説明

構造物固定構造、その構造物固定構造に用いられる固定具、太陽電池モジュール用架台、太陽電池モジュールの施工方法、及び太陽電池発電システム

【課題】構造物の端部(太陽電池モジュールの枠等)を格別な形状にする必要がなく、隣り合う各構造物(各太陽電池モジュール等)間の隙間を十分に狭くする構造物固定構造を提供する。
【解決手段】横桟4を挟んで配置された2枚の太陽電池モジュール5間には、固定金具12の立設板12cが挟まれるが、この立設板12cが平板状のものであるから、各太陽電池モジュール5の隙間を狭くすることができる。また、固定金具12の第1及び第2留め部12f、12gは、太陽電池モジュール5の枠部材7の端部上面をそれぞれ押えるだけであるから、枠部材7の端部に係合部等を形成する必要がなく、枠部材7の端部の形状が複雑化せず、枠部材7の端部の幅が広くならずに済む。このため、太陽電池発電システム1の設置面積に対する太陽光の受光面積の比率が減少することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール等の構造物を取付けて固定するための構造物固定構造、その構造物固定構造に用いられる固定具、太陽電池モジュール用架台、太陽電池モジュールの施工方法、及び太陽電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽電池発電システムにおいては、構造物である太陽電池モジュールを架台上に固定支持している。この架台としては、複数の桟を平行に並べて固定し、各桟の間に複数の太陽電池モジュールを架け渡して、各太陽電池モジュールを支持するというものがある。
【0003】
このような架台では、桟を挟んで隣り合う各太陽電池モジュールの端部をその桟上で共に固定する必要があるが、この固定のために各太陽電池モジュールの端部の間にボルト等を通すと、各太陽電池モジュール間の隙間が拡大して、システムの設置面積に対する太陽光の受光面積の比率が減少し、発電効率が低下するという問題があった。
【0004】
このため、特許文献1では、桟に固定部材を固定し、この固定部材の板状胴部を、桟を挟んで隣り合う各太陽電池モジュールの端部の間に挟みこみ、この固定部材の板状胴部の上端に形成された第1及び第2鉤部をそれぞれの太陽電池モジュールの取付け枠に引っ掛けて、これらの太陽電池モジュールを固定していた。この場合、各太陽電池モジュールの端部の間に固定部材の板状胴部を挟み込んでいるが、この板状胴部が薄いため、各太陽電池モジュール間の隙間を狭くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3907668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、太陽電池モジュールの取付け枠に、固定部材の第1及び第2鉤部を引っ掛けるための係止部を形成する必要があり、太陽電池モジュールの取付け枠の形状が複雑化した。
【0007】
また、そのような係止部を持たない太陽電池モジュールの取付け枠を固定することができず、太陽電池モジュールの取付け枠の構造が特定されてしまい、汎用性が低かった。
【0008】
更に、太陽電池モジュールの取付け枠の係止部の幅が少なからずあるので、隣り合う各太陽電池モジュールの受光面の間が2つの係止部の幅の分だけ離間することになり、太陽光の受光面積の比率が減少した。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、構造物の端部(太陽電池モジュールの枠等)を格別な形状にする必要がなく、隣り合う各構造物(各太陽電池モジュール等)間の隙間を十分に狭くすることが可能な構造物固定構造、その構造物固定構造に用いられる固定具、太陽電池モジュール用架台、太陽電池モジュールの施工方法、及び太陽電池発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の構造物固定構造は、並設された複数の構造物を固定する構造物固定構造であって、隣り合う前記各構造物の端部に沿って配置される桟と、前記桟に固定され、隣り合う前記各構造物の端部を共に固定する固定具を備え、前記固定具は、隣り合う前記各構造物の端部の間に挟まれる立設部と、前記立設部の上端で前記各構造物の端部の側にそれぞれ折り曲げられて、前記各構造物の端部上面をそれぞれ押える第1及び第2留め部を有し、前記第1留め部は、構造物の端部上面を押える押え部と、前記押え部の先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部とを有している。
