説明

構造的に強化された分解触媒

多孔質マトリックスとこのマトリックスが有する孔の壁を自由に覆っている結晶化したゼオライトを含んで成る新規な形態を有するゼオライト微小球FCC触媒。カオリン以外のアルミナ源(高い細孔容積を有する)とメタカオリンを含有する微小球から本触媒を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2000年9月22日付けで出願した米国連続番号09/667,677の一部継続出願である2001年9月20日付け出願した米国連続番号09/956,250(現在では2003年の12月2日付けで発行された米国特許第6,656,347号)の仮出願である2003年5月27日付けで出願した米国連続番号10/445,687の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、Y−ホージャサイトゼオライト(Y−faujasite zeolite)を含有する微小球を含んで成っていて例外的に高い活性と他の望ましい特性を有する新規な流動接触分解触媒、前記触媒の製造方法そして前記触媒を石油原料の分解、特に短い滞留時間工程下の分解で用いることに関する。
【0003】
1960年代から大部分の商業的流動接触分解触媒にゼオライトを活性成分として入れることが行われてきている。そのような触媒は小さい粒子(微小球と呼ばれる)の形態を取っていて、活性のあるゼオライト成分と非ゼオライト成分の両方が入っている。そのような非ゼオライト系成分はしばしば当該触媒のゼオライト成分用マトリックス(matrix)と呼ばれる。そのような非ゼオライト系成分は当該触媒の触媒特性および物性の両方に関係する数多くの重要な機能を果たすことが知られている。そのような機能は下記の通りであると非特許文献1に記述された:
「マトリックスはシーブの中に存在するナトリウムの吸込みとして働くことでマトリックス触媒の中のゼオライト粒子に安定性を加えると言われている。前記マトリックスは下記の追加的機能を果たす:ゼオライトを希釈する機能;それを熱および蒸気および機械的摩滅に対して安定にする機能;ゼオライトを最大能力で使用することができかつ再生を容易に行うことができるように高い間隙率を与える機能;そして最後に、再生および分解中の伝熱そして大規模な接触分解中の熱貯蔵にとって重要であるバルク特性(bulk properties)を与える機能。」
従来技術の流動接触分解触媒では、下記の2つの一般的技術の中の1つを用いて活性ゼオライト系成分を当該触媒の微小球の中に取り込ませている。1つの技術では、ゼオライト系成分を結晶化させた後に個別の段階で微小球の中に取り込ませる。2番目の技術、即ちインサイチュ技術では、最初に微小球を生じさせた後にゼオライト系成分を前記微小球自身の中で結晶化させることでゼオライト系成分と非ゼオライト系成分の両方を含有する微小球を生じさせる。
【0004】
流動接触分解触媒が商業的に成功であるにはそれが商業的に受け入れられる活性、選択性および安定性を示すべきであることは長年に渡って認識されてきている。それは経済的に魅力のある収率をもたらすに充分な活性を示すべきであり、それは所望の生成物をもたらして望まれない生成物をもたらさない方向に良好な選択性を示すべきであり、かつそれは商業的に有効な寿命を有するに充分なほど水熱的に安定で耐摩滅性を示すべきである。
【0005】
商業的接触分解工程にとって特に望まれない2種類の生成物はコークスと水素である。そのような生成物の生成がガソリンの収率に比べて少しでも増加すると有意な実用上の問題が起こり得る。例えば、コークスの生成量が増加すると当該触媒に再生を受けさせている時に起こる非常な発熱によってコークスが焼失することで発生する熱が望ましくなく高くなり得る。逆に、コークスの生成が不充分であるとまた分解工程の熱均衡が壊れる可能性もある。加うるに、商業的製油所では大量の気体、例えば水素などを取り扱う目的で高価な圧縮装置が用いられる。従って、水素の生成量が増加すると実質的に製油所の投資費用が増加する可能性がある。
【0006】
Y−ホージャサイトを約40重量%以上、好適には50−70重量%含有する耐摩滅性で高ゼオライト含有量の触媒活性微小球を含んで成る新規な流動分解触媒および前記触媒の製造方法が特許文献1(これの教示は相互参照することによって本明細書に組み入れられる)に開示されており、そこでは、異なる2種類の形態の化学的反応性焼成カオリン、即ちメタカオリン(脱ヒドロキシルに伴う強力な吸熱反応を起こすような焼成を受けさせたカオリン)とカオリンをメタカオリンに変化させる目的で用いられる条件より苛酷な条件下で焼成を受けさせたカオリン、即ち特徴的なカオリン発熱反応を起こすような焼成を受けさせたカオリン(時にはスピネル形態の焼成カオリンと呼ばれる)の混合物で構成させた多孔質微小球の中に入っているナトリウムYゼオライトの約40%以上を結晶化させて製造している。好適な態様では、前記2形態の焼成カオリンを含有する微小球をアルカリ性ケイ酸ナトリウム溶液の中に浸漬して、それを加熱、好適には前記微小球の中で最大限利用可能な量のY−ホージャサイトが結晶化するまで加熱する。
【0007】
特許文献1の技術を実施する時、ゼオライトを中で結晶化させる多孔質微小球の調製を、好適には、粉末にした生(水和)カオリン(Al:2SiO:2HO)と粉末にした焼成カオリン(発熱を起こした)を少量のケイ酸ナトリウム[これはスラリー用の流動化剤として働き、これを微小球を生じさせる噴霧乾燥器に仕込むと、それは後で噴霧乾燥微小球の成分に物理的一体性を与える機能を果たす]と一緒にして水性スラリーを生じさせることを通して実施する。次に、その噴霧乾燥微小球(これは水和カオリンと発熱を起こすような焼成を受けたカオリンの混合物を含有する)に焼成を制御した条件、即ちカオリンが発熱を起こすに必要な条件より苛酷ではない条件下で受けさせることで、前記微小球の水和カオリン部分に脱水を受けさせかつそれをメタカオリンに転化させ、その結果として、メタカオリンと発熱を起こす焼成を受けたカオリンとケイ酸ナトリウムである結合剤の所望混合物を含有する微小球を生じさせる。特許文献1の典型的な実施例では、噴霧乾燥器供給材料の中に水和カオリンとスピネルをほぼ等しい重量で存在させており、前記の結果として焼成を受けた微小球は、発熱を起こしたカオリンをメタカオリンよりいくらか多い量で含有する。特許文献1には、前記焼成を受けた微小球はメタカオリンを約30−60重量%と特徴的な発熱を経たことを特徴とするカオリンを約40−70重量%含有することが教示されている。特許文献1に記述されているあまり好適ではない方法は、メタカオリン状態になるように前以て焼成を受けさせておいたカオリンと発熱を起こす焼成を受けさせておいたカオリンの混合物が入っていて水和カオリンが全く入っていないスラリーに噴霧乾燥を受けさせることを伴い、従って、メタカオリンと発熱を起こす焼成を受けたカオリンの両方を含有する微小球を、水和カオリンをメタカオリンに転化させる焼成を伴わせないで直接生じさせている。
【0008】
特許文献1に記述されている発明を実施する時、発熱を起こす焼成を受けたカオリンとメタカオリンで構成させた微小球と苛性が豊富なケイ酸ナトリウム溶液を結晶化開始剤(種晶)の存在下で反応させることで前記微小球の中のシリカおよびアルミナを合成ナトリウムホージャサイト(ゼオライトY)に転化させる。前記微小球をケイ酸ナトリウム母液から分離し、それに希土類、アンモニウムイオンまたは両方によるイオン交換を受けさせることで、希土類またはいろいろな公知安定化形態の触媒を生じさせる。特許文献1の技術は、高い活性、良好な選択性および熱安定性に関係する高いゼオライト含有量ばかりでなく耐摩滅性のユニークな望ましい組み合わせを達成する手段を提供する技術である。
【0009】
上述した技術は広範囲に及ぶ商業的効果を満足させた。現時点で、製油所は、ゼオライト含有量が高いことに加えてまた耐摩滅性も示す微小球を入手することができるようになったことから、特殊な性能目標、例えば活性および/または選択性の向上を高価な機械的再設計を被ることなく得ると言った目標に合わせて設計した触媒を利用することができるようになった。国内および海外の製油所に現在供給されているFCC触媒の大部分はそのような技術が基になっている。再生装置の最大許容温度または送風機の容量が原因でFCC装置が制限されている製油所は、結果としてコークス生成量の低下をもたらす選択性の向上を探求すると同時に気体圧縮装置が制限されている場合には気体生成量が低い触媒を非常に望んでいる。一見して、送風機または再生装置の温度が制限されている場合にはコークス量が少しでも減少するとそれはFCC装置の操作にとって有意な経済的利点に相当し得る。
【0010】
分解触媒が示す分解活性の向上とガソリン選択性の向上は必ずしも関連するとは限らない。このように、分解触媒が卓越して高い分解活性を示し得るとしても、そのような活性の結果としてコークスおよび/または気体への転化が高い度合で起こってガソリンが犠牲になると、そのような触媒は有用性が制限されるであろう。今日のFCC触媒が示す接触分解活性はゼオライト成分と非ゼオライト(例えばマトリックス)成分の両方に起因し得る。ゼオライトによる分解はガソリン選択的である傾向がある。マトリックスによる分解はあまりガソリン選択的ではない傾向がある。特許文献1に記述されているインサイチュ手順で生じさせた高ゼオライト含有量の微小球に希土類カチオンによるイオン交換処置を適切に受けさせるとそれは高い活性と高いガソリン選択性の両方を示すようになる。そのような混合型ではない微小球のゼオライト含有量を高くすると活性と選択性の両方が高くなる傾向がある。このことは、ゼオライト含有量が高くなるに伴ってマトリックス含有量が低くなりかつマトリックスによる非選択的分解の役割が徐々に主流でなくなることで説明可能である。従って、ゼオライト含有量が高い微小球のゼオライト含有量を高くするのが非常に望ましいと報告されている。
【0011】
触媒を特許文献1の方法で生じさせるとそのような活性および選択性が達成されはするが、そのような触媒は、ゼオライト含有量をマトリックスの中に取り込ませることによって作られた流動接触分解触媒に比べて、一般に、全間隙率が比較的低い。特に、そのような触媒の微小球が示す全間隙率はある場合には約0.15cc/g未満であり、或は約0.10cc/g未満でさえある。特許文献1の微小球が示す全間隙率は一般に0.30cc/g未満である。本明細書で用いる如き「全間隙率」は、水銀ポロシメータ技術で測定した時の直径が35−20,000Åの範囲内の孔の体積を意味する。特許文献1には、全間隙率が約0.15cc/g未満の微小球がそのような活性および選択性を示すことは驚くべきことであると述べられている。例えば、そのような結果は、細孔容積が小さいと「拡散制限が理由で選択性の損失がもたらされる可能性がある」と言った従来技術の開示とは対照的である。
【0012】
特許文献1と同様にして生じさせた触媒微小球が示す間隙率が比較的低くても活性および選択性には悪影響が生じないと信じられている、と言うのは、特許文献1の微小球は特許文献1の時点で用いられた典型的なFCC工程条件では拡散が制限されないからである。特に、分解を受けさせるべき供給材料と触媒が接触する時間は典型的に5秒以上である。このように、ゼオライトをマトリックスの中に物理的に取り込ませることで生じさせた典型的なFCC触媒の方が間隙率が高い可能性はあるが、従来技術のFCCライザーにおける反応時間は、活性に関しても選択性に関しても全く利点をもたらさなかった。そのような結果によって、FCC触媒では移動プロセスが全く制限されない、少なくともゼオライト構造物の外側では制限されないと言った結論がもたらされた。その逆の主張は事実と一致せずかつ独善的であるとして容易に退けられた。重要なことは、特許文献1に従って作られた微小球が示す耐摩滅性の方が通常のFCC触媒(結晶化させたゼオライト触媒成分を非ゼオライト系マトリックスの中に物理的に取り込ませた触媒である)より優れていることである。
【0013】
しかしながら、最近になって、分解を受けさせるべき供給材料と触媒の間の接触時間が劇的に短いFCC装置が開発された。そのような反応槽は通常はライザーであり、その場合には、触媒と炭化水素原料がライザーの下部から入ってライザーを通って移動する。そのライザーの中を通っている間に熱せられた触媒が炭化水素を分解させそしてその分解生成物は前記ライザーから出た時点で前記触媒から分離される。その後、その触媒を再生装置に送ってコークスを除去することで前記触媒を奇麗にすると同時に前記触媒がライザー反応槽の中で要求する熱を与える。より最新のライザー反応槽は、コークス選択性と超過分のコークスが最小限になるように、より短い滞留時間およびより高い操作温度で操作される。そのようなデザインのいくつかはライザーさえも用いておらず、それによって、接触時間が1秒未満にまで更に短くなっている。そのようにハードウエアを変えることで結果としてガソリンおよび乾燥気体の選択性を向上させることができる。そのようなFCC装置改造品は購入する触媒の種類とは関係なく価値が有るとして市販されており、このことは、最新の触媒技術には装置的な問題が存在しないことを暗示している。
【0014】
FCC型の工程で処理される供給材料は益々重質になってきておりかつそのような供給材料はコークスの生成量を多くしかつ望ましくない生成物をもたらす傾向があることから、また、そのような供給材料を触媒と接触させる新規な方法ももたらされた。接触させるFCC触媒の接触時間を非常に短くする方法に特に興味が持たれている。このように、ライザーの中の接触時間を短くして3秒未満にしそして1秒以内の極めて短い接触時間にするとガソリンへの選択率が向上すると同時にコークスおよび乾燥気体生成量が低下することが分かった。
