説明

標本作製装置

【課題】標本を固定するための固定液を、流路の洗浄にも使用しつつ、固定液の使用量を軽減することが可能な標本作製装置を提供する。
【解決手段】第1メタノールチャンバ111のメタノールは、分注ピペットMaを介してカセットに分注される。このカセット内のメタノールは、回収ピペットD1bを介して第1メタノールチャンバ111に回収される。第2メタノールチャンバ112のメタノールは、分注ピペットMaを介してカセットに分注される他、流路内の洗浄に用いられる。第2メタノールチャンバ112のメタノールは使用された後、第2メタノールチャンバ112に戻されることなく第1メタノールチャンバ111に回収される。これにより、メタノールの使用量を軽減すると共に、流路を洗浄する際には、第2メタノールチャンバ112の汚れていないメタノールを使用して流路を洗浄することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容体に収容された標本を固定液を用いて固定し、固定された標本を染色液を用いて染色する標本作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液塗抹標本を標本カセットに収容し、標本カセット内に、メタノールを注入して標本を固定し、次いで染色液を注入して標本を染色する血液塗抹標本作製装置が知られている。特許文献1には、メタノールを、標本の固定だけでなく、流路の洗浄に使用することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−38781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、標本を固定するための固定液を、流路の洗浄にも使用しつつ、固定液の使用量を軽減することが可能な標本作製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主たる態様は、収容体に収容された標本を固定液を用いて固定し、固定された標本を染色液を用いて染色する標本作製装置に関する。本態様に係る標本作製装置は、標本を固定するための固定液を貯留する第1容器と、標本を固定するための固定液を貯留する第2容器と、染色液を貯留する第3容器と、前記第1および第2容器に貯留された固定液を、標本を収容した収容体に選択的に供給可能な固定液供給部と、前記第3容器に貯留された染色液を、標本を収容した収容体に供給可能な染色液供給部と、収容体に供給された固定液を前記第1容器に回収する固定液回収部と、を備える。ここで、前記固定液供給部は、前記染色液供給部の流路を洗浄するために、前記第2容器に貯留された固定液を当該流路に供給可能に構成される。
【0006】
本態様に係る標本作製装置によれば、固定液供給部によって第1容器から収容体に供給された固定液は、固定液回収部によって第1容器に回収されるため、再び第1容器の固定液を収容体に供給することで、固定液を再利用することができる。これにより、固定液の使用量を軽減することができる。また、固定液回収部は、収容体に供給された固定液を第1容器に回収するように構成されているため、第2容器には使用済みの固定液が混入することがなく、第2容器には常に汚れていない固定液のみを貯留させることができる。そして、固定液供給部は、染色液供給部の流路を洗浄するために第2容器の固定液を供給する。そのため、流路を洗浄する場合には汚れていない固定液を用いることができ、効果的に流路を洗浄することができる。したがって、本態様に係る標本作製装置によれば、固定液を、標本の固定と洗浄とに用いつつ、固定液の使用量を軽減することができる。固定液の使用量を軽減することは廃液量の低減にも寄与し、環境への負荷の軽減に資する。
【0007】
また、本態様に係る標本作製装置は、前記第1容器の固定液の利用を制限する制限条件を記憶する記憶部を備える構成とされ得る。ここで、前記固定液供給部は、前記第1容器の固定液を繰り返し使用した結果、前記制限条件が満たされると、前記第1容器に代えて前記第2容器の固定液を前記収容体へ供給する構成とされ得る。第1容器の固定液は、繰り返し使用するにつれて汚れが増していくため、再利用するにも限界がある。本態様によ
れば、第1容器の固定液を繰り返し使用した結果、制限条件が満たされると、自動的に第1容器に代えて第2容器の固定液を用いて標本の固定を行うことができる。
【0008】
この場合、前記制限条件は、前記第1容器の固定液の使用限度回数を含む構成とされ得る。こうすると、第1容器の固定液を繰り返し使用した回数が使用限度回数に到達すると、自動的に第1容器に代えて第2容器の固定液を用いて標本の固定を行うことができる。この態様では、回数をカウントする簡単な構成で再利用の限界になったか否かを監視することができる。
【0009】
この場合、標本作製装置は、前記第1容器の固定液を排出する固定液排出部をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記固定液排出部は、前記制限条件が満たされると、前記第1容器の固定液を排出する構成とされ得る。こうすると、繰り返し使用されることで汚れの進んだ第1容器の固定液を自動的に排出させることができる。
【0010】
この場合、標本作製装置は、固定液を補給する補給部をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記補給部は、前記固定液排出部が前記第1容器の固定液を排出させた後、前記第1容器に固定液を補給し、前記固定液供給部は、前記第1容器に対する固定液の補給が終了するまで、前記第2容器から収容体に固定液を供給する構成とされ得る。こうすると、第1容器に固定液を補給する間も、第2容器から収容体に固定液が供給されるため、収容体に対する処理を継続することができる。
【0011】
この場合、前記固定液排出部は、前記第1容器から供給された固定液の前記第1容器への回収が終了すると、前記第1容器の固定液を排出し、前記補給部は、前記第1容器の固定液の排出が終了すると、前記第1容器への補給を開始する構成とされ得る。こうすると、第1容器に純度の高い固定液が補給された後に、使用済みの固定液が第1容器に回収されることがない。
【0012】
この場合、前記固定液供給部は、前記第1容器の固定液を複数の収容体に順次供給し、前記固定液回収部は、収容体に前記第1容器の固定液が供給されてから所定時間経過後に、その収容体から前記第1容器へ固定液を回収するように構成されており、前記固定液排出部は、前記固定液供給部による固定液の供給が前記制限条件を満たした場合、その供給が行われてから前記所定時間経過後に前記固定液回収部による前記第1容器への固定液の回収が行われると、前記第1容器の固定液を排出し、前記補給部は、前記第1容器の固定液の排出が終了すると、前記第1容器への固定液の補給を開始する構成とされ得る。こうすると、複数の収容体を連続で処理する態様において、最後に第1容器の固定液が供給された収容体から固定液が回収された後で、第1容器の固定液の排出および第1容器への固定液の補給を行うことができる。
【0013】
この場合、前記制限条件の入力を受け付けるための条件受付手段を備える構成とされ得る。こうすると、ユーザは、利用環境に応じて、条件受付手段を介して第1容器の固定液の利用を制限する条件を設定することが可能となる。
【0014】
この場合、前記補給部は、前記第1容器の固定液の量が基準量を下回った場合に、前記第1容器に固定液を補給し、前記固定液供給部は、前記補給部による補給に異常が生じると、前記第1容器に代えて前記第2容器から収容体へ固定液を供給する構成とされ得る。こうすると、第1容器への固定液の補給に異常が生じた場合に、処理を停止することなく自動的に第1容器の替わりに第2容器から収容体へ固定液が供給されるため、収容体の固定および染色を継続することができる。
【0015】
この場合、本態様に係る標本作製装置は、検体を吸引する吸引部と、前記吸引部が吸引
した検体をスライドガラスに塗抹して標本を生成する塗抹部と、をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記吸引部は、前記補給部による補給に異常が生じると、検体の吸引を停止し、前記補給部は、前記吸引部により吸引済みであり、且つ、固定液が供給されていない全ての標本の固定を行うために必要な量の固定液を、前記第2容器に貯留させる構成とされ得る。第1容器への固定液の補給に異常が生じて、第1容器の替わりに第2容器から収容体へ固定液を供給する場合に、吸引部による吸引済みの検体を無駄にすることがなくなる。
【0016】
また、本態様に係る標本作製装置において、前記固定液供給部は、固定液を収容体に吐出する吐出部と、前記吐出部と前記第1容器とを接続する第1流路と、前記吐出部と前記第2容器とを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを切り替える切替部と、前記吐出部に向かって固定液が移動するように移動力を生成する移動力生成部と、を備える構成とされ得る。
【0017】
また、本態様に係る標本作製装置において、前記染色液供給部の流路を洗浄するために供給された固定液は、前記第1および第2容器に戻されることなく排出される構成とされ得る。こうすると、染色液供給部の流路の洗浄に使用され、汚れを多量に含む固定液が標本の固定に使用されることがない。
【0018】
また、本態様に係る標本作製装置は、廃液を貯留する第4容器と、収容体に供給された染色液を前記第4容器に回収可能な染色液回収部と、前記第4容器に貯留された廃液を排出する廃液排出部と、をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記染色液供給部は、洗浄のために供給された固定液を、標本を収容していない収容体に供給し、前記染色液回収部は、収容体に供給された固定液を前記第4容器に回収し、前記廃液排出部は、前記第4容器に貯留された固定液を廃液として排出する構成とされ得る。こうすると、染色液を収容体に供給する流路だけでなく、染色液を回収する流路までも洗浄することができる。
【0019】
本発明のさらなる別の態様は、収容体に収容された標本を固定液を用いて固定し、固定された標本を染色液を用いて染色する標本作製装置に関する。本態様に係る標本作製装置は、標本を固定するための固定液を貯留する第1容器と、標本を固定するための固定液を貯留する第2容器と、前記第1および第2容器に貯留された固定液を、標本を収容した収容体に選択的に供給可能な固定液供給部と、収容体に供給された固定液を前記第1容器に回収する固定液回収部と、固定液を排出する固定液排出部と、固定液を補給する補給部と、制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記第1容器から収容体に固定液を供給し、その収容体から前記第1容器に固定液を回収するよう前記固定液供給部および前記固定液回収部を制御する第1制御を複数の収容体に対して実行し、所定数の収容体に対して前記第1制御が完了すると、前記第1容器から固定液を排出したのち前記第1容器へ固定液を補給するよう前記固定液排出部および前記補給部を制御する第2制御を実行し、前記第2制御を実行している間、前記第2容器から収容体へ固定液を供給するよう前記固定液供給部を制御する第3制御を実行する。
