性は、その基準車両集団が存在することでケーブル区間に生じる力の増加をあらかじめ計算することにより既知となっている。このような作業は一般に、構造物を一時的に閉鎖する以外に、交通に対してなんら制約を与えない。
【0073】
図12,13は各々、上述した本発明による破断検出システムの側面図及び上面図を示している。このシステムでは、多数の中間環40〜44が端環16,17の間の検討対象ケーブル区間に沿って配置されている。ワイヤ45〜49が各々、これらの環の各々から、環16に固定された対応するプーリP1〜P5まで、そして更に反対の環17まで張られている。このように取り付けることで、中間環によって範囲が定められた区間の各区域に対して、長さの変動値(またはプーリの回転角)を同時に得ることが可能となる。この場合、必要なデータをすべて得るために、基準車両集団によって、その構造物に一度だけ荷重をかける必要がある。
【0074】
上述した図示のワイヤ19及びワイヤ45〜49のようなワイヤは、ケーブルに働く追加の力が直ちに撚線の伸びに変換される十分な張力まで、好ましくはプリテンションされている。このように「緩み」がなくされているため、測定は事象の開始から高感度で行われる。
【0075】
力測定装置は各プーリの軸と組み合わせられていてもよく、これにより、ワイヤのプリテンションを確実なものとするとともに、伸びの測定が可能となる。用いられるワイヤの特性は完全に知られているものとする。
【0076】
プーリの回転角測定を確実に行うために、撚線の緊張装置の位置(例えば、図6の点22,23で)または他の位置で、力センサーを撚線の各々に追加することも可能である。これによって、破断検出の信頼性が向上する。
【0077】
プーリの回転は、好ましくは、プーリ軸にしっかりと取り付けられた回転センサーを用いて測定される。あるいは、レバーアームを用いて感度を向上させることができる直線変位トランスデューサに測定を行わせてもよい。この最後の実施形態を図14,15に示す。
【0078】
図14は、このようにプーリ20の回転軸50上に取り付けられた直線変位トランスデューサ52を示している。このセンサーは、プーリの径に沿ってプーリに固定されたレバーアーム51に支持されて線形移動する可動フィンガ53を備えている。破断検出システムを支持するケーブル(不図示)に追加の力が働く前には、図14に示した例示的なプーリ20は、レバーアーム51が鉛直になる初期位置にある。
【0079】
追加の力がケーブルに働くと、ワイヤ19の移動により、プーリ20は例えば時計回り方向に角度αまで回転させられる。そして、レバーアーム51はプーリと共に移動し、フィンガ53はレバーアームに支持され続けるように、対応する長さdまで伸びる。この長さdは、角度αの測定の代わりにまたはそれに加えて、検討対象ケーブル区間の区域での相対的な長さの変化を決定するのに使用できる。
【0080】
図16は、プーリ20の代わりにまたはそれに加えて使用できる回転素子を示している。回転素子は、軸55のまわりで回転できるアーム54である。この実施形態において、破断検出システムで用いられるワイヤの撚線19a,19bは各々アーム55の両端の一方に結合されており、ケーブルの対応する区域が伸びる効果に基づいて、アームの各々に働く力に応じてアームを軸のまわりで回転させる。
【0081】
本発明の1つの有利な実施形態において、例えばケーブルがその一部を形成する構造物に基準車両集団を用いて荷重をかけることにより、ケーブルに加えられる追加の力ΔFを段階的に増やすという利用の仕方もある。次に、検討されるケーブル区間のある区域の長さの変化(あるいは対応する角度の測定値)が、載荷中の様々な段階で得られる。
【0082】
この実施形態を図17に示している。同図から、複数の測定点が連続的に得られ、追加の力ΔFが段階的に増えるにつれて曲線56〜59をプロットできることが理解できる。これらの様々な曲線を得ることによって、現象の解析、そしてケーブルの内部に存在する可能性のある破断の検出の信頼性を高めるだけのデータ量が得られる。力の増加段階中、測定値の連続的な取得を試みるのが有利である。測定値をより良くモニターし、解析するために、車両集団の位置、温度等の他のデータもセンサーを用いて得ることができる。
【0083】
図18は、本発明の他の有利な実施形態を示している。本実施形態では、先ず、検討対象ケーブル区間のある区域の長さの変化を表す角度αその他のパラメータに関する第1の曲線が、例えば図17の破断検出システムを用いて得られる。次に、ケーブル区間の特定の区域(図18の第1の曲線の部分61に対応する区域)における破断を検出した後、検出された破断区域の付近のさらに集中した領域で測定値が得ることができるように、破断検出システムが取り外され再度取り付けられる。
【0084】
このために、複数の中間環は、検出された破断区域の周囲で互いにより近接して再配置される。こうして、角度αの新しい値が得られ、得られた第1の曲線の精度を関連する区域でさらに高めることが可能となる。こうして、図18に示した例において、精度の高められた曲線は特に大きな減少を呈する区間62を有し、この大きな減少がケーブルの対応する区域で破断が生じていることを示していることが理解できよう。
【0085】
上述した一般的な原理から他の代替形態が導き出され、本発明の一部を形成することができるのはいうまでもない。特に、上で定義したパラメータΔli/li及びαに加えてまたはその代わりに、他の関連するパラメータを用いて、ケーブルに加えられた引張力または圧縮力の変化量に応じて、ケーブル内の長さの変化を検出してもよい。必要ならば、そのようなパラメータを測定するための破断検出システムの採用を計画することも可能であろう。
【0086】
図19,20は、本発明の他の有利な実施形態による他のシステムの例を示している。図12,13に示されたシステムと異なり、このシステムは、プーリP'1〜P'11のような複数の回転素子のネットワーク間を走る単一のワイヤだけを有している。
【0087】
図21は、内部に破断が生じているケーブルに取り付けられた、図19,20のシステムと類似のシステムを示している。載荷試験中、Δli/liの間の差異が増大する。次に、変化量の曲線を上述の原理に従ってプロットできる。この曲線が、使用されているプーリの少なくともいくつか(例えば、ケーブルの各区域に対する測定値を得るため、プーリP'1,P'3,P'5,P'7,P'9,P'11の各々)の回転角αの変化量を示す場合には、これから、断面積の減少を示す、勾配または曲率の逆転を検出することが可能である。