【0015】
FCC工程では触媒と油の接触時間が短くなり続けていることを補う目的で、使用時の「平衡状態」の触媒の活性をより高くしようとする傾向がある。従って、触媒が有する全表面積の増大を達成する必要がありかつ同様に触媒に添加する希土類酸化物助触媒の濃度も高くしてきている。その上、転化率の低下を補う目的で分解温度も高くしてきている。不幸なことに、装置改造後の短い接触時間(SCT)で生じた残油が示すAPI重力がしばしば高くなることが確認され、その結果として、ある人は炭化水素原料に含まれる最も重い部分の分解の方がより長い時間を要すると考えるようになった。その上、触媒が有する全表面積を高くすることは価値有ることではあるが、それでも、FCC工程にとって耐摩滅性は価値の有ることである。従って、本技術分野に関与している技術者に明らかではないかもしれないが、現在用いられようとしている新規な短い接触時間および極めて短い接触時間の工程に適するようにFCC触媒を最適にする必要性が生じて来る可能性が大きくなってきている。
【0016】
ここに、炭化水素を短い接触時間で処理しようとする時には現在の触媒にまだ存在し得る拡散限界をなくすことでさらなる向上を得ることができると理論付けする。そのような用途で前記材料が優れているとしてもそのように結論付ける。触媒の間隙率を最適にしかつ活性部位の閉塞をなくしかついわゆる取り込み方法で作られた触媒に存在する結合剤相が示す拡散限界をなくすことでそのような触媒の改良をもたらすことができると理論付けする。
【0017】
本譲受人は噴霧乾燥微小球ゼオライト前駆体のマクロ間隙率(macroporosity)を高くすることでゼオライト含有量が高くかつ活性が高いゼオライト微小球をもたらしはしたが、その生じさせたゼオライト微小球触媒が示す間隙率は以前には問題であるとは見なされていなかった、と言うのは、以前のFCC工程技術の下では拡散限界が存在していなかったからである。例えば、高い間隙率を有する前駆体微小球を生じさせることによってインサイチュ触媒のゼオライト含有量を高くすることで多孔質マトリックスの中で成長するゼオライトの量を多くすることができることが特許文献2に開示されている。スピネル焼成カオリンと一緒に大型(2ミクロン以上)のカオリン堆積物が主要量で存在することを特徴とする含水カオリンのスラリーに噴霧乾燥を受けさせることでそのように間隙率が高い前駆体微小球を生じさせている。そのような粗い含水カオリンに噴霧乾燥を受けさせると、結果として、ゼオライトYが中で成長することができるマクロ孔の含有量が所望通り高い微小球がもたらされる。特許文献3でもまた同様に含水カオリンとメタカオリンとスピネルの混合物に噴霧乾燥を受けさせることで前駆体微小球のマクロ間隙率を大きくしている。そのような触媒微小球はゼオライトを実質的な濃度で有しかつ活性および選択性が非常に高い。その上、そのような触媒に含まれる高アルミナのシリカ−アルミナマトリックス部分はしばしば全体がインサイチュで生じたゼオライトで取り巻かれており、その結果として、そのようなマトリックスは接触時間が短いFCC条件下では残油を分解させる度合が低いと今では理解されている。
【特許文献1】米国特許第4,493,902号
【特許文献2】共通譲渡されたSperonello他の米国特許第4,965,233号
【特許文献3】共通譲渡されたDight他の米国特許第5,023,220号
【非特許文献1】A.G.Oblad、Molecular Sieve Cracking Catalysts、The Oil And Gas Journal、70、84(1972年3月27日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、マトリックスがゼオライトで覆われている形態を有していて耐摩滅性で高間隙率の触媒およびそのように触媒を再現可能様式で製造する方法を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、接触時間が短いFCCに最適な触媒、特に残油の分解を最大限にする触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に従い、マクロ多孔性であり、非常に高い活性を示すに充分な濃度でゼオライトを有しかつSCT FCC工程下で炭化水素から分解で生じるガソリン生成物への有効な転化率を向上した残油分解率を伴って達成するユニークな形態を有する新規なゼオライト微小球を生じさせる。本発明の新規なゼオライト微小球は、特許文献1に記述されている技術の修飾形である新規な方法を用いて製造したものである。本触媒に含めるアルミナが豊富な非ゼオライトマトリックスが、微粉砕および発熱を経る焼成を受けていて含水カオリン粒子の90重量%が2ミクロン未満であるような粒子サイズを有する超微細な含水カオリン源から生じさせたものであると、マクロ多孔性のゼオライト微小球が生じ得ることを見いだした。より一般的には、本発明でFCC触媒のマクロ間隙率を達成しようとする時に有用なFCC触媒マトリックスはアルミナ源、例えば発熱を経る焼成を受けたカオリン(これは触媒マトリックスを生じさせる目的で用いられる従来技術の焼成カオリンから区別される指定水細孔容積を有する)などから生じさせたマトリックスである。前記水細孔容積はインシピエントスラリー点(Incipient Slury Point)(ISP)試験(以下に記述する)を用いて得た細孔容積である。
【0021】
その生じさせた微小球触媒の形態は以前に作られたインサイチュ微小球触媒に比べてユニークである。発熱を経る焼成の後に粉砕を受けさせた超微細な含水カオリンを用いるとマクロ多孔性構造を有するインサイチュゼオライト微小球がもたらされ、前記構造のマクロ孔は結晶化後に本質的にゼオライトで覆われているか或は内張りされている。本明細書で定義する如きマクロ多孔性は、当該触媒が有する600−20,000Åの範囲内の孔のマクロ孔体積が少なくとも0.07cc/gの水銀侵入(mercury intrusion)であることを意味する。本発明の触媒はまた500m/g未満のBET表面積も示すべきである。本発明の新規な触媒はFCC工程に最適であり、そのような工程には、炭化水素原料を触媒に接触させる時間が約3秒以内である接触時間が短い工程が含まれる。
【0022】
最も幅広い意味において、本発明をカオリン単独に由来する非ゼオライトマトリックスを有するマクロ多孔性触媒に限定するものでない。このように、ゼオライト合成中に適切な間隙率と適切な反応性の組み合わせを示しかつ触媒に望まれるマクロ間隙率および形態をもたらし得る如何なるアルミナ源も使用可能である。所望の形態は、触媒全体に渡って良好に分散しているマトリックスを含んで成りそして前記マトリックスのマクロ孔の壁がゼオライトで内張りされていて結合剤の被膜を実質的に含まない形態である。従って、以前の触媒に比べて大きく改良したのは、触媒が有する孔の表面積が大きいことばかりでなく、活性のあるマトリックスが微小球全体に渡って分散していることで、炭化水素原料がゼオライトの結晶に容易に近づける点にある。如何なる実施理論によっても範囲が限定されることを望むものでないが、ゼオライトを物理的混合でマトリックスの中に取り込ませて結合剤で糊付けした以前の触媒は充分なマクロ間隙率を持つとしても前記結合剤が活性ゼオライト触媒を覆うことでそれへの接近を妨げていると思われる。本微小球触媒は、そのようなマクロ間隙率およびマトリックスの分散が向上していることが理由で、この触媒の中に迅速に拡散することを可能にする形態を有し、かつ更に、ゼオライトが孔の壁を自由に覆っていることからゼオライトへの接近が最大である。用語「自由に」は、ゼオライト相がマトリックスの表面に存在しかつ如何なる結合剤相によっても遮られていないことを意味する。我々が得た結果は単にマクロ間隙率だけでもたらされたものではない、と言うのは、通常の取り込み型触媒も同様なマクロ間隙率を有するからである。従って、そのような驚くべき選択率の結果は間隙率とマクロ孔の壁がゼオライトで被覆されていることの組み合わせによってもたらされたものである。
【0023】
見出したように重質炭化水素原料(この分子は、一般的ではないとしても、しばしばゼオライトの孔の中に入り込むことができないほど大きい)がマトリックスと接触する前に前記原料がゼオライトと接触するのが最適であることは予想外であった。実際、広く受け入れられている「段階的分解」理論はその逆、即ち大きい方の炭化水素分子が最初に活性のあるマトリックスによって分解を受けた後に生じたより小さい分子がゼオライト内で分解を受けることを示唆している。そのように気づいた考えの探求または裏付けで多くの研究および宣伝活動を行ってきた。
発明の詳細な説明
本発明の触媒微小球は、共通譲渡の特許文献1に開示されている如き一般的方法を用いて製造したものである。重要なことは、本発明の触媒のアルミナが豊富な非ゼオライト系マトリックスを好適には粒子の少なくとも90重量%が2.0ミクロン未満、好適には少なくとも90重量%が1ミクロン未満の超微細粉末形態の含水カオリン源から生じさせることにある。その超微細含水カオリンに粉砕そして発熱を経る焼成を受けさせる。典型的なゼオライト微小球は、大きさが本発明で用いるそれよりも大きなカオリンから生じさせたアルミナが豊富なマトリックスを用いて生じさせた微小球であり、これの特徴的な発熱により少なくとも実質的に焼成されている。Satintone(商標)No.1(ムライトが実質的に全く生じないような特徴的な発熱を経る焼成を受けた市販カオリン)がアルミナが豊富なマトリックスを生じさせる目的で商業ベースで最初に用いた材料である。Satintone(商標)No.1は、粒子の70%が2ミクロン未満の含水カオリンを用いて作られたものである。アルミナが豊富なマトリックスを生じさせる目的で用いる他の源には、特徴的な発熱により少なくとも実質的焼成を受けた微細な含水カオリン[例えばASP(商標)600、即ち表題が「Aluminum Silicate Pigments」(EC−1167)のEngelhard Technical Bulletin No.TI−1004に記述されている市販含水カオリン]が含まれる。ブックレットカオリン(Booklet kaolin)が最も普及して商業的に用いられていて世界規模で多大な効果を満たしている。本発明以前では、そのようなより大きなカオリン粒子が触媒微小球のアルミナが豊富なマトリックスを生じさせる時の最新技術に相当しておりかつ欠点を持たないと考えられていた。
【0024】
特許文献1に記述されている如きインサイチュゼオライト微小球触媒製造手順に本質的に従うが、しかしながら、そのようなアルミナが豊富なマトリックスを超微細な含水カオリンから生じさせる。「超微細な」粉末が意味することは、Sedigraph(商標)(または沈降)で測定して含水カオリン粒子の少なくとも90重量%が直径が2ミクロ未満、好適には1ミクロ未満であるべきであることである。特に、粉砕そして特徴的な発熱を経る焼成を受けさせた後にそのような粒子サイズ分布を示す含水カオリン顔料を用いると、結果として、ゼオライト結晶化後の触媒微小球の中に含まれるマクロ間隙率の量が更に多くなることを確認した。その焼成を受けさせた超微細カオリンは緩く詰め込まれていることを見いだしたが、これは、個々の粒子が隣接する粒子に関して平行ではない様式で無作為に配列している「不安定な構造(house of cards)」に例えることができる。その上、その焼成を受けさせた超微細なカオリンは「不安定な構造」形態の多孔性凝集物として存在し、それによって多孔性凝集物がもたらされるばかりでなく凝集物間に追加的多孔性領域も存在する。そのような超微細含水カオリンの粉砕では、個々のカオリン小板の不規則な積み重ねがもたらされるように粉砕を行う必要がある。
【0025】
カオリンまたは顔料は、おおよその式Al:2SiO:XHO[式中、Xは一般に2である]で表される天然に存在する含水ケイ酸アルミニウムである。カオリナイト、ナクライト、ディッカイトおよびハロイサイトがカオリン群の鉱物種である。カオリンを空気中で加熱すると約550℃の時に吸熱脱ヒドロキシル反応に伴う最初の転移が起こることは良く知られている。その結果としてもたらされる材料は一般にメタカオリンと呼ばれる。メタカオリンはこの材料を約975℃に加熱するまで持続しそして発熱反応を起こし始める。この材料はしばしば特徴的発熱反応を起こしたカオリンと記述される。ある専門家はその材料をデフェクトアルミニウム−ケイ素スピネルまたはガンマアルミナ相と呼んでいる。Donald W.Breck、Zeolite Molecular Sieves(John Wiley and Sons出版、1974、314−315頁)を参照のこと。それを更に加熱して約1,050℃にすると高温相(ムライトを包含)が生じ始める。ムライトへの変換度合は本技術分野で良く知られているように時間−温度の関係および鉱化剤の存在に依存する。
【0026】
