説明

標本作製装置

【課題】装置を複雑化させることなく、標本の固定および染色液の供給経路(流路)の洗浄を行うことが可能な標本作製装置を提供する。
【解決手段】この血液塗抹標本作製装置(標本作製装置)1は、スライドガラス10上に塗抹された塗抹標本を染色するためのメイグリュンワルド液を収容する容器101と、メイグリュンワルド液を塗抹標本に供給するための容器101からチャンバ113を介して第2吸引排出部74の供給ピペット74aに至る経路と、容器101からチャンバ113を介して第2吸引排出部74の供給ピペット74aに至る経路を洗浄するためのメタノール液を収容する容器104とを備えている。そして、容器104に収容されたメタノール液を用いて塗抹標本を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本作製装置に関し、特に、標本に染色を施す染色部を備えた標本作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、標本に染色を施す染色部を備えた標本作製装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、標本作製装置として、スライドガラス上の血液検体の塗抹標本に染色液を用いて自動的に染色処理を行う塗抹標本染色装置が開示されている。この特許文献1では、細胞の状態を保つために、染色液による染色処理を行う前に、固定液または染色液の原液を用いて、標本細胞を固定している。
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示されたような従来の塗抹標本染色装置では、染色処理に用いる染色液として、固体の染色剤(染料)をメタノール液に溶かした染色液を使用するのが一般的である。このため、染色処理の終了後に長時間放置した場合、染色液の供給経路(流路や流路の途中に設けられた染色液を貯留するチャンバなど)に残留した残留染色液中の染色剤(染料)が析出し、流路の内壁やチャンバに付着して流路が詰まるという不都合があった。また、チャンバ内のフロートスイッチに染色剤(染料)が付着することに起因して、フロートスイッチの誤動作が発生し、その結果、チャンバの動作不良(エラー)が発生するという不都合があった。
【特許文献1】特開平8−304244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、装置を複雑化させることなく、標本の固定および染色液の供給経路(流路)の洗浄を行うことが可能な標本作製装置を提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による標本作製装置は、スライドガラス上に塗抹された標本を染色するための第1染色液を収容する第1収容部と、第1染色液を第1収容部から標本に供給するための第1流路と、第1流路を洗浄するための液体を収容する第2収容部とを備え、第2収容部に収容された液体を用いて標本を固定する。
【0007】
この一の局面による標本作製装置では、上記のように、第2収容部に収容された第1流路を洗浄するための液体を用いて標本を固定することによって、1つの第2収容部に収容された液体を用いて、第1染色液の供給経路である第1流路の洗浄および標本の固定を行うことができるので、第1流路を洗浄するための液体を収容する第2収容部と、標本を固定するための液体を収容する収容部とを、個別に設ける必要がない。これにより、装置を複雑化させることなく、標本の固定および第1染色液の供給経路(流路)の洗浄を行うことができる。
【0008】
上記一の局面による標本作製装置において、好ましくは、液体は、メタノール液を含む。このように構成すれば、1つの第2収容部に収容されたメタノール液を用いて、容易に、標本の固定および第1染色液の流路の洗浄を行うことができる。
【0009】
上記一の局面による標本作製装置において、好ましくは、標本を固定するときに、第2収容部に収容された液体を標本に供給するための第2流路をさらに備える。このように構成すれば、第2流路により、容易に、第2収容部に収容された液体を標本に供給することができるので、容易に、標本を固定することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、第2収容部に収容された液体の第2収容部から第1流路への供給を制御するための第1バルブと、第2収容部に収容された液体の第2収容部から第2流路への供給を制御するための第2バルブとをさらに備え、第1バルブおよび第2バルブは、択一的に開かれる。このように構成すれば、第1バルブが開かれたときに第2バルブが閉じられるので、容易に、第2収容部に収容された液体を第1流路のみに供給することができる。また、第2バルブが開かれたときに第1バルブが閉じられるので、容易に、第2収容部に収容された液体を第2流路のみに供給することができる。このように、第1バルブおよび第2バルブにより、容易に、第2収容部に収容された液体を選択的に第1流路または第2流路に供給することができる。
【0011】
上記一の局面による標本作製装置において、好ましくは、第1流路は、第1染色液を貯留するための第1貯留部を含み、少なくとも第1流路の第1貯留部が第2収容部に収容された液体により洗浄される。このように構成すれば、第2収容部に収容された液体を用いて、第1染色液が残留しやすい第1貯留部を洗浄することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第1貯留部は、第1貯留部の内部に貯留された液量変化に伴ってオン状態またはオフ状態に切り替わるフロートスイッチを有する。このように構成すれば、第2収容部に収容された液体を用いて、容易に、第1貯留部のフロートスイッチに付着した第1染色液の染色剤(染料)を洗い流すことができるので、フロートスイッチに第1染色液の染色剤(染料)が付着することに起因するフロートスイッチの動作不良の発生を容易に抑制することができる。
【0013】
上記第1貯留部を含む構成において、好ましくは、第1流路は、第1流路の第1貯留部の下流側に設けられ、第1染色液と第1染色液を希釈する希釈液とを混合する第2貯留部を含み、第1流路の第1貯留部および第2貯留部が、第2収容部に収容された液体により洗浄される。このように構成すれば、第2収容部に収容された液体を用いて、第1染色液が残留しやすい第1貯留部のみならず、希釈液により希釈された第1染色液が残留しやすい第2貯留部をも洗浄することができる。
【0014】