【0088】
勾配または曲率の逆転は、例えば勾配や曲率が単純に変化する場合と比べて破断区域の特に明確な検出が可能となるので好都合である。
【0089】
本発明の範囲内で他のシステムも考えられることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】既に注釈されている吊橋の簡略図である。
【図2】「正常な」ケーブルの部分の図である。
【図3】破断が生じているケーブルの部分の図である。
【図4】複数の区域が定義された長さ部分に沿ったケーブル部分の図である。
【図5】図4のケーブル部分の各区域における長さの変化を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態による破断検出システムの図である。
【図7】図6のシステムの作動原理を示す図である。
【図8】図6のシステムの作動原理を示す図である。
【図9】破断が生じているケーブル部分に適用された、本発明による破断検出システムの図である。
【図10】本発明の一実施形態による破断検出システム及びこのシステムによって与えられる長さの変化のグラフである。
【図11】本発明の一実施形態による破断検出システム及びこのシステムによって与えられる角度変化のグラフである。
【図12】本発明の一実施形態による破断検出システムの図である。
【図13】図12の検出システムの上面図である。
【図14】本発明の一実施形態に従って用いられる角度測定モジュールの図である。
【図15】本発明の一実施形態に従って用いられる角度測定モジュールの図である。
【図16】本発明の一実施形態で用いられる回転素子の図である。
【図17】破断検出システム、及び本発明の一実施形態によるシステムによって与えられる角度変化のグラフである。
【図18】破断検出システム、及び本発明の一実施形態によるシステムによって与えられる角度変化のグラフである。
【図19】本発明の一実施形態による破断検出システムの図である。
【図20】図19の検出システムの上面図である。
【図21】破断検出システム、及び本発明の一実施形態によるシステムによって与えられる角度変化のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの構造物の部分(6,12,13,15)であって、該構造物の第1の基準点(7,16)と第2の基準点(7,17)とによって範囲が定められ、破断がない状態で所定の剛性を有し、引張力または圧縮力(F)が加えられている部分の内部の破断を検出する方法であって、
前記部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量(ΔF)に応じて、前記構造物の前記部分の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出するステップと、
検出された前記長さの変化から、前記構造物の前記部分の内部に破断があるかどうかを推定するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記部分に加えられる引張力または圧縮力の変化量(ΔF)はあらかじめ定められており、前記構造物の前記部分(6)の内部に破断があるかどうかの前記推定は、さらに前記部分の前記所定の剛性と、該部分に加えられた前記引張力または圧縮力の前記あらかじめ定められた変化量と、に基づいてなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの区域が、前記構造物の前記部分(12,13,15)の全長の中で定められ、該区域の少なくともいくつかの区域における長さの変化が検出され、検出された前記長さの変化から、前記区域の少なくともいくつかの区域の内部に破断があるかどうかが推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ワイヤ(19)が、その一部が前記区域の各々の端部(18,28,29,40〜44)と前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)に結合された各回転素子(20,54)との間に、残りの一部が前記回転素子(20,54)と前記構造物の前記部分の前記第2の基準点(17)との間に張られ、前記区域の少なくともいくつかにおける前記長さの変化は、前記構造物の前記部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量(ΔF)に応じて各回転素子に生じる回転(α)から検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)に結合された前記回転素子は、各ワイヤ(19)が通過するプーリ(20)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プーリ(20)に生じる前記回転(α)は、該プーリの回転軸に取り付けられた回転センサーを用いて検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プーリ(20)に生じる前記回転(α)は、該プーリに連結された直線変位トランスデューサ(52)を用いて検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記プーリ(20)に生じる前記回転(α)は、該プーリの径に沿って伸びるレバーアーム(51)と協働する前記直線変位トランスデューサ(52)を用いて検出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
力測定装置が前記プーリ(20)の回転軸に連結され、各ワイヤ(19)の変位を測定するようにされており、前記区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、さらに各ワイヤの変位の前記測定からも検出される、請求項5から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)に結合された前記回転素子は、各ワイヤ(19)の撚線(19a,19b)が両端にそれぞれ結合される回転アーム(54)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
