説明

標本作製装置および標本作製方法

【課題】スライドガラスの所定位置にガラス片や埃などが付着した場合にも、検体関連情報をスライドガラスの所定位置により良好に付与することが可能な標本作製装置および標本作製方法を提供する。
【解決手段】この標本作製装置(血液塗抹標本作製装置100)は、スライドガラス400に血液を塗抹する塗抹部2と、スライドガラス400のフロスト部400aに、検体番号などの検体関連情報を印字する印字部10と、フロスト部400aに付着した付着物を除去する付着物除去部16と、付着物を除去し、その後、検体関連情報をフロスト部400aに印字するように、付着物除去部16および印字部10を制御する制御部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本作製装置および標本作製方法に関し、特に、スライドガラス上に検体が塗抹された塗抹標本を作製する標本作製装置および標本作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドガラス上に血液を塗抹することにより、血液塗抹標本を作製する血液塗抹標本作製装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1には、スライド収納部に収納されたスライドガラスを血液塗抹位置に搬送し、搬送したスライドガラス上に血液を塗抹する血液塗抹標本作製装置が開示されている。この血液塗抹標本作製装置では、血液が塗抹されたスライドガラスは、熱転写プリンタからなる印字部に搬送され、印字部によりスライドガラスの所定位置(フロスト部)に検体番号や被検者の名前などの検体関連情報が印字される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−47289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の血液塗抹標本作製装置では、スライドガラスがスライド収納部から血液塗抹位置を経て、印字部に搬送される間に、ガラス片や埃などの付着物がフロスト部に付着した場合には、付着物が付着した状態のフロスト部に検体関連情報が印字される。この場合には、上記特許文献1の血液塗抹標本作製装置では、付着物により印字が良好に行えない場合があると考えられる。このため、検体関連情報の印字(付与)をより良好に行うことが可能な標本作製装置が望まれる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するために、スライドガラスの所定位置にガラス片や埃などが付着した場合にも、検体関連情報をスライドガラスの所定位置により良好に付与することが可能な標本作製装置および標本作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による標本作製装置は、スライドガラスに検体を塗抹する塗抹部と、スライドガラスの所定位置に、検体に関する検体関連情報を付与する検体関連情報付与部と、スライドガラスの所定位置に付着した付着物を除去する付着物除去部と、付着物を除去し、その後、検体関連情報を所定位置に付与するように、付着物除去部および検体関連情報付与部の動作を制御する制御部とを備える。
【0008】
この第1の局面による標本作製装置では、上記のように、スライドガラスの所定位置に付着した付着物を除去し、その後、検体関連情報をスライドガラスの所定位置に付与するように、付着物除去部および検体関連情報付与部の動作を制御する制御部を設けることによって、スライドガラスの所定位置にガラス片や埃などの付着物が付着した場合にも、付着物除去部によりスライドガラスの所定位置に付着した付着物が除去された後、付着物が除去されたスライドガラスの所定位置に検体関連情報が付与される。その結果、検体関連情報付与部により、スライドガラスの所定位置に検体関連情報をより良好に付与することができる。また、検体関連情報付与部として、たとえば、熱転写プリンタのように、押圧部によりスライドガラスにインクリボンを押圧しながら印字を行う印字装置を設けた場合には、付着物が除去されたスライドガラスに対して押圧部がインクリボンを押圧するので、インクリボンや押圧部が例えばガラス片によって損傷するのを抑制することができる。その結果、印字装置のような検体関連情報付与部に故障が発生するのを抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面による標本作製装置において、好ましくは、付着物除去部は、スライドガラスの所定位置に対して、付着物を除去するための除去空気を送風する除去空気送風部を含む。このように構成すれば、除去空気送風部が送風する除去空気によりスライドガラスの所定位置に付着した付着物が除去されるので、付着物除去部をガラス片や埃などに接触させることなく付着物を除去することができる。その結果、スライドガラスの所定位置に付着していた付着物が、付着物除去部に付着してしまうのを抑制することができる。これにより、付着物除去部の付着物を除去する手間を軽減することができるので、ユーザの負担を軽減することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、除去空気送風部は、スライドガラスの表面に対して所定の角度傾斜した方向から所定位置に除去空気を送風するように構成されている。このように構成すれば、スライドガラスの真上から除去空気を送風した場合には、付着物がスライドガラス上で散らばってしまい、また、水平方向からスライドガラスに対して除去空気を送風した場合には、スライドガラス表面上の付着物を吹き飛ばす力が弱くなってしまうところ、スライドガラスの表面に対して所定の角度傾斜した方向から除去空気を送風することによって、スライドガラスの所定位置に付着した付着物を、除去空気により効率的に吹き飛ばすことができる。
【0011】
上記除去空気送風部を備えた構成において、好ましくは、除去空気送風部は、スライドガラス上の検体が塗抹された塗抹領域側とは反対方向に、除去空気を送風するように構成されている。このように構成すれば、除去空気により吹き飛ばした付着物がスライドガラスの塗抹領域に付着してしまうことを抑制することができる。
【0012】