上記一の局面による標本作製装置において、好ましくは、第1染色液により染色済みの標本を染色するための第2染色液を収容する第3収容部と、第2染色液を第3収容部から標本に供給するための第3流路とをさらに備え、第2収容部に収容された液体を用いて、第1流路のみならず、第3流路をも洗浄する。このように構成すれば、1つの第2収容部に収容された液体を用いて、第1染色液の供給経路である第1流路の洗浄、標本の固定、および、第2染色液の供給経路である第3流路の洗浄を行うことができるので、第1流路の洗浄液の収容部と標本の固定液の収容部と第3流路の洗浄液の収容部とをそれぞれ個別に設ける必要がない。これにより、装置の構成をより簡略化することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、第3流路は、第2染色液を貯留する第3貯留部を含み、第3流路の第3貯留部が第2収容部に収容された液体により洗浄される。このように構成すれば、第2収容部に収容された液体を用いて、第2染色液が残留しやすい第3貯留部を洗浄することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、第3流路は、第3流路の第3貯留部の下流側に設けられ、第2染色液と第2染色液を希釈する希釈液とを混合する第4貯留部を含み、第3流路の第3貯留部および第4貯留部が、第2収容部に収容された液体により洗浄される。このように構成すれば、第2収容部に収容された液体を用いて、第2染色液が残留しやすい第3貯留部のみならず、希釈液により希釈された第2染色液が残留しやすい第4貯留部をも洗浄することができる。
【0017】
上記第3流路を備える構成において、好ましくは、第2収容部に収容された液体の第2収容部から第3流路への供給を制御するための第3バルブをさらに備える。このように構成すれば、第3バルブを用いて、容易に、第2収容部に収容された液体の第3流路への供給を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による血液塗抹標本作製装置および搬送装置の全体構成を示した斜視図であり、図2は、図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の内部構造を示した平面図である。図3および図4は、図2に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置に用いるカセットおよびスライドガラスを示した斜視図であり、図5および図6は、図2に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の染色部の第1吸引排出部を示した斜視図である。図7は、図2に示した染色部に供給される染色処理用液の供給経路を示した流体回路図である。まず、図1を参照して、本実施形態による血液塗抹標本作製装置1および搬送装置2の全体構成について説明する。なお、本実施形態では、本発明の標本作製装置を血液塗抹標本作製装置1に適用した例について説明する。
【0020】
本実施形態では、図1に示すように、血液塗抹標本作製装置1の前面に、搬送装置2が設置されている。また、血液塗抹標本作製装置1および搬送装置2は、支持台3上に設置されている。また、支持台3には、血液塗抹標本作製装置1の染色処理において使用される染色処理用液が収容された5つの容器101〜105が載置されている。本実施形態では、容器101〜105には、それぞれ、メイグリュンワルド液(染色液)、希釈液(本実施形態では、リン酸緩衝液)、ギムザ液(染色液)、メタノール液および標本洗浄用の水が収容されている。
【0021】
血液塗抹標本作製装置1は、血液検体の塗抹標本を作製するための動作を制御する機能を有する制御部1aを含んでいる。この制御部1aは、CPU、ROM、RAMなどからなる。また、搬送装置2は、血液が収容された試験管51を収納する検体ラック50を血液塗抹標本作製装置1に自動的に搬送するために設けられている。この搬送装置2は、検体ラック50が搬入される搬入部2aと、検体ラック50からの試験管51の取り出しが行われる取り出し部2bとを有している。
【0022】
次に、図1〜図7を参照して、血液塗抹標本作製装置1の全体構成について説明する。まず、図1に示すように、血液塗抹標本作製装置1には、制御部1aに加えて、血液が収容された試験管51を搬送装置2側から血液塗抹標本作製装置1側に搬送するためのハンド部材1bが設けられている。また、血液塗抹標本作製装置1は、図2に示すように、吸引分注機構部21と、塗抹部22と、樹脂製のカセット23と、カセット収容部24と、カセット搬送部25と、スライドガラス挿入部26と、染色部27と、保管部28とを備えている。
【0023】
吸引分注機構部21は、ハンド部材1b(図1参照)によって血液塗抹標本作製装置1側に搬送された試験管51から血液を吸引するとともに、吸引した血液をスライドガラス10に滴下する機能を有する。この吸引分注機構部21は、図2に示すように、試験管51から血液を吸引するためのピアサ(吸引針)21aと、吸引した血液をスライドガラス10に分注するための分注ピペット21bとを含んでいる。
【0024】
また、塗抹部22は、図2に示すように、スライドガラス10を分注・塗抹位置90に供給するとともに、スライドガラス10に滴下された血液を塗抹して乾燥し、かつ、スライドガラス10に印字を行うために設けられている。また、樹脂製のカセット23は、塗抹が施されたスライドガラス10および染色工程で用いる染色処理用液を収容することが可能なように構成されている。このカセット23は、図3および図4に示すように、スライドガラス収納孔23aと、染色液吸引分注孔23bとを含んでいる。スライドガラス収納孔23aと、染色液吸引分注孔23bとは、内部で繋がっている。
【0025】
また、カセット収容部24は、図2に示すように、カセット23をカセット搬送部25に搬入するために設けられており、送りベルト24aを含んでいる。また、カセット搬送部25は、カセット収容部24から搬入されたカセット23をスライドガラス挿入部26および染色部27に搬送するために設けられている。このカセット搬送部25は、図2に示すように、水平方向(図2のA方向)に移動可能なカセット搬送部材25aと、カセット収容部24から供給されたカセット23を搬送するための搬送路25bとを含んでいる。また、スライドガラス挿入部26は、図2に示すように、塗抹および印字が施されたスライドガラス10をカセット23のスライドガラス収納孔23aに収納するために設けられている。
【0026】
本実施形態による染色部27は、図2に示すように、カセット搬送部材25aにより搬送されたカセット23の染色液吸引分注孔23bに対して染色処理用液の供給および排出を行うとともに、カセット23に収納されたスライドガラス10を持ち上げて乾燥することにより、塗抹済みのスライドガラス10に染色処理を施すために設けられている。この染色部27は、カセット搬送部材25aにより搬送されたカセット23を染色部27に送り込むための送り込み部材71と、送り込み部材71から送り込まれたカセット23を搬送するための搬送ベルト72と、カセット23に対して染色処理用液の供給および排出などを行うための第1〜第5吸引排出部73〜77と、第2吸引排出部74においてスライドガラス10を乾燥するためのファン78aと、染色済みのスライドガラス10を乾燥するためのファン78bと、カセット23を搬送ベルト72から保管部28の搬送ベルト28a側へ送り出すための送り出し機構部79とを含んでいる。
【0027】