本発明の好適な態様では、そのような粉砕を受けさせた超微細な含水カオリン(これをアルミナが豊富なマトリックスを生じさせる目的で用いる)に特徴的な発熱を経る焼成をムライトの生成有り無しで受けさせる。マクロ多孔性ゼオライト微小球を生じさせる目的で本発明で用いる特に好適なマトリックス源はAnsilex(商標)93である。Ansilex(商標)93は、Fanselow他の米国特許第3,586,523号(これの内容は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されているように、低摩滅性の顔料を生じさせる目的で硬質カオリン原料の微細な大きさの画分に噴霧乾燥、粉砕そして焼成を受けさせることで生じさせたものである。その超微細な含水マトリックス源に噴霧乾燥、粉砕に続く発熱を経る焼成(場合によりムライトが生じる)を受けさせる。上述した特許文献1には、カオリンに焼成をX線回折の強度が完全に結晶性の標準のそれに匹敵するようになるまで受けさせることでムライトを生じさせることが開示されている。そのようなカオリンに焼成をX線回折強度が特許文献1に開示されているように完全に結晶性の標準のそれに匹敵するように発熱を超えて受けさせることは本発明の範囲内であるが、そのようなカオリンに特徴的な発熱を超える焼成を受けさせることで前記カオリンを結晶子サイズが小さいムライトに変化させる方が好適である。そのような結晶子サイズが小さいムライトは適切な回折線を示しかつ完全に結晶性のムライト標準の化学的組成を示したが、その結晶子の方が小さいことから回折線はより弱い。回折強度/線幅と結晶子の大きさの間の関係は良く知られている。カオリンに充分な焼成を受けさせてムライトを生じさせるには実際に過度の時間と温度を要することから、カオリンに焼成を発熱を超えて受けさせることで小さい結晶子のムライトマトリックスを生じさせる方が好適である。その上、カオリンに焼成を発熱を超えて受けさせて完全に結晶性のムライトを生じさせると結果として焼結が起こることでマクロ間隙率が失われる可能性もある。その上、カオリンに焼成を受けさせて完全に結晶性のムライトを生じさせるとISPおよびかさ密度が実質的に高くなる可能性もある。従って、発熱を経る焼成を受けさせた超微細カオリンが示すX線回折積分ピーク面積が充分に結晶化したムライトを含有するカオリン標準サンプルが示すX線回折積分ピーク面積の20−80%であるようにする方が好適である。より好適には、前記超微細カオリンに発熱を経る焼成をそれが示すX線回折積分ピーク面積が充分に結晶化したムライトが示すX線回折積分ピーク面積の50−70%であるように受けさせる。
【0027】
Ansilex(商標)材料を用いることに関係した通常ではないことは、それが硬質カオリンから得られたものであることである。硬質カオリンは典型的に灰色の色合いまたは色を有し、従って、また「灰色粘土」とも呼ばれる。そのような硬質カオリンは、更に、粗い表面を有する不規則な形状の断片に壊れることでも特徴付けられる。硬質カオリンは、また、鉄を有意な含有量で含有し、典型的にはFeを約0.6から1重量%含有する。硬質カオリンはGrimの「Applied Clay Mineralogy」(1962、MaGraw Hill Book Company)の394−398頁(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。インサイチュFCC微小球触媒のアルミナが豊富なマトリックスを生じさせる目的でそのような材料を用いることは本発明以前には知られていなかったが、それを組み込み型経路で用いることは充分に確立されている。硬質カオリンはまた時にはインサイチュ微小球のメタカオリン源としても用いられたが、利点を伴わなかった。如何なる理論でも範囲を限定することを望むものでないが、焼成を受けた灰色粘土がインサイチュマトリックス技術で以前に用いられたことは(a)それの鉄含有量が高いことでコークスおよび気体の生成がもたらされる可能性があることと(b)それから生じさせたスラリーは膨張する性質を有することから明らかに工程時間が無意味に消費されかつ噴霧乾燥を受けさせるスラリーの粘度が高いことで粘度を下げて固体量を低下させるとコストが高くなることが理由で排除されたであろうと思われる。我々は、ここに、そのように膨張すると言った問題と多孔性の利点は本質的かつ基本的に関係していると考えている。その前者の観点に関して、コークスおよび気体を減少させることがインサイチュ触媒に特に求められる目的である、と言うのは、Hadenの元々の配合では非晶質マトリックスの活性のレベルを法外に高くすることでコークスと気体の釣り合いを取っていたからである。それによって、その後の発明では鉄とスピネルの濃度を益々低くしていった。我々は鉄とコークスおよび気体選択性の間には結局全く関係がないと思われることを驚くべきことに見いだした。
【0028】
間隙率が焼成材料詰め込み中に与えられたことでより一般的に特徴づけられるアルミナ含有材料を用いてアルミナが豊富なマトリックスを生じさせることができる。最終的に本発明の触媒のマトリックスを形成する焼成アルミナ含有材料の細孔容積を測定する試験を開発した。この試験は、固体のサンプルからスラリーを生じさせる時に要する最低限の水量を測定することによって焼成アルミナ含有材料の水細孔容積を特徴づけるものである。この試験では、粉末サンプルを分散剤、例えばColloid 211(Viking Industries、アトランタ、GA)などが入っている水と一緒にカップに入れて撹拌棒またはスパチュラで混合する。水を乾燥したサンプルにその乾燥した粉末が膨張性泥の単一の塊(ちょうどこれ自身の重量下で流れ始める)に変化するにちょうどの量で加える。そのサンプルの重量と使用した水の量からインシピエントスラリー点(ISP)を計算する。このインシピエントスラリー点は下記の如く計算可能である:ISP=[(乾燥サンプルのグラム)/(乾燥サンプルのグラム+添加した水のグラム)]x100。その単位は無次元であり、パーセント固体として報告する。
【0029】
その水の量は当該サンプルの(内部)水細孔容積よりも多いが、明らかに、水細孔容積に関係している。インシピエントスラリー点のパーセント固体値が低いことは、当該サンプルの水吸収容量が高いか或は細孔容積が高いことを示している。その焼成を受けさせたアルミナ含有材料(本発明に従ってこの材料から高アルミナのマトリックスを生じさせる)が示すインシピエントスラリー点は57%固体未満、好適には48から52%固体である。それをSatintone(商標)No.1[これがインシピエントスラリー点試験でもたらす値は58%固体以上である]と比較する。
【0030】
従って、そのような超微細含水カオリンが本触媒微小球のマトリックスを生じさせる時に用いるアルミナ含有材料として有用であるばかりでなく、そのようなマトリックスを、また、層間剥離するカオリンから生じさせることも可能である。カオリンのブックレットまたはスタック(stacks)を層間剥離する手段は本技術分野で良く知られている。粒状の研磨用媒体、例えば砂などまたは良く知られている如きガラスミクロバルーン(glass microballoons)を用いた方法が好適である。層間剥離した後、その小板を粉砕することで不規則な詰め込みまたは「不安定な構造」形態を生じさせる。
【0031】
本触媒のマトリックスを生じさせようとする時に使用可能なマクロ多孔性アルミナのさらなる源には、例えばカオリン以外の源、例えば三水化アルミニウム、例えばバイアーライト(bayerite)およびギブサイトなど、遷移アルミナ(transitional alumina)、一水化アルミニウム、例えばベーマイトおよびプソイドベーマイト、発泡アルミナ、アルミナ含有エーロゲル、ヒドロタルサイト、シリカ−アルミナコゲルおよびボーキサイトなどが含まれ得る。
【0032】
本発明のマトリックス前駆体を生じさせるには、含水カオリンに粉砕−焼成−粉砕を受けさせる工程が好適である、と言うのは、含水カオリンをメタカオリン源として用いることに加えて前記工程を用いて反応性を示す前駆体である微小球を生じさせると細孔容積が高い時に優れた耐摩滅性がもたらされると思われるからである。あまり好適ではないが、また、マトリックス前駆体に湿式粉砕を受けさせて前記前駆体にさらなる脱凝集を受けさせることも可能である。そのような粉砕を行うと微小球の細孔容積が他の事項の全部が一定に保持されながら小さくなると思われる。微小球の細孔容積を小さくする方法は、反応性前駆体である微小球を生じさせる目的で前以て焼成を受けさせておいたメタカオリン粉末を用いる時に有用である。Dightは、メタカオリン粉末を用いると前駆体微小球の細孔容積が大きくなることを開示したが、そのような微小球が受け入れられる耐摩滅性を示すようにするにはゼオライトの濃度および表面積の度合を過度にする必要があり得る。そのような脱凝集は要求されるゼオライト含有量を中程度にしかつまた恐らくは前記粉砕を受けさせたマトリックスが当該微小球の中で示す分散性を向上させるに役立ちはするが、強い結合を壊す影響(そうでなければ最終的な触媒を強化し得る)が生じると思われ、そのように好適ではない。
【0033】
また、化学的に合成されたスピネルおよび/またはムライトからマトリックスを生じさせることも本発明の範囲内である。このように、Okata他、「Characterization of spinel phase from SiO−Al xerogels and the formation process of mullite」、Journal of the American Ceramic Society、69[9]652−656(1986)(引用することによって内容全体が本明細書に組み入れられる)に、エタノールに溶解させたテトラエトキシシランと硝酸アルミニウム九水化物に遅い加水分解または急速な加水分解を受けさせることで2種類のキセロゲルを生じさせることができることが開示されている。そのような遅い加水分解方法は前記混合物を60℃のオーブンの中で1から2週間かけてゲル化させることを伴う一方、急速な加水分解方法は水酸化アンモニウム溶液を前記混合物に添加した後に空気中で乾燥させることを伴う。前記遅い加水分解方法で生じさせたキセロゲルに焼成を受けさせると非晶質状態からムライトが直接結晶化する一方、前記急速加水分解で生じさせたキセロゲルの場合にはムライトが生じる前にスピネル相が結晶化した。そのような焼成を受けさせた合成材料も、この材料が本発明の範囲内の水細孔容積を示す限り、本発明の触媒の高アルミナマトリックスを生じさせる目的で用いることができる。
【0034】
更に、カオリン以外の他のアルミナ源からマトリックスを生じさせることも本発明の範囲内である。例えば、アルミナマトリックスの前駆体には、アルミニウム水化物、例えば一水化物および三水化物などおよびこれらの誘導体から生じさせた前駆体が含まれ得る。三水化物、例えばバイアーライトおよびギブサイトなどはアスペクト比がほぼ1の大型粒子の状態で結晶化し得る。アスペクト比が1に近いことは形態が準球形であることを示すことから凝集物の中の詰め込みが密でありかつ細孔容積が小さいことを暗示しているが、粉砕および焼成を適切に行うことなどでそれを補うことによって前記凝集物が示す間隙率を大きくすることができる。アスペクト比が1からかなり離れている前駆体は必要なマクロ多孔性を充分に示し得ることで、二次的加工を行う必要性が低い。本技術には、例えばギブサイトなどの中に小板および針状形態をもたらす方法が存在しそして焼成を受けさせた製品はそのような形態を保持する。例えば、ギブサイトに焼成を受けさせてアルファアルミナを生じさせることができる。焼成工程中に大きな内部間隙が生じる。そのような内部間隙は準安定であることから、最終的なアルファ−アルミナ製品はそれを保持せず、最終的な焼成品は元々の結晶子が有する形態を保持し、従って、焼結の度合があまり苛酷でないならばマクロ多孔性の大部分を保持し得る。バイアーライトおよびSi安定化バイアーライトは残油改善用アルミナとして用いられてきた。従って。処理または合成を適切に行うと、そのような所望のマクロ多孔性を示すバイアーライト(イータアルミナになるように焼成を受けさせておいたバイアーライトを包含)を生じさせることができ、そしてそれを本発明でマトリックス材料として用いることによって、インサイチュで生じさせる触媒のゼオライトが上に位置するマトリックス形態を生じさせることができる。バイアーライトを組み込み型触媒で用いる例が米国特許第6,165,351号、5,547,564号、5,306,417号および5,304,526号(これらの内容は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0035】
また、ギブサイトにフラッシュ焼成(flash calcine)を受けさせることも公知であり、それの生成物は高い反応性を示しかつ再水和を受けて高価値のベーマイトになり得る。フラッシュ焼成ギブサイトの製造は、典型的に、最初に100ミクロンのギブサイトをボールミルにかけることを伴う。ボールミルにかけた後の生成物が示すアスペクト比は1に近いことから凝集物中のマクロ細孔容積は低いと考えられる。その焼成を受けさせるギブサイトに添加剤、例えばアルミナ種晶、ホスフェートまたは粘土などを添加すると多孔質のベーマイト凝集物がもたらされ得る。米国特許第6,403,526号および6,451,200号にそのような加工の例が示されており、それらは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0036】
アルミナ一水化物とアルミナ三水化物の両方を含有するアルミナゲルを生じさせることができる。そのようなゲル系は主要な固相の中にアルミナ水化物を含有し、その中の二次的相は水、水と有機溶媒の混合物または空気(エーロゲル)であり得る。そのような固体は、製造方法に応じて、大きさの範囲が数ナノメートルからミクロメートルの範囲の個々別々の粒子として存在し得るか、或はそのような固体は三次元高分子網状組織の形態であり得、その網状組織の中の固体領域は化学結合で互いに結合している。そのような三次元高分子網状組織はマクロ多孔性であり得、本発明の触媒に入れるマトリックス前駆体として用いるに有用であり得る。そのような高分子網状組織、特にゲルの調製は、有機溶媒に溶解させておいたアルミニウムアルコキサイドに制御された加水分解を受けさせることで実施可能である。そのようなゲルは多孔質セラミック素地の製造で用いられてきた。そのようなゲルをアルミニウムアルコキサイドから生じさせた時の特性は温度、水の比率、当該アルコキサイドの組成、溶媒の種類および水を用いた時にそれが示す安定性、電解質の存在および溶液のpHに依存する。そのような要因の全部が最終的製品に影響を与える要因である。