上記除去空気送風部を備えた構成において、好ましくは、除去空気送風部は、除去空気送風部以外の他の駆動部が用いる空圧源と同じ空圧源を用いて、除去空気を送風するように構成されている。このように構成すれば、1つの空圧源を除去空気送風部および除去空気送風部以外の他の駆動部で用いることができるので、除去空気送風部用の空圧源を別途設ける必要がない。
【0013】
上記第1の局面による標本作製装置において、好ましくは、付着物除去部は、付着物を除去するためのブラシを含む。このように構成すれば、容易に、ブラシによりスライドガラスの所定位置の付着物を除去するとともに、除去した付着物を所定の場所に集塵することができる。その結果、除去した付着物が標本作製装置の内部に散乱するのを抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による標本作製装置において、好ましくは、塗抹部により検体が塗抹される複数のスライドガラスを収納可能なスライド収納部と、スライド収納部に収納されたスライドガラスを、スライド収納部におけるスライドガラスの収納位置から、塗抹部による検体塗抹位置に搬送する第1スライド搬送部と、塗抹部により検体が塗抹されたスライドガラスを、検体塗抹位置から検体関連情報付与部による検体関連情報の付与位置に搬送する第2スライド搬送部とをさらに備え、付着物除去部は、第1スライド搬送部によるスライドガラスの搬送経路上および第2スライド搬送部によるスライドガラスの搬送経路上の少なくとも一方に設けられている。このように構成すれば、第1スライド搬送部と第2スライド搬送部とによるスライドガラスの搬送動作時、および、塗抹部による検体の塗抹動作時にガラス片や埃などの付着物がスライドガラスの所定位置に付着した場合にも、容易に、付着物除去部により付着物を除去することができる。
【0015】
上記第1スライド搬送部および第2スライド搬送部を備えた構成において、好ましくは、付着物除去部は、第2スライド搬送部によるスライドガラスの搬送経路上に設けられている。このように構成すれば、付着物除去部を第1スライド搬送部によるスライドガラスの搬送経路上に設ける場合に比べて、検体関連情報の付与位置に近い位置で付着物を除去することができるので、付着物を除去した後、検体関連情報の付与位置までスライドガラスを搬送する間にさらに付着物が付着してしまうのを抑制することができる。また、このように構成すれば、スライドガラスに検体を塗抹した後に付着物の除去を行うので、検体を塗抹する際に付着する付着物も付着物除去部により除去することができる。
【0016】
上記第1の局面による標本作製装置において、好ましくは、塗抹部により検体が塗抹される複数のスライドガラスを収納可能なスライド収納部と、スライド収納部に収納されたスライドガラスを、スライド収納部におけるスライドガラスの収納位置から、検体関連情報付与部による検体関連情報の付与位置に搬送するスライド搬送部とをさらに備え、制御部は、スライドガラスを搬送しながら、スライドガラスの所定位置に付着した付着物を除去するように、スライド搬送部および付着物除去部の動作を制御するように構成されている。このように構成すれば、スライドガラスの搬送を停止することなく、スライドガラスの所定位置の付着物を除去するので、標本作製の処理速度を低下させることなく、スライドガラスの所定位置の付着物を除去することができる。
【0017】
上記スライドガラスを搬送しながら付着物を除去する構成において、好ましくは、制御部は、スライドガラスを搬送しながら、スライドガラスの所定位置の付着物を除去した後、スライドガラスの搬送をさらに継続することによりスライドガラスを検体関連情報付与部による検体関連情報の付与位置に搬送するように、スライド搬送部および付着物除去部の動作を制御するように構成されている。このように構成すれば、付着物を除去した後のスライドガラスを、速やかに検体関連情報の付与位置に搬送することができるので、付着物を除去した後、スライドガラスの所定位置に新たな付着物が付着してしまうのを抑制することができる。
【0018】
上記検体関連情報付与部を備えた構成において、好ましくは、付着物除去部は、検体関連情報付与部による検体関連情報の付与位置近傍に設けられている。このように構成すれば、付着物を除去した後、検体関連情報の付与位置までの搬送距離を短くすることができるので、付着物を除去した後、検体関連情報の付与位置までスライドガラスを搬送する間にさらに付着物が付着してしまうのをより抑制することができる。
【0019】
上記塗抹部および検体関連情報付与部を備えた構成において、好ましくは、塗抹部によりスライドガラスに塗抹された検体を乾燥させる乾燥部をさらに備え、付着物除去部は、乾燥部による検体の乾燥位置と検体関連情報付与部による検体関連情報の付与位置との間に設けられている。このように構成すれば、スライドガラスに塗抹した検体を乾燥した後に付着物の除去を行うので、塗抹した検体を乾燥する際に付着する付着物も付着物除去部により除去することができる。
【0020】
上記第1の局面による標本作製装置において、好ましくは、検体関連情報付与部は、スライドガラスの所定位置に検体関連情報を印字する印字部を含む。このように構成すれば、印字によってスライドガラスに検体関連情報を付与することができる。
【0021】
上記第1の局面による標本作製装置において、好ましくは、検体関連情報付与部は、スライドガラスの所定位置に検体関連情報を有するラベルを貼付する貼付部を含む。このように構成すれば、ラベルによってスライドガラスに検体関連情報を付与することができる。
【0022】
この発明の第2の局面による標本作製方法は、スライドガラス上に検体を塗抹する工程と、スライドガラスの所定位置に付着した付着物を除去する工程と、付着物を除去した後、スライドガラスの所定位置に検体に関する検体関連情報を付与する工程とを備える。
【0023】
この第2の局面による標本作製方法では、上記のように、スライドガラスの所定位置に付着した付着物を除去した後、検体関連情報をスライドガラスの所定位置に付与する工程を設けることによって、スライドガラスの所定位置にガラス片や埃などの付着物が付着した場合にも、スライドガラスの所定位置に付着した付着物を除去し、その後、スライドガラスの付着物が除去された所定位置に検体関連情報を付与することができる。その結果、検体関連情報をスライドガラスの所定位置に良好に付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