次に、図5および図6を参照して、送り込み部材71および第1吸引排出部73について説明する。送り込み部材71は、図5に示すように、揺動部材71aと、揺動部材71aを支持する支持軸71bと、支持軸71bを回動させるためのモータ71cおよび駆動ベルト71dを有する駆動機構部71eとを含んでいる。また、本実施形態による第1吸引排出部73は、図5および図6に示すように、カセット23に対して染色処理用液の供給を行う供給ピペット73aと、供給ピペット73aを支持するピペット支持部材73bと、ピペット支持部材73bを上下方向に移動させるモータ73cおよび駆動ベルト73dを有する駆動機構部73eとを含んでいる。第1吸引排出部73は、カセット23に対して、供給ピペット73aを駆動機構部73eにより下方向に移動させることにより、染色処理用液(メタノール液)の供給を行うように構成されている。また、第1吸引排出部73のピペット支持部材73bには、スライドガラス10を把持してカセット23から持ち上げるためのスライドガラス把持部材73fが取り付けられている。
【0028】
なお、第2吸引排出部74は、基本的に、上記した第1吸引排出部73と同様の構造を有している。また、第3吸引排出部75〜第5吸引排出部77は、上記した第1吸引排出部73からスライドガラス把持部材73fを取り除いた構造を有している。また、図2に示すように、第2吸引排出部74〜第5吸引排出部77は、それぞれ、カセット23に対して染色処理用液(メイグリュンワルド液、メイグリュンワルド希釈液、ギムザ希釈液、標本洗浄用の水)の供給を行う供給ピペット74a、75a、76aおよび77aと、染色処理用液(メタノール液、メイグリュンワルド液、メイグリュンワルド希釈液、ギムザ希釈液および標本洗浄用の水)の排出を行う排出ピペット74b、75b、76bおよび77bとを有している。
【0029】
ここで、図7を参照して、本実施形態による染色部27の第1吸引排出部73〜第4吸引排出部76の供給ピペット73a、74a、75aおよび76aから各々供給される染色処理用液の供給経路について詳細に説明する。本実施形態による供給経路には、図7に示すように、染色処理用液を収容するための4つの容器101〜104が設置されている。具体的には、上述したように、容器101には染色液としてのメイグリュンワルド液が収容され、容器102には希釈液(リン酸緩衝液)が収容され、容器103には染色液としてのギムザ液が収容され、容器104にはメタノール液が収容されている。
【0030】
染色液としてのメイグリュンワルド液を収容した容器101は、図7に示すように、バルブ111、バルブ112、チャンバ113およびバルブ114を介して、第2吸引排出部74の供給ピペット74aに接続されている。チャンバ113には、気圧調節器115が接続されている。また、チャンバ113は、図示しないバルブなどの中継部材を介して、第3吸引排出部75の排出ピペット75b(図2参照)に接続されている。また、バルブ114は、気圧調節器116が接続されたダイヤフラムポンプ117と接続されている。
【0031】
チャンバ113は、図1に示すように、血液塗抹標本作製装置1の下方に配置されている。また、チャンバ113は、図7に示すように、内部にフロートスイッチ113aが設けられたタンク113bによって構成されている。このフロートスイッチ113aは、染色処理用液に浮くことが可能な材質により構成され、内部に磁石113cが埋め込まれた浮き部材113dと、浮き部材113dを上下方向に移動可能に支持するとともに、磁気検知型のリードスイッチ113eが内蔵された支持棒113fとから構成されている。また、リードスイッチ113eは、タンク113b内の染色処理用液が規定量に達したときに浮き部材113dの磁石113cの磁気を検知可能な支持棒113fの所定位置に埋め込まれている。フロートスイッチ113aは、浮き部材113dが所定位置に近づいたときに、支持棒113fのリードスイッチ113eが浮き部材113d内の磁石113cの磁気を検知してオン状態になるとともに、浮き部材113dが所定位置から離れたときに、支持棒113fのリードスイッチ113eが浮き部材113d内の磁石113cの磁気を検知できずにオフ状態になるように構成されている。
【0032】
また、気圧調節器115は、気圧調節器115が接続されているチャンバ113内を加圧および減圧するための機能を有している。ダイヤフラムポンプ117は、一定量の溶液を吸引および排出する機能を有している。なお、本実施形態による流体経路に設置されている複数の気圧調節器およびダイヤフラムポンプは、上記した気圧調節器115およびダイヤフラムポンプ117と同様の機能を有している。
【0033】
また、染色液としてのメイグリュンワルド液を収容した容器101は、バルブ111、バルブ112、チャンバ113、バルブ121、混合チャンバ122およびバルブ123を介して、第3吸引排出部75の供給ピペット75aにも接続されている。バルブ121は、気圧調節器124が接続されたダイヤフラムポンプ125と接続されている。また、バルブ123は、気圧調節器126が接続されたダイヤフラムポンプ127と接続されている。また、希釈液(リン酸緩衝液)を収容した容器102は、バルブ131を介して、混合チャンバ122に接続されている。バルブ131は、気圧調節器132が接続されたダイヤフラムポンプ133と接続されている。混合チャンバ122は、容器101に収容された染色液としてのメイグリュンワルド液と、容器102に収容された希釈液(リン酸緩衝液)とを混合するために設けられている。
【0034】
また、染色液としてのギムザ液を収容した容器103は、バルブ141、バルブ142、チャンバ143、バルブ144、混合チャンバ145およびバルブ146を介して、第4吸引排出部76の供給ピペット76aに接続されている。チャンバ143には、気圧調節器147が接続されている。また、バルブ144は、気圧調節器148が接続されたダイヤフラムポンプ149と接続されている。また、バルブ146は、気圧調節器150が接続されたダイヤフラムポンプ151と接続されている。チャンバ143は、上記したチャンバ113と同様の構造を有しており、内部にフロートスイッチ143aが設けられている。また、チャンバ143は、図1に示すように、血液塗抹標本作製装置1の下方に配置されている。また、希釈液を収容した容器102は、図7に示すように、バルブ134を介して、混合チャンバ145に接続されている。バルブ134は、気圧調節器135が接続されたダイヤフラムポンプ136と接続されている。混合チャンバ145は、容器103に収容された染色液としてのギムザ液と、容器102に収容された希釈液とを混合するために設けられている。
【0035】
また、混合チャンバ122は、バルブ161を介して、廃液チャンバ163と接続されており、混合チャンバ145は、バルブ162を介して、廃液チャンバ163と接続されている。廃液チャンバ163には、気圧調節器164が接続されている。この廃液チャンバ163は、上記したチャンバ113とほぼ同様の構造を有しており、内部にフロートスイッチ163aが設けられている。この廃液チャンバ163のフロートスイッチ163aは、廃液チャンバ163内に貯留された廃液の排出が正確に行われているか否かを検知するために設けられている。また、チャンバ113、チャンバ143および廃液チャンバ163は、それぞれ、バルブ171、172および173を介して、排出口174、175および176と接続されている。
【0036】