【0020】
本態様に係る標本作製装置によれば、固定液供給部によって第1容器から収容体に供給された固定液は、固定液回収部によって第1容器に回収されるため、再び第1容器の固定液を収容体に供給することで、固定液を再利用することができる。これにより、固定液の使用量を軽減することができる。また、固定液回収部は、収容体に供給された固定液を第1容器に回収するように構成されているため、第2容器には使用済みの固定液が混入することがなく、第2容器には常に汚れていない固定液のみを貯留させることができる。さらに、第1容器の固定液の供給および回収を所定数の収容体に対して行うと、第1容器の固定液が排出され、補給が開始される。そのため、第1容器の固定液を再利用した結果、第1容器の固定液の汚れが増すと、自動的に排出および補給を行うことができる。この排出
および補給を行う間、第2容器から収容体へ固定液を供給するので、第1容器の固定液の排出および補給の間も継続して収容体を処理でき、且つ、常に一定の純度の固定液をもって標本の固定が可能である。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、標本を固定するための固定液を、流路の洗浄にも使用しつつ、固定液の使用量を軽減することが可能な標本作製装置を提供することができる。
【0022】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る臨床検体処理装置の構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係る塗抹標本作製装置を上側から見た場合の構成を示す平面図である。
【図3】実施の形態に係るカセットの構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る染色部の動作を説明する図である。
【図5】実施の形態に係る塗抹標本作製装置の流体回路図の概要を示す図である。
【図6】実施の形態に係る第1メタノールチャンバの構成を示す図である。
【図7】実施の形態に係る塗抹標本作製装置と搬送装置の構成の概要を示す図である。
【図8】実施の形態に係るメタノール分注処理を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る閾値回数の設定処理を示すフローチャートおよび閾値回数設定画面を示す図である。
【図10】実施の形態に係るメタノールの回収処理および回収カウンタのカウント処理を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態に係る第1メタノールチャンバに対するメタノールの交換処理を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る第1メタノールチャンバおよび第2メタノールチャンバに対するメタノールの補給処理を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態に係るメタノール分注処理において補給エラーと判定されたときの処理を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態に係る通常動作時の処理の具体例を示す図である。
【図15】実施の形態に係る補給エラー時の処理の具体例を示す図である。
【図16】実施の形態に係る補給エラー時の処理の具体例を示す図である。
【図17】実施の形態に係る洗浄時のメタノール分注処理を示すフローチャート、洗浄時のメタノール回収処理を示すフローチャートおよび流路洗浄指示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施の形態は、血液検体の塗抹標本を作製する臨床検体処理装置に本発明を適用したものである。本実施の形態に係る臨床検体処理装置は、塗抹標本作製装置と搬送装置を備えている。なお、塗抹標本の作製の要否は、通常、前段の血液分析装置等による血液検体の分析結果に基づいて判断される。塗抹標本の作製を行う場合、血液検体を収容した検体容器を保持する検体ラックが、搬送装置にセットされる。しかる後、この検体ラックが搬送装置により搬送され、塗抹標本作製装置により塗抹標本が作製される。
【0025】
以下、本実施の形態に係る臨床検体処理装置について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、臨床検体処理装置1の構成を示す斜視図である。臨床検体処理装置1は、塗抹標本作製装置2と搬送装置3を備えている。なお、以下、X軸正方向を左方向、X軸負方向を右方向、Y軸正方向を後方、Y軸負方向を前方、Z軸正方向を上方向、Z軸負方向を下方向と称する。
【0027】
塗抹標本作製装置2は、カバーの前面にタッチパネルからなる表示操作部2aを備えている。また、塗抹標本作製装置2のカバーの右上と、左上と、前面には、それぞれ、開口2b、2c、2dが形成されている。また、塗抹標本作製装置2は、開口2dを介して検体容器Tを保持するためのハンド部41aを備えている。ユーザは、表示操作部2aを操作することにより塗抹標本作製装置2を制御し、開口2bを介して後述するカセット収容部47(図2参照)にカセット20をセットし、開口2cを介して後述するカセット保管部51(図2参照)に保管されているカセット20を取り出すことができる。
【0028】
また、塗抹標本作製装置2には、後述する染色部50にて使用される染色液等を収容するボトル101〜105が接続されている。本実施の形態では、ボトル101〜105には、それぞれ、メタノール(標本固定液)と、メイグリュンワルド液(染色液)と、ギムザ液(染色液)と、リン酸緩衝液(希釈液)と、標本洗浄用の水が収容されている。さらに、塗抹標本作製装置2には、メタノールを収容するための2つのチャンバ(第1メタノールチャンバ111と第2メタノールチャンバ112)が接続されている。メタノールは、血液塗抹標本を固定するために使用される。固定とは、血液塗抹標本に含まれる赤血球や白血球等の血液細胞のタンパク質をメタノールによって変性させることにより細胞の劣化を防ぐことである。標本固定液としては、ホルムアルデヒド、エタノール、メタノール、またはピクリン酸などを用いることができるが、血液塗抹標本の固定にはメタノールを用いることが好ましい。また、メタノールは、後述するように流路の洗浄にも使用される。
【0029】
なお、塗抹標本作製装置2には、第1メタノールチャンバ111と第2メタノールチャンバ112以外にも、図5に示すように、第1染色液チャンバ121と、第2染色液チャンバ122と、染色液チャンバ131と、希釈液チャンバ143と、第1混合チャンバ151と、第2混合チャンバ152と、廃液チャンバ165が接続されている。
【0030】
搬送装置3は、塗抹標本作製装置2の前面に設置されており、搬入部3aと取り出し部3bを有している。搬送装置3は、搬入部3aに位置付けられた検体ラックLを取り出し部3bまで搬送する。検体容器Tは、ハンド部41aの前方に位置付けられると、ハンド部41aにより抜き出され、塗抹標本作製装置2内に引き込まれる。
【0031】
図2は、塗抹標本作製装置2を上側から見た場合の構成を示す平面図である。
【0032】
塗抹標本作製装置2は、吸引分注機構部41と、スライドガラス供給部42と、スライドガラス横送り部43と、塗抹機構部44と、塗抹乾燥部45と、印字部46と、カセット収容部47と、カセット横送り部48と、カセット回転部49と、染色部50と、カセット保管部51と、を備えている。
【0033】
吸引分注機構部41は、ハンド部41aと、ピアサ(吸引針)41bと、分注ピペット41cを有している。ハンド部41aの前方に位置付けられた検体容器Tは、ハンド部41aにより把持されて検体ラックLから抜き出され、ハンド部41aにより所定回数だけ攪拌される。しかる後に、この検体容器Tに収容された血液検体は、ピアサ41bにより吸引され、左右(X軸方向)に移動可能な分注ピペット41cにより、塗抹機構部44の前方に位置付けられたスライドガラス10に滴下される。
【0034】
スライドガラス供給部42は、複数の新しいスライドガラス10を保持しており、これら新しいスライドガラス10を、順次スライドガラス横送り部43上まで移動させる。スライドガラス横送り部43は、スライドガラス供給部42から供給された新しいスライドガラス10を左方向(X軸正方向)に移動させて、塗抹機構部44の前方に位置付ける。
【0035】
塗抹機構部44は、前方に位置付けられたスライドガラス10に血液検体が滴下されると、この血液検体を塗抹する。塗抹された血液検体を含むスライドガラス10は、スライドガラス横送り部43により、右方向(X軸負方向)に移動され、順次、塗抹乾燥部45の前方と、印字部46の真下位置に位置付けられる。塗抹乾燥部45は、塗抹乾燥部45の前方に位置付けられたスライドガラス10に塗抹された血液検体を、ファン(図示せず)により乾燥させる。印字部46は、プリンタ(図示せず)からなり、スライドガラス10の端部に、検体番号、日付、受付番号、氏名などを印字する。
【0036】
カセット収容部47は、前方(Y軸負方向)に移動可能なベルト47aを有している。ユーザは、開口2b(図1参照)を介してベルト47a上に空のカセット20をセットすることができる。ベルト47aにセットされた空のカセット20は、ベルト47aが動くことにより前方に搬送される。
【0037】
図3(a)、(b)は、カセット20の構成を示す斜視図である。なお、図3(a)、(b)には、カセット20がベルト47aに載置されたときの図2の座標軸が併せて示されている。
【0038】
図3(a)を参照して、カセット20は、樹脂からなり、収容部20eにスライドガラス10を収容することができるよう、Y軸方向に厚みを有している。カセット20の上部には、仕切り部20cで左右に仕切られた収納口20a、20bが形成されている。仕切り部20cの下方向には、仕切り部20dが設置されており、カセット20の内部には、収容部20eが形成されている。カセット20の左右には、鍔部20f、20gが形成されており、鍔部20f、20gの下面が、下側から支持されることにより、図2のベルト47a上に載置される。カセット20の下方には、底部20hが形成されている。スライドガラス10は、収納口20aを介して、上側から挿入される。
【0039】
図3(b)は、カセット20にスライドガラス10が収容された状態を示す斜視図である。図3(b)に示すようにスライドガラス10が収容されると、収容部20eのうち、仕切り部20c、20dよりも右側の領域に隙間が生じる。かかる隙間により、スライドガラス10がカセット20に収容された状態でも、収納口20bを介してピペットが挿入可能となる。
【0040】
図2に戻り、カセット横送り部48は、カセット支持部48aと、左右に移動可能なベルト48bを有している。カセット支持部48aは、ベルト48bに固定されており、カセット20の底部20hを上方向に支持するよう構成されている。カセット収容部47の前方に位置付けられた空のカセット20は、カセット支持部48aに支持されて、カセット回転部49の前方まで左方向に搬送される。
【0041】