まず、図1〜図12を参照して、本実施形態による血液塗抹標本作製装置100の全体構成について説明する。
【0026】
本実施形態の血液塗抹標本作製装置100は、図1に示すように、搬送装置200により搬送される試験管300に収容された血液をスライドガラス上に塗抹して血液塗抹標本を作製する装置である。また、血液塗抹標本作製装置100は、図示しない血液細胞自動分析装置により分析することが可能な自動分析用の血液塗抹標本と、目視により分析することが可能な目視用の血液塗抹標本との2種類の標本を作製するように構成されている。
【0027】
搬送装置200は、血液塗抹標本作製装置100の前面側に設置されており、血液が収容された試験管300を収納する検体ラック301を血液塗抹標本作製装置100に自動的に搬送するように構成されている。また、血液塗抹標本作製装置100は、タッチパネルからなる表示操作部101と、起動スイッチ102と、電源スイッチ103と、カバー104とを含んでいる。また、血液塗抹標本作製装置100には、血液が収容された試験管300を搬送装置200側から血液塗抹標本作製装置100側に搬送するためのハンド部材105が設けられている。血液が収容された試験管300には、ゴム栓300aが装着されている。
【0028】
また、血液塗抹標本作製装置100は、図2および図3に示すように、吸引分注機構部1と、塗抹部2と、樹脂製のカセット3(図3参照)と、カセット収容部4と、第1カセット搬送部5と、スライドガラス挿入部6と、染色部7と、第2カセット搬送部8と、保管部9とを備えている。また、血液塗抹標本作製装置100は、印字部10と、スライドガラス供給部11と、第1スライド搬送部12と、第2スライド搬送部13と、制御部14と、第1乾燥部15と、付着物除去部16と、第2乾燥部17とをさらに備えている。また、図2に示すように、制御部14には、ホストコンピュータ500が接続されている。
【0029】
吸引分注機構部1は、ハンド部材105(図1参照)によって血液塗抹標本作製装置100側に搬送された試験管300から血液を吸引するとともに、吸引した血液を分注・塗抹位置20のスライドガラス400に滴下する機能を有する。この吸引分注機構部1は、図3に示すように、試験管300から血液を吸引するためのピアサ(吸引針)1aと、吸引した血液をスライドガラス400に分注するためのピペット1bと、ピアサ1aおよびピペット1bに接続されるシリンジポンプ1cと、ピアサ1aとシリンジポンプ1cとの間の流路を開閉するためのバルブ1dと、ピペット1bとシリンジポンプ1cとの間の流路を開閉するためのバルブ1eとを含んでいる。また、吸引分注機構部1は、2枚のスライドガラス400の各々に同一の血液(検体)を分注するとともに、その血液の分注量を、自動分析用の血液塗抹標本に対応した量と、目視用の血液塗抹標本に対応した量とに調節する機能を有する。
【0030】
塗抹部2は、スライドガラス400に滴下された血液を塗抹するために設けられている。また、図3に示すように、塗抹部2は、引きガラス2aを含んでおり、スライドガラス400に分注された血液を引きガラス2aにより塗抹するように構成されている。具体的には、引きガラス2aは、分注・塗抹位置20でスライドガラス400に当接する位置に移動可能に構成されるとともに、スライドガラス400の長手方向に移動することによって、血液をスライドガラス400に塗抹するように構成されている。
【0031】
樹脂製のカセット3は、図5および図6に示すように、塗抹が施されたスライドガラス400および染色工程で用いる液体(染色液)を収容することが可能なように構成されている。具体的には、カセット3は、スライドガラス収納孔3aと、染色液吸引分注孔3bと、仕切部3cおよび3dと、スライドガラス支持部3eと、磁石に吸着可能な金属からなる2つの磁石吸着部材3fと、搬送ベルト係合部3gと、側面部3hおよび3iと、側面部3jおよび3kとを含んでいる。スライドガラス収納孔3aと、染色液吸引分注孔3bとは、内部で繋がっている。また、側面部3jおよび3kは、それぞれ、側面部3hおよび3iに対して所定量突出しているとともに、カセット3の上部に配置されている。
【0032】
カセット収容部4は、図3に示すように、カセット3を搬入するために設けられており、送り込みベルト4aを含んでいる。
【0033】
また、第1カセット搬送部5は、カセット収容部4から搬入されたカセット3をスライドガラス挿入部6および染色部7に搬送するために設けられている。この第1カセット搬送部5は、水平方向に移動可能なカセット搬送部材5aと、カセット搬送部材5aを水平方向に移動させるための駆動ベルト5bと、カセット収容部4から供給されたカセット3を搬送するための搬送路5cとを含んでいる。
【0034】
スライドガラス挿入部6は、塗抹および印字が施されたスライドガラス400をカセット3のスライドガラス収納孔3aに収納するために設けられている。このスライドガラス挿入部6は、カセット3を水平方向に配置してスライドガラス400を挿入可能な状態にするためのカセット回動機構部6aを含んでいる。
【0035】
染色部7は、カセット搬送部材5aにより搬送されたカセット3の染色液吸引分注孔3bに染色液を供給することにより、塗抹済みのスライドガラス400に染色を施すために設けられている。
【0036】
第2カセット搬送部8は、染色済みのスライドガラス400が収納されたカセット3を、図示しない血液細胞自動分析装置と、血液塗抹標本作製装置100の保管部9との両方に搬送することが可能なように構成されている。また、第2カセット搬送部8は、染色済みのスライドガラス400が収納されたカセット3を、保管部9に搬送するか、または、血液細胞自動分析装置に搬送するかを制御部14により制御されるように構成されている。
【0037】
保管部9は、染色部7により染色されたスライドガラス400が収納されたカセット3を保管するために設けられている。なお、保管部9に搬入された染色済みのスライドガラス400は、目視により分析される。この保管部9には、送り込み部9aと、搬送ベルト9bとが設けられている。
【0038】