また、メタノール液を収容した容器104は、バルブ181を介して、メイグリュンワルド液を収容する容器101からチャンバ113へのメイグリュンワルド液の供給経路の途中に接続されている。また、メタノール液を収容した容器104は、バルブ182を介して、ギムザ液を収容する容器103からチャンバ143へのギムザ液の供給経路の途中に接続されている。
【0037】
ここで、本実施形態では、メタノール液を収容した容器104は、図7に示すように、バルブ191を介して、第1吸引排出部73の供給ピペット73aに接続されている。バルブ191は、気圧調節器192が接続されたダイヤフラムポンプ193と接続されている。このように、容器104からバルブ191を介して第1吸引排出部73の供給ピペット73aに至る経路を設けることによって、容易に、容器104に収容された洗浄用のメタノール液を染色部27の第1吸引排出部73の塗抹標本(スライドガラス10)に供給することが可能になる。
【0038】
また、図2に示した保管部28は、染色部27により染色された染色済みのスライドガラス10が収納されたカセット23を保管するために設けられている。この保管部28には、カセット23を搬送するための搬送ベルト28aが設けられている。
【0039】
次に、図1〜図7を参照して、本実施形態による血液塗抹標本作製装置1の動作について説明する。血液塗抹標本作製装置1により血液検体の塗抹標本を作製する際には、まず、吸引分注動作として、図1に示すように、血液検体が収容された試験管51が載置された検体ラック50を搬送装置2の搬入部2aにセットする。これにより、検体ラック50は、搬送装置2の取り出し部2bに搬送される。そして、血液塗抹標本作製装置1のハンド部材1bが、検体ラック50の試験管51を持ち上げて攪拌した後、図2に示す吸引分注機構部21に試験管51を配置する。そして、ピアサ21aにより試験管51内の血液を吸引する。この後、分注ピペット21bを前方および下方に移動させて図2に示した分注・塗抹位置90に移動させた後、血液を分注ピペット21bからスライドガラス10に滴下(分注)する。
【0040】
上記した吸引分注機構部21による吸引分注動作と並行して、または、吸引分注動作の後、塗抹部22による塗抹動作が行われる。この塗抹部22では、スライドガラス10を分注・塗抹位置90(図2参照)に供給するとともに、スライドガラス10に滴下された血液を塗抹して乾燥する。そして、スライドガラス10に血液検体の情報の印字を行った後、印字後のスライドガラス10を、スライドガラス挿入部26側に移動する。次に、図2に示したカセット収容部24にセットされたカセット23が送り込みベルト24aによってカセット搬送部25の搬送路25bに送り込まれる。そして、カセット搬送部25のカセット搬送部材25aによってスライドガラス挿入部26へ搬送される。
【0041】
図2に示したスライドガラス挿入部26では、まず、カセット23のスライドガラス収納孔23a(図3および図4参照)にスライドガラス10が収納されているか否かが判断される。そして、カセット23にスライドガラス10が収納されていると判断された場合には、そのまま、カセット搬送部材25aにより搬送路25bに沿ってカセット23が染色部27に移動される。この場合、カセット23は、染色部27による染色処理が行われずに保管部28に移動される。また、スライドガラス挿入部26において、カセット23のスライドガラス収納孔23aにスライドガラス10が収納されていないと判断された場合には、スライドガラス挿入部26によるカセット23へのスライドガラス10の挿入動作が行われた後、塗抹済みのスライドガラス10が収納されたカセット23が、カセット搬送部材25aにより染色部27に搬送される。
【0042】
次に、図2および図5〜図7を参照して、本実施形態による染色部27の染色動作および染色部27で使用される染色処理用液の供給動作について詳細に説明する。なお、染色処理用液の供給動作における各部材の動作(バルブの開放動作および遮断動作や、気圧調節器による変圧動作など)は、血液塗抹標本作製装置1の制御部1aにより制御される。また、各々の流体動作の開始時における初期状態として、全てのバルブが遮断状態になっている。
【0043】
まず、本実施形態による染色部27は、血液検体の塗抹標本に染色を施す前に、塗抹標本を固定(定着)させる。すなわち、図5および図6に示すように、染色部27の第1吸引排出部73において、スライドガラス把持部材73fによりカセット23のスライドガラス収納孔23aから塗抹済みのスライドガラス10を持ち上げる。そして、供給ピペット73aによりカセット23の染色液吸引分注孔23bに容器104のメタノール液を分注する。
【0044】
ここで、容器104に収容されたメタノール液を第1吸引排出部73の供給ピペット73aに供給する際には、図7に示すように、まず、バルブ191により、容器104とダイヤフラムポンプ193との間の流路を開放状態にする。この場合、バルブ181および182は、血液塗抹標本作製装置1の制御部1a(図2参照)により遮断状態になるように制御されている。そして、気圧調節器192によりバルブ191に接続されたダイヤフラムポンプ193内を減圧する。これにより、容器104のメタノール液がダイヤフラムポンプ193に一定量吸引される。その後、バルブ191により、容器104とダイヤフラムポンプ193との間の流路を遮断状態にするとともに、ダイヤフラムポンプ193と第1吸引排出部73の供給ピペット73aとの間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器192によりダイヤフラムポンプ193内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ193のメタノール液が、第1吸引排出部73の供給ピペット73aからカセット23(図2参照)内に供給される。
【0045】
その後、図5および図6に示すように、塗抹済みのスライドガラス10をカセット23に戻した後、塗抹済みのスライドガラス10が収納されたカセット23が1つずつ、送り込み部材71の揺動部材71aにより搬送ベルト72に載せられる。そして、図2に示す搬送ベルト72により、カセット23が第2吸引排出部74に搬送される。
【0046】
第2吸引排出部74では、カセット23のスライドガラス収納孔23aから塗抹済みのスライドガラス10を持ち上げるとともに、スライドガラス10の塗抹面にファン78aによる送風を約1秒〜約60秒間当てて塗抹面上の液体成分を蒸発させることによって乾燥させる。これによって、メタノール液による塗抹標本の固定処理が終了する。なお、第1吸引排出部73により塗抹済みのスライドガラス10がメタノール液に浸漬されてから第2吸引排出部74によりスライドガラス10が持ち上げられるまでの時間(浸漬時間)は、約20秒〜約120秒である。
【0047】
次に、染色処理(メイグリュンワルド・ギムザ2重染色処理)が施される。まず、第2吸引排出部74において、排出ピペット74bによりカセット23の染色液吸引分注孔23bからメタノール液が吸引されて排出された後、カセット23のスライドガラス収納孔23aにスライドガラス10を戻す。次に、供給ピペット74aによりカセット23の染色液吸引分注孔23bから容器101に収容されたメイグリュンワルド液が分注され、塗抹済みのスライドガラス10をメイグリュンワルド液に浸漬する。これにより、メイグリュンワルド・ギムザ2重染色処理が開始される。