カセット回転部49は、平面49aと、X軸方向に平行な軸49bを備えている。軸49bがX軸周りに回転することにより、平面49aは、X−Y平面に平行な状態とX−Z平面に平行な状態となる。平面49aがX−Z平面に平行な状態のときに、カセット回転部49の前方に位置付けられた空のカセット20が、平面49a上に移動される。続いて、平面49aがX−Y平面に平行な状態とされ、印字部46から押し出されたスライドガラス10が、図示の如く、カセット20に挿入される。続いて、平面49aが再びX−Z平面に平行な状態とされ、平面49a上のスライドガラス10を収容するカセット20が
、カセット横送り部48のカセット支持部48aに移動される。しかる後、このカセット20は、カセット横送り部48により左方向に搬送され、染色部50の前方に位置付けられる。
【0042】
染色部50は、送り込み機構部50aと、後方(Y軸正方向)に移動可能なベルト50bと、メタノール処理機構部Mと、染色処理機構部D1〜D3と、洗浄処理機構部Wと、送り出し機構部50cを有する。メタノール処理機構部Mは、分注ピペットMaとセンサMsを含み、染色処理機構部D1は、分注ピペットD1aと、回収ピペットD1bと、センサD1sを含み、染色処理機構部D2は、分注ピペットD2aと、回収ピペットD2bと、センサD2sを含み、染色処理機構部D3は、分注ピペットD3aと、回収ピペットD3b、センサD3sを含み、水洗処理機構部Wは、分注ピペットWaと、回収ピペットWbと、センサWsを含んでいる。
【0043】
センサMsは、発光部と受光部からなる透過型のセンサであり、メタノール処理機構部Mによる処理が行われる位置Mp(カセット横送り部48の左端位置)にカセット20が位置付けられたことを検知する。センサD1s、D2s、D3s、Wsは、接触型のセンサであり、それぞれ、染色処理機構部D1、D2、D3、水洗処理機構部Wによる処理が行われる位置D1p、D2p、D3p、Wpにカセット20が位置付けられたことを検知する。
【0044】
センサMsによりカセット20が検知されると、メタノール処理機構部Mにより、このカセット20に収容されているスライドガラス10上の塗抹標本に対する処理が行われる。具体的には、メタノール処理機構部Mの分注ピペットMaを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内にメタノールが分注(吐出)される。このとき、カセット20は、カセット横送り部48のカセット支持部48aに支持されている。しかる後に、このカセット20は、送り込み機構部50aにより、ベルト50b上に送り込まれる。
【0045】
送り込み機構部50aによりベルト50b上に送り込まれたカセット20は、ベルト50bに鍔部20f、20gが支持される。この状態で、ベルト50bが動くことにより、カセット20は後方に搬送される。なお、ベルト50bは、塗抹標本作製装置2が動作状態にあるとき、常に後方に動き続けている。
【0046】
センサD1sによりカセット20が検知されると、染色処理機構部D1により、このカセット20に収容されているスライドガラス10上の塗抹標本に対する処理が行われる。具体的には、染色処理機構部D1の回収ピペットD1bを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内のメタノールが回収(吸引)される。そして、図示しないファンによりスライドガラス10上の塗抹標本が乾燥させられた後、分注ピペットD1aを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内にメイグリュンワルド液が分注(吐出)される。しかる後、このカセット20は、ベルト50bにより後方に搬送される。
【0047】
センサD2sによりカセット20が検知されると、染色処理機構部D2により、このカセット20に収容されているスライドガラス10上の塗抹標本に対する処理が行われる。具体的には、染色処理機構部D2の回収ピペットD2bを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内のメイグリュンワルド液が回収(吸引)される。そして、分注ピペットD2aを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内にメイグリュンワルド希釈液が分注(吐出)される。しかる後、このカセット20は、ベルト50bにより後方に搬送される。なお、メイグリュンワルド希釈液とは、ボトル102のメイグリュンワルド液と、ボトル104の希釈液との混合液である。
【0048】
センサD3sによりカセット20が検知されると、染色処理機構部D3により、このカ
セット20に収容されているスライドガラス10上の塗抹標本に対する処理が行われる。具体的には、染色処理機構部D3の回収ピペットD3bを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内のメイグリュンワルド希釈液が回収(吸引)される。そして、分注ピペットD3aを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内にギムザ希釈液が分注(吐出)される。しかる後、このカセット20は、ベルト50bにより後方に搬送される。なお、ギムザ希釈液とは、ボトル103のギムザ液と、ボトル104の希釈液との混合液である。
【0049】
センサWsによりカセット20が検知されると、洗浄処理機構部Wにより、このカセット20に収容されているスライドガラス10上の塗抹標本に対する処理が行われる。具体的には、洗浄処理機構部Wの回収ピペットWbを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内のギムザ希釈液が回収(吸引)される。そして、分注ピペットWaを介して、カセット20の収納口20bから収容部20e内に標本洗浄用の水が分注(吐出)される。そして、回収ピペットWbを介して、カセット20の収容部20e内の標本洗浄用の水が回収(吸引)される。しかる後、このカセット20は、ベルト50bにより後方に搬送される。
【0050】
ベルト50bの後方に搬送されたカセット20は、送り出し機構部50cによって、左方向に送り出される。これにより、カセット20は、カセット保管部51の後方に位置付けられる。
【0051】
カセット保管部51は、送り込み機構部51aと、前方(Y軸負方向)に移動可能なベルト51bを有する。送り出し機構部50cから送り出されたカセット20は、送り込み機構部51aにより、ベルト51b上に送り込まれる。ベルト51b上に送り込まれたカセット20は、ベルト51bが動くことにより、前方に搬送される。ベルト51bの前方に位置付けられたカセット20は、開口2c(図1参照)を介してユーザにより取り出される。こうして、塗抹標本の作製が終了する。
【0052】
次に、図4を参照して、染色部50(メタノール処理機構部Mと、染色処理機構部D1〜D3と、洗浄処理機構部W)の動作を説明する。なお、メタノール処理機構部Mと、染色処理機構部D2、D3と、洗浄処理機構部Wの動作は、染色処理機構部D1と略同様である。
【0053】
図4(a)〜(c)は、染色処理機構部D1をY軸正方向に見た時の側面図である。染色処理機構部D1は、図2に示した分注ピペットD1aと回収ピペットD1bに加え、基板D11と、ストッパD12と、支持部材D13と、把持部D14を有する。
【0054】
図4(a)を参照して、基板D11は、塗抹標本作製装置2内に固定されている。ストッパD12は、基板D11に対して上下(Z軸方向)に移動可能な金属板であり、ストッパD12の前面(Y軸負方向側の面)には、図2に示したセンサD1sが設置されている。分注ピペットD1aと、回収ピペットD1bと、把持部D14は、支持部材D13と一体となって上下に移動可能となるよう構成されている。
【0055】
図4(a)に示すようにストッパD12が位置付けられているとき、ベルト50bに支持されて後方に搬送されるカセット20は、後方側の面がストッパD12に当接して停止する。このときのカセット20は、図2の位置D1pに位置付けられ、センサD1sにより、カセット20が位置D1pに位置付けられたことが検知される。この状態で、支持部材D13が下方向に移動され、分注ピペットD1aと回収ピペットD1bの先端部が、図4(b)に示す如く、カセット20の収容部20e内に位置付けられる。
【0056】
続いて、図4(b)の状態で、カセット20内のメタノールが回収ピペットD1bにより回収される。そして、カセット20内のスライドガラス10が把持部D14により把持され、このスライドガラス10は、支持部材D13が上方向に移動することによりカセット20に対して上方向に引き上げられる。この状態で、図示しないファンによりスライドガラス10が乾燥させられる。しかる後、支持部材D13が下方向に移動することにより、再びスライドガラス10がカセット20内に収容される。このとき、分注ピペットD1aを介してカセット20内にメイグリュンワルド液が分注される。そして、支持部材D13とストッパD12が上方向に移動することにより、図4(c)に示す状態となり、カセット20はベルト50bに支持されながら、後方へ搬送される。
【0057】
なお、メタノール処理機構部Mは、図4のストッパD12と回収ピペットD1bに相当する構成を有していない。メタノール処理機構部Mでは、位置Mp(図2参照)に位置付けられたカセット20に収容されるスライドガラス10は、図4の把持部D14に相当する把持部により上方向に引き上げられた後、分注ピペットMaを介してカセット20にメタノールが分注される。そして、上方向に引き上げられたスライドガラス10は再びカセット20内に戻される。しかる後、このカセット20は、送り込み機構部50aによりベルト50b上に送り込まれる。
【0058】
また、染色処理機構部D2は、図4の把持部D14に相当する構成を有していない。染色処理機構部D2では、位置D2pに位置付けられたカセット20にスライドガラス10が収容された状態で、分注ピペットD2aによる分注と、回収ピペットD2bによる回収が行われる。染色処理機構部D3と洗浄処理機構部Wについても、染色処理機構部D2と同様に処理が行われる。すなわち、染色処理機構部D3と洗浄処理機構部Wは、図4の把持部D14に相当する構成を有しておらず、位置D3pにおいて、分注ピペットD3aによる分注と、回収ピペットD3bによる回収が行われ、位置Wpにおいて、分注ピペットWaによる分注と、回収ピペットWbによる回収が行われる。
【0059】
図5は、塗抹標本作製装置2の流体回路図の概要を示す図である。
【0060】
塗抹標本作製装置2には、図1に示したボトル101〜104と、第1メタノールチャンバ111と、第2メタノールチャンバ112に加えて、第1染色液チャンバ121と、第2染色液チャンバ122と、染色液チャンバ131と、希釈液チャンバ143と、第1混合チャンバ151と、第2混合チャンバ152と、廃液チャンバ165が接続されるよう流路が形成されている。なお、図5では、洗浄用の水を収容するボトル105と、分注ピペットWaと、回収ピペットWbと、これらに対応する流路等の図示が、便宜上、省略されている。
【0061】