【0011】
このような構造物固定構造では、各構造物の端部の間に固定具の立設部が挟まれるが、この立設部を平板状のものとすることにより、各構造物間の隙間を狭くすることができる。また、第1及び第2留め部は、構造物の端部上面を押えるだけであるから、構造物の端部に係合部等を形成する必要がなく、構造物の端部の形状が複雑化せず、構造物の端部の幅が広くならずに済む。
【0012】
更に、第1留め部は、構造物の端部上面を押える押え部と、押え部の先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部とを有することから、構造物の端部を固定具の第1留め部の呼込み部に容易に挿入することができ、引き続いてその構造物の端部を呼込み部から押え部下側へと容易に押し込むことができる。
【0013】
また、本発明の構造物固定構造においては、前記固定具は、前記固定具における前記第1留め部の折り曲げ側に、隣り合う前記各構造物の端部の一方が載せられる受け部を有し、前記受け部を前記固定具の立設部から離間させている。
【0014】
このように受け部を固定具の立設板から離間させた場合は、立設部上端の第1留め部の下方に受け部が存在せず、その下方が空くので、受け部を設けても、第1留め部の下方に構造物の端部を容易に挿入することができる。
【0015】
更に、本発明の構造物固定構造においては、前記桟は、隣り合う前記各構造物の端部が載置されるそれぞれの台座部を有し、前記固定具の第1及び第2留め部と前記桟の各台座部との間に、隣り合う前記各構造物の端部をそれぞれ挟み込んでいる。
【0016】
このように固定具の第1及び第2留め部と桟の各台座部との間に、隣り合う各構造物の端部をそれぞれ挟み込むことにより、これらの構造物の端部を確実に固定することができる。
【0017】
また、本発明の構造物固定構造においては、前記固定具の立設部は平板状であり、この平板状の立設部に前記構造物の端部が接している。
【0018】
このように固定具の平板状の立設部に構造物の端部が接すれば、無駄な隙間がなくなり、隣り合う各構造物間を確実に狭くすることができる。
【0019】
一方、本発明の固定具は、並設された複数の構造物を固定する構造物固定構造に用いられる固定具であって、隣り合う前記各構造物の端部の間に挟まれる立設部と、前記立設部の上端で隣り合う前記各構造物の端部の側にそれぞれ折り曲げられて、各構造物の端部上面をそれぞれ押える第1及び第2留め部を有し、前記第1留め部は、構造物の端部上面を押える押え部と、前記押え部の先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部とを有している。
【0020】
このような固定具を用いることにより、上記本発明の構造物固定構造と同様の作用効果を得ることができる。
【0021】
また、本発明の太陽電池モジュール用架台は、並設された複数の太陽電池モジュールを固定する太陽電池モジュール用架台であって、隣り合う前記各太陽電池モジュールの端部に沿って配置される桟と、前記桟に固定され、隣り合う前記各太陽電池モジュールの端部を共に固定する固定具を備え、前記固定具は、隣り合う前記各太陽電池モジュールの端部の間に挟まれる立設部と、前記立設部の上端で前記各太陽電池モジュールの端部の側にそれぞれ折り曲げられて、前記各太陽電池モジュールの端部上面をそれぞれ押える第1及び第2留め部を有し、前記第1留め部は、太陽電池モジュールの端部上面を押える押え部と、前記押え部の先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部とを有している。
【0022】
このような太陽電池モジュール用架台では、上記本発明の構造物固定構造と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、各太陽電池モジュール間の隙間を狭くすることができ、太陽電池モジュールの端部に係合部等を形成する必要がなく、太陽電池モジュールの端部の形状が複雑化せず、太陽電池モジュールの端部の幅が広くならずに済む。また、太陽電池モジュールの端部を固定具の第1留め部の呼込み部から押え部下側へと容易に押し込むことができる。更に、太陽電池モジュールの端部の幅が広くならないので、太陽光の受光面積の比率が減少することはない。
【0023】