【0048】
第2吸引排出部74の供給ピペット74aにより、容器101(図7参照)に収容されたメイグリュンワルド液を分注する際には、まず、初期状態(全バルブの遮断状態)から、バルブ111および112を開放状態にするとともに、気圧調節器115によりチャンバ113内を減圧する。これにより、容器101のメイグリュンワルド液がチャンバ113に吸引される。このメイグリュンワルド液のチャンバ113への流入に伴って、チャンバ113に設置されているフロートスイッチ113aの浮き部材113dが上方に移動し、フロートスイッチ113aがオン状態になる。これにより、バルブ111および112が遮断状態になるとともに、気圧調節器115による減圧が解除される。そして、容器101のメイグリュンワルド液のチャンバ113への移動が終了する。そして、バルブ114により、チャンバ113とダイヤフラムポンプ117との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器116によりダイヤフラムポンプ117内を減圧する。これにより、チャンバ113のメイグリュンワルド液がダイヤフラムポンプ117に一定量吸引される。その後、バルブ114により、ダイヤフラムポンプ117とチャンバ113との間の流路を遮断状態にするとともに、ダイヤフラムポンプ117と第2吸引排出部74の供給ピペット74aとの間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器116によりダイヤフラムポンプ117内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ117のメイグリュンワルド液が、第2吸引排出部74の供給ピペット74aからカセット23(図2参照)内に供給される。
【0049】
その後、図2に示すように、カセット23が搬送ベルト72により搬送されながら、塗抹済みのスライドガラス10は、約1分〜約5分間、染色処理として、メイグリュンワルド液に浸漬される。そして、第3吸引排出部75において、メイグリュンワルド液は、排出ピペット75bによりカセット23の染色液吸引分注孔23bから吸引された後、図示しないバルブなどの中継部材を介して、チャンバ113に移動される。このように、第2吸引排出部74の供給ピペット74aによりカセット23に供給されたメイグリュンワルド液は、第3吸引排出部75の排出ピペット75bを用いて、再びチャンバ113内に戻される。そして、チャンバ113内に戻されたメイグリュンワルド液は、約20回以下で繰り返し使用される。この使用回数は、ユーザ側で予め設定されている。そして、設定回数分、繰り返し使用された後、チャンバ113内のメイグリュンワルド液は、排出口174から装置外部に排出される。チャンバ113内に貯留されているメイグリュンワルド液を排出口174から装置外部に排出する際には、図7に示すように、バルブ171を開放状態にするとともに、気圧調節器115によりチャンバ113内を加圧する。そして、一定時間後に、バルブ171を遮断状態にする。これにより、チャンバ113内に貯留されているメイグリュンワルド液の装置外部への排出が終了する。その後、容器101のメイグリュンワルド液を、バルブ111および112を介してチャンバ113に移動させる。
【0050】
その後、図2に示すように、第3吸引排出部75の供給ピペット75aによりカセット23の染色液吸引分注孔23bにメイグリュンワルド希釈液が分注される。第3吸引排出部75の供給ピペット75aにメイグリュンワルド希釈液を供給する際には、まず、図7に示したバルブ121により、チャンバ113とダイヤフラムポンプ125との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器124によりダイヤフラムポンプ125内を減圧する。これにより、チャンバ113のメイグリュンワルド液がダイヤフラムポンプ125に一定量吸引される。その後、バルブ121により、ダイヤフラムポンプ125と混合チャンバ122との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器124によりダイヤフラムポンプ125内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ125のメイグリュンワルド液が混合チャンバ122に移動される。その後、バルブ121により、ダイヤフラムポンプ125と混合チャンバ122との間の流路を遮断状態にする。これにより、チャンバ113のメイグリュンワルド液の混合チャンバ122への移動が終了する。
【0051】
そして、混合チャンバ122のメイグリュンワルド液を希釈するために、容器102の希釈液(リン酸緩衝液)を混合チャンバ122に移動させる。具体的には、まず、バルブ131により、容器102とダイヤフラムポンプ133との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器132によりダイヤフラムポンプ133内を減圧する。これにより、容器102の希釈液がダイヤフラムポンプ133に一定量吸引される。その後、バルブ131により、ダイヤフラムポンプ133と混合チャンバ122との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器132によりダイヤフラムポンプ133内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ133の希釈液が混合チャンバ122に移動される。その後、バルブ131により、ダイヤフラムポンプ133と混合チャンバ122との間の流路を遮断状態にする。これにより、容器102の希釈液の混合チャンバ122への移動が終了する。そして、メイグリュンワルド液は、混合チャンバ122において希釈液と混合されることによりメイグリュンワルド希釈液となる。
【0052】
そして、バルブ123により、混合チャンバ122とダイヤフラムポンプ127との間の流路を開放状態にした後、気圧調節器126によりダイヤフラムポンプ127内を減圧する。これにより、混合チャンバ122のメイグリュンワルド希釈液がダイヤフラムポンプ127に一定量吸引される。その後、バルブ123により、ダイヤフラムポンプ127と混合チャンバ122との間の流路を遮断状態にするとともに、ダイヤフラムポンプ127と第3吸引排出部75の供給ピペット75aとの間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器126によりダイヤフラムポンプ127内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ127のメイグリュンワルド希釈液が、第3吸引排出部75の供給ピペット75aからカセット23(図2参照)内に供給される。
【0053】