また、流路には、図示の如く、バルブv11〜v17、v18a、v18b、v19a、v19b、v20〜v28、v29a、v29b、v30a、v30b、v31〜v34、v35a、v35b、v41a〜v43a、v41b〜v43b、v51a、v51b、v52a、v52b、v53〜v59が接続されている。各バルブが開放状態または遮断状態に設定されることにより、このバルブを介して染色液等が通過可能または通過不可能な状態となる。さらに、流路には、図示の如く、圧力を調節するための圧力調節器113〜115、123〜125、127、132、133、141、144、146、161、163、166、167と、一定量の染色液等を吸引および排出する機能を有するダイアフラムポンプ116、126、128、134、142、145、147、162、164、168が接続されている。
【0062】
図6を参照して、第1メタノールチャンバ111は、内部にフロートスイッチ111aが設けられたタンク111bによって構成されている。フロートスイッチ111aは、浮
き部材111cと、浮き部材111cを上下方向に移動可能に支持する支持棒111dから構成されている。浮き部材111cの内部には、磁石111eが埋め込まれている。浮き部材111cは、タンク111b内の液面に応じて上下方向に移動し、磁石111eは液面高さに位置付けられている。支持棒111dの上下方向の所定位置(以下、「基準位置」という)には、磁気検知型のリードスイッチ111fが埋め込まれている。
【0063】
タンク111b内に規定量の液体が貯留されることにより、液面が基準位置に位置付けられると、リードスイッチ111fが、浮き部材111c内の磁石111eの磁気を検知してオン状態となる。また、タンク111b内に規定量の液体が貯留されていないことにより、液面が基準位置に位置付けられていないと、リードスイッチ111fが、浮き部材111c内の磁石111eの磁気を検知できずにオフ状態となる。これにより、第1メタノールチャンバ111内に、規定量のメタノールが貯留されているかが分かる。
【0064】
なお、第2メタノールチャンバ112と、第1染色液チャンバ121と、第2染色液チャンバ122と、染色液チャンバ131と、希釈液チャンバ143と、廃液チャンバ165についても、第1メタノールチャンバ111と同様の構造を有しており、内部にフロートスイッチが設けられている。また、各チャンバの貯留する液体の規定量はそれぞれ個別に設定されており、規定量の液体が貯留されているときの液面に対応して、リードスイッチの設置されている基準位置が個別に設定されている。
【0065】
図5に戻り、第1メタノールチャンバ111に、ボトル101からメタノールが供給される場合、まず、バルブv12〜v16が遮断状態とされ、バルブv11が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器113により第1メタノールチャンバ111内が減圧される。これにより、ボトル101に収容されているメタノールが、第1メタノールチャンバ111に供給される。
【0066】
第2メタノールチャンバ112に、ボトル101からメタノールが供給される場合、まず、バルブv11、v13、v17、v19aが遮断状態とされ、バルブv12が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器114により第2メタノールチャンバ112内が減圧される。これにより、ボトル101に収容されているメタノールが、第2メタノールチャンバ112に供給される。
【0067】
第1メタノールチャンバ111に貯留されているメタノールが、分注ピペットMaからカセット20に分注される場合、まず、バルブv11、v14、v15、v17、v18bが遮断状態とされ、バルブv16、v18aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器115によりダイアフラムポンプ116内が減圧される。これにより、第1メタノールチャンバ111に貯留されているメタノールが、ダイアフラムポンプ116内に一定量吸引される。続いて、バルブv18aが遮断状態とされ、バルブv18bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器115によりダイアフラムポンプ116内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ116内のメタノールが、分注ピペットMaからカセット20に分注される。
【0068】
第2メタノールチャンバ112に貯留されているメタノールが、分注ピペットMaからカセット20に分注される場合、まず、バルブv12、v16、v18b、v19aが遮断状態とされ、バルブv17、v18aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器115によりダイアフラムポンプ116内が減圧される。これにより、第2メタノールチャンバ112に貯留されているメタノールが、ダイアフラムポンプ116内に一定量吸引される。続いて、上記第1メタノールチャンバ111の場合と同様にして、ダイアフラムポンプ116内のメタノールが、分注ピペットMaからカセット20に分注される。
【0069】
カセット20に収容されているメタノールが、回収ピペットD1bを介して第1メタノールチャンバ111に回収される場合、バルブv11、v14、v16が遮断状態とされ、バルブv15が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器113により第1メタノールチャンバ111内が減圧される。これにより、回収ピペットD1bから吸引されたメタノールが、第1メタノールチャンバ111に回収される。
【0070】
第1メタノールチャンバ111に貯留されているメタノールが排出される場合、バルブv11、v15、v16が遮断状態とされ、バルブv14が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器113により第1メタノールチャンバ111内が加圧される。これにより、第1メタノールチャンバ111に貯留されているメタノールが排出される。
【0071】
次に、第1染色液チャンバ121に、ボトル102から染色液としてのメイグリュンワルド液が供給される場合、まず、バルブv22〜v24、v26、v27が遮断状態とされ、バルブv20、v21が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器123により第1染色液チャンバ121内が減圧される。これにより、ボトル102に収容されているメイグリュンワルド液が、第1染色液チャンバ121に供給される。
【0072】
第2染色液チャンバ122に、ボトル102からメイグリュンワルド液が供給される場合、まず、バルブv21、v23、v25、v28が遮断状態とされ、バルブv20、v22が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器124により第2染色液チャンバ122内が減圧される。これにより、ボトル102に収容されているメイグリュンワルド液が、第2染色液チャンバ122に供給される。
【0073】
第1染色液チャンバ121に貯留されているメイグリュンワルド液が、分注ピペットD1aからカセット20に分注される場合、まず、バルブv21、v24、v26、v28、v29b、v30aが遮断状態とされ、バルブv27、v29aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器125によりダイアフラムポンプ126内が減圧される。これにより、第1染色液チャンバ121に貯留されているメイグリュンワルド液が、ダイアフラムポンプ126内に一定量吸引される。続いて、バルブv29aが遮断状態とされ、バルブv29bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器125によりダイアフラムポンプ126内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ126内のメイグリュンワルド液が、分注ピペットD1aからカセット20に分注される。
【0074】
第2染色液チャンバ122に貯留されているメイグリュンワルド液が、分注ピペットD1aからカセット20に分注される場合、まず、バルブv22、v25、v27、v29b、v30aが遮断状態とされ、バルブv28、v29aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器125によりダイアフラムポンプ126内が減圧される。これにより、第2染色液チャンバ122に貯留されているメイグリュンワルド液が、ダイアフラムポンプ126内に一定量吸引される。続いて、上記第1染色液チャンバ121の場合と同様にして、ダイアフラムポンプ126内のメイグリュンワルド液が、分注ピペットD1aからカセット20に分注される。
【0075】
カセット20に収容されているメイグリュンワルド液が、回収ピペットD2bを介して第1染色液チャンバ121に回収される場合、バルブv21、v24、v27が遮断状態とされ、バルブv26が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器123により第1染色液チャンバ121内が減圧される。これにより、回収ピペットD2bから吸引されたメイグリュンワルド液が、第1染色液チャンバ121に回収される。
【0076】
第1染色液チャンバ121に貯留されているメイグリュンワルド液が、第1混合チャンバ151に供給される場合、まず、バルブv21、v24、v26、v28、v29a、
v30bが遮断状態とされ、バルブv27、v30aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器127によりダイアフラムポンプ128内が減圧される。これにより、第1染色液チャンバ121に貯留されているメイグリュンワルド液が、ダイアフラムポンプ128内に一定量吸引される。続いて、バルブv30aが遮断状態とされ、バルブv30bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器127によりダイアフラムポンプ128内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ128内のメイグリュンワルド液が、第1混合チャンバ151に供給される。なお、第1混合チャンバ151には、チャンバ内の圧力が外気圧と同じになるよう開口が設けられている。
【0077】
第2染色液チャンバ122に貯留されているメイグリュンワルド液が、第1混合チャンバ151に供給される場合、まず、バルブv22、v25、v27、v29a、v30bが遮断状態とされ、バルブv28、v30aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器127によりダイアフラムポンプ128内が減圧される。これにより、第2染色液チャンバ122に貯留されているメイグリュンワルド液が、ダイアフラムポンプ128内に一定量吸引される。続いて、第1染色液チャンバ121の場合と同様にして、ダイアフラムポンプ128内のメイグリュンワルド液が、第1混合チャンバ151に供給される。