更に、本発明の施工方法は、上記本発明の太陽電池モジュール用架台を用いて、太陽電池モジュールを設置するための太陽電池モジュールの施工方法であって、前列及び後列の桟を相互に平行に配置する工程と、前記前列及び後列の桟にそれぞれの固定具を固定する工程と、前記太陽電池モジュールの一方の端部を前記前列の桟に固定された固定具の第1留め部の呼込み部から押え部下側へと挿入し、第1留め部の押さえ部により前記太陽電池モジュールの一方の端部を押さえ、前記後列の桟を前記前列の桟側に移動させて、前記太陽電池モジュールの他方の端部を前記後列の桟の固定具の第2留め部下側に挿入し、第2留め部により前記太陽電池モジュールの他方の端部を押さえ、前記太陽電池モジュールを固定する工程とを含んでいる。
【0024】
このような施工方法では、第1及び第2列の桟の固定具により太陽電池モジュールの両端部を押さえて固定するための作業が簡単であり、屋根等の上での作業の危険性が低減する。
【0025】
また、本発明の太陽電池発電システムは、上記本発明の太陽電池モジュール用架台を用いて、複数の太陽電池モジュールを設置している。
【0026】
このような太陽電池発電システムでは、上記本発明の太陽電池モジュール用架台と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、各構造物の端部の間に固定具の立設部が挟まれるが、この立設部を平板状のものとすることにより、各構造物間の隙間を狭くすることができる。また、第1及び第2留め部は、構造物の端部上面をそれぞれ押えるだけであるから、構造物の端部に係合部等を形成する必要がなく、構造物の端部の形状が複雑化せず、構造物の端部の幅が広くならずに済む。更に、第1留め部は、構造物の端部上面に接する押え部と、押え部の先端で斜め上方に折り曲げられた呼込み部とを有していることから、構造物の端部を固定具の第1留め部の呼込み部から押え部下側へと容易に押し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の太陽電池モジュール用架台の一実施形態を用いて、複数の太陽電池モジュールを支持した太陽電池発電システムを示す斜視図である。
【図2】図1の太陽電池発電システムにおける太陽電池モジュールを示す斜視図である。
【図3】本実施形態の太陽電池モジュール用架台における横桟に対する太陽電池モジュールの固定箇所を拡大し分解して示す斜視図である。
【図4】本実施形態の太陽電池モジュール用架台における横桟を示す斜視図である。
【図5】図4の横桟を示す断面図である。
【図6】本実施形態の太陽電池モジュール用架台における固定金具を表側から見て示す斜視図である。
【図7】図6の固定金具を裏側から見て示す斜視図である。
【図8】図6の固定金具を示す側面図である。
【図9】本実施形態の太陽電池モジュール用架台における板ナットを示す斜視図である。
【図10】固定金具及び板ナットを用いて、横桟を挟んで配置された2枚の太陽電池モジュールを該横桟に固定した状態を示す断面図である。
【図11】本実施形態の太陽電池モジュール用架台における縦桟を示す斜視図である。
【図12】横桟を縦桟に接続固定するのに用いられる取付け金具を示す斜視図である。
【図13】(a)及び(b)は、取付け金具及び縦桟を表側及び裏側から見て示す斜視図である。
【図14】縦桟に対する横桟の取付け構造を示す分解斜視図である。
【図15】(a)〜(d)は、一対の横桟間に太陽電池モジュールを嵌め込んで固定するための施工手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の太陽電池モジュール用架台の一実施形態を用いて、複数の太陽電池モジュールを支持した太陽電池発電システムを示す斜視図である。
【0031】
この太陽電池発電システム1は、屋根2上に4本の縦桟3を離間させて相互に平行に固定配置し、各縦桟3上に、3本の横桟4を一定の間隔を開けて相互に平行に固定配置し、この3本の横桟4間に8枚の太陽電池モジュール5を架け渡して固定したものである。
【0032】
屋根2に対する各縦桟3の固定は、周知の如何なる方法もしくは構造によってなされてもよい。例えば、屋根2の瓦を貫通して垂木に接続された金具により各縦桟3を固定することができる。あるいは、特開平11−324259号公報に開示されている構造により各縦桟3を固定することができる。
【0033】
各縦桟3の長手方向が屋根2の水流れ方向Aに一致し、各横桟4の長手方向が水流れ方向Aと直交する方向に一致している。水流れ方向Aの下流側から上流側へと1列目、2列目、3列目の横桟4が並び、1列目と2列目の各横桟4間に4枚の太陽電池モジュール5が架け渡されて固定され、2列目と3列目の各横桟4間に4枚の太陽電池モジュール5が架け渡されて固定されている。