その後、混合チャンバ122内に貯留されているダイヤフラムポンプ127による吸引後に残ったメイグリュンワルド希釈液が、排出口176から装置外部に排出される。このメイグリュンワルド希釈液の排出動作は、メイグリュンワルド液が第3吸引排出部75の供給ピペット75aから供給されるごとに毎回行われる。混合チャンバ122のメイグリュンワルド希釈液を装置外部に排出する際には、バルブ161を開放状態にするとともに、気圧調節器164により廃液チャンバ163内を減圧する。これにより、混合チャンバ122のメイグリュンワルド希釈液が廃液チャンバ163に移動する。そして、一定時間後に、バルブ161を遮断状態にする。次に、バルブ173を開放状態にするとともに、気圧調節器164により廃液チャンバ163内を加圧する。そして、一定時間後に、バルブ173を遮断状態にする。これにより、廃液チャンバ163のメイグリュンワルド希釈液が排出口176から装置外部に排出され、混合チャンバ122内に貯留されているメイグリュンワルド希釈液の装置外部への排出が終了する。
【0054】
その後、図2に示すように、カセット23が搬送ベルト72により搬送されながら、塗抹済みのスライドガラス10は、約1分〜約5分間、メイグリュンワルド希釈液に浸漬される。そして、第4吸引排出部76において、排出ピペット76bによりカセット23の染色液吸引分注孔23bからメイグリュンワルド希釈液が吸引されて図示しない排出経路から排出された後、供給ピペット76aによりカセット23の染色液吸引分注孔23bにギムザ希釈液が分注される。染色部27の第4吸引排出部76の供給ピペット76aにギムザ希釈液を供給する際には、まず、初期状態(全バルブの遮断状態)から、図7に示したバルブ141および142を開放状態にするとともに、気圧調節器147によりチャンバ143内を減圧する。これにより、容器103のギムザ液がチャンバ143に吸引される。このギムザ液のチャンバ143への流入に伴って、チャンバ143に設置されているフロートスイッチ143aがオン状態になる。これにより、バルブ141および142が遮断状態になるとともに、気圧調節器147による減圧が解除される。そして、容器103のギムザ液のチャンバ143への移動が終了する。
【0055】
そして、チャンバ143のギムザ液を混合チャンバ145に移動させる。具体的には、まず、バルブ144により、チャンバ143とダイヤフラムポンプ149との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器148によりダイヤフラムポンプ149内を減圧する。これにより、チャンバ143のギムザ液がダイヤフラムポンプ149に一定量吸引される。その後、バルブ144により、ダイヤフラムポンプ149と混合チャンバ145との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器148によりダイヤフラムポンプ149内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ149のギムザ液が混合チャンバ145に移動する。その後、バルブ144により、ダイヤフラムポンプ149と混合チャンバ145との間の流路を遮断状態にする。これにより、チャンバ143のギムザ液の混合チャンバ145への移動が終了する。
【0056】
そして、混合チャンバ145のギムザ液を希釈するために、容器102の希釈液(リン酸緩衝液)を混合チャンバ145に移動させる。具体的には、まず、バルブ134により、容器102とダイヤフラムポンプ136との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器135によりダイヤフラムポンプ136内を減圧する。これにより、容器102の希釈液がダイヤフラムポンプ136に一定量吸引される。その後、バルブ134により、ダイヤフラムポンプ136と混合チャンバ145との間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器135によりダイヤフラムポンプ136内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ136の希釈液が混合チャンバ145に移動する。その後、バルブ134により、ダイヤフラムポンプ136と混合チャンバ145との間の流路を遮断状態にする。これにより、容器102の希釈液の混合チャンバ145への移動が終了する。そして、ギムザ液は、混合チャンバ145において希釈液と混合されることによりギムザ希釈液となる。
【0057】
そして、バルブ146により、混合チャンバ145とダイヤフラムポンプ151との間の流路を開放状態にした後、気圧調節器150によりダイヤフラムポンプ151内を減圧する。これにより、混合チャンバ145のギムザ希釈液がダイヤフラムポンプ151に一定量吸引される。その後、バルブ146により、ダイヤフラムポンプ151と混合チャンバ145との間の流路を遮断状態にするとともに、ダイヤフラムポンプ151と第4吸引排出部76の供給ピペット76aとの間の流路を開放状態にする。そして、気圧調節器150によりダイヤフラムポンプ151内を加圧する。これにより、ダイヤフラムポンプ151のギムザ希釈液が、第4吸引排出部76の供給ピペット76aからカセット23(図2参照)内に供給される。
【0058】
その後、チャンバ143内に貯留されているギムザ液が、排出口175から装置外部に排出される。チャンバ143のギムザ液を装置外部に排出する際には、バルブ172を開放状態にするとともに、気圧調節器147によりチャンバ143内を加圧する。そして、一定時間後に、バルブ172を遮断状態にする。これにより、チャンバ143内に貯留されているギムザ液の装置外部への排出が終了する。
【0059】
また、混合チャンバ145内に貯留されているダイヤフラムポンプ151による吸引後に残ったギムザ希釈液が、廃液チャンバ163を介して排出口176から装置外部に排出される。混合チャンバ145のギムザ希釈液を装置外部に排出する際には、バルブ162を開放状態にするとともに、気圧調節器164により廃液チャンバ163内を減圧する。これにより、混合チャンバ145のギムザ希釈液が廃液チャンバ163に移動する。そして、一定時間後に、バルブ162を遮断状態にする。次に、バルブ173を開放状態にするとともに、気圧調節器164により廃液チャンバ163内を加圧する。そして、一定時間後に、バルブ173を遮断状態にする。これにより、廃液チャンバ163のギムザ希釈液が排出口176から装置外部に排出され、混合チャンバ145内に貯留されているギムザ希釈液の装置外部への排出が終了する。
【0060】
そして、図2に示すように、カセット23が搬送ベルト72により搬送されながら、塗抹済みのスライドガラス10は、約1分〜約20分間、ギムザ希釈液に浸漬される。そして、第5吸引排出部77において、排出ピペット77bによりカセット23の染色液吸引分注孔23bからギムザ希釈液が吸引されて図示しない排出経路から排出される。そして、供給ピペット77aによりカセット23の染色液吸引分注孔23bに対して標本洗浄用の水が分注された後、排出ピペット77bにより吸引されて染色済みのスライドガラス10が水洗される。そして、染色済みのスライドガラス10は、ファン78bにより乾燥される。その後、染色済みのスライドガラス10が収納されたカセット23は、搬送ベルト72から保管部28の搬送ベルト28aへ順次送り出される。そして、カセット23は、保管部28の搬送ベルト28aにより搬送されて保管される。