印字部10は、熱転写プリンタからなる。そして、印字部10は、ホストコンピュータ500(図2参照)から取得する標本情報に基づいて、図4に示すように、スライドガラス400のフロスト部(情報表示領域)400aに検体関連情報を印字するために設けられている。具体的には、印字部10は、検体関連情報として、検体番号、日付、受付番号および氏名などの標本情報が蓄積された2次元バーコード400bと、標本情報に含まれる属性情報としての日付(07/06/04)400c、名前(Sysmex)400dおよび検体番号(BA15617)400eからなる3行のテキストデータとを印字する。なお、2次元バーコードとは、平面的に見て水平方向と垂直方向との2方向に情報を保持したバーコードである。また、スライドガラス400のフロスト部400aに印字する2次元バーコード400bとしては、データマトリックスやQRコードなどがある。また、2次元バーコード400bの情報量(蓄積可能な文字数)は、半角文字で最大50桁であり、全角文字で最大25桁である。
【0039】
また、印字部10のインクとしては、スライドガラス400のフロスト部400aに印字される2次元バーコード400bおよびテキストデータ(400c〜400e)が、染色操作および顕微鏡検査の際に用いるアルコールやキシレンなどの有機溶媒によって溶出しないような耐久性を有するインクが用いられる。
【0040】
また、印字部10は、スライドガラス400を送りベルト13aの端部から印字位置40へ移動させるとともに、印字後のスライドガラス400をカセット3への収納位置50へ移動させる機能を有している。具体的には、印字部10は、図3に示すように、スライドガラス400を送りベルト13aの端部から印字位置40へ横方向(矢印X方向)に移動するための横方向移動片10aと、スライドガラス400を印字位置40からカセット3への収納位置50へ縦方向(矢印Y方向)に移動するための縦方向移動片10bとを含んでいる。
【0041】
スライドガラス供給部11は、血液が分注される前のスライドガラス400を第1スライド搬送部12に供給するために設けられている。また、スライドガラス供給部11は、スライドガラス400を収納する2つのスライド収納部11aを含んでいる。
【0042】
第1スライド搬送部12は、スライドガラス供給部11から供給されるスライドガラス400を第2スライド搬送部13に搬送するために設けられている。また、第1スライド搬送部12は、送りベルト12aおよび送りベルト12aに取り付けられた図示しないチャックを含んでいる。また、第1スライド搬送部12は、チャックにより把持するスライドガラス400を、第2スライド搬送部13の送りベルト13a上に供給する機能を有する。
【0043】
第2スライド搬送部13は、第1スライド搬送部12により搬送されたスライドガラス400を分注・塗抹位置20に搬送するとともに、塗抹されたスライドガラス400を、第1乾燥部15による乾燥位置30aおよび30b(図8参照)と印字部10による印字位置40(図3参照)とに搬送するために設けられている。また、第2スライド搬送部13は、図3に示すように、2本の送りベルト13a上のスライドガラス400を、スライドガラス400の長手方向に直交する方向(矢印X方向)に搬送するように構成されている。また、第2スライド搬送部13は、リフト部13b(図9参照)を含み、乾燥位置30aおよび30b(図8参照)に搬送したスライドガラス400を送りベルト13aから離間するようにリフト部13bにより上方に持ち上げるように構成されている。
【0044】
図3に示すように、第1乾燥部15は、ファン15aと、ファン15aを支持する支持部15bとを含んでいる。ファン15aは、乾燥位置30aおよび30b(図8参照)に搬送されたスライドガラス400上の塗抹された血液を乾燥するために設けられている。また、図9に示すように、支持部15bは、把持部15cと、ファン取付部15dと、ノズル取付部15eと、取付部15fと、回動部15gとを有している。また、支持部15bは、図7〜図9に示すように、第2スライド搬送部13の2本の送りベルト13aを跨ぐように配置されている。また、支持部15bは、図10に示すように、取付部15fにより血液塗抹標本作製装置100の所定の位置に取り付けられており、取付部15f近傍の回動部15gを中心として、上下方向に回動可能に構成されている。把持部15cは、支持部15bを上下方向に回動する際に、ユーザが把持可能なように構成されており、ファン取付部15dおよびノズル取付部15eは、それぞれ、ファン15aおよび付着物除去部16のノズル16aを取り付け可能に構成されている。
【0045】
ここで、本実施形態では、図9に示すように、支持部15bが下方に回動された状態において、ファン取付部15dは、第2スライド搬送部13により搬送されるスライドガラス400の表面に対して所定角度α(約45度)傾斜するように形成され、ノズル取付部15eは、第2スライド搬送部13により搬送されるスライドガラス400の表面に対して所定角度β(約135度(ファン取付部15dと反対方向に約45度))傾斜するように形成されている。これにより、ファン15aは、乾燥位置30aおよび30bに搬送されたスライドガラス400の表面に対してα(約45度)傾斜するように支持部15bにより支持され、付着物除去部16のノズル16aは、搬送されるスライドガラス400の表面に対してβ(約135度(ファン取付部15dと反対方向に約45度))傾斜するように支持部15bにより支持される。
【0046】
また、本実施形態では、付着物除去部16のノズル16aは、スライドガラス400の搬送経路上で、乾燥位置30aおよび30b(図8参照)と印字部10による印字位置40(図3参照)との間に配置されている。また、ノズル16aは、スライドガラス400のフロスト部400aに付着したガラス片や埃などの付着物を除去するために設けられている。ノズル16aは、所定の空圧(約0.25MPa)で噴射する除去空気により、フロスト部400aの付着物を吹き飛ばして除去するように構成されている。また、ノズル16aは、図9に示すように、搬送されるスライドガラス400の表面に対してβ(約135度(ファン15aと反対方向に約45度))傾斜する方向からスライドガラス400のフロスト部400aに除去空気を噴射するように構成されている。これにより、フロスト部400aから除去した付着物を塗抹領域400f側とは反対側に吹き飛ばすことができるので、吹き飛ばした付着物がスライドガラス400の塗抹領域400fに付着してしまうのを抑制することが可能である。なお、本明細書では、「付着」を、ガラス片や埃などがスライドガラスにぴったりと貼り付いている状態、および、ガラス片や埃などがスライドガラス上に載っているだけの状態の両方を含むものとして用いている。