【0034】
図2は、太陽電池モジュール5を示す斜視図である。この図2に示すように太陽電池モジュール5は、太陽光を光電変換する太陽電池パネル6と、この太陽電池パネル6を縁取って保持する枠部材7とで構成されている。枠部材7は、アルミ材からなる。
【0035】
図3は、図1における横桟4に対する太陽電池モジュール5の固定箇所を拡大し分解して示す斜視図である。この図3に示すように板ナット13を用いて、固定金具12を横桟4に固定し、固定金具12により太陽電池モジュール5の枠部材7を固定し、横桟4上に太陽電池モジュール5の枠部材7を接続支持する。
【0036】
本実施形態の太陽電池モジュール用架台11は、4本の縦桟3、3本の横桟(桟)4、太陽電池モジュール(構造物)5を横桟4に固定するための固定金具(固定具)12、及び固定金具12を横桟4に固定するための板ナット13を備えている。
【0037】
縦桟3、横桟4、固定金具12、及び板ナット13は、例えば鋼板を切断及び折り曲げ加工して、メッキ処理を施したものである。
【0038】
図4及び図5は、横桟4を示す斜視図及び断面図である。図4及び図5から明らかなように横桟4は、一枚の鋼板等を折り曲げたものであり、その中央に鋼板を折り曲げて重ねてなる境界壁4aが形成されている。この境界壁4aの一方側に、断面形状がコの字型のレール部4bが形成され、レール部4bの底部に長形孔4fが形成されている。レール部4bは、固定金具12の奥行きの長さと同一の幅を有し、このレール部4bに固定金具12を配置することができる。
【0039】
レール部4bの一方の側壁4cは、内側に折り曲げられて2重となり、その上端部が太陽電池モジュール5の枠部材7底面が載置される第1台座部4eとなっている。
【0040】
また、横桟4の境界壁4aの他方側には、第2台座部4gが形成されている。第2台座部4gは、段状に形成されたものであり、第1台座部4eと同じ高さに設定されている。
【0041】
境界壁4aは、第1及び第2台座部4e、4gの上面に対して垂直に立っている。
【0042】
図6、図7、及び図8は、固定金具12を表側から見て示す斜視図、裏側から見て示す斜視図、及び側面図である。この固定金具12は、例えば奥行きが4cm、横が6cm、高さが6cm程度のサイズを有し、またその板厚が1.6mm程度である。
【0043】
図6〜図8に示すように固定金具12は、底板12a、底板12aの両側を垂直に折り曲げてなる各側壁12b、及び底板12aの一辺を垂直に折り曲げてなる立設板(立設部)12cを有している。
【0044】
底板12aには、穿孔12dが形成されている。この底板12aの奥行の長さが横桟4のレール部4bの幅よりも僅かに短くされており、この底板12aが横桟4のレール部4bの内側に配置し得るようにされている。
【0045】
各側壁12bの上端には、外側に折り曲げられた各受け部12eが形成されている。各側壁12b並びに各受け部12eは、立設板12cから離間している。また、各受け部12eの高さは、固定金具12の底板12aを横桟4のレール部4bに載せたときに横桟4の第1及び第2台座部4e、4gと同一高さもしくは僅かに低くなるように設定されている。
【0046】
立設板12cの上端には、底板12a側に折り曲げられた第1留め部12fと、底板12aとは反対側に折り曲げられた第2留め部12gが形成されている。2つの第1留め部12fが立設板12cの上端両側に設けられ、また1つの第2留め部12gが立設板12cの上端中央に設けられ、2つの第1留め部12fと1つの第2留め部12gが交互に配置されている。
【0047】
第1留め部12fは、立設板12cに対して直角に折り曲げられた押え部12hと、この押え部12hの先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部12iとを有している。また、第2留め部12gは、立設板12cに対して直角に折り曲げられている。尚、第1及び第2留め部12f、12gの個数を増減しても構わない。
【0048】
また、立設板12cには、この立設板12cの背面側(底板12aとは反対側)に突出した2つの当たり部12jが形成されている。各当たり部12jは、立設板12cの高さ方向に長く相互に平行になるように形成されており、雨水が各当たり部12j間を流れ落ちるようにされている。また、各当たり部12jは、固定金具12の底板12aを横桟4のレール部4bに載せたときに横桟4の境界壁4aに当接し得る高さにある。