力センサーが、各回転素子(20,54)の両側で前記ワイヤに働く力を測定するように各ワイヤ(19)に関連づけられており、前記区域の少なくともいくつかにおける前記長さの変化は、さらに各ワイヤに働く力の測定からも検出される、請求項4から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ワイヤが、前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)と前記区域の各々の一端とに交互に結合されている複数の回転素子(P'1〜P'11)のネットワークの形態で、前記構造物の前記部分の第1の基準点(16)と第2の基準点(17)の間に張られており、前記区域の少なくともいくつかにおける前記長さの変化は、前記構造物の前記部分に加えられた引張力または圧縮力の前記変化量(ΔF)に応じて、前記ネットワークの少なくとも1つの対応する回転素子に生じる回転(α)から検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記ワイヤは、前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)の2つの点に結合されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記部分に加えられる引張力または圧縮力の前記変化量(ΔF)は事前に決められており、前記区域の少なくともいくつかにおいて破断が生じた前記構造物の前記部分の断面積の割合がさらに、前記部分に加えられた引張力または圧縮力の前記所定の変化量と、検出された長さの変化とからも推定される、請求項3から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記構造物の前記部分に加えられた引張力または圧縮力の前記変化量(ΔF)は段階的であり、前記方法の少なくともいくつかのステップは、この段階的な変化中の複数の時点で繰り返される、請求項3から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記構造物の前記部分の全長の中で、内部に破断が既に検出された区域の周囲に、より集中した新たな区域が次に規定され、前記方法の少なくともいくつかのステップが前記新たな区域に対して繰り返される、請求項3から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記構造物は実質的に平行な複数の金属撚線を有するケーブルである、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記構造物は吊橋の主サスペンションケーブル(3)であり、該ケーブルの前記部分の範囲を定める前記第1の基準点(7,16)及び第2の基準点(7,17)は、ハンガーケーブル環に位置している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ケーブルの前記部分に加えられた引張力または圧縮力の前記変化量(ΔF)は、基準車両集団を用いて、前記吊橋に荷重をかけることによって得られる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の方法を実施するようにされたシステムであって、少なくとも1つの構造物の部分(6,12,13,15)の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出する検出手段を有し、該部分は、前記構造物の第1の基準点(7,16)と第2の基準点(7,17)とによって範囲を定められ、破断がない状態で所定の剛性を有しており、前記部分に加えられた引張力または圧縮力(F)の変化量(ΔF)に応じて、前記検出手段によって検出された長さの変化が、前記構造物の前記部分の内部に破断があるかどうかについての指標を与えるシステム。
【請求項1】
少なくとも1つの構造物の部分(6,12,13,15)であって、該構造物の第1の基準点(7,16)と第2の基準点(7,17)とによって範囲が定められ、破断がない状態で所定の剛性を有し、引張力または圧縮力(F)が加えられている部分の内部の破断を検出する方法であって、
前記部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量(ΔF)に応じて、前記構造物の前記部分の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出するステップと、
検出された前記長さの変化から、前記構造物の前記部分の内部に破断があるかどうかを推定するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記部分に加えられる引張力または圧縮力の変化量(ΔF)はあらかじめ定められており、前記構造物の前記部分(6)の内部に破断があるかどうかの前記推定は、さらに前記部分の前記所定の剛性と、該部分に加えられた前記引張力または圧縮力の前記あらかじめ定められた変化量と、に基づいてなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの区域が、前記構造物の前記部分(12,13,15)の全長の中で定められ、該区域の少なくともいくつかの区域における長さの変化が検出され、検出された前記長さの変化から、前記区域の少なくともいくつかの区域の内部に破断があるかどうかが推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ワイヤ(19)が、その一部が前記区域の各々の端部(18,28,29,40〜44)と前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)に結合された各回転素子(20,54)との間に、残りの一部が前記回転素子(20,54)と前記構造物の前記部分の前記第2の基準点(17)との間に張られ、前記区域の少なくともいくつかにおける前記長さの変化は、前記構造物の前記部分に加えられた引張力または圧縮力の変化量(ΔF)に応じて各回転素子に生じる回転(α)から検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)に結合された前記回転素子は、各ワイヤ(19)が通過するプーリ(20)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プーリ(20)に生じる前記回転(α)は、該プーリの回転軸に取り付けられた回転センサーを用いて検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プーリ(20)に生じる前記回転(α)は、該プーリに連結された直線変位トランスデューサ(52)を用いて検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記プーリ(20)に生じる前記回転(α)は、該プーリの径に沿って伸びるレバーアーム(51)と協働する前記直線変位トランスデューサ(52)を用いて検出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