【0078】
第1染色液チャンバ121に貯留されているメイグリュンワルド液が排出される場合、バルブv21、v25〜v27が遮断状態とされ、バルブv24が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器123により第1染色液チャンバ121内が加圧される。これにより、第1染色液チャンバ121に貯留されているメイグリュンワルド液が排出される。
【0079】
第2染色液チャンバ122に貯留されているメイグリュンワルド液が排出される場合、バルブv22、v24、v28が遮断状態とされ、バルブv25が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器124により第2染色液チャンバ122内が加圧される。これにより、第2染色液チャンバ122に貯留されているメイグリュンワルド液が排出される。
【0080】
次に、染色液チャンバ131に、ボトル103から染色液としてのギムザ液が供給される場合、まず、バルブv32、v34、v35aが遮断状態とされ、バルブv31、v33が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器132により染色液チャンバ131内が減圧される。これにより、ボトル103に収容されているギムザ液が、染色液チャンバ131に供給される。
【0081】
染色液チャンバ131に貯留されているギムザ液が、第2混合チャンバ152に供給される場合、まず、バルブv33、v34、v35bが遮断状態とされ、バルブv35aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器133によりダイアフラムポンプ134内が減圧される。これにより、染色液チャンバ131に貯留されているギムザ液が、ダイアフラムポンプ134内に一定量吸引される。続いて、バルブv35aが遮断状態とされ、バルブv35bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器133によりダイアフラムポンプ134内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ134内のギムザ液が、第2混合チャンバ152に供給される。なお、第2混合チャンバ152には、チャンバ内の圧力が外気圧と同じになるよう開口が設けられている。
【0082】
次に、希釈液チャンバ143に、ボトル104から希釈液としてのリン酸緩衝液が供給される場合、まず、バルブv41bが遮断状態とされ、バルブv41aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器141によりダイアフラムポンプ142内が減圧される。これにより、ボトル104に収容されている希釈液が、ダイアフラムポンプ142内に一定量吸引される。続いて、バルブv41a、v42a、v43aが遮断状態とされ、バルブv41bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器141によりダイアフラムポンプ142内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ142内の希釈液が、希釈液チ
ャンバ143に供給される。なお、希釈液チャンバ143には、チャンバ内の圧力が外気圧と同じになるよう開口が設けられている。
【0083】
希釈液チャンバ143に貯留されている希釈液が、第1混合チャンバ151に供給される場合、まず、バルブv41b、v42b、v43aが遮断状態とされ、バルブv42aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器144によりダイアフラムポンプ145内が減圧される。これにより、希釈液チャンバ143に貯留されている希釈液が、ダイアフラムポンプ145内に一定量吸引される。続いて、バルブv42aが遮断状態とされ、バルブv42bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器144によりダイアフラムポンプ145内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ145内の希釈液が、第1混合チャンバ151に供給される。
【0084】
希釈液チャンバ143に貯留されている希釈液が、第2混合チャンバ152に供給される場合、まず、バルブv41b、v42a、v43bが遮断状態とされ、バルブv43aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器146によりダイアフラムポンプ147内が減圧される。これにより、希釈液チャンバ143に貯留されている希釈液が、ダイアフラムポンプ147内に一定量吸引される。続いて、バルブv43aが遮断状態とされ、バルブv43bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器146によりダイアフラムポンプ147内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ147内の希釈液が、第2混合チャンバ152に供給される。
【0085】
第1混合チャンバ151では、第1染色液チャンバ121または第2染色液チャンバ122から供給されたメイグリュンワルド液と、希釈液チャンバ143から供給された希釈液とが混合される。これにより、第1混合チャンバ151内にメイグリュンワルド希釈液が生成される。第2混合チャンバ152では、染色液チャンバ131から供給されたギムザ液と、希釈液チャンバ143から供給された希釈液とが混合される。これにより、第2混合チャンバ152内にギムザ希釈液が生成される。
【0086】
第1混合チャンバ151に貯留されているメイグリュンワルド希釈液が、分注ピペットD2aからカセット20に分注される場合、まず、バルブv51b、v53が遮断状態とされ、バルブv51aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器161によりダイアフラムポンプ162内が減圧される。これにより、第1混合チャンバ151に貯留されているメイグリュンワルド希釈液が、ダイアフラムポンプ162内に一定量吸引される。続いて、バルブv51aが遮断状態とされ、バルブv51bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器161によりダイアフラムポンプ162内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ162内のメイグリュンワルド希釈液が、分注ピペットD2aからカセット20に分注される。
【0087】
第2混合チャンバ152に貯留されているギムザ希釈液が、分注ピペットD3aからカセット20に分注される場合、まず、バルブv52b、v54が遮断状態とされ、バルブv52aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器163によりダイアフラムポンプ164内が減圧される。これにより、第2混合チャンバ152に貯留されているギムザ希釈液が、ダイアフラムポンプ164内に一定量吸引される。続いて、バルブv52aが遮断状態とされ、バルブv52bが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器163によりダイアフラムポンプ164内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ164内のギムザ希釈液が、分注ピペットD3aからカセット20に分注される。
【0088】
カセット20に収容されているメイグリュンワルド希釈液が、回収ピペットD3bを介して廃液チャンバ165に回収される場合、バルブv53〜v55が遮断状態とされ、バルブv56が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器166により廃液チャンバ16
5内が減圧される。これにより、回収ピペットD3bから吸引されたメイグリュンワルド希釈液が、廃液チャンバ165に回収される。
【0089】
第1混合チャンバ151に貯留されているメイグリュンワルド希釈液が、廃液チャンバ165に供給される場合、バルブv51a、v54〜v56が遮断状態とされ、バルブv53が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器166により廃液チャンバ165内が減圧される。これにより、第1混合チャンバ151に貯留されているメイグリュンワルド希釈液が、廃液チャンバ165に供給される。
【0090】
第2混合チャンバ152に貯留されているギムザ希釈液が、廃液チャンバ165に供給される場合、バルブv52a、v53、v55、v56が遮断状態とされ、バルブv54が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器166により廃液チャンバ165内が減圧される。これにより、第2混合チャンバ152に貯留されているギムザ希釈液が、廃液チャンバ165に供給される。
【0091】
廃液チャンバ165に貯留されている染色液等が排出される場合、バルブv53、v54、v56が遮断状態とされ、バルブv55が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器166により廃液チャンバ165内が加圧される。これにより、廃液チャンバ165に貯留されている染色液等が排出される。
【0092】
次に、第2メタノールチャンバ112に貯留されているメタノールが、第1混合チャンバ151と第2混合チャンバ152に供給される場合、まず、バルブv12、v17、v19bが遮断状態とされ、バルブv19aが開放状態とされる。この状態で、圧力調節器167によりダイアフラムポンプ168内が減圧される。これにより、第2メタノールチャンバ112に貯留されているメタノールが、ダイアフラムポンプ168内に一定量吸引される。続いて、メタノールが第1混合チャンバ151に供給される場合、バルブv19a、v51a、v53、v58が遮断状態とされ、バルブv19b、v57が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器167によりダイアフラムポンプ168内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ168内のメタノールが、第1混合チャンバ151に供給される。また、メタノールが第2混合チャンバ152に供給される場合、バルブv19a、v52a、v54、v57が遮断状態とされ、バルブv19b、v58が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器167によりダイアフラムポンプ168内が加圧される。これにより、ダイアフラムポンプ168内のメタノールが、第2混合チャンバ152に供給される。
【0093】