【0049】
図9は、板ナット13を示す斜視図である。図9に示すように板ナット13は、主板13a、主板13aの一辺を垂直に折り曲げてなる第1当接部13b、及び主板13aに形成されたコの字型の切り込みの内側を起こしてなる第2当接部13cとを有している。
【0050】
第1及び第2当接部13b、13cの離間距離は、横桟4のレール部4bの外側幅よりも僅かに広くされており、板ナット13の主板13aを横桟4のレール部4bの外側底面に当接させたときに第1及び第2当接部13b、13c間に横桟4のレール部4bの外側が挟み込まれて、第1及び第2当接部13b、13cがレール部4bの外側壁面に当接する。
【0051】
第1及び第2当接部13b、13cの略中央付近には、ネジ孔13dが形成されている。また、主板13aの端部には、穿孔13eが形成されている。
【0052】
ここで、図3に示すように固定金具12の底板12aを横桟4のレール部4bに嵌め入れて配置し、固定金具12の立設板12cの背面の各当たり部12jを横桟4の境界壁4aに当接させる。また、板ナット13の主板13aを横桟4のレール部4bの外側底面に当接させ、板ナット13の第1及び第2当接部13b、13c間に横桟4のレール部4bの外側を挟み込む。この状態では、固定金具12の底板12aの穿孔12d、横桟4のレール部4bの長形孔4f、及び板ナット13の主板13aのネジ孔13dが重なり合い、ボルト21をワッシャ22、固定金具12の穿孔12d、及び横桟4の長形孔4fを介して板ナット13のネジ孔13dにねじ込むことができ、ボルト21を締め込むことにより固定金具12を横桟4のレール部4bに締結することができる。
【0053】
また、ボルト21を締め込む前には、固定金具12の穿孔12dが横桟4の長形孔4fに重なる範囲で、固定金具12を横桟4のレール部4b内側で該横桟4の長手方向に移動させて、固定金具12の位置を調節することができる。
【0054】
図10は、固定金具12を用いて、横桟4を挟んで配置された2枚の太陽電池モジュール5を該横桟4に固定した状態を示す断面図である。
【0055】
図10に示すように固定金具12は、その底板12aを横桟4のレール部4bの内側底面に載せられ、その立設板12cの背面の各当たり部12jを横桟4の境界壁4aに当接させられている。また、板ナット13は、その主板13aを横桟4のレール部4bの外側底面に当接させられ、その第1及び第2当接部13b、13c間に横桟4のレール部4bの外側を挟み込んでいる。ボルト21は、ワッシャ22、固定金具12の穿孔12d、及び横桟4の長形孔4fを介して板ナット13のネジ孔13dにねじ込んで締め込まれ、固定金具12を横桟4のレール部4bに固定している。
【0056】
一方の太陽電池モジュール5の枠部材7は、横桟4の第1台座部4eに載せられている。また、枠部材7の端部が固定金具12の各第1留め部12fの押え部12hの下側に押し込められて、各第1留め部12fの押え部12hにより枠部材7の端部上面が押えられ、枠部材7の端部が横桟4の第1台座部4eと各第1留め部12fの押え部12h間に挟みこまれて固定されている。また、枠部材7の端面が固定金具12の立設板12cに当接している。
【0057】
この太陽電池モジュール5の枠部材7は、二点鎖線で示すように太陽電池モジュール5を傾斜させて、枠部材7の端部を固定金具12の各受け部12eに載せてスライドさせ、枠部材7の端部の下側角を固定金具12の各受け部12eと立設板12c間の空きスペースに移動させると共に、枠部材7の端部を各第1留め部12fの呼込み部12iから押え部12hへと挿入して押し込む。
【0058】
各第1留め部12fの押え部12hの先端側に斜め上方に折り曲げられた呼込み部12iを形成していることから、傾斜した太陽電池モジュール5の枠部材7の端部を各第1留め部12fの呼込み部12iの下側に容易に入れることができ、引き続いて枠部材7の端部を各第1留め部12fの呼込み部12iから押え部12hへと容易に挿入して押し込むことができる。
【0059】
また、固定金具12の各受け部12eと立設板12c間を離間させていることから、各第1留め部12fの下方が空き、枠部材7の端部を固定金具12の各受け部12eに載せてスライドさせると、傾斜した太陽電池モジュール5の枠部材7の端部の下側角が各受け部12eと立設板12c間に落ち込んで、枠部材7の端部上面を各第1留め部12fの押え部12hまで容易に押し込むことができる。
【0060】