【0047】
また、ノズル16aは、図11に示すように、スライドガラス400の搬送方向(矢印X方向)の所定角度γ(約115度)の範囲に除去空気を噴射するように構成されており、フロスト部400aに到達する除去空気の矢印X方向の幅W1は、スライドガラス400の短手方向の幅W2よりも小さい。
【0048】
ここで、付着物除去部16のノズル16aが、除去空気を噴射する構成について詳細に説明する。図12に示すように、付着物除去部16は、ノズル16aに加えて、流路切替部16b、逆止弁16c、エアタンク16d、バルブ16e、および、空圧源16fを含んでいる。また、ノズル16aは、流路切替部16b、逆止弁16c、エアタンク16dおよびバルブ16eを介して、空圧源16fに接続されている。空圧源16fは、ノズル16aおよび付着物除去部16以外の所定の各部に約0.25MPaの空圧を供給するように構成されている。この付着物除去部16以外の所定の各部には、たとえば、染色部7の図示しない洗浄部や第1スライド搬送部12の図示しないチャックなどが含まれる。また、流路切替部16bは、空圧源16fから供給された空圧を、ノズル16a側または付着物除去部16以外の所定の各部側に提供するように空気の流路を切り替えるように構成されている。逆止弁16cは、流路切替部16b側から到達する空気をエアタンク16d側に通過させる一方、エアタンク16d側から到達する空気を流路切替部16b側に通過させないように構成されている。エアタンク16dは、空圧源16fから供給された空圧を一時的に保持することが可能なように構成されている。バルブ16eは、制御部14からの信号に基づいて空気の流路を開閉するように構成されている。これにより、ノズル16aは、バルブ16eが開放された場合に、エアタンク16d内の空圧により除去空気を噴射することが可能となる。また、除去空気の噴射にエアタンク16d内の空圧を用いることによって、ノズル16aが除去空気を噴射した場合にも、空圧源16fの空圧が一気に低下してしまうのを抑制することが可能である。
【0049】
第2乾燥部17は、スライドガラス400のフロスト部400aに印字されたインクを乾燥させるために設けられている。図7に示すように、第2乾燥部17は、ファン17aと、ファン17aを支持する支持部17bとを含んでいる。また、ファン17aは、搬送されるスライドガラス400の表面に対して所定角度δ(約45度)傾斜するように支持部17bに取り付けられている。支持部17bは、印字部10の縦方向移動片10bにより印字位置40からカセット3の収納位置50に搬送されるスライドガラス400を跨ぐように配置されている。これにより、支持部17bに取り付けられたファン17aは、印字位置40から収納位置50への搬送途中のスライドガラス400に対して、空気を送風することが可能である。
【0050】
スライドガラス400のフロスト部400aは、図4および図5に示すように、スライドガラス400の長手方向において塗抹領域400fと隣接するように、スライドガラス400の一方の端部側の領域に配置されている。また、スライドガラス400のフロスト部400aには、樹脂などのコーティング剤からなる印字可能なコーティング膜400gが形成されている。このコーティング膜400gを構成するコーティング剤は、染色操作および顕微鏡検査の際に用いるアルコールやキシレンなどの有機溶媒に対して優れた耐久性を有する。そして、上記した2次元バーコード400bおよび3行のテキストデータ(400c〜400e)は、フロスト部400aに位置するコーティング膜400gの上面上に印字されている。また、コーティング膜400gは、塗抹領域400fを挟むように、フロスト部400aからスライドガラス400の長手方向に沿って延びるように形成されている。
【0051】
図13は、図1に示した一実施形態による標本作製装置の血液塗抹標本作製処理を示したフローチャートである。次に、図1、図3、図8、図11および図13を参照して、本実施形態による血液塗抹標本作製装置100の血液塗抹標本作製処理について説明する。
【0052】
ここで、本実施形態では、ユーザにより起動スイッチ102(図1参照)が押下されると、ステップS1において、血液塗抹標本作製装置100の標本作製プログラムが初期化される。そして、ステップS2において、表示操作部101でユーザからの標本作製指示があったか否かが制御部14により判断される。標本作製指示がない場合には、ステップS16に動作が移行され、ユーザから血液塗抹標本作製装置100のシャットダウン指示があったか否かが制御部14により判断される。一方、標本作製指示があった場合には、ステップS3において、第1スライド搬送部12のチャックによりスライド収納部11a内のスライドガラス400が把持され、スライド収納部11aから取り出される。そして、ステップS4において、スライド収納部11aから取り出されたスライドガラス400は、第1スライド搬送部12により第2スライド搬送部13の送りベルト13a上に移動され、その後、第2スライド搬送部13の送りベルト13aにより分注・塗抹位置20に搬送される。
【0053】
そして、ステップS5において、スライドガラス400にピペット1b(図3参照)を用いて血液の滴下(分注)が行われる。この際、自動分析用の血液塗抹標本および目視用の血液塗抹標本の両方を作製する場合には、同一の血液を、2枚のスライドガラス400の各々に分注する。そして、自動分析用の血液塗抹標本を作製する場合には、自動分析用の血液塗抹標本に対応した量の血液が分注されるとともに、目視用の血液塗抹標本を作製する場合には、目視用の血液塗抹標本に対応した量の血液が分注される。その後、スライドガラス400に滴下された血液が塗抹部2により塗抹される。具体的には、引きガラス2aが、スライドガラス400に当接するように移動されるとともに、スライドガラス400の長手方向に往復移動されることにより、分注・塗抹位置20でスライドガラス400に滴下された血液が塗抹される。この際、自動分析用の血液塗抹標本を作製する場合と、目視用の血液塗抹標本を作製する場合とで、スライドガラス400に対する引きガラス2aの接触角度および引きガラス2aの往復移動の速度が調節される。