【0037】
アルミニウム水化物は両性であり、従って、強酸中および強塩基に可溶である。そのような材料が中間的pHの水溶液中で示す溶解度は非常に低い。溶解度曲線の傾きが非常に急なことから、pHが少しでも変化するとかなり過飽和状態になる結果として沈澱が急速に起こり得る。従って、アルミニウム水化物をコロイドの大きさで沈澱させることができ、その後、それは容易に凝固してゲルになり得る。そのようなゲルの物性、例えば粒径、化学的組成などを決める要因には、温度、沈澱速度、最終的pH、イオン組成、界面活性剤、出発溶液の濃度、撹拌および熟成時間が含まれる。アルミニウム塩溶液を塩基で急速に中和すると水が豊富に存在するゲルがもたらされ、これに含まれる残存酸性アニオンの量は多様である。その水とイオンを除去すると本発明でマトリックス前駆体として用いるに有用であり得るマクロ多孔性成分がもたらされ得る。細孔容積が高いおよび低いアルミナ一水化物は本技術分野で一般に公知である。マクロ多孔性が高い、少なくともプソイドベーマイトではマクロ多孔性が高いことは、そのようなアルミニウム塩からで沈澱を起こさせることを利用する工程に関連していると思われる。そのような材料の中の結晶子は繊維状であり得る。そのような材料は一般に水素化処理などの如き用途でマクロ多孔性アルミナ担体の押出し加工を行う時に用いられる。そのような材料が示すマクロ多孔性は本発明の触媒にとって有用であり、結果として、最終的触媒の中にマクロ多孔構造をもたらすであろう。粒径および間隙率を調節するにはミリング(milling)および混練(mulling)工程の使用が必須な部分でありかつそのような特定の材料の主な利点であると考えられる。そのような材料は米国特許第2,656,250号および2,915,475号(これらの内容は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0038】
FCCおよび他の用途の目的でSi−Alコゲルを記述している技術は多数存在する。そのような技術はもはや実施されていない、と言うのは、そのような製品を用いると細孔容積が高くて密度が低いFCC(ゲル触媒)がもたらされることで耐摩滅性が比較的劣るからである。インサイチュおよびゾル結合(sol−bound)触媒が示す耐摩滅性の方がずっと良好であることが立証されており、従って、そのようなコゲルの代わりにコロイド状結合剤技術を用いると向上した結果がもたらされた。しかしながら、そのような従来技術のコゲルがFCCでは劣る原因になっている同じ特性が理由で、そのような材料は、本発明のマトリックスおよびFCC触媒のインサイチュ前駆体としては優れている。そのようなゲルのアルミナが豊富な部分に焼成を受けさせるとSiを含有しない遷移アルミナ、Si−AlスピネルまたはSiによる修飾を受けている遷移アルミナ、アルファアルミナおよび/またはムライトがもたらされる可能性がある。シリカが豊富な領域は高い表面積を有する非晶質シリカ−アルミナを生じる可能性がある。前者は機能的にカオリンが基になった活性マトリックスに相当すると考えており、そして後者はゼオライトの成長にとって優れた品質栄養素(quality nutrient)であると考えている。コゲル形成の非限定例が米国特許第4,310,441号および4,499,197号(これらの内容は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0039】
また、発泡アルミナおよび多孔質ボーキサイトを用いることでも細孔容積が大きいマトリックスを生じさせることができる。
【0040】
この上に示した水酸化アルミニウム前駆体相間の相互転換では、周囲圧力またはオートクレーブもしくは高圧条件下のいずれかの水熱ゲル熟成および/または再水和工程を用いることができる。
【0041】
その結晶化させた本発明のゼオライト微小球(触媒マトリックスが生じるようにマクロ多孔性アルミナ含有材料を用いて生じさせた)が示す細孔容積は、好適には、直径が40−20,000Åの範囲内の孔が0.27cc/gのHg以上、好適には0.30cc/gのHg以上である。より詳細には、本発明の触媒の孔径が600から20,000Åの範囲内のマクロ孔容積は少なくとも0.07cc/gのHg、好適には少なくとも0.10cc/gのHgである。通常のゼオライト組み込み型触媒が示すマクロ間隙率は本発明の触媒のそれに匹敵してはいるが、そのような組み込み型触媒は本発明の触媒が有する新規な「マトリックス上にゼオライトが存在する」形態も性能も持たない。本発明の触媒が示すBET表面積は500m/g未満、好適には475m/g未満、最も好適には約300−450m/gの範囲である。本発明の触媒が中程度の表面積を有することに加えてそのようなマクロ間隙率を示すことで、所望の活性とガソリンをもたらす選択性を達成すると同時に気体およびコークスの生成量も低い。
【0042】
更に、本発明の触媒が示すマクロ間隙率はそのマトリックスの一部を粗いアルミナ含有材料(その他は前記ISP試験で測定した時に本発明に所望の水細孔容積を満足させない)から生じさせた場合でも保持され得ることを確認した。従って、ブックレットカオリンと超微細カオリンの混合物に焼成を発熱を経るように受けさせると高い細孔容積と幅広いマクロ多孔性を示す触媒がもたらされるが、それが示すゼオライト含有量は低いことを確認した。そのような触媒は分解環境が例外的に苛酷な場合に価値があり得る。
【0043】
本発明の触媒にマクロ間隙を所望の分率で含有させるのが好適であるが、この上に記述した多孔質カオリン材料を用いて全水銀細孔容積が0.27cc/g以上の有用な触媒(この触媒はマクロ細孔容積をいくらか有するとしても最小限である)を生じさせることができることを見いだした。そのような触媒が示す細孔容積は主に直径が典型的に100−600Åの範囲の孔による細孔容積、即ちメソ細孔容積である。間隙率が高いカオリンマトリックス前駆体を用いて生じさせた触媒は細孔容積が主にメソ間隙の形態で達成されたとしてもゼオライトがマトリックス上に位置する形態になるであろうことを見いだした。
【0044】
更にその上、この上に記述したカオリン以外の前記アルミナ源を用いることでもゼオライトがマトリックス上に位置する形態を有する本発明の触媒を得ることができ、その結晶化ゼオライト含有微小球の総細孔容積は40−20,000Åの範囲内の孔に関して0.20cc/gのHgより大きい。その総水銀細孔容積が0.27cc/gより大きくなるようにするのが好適である。
【0045】
本発明のFCC微小球の製造に適した一般的手順は本技術分野で良く知られており、特許文献1に開示されている手順に従うことができる。そこに開示されているように、反応性微細含水カオリンおよび/またはメタカオリンおよびマトリックスを形成するアルミナ含有材料、例えば超微細カオリンなど(特徴的な発熱を経る焼成を受けさせておいた)が入っている水性スラリーを生じさせる。次に、その水性スラリーに噴霧乾燥を受けさせることで含水カオリンおよび/またはメタカオリンおよびカオリン(特徴的な発熱を少なくとも実質的に経る焼成を受けている)の混合物を含んで成る微小球を得ることで高アルミナのマトリックスを生じさせる。好適には、その水性スラリーに噴霧乾燥を受けさせる前にケイ酸ナトリウムを控えめな量で添加しておく。そのケイ酸ナトリウムは噴霧乾燥中および噴霧乾燥後にカオリン粒子間の結合剤として機能する。
【0046】
本微小球を生じさせる目的で前記スラリーに入れる反応性カオリンは、水和カオリンまたは焼成含水カオリン(メタカオリン)またはこれらの混合物から生じさせたものであってもよい。その供給するスラリーに入れる含水カオリンは適切にはASP(商標)600またはASP(商標)400カオリンの中の一方または混合物のいずれであってもよいが、それらは粗いホワイトカオリン原料から生じさせたものである。また、粒径がより微細な含水カオリンを用いることも可能であり、それらには灰色粘土堆積物、例えばLHT顔料などに由来するそれらが含まれる。Middle Georgiaのカオリンに水処理を受けさせた精製品を成功裏に用いた。そのような含水カオリンの焼成品を供給材料であるスラリーのメタカオリン成分として用いてもよい。メタカオリンを用いると得られる細孔容積がより高くなるが、そのマトリックス前駆体に湿式粉砕を受けさせることでそれを補正することができる。結合剤としてのケイ酸塩を好適にはNaOに対するSiOの比率が1.5から3.5(特に好適な比率は2.88から3.22である)のケイ酸ナトリウムを用いて供給する。
【0047】
また、噴霧乾燥を受けさせる前の前記水性スラリーにゼオライト開始剤をある量(例えばカオリンの3から30重量%)で添加しておくことも可能である。本明細書で用いる如き用語「ゼオライト開始剤」は、この開始剤を存在させないと起こらないであろうゼオライト結晶化過程を起こさせるか或はこの開始剤を存在させなくても起こるであろうゼオライト結晶化過程の時間を有意に短縮する材料(シリカとアルミナを含有する)のいずれも包含する。そのような材料はまた「ゼオライト種晶」としても知られる。そのようなゼオライト開始剤はx線回折で検出可能な結晶度を示すか或は示さない可能性もある。
【0048】
噴霧乾燥で微小球にする前の水性カオリンスラリーにゼオライト開始剤を添加しておくことを本明細書では「内部種晶添加」と呼ぶ。別法として、カオリン微小球が生じた後であるが結晶化過程を開始する前にゼオライト開始剤をカオリン微小球と混合することも可能であり、そのような技術を本明細書では「外部種晶添加」と呼ぶ。
【0049】
本発明で用いるゼオライト開始剤はいろいろな源から供給可能である。例えば、そのようなゼオライト開始剤に結晶化過程自身中に生じた微細物の回収品を含めてもよい。使用可能な他のゼオライト開始剤には、別のゼオライト生成物を結晶化させている過程中に生じた微細物または非晶質ゼオライト開始剤が含まれ、それをケイ酸ナトリウム溶液に入れる。本明細書で用いる如き「非晶質ゼオライト開始剤」は、x線回折で検出可能な結晶度を示さないゼオライト開始剤を意味する。
【0050】
そのような種晶の調製は特許文献1に開示されている如く実施可能である。特に好適な種晶が4,631,262に開示されている。
【0051】
噴霧乾燥後の微小球に焼成を直接受けさせてもよいか、或は別法として、本触媒のイオン交換度を更に向上させる目的で結晶化後のそれに酸による中和を受けさせてもよい。この酸中和過程は、噴霧乾燥を受けさせたが焼成を受けさせていない微小球と鉱酸を制御したpHで撹拌下のスラリーに一緒に供給することを包含する。固体添加速度と酸添加速度を調整することでpHを約2から7、最も好適には、当該微小球をカオリン単独から生じさせた場合には約2.5から4.5に維持するが、目標のpHは約3である。代替アルミナ源を活性マトリックス前駆体として用いる場合に用いるpH範囲は公知のように当該材料に適合すべきである。ギブサイト含有微小球には中和を例えば約5−7のpHで受けさせるべきである。ケイ酸ナトリウムである結合剤をゲル化させてシリカと可溶性ナトリウム塩を生じさせた後、濾過しそして洗浄することで、それを本微小球から除去する。そのようにナトリウムを除去することは、特に、カオリン以外のアルミナ源を用いる場合に重要である、と言うのは、そのようにしないと、ナトリウムが望ましくないアルミン酸ナトリウムとして容易に捕捉されるからである。次に、そのシリカゲルと結合させた微小球に焼成を受けさせる。いずれの場合にも、焼成を、以前に焼成を受けたカオリン成分(本微小球に入っている)は本質的に変化しないままであるが本微小球にいくらか入っている水和カオリン成分がメタカオリンに変化するに充分な温度で充分な時間(例えばチャンバ温度が約1,350度Fのマッフル炉の場合には2時間)実施する。この過程中にまたカオリン以外の水和アルミナ源も遷移アルミナ相に変化する。その結果として焼成を受けた多孔質微小球はメタカオリンと特徴的な発熱を経る焼成を受けたカオリンの混合物を含んで成っていて、この2種類の焼成カオリンが同じ微小球の中に存在する。別法として、この上に記述したように、発熱を経る焼成を受けたカオリンの代わりに適切な如何なる焼成アルミナも使用可能である。メタカオリンと焼成アルミナの重量比を一般に約1:0.66から1:4、好適には1:1.5から1:3にすべきである。従って、焼成を受けた本微小球は一般にメタカオリンを約25−60重量%と焼成アルミナ源、例えば特徴的な発熱を経る焼成を受けたカオリンまたはカオリン以外の代替アルミナ源などを約40−75重量%含有すべきである。好適には、メタカオリンが30−40重量%で焼成アルミナが60−70重量%であるようにする。また、ケイ酸ナトリウムである結合剤に由来するNaOおよびSiOも存在し得る。
【0052】
以下に詳細に考察するように、前記焼成を受けさせておいたカオリン微小球を適当量の他の成分(少なくともケイ酸ナトリウムおよび水を包含)と一緒に混合した後に結果として生じたスラリーを前記微小球の中でY−ホージャサイトが結晶化するに充分な温度で充分な時間(例えば200−215度Fで10−24時間)加熱することで、Y−ホージャサイトを結晶化させる。記述したように、特許文献1の指示に従うことも可能である。しかしながら、改良した相当する処方は以下に示す如くである。
【0053】