力測定装置が前記プーリ(20)の回転軸に連結され、各ワイヤ(19)の変位を測定するようにされており、前記区域の少なくともいくつかに対する長さの変化は、さらに各ワイヤの変位の前記測定からも検出される、請求項5から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)に結合された前記回転素子は、各ワイヤ(19)の撚線(19a,19b)が両端にそれぞれ結合される回転アーム(54)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
力センサーが、各回転素子(20,54)の両側で前記ワイヤに働く力を測定するように各ワイヤ(19)に関連づけられており、前記区域の少なくともいくつかにおける前記長さの変化は、さらに各ワイヤに働く力の測定からも検出される、請求項4から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ワイヤが、前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)と前記区域の各々の一端とに交互に結合されている複数の回転素子(P'1〜P'11)のネットワークの形態で、前記構造物の前記部分の第1の基準点(16)と第2の基準点(17)の間に張られており、前記区域の少なくともいくつかにおける前記長さの変化は、前記構造物の前記部分に加えられた引張力または圧縮力の前記変化量(ΔF)に応じて、前記ネットワークの少なくとも1つの対応する回転素子に生じる回転(α)から検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記ワイヤは、前記構造物の前記部分の前記第1の基準点(16)の2つの点に結合されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記部分に加えられる引張力または圧縮力の前記変化量(ΔF)は事前に決められており、前記区域の少なくともいくつかにおいて破断が生じた前記構造物の前記部分の断面積の割合がさらに、前記部分に加えられた引張力または圧縮力の前記所定の変化量と、検出された長さの変化とからも推定される、請求項3から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記構造物の前記部分に加えられた引張力または圧縮力の前記変化量(ΔF)は段階的であり、前記方法の少なくともいくつかのステップは、この段階的な変化中の複数の時点で繰り返される、請求項3から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記構造物の前記部分の全長の中で、内部に破断が既に検出された区域の周囲に、より集中した新たな区域が次に規定され、前記方法の少なくともいくつかのステップが前記新たな区域に対して繰り返される、請求項3から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記構造物は実質的に平行な複数の金属撚線を有するケーブルである、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記構造物は吊橋の主サスペンションケーブル(3)であり、該ケーブルの前記部分の範囲を定める前記第1の基準点(7,16)及び第2の基準点(7,17)は、ハンガーケーブル環に位置している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ケーブルの前記部分に加えられた引張力または圧縮力の前記変化量(ΔF)は、基準車両集団を用いて、前記吊橋に荷重をかけることによって得られる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の方法を実施するようにされたシステムであって、少なくとも1つの構造物の部分(6,12,13,15)の内部の少なくとも1つの長さの変化を検出する検出手段を有し、該部分は、前記構造物の第1の基準点(7,16)と第2の基準点(7,17)とによって範囲を定められ、破断がない状態で所定の剛性を有しており、前記部分に加えられた引張力または圧縮力(F)の変化量(ΔF)に応じて、前記検出手段によって検出された長さの変化が、前記構造物の前記部分の内部に破断があるかどうかについての指標を与えるシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2008−533482(P2008−533482A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501372(P2008−501372)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000579
【国際公開番号】WO2006/097632
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(500069792)
【氏名又は名称原語表記】FREYSSINET
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000579
【国際公開番号】WO2006/097632
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(500069792)
【氏名又は名称原語表記】FREYSSINET
【Fターム(参考)】
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