【0054】
その後、ステップS6において、塗抹されたスライドガラス400は、送りベルト13aにより乾燥位置30a(図8参照)に搬送される。そして、ステップS7において、乾燥位置30aに搬送されたスライドガラス400は、リフト部13bにより送りベルト13aから離間するように上方に持ち上げられる。これにより、送りベルト13aが他のスライドガラス400を搬送するために駆動する場合にも、持ち上げたスライドガラス400は搬送方向(矢印X方向)に移動されず、乾燥位置30aに保持しておくことが可能である。そして、乾燥位置30aにおいて、ファン15aにより、スライドガラス400上の塗抹された血液が冷風乾燥される。このスライドガラス400への冷風乾燥は、隣接する2つの乾燥位置30aおよび30bで2回行われ、それぞれの乾燥位置30aおよび30bで約30秒ずつ行われる。
【0055】
また、乾燥位置30bでの冷風乾燥が終了したスライドガラス400は、リフト部13bにより送りベルト13a上に戻される。その後、ステップS8において、制御部14により、バルブ16e(図12参照)が開放されて、付着物除去部16のノズル16aからスライドガラス400に除去空気が供給(噴射)される。ついで、ステップS9において、第2スライド搬送部13により、スライドガラス400が、乾燥位置30bから印字部10による印字位置40まで搬送される。その後、ステップS10において、制御部14により、バルブ16eが閉じられ、ノズル16aからの除去空気の供給が停止される。このように、乾燥位置30bから印字位置40までスライドガラス400が搬送されている間に、付着物除去部16によりフロスト部400aの付着物の除去が行われる。これにより、図11に示すように、付着物除去部16のノズル16aから噴射される除去空気のフロスト部400aでの幅W1は、スライドガラス400の短手方向の幅W2よりも小さいにもかかわらず、スライドガラス400を搬送しながら除去空気をフロスト部400aに噴射することにより、フロスト部400aの全体(全幅)にわたって除去空気を当てることが可能となる。また、除去空気のフロスト部400aでの幅W1をスライドガラス400の幅W2よりも大きくする必要がないので、噴射範囲(噴射角度)を所定角度γ(約115度)よりも大きくする必要がない。その結果、噴射の勢いを極力低下させずに除去空気をフロスト部400aに到達させることが可能である。また、フロスト部400aの付着物が除去された後のスライドガラス400は、さらに搬送が継続され、印字位置40まで搬送される。
【0056】
そして、ステップS11において、付着物が除去されたフロスト部400aに、検体番号、日付、受付番号、氏名などの標本情報が蓄積された2次元バーコード400bと、日付や氏名の漢字などからなる3行のテキスト400cとが印字部10により印字される。
【0057】
その後、スライドガラス400は、印字部10の縦方向移動片10bにより収納位置50へ移動されながら、ファン17aにより印字のインクが乾燥される。そして、ステップS12において、収納位置50に移動された塗抹済みのスライドガラス400は、スライドガラス挿入部6のカセット3に収納される。
【0058】
ステップS13において、スライドガラス400を収納したカセット3は、カセット搬送部材5aにより染色部7に搬送され、ステップS14において、染色処理が施される。そして、ステップS15において、第2カセット搬送部8により、カセット3は保管部9または血液細胞自動分析装置に搬送される。その後、ステップS16において、ユーザからシャットダウン指示があったか否かが制御部14により判断され、シャットダウン指示がない場合には、動作がステップS2に移行される。シャットダウン指示があった場合には、ステップS17において、血液塗抹標本作製装置100のシャットダウンが実行される。これにより、血液塗抹標本作製装置100の血液塗抹標本作製処理が終了される。
【0059】
本実施形態では、上記のように、スライドガラス400のフロスト部400aに付着した付着物を除去し、その後、検体関連情報をスライドガラス400のフロスト部400aに印字するように、付着物除去部16および印字部10を制御する制御部14を設けることによって、スライドガラス400のフロスト部400aにガラス片や埃などの付着物が付着した場合にも、付着物除去部16によりスライドガラス400のフロスト部400aに付着した付着物が除去された後、付着物が除去されたスライドガラス400のフロスト部400aに検体関連情報が印字される。その結果、印字部10により、スライドガラス400のフロスト部400aに検体関連情報をより良好に印字することができる。
【0060】
また、本実施形態では、付着物除去部16が空気を噴射することによりスライドガラス400上の付着物を除去しているので、付着物除去部16がガラス片や埃などの付着物に接触することがない。そのため、付着物除去部16を洗浄する必要がなく、装置のメンテナンスが容易になる。
【0061】
また、本実施形態では、第2スライド搬送部13がスライドガラス400を搬送しながら、スライドガラス400のフロスト部400aに付着した付着物を除去するように第2スライド搬送部13および付着物除去部16の動作を制御するように制御部14を構成することによって、スライドガラス400の搬送を停止することなく、スライドガラス400のフロスト部400aの付着物を除去するので、血液塗抹標本作製の処理速度を低下させることなく、スライドガラス400のフロスト部400aの付着物を除去することができる。
【0062】
また、本実施形態では、付着物除去部16を、印字位置40近傍に設けることによって、付着物を除去した後、印字位置40までの搬送距離を短くすることができるので、付着物を除去した後、印字位置40までスライドガラス400を搬送する間にフロスト部400aにさらに付着物が付着してしまうのを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、付着物除去部16を、スライドガラス400が分注・塗抹位置20から印字位置40に搬送されている間に、フロスト部400aの付着物を除去するように構成することによって、スライドガラス400に検体を塗抹した後に付着物の除去を行うので、検体を塗抹する際に付着する付着物も付着物除去部16により除去することができる。