我々が用いる結晶化処方は、1組の仮定と特定の原料が基になった処方である。種晶は4,631,262に記述されている種晶であり、それを好適には外部で用いる。メタカオリンのSiO2、Al2O3およびNa2O成分、種晶、ケイ酸ナトリウム溶液、焼成ケイ酸ナトリウム結合剤およびシリカゲルは100%反応性であると仮定する。スピネル形態になるように発熱を経る焼成を受けたカオリンの中のアルミナおよびシリカはそれぞれ1%および90%反応性であると仮定する。この2つの値を用いるが、それらは正確ではないと考えている。ムライト形態になるように発熱を経る焼成を受けたカオリンの中のアルミナおよびシリカはそれぞれ0%および67%反応性であると仮定する。この2つの値は正確であると考えており、それらは、結晶化中のムライトの不活性度が3:2であることと遊離シリカ相が完全に溶解することを示している。同様に、α−Alはゼオライト合成で反応しないと考えている。しかしながら、他方、遷移アルミナはゼオライト成長に関してアルミナのほぼ25%が反応することを確認した。メタカオリンアルミナが合成における制限試薬(limiting reagent)でありかつゼオライトの体積の方がメタカオリンの相当する体積よりもずっと大きいことから、微小球の細孔容積が決まっている時にはゼオライトの生成を適切に限定することが重要である。さもなければ、結晶化後に結果として細孔容積がほとんどか或は全く残存しなくなってしまうであろう。このことは従来技術に当てはまる。他方、本技術分野で良く知られているように、制限試薬を本微小球の中でゼオライトが本触媒を適切に強化するに充分なほど成長するほどには利用することができない場合には追加的栄養素であるアルミナをメタカオリン微小球の形態で添加してもよい。このように、細孔容積および摩滅に関して厳重な工程管理を行うことができる。
【0054】
前と同じように、ホージャサイトの結晶化に供給するアルミニウム栄養素の量を生じるゼオライトYの量が制限かつ制御されるように制限することが必須である。ゼオライトYが示す空隙分率は約0.5でありかつこれが有するSi/Al比はカオリンのそれよりも高いことから、メタカオリンから成長させるゼオライトが占める容積の方が出発メタカオリンが占めるそれよりも大きい。ゼオライトの収率を制御することで完成触媒の中にマクロ間隙が残存することを確保する。我々の親ケースのように、結晶化用成分の各々に存在する反応性アルミナの分率を確認することを基にして結晶化の化学量論的比率を計算する必要がある。この作業では、遷移アルミナはゼオライトYの成長に関して全くアルミニウム反応性を示さないと仮定する誘惑に駆られるであろう。しかしながら、ギブサイトに由来するアルミナの場合には、アルミナのほぼ25%がゼオライトの成長に反応性を示すことを確認した。栄養素であるアルミナを追加的に用いると合成ゼオライト(Siが常に余分に存在する)がより多い量でもたらされることで完成触媒の細孔容積がより低くなることから、そのような要因を合成中に測定しかつ考慮に入れることが必須である。原則として、活性分率はアルミナが異なると異なる可能性がある。現在のところそのような特性を予測する方法は存在せず、我々があらゆるケースを予測するのは不可能である。本明細書に開示するように、非常に高い細孔容積を有する関連微小球を生じさせた後にそのような微小球に結晶化を反応性アルミナを一連の仮定的分率で存在させて受けさせることで活性分率を実験的に測定する。α−Alおよびカオリンが基になった材料が示す活性分率に関してはこの上に開示した。次に、ZSAを最適に結晶化させた時の実験データをその同じ仮定が基になった物質収支で予測されるそれと比較する。比較または補間で決定した実際のゼオライト含有量の予測を大きく可能にするそのような仮定は正確な仮定であり、これを如何なるさらなる研究でも用いるべきである。それによって、その使用者は本発明のFCC触媒の特性を予測かつ制御することができる。
【0055】
そのような仮定を用いて、反応性成分に関して下記の重量比を全体的結晶化処方として用いる。不活性な成分をその比率には入れないが、但し種晶の用量の場合には、それを微小球総グラム数に対する種晶Alのグラムの比率として定義する。
【0056】
【表1】

【0057】
結晶化用反応槽に添加する反応体であるケイ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの源は多様であり得る。例えば、そのような反応体をN(商標)Brandのケイ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合物の水溶液として供給してもよい。別の例として、ケイ酸ナトリウムの少なくとも一部を別のゼオライト含有生成物の結晶化中に生じた母液で供給することも可能である。
【0058】
結晶化工程が終了した後、Y−ホージャサイトを含有する微小球を少なくともそれの母液の実質的な部分から例えば濾過で分離する。濾過段階中または後のいずれかの微小球を水と接触させることでそれを洗浄するのが望ましい可能性がある。そのような洗浄段階の目的は、本微小球の中に同伴されたまま残る可能性がある母液を除去することにある。
【0059】
「シリカ保持(Silica Retention)」を実施してもよい。シリカ保持に関しては特許文献1のコラム12の3−31行に示されている教示を相互参照することによって本明細書に組み入れる。
【0060】
濾過で得た微小球が含有するY−ホージャサイトゼオライトの形態はナトリウムの形態である。この微小球が含有するNaOの量は典型的に約8重量%以上である。本発明の微小球を生じさせる目的で、その微小球に入っているナトリウムイオンの実質的部分をアンモニウムもしくは希土類イオンまたは両方で置き換える。
【0061】
イオン交換は多種多様なイオン交換方法で実施可能である。好適には、前記微小球に最初に硝酸アンモニウム溶液を用いた交換を約3−4のpHで1回以上受けさせる。そのアンモニウムイオンによるイオン交換を、好適には、希土類イオンによるイオン交換を約3−4のpHで1回以上続いて実施する。その希土類は単一の希土類材料としてか或は希土類材料の混合物として供給可能である。その希土類を好適には硝酸塩または塩化物の形態で供給する。本発明の好適な微小球は、REOを0から12重量%、最も好適にはREOを0.5から8重量%の範囲で含有しかつ含有するNaOの量が約0.5重量%未満、より好適には約0.4重量%未満、最も好適には約0.2重量%になるようにイオン交換を受けさせた微小球である。良く知られているように、そのようなナトリウム濃度を達成するには中間的焼成を実施する必要があるであろう。
【0062】
イオン交換が完了した後の微小球を濾過で取り出した後、乾燥させる。本発明のFCC微小球触媒にイオン交換を受けさせるに適した前記手順は良く知られており、このように、そのような方法は当然に本発明の基礎を成すものではない。
【0063】
本発明の微小球は純粋な形態または他の触媒、添加剤および/または他の混合剤と混合した状態のいずれかで市販可能である。
【0064】
本発明の触媒は、あらゆる商業的流動接触分解触媒と同様に、分解装置運転中に水熱的に失活するであろう。従って、本明細書で用いる如き語句「石油原料に分解を触媒の存在下で受けさせる」に、当該触媒をこれの新鮮な形態でか、ある程度失活した形態でか或は完全に失活した形態で存在させて石油原料に分解を受けさせることを包含させる。
【0065】
本発明の好適な触媒は、結晶化したままのナトリウムホージャサイトの形態のゼオライトを基にして表してYホージャサイトを少なくとも40重量%、好適には50から65重量%含有する微小球を含んでいる。本明細書で用いる如き用語「Yホージャサイト」には、ナトリウム形態の時にBreck、Zeolite Molecular Sieves、369頁、表4.90(1974)に記述されている種類のX線回折パターンを示しかつナトリウム形態(いくらか存在する結晶化用母液をゼオライトから洗い流した後)の時に表題が「Determination of the Unit Cell Size Dimension of a Faujasite Type Zeolite」(表示D3942−80)の標準的ASTM試験方法に記述されている技術または相当する技術を用いて測定した時に約24.75A未満の結晶単位格子サイズを示す合成ホージャサイトゼオライトが含まれる。用語「Yホージャサイト」は、ナトリウム形態のゼオライトばかりでなく公知修飾形態のゼオライトも包含し、それには例えば希土類による交換を受けた形態およびアンモニウムによる交換を受けた形態および安定化形態が含まれる。本触媒の微小球の中に存在するYホージャサイトゼオライトのパーセントは、このゼオライトがナトリウム形態(これを洗浄して前記微小球の中にいくらか含まれている結晶化用母液を除去しておいた後)の時に表題が「Relative Zeolite Diffraction Intensities」(表示D3906−80)の標準的ASTM試験方法に記述されている技術または相当する技術を用いて測定したパーセントである。前記微小球にX線評価を受けさせる前にそれを注意深く平衡状態にしておくことが重要である、と言うのは、平衡状態によって結果が大きな影響を受ける可能性があるからである。
【0066】
図1に、触媒マトリックスを生じさせる目的でユニークなアルミナ含有材料(これは以前には用いられていなかったか或は従来技術のインサイチュゼオライト触媒生成には有用であると考えられていた)を用いて達成可能な本発明のFCC触媒が有するユニークな形態を示す。再び、この上で行った考察から、間隙率が低い触媒微小球の方が耐摩滅性が優れていて活性および選択性が高いことを考慮、特にそのような触媒が示す選択性は表面積がより小さくて細孔容積がより大きい触媒が示す選択性に少なくとも相当し、しばしば、接触時間が短い時には選択性がより良好であると言った充分に確立された事実を考慮して優れた製品であると考えられていた。その逆の主張は独善的であるとして容易に退けられかつまたいわゆる取り込み型触媒は滞留時間が短い時には拡散制限を受けると述べることも同じく退けられていた。接触時間が短いFCC工程下ではFCC触媒技術がゼオライトの外側に存在する孔の中の移動に関して拡散制限を受ける可能性があることが見つかったのはほんの最近のことである。このことは残油画分のAPI比重がSCT改造後にしばしば高くなった理由であると提案される。それに比べるとあまり明らかではないが、ここに、通常の従来技術の触媒はSCTハードウエアの潜在的利益の全部を与えることができないようである。しかしながら、今までは、どんな利益も存在しないことを知る方法がなかった。従って、本発明の触媒微小球は以前の触媒微小球とは実質的に異なった形態を有し、特に、細孔容積が大きく、マトリックス上にゼオライトが存在する形態を有しかつ中程度の表面積を有する点で実質的に異なる形態を有する。本触媒が示す耐摩滅性は良好でありかつSCT FCC工程条件の場合に有効である。
【0067】
図1から分かるであろうように、本発明の触媒は、多孔質マトリックスの平らな構造物の平らな面の向かい合う表面がゼオライト結晶で内張りされている不規則な形態によってマトリックスのマクロ孔が形成されているマクロ多孔性マトリックスを含有する。このように、本触媒のマクロ孔は活性のあるゼオライト結晶で内張りされている。図1中のメソ多孔性マトリックス面はムライト粒子から生じた面である。本触媒がそのようなマクロ多孔性を示すことで、炭化水素は本触媒の中に自由に入ることができ、かつ本触媒のマクロ孔表面積が大きいことで、前記炭化水素は触媒表面に接触することができる。重要なことは、炭化水素が邪魔されることなくゼオライトと接触することができ、それによって、本触媒は非常に高い活性とガソリンをもたらす高い選択性を示すことにある。ゼオライト結晶を結合剤および/またはマトリックスの中に取り込ませた通常の取り込み型ゼオライト触媒は間隙率が高いマトリックスを有しはするが、その結合剤の少なくとも一部はゼオライト結晶を覆っているか或は他の様式でそれの邪魔をしている。本微小球状触媒では、ゼオライト結晶化後にいくらか残存する可能性のある少量のシリケート以外、ゼオライトとマトリックス表面を糊付けする個別の物理的結合剤を必要としない。本発明の方法に従って生じさせた微小球触媒は全てのゼオライト/マトリックス触媒の中で最も高いゼオライト接近性をもたらすと考えている。
【0068】
本発明の微小球状触媒は現在市場に出ている以前のFCC触媒に比べてコークス選択性が低くてガソリンをもたらす選択性が高いことで高い転化率を与えることを見いだした。本触媒の方が同様またはより高くさえある間隙率とより小さい表面積を有する通常の取り込み型触媒に比べて一定して優れた性能を示し得ることは驚くべきことである。このことは間隙率単独を加算することでは充分ではないことを示している。マクロ多孔性であることとマクロ孔の壁がゼオライトで内張りされておりかつメソ多孔性もしくはミクロ多孔性マトリックスが実質的にゼオライト層の後ろに隠れていると言った新規な構造の触媒であることが本触媒がガソリン、LCOおよびコークス選択性の点で勝っている理由であると現在考えている。本触媒はより重質な炭化水素に分解を受けさせかつ残油溜分のAPI重力、特に接触時間が短い工程中のそれを向上させるに充分である。本発明以前では、重質供給材料成分を強制的にメソ−もしくはミクロ多孔性マトリックス、例えば解膠プソイドベーマイトに由来するアルミナ(ゼオライトを覆っているか或は被覆している)などに接触させる「段階的分解」機構を用いると接触時間が短い時の残油分解で最良の結果が得られるであろうと通常考えられておりかつ常規的に主張されていた。我々の結果は、驚くべきことに、その逆が正に真実であることを示している。
【0069】
以下の実施例で本発明を例示する。
[実施例1]
【0070】