【0061】
そして、本実施形態では、血液塗抹標本作製装置1による塗抹標本の作製動作が終了した後、血液塗抹標本作製装置1をシャットダウンする前に、容器104に収容されたメタノール液によって、第2吸引排出部74の供給ピペット74aへのメイグリュンワルド液の供給経路、第3吸引排出部75の供給ピペット75aへのメイグリュンワルド希釈液の供給経路、および、第4吸引排出部76の供給ピペット76aへのギムザ希釈液の供給経路の洗浄が行われる。
【0062】
まず、図7を参照して、第2吸引排出部74の供給ピペット74aへのメイグリュンワルド液の供給経路を、容器104に収容されたメタノール液により洗浄する際の動作について説明する。まず、初期状態(全バルブの遮断状態)から、バルブ181および112を開放状態にするとともに、気圧調節器115によりチャンバ113内を減圧する。なお、この場合、バルブ182および191は、血液塗抹標本作製装置1の制御部1a(図2参照)により遮断状態になるように制御されている。これにより、容器104のメタノール液がチャンバ113に吸引され、一定時間後にフロートスイッチ113aがオン状態になる。これにより、バルブ181および112が遮断状態になるとともに、気圧調節器115による減圧が解除される。そして、容器104のメタノール液のチャンバ113への移動が終了する。そして、上記したチャンバ113のメイグリュンワルド液を第2吸引排出部74の供給ピペット74aへ移動させる手順と同様の手順をチャンバ113のメタノール液に対して行う。これによって、チャンバ113のメタノール液が第2吸引排出部74の供給ピペット74aからカセット23(図2参照)内に供給される。その後、チャンバ113内に貯留されたメタノール液は、排出口174から装置外部に排出される。これによって、第2吸引排出部74の供給ピペット74aへのメイグリュンワルド液の供給経路に対する容器104に収容されたメタノール液による洗浄が完了する。上記のように、容器104に収容されたメタノール液を用いて、チャンバ113や供給ピペット74aなどの洗浄が行われるので、容易に、チャンバ113のフロートスイッチ113a、供給ピペット74aへのメイグリュンワルド液の供給経路の内壁、供給ピペット74a、および、排出ピペット74bに付着したメイグリュンワルド液の染色剤(染料)を洗い流すことが可能になる。これにより、フロートスイッチ113aにメイグリュンワルド液の染色剤(染料)が付着することに起因するフロートスイッチ113aの動作不良の発生を容易に抑制することが可能になる。
【0063】
また、第3吸引排出部75の供給ピペット75aへのメイグリュンワルド希釈液の供給経路を、容器104に収容されたメタノール液により洗浄する際の動作としては、まず、容器104に収容されたメタノール液を、バルブ181および112を介して、チャンバ113へ移動する。その後、チャンバ113のメイグリュンワルド液を、混合チャンバ122を介して第3吸引排出部75の供給ピペット75aへ移動させる手順と同様の手順をチャンバ113のメタノール液に対して行う。これによって、チャンバ113のメタノール液が混合チャンバ122を介して第3吸引排出部75の供給ピペット75aに供給される。その後、チャンバ113内に貯留されているメタノール液が、排出口174から装置外部に排出される。また、混合チャンバ122内に貯留されているメタノール液が、廃液チャンバ163を介して排出口176から装置外部に排出される。これによって、第3吸引排出部75の供給ピペット75aへのメイグリュンワルド希釈液の供給経路に対する容器104に収容されたメタノール液による洗浄が完了する。
【0064】
また、第4吸引排出部76の供給ピペット76aへのギムザ希釈液の供給経路を、容器104に収容されたメタノール液により洗浄する際の動作としては、まず、初期状態(全バルブの遮断状態)から、バルブ182および142を開放状態にするとともに、気圧調節器147によりチャンバ143内を減圧する。なお、この場合、バルブ181および191は、血液塗抹標本作製装置1の制御部1a(図2参照)により遮断状態になるように制御されている。これにより、容器104のメタノール液がチャンバ143に吸引され、一定時間後にフロートスイッチ143aがオン状態になる。これにより、バルブ182および142が遮断状態になるとともに、気圧調節器147による減圧が解除される。そして、容器104のメタノール液のチャンバ143への移動が終了する。この後、上記したチャンバ143のギムザ液を、混合チャンバ145を介して第4吸引排出部76の供給ピペット76aへ移動させる手順と同様の手順をチャンバ143のメタノール液に対して行う。これによって、チャンバ143のメタノール液が混合チャンバ145を介して第4吸引排出部76の供給ピペット76aに供給される。その後、チャンバ143内に貯留されているメタノール液が、排出口175から装置外部に排出される。また、混合チャンバ145内に貯留されているメタノール液が、廃液チャンバ163を介して排出口176から装置外部に排出される。これによって、第4吸引排出部76の供給ピペット76aへのギムザ希釈液の供給経路に対する容器104に収容されたメタノール液による洗浄が完了する。
【0065】
その後、血液塗抹標本作製装置1のシャットダウンが完了し、血液塗抹標本作製装置1は、次の塗抹標本の作製動作の開始時まで停止状態となる。
【0066】
本実施形態では、上記のように、容器101から第2吸引排出部74の供給ピペット74aおよび第3吸引排出部75の供給ピペット75aに至る経路と、容器103から第4吸引排出部76の供給ピペット76aに至る経路とを洗浄するための容器104に収容されたメタノール液を用いて、塗抹標本を固定することによって、1つの容器104に収容されたメタノール液を用いて、染色液(メイグリュンワルド液およびギムザ液)の供給経路である容器101から第2吸引排出部74の供給ピペット74aおよび第3吸引排出部75の供給ピペット75aに至る経路と、容器103から第4吸引排出部76の供給ピペット76aに至る経路との洗浄と、塗抹標本の固定とを行うことができる。これにより、染色液(メイグリュンワルド液およびギムザ液)の供給経路を洗浄するための洗浄用メタノール液を収容する容器と、塗抹標本を固定するための固定用メタノール液を収容する容器とを、別個に設ける必要がないので、塗抹標本作製装置1を複雑化させることなく、塗抹標本の固定およびメイグリュンワルド液の供給経路(流路)の洗浄を行うことができる。
【0067】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0068】