こうして傾斜した太陽電池モジュール5の枠部材7の端部を各第1留め部12fの呼込み部12iから押え部12hへと挿入して押し込んだ後、太陽電池モジュール5の枠部材7を横桟4の第1台座部4eに載せると、各第1留め部12fの押え部12hにより枠部材7の端部上面が押えられ、枠部材7の端部が横桟4の第1台座部4eと各第1留め部12fの押え部12h間に挟みこまれて固定される。また、枠部材7の端面が固定金具12の立設板12cに当接する。
【0061】
尚、固定金具12の各受け部12eの高さが横桟4の第1台座部4eと同一高さである場合は、太陽電池モジュール5の枠部材7が横桟4の第1台座部4eと固定金具12の各受け部12eに載ることになる。
【0062】
また、図10に示すように他方の太陽電池モジュール5の枠部材7は、横桟4の第2台座部4gに載せられている。枠部材7の端部が固定金具12の第2留め部12gの下側に押し込められて、第2留め部12gにより枠部材7の端部上面が押えられ、枠部材7の端部が横桟4の第2台座部4gと第2留め部12g間に挟みこまれて固定されている。また、枠部材7の端面が横桟4の境界壁4aに当接している。
【0063】
この太陽電池モジュール5の枠部材7は、二点鎖線で示すように太陽電池モジュール5の枠部材7の端部を横桟4の第2台座部4gの縁付近に載せてから、横桟4を太陽電池モジュール5の枠部材7に接近するように移動させて、枠部材7の端部を横桟4の第2台座部4gと第2留め部12g間に挿入して押し込むことにより固定される。また、枠部材7の端面が横桟4の境界壁4aに当接する。
【0064】
次に、本実施形態の太陽電池モジュール用架台11により太陽電池モジュール5を屋根2上に取付けるための施工手順を説明する。
【0065】
まず、図1に示すように屋根2上に4本の縦桟3を離間させて相互に平行に固定配置する。屋根2に対する各縦桟3の固定は、周知の如何なる方法もしくは構造によってなされてもよい。
【0066】
引き続いて、各縦桟3上に、3本の横桟4を一定の間隔を開けて相互に平行に取付ける。図11に示すように縦桟3は、長細い主板3a、主板3aの両辺で折り曲げられた各側板3b、及び各側板3bの縁辺で折り曲げられた各鍔3cからなるハット型の断面形状を有しており、主板3aの2箇所に取付け孔3dが形成され、主板3aの3箇所に係合孔3eが形成されている。縦桟3の主板3aの各取付け孔3dは、縦桟3を屋根2に取付けるために用いられる。
【0067】
縦桟3の主板3aの各係合孔3eには、図12に示すような取付け金具31が取付けられる。この取付け金具31は、その主板31aにネジ孔31bを形成し、その両側に各側板31cを設けて2重に折り曲げ、更にそれぞれの側板31cの中央から突出するT字型の支持片31dを設けたものである。
【0068】
図13(a)、(b)に示すように、取付け金具31の一方の支持片31dを縦桟3のスリット3fに挿し込んで、この一方の支持片31dをスリット3fから係合孔3eへと移動させ、引き続いて取付け金具31の他方の支持片31dをスリット3fに挿し込んで、この他方の支持片31dもスリット3fから係合孔3eへと移動させ、各支持片31dのT字型の頭部を係合孔3eに引っ掛けて、取付け金具31を縦桟3の主板3aに取付ける。このとき、取付け金具31の各側板31cが縦桟3の各側板3bに対して垂直に配置される。
【0069】
次に、図14示すように縦桟3の係合孔3eに取付けられた取付け金具31の一対の支持片31d間に横桟4を配置し、取付け金具31の部位で、押え部材32を横桟4に重ね合わせ、ボルト33を押え部材32の孔及び横桟4の長形孔4fを通じて取付け金具31のネジ孔31bにねじ込んで、横桟4を縦桟3に仮止めする。
【0070】
図1に示すように各縦桟3上に、3列の横桟4を一定の列間隔を開けて相互に並行に配置し、1列目の横桟4を支持する各取付け金具31のボルト33を締め付けて、1列目の横桟4を完全に固定し、2列目と3列目の各横桟4を仮止めする。
【0071】
横桟4毎に、図3に示すように板ナット13及びボルト21を用いて、横桟4に固定金具12を固定する。
【0072】
この後、図15(a)に示すように4枚の太陽電池モジュール5を横並びにして1列目の横桟4と2列目の横桟4間に挿入して配置する。
【0073】
そして、太陽電池モジュール5毎に、図15(b)に示すように太陽電池モジュール5の水流れ方向上流側一辺を持ち上げて、図15(c)に示すように太陽電池モジュール5の水流れ方向下流側一辺を1列目の横桟4に押し付ける。これにより、太陽電池モジュール5の水流れ方向下流側の端部(枠部材7の端部)が固定金具12の各第1留め部12fの呼込み部12iから押え部12hへと挿入されて押し込まれる。