メタカオリン(MK)の含有量が30部で湿式媒体粉砕(wet media−milled)Ansilex 93(商標)の含有量が20部で媒体粉砕HiOpaque(商標)顔料(1,050℃を超える焼成を受けた)の含有量が20部でNuSurf(商標)顔料(1,050℃を超える直接的焼成、粉砕そして流体エネルギー粉砕を受けている)の含有量が30部の微小球を調製した。前記焼成カオリンの混合物にN−brand(商標)ケイ酸ナトリウムの添加に由来するSiO2を15部加えた。この微小球には酸による中和を受けさせなかった。前記メタカオリン源はMetamax(商標)、即ち粉砕された粉末であり、これをColloid 211界面活性剤(Viking Industries、アトランタ、GA)を焼成カオリン1kg当たり3ml入れておいた水道水で固体量が55%になるように希釈した。空気駆動式Cowlesミキサーをバッチプロセスで用い、前記界面活性剤を既に入れておいた水に乾燥カオリンを加えた。このカオリンを前記水に添加する速度を混合物が濃密になるにつれてゆっくりにした。非常にダイラタントな(膨脹性の)スラリーが生じたが、混合を継続すると粘度が低下した。前記カオリンを徐々に添加しかつ混合を45分間以上継続すると簡単な検査で膨張性がもはや見られなくなったスラリーがもたらされた。
【0071】
前記媒体粉砕Ansilex 93(商標)顔料は、商業的に生産された固体含有量が50%と60%のスラリーを混合することで生じさせたものであった。4Lの撹拌型媒体粉砕機(Premier Mill Corp.、Reading PA)の撹拌型フィードタンクに前記スラリーを約7ガロン入れた。滞留時間が各々約4分間になるように前記粉砕機に3回かけることで、レーザー散乱(Horiba)によって、51%の固体量で90%が1.66um未満になった。
【0072】
HiOpaque(商標)は、薄い層に裂けるカオリンから生じさせた焼成顔料である。商業的に生産された顔料にさらなる焼成をコージライト製トレーおよび2350度Fに前以て加熱しておいた高温の電気炉を用いて4時間受けさせることで充分に結晶化したムライトを最大限の収量で得た。次に、この炉の生成物を破砕して粉末にし、この上に示したように希釈しそして湿式媒体粉砕を4回実施した。最終的生成物はレーザー散乱によって90%が<3.24umでありかつこれの固体量は比重により37%であった。湿式粉砕を受けさせたスラリーは両方とも非常に低い粘度を示した。
【0073】
NuSurf(商標)は、薄い層に裂けるカオリンの粗い画分である。この製品に焼成をコージライト製トレーを用いて2350度Fで4時間受けさせることで充分に結晶化したムライトを最大限の収量で得、それに粉砕に続いて空気を用いた流体エネルギー粉砕(Micron Master Jet Pulverizer、Jet Pulverizer Co.、Palmyra、NY)を受けさせることで90%が<8.51umの粒径になるようにした。この材料をCowlesミキサーで水道水およびColloid 211を乾燥カオリン1kg当たり3ml用いて固体量が50%になるように希釈することで膨張しないスラリーを生じさせたが、この希釈は容易であった。このように希釈が容易であることは、その含水顔料が焼成前に最適には粉砕されていないか或は流体エネルギー粉砕によって凝集物が圧縮されたことを示唆していた。
【0074】
前記4成分スラリーの各々を混合で必要になるまで密封型ジャグに入れて転がすことで懸濁状態に維持した。
【0075】
前記4成分スラリーを全体が4kgの無水ベースで比率が30:20:20:30になるようにこの上に示した如くCowlesミキサーで混合することで噴霧乾燥用スラリーを生じさせた。このスラリーにN−brand(商標)ケイ酸ナトリウムを2.14kg直接添加することで固体量が45.7%の混合物を生じさせたが、これはポンプ輸送および噴霧乾燥に充分な流動性を示した。この材料に噴霧乾燥を0.6mmの単一流体用ノズルを700psiで用いて受けさせた。
【0076】
前記噴霧で得たままの材料が示したABD(見かけかさ密度)は0.71g/mlでありかつNaO分析値は3.9%であった、即ち結合剤はSiOとして13.1%であった。この生成物に直接的焼成を1500度Fに前以て加熱しておいた炉の中で開放型コージライト製トレーを用いて2時間受けさせた。この生成物が水銀多孔度測定で示した直径が40−20,000Åの範囲の孔の細孔容積は0.356cc/gであり、APSは76umであり、酸溶解物(米国特許第5,023,220号のコラム18の59行)は14.2重量%であり、そしてABDは0.71g/ccであった。
[実施例2]
【0077】
MKの含有量が30部で湿式媒体粉砕Ansilex 93(商標)の含有量が20部でボールミル粉砕NuSurf(商標)顔料(1,050℃を超える焼成を受けた)の含有量が20部でNuSurf(商標)ムライト凝集物(含水顔料に粉砕を受けさせた後に1,050℃を超える焼成を受けさせることで調製)の含有量が30部であることに加えてN−brand(商標)ケイ酸ナトリウムの添加に由来するSiO含有量が15部の微小球を調製した。この微小球には酸による中和を受けさせた。
【0078】
前記MK源はMetamax(商標)の2番目のバッチであり、それをC211分散剤を用い固体量が55%になるように希釈した。媒体粉砕Ansilex 93(商標)は実施例1で調製したスラリーと同じスラリーであった。
【0079】
ボールミル粉砕NuSurf(商標)ムライトの調製では、薄い層に裂ける含水顔料に焼成をコージライト製トレーを用いて2350度Fに前以て加熱しておいた炉の中で4時間受けさせた。この材料を破砕し、粉砕した後、固体量が46%の状態で湿式ボールミルにかけた。最終的生成物はレーザー散乱によって90%が<2umの低粘度スラリーであった。
【0080】
この実施例ではNuSurf(商標)ムライトの調製を不安定な構造を有する細孔容積が高い凝集物の生成が確保されるように実施した。薄い層に裂ける含水顔料であるNuSurf(商標)を水および分散剤を用いてスラリー状にし、噴霧乾燥で密に詰まった微小球を生じさせた後、粉砕することで低密度の粉末を得た。この含水粉末に焼成をコージライト製トレーを用いて2350度Fで4時間受けさせることで充分に結晶化したムライトを生じさせた。この生成物を破砕そして粉砕して粉末にした後、Cowlesミキサーを用い、C211を焼成カオリン1kg当たり4ml用いて固体量が50%になるように希釈した。このスラリーは最初は非常に膨張することで希釈が困難であった。混合を膨張がもはや見られなくなるまで継続した。レーザー散乱による粒径は90%が<14.75umであった。
【0081】
前記4成分スラリーの各々を混合で必要になるまで密封型ジャグに入れて転がすことで懸濁状態に維持した。
【0082】
前記4成分スラリーを全体が3.93kgの無水ベースで比率が30:20:20:30になるようにこの上に示した如くCowlesミキサーで混合することで噴霧乾燥用スラリーを生じさせた。このスラリーにN−brand(商標)ケイ酸ナトリウムを2.11kg直接添加することで固体量が48%の混合物を生じさせたが、これはポンプ輸送および噴霧乾燥に充分な流動性を示した。この材料に噴霧乾燥を0.6mmの単一流体用ノズルを700psiで用いて受けさせた。
【0083】
前記噴霧で得たままの材料が示したABDは0.72g/mlでありかつNaO分析値は4.01%であった、即ち結合剤はSiOとして13.5%であった。この生成物を噴霧乾燥を受けさせたままの微小球として冷水道水が入っているバケツに撹拌しながら供給すると同時に40重量%のHSOを前記スラリーのpHが約2.5から4の範囲に保持されるに充分な量で共供給することで、それに酸による中和を受けさせた。前記固体の全部を添加してから10分間に渡ってpHを監視かつ調節した後、濾過し、そして水道水を微小球1kg当たり約2ガロン用いて洗浄した後、約350度Fで一晩乾燥させた。
【0084】
その酸による中和を受けさせておいた微小球に直接的焼成を1500度Fに前以て加熱しておいた炉の中で開放型コージライト製トレーを用いて3時間受けさせた。この生成物が水銀多孔度測定で示した40−20,000Åの範囲内の孔の細孔容積は0.402cc/gであり、APSは77umであり、酸溶解物は14.4重量%であり、そしてABDは0.66g/ccであった。
[実施例3]
【0085】
MKを30部とNuSurf(商標)ムライト凝集物(この後者は粉砕した後に焼成を1,050℃を超えるように受けさせることで調製)を70部用いて例外的に高い細孔容積と非常に幅広いマクロ間隙を有する微小球を調製した。その焼成カオリン混合物に噴霧乾燥をN−brand(商標)ケイ酸ナトリウムの添加に由来する15部のSiOと一緒に受けさせた。この微小球には酸による中和を受けさせた。
【0086】
前記MK源は実施例2で希釈を受けさせたMetamax(商標)と同じバッチであった。前記NuSurf(商標)ムライト(凝集物)もまた実施例2で希釈を受けさせたバッチと同じであった。この2つのスラリーを混合で必要になるまで密封型ジャグに入れて転がすことで懸濁状態に維持した。
【0087】
前記2成分スラリーを全体が4.00kgの無水ベースで比率が30:70になるようにこの上に示した如くCowlesミキサーで混合することで噴霧乾燥用スラリーを生じさせた。このスラリーにN−brand(商標)ケイ酸ナトリウムを2.14kg添加することで固体量が48%の混合物を生じさせたが、これはポンプ輸送および噴霧乾燥に充分な流動性を示した。この材料に噴霧乾燥を0.6mmの単一流体用ノズルを700psiで用いて受けさせた。
【0088】
前記噴霧で得たままの材料が示したABDは0.56g/mlでありかつNaO分析値は3.92%であった、即ち結合剤はSiOとして13.1%であった。この生成物に酸による中和および乾燥を実施例2の手順に従って受けさせた。その酸による中和を受けさせておいた微小球に直接的焼成を1500度Fに前以て加熱しておいた炉の中で開放型コージライト製トレーを用いて3時間受けさせた。この生成物が水銀多孔度測定で示した直径が40−20,000Aの範囲内の孔の細孔容積は0.407cc/gであることに加えて直径が20,000から40,000Aの範囲内の孔の細孔容積は0.156cc/gであり、APSは86umであり、酸溶解物は10.6重量%であり、そしてABDは0.53g/ccであった。
[実施例4−6]
実施例1−3の微小球に通常手順(特許文献1および米国特許5,395,809)による結晶化を23時間受けさせることでゼオライトYを生じさせ、下記の結果を得た。その種晶は米国特許4,631,262に記述されている種晶である。
【0089】
【表2】

【0090】
これらの材料が示した水銀細孔容積は従来技術のインサイチュ結晶化によってもたらされたそれよりもかなり大きい。その後、そのナトリウム形態の触媒にイオン交換を下記の如く受けさせることで完成品を得た。27重量%の硝酸アンモニウム溶液に180度Fで撹拌しながらpHが2.8−3.2になるように50%のHNOを滴下してpHを制御しつつナトリウム形態の触媒を添加した。前記触媒の全部を添加した後のスラリーを15分間撹拌し、濾過した後、そのケーキを乾燥触媒重量の2倍の量の脱イオン水で洗浄した。触媒と27重量%の硝酸アンモニウムの重量比を1:2にして、そのような交換を2回実施した。次に、このサンプルに希土類による交換を180度FでpHを4にして受けさせることで前記触媒にREOを約3%与えた。この時点のNaO含有量は1.8から1.9重量であり、これは従来技術の配合よりもかなり低かった。
【0091】
その交換をある程度受けさせておいた材料の初期水分含有量が25重量%である間にそれをシリカ製トレーに入れて覆いを付けて、それに乾燥に続いて焼成を前以て1150度Fに加熱しておいた炉の中で2時間受けさせた。焼成後にアンモニウム交換手順を5回(実施例4)または3回(実施例5、6)繰り返した後、再び焼成を1150度Fで水分が25%の状態で受けさせることで完成品を生じさせた。その結果は下記の通りである:
【0092】
【表3】

【0093】
薄い層に裂ける含水カオリンに適切な予備粉砕を受けさせておいてそれの使用量を多くすればするほど触媒の細孔容積が大きくなりかつマクロ間隙が幅広くなることが分かるであろう。図1に、実施例6の触媒のSEM画像を示す。暗い領域はマクロ孔であり、これは、明らかに、薄い層に裂ける顔料から生じたマトリックスのシートが無作為または「不安定な構造」の形態を有することで生じたものである。ゼオライトの大きい結晶の間に挟まれている小さい粒子は明らかにムライトの結晶であると識別した。ムライトマトリックスを覆っているか或は他の様式で内張りしている大きい方の結晶は明らかにゼオライトYであると識別した。
【0094】
ムライトとスピネルの両方が含まれていることで三頂孔径分布がもたらされる。スピネルおよびムライト相に固有の間隙を水銀孔径データで見ることができ、このことは、そのようなメソ多孔性マトリックスがこれらの上に成長するゼオライトによって閉塞されていないことを示している。このことは、完成品である触媒に1500度Fの100%蒸気を用いた蒸気処理を4時間受けさせると得られる窒素ヒステリシスループ(図2)の中の体積が低下することで立証される。米国特許第5,395,809号による2つの比較実施例を示す。
[実施例7]
【0095】
この実施例では、粗いマトリックス用カオリンと微細なマトリックス用カオリンの混合物が表面積がより小さくて幅広いマクロ間隙と優れた触媒性能を保持する配合で用いるに有用であることを記述する。
【0096】