次に、ボトル101に収容されているメタノールが、第1染色液チャンバ121に供給される場合、バルブv11、v12、v20、v22、v24、v26、v27、v32、v59が遮断状態とされ、バルブv13、v21、v23が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器123により第1染色液チャンバ121内が減圧される。これにより、ボトル101に収容されているメタノールが、第1染色液チャンバ121に供給される。なお、バルブv59が開放状態とされると、流路内に外気圧を取り込むことができる。
【0094】
ボトル101に収容されているメタノールが、第2染色液チャンバ122に供給される場合、バルブv11、v12、v20、v21、v25、v28、v32、v59が遮断状態とされ、バルブv13、v22、v23が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器124により第2染色液チャンバ122内が減圧される。これにより、ボトル101に収容されているメタノールが、第2染色液チャンバ122に供給される。
【0095】
次に、ボトル101に収容されているメタノールが、染色液チャンバ131に供給される場合、バルブv11、v12、v23、v31、v34、v35a、v59が遮断状態
とされ、バルブv13、v32、v33が開放状態とされる。この状態で、圧力調節器132により染色液チャンバ131内が減圧される。これにより、ボトル101に収容されているメタノールが、染色液チャンバ131に供給される。
【0096】
なお、カセット20に収容されているギムザ希釈液は、上記と同様にして、図示しないチャンバと、ダイアフラムポンプと、バルブにより、回収ピペットWbを介して回収される。また、ボトル105に収容されている洗浄用の水は、上記と同様にして、図示しないチャンバと、ダイアフラムポンプと、バルブにより、分注ピペットWaを介してカセット20に分注され、回収ピペットWbを介して回収される。
【0097】
このように、ボトル101〜105に収容される染色液等を、流路を介して分注ピペットMa、D1a〜D3a、Waによりカセット20に分注することができる。また、回収ピペットD1b〜D3b、Wbによりカセット20から吸引された染色液等を、流路を介して対応するチャンバに回収することができる。また、各チャンバに貯留されている染色液等を、流路を介して排出することができる。
【0098】
さらに、ボトル101に収容されるメタノールを、流路を介して第1メタノールチャンバ111と、第2メタノールチャンバ112と、第1染色液チャンバ121と、第2染色液チャンバ122と、染色液チャンバ131と、第1混合チャンバ151と、第2混合チャンバ152に直接供給することができる。これにより、チャンバと流路とが染色液等で汚れた場合でも、ボトル101に収容されるメタノールを、これらチャンバと流路とに供給することができるため、汚れを洗い流すことが可能となる。
【0099】
図7は、塗抹標本作製装置2と搬送装置3の構成の概要を示す図である。
【0100】
塗抹標本作製装置2は、制御部201と、記憶部202と、駆動部203と、センサ部204と、液体移送部205と、通信部206と、表示操作部2aを備えている。
【0101】
制御部201は、記憶部202に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、塗抹標本作製装置2の各部を制御する。記憶部202は、ハードディスク等の記憶装置からなり、塗抹標本作製装置2を動作させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。
【0102】
また、記憶部202には、後述するように、メタノールの再利用回数を示す再利用カウンタRkと、再利用回数の上限を示す閾値回数R0と、メタノールの回収回数を示す回収カウンタCkと、回収回数の上限を示す閾値回数C0とが記憶されている。これら回数については、追って図8と図11を参照して説明する。
【0103】
駆動部203は、吸引分注機構部41と、スライドガラス供給部42と、スライドガラス横送り部43と、塗抹機構部44と、塗抹乾燥部45と、印字部46と、カセット収容部47と、カセット横送り部48と、カセット回転部49と、染色部50と、カセット保管部51と、塗抹標本作製装置2内の各部を駆動させるための機構を含んでおり、制御部201により制御される。
【0104】
センサ部204は、メタノール処理機構部MのセンサMsと、染色処理機構部D1〜D3のセンサD1s〜D3sと、水洗処理機構部WのセンサWsを含んでいる。また、センサ部204は、第1メタノールチャンバ111のリードスイッチ111fと、他のチャンバに設置された同様のリードスイッチを含んでいる。センサ部204に含まれる各センサは、制御部201により制御され、センサ部204の検出信号は、制御部201に出力される。
【0105】
液体移送部205は、圧力調節器113〜115、123〜125、127、132、133、141、144、146、161、163、166、167と、バルブv11〜v17、v18a、v18b、v19a、v19b、v20〜v28、v29a、v29b、v30a、v30b、v31〜v34、v35a、v35b、v41a〜v43a、v41b〜v43b、v51a、v51b、v52a、v52b、v53〜v59を含んでいる。液体移送部205に含まれる各部は、制御部201により制御されている。
【0106】
表示操作部2aは、図1に示したように、表示機能と入力機能が一体となったタッチパネルである。ユーザにより表示操作部2aが操作されると、制御部201に操作内容を示す信号が出力される。また、制御部201により、表示操作部2aに各種情報が表示される。通信部206は、搬送装置3の通信部304との間でデータ通信を行う。
【0107】
搬送装置3は、制御部301と、駆動部302と、センサ部303と、通信部304を備えている。制御部301は、搬送装置3内の各部を制御する。駆動部302は、搬送装置3内の各部を駆動させるための機構を含んでおり、制御部301により制御される。センサ部303は、搬送装置3内のセンサを含んでおり、制御部301により制御され、センサ部303の検出信号は、制御部301に出力される。通信部304は、塗抹標本作製装置2の通信部206との間でデータ通信を行う。
【0108】
ここで、本実施の形態では、第1メタノールチャンバ111から分注ピペットMaを介してカセット20に分注されたメタノールは、回収ピペットD1bを介して再び第1メタノールチャンバ111に回収され、再び分注ピペットMaによる分注に利用される。
【0109】
以下、このようなメタノールの再利用に関する処理とともに、本実施の形態の塗抹標本作製装置2において実行される種々の処理について説明する。
【0110】
<メタノール再利用時の処理>
図8は、本実施の形態に係る塗抹標本作成装置2におけるメタノールの分注処理を示すフローチャートである。
【0111】
分注処理が開始されると、制御部201は、再利用カウンタRkをリセットし(S101)、カセット20が位置Mpに到達するのを待つ(S102)。カセット20が位置Mpに到達すると(S102:YES)、制御部201は、第1メタノールチャンバ111からカセット20にメタノールを分注し(S103)、再利用カウンタRkに1を加算する(S104)。次に、制御部201は、第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの補給にエラーが生じていないかを判別し(S105)、補給エラーが生じていなければ(S105:NO)、再利用カウンタRkが予め設定された閾値回数R0に到達したかを判別する(S106)。再利用カウンタRkと閾値回数R0は、記憶部202に記憶されている。
【0112】
なお、カセット20に分注されたメタノールは、位置D1pにおいて、カセット20から第1メタノールチャンバ111に回収される。このため、分注処理が進むにつれて、第1メタノールチャンバ111内のメタノールが徐々に汚れる。メタノールの回収処理については、追って図10(a)を参照して説明する。
【0113】
また、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置を下回ると、第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給される。かかる補給が適正に行われない場合、制御部201は、補給エラーと判定し(S105:YES)、図13(a)の処理を実行する。第1メタノールチャンバ111に対する補給処理については、追って図12を参照して説明
する。また、補給エラーが生じたとき(S105:YES)の処理については、追って図13(a)を参照して説明する。
【0114】
S106において再利用カウンタRkが閾値回数R0に到達していないと判定すると(S106:NO)、制御部201は、処理をS102に戻し、S102以降の処理を繰り返す。こうして、再利用カウンタRkが閾値回数R0に到達するまで、第1メタノールチャンバ111からメタノールがカセット20に分注される。本実施の形態では、閾値回数R0がユーザにより設定可能とされている。閾値回数R0は、第1メタノールチャンバ111内のメタノールを新たなメタノールに交換するための指標となるものである。
【0115】
図9(a)は、閾値回数R0の設定処理を示すフローチャートである。
【0116】
制御部201は、ユーザにより閾値回数設定画面400の表示指示を受け付けると(S121:YES)、閾値回数設定画面400を表示操作部2a(図1参照)に表示させる(S122)。
【0117】
図9(b)は、表示操作部2aに表示される閾値回数設定画面400を示す図である。閾値回数設定画面400には、入力領域401と、OKボタン402と、キャンセルボタン403が配されている。入力領域401は、ユーザにより1〜20の数字を入力することが可能な領域である。入力領域401には、上下方向のボタンが含まれており、ユーザにより上方向のボタンが押下されると、入力領域401内の数字が増加し、下方向のボタンが押下されると、入力領域401内の数字が減少する。
【0118】
図9(a)に戻り、閾値回数設定画面400が表示されるとき(S122)、制御部201は、記憶部202に記憶している閾値回数R0を入力領域401に表示する。なお、閾値回数R0には初期値として20が設定されている。
【0119】
続いて、制御部201は、ユーザによりOKボタン402またはキャンセルボタン403が押下されたかを判定し、かかる判定に応じて処理を行う。すなわち、OKボタン402が押下されると(S123:YES)、制御部201は、入力領域401に入力された数値を、記憶部202に記憶している閾値回数R0に上書きし(S124)、閾値回数設定画面400を閉じて処理をS121に戻す。キャンセルボタン403が押下されると(S123:NO、S125:YES)、入力領域401に入力された値を破棄して、閾値回数設定画面400を閉じて処理をS121に戻す。
【0120】