【0074】
更に、図15(d)に示すように太陽電池モジュール5の水流れ方向上流側一辺を降ろして、太陽電池モジュール5の水流れ方向下流側の端部を1列目の横桟4の第1台座部4eに載せ、太陽電池モジュール5の水流れ方向上流側の端部(枠部材7の端部)を2列目の横桟4の第2台座部4gの縁付近に載せる。このとき、1列目の横桟4に固定された固定金具12の各第1留め部12fの押え部12hにより太陽電池モジュール5の水流れ方向下流側の端部上面が押えられ、この下流側の端部が横桟4の第1台座部4eと固定金具12の各第1留め部12fの押え部12h間に挟みこまれて固定される。また、太陽電池モジュール5の水流れ方向下流側の端面が固定金具12の立設板12cに当接する。
【0075】
この後、2列目の横桟4を水流れ方向Aに移動させて太陽電池モジュール5の水流れ方向上流側一辺に押し付け、太陽電池モジュール5の水流れ方向上流側の端部を2列目の横桟4の第2台座部4gと該横桟4に固定された固定金具12の第2留め部12g間に挿入して押し込む。これにより、太陽電池モジュール5の水流れ方向上流側の端部が固定され、その上流側の端面が横桟4の境界壁4aに当接する。
【0076】
そして、2列目の横桟4を支持する各取付け金具31のボルト33を締め付けて、2列目の横桟4を完全に固定する。
【0077】
同様の手順で、2列目の横桟4と3列目の横桟4間にも、4枚の太陽電池モジュール5を横並びにして固定する。
【0078】
このように本実施形態の太陽電池モジュールシステム1では、横桟4を挟んで配置された2枚の太陽電池モジュール5が該横桟4に固定された固定金具12により固定される。これらの太陽電池モジュール5間に固定金具12の立設板12cが挟まれるが、この立設板12cが平板状のものであるから、各太陽電池モジュール5の隙間を狭くすることができる。また、固定金具12の第1及び第2留め部12f、12gは、太陽電池モジュール5の枠部材7の端部上面をそれぞれ押えるだけであるから、枠部材7の端部に係合部等を形成する必要がなく、枠部材7の端部の形状が複雑化することがない。このため、多様な太陽電池モジュールの適用が可能となり、固定金具12及び太陽電池モジュール用架台11の汎用性が広がる。また、枠部材7の端部の幅が広くならず、太陽電池発電システム1の設置面積に対する太陽光の受光面積の比率が減少することはない。
【0079】
更に、固定金具12の第1留め部12fは、押え部12hと、この押え部12hの先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部12iとを有することから、太陽電池モジュール5の枠部材7の端部を固定金具12の第1留め部12fの呼込み部12iに容易に挿入することができ、引き続いて枠部材7の端部を呼込み部12iから押え部12h下側へと容易に押し込むことができる。
【0080】
また、固定金具12の各受け部12eと立設板12c間を離間させていることから、各第1留め部12fの下方が空き、傾斜した太陽電池モジュール5の枠部材7の端部の下側角が各受け部12eと立設板12c間に落ち込んで、枠部材7の端部上面を各第1留め部12fの押え部12hまで容易に押し込むことができる。
【0081】
更に、固定金具12の第1及び第2留め部12f、12gと横桟4の第1及び第2台座部4e、4gとの間に、隣り合う各太陽電池モジュール5の枠部材7の端部をそれぞれ挟み込むことにより、これらの太陽電池モジュール5を確実に固定することができる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと解される。
【0083】
例えば、太陽電池モジュールの代わりに、太陽熱発電に用いられる反射鏡パネル等を支持してもよい。これにより、太陽熱発電システムを構築することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 太陽電池モジュールシステム
2 屋根
3 縦桟
4 横桟(桟)
4a 境界壁
4b レール部
4c 側壁
4e 第1台座部
4f 長形孔
4g 第2台座部
5 太陽電池モジュール
6 太陽電池パネル
7 枠部材
11 太陽電池モジュール用架台
12 固定金具(固定具)
12a 底板
12b 側壁
12c 立設板(立設部)
12d 穿孔
12e 受け部
12f 第1留め部
12g 第2留め部
12h 押え部
12i 呼込み部
12j 当たり部