天然ガスを直接燃焼させる生産規模の回転式焼成装置を用いてカオリンをムライトとシリカに転化させる一連の短い試験実験を実施した。1つのケースでは、特許文献1および米国特許5,395,809号に記述されているブックレット型カオリン[NOKARB(商標)]に焼成を受けさせることでFCC触媒用マトリックスを生じさせることで製造を実施し、そしてこの試験の最後に焼成装置の苛酷さを高くしてムライトの収量が最大限になるようにした。生成物を集めてパイロット噴霧乾燥試験で用いた。Ansilex 93(商標)(A93)顔料の製造を後で実施した。A93は灰色粘土に沈降を受けさせることで90%が1umより微細になるように作られたものである。この分別を受けさせておいた含水カオリンに噴霧乾燥を受けさせた後、粉砕を受けさせることで低密度の粉末を生じさせた。A93製造実験を行う直前に焼成装置の苛酷さを高くすることで初期生成物のムライト含有量ができるだけ最大度合になるように高くし、そしてこの生成物からサンプルを採取した(「M93」)。この材料は実際にブックレット粘土と超微細含水カオリンの混合物から生じたものであることが分かったのはずっと後のことであった。この混合物の正確な比率を測定することはできなかったが、Fe2O3、SEMおよび水細孔容積の結果から混合が実際に起こったことが分かった。X線回折により、M93の約58%が完全に結晶化したムライトに転化した。
【0097】
Cowlesミキサーを用いて33.3部(無水ベース)のLHT含水顔料スラリーを水で希釈した後に乾燥M93をバッチプロセスで66.7部添加することに加えて分散剤を流動する混合物が生じるに充分な量で添加することで生じさせたM93混合焼成カオリン生成物を用いて微小球を生じさせた。この混合物の固体含有量は50%であったが、これは残存膨張をいくらか示した。このスラリーを円形開口部を一列有する車型噴霧装置が備わっている噴霧乾燥機に送った。前記噴霧装置の直ぐ上流に位置するインライン固定式ミキサーの入り口の所で前記スラリーにSiO/NaOが2.88のケイ酸ナトリウムである結合剤の溶液を4.1部(SiOとして)注入した。
【0098】
その微小球に特徴的発熱には到達しない焼成を受けさせることで含水カオリンをメタカオリンに転化させた。NaO含有量は1.40重量%であり、酸溶解物は14.72重量%であり、APSは91umであり、ABDは0.6g/ccであり、そして直径が40から20,000Aの範囲の孔のHg細孔容積は0.520g/ccであった。
[実施例8]
【0099】
実施例7の微小球に通常手順(特許文献1および米国特許5,395,809号)による結晶化を22時間受けさせることでゼオライトYを生じさせた結果、その結果は表3に示す通りであった。
【0100】
【表4】

【0101】
このナトリウム形態の触媒にイオン交換をこの上に示したように受けさせることでNaOを1.75重量%およびREOを3.14重量%にし、焼成をこの上に示した如く受けさせ、次にアンモニウム交換をこの上に示した如く受けさせることでNaOを0.23重量%にした後、焼成をこの上に記述した如く受けさせることで完成品を得た。この完成品に1500度Fの蒸気処理を開放型石英管の中で1気圧の蒸気下で4時間受けさせた。その特性は表4に示す通りであった。
[実施例9]
【0102】
この実施例は比較実施例である。米国特許第5,395,809号の方法を実質的に用いて作られた商業的に製造された触媒を得て、それに分析および試験を受けさせた。
[実施例10]
【0103】
この実施例は比較実施例である。名称が「GDO」のFCC触媒のサンプルに分析および試験を受けさせた。その製造方法を具体的には認識していないが、しかしながら、それはアルミニウムクロロヒドロール結合剤を用いかつ追加的顆粒状アルミナを配合することで作られた残油分解用組み込み型触媒の最新技術の代表例であると考えている。
【0104】
【表5】

【0105】
[実施例11−12]
米国特許第6,069,012号に実質的に記述されているようにインジェクターの位置が2.125”のACE(商標)微小規模固定式流動床装置を用いて、これを表面WHSVを8にして980度Fで操作し、触媒を9グラムおよびガスオイルA供給材料(表5)を用いることで、触媒性能を測定した。前記特許には前記インジェクターの位置はライザー滞留時間が2−2.5秒であることに相当すると示唆されている。触媒ストリップ時間を575秒に一定に保った。実施例8および9の触媒をBrownが特許文献1で開示した如き活性調節用微小球で希釈した。しかしながら、米国特許第6,069,012号の教示および通常の反応工学への忠実さが保たれたままであるようにする目的で、いろいろな触媒に評価を床容積を一定にして受けさせるべきであることは明らかである。それによって、比較を行う時の蒸気滞留時間が一定であることが確保される。それを行う目的で前記触媒配合物をABDが等しくなるように混合して、それらに試験を一定の重量で受けさせた。Brownが示した活性調節用微小球(ABDが約0.98)および実施例3の微小球(ABDが0.53)を適切な量で用いることでそれを実施した。
【0106】
比較触媒、例えば実施例10などの場合には、ABDを調整することができなかった。従って、この触媒には試験を9グラムの仕込み量(低い触媒体積)および約11グラムの仕込み量(等しい触媒体積)の両方で受けさせた。流体力学を一定に維持する目的で、後者の場合には油送達速度(g/分)が同じになるように表面WHSVを6.6にした。比較実施例の場合、後者の条件にした方がコークス、LCOおよびガソリン選択性が好ましく、従って、その結果を表6に報告する。
【0107】
【表6】

【0108】
商業的経験から公知のように、比較実施例9は、細孔容積が実質的により高い触媒と比較した時でさえ、接触時間が短い分解で非常に好ましい選択率を示す。また、実施例9および’特許文献1の触媒の両方とも通常の触媒に比べて実質的に高い表面積を有することから、FCC触媒性能の点で移動現象が制限にはならないと以前に結論付けられていたが、そのように結論付けるのが妥当であった。この結果は、選択率が既に主要な技術になっている実施例9の従来技術のそれに比べて驚くべきほど向上していることを示しておりかつ表面積がずっと低くて細孔容積が高い触媒と比べても更に驚くべきほど有利であることを示している。通常の考えでは移動が実際に一般的に制限であるならば実施例10が最良の性能を示すであろうと言った考えに導かれるであろうが、このことは当てはまらない。実施例10の触媒が残油改善の点で不足であることは、この触媒の方が本発明の触媒に比べて蒸気処理後のZSA/MSA比が低くかつアルミナ含有量が高いことを考慮すると特に驚くべきことである。
【0109】
本発明の触媒を用いると主要な分解生成物の選択率が向上した。本触媒は、蒸気処理後の単位格子サイズを一定にした時にガソリン選択率がより高いと言った通常ではない望ましい特性を示し、それに加えてオレフィン化(olefinicity)もしばしばより高い。転化率を一定にした時にLCO選択率がより高いことが観察されると同時にコークス選択率もより低いことが観察される。本発明の触媒以前では、そのような性能特徴は一般に互いに相殺されていた。
【0110】
【表7】

[実施例11]
【0111】
灰色粘土堆積物を分別(沈降によって90%が<1umになるように)することで生じさせた含水カオリンスラリーに噴霧乾燥および粉砕を米国特許第3,586,523号に開示されているようにして受けさせた。次に、その材料に焼成をそれが充分に結晶化したムライトになる過程の50%から80%(特許文献1の実施例4に示されているように、X線回折線の強度を完全な変換を受けたカオリンのそれと比較することで測定して)にまで転化するような度合の苛酷さで受けさせた。この材料(またM93とも表示する)が示した典型的な特性を比較材料のそれと一緒に表7に挙げる。
【0112】
FCC触媒用マトリックス前駆体として用いるに好適な焼成カオリンが示すISPパーセント固体は約75%固体未満、より好適には55%固体未満、最も好適には48−52%固体の範囲である。このことは、水細孔容積が従来技術で用いられた前駆体のそれよりも高いと言うことである。我々が好むレーザー粒径は90%が約10umの粒径であり、そのようにすると、適切な微小球を生じさせることができる。受け入れ性に関する最も簡単な試験は押さえ付けかさ密度であり、これを約0.45g/cc未満、より好適には0.40g/cc未満にすべきである。押さえ付けかさ密度、押さえ付けではないかさ密度、水銀容積およびISP固体は全部が互いに相互に関係している。
【0113】
カオリンが基になった材料が示すムライト指数値はそれらがこの上に示した要求を充たす限り如何なる値であってもよいが、それらは残存メソ多孔性もしくはミクロ多孔性マトリックスをもたらすように発熱を実質的に経験しているべきである。その結果としてもたらされるマトリックスが示す表面積およびモード孔直径(modal pore diameter)は相対的ムライト結晶子サイズが変わるにつれて滑らかに変わる。
【0114】
【表8】

【0115】
段階的Cowles装置を用いて、水の中に分散させたLHT顔料のスラリーに本実施例のM93をC211分散剤と一緒に連続をベースに添加した。その添加速度を混合スラリーが48から50%の固体量でLHT含水顔料を33部とM93焼成マトリックス前駆体を67部含有するように制御した。次に、この混合物に噴霧乾燥を受けさせることで微小球を生じさせた。膨張を制御しかつ噴霧を向上させる必要に応じて追加的水を添加した。前記スラリーを車型噴霧装置が備わっている噴霧乾燥器に送った。前記噴霧乾燥器の直ぐ上流に位置するインラインの固定式ミキサーの入り口の所で前記スラリーにSiO/NaOが2.88のケイ酸ナトリウムである結合剤の溶液を4部(SiOとして)注入した。その結果として得た微小球に焼成を直接燃焼型回転式焼成装置の中で受けさせることで前記混合物に入っている含水カオリンをメタカオリンに変化させたが、特徴的発熱には到達させなかった。
【0116】
NaO含有量は1.73重量%であり、酸溶解物は16.23重量%であり、APSは82umであり、ABDは0.47g/ccであり、そして直径が40から20,000Aの範囲の孔のHg細孔容積は0.679g/ccであった。
【0117】
前記微小球に結晶化をプラント規模の反応槽の中で種晶を約950ガロン、30重量%の濃縮再利用二ケイ酸ナトリウムを8,612ガロン、19%のNaOHを600ガロン、水を938ガロン、前記微小球を23,897ポンドおよびメタカオリン微小球を追加的に3.259ポンド(この後者の微小球は3,647,718に実質的に記述されている如く調製)用いて受けさせた。前記メタカオリン微小球の量を完成品の間隙率およびローラー摩滅率が仕様に合致するように制御されるように選択した。この2番目の微小球の残留物は遠心分離装置で大部分が除去されたと考えている。
【0118】
前記結晶化の生成物を濾過し、余分な母液を除去する目的で洗浄し、単位格子サイズは実質的に低下しないでナトリウムが追い出されるようにする目的で、それにイオン交換を受けさせてNaOを約2.5%およびREOを3%にした後に焼成を回転式焼成装置の中で受けさせ、ゼオライトの単位格子サイズを小さくする目的で、それにアンモニウムによる交換を再び受けさせてNaOを約0.2%にした後に再び焼成を受けさせる。このような触媒処理工程は以前から公知であり、本処理でも変更無しに単に採用する。
[実施例12]
【0119】
通常のFCC触媒の使用に従って、実施例11の触媒をFCC装置に供給した。この装置には最新の供給用ノズルおよびライザーターミネーションデバイスが備わっていて、ライザーの接触時間は2.0から2.5秒であった。この装置に実施例11の触媒を導入するとコークス量は一定のままで転化率が3LV%向上することを観察した。ガソリンの収率が向上すると同時に軽質オレフィンの収率も向上し、最も重要なことは、残油が示すAPI比重が以前には観察されなかったレベルにまで低くなったことにある。残油の分解の向上は注目に価する、と言うのは、それが乾燥ガス収率の不利益も超過分コークスの不利益も無しにもたらされたからである。
【0120】
使用した固定式流動床は比較的新しくかつ公的には較正を受けていないことから、試行を行う前および後に得た平衡触媒を用いてACE(商標)技術の事後監査を実施した。前記平衡触媒が示した特性を表に挙げる。2.125”のインジェクター位置を用いかつ試行中に得た供給材料を用いてACE(商標)を以前と同様に稼働させた。触媒作用の結果を表9に挙げかつ図3にコークスが一定になるように計算した収率デルタ(供給材料Bに対して通常の触媒を用いた時と対比させた)の形態で示す。前記固定式流動床装置を用いて得た結果はFCC装置を用いた時に得たデルタを妥当な精度で実質的に再現する。
【0121】
【表9】

【0122】
【表10】

[実施例13]
【0123】
実施例12の多孔質微小球では、摩滅および間隙率をこれらが仕様に合うように調節するには2番目のメタカオリン微小球を過剰量で用いる必要があった。また、その微小球が示す生強度によって摩滅の問題ももたらされた。従って、含水カオリンを増量(2番目の微小球の添加量を低くする目的で)および結合剤を増量(生強度を向上させる目的で)することによる改良を前記微小球に受けさせる。含水カオリンが約37から40%で実施例12に記述するようにして生じさせたM93が63%から60%の微小球を生じさせる。結合剤をシリカとして約8%の量で注入添加しそしてその微小球に焼成を受けさせることで含水カオリンをメタカオリンに変化させる。両方の場合とも生強度が向上する。その2番目のメタカオリン微小球をいろいろな用量で用いて前記微小球を結晶化させることによって、その2番目の微小球の用量を同じ量にするか或は少なくすると本発明の触媒にとって受け入れられる特性がもたらされることが分かる。