図8に戻り、次に、再利用カウンタRkが閾値回数R0に到達すると(S106:YES)、制御部201は、分注処理と並行して、第1メタノールチャンバ111のメタノールを新たなメタノールに交換するための処理を開始し(S107)、さらに、回収カウンタCkのカウントを開始する(S108)。回収カウンタCkは、記憶部202に記憶されている。メタノールの交換処理については、追って図11を参照して説明する。また、回収カウンタCkのカウント処理については、追って図10(b)を参照して説明する。
【0121】
しかる後、制御部201は、カセット20が位置Mpに到達するのを待つ(S109)。カセット20が位置Mpに到達すると(S109:YES)、制御部201は、第1メタノールチャンバ111に替えて第2メタノールチャンバ112からカセット20にメタノールを分注する(S109)。このように、メタノールの交換処理が開始されると、カセット20への分注に用いられるメタノールチャンバが、第1メタノールチャンバ111から第2メタノールチャンバ112に切り替えられる。
【0122】
次に、制御部201は、第2メタノールチャンバ112に対するメタノールの補給、お
よび、第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの補給(新たなメタノールへの交換)にエラーが生じていないかを判別し(S111)、これらの補給にエラーが生じていなければ(S111:NO)、第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換が完了したかを判別する(S112)。
【0123】
なお、第2メタノールチャンバ112の液面が基準位置を下回ると、第1メタノールチャンバ111と同様、図12の補給処理によって、第2メタノールチャンバ112にメタノールが補給される。かかる補給が適正に行われない場合、制御部201は、補給エラーと判定し(S111:YES)、図13(b)の処理を実行する。また、メタノールの交換の際に、第1メタノールチャンバ111に対する新たなメタノールの補給が適正に行われない場合も、制御部201は、補給エラーを判定し(S111:YES)、図13(b)の処理を実行する。補給エラーが生じたとき(S111:YES)の処理については、追って図13(b)を参照して説明する。
【0124】
S112において第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換が完了していないと判定すると(S112:NO)、制御部201は、処理をS109に戻し、S109以降の処理を繰り返す。こうして、第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換が完了するまで、第2メタノールチャンバ112からメタノールがカセット20に分注される。なお、このように第2メタノールチャンバ112からメタノールが分注される場合も、図10の回収処理が行われ、カセット20から第1メタノールチャンバ111にメタノールが回収される。第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換が完了すると(S112:YES)、処理がS101に戻され、メタノール交換後の新たな分注処理が開始される。
【0125】
図10(a)は、メタノールの回収処理を示すフローチャートである。
【0126】
制御部201は、カセット20が位置D1pに到達するのを待つ(S201)。カセット20が位置D1pに到達すると(S201:YES)、制御部201は、カセット20から第1メタノールチャンバ111にメタノールを回収する(S202)。次に、制御部201は、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置を超えているかを判定し(S203)、液面が基準位置を超えていると(S203:YES)、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置になるまで第1メタノールチャンバ111からメタノールを排出する(S204)。その後、制御部201は、S201に戻って、次のカセット20が位置D1pに到達するのを待つ。こうして、カセット20に分注されたメタノールは全て第1メタノールチャンバ111に回収される。このため、第2メタノールチャンバ112内のメタノールは常に未使用の新しい状態に保たれる。
【0127】
図10(b)は、回収カウンタCkのカウント処理を示すフローチャートである。
【0128】
図8のS108において回収カウンタCkのカウント処理が開始されると、制御部201は、回収カウンタCkをリセットする(S211)。そして、図10(a)の処理によりカセット20から第1メタノールチャンバ111にメタノールが回収されると、制御部201は、回収カウンタCkに1を加算する(S213)。かかるカウント処理は、回収カウンタCkのカウント処理が中止されるまで行われる(S214)。回収カウンタCkのカウント処理の中止は、図11のS302において行われる。
【0129】
図11は、第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換処理を示すフローチャートである。
【0130】
図8のS107においてメタノールの交換処理が開始されると、制御部201は、回収
カウンタCkが閾値回数C0に到達するのを待つ(S301)。閾値回数C0は、記憶部202に予め記憶された値である。回収カウンタCkが閾値回数C0に到達すると(S301:YES)、制御部201は、回収カウンタCkのカウントを中止し(S302)、第1メタノールチャンバ111内のメタノールを全て排出し(S303)、その後、ボトル101から、第1メタノールチャンバ111に新たなメタノールを補給する(S304)。これにより、液面が基準位置に到達するまで第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給されると(S305:YES)、交換処理が終了する。これにより、図8のS112の判定がYESとなる。
【0131】
一方、液面が基準位置に到達するまで第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給されない場合(S305:NO)、制御部201は、メタノールの補給エラーとし、ユーザにボトル101の取替えを報知する(S306)。この報知は、たとえば、表示操作部2a(図1参照)に報知画面を表示することにより行われる。しかる後、制御部201は、ボトル101が取り替えられるのを待つ(S307)。これを受けてユーザが、ボトル101を新たなボトル101に取替え、その後、たとえば、表示操作部2aの画面を介して取替え完了の入力を行うと(S307:YES)、制御部201は、ボトル101から、第1メタノールチャンバ111に新たなメタノールを補給する(S308)。これにより、メタノールの補給が開始される。
【0132】
ここで、液面が基準位置に到達するまで第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給されない場合(S309:NO)、制御部201は、ボトル取替えのエラーをユーザに通知し(S311)、新たなボトル101が適正に装着されるのを待つ(S307)。他方、液面が基準位置に到達するまで第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給されると(S309:YES)、制御部201は、補給エラーを解除し(S310)、交換処理を終了する。
【0133】
なお、図11の交換処理では、図8のS107においてメタノールの交換処理が開始されても、直ちに第1メタノールチャンバ111からメタノールが排出されず、S301にて回収カウンタCkが閾値回数C0に到達した後に、第1メタノールチャンバ111からメタノールが排出される。これは、新たなメタノールに交換された後の第1メタノールチャンバ111に、繰り返し再利用されたメタノールが回収されるのを防ぐためである。すなわち、図8のS107においてメタノールの交換処理が開始されたタイミングでは、通常、位置Mpから位置D1pまでの間に複数のカセット20が存在する。これらのカセット20には、繰り返し再利用されて劣化が進んだメタノールが第1メタノールチャンバ111から分注されている。このため、これらのカセット20からメタノール交換後の第1メタノールチャンバ111にメタノールが回収されるのは好ましくない。
【0134】
そこで、本実施の形態では、メタノールの交換処理が開始されても、回収カウンタCkが閾値回数C0に到達するまでは、直ちに第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの排出と補給を行わないように構成されている。閾値回数C0は、メタノールの交換が完了したタイミングにおいて、位置D1pには、図8のS110において第2メタノールチャンバ112から未使用のメタノールが分注されたカセット20が到達するように設定される。
【0135】
なお、閾値回数C0は、メタノール処理機構部Mによりスライドガラス10がメタノールに浸漬されてから、染色処理機構部D1によりスライドガラス10が持ち上げられるまでの時間(浸漬時間)に基づいて予め設定される。このように、第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換処理が実行されるまでに閾値回数C0に基づくタイムラグが設けられることにより、メタノールが交換された直後の第1メタノールチャンバ111に、交換前の汚れたメタノールが回収されることを防ぐことができる。
【0136】
図12は、第1メタノールチャンバ111および第2メタノールチャンバ112に対するメタノールの補給処理を示すフローチャートである。なお、ここでは便宜上、第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの補給処理について説明を行うが、第2メタノールチャンバ112に対するメタノールの補給処理も、これと同様に行われる。
【0137】
第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置を下回ると(S401:YES)、制御部201は、ボトル101から、第1メタノールチャンバ111に新たなメタノールを補給する(S402)。これにより、メタノールの補給が開始される。
【0138】
液面が基準位置に到達するまで第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給されると(S403:YES)、補給処理が終了する。一方、液面が基準位置に到達するまで第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給されない場合(S403:NO)、制御部201は、メタノールの補給エラーとし、ユーザにボトル101の取替えを報知する(S404)。
【0139】