13 板ナット
21 ボルト
22 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の構造物を固定する構造物固定構造であって、
隣り合う前記各構造物の端部に沿って配置される桟と、
前記桟に固定され、隣り合う前記各構造物の端部を共に固定する固定具を備え、
前記固定具は、隣り合う前記各構造物の端部の間に挟まれる立設部と、前記立設部の上端で前記各構造物の端部の側にそれぞれ折り曲げられて、前記各構造物の端部上面をそれぞれ押える第1及び第2留め部を有し、
前記第1留め部は、構造物の端部上面を押える押え部と、前記押え部の先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部とを有することを特徴とする構造物固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物固定構造であって、
前記固定具における前記第1留め部の折り曲げ側に、隣り合う前記各構造物の端部の一方が載せられる受け部を有し、
前記受け部を前記固定具の立設部から離間させたことを特徴とする構造物固定構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の構造物固定構造であって、
前記桟は、隣り合う前記各構造物の端部が載置されるそれぞれの台座部を有し、
前記固定具の第1及び第2留め部と前記桟の各台座部との間に、隣り合う前記各構造物の端部をそれぞれ挟み込むことを特徴とする構造物固定構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の構造物固定構造であって、
前記固定具の立設部は平板状であり、この平板状の立設部に前記構造物の端部が接することを特徴とする構造物固定構造。
【請求項5】
並設された複数の構造物を固定する構造物固定構造に用いられる固定具であって、
隣り合う前記各構造物の端部の間に挟まれる立設部と、前記立設部の上端で隣り合う前記各構造物の端部の側にそれぞれ折り曲げられて、各構造物の端部上面をそれぞれ押える第1及び第2留め部を有し、
前記第1留め部は、構造物の端部上面を押える押え部と、前記押え部の先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部とを有することを特徴とする構造物固定構造に用いられる固定具。
【請求項6】
並設された複数の太陽電池モジュールを固定する太陽電池モジュール用架台であって、
隣り合う前記各太陽電池モジュールの端部に沿って配置される桟と、
前記桟に固定され、隣り合う前記各太陽電池モジュールの端部を共に固定する固定具を備え、
前記固定具は、隣り合う前記各太陽電池モジュールの端部の間に挟まれる立設部と、前記立設部の上端で前記各太陽電池モジュールの端部の側にそれぞれ折り曲げられて、前記各太陽電池モジュールの端部上面をそれぞれ押える第1及び第2留め部を有し、
前記第1留め部は、太陽電池モジュールの端部上面を押える押え部と、前記押え部の先端側を斜め上方に折り曲げてなる呼込み部とを有することを特徴とする太陽電池モジュール用架台。
【請求項7】
請求項6に記載の太陽電池モジュール用架台を用いて、太陽電池モジュールを設置するための太陽電池モジュールの施工方法であって、
前列及び後列の桟を相互に平行に配置する工程と、
前記前列及び後列の桟にそれぞれの固定具を固定する工程と、
前記太陽電池モジュールの一方の端部を前記前列の桟に固定された固定具の第1留め部の呼込み部から押え部下側へと挿入し、第1留め部の押さえ部により前記太陽電池モジュールの一方の端部を押さえ、前記後列の桟を前記前列の桟側に移動させて、前記太陽電池モジュールの他方の端部を前記後列の桟の固定具の第2留め部下側に挿入し、第2留め部により前記太陽電池モジュールの他方の端部を押さえ、前記太陽電池モジュールを固定する工程とを含むことを特徴とする太陽電池モジュールの施工方法
【請求項8】
請求項6に記載の太陽電池モジュール用架台を用いて、複数の太陽電池モジュールを設置した太陽電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−153465(P2011−153465A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15748(P2010−15748)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】