【0064】
また、本実施形態では、付着物除去部16を、ファン15aによる検体の乾燥位置30aおよび30bと印字部10による印字位置40との間に設けることによって、スライドガラス400に塗抹した検体を乾燥した後に付着物の除去を行うので、塗抹した検体を乾燥する際に付着する付着物も付着物除去部16により除去することができる。
【0065】
また、本実施形態では、付着物除去部16を、スライド供給部11のスライド収納部11aと印字部10による印字位置40との間に設けることによって、スライド収納部11aからスライドガラス400を取り出す際にスライドガラス400に付着した付着物を、付着物除去部16により除去することができる。
【0066】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0067】
たとえば、上記実施形態では、標本作製装置の一例として血液塗抹標本作製装置を示したが、本発明はこれに限らず、血液塗抹標本作製装置以外の他の標本作製装置であってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、スライドガラスに対して空気を噴射することにより、スライドガラス上のガラス片や埃などの付着物を除去する例を示したが、本発明はこれに限らず、ブラシによりスライドガラス上の付着物を除去してもよい。ブラシを用いた場合には、スライドガラスから除去した付着物を所定の場所に集めることができ、装置内に付着物が除去することを抑制することができる。また、スライドガラス上の付着物を粘着テープに付着させて除去してもよいし、負圧を用いた空気吸引によりスライドガラス上の付着物を除去回収してもよい。粘着テープや空気吸引により付着物を除去する場合には、スライドガラス上の付着物が装置内部に散らばることを抑制することができるとともに、埃が舞い上がることも抑制することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、検体関連情報付与部の一例として、検体番号や日付などの情報を有するバーコードとテキストデータとをスライドガラスに印字する印字部を設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、上記バーコードとテキストデータとが印字されたラベルをスライドガラスに貼付する貼付部を設けてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、スライドガラス上に検体を塗抹した後、スライドガラス上の付着物を除去する例を示したが、本発明はこれに限らず、検体関連情報をスライドガラスに付与する前であれば、スライドガラス上に検体を塗抹する前にスライドガラス上の付着物を除去してもよい。たとえば、スライドガラス上の付着物を除去した後に、検体を塗抹し、その後、スライドガラスに検体関連情報を付与する構成でもよいし、付着物を除去した後に、スライドガラスに検体関連情報を付与し、その後、検体を塗抹する構成であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、付着物除去部を印字部に隣接するように配置する例を示したが、本発明はこれに限らず、第1スライド搬送部および第2スライド搬送部によるスライドガラスの搬送経路上であれば、付着物除去部をどこに配置してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、血液がスライドガラスに塗抹された血液塗抹標本を作製する例を示したが、本発明はこれに限らず、子宮頸部から採取された細胞や尿などの生体組織を用いて塗抹標本を作製してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、1つの空圧源から供給される圧力を、付着物除去部のノズルおよび付着物除去部以外の所定の各部で用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、付着物除去部用の空圧源を別途設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、約45度の角度からスライドガラスに対して除去空気を噴射する例を示したが、本発明はこれに限らず、別の角度からスライドガラスに対して除去空気を噴射してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、印字部10は、熱転写プリンタから構成されているが、本発明はこれに限らず、印字部10は、例えば、ドットプリンタやレーザープリンタから構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態による血液塗抹標本作製装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置のブロック図である。
【図3】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の内部構造の平面図である。
【図4】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置に用いるスライドガラスのフロスト部の拡大図である。
【図5】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置に用いるカセットおよびスライドガラスの斜視図である。
【図6】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置に用いるカセットおよびスライドガラスの斜視図である。
【図7】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の付着物除去部周辺を示した斜視図である。
【図8】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の付着物除去部周辺を示した平面図である。
【図9】図8の600−600線に沿った断面図である。
【図10】図9の状態からファン取付部およびノズル取付部を回動させた状態を示した図である。