[実施例14]
【0124】
米国特許第6,451,200号に従って、高い細孔容積を有する酸化アルミニウム/膨潤性粘土複合体を65VF(揮発物を除く)部調製し、そしてそれに場合によりその開示に従う焼成を受けさせてもよい。このアルミニウム複合体を35部の超微細水和カオリンおよび25部の酸みょうばん安定化シリカゾルと一緒にすることで凝集したカオリン−アルミナスラリーを生じさせた後、それに噴霧乾燥を受けさせることで微小球を生じさせる。そのような凝集した超微細な含水カオリンを用いるとマクロ間隙が最大限になりかつ含水カオリンの量を制限すると律速反応体であるアルミナおよび相当するゼオライトの収率が制限される。その微小球に洗浄そして交換を受けさせて塩を除去し、焼成を受けさせることで前記超微細カオリンをメタカオリンに転化させかつ前記酸化アルミニウム/膨潤性粘土を遷移アルミナに変化させた後、結晶化を受けさせることでゼオライトYを生じさせる。理論的収率はNaYが55−65%の桁である。
[実施例15]
【0125】
アスペクト比が1.0以上の小板形態のギブサイトを用いて酸化アルミニウム/粘土を調製する以外は実施例14を繰り返す。その小板形態は再水和そして焼成後にも保存される。その小板に湿式粉砕またはハンマーミル粉砕を受けさせることによる脱凝集を場合により再水和または焼成前または後に実施してもよく、そしてその小板に再凝集を不安定な構造形態でこの上に開示した如き粉砕−焼成−粉砕方法でか或は本技術分野で良く知られているようにそのような材料のスラリーを綿状に固まらせるか或はゲル化させることによる方法で受けさせることでマクロ間隙率を最大限にする。そのようなマクロ間隙率がより高い前駆体は細孔容積がより高い微小球をもたらす。
[実施例16]
【0126】
アルミン酸ナトリウム溶液と硫酸アルミニウム溶液(場合によりケイ酸ナトリウム溶液を含めるか或は代わりに用いてもよい)を本技術分野で教示されているようにして沈澱および熟成段階で一緒にする。粘度が高くかつ固体量が低くかつ細孔容積が高いコゲルが生じる。このコゲルを濾過そして洗浄し、場合により湿式媒体粉砕して90%が約15um未満になるようにした後、それに噴霧乾燥を5−15%の量のコロイド状もしくは他の結合剤と一緒に受けさせ、場合により洗浄を再び受けさせた後、焼成を受けさせることでSi−Alスピネル、ムライトおよび非晶質Si−Al酸化物を生じさせる。また、知られているように、溶液の混合度合に応じて、Siを含有しない遷移アルミナおよびアルファアルミナを存在させることも可能である。焼成をSiAlスピネルへの完全な変換が達成されるに充分なほど実施すべきであり、そしてそれにDTAで示される発熱を伴わせてもよい。組成物全体に入っているSiOおよびAl全体の中の前記パーセントがゼオライト合成に活性であると言った仮定を採用する。そのような仮定を基にして結晶化を本技術分野で公知の化学量論的比率で起こさせることでホージャサイトを結晶化させる。ゼオライトの収率に関して観察される結果と最も良好に合致する実験的結晶化またはそれらの間の補間を用いて活性種の正確な分率を示す。それらは非晶質成分と対比させた相対的Si−Alスピネルおよびムライト含有量と良好に関係し得るが、それらを分析で測定するのは容易ではない。次の試みとして、その結晶化させた生成物に細孔容積が余分に存在する場合には、より強力な粉砕を行うことで前駆体であるゲルに脱凝集を起こさせるか或はマリングを実施して前駆体であるゲルの中のマクロ間隙を圧縮して間隙率を低くする。生じたゼオライトの量が充分でない場合には、メタカオリンの微小球または粉末を結晶化工程に添加することで反応性アルミナの量をより多くしかつゼオライトの収率を増大させる。別法として、カオリンを前記ゲルまたは微小球噴霧乾燥用配合物に添加することも可能である。また、非晶質相の中にAlがあまりにも多い量で存在していることでも余分なゼオライトが生じる可能性がある。この場合には、沈澱中にアルミニウムがより多い量でアルミナが豊富なゲルの中に取り込まれるようにすべきである(SiOゲルの中に分散する代わりに)。それによって、NaYの成長に寄与する非晶質生成物の代わりに遷移アルミナ、Si−Alスピネルおよびムライトがもたらされるであろう。
[実施例17]
【0127】
この実施例では、発泡アルミナから生じたマクロ多孔性マトリックスを含有する触媒の調製を例示する。
発泡アルミナホスト材料の調製:
General(商標)ミキサーのボウルの中にCatapal(商標)プソイドベーマイトを1152g入れた。水中1.5%のMethocel(商標)溶液を1188g調製した後、これに酢酸を72g添加した。その一緒にした溶液を前記Catapal(商標)アルミナに混合しながらゆっくり添加した後、それを高速で20分間混合した。次に、水を更に150g用いて前記混合物をDenverミキサーに移した後、高速で更に15分間混合した。次に、1.5%のMethocel(商標)溶液を更に840g、酢酸を10gおよび水を150ml加えた後、混合を更に10分間継続した。次に、この材料を前記ミキサーから取り出した後、600gのCabot発泡アルミナをゆっくり加え、そして前記混合物をスープ状に保持するに充分な量の水と一緒にして手で混合した。高せん断機械的混合も低せん断機械的混合も実施しなかった。次に、そのベーマイトで発泡したアルミナ混合物に乾燥をケーキとし受けさせた後、焼成を500℃で3時間受けさせた。次に、その焼成を受けさせたケーキをJaw Crusherおよび粉砕機でメッシュサイズが−40/+230の画分がふるいで保持されるように粉砕することでFCCの粒子サイズになるまで小さくした。総水銀細孔容積は0.96cc/gであった。
発泡アルミナホストの中のゼオライトYの結晶化:
1リットルの樹脂製ケトルに脱イオン水を480部、44重量%の二ケイ酸ナトリウム溶液を220部、開始剤(種晶)(名目上、ケイ酸ナトリウム中0.5%のAl2O3)を56部、この上に示したようにして生じさせた発泡アルミナを80部およびシリカゲルを19部加えた。次に、この反応槽に撹拌機、還流冷却器および熱電対を取り付けた後、それを205度Fに30分間加熱した。その温度に到達した時点でメタカオリン微小球を34.3部添加した後、温度を205度Fに16から20時間、即ち分離した固体のゼオライトY含有量がX線回折で最大限に到達するまで維持した。次に、その反応混合物を濾過し、反応混合物の体積の2倍の量の脱イオン水で洗浄した後、空気の温度が120℃のオーブンの中で乾燥させた。その乾燥させた生成物の一部を保持し、そしてその残りを200メッシュのスクリーンでふるい分けすることで2画分に分けた。各々をX線回折で分析した。
【0128】
分離しないで乾燥させた反応混合物が示したゼオライトY含有量(ゼオライト指数、ZI)は38であり、<200メッシュの画分が示したZIは12であり、そして発泡アルミナ(>200メッシュ)画分が示したZIは46であった。<200メッシュ生成物の色はメタカオリンと同じ黄褐色であった。>200メッシュ生成物の色はガンマアルミナであるホスト材料と同じ白色であり、そしてそれが占める体積は結晶化前と同じであったが、それの質量はホストアルミナのマクロ多孔構造の内側でゼオライトが成長したことが理由で増加していた。それによって、メタカオリンが滲出し、それの質量が減少しかつそれの崩壊がもたらされたことが立証され、かつメタカオリンのアルミニウムがマクロ多孔性ホストの中でゼオライトとして再沈したことが立証された。水銀ポロシメータは、半径が300Åの所に大きなピークの中心が存在していて半径の範囲は100−1000Åであることを示していた。
【0129】
次に、前記>200メッシュのナトリウム形態の反応生成物に硝酸アンモニウム溶液による処理でイオン交換を受けさせることでナトリウムを除去した。1重量部のナトリウム形態の触媒に脱イオン水を1部および45重量%の硝酸アンモニウム溶液を1部加えた。この混合物のpHを1:1の硝酸でpH=3に調整した後、80℃に15分間加熱した。次に、このスラリーを濾過した後、触媒1部当たり2部の脱イオン水を用いて洗浄した。この交換手順を全体で2回繰り返した後、触媒を120℃で乾燥させた。次に、この乾燥させた触媒に硝酸希土類溶液による交換を固体量が33%の状態で受けさせることで触媒の全希土類酸化物充填量が1.7%になるようにした。この交換では、前記混合物を205度Fに加熱し、1:1の硝酸を用いてpHを3.0に調整した後、その温度に30分間保持した。次に、このスラリーを濾過した後、交換を受けさせる乾燥触媒1部当たり1部の水を用いて洗浄した。次に、この触媒を120度Fで乾燥させた。次に、その乾燥させた触媒をシリカ製トレーに入れて、これに触媒4部当たり1部の水を加え、前記トレーに覆いを付けて、前記触媒に焼成を受けさせた。その覆いを付けたトレーを700度Fの炉の中に2時間入れた後、取り出して冷却した。この触媒に水を再び触媒4部当たり1部の水の割合で加え、前記トレーに覆いを付けて1112度Fの炉の中に2時間入れた後、取り出して冷却した。その焼成を受けさせた触媒に再びアンモニウムによる交換を触媒1部当たり1部の水および54%の硝酸アンモニウムを1部用いてこの上に記述したようにして更に3回受けさせた後、水で洗浄した。その完全な交換と安定化を受けた触媒を120℃で乾燥させた。その安定化を受けさせた触媒の水銀ポロシメータを図5に示すが、主要な間隙(モダリティ)は半径が約500Åの所に位置していて孔半径の範囲は100−3000Åであった。水銀による全細孔容積は0.48cc/gでありそして窒素ポロシメータによるそれは0.55cc/gであった。ゼオライトミクロ孔の表面積は177m/gであり、マトリックスの表面積は59m/gでありそしてNaO含有量は0.05重量%であった。
【0130】
本分野の技術者はこの上で行った開示を習得した時点で他の数多くの特徴、修飾形および改良を思い浮かべることであろう。従って、そのような他の特徴、修飾形および改良は本発明の一部であると考えており、本発明の範囲は本請求項で決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、実施例6で調製した如き本発明のゼオライト系微小球のSEM写真である。
【図2】図2は、本発明の触媒および比較触媒が示した窒素ヒステリシスループを示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の触媒を用いた時の測定収率デルタを通常の触媒のそれと比較するグラフである。
【図4】図4に、図3に示した試験で得たガソリン収率を示す。
【図5】図5は、発泡アルミナマトリックスを含有する触媒が示した水銀孔径分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトの結晶が多孔質のアルミナ含有マトリックスの表面を覆う層として含まれているが、前記ゼオライトで被覆されているマトリックスが孔を形成する形態で配置していて、前記ゼオライトの層が前記孔の壁の上に形成されているゼオライト系FCC触媒であって、直径が40−20,000Åの孔に関して0.27cc/gより高い水銀間隙率を示しかつ結晶化したゼオライトを少なくとも40重量%含有するゼオライト系FC触媒。
【請求項2】
ゼオライトの結晶がカオリン以外のアルミナ源に本質的に由来する多孔質のアルミナ含有マトリックスの表面を覆う層として含まれているが、前記ゼオライトで被覆されているマトリックスが孔を形成する形態で配置していて、前記ゼオライトの層が前記孔の壁の上に形成されているゼオライト系FCC触媒であって、直径が40−20,000Åの孔に関して0.20cc/gより高い水銀間隙率を示すゼオライト系FCC触媒。
【請求項3】
前記ゼオライトがゼオライトYである請求項2記載の触媒。
【請求項4】
直径が40−20,000Åの孔に関して少なくとも0.30cc/gの水銀間隙率を示す請求項2記載の触媒。
【請求項5】
前記ゼオライトを前記マトリックスの表面の上でインサイチュで結晶化させたものである請求項2記載の触媒。
【請求項6】
前記多孔質マトリックスが直径が少なくとも600Åの所にピークを有するとして特徴づけられるモード分布を示す孔を含有する請求項2記載の触媒。
【請求項7】
直径が600−20,000Åの孔に関して少なくとも0.10cc/gの水銀間隙率を示す請求項2記載の触媒。
【請求項8】
前記アルミナ源が三水化アルミニウムに由来する請求項2記載の触媒。
【請求項9】
インサイチュで結晶化したY−ホージャサイトを含有しかつ直径が40−20,000Åの範囲内の孔に関して約0.20cc/gより高い水銀間隙率を示す微小球を含んで成る流動接触分解触媒であって、前記微小球がカオリン以外のアルミナ源に本質的に由来するアルミナ−マトリックスを含んで成る触媒。
【請求項10】
炭化水素原料をFCC条件下で分解する方法であって、前記炭化水素原料を請求項1、2、または9記載の触媒に接触させることを含んで成る方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公表番号】特表2007−520337(P2007−520337A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551280(P2006−551280)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/001858
【国際公開番号】WO2005/077530
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】