たとえば、上記実施形態では、血液塗抹標本作製装置に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限らず、血液塗抹標本作製装置以外の染色処理を行う標本作製装置に適用してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、塗抹標本を固定する液体および染色液の流路を洗浄する液体として、メタノール液を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、メタノール液以外の液体を用いて塗抹標本を固定および染色液の流路の洗浄を行うようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、メタノール液を収容した容器104を、バルブ181を介して、メイグリュンワルド液を収容する容器101からチャンバ113へのメイグリュンワルド液の供給経路の途中に接続することによって、洗浄液としてのメタノール液を、容器104からチャンバ113およびバルブ121を経由して混合チャンバ122に供給する例を示したが、本発明はこれに限らず、上記接続に加えて、メタノール液を収容した容器104を、中継部材(バルブなど)を介して、混合チャンバ122に直接接続することによって、洗浄液としてのメタノール液を、容器104からチャンバ113を介して混合チャンバ122に供給するとともに、容器104から直接、混合チャンバ122に供給するようにしてもよい。これにより、容器104に収容されたメタノール液が、2つの経路を介して、混合チャンバ122に供給されるので、混合チャンバ122の洗浄に要する時間を短縮することができる。また、この場合、より高濃度のメタノール液が混合チャンバ122に供給されるので、混合チャンバ122の洗浄効率を向上させることができる。
【0071】
また、同様に、メタノール液を収容した容器104を、バルブ182を介して、ギムザ液を収容する容器103からチャンバ143へのギムザ液の供給経路の途中に接続するとともに、メタノール液を収容した容器104を、中継部材(バルブなど)を介して、混合チャンバ145に直接接続することによって、洗浄液としてのメタノール液を、容器104からチャンバ143を介して混合チャンバ145に供給するとともに、容器104から直接、混合チャンバ145に供給するようにしてもよい。これにより、容器104に収容されたメタノール液が、2つの経路を介して、混合チャンバ145に供給されるので、混合チャンバ145の洗浄に要する時間を短縮することができる。また、この場合、より高濃度のメタノール液が混合チャンバ145に供給されるので、混合チャンバ145の洗浄効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態による血液塗抹標本作製装置および搬送装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の内部構造を示した平面図である。
【図3】図2に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置に用いるカセットおよびスライドガラスを示した斜視図である。
【図4】図2に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置に用いるカセットおよびスライドガラスを示した斜視図である。
【図5】図2に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の染色部の第1吸引排出部を示した斜視図である。
【図6】図2に示した一実施形態による血液塗抹標本作製装置の染色部の第1吸引排出部を示した斜視図である。
【図7】図2に示した染色部に供給される染色処理用液の供給経路を示した流体回路図である。
【符号の説明】
【0073】
1 血液塗抹標本作製装置(標本作製装置)
10 スライドガラス
101 容器(第1収容部)
103 容器(第3収容部)
104 容器(第2収容部)
113 チャンバ(第1貯留部)
113a フロートスイッチ
122 混合チャンバ(第2貯留部)
143 チャンバ(第3貯留部)
145 混合チャンバ(第4貯留部)
181 バルブ(第1バルブ)
182 バルブ(第3バルブ)
191 バルブ(第2バルブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドガラス上に塗抹された標本を染色するための第1染色液を収容する第1収容部と、
前記第1染色液を前記第1収容部から前記標本に供給するための第1流路と、
前記第1流路を洗浄するための液体を収容する第2収容部とを備え、
前記第2収容部に収容された前記液体を用いて前記標本を固定する、標本作製装置。
【請求項2】
前記液体は、メタノール液を含む、請求項1に記載の標本作製装置。
【請求項3】
前記標本を固定するときに、前記第2収容部に収容された前記液体を前記標本に供給するための第2流路をさらに備える、請求項1または2に記載の標本作製装置。
【請求項4】
前記第2収容部に収容された前記液体の前記第2収容部から前記第1流路への供給を制御するための第1バルブと、
前記第2収容部に収容された前記液体の前記第2収容部から前記第2流路への供給を制御するための第2バルブとをさらに備え、
前記第1バルブおよび前記第2バルブは、択一的に開かれる、請求項3に記載の標本作製装置。
【請求項5】
前記第1流路は、前記第1染色液を貯留するための第1貯留部を含み、
少なくとも前記第1流路の第1貯留部が前記第2収容部に収容された前記液体により洗浄される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項6】
前記第1貯留部は、前記第1貯留部の内部に貯留された液量変化に伴ってオン状態またはオフ状態に切り替わるフロートスイッチを有する、請求項5に記載の標本作製装置。
【請求項7】
前記第1流路は、前記第1流路の第1貯留部の下流側に設けられ、前記第1染色液と前記第1染色液を希釈する希釈液とを混合する第2貯留部を含み、
前記第1流路の第1貯留部および第2貯留部が、前記第2収容部に収容された前記液体により洗浄される、請求項5または6に記載の標本作製装置。
【請求項8】
前記第1染色液により染色済みの前記標本を染色するための第2染色液を収容する第3収容部と、
前記第2染色液を前記第3収容部から前記標本に供給するための第3流路とをさらに備え、
前記第2収容部に収容された前記液体を用いて、前記第1流路のみならず、前記第3流路をも洗浄する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の標本作製装置。
【請求項9】
前記第3流路は、前記第2染色液を貯留する第3貯留部を含み、
前記第3流路の第3貯留部が前記第2収容部に収容された前記液体により洗浄される、請求項8に記載の標本作製装置。
【請求項10】
前記第3流路は、前記第3流路の第3貯留部の下流側に設けられ、前記第2染色液と前記第2染色液を希釈する希釈液とを混合する第4貯留部を含み、
前記第3流路の第3貯留部および第4貯留部が、前記第2収容部に収容された前記液体により洗浄される、請求項9に記載の標本作製装置。
【請求項11】
前記第2収容部に収容された前記液体の前記第2収容部から前記第3流路への供給を制御するための第3バルブをさらに備える、請求項8〜10のいずれか1項に記載の標本作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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