【図11】図8の700−700線に沿った断面図である。
【図12】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の付着物除去部を説明するための図である。
【図13】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の血液塗抹標本作製処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
2 塗抹部
10 印字部
11a スライド収納部
12 第1スライド搬送部
13 第2スライド搬送部
14 制御部
15a ファン
16 付着物除去部
16f 空圧源
100 血液塗抹標本作製装置
400 スライドガラス
400a フロスト部
400b 2次元バーコード
400c 日付
400d 名前
400e 検体番号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドガラスに検体を塗抹する塗抹部と、
前記スライドガラスの所定位置に、前記検体に関する検体関連情報を付与する検体関連情報付与部と、
前記スライドガラスの前記所定位置に付着した付着物を除去する付着物除去部と、
前記付着物を除去し、その後、前記検体関連情報を前記所定位置に付与するように、前記付着物除去部および前記検体関連情報付与部の動作を制御する制御部とを備える、標本作製装置。
【請求項2】
前記付着物除去部は、前記スライドガラスの前記所定位置に対して、前記付着物を除去するための除去空気を送風する除去空気送風部を含む、請求項1に記載の標本作製装置。
【請求項3】
前記除去空気送風部は、前記スライドガラスの表面に対して所定の角度傾斜した方向から前記所定位置に前記除去空気を送風するように構成されている、請求項2に記載の標本作製装置。
【請求項4】
前記除去空気送風部は、前記スライドガラス上の検体が塗抹されている塗抹領域側とは反対方向に、前記除去空気を送風するように構成されている、請求項3に記載の標本作製装置。
【請求項5】
前記除去空気送風部は、前記除去空気送風部以外の他の駆動部が用いる空圧源と同じ空圧源を用いて、前記除去空気を送風するように構成されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項6】
前記付着物除去部は、前記付着物を除去するためのブラシを含む、請求項1に記載の標本作製装置。
【請求項7】
前記塗抹部により検体が塗抹される複数のスライドガラスを収納可能なスライド収納部と、
前記スライド収納部に収納された前記スライドガラスを、前記スライド収納部における前記スライドガラスの収納位置から、前記塗抹部による検体塗抹位置に搬送する第1スライド搬送部と、
前記塗抹部により検体が塗抹された前記スライドガラスを、前記検体塗抹位置から前記検体関連情報付与部による前記検体関連情報の付与位置に搬送する第2スライド搬送部とをさらに備え、
前記付着物除去部は、前記第1スライド搬送部による前記スライドガラスの搬送経路上および前記第2スライド搬送部による前記スライドガラスの搬送経路上の少なくとも一方に設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項8】
前記付着物除去部は、前記第2スライド搬送部による前記スライドガラスの搬送経路上に設けられている、請求項7に記載の標本作製装置。
【請求項9】
前記塗抹部により検体が塗抹される複数のスライドガラスを収納可能なスライド収納部と、
前記スライド収納部に収納された前記スライドガラスを、前記スライド収納部における前記スライドガラスの収納位置から、前記検体関連情報付与部による前記検体関連情報の付与位置に搬送するスライド搬送部とをさらに備え、
前記制御部は、前記スライドガラスを搬送しながら、前記スライドガラスの前記所定位置に付着した前記付着物を除去するように、前記スライド搬送部および前記付着物除去部の動作を制御するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記スライドガラスを搬送しながら、前記スライドガラスの前記所定位置の前記付着物を除去した後、前記スライドガラスの搬送をさらに継続することにより前記スライドガラスを前記検体関連情報付与部による前記検体関連情報の付与位置に搬送するように、前記第スライド搬送部および前記付着物除去部の動作を制御するように構成されている、請求項9に記載の標本作製装置。
【請求項11】
前記付着物除去部は、前記検体関連情報付与部による前記検体関連情報の付与位置近傍に設けられている、請求項7〜10のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項12】
前記塗抹部により前記スライドガラスに塗抹された検体を乾燥させる乾燥部をさらに備え、
前記付着物除去部は、前記乾燥部による検体の乾燥位置と前記検体関連情報付与部による前記検体関連情報の付与位置との間に設けられている、請求項7〜11のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項13】
前記検体関連情報付与部は、前記スライドガラスの前記所定位置に前記検体関連情報を印字する印字部を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項14】
前記検体関連情報付与部は、前記スライドガラスの前記所定位置に前記検体関連情報を有するラベルを貼付する貼付部を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項15】
スライドガラス上に検体を塗抹する工程と、
前記スライドガラスの所定位置に付着した付着物を除去する工程と、
前記付着物を除去した後、前記スライドガラスの前記所定位置に前記検体に関する検体関連情報を付与する工程とを備える、標本作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−145261(P2009−145261A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324611(P2007−324611)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】