しかる後、制御部201は、ボトル101が取り替えられるのを待つ(S405)。これを受けてユーザが、ボトル101を新たなボトル101に取替え、その後、取替え完了の入力を行うと(S405:YES)、制御部201は、ボトル101から、第1メタノールチャンバ111に新たなメタノールを補給する(S406)。これによっても、液面が基準位置に到達するまで第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給されない場合(S407:NO)、制御部201は、ボトル取替えのエラーをユーザに通知し(S409)、新たなボトル101が適正に装着されるのを待つ(S405)。他方、液面が基準位置に到達するまで第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給されると(S407:YES)、制御部201は、補給エラーを解除し(S408)、処理をS401に戻して、次の補給タイミングを待つ。
【0140】
図13(a)は、図8のS105において補給エラーと判定されたときの処理を示す図である。
【0141】
なお、図8のS105における補給エラーは、S102〜S106の処理に伴い第1メタノールチャンバ111のメタノール量が減少したため、図12の補給処理に従って第1メタノールチャンバ111にメタノールを補給する際に生じる。すなわち、図12の補給処理に従って第1メタノールチャンバ111にメタノールを補給しても(S402)、適正な補給できなかった場合(S404)に、図8のS105における補給エラーが生じる。なお、かかる補給エラーが生じた後も、図10(a)の回収処理が継続される。
【0142】
補給エラーが生じると、制御部201は、吸引分注機構部41による新たな血液検体の吸引を中断し(S501)、既に吸引済みの検体に対する処理を行う(S502)。制御部201は、位置Mpにカセット20が到達するのを待つ(S503)。カセット20が位置Mpに到達すると(S503:YES)、制御部201は、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置を超えているかを判定する(S504)。
【0143】
ここで、液面が基準位置を超えていると(S504:YES)、制御部201は、第1メタノールチャンバ111からカセット20にメタノールを分注し(S505)、再利用カウンタRkに1を加算する(S507)。他方、液面が基準位置を超えていない場合(S504:NO)、制御部201は、第2メタノールチャンバ112からカセット20にメタノールを分注する(S506)。図13(a)の処理は、第1メタノールチャンバ111に対する補給エラーが契機となっているため、主として、S504における判定はNOとなり、第2メタノールチャンバ112からカセット20にメタノールが分注される。
【0144】
このように、通常、第2メタノールチャンバ112から分注を行い、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置を超えた場合に限り、第1メタノールチャンバ111から分注が行われる。これにより、第2メタノールチャンバ112の使用量を抑制するとともに、第1メタノールチャンバ111があふれることが防止される。
【0145】
図12のS408にて補給エラーが解除されるまで(S507:NO)、吸引分注機構部41により吸引済みの検体に対して、S503〜S507の処理が繰り返される。なお、図13(a)の処理では、S506にて第2メタノールチャンバ112からメタノールが分注されるため、第2メタノールチャンバ112に対しても、図12のS404にて補給エラーが起こり得る。このような場合、第1メタノールチャンバ111と第2メタノールチャンバ112の両方の補給エラーが解除されたときに、図13のS507でYESと判定される。
【0146】
吸引済みの全ての検体に対する処理(メタノールの分注)が終了するまでに(S502:NO)、図12のS408により補給エラーが解除されると(S507:YES)、制御部201は、検体の吸引を再開し(S508)、図8のS106に処理を進める。このとき、再利用カウンタRkが閾値回数R0に到達していれば(S106:YES)、S107に処理が進められ、メタノール交換時の処理が行われる。他方、再利用カウンタRkが閾値回数R0に到達していなければ(S106:NO)、S102に処理が進められ、第1メタノールチャンバ111のメタノールを再利用する処理が再開される。
【0147】
補給エラーが解除されるまでに(S507:NO)、吸引済みの全ての検体に対する処理(メタノールの分注)が終了すると(S502:YES)、制御部201は、補給エラーが解除されるのを待つ(S507)。その後、補給エラーが解除されると(S507:YES)、制御部201は、検体の吸引を再開し(S508)、図8のS106に処理を進める。このとき、再利用カウンタRkが閾値回数R0に到達していれば(S106:YES)、S107に処理が進められ、閾値回数R0に到達していなければ(S106:NO)、S102に処理が進められる。
【0148】
図13(b)は、図8のS111において補給エラーと判定されたときの処理を示す図である。
【0149】
なお、図8のS111における補給エラーは、S108〜S109の処理に伴い第2メタノールチャンバ112のメタノール量が減少したため、図12の補給処理に従って第2メタノールチャンバ112にメタノールを補給する際に生じる。すなわち、図12の補給処理に従って第2メタノールチャンバ112にメタノールを補給しても(S402)、適正な補給ができなかった場合(S404)に、図8のS111における補給エラーが生じる。
【0150】
この他、図8のS111における補給エラーは、図11の交換処理に従って第1メタノールチャンバ111にメタノールを補給しても(S304)、適正に補給できなかった場合(S305)にも生じる。しかし、これら何れの補給エラーが生じた場合も、メタノールの分注処理は、図13(b)の処理に従って同様に行われる。また、何れの補給エラーが生じても、図10(a)の回収処理が継続され、また、回収カウンタCkのカウントが開始されていれば、図11のS302にてカウントが中止されるまで、そのままカウントが継続される。
【0151】
補給エラーが生じると、制御部201は、吸引分注機構部41による新たな血液検体の吸引を中断し(S601)、既に吸引済みの検体に対する処理を行う(S602)。制御
部201は、位置Mpにカセット20が到達するのを待つ(S603)。カセット20が位置Mpに到達すると(S603:YES)、制御部201は、第2メタノールチャンバ112からカセット20にメタノールを分注する(S604)。また、制御部201は、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置を超えているかを判定し(S605)、液面が基準位置を超えていると(S605:YES)、第1メタノールチャンバ111から所定量のメタノールを排出する(S606)。
【0152】
図12のS408または図11のS310にて補給エラーが解除されるまで(S607:NO)、吸引分注機構部41により吸引済みの検体に対して、S603〜S606の処理が繰り返される。
【0153】
吸引済みの全ての検体に対する処理(メタノールの分注)が終了するまでに(S602:NO)、補給エラーが解除されると(S607:YES)、制御部201は、検体の吸引を再開し(S608)、図8のS112に処理を進める。
【0154】
補給エラーが解除されるまでに(S607:NO)、吸引済みの全ての検体に対する処理(メタノールの分注)が終了すると(S602:YES)、制御部201は、補給エラーが解除されるのを待つ(S607)。その後、補給エラーが解除されると(S607:YES)、制御部201は、検体の吸引を再開し(S608)、図8のS112に処理を進める。
【0155】
図12のS408において補給エラーが解除されたことにより、図8のS112の処理に進められた場合に、既に図11の交換処理により第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換が完了していれば(S112:YES)、制御部201は、S101に戻って、メタノール交換後の第1メタノールチャンバ111を用いた分注処理を実行する。他方、未だ第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換が完了していなければ(S112:NO)、制御部201は、S109に進んで、第2メタノールチャンバ112を用いた分注処理を実行する。
【0156】
また、図11のS310において補給エラーが解除されたことにより、図8のS112の処理に進められた場合は、既に図11のS308により第1メタノールチャンバ111に対するメタノールの交換が完了しているため(S112:YES)、制御部201は、S101に戻って、メタノール交換後の第1メタノールチャンバ111を用いた分注処理を実行する。
【0157】
なお、図13(a)処理において、吸引済みの検体に対するメタノールの分注は、主として第2メタノールチャンバ112から行われる。また、図13(b)処理において、吸引済みの検体に対するメタノールの分注は、全て、第2メタノールチャンバ112から行われる。このため、第2メタノールチャンバ112には、補給エラーが生じた場合にも、吸引済みの全ての検体にメタノールを補給可能な量のメタノールが収容されている。すなわち、第2メタノールチャンバ112の基準位置は、補給エラーが生じた場合に、吸引済みの全ての検体にメタノールを補給可能な量を規定するものとなっている。
【0158】
なお、第2メタノールチャンバ112は、このように、補給エラー発生時に吸引分注機構部41によって吸引済みであった全ての検体への分注が可能なメタノールを貯留するため、第2メタノールチャンバ112の基準位置は、第1メタノールチャンバ111の基準位置よりも高く設定されている。これにより、補給エラーが発生した場合でも、吸引済みの全ての検体へのメタノールの分注を確実に完了させることができる。
【0159】
<通常動作時の具体例>
図14は、上記処理の具体例を示す図である。
【0160】
同図(a)のように、メタノールの再利用時には、位置Mpにおいて第1メタノールチャンバ111からカセット20にメタノールが分注され、位置D1pにおいてカセット20から第1メタノールチャンバ111にメタノールが回収される。再利用カウンタRkが閾値回数R0に到達すると、交換時の処理が開始され、同図(b)のように、位置Mpにおいて第2メタノールチャンバ112からカセット20にメタノールが分注され、位置D1pにおいてカセット20から第1メタノールチャンバ111にメタノールが回収される。このとき、位置Mpと位置D1pの間には、最大d1個のカセット20が存在する。この処理は、回収カウンタCkが閾値回数C0に到達するまで繰り返される。その間に、第1メタノールチャンバ111に貯留されたメタノールが基準位置を超えると、同図(c)のように、第1メタノールチャンバ111からメタノールが排出される。
【0161】
その後、回収カウンタCkが閾値回数C0に到達すると、同図(d)のように、第1メタノールチャンバ111からメタノールが排出される。このとき、位置Mpのカセット20には、第2メタノールチャンバ112からメタノールが分注されている。しかる後、同図(e)に示すように、第1メタノールチャンバ111に基準位置までメタノールが補給されると、再利用時の処理に切り替わり、同図(f)のように、第1メタノールチャンバ111を用いた処理となる。
【0162】
<補給エラー時の具体例>
図15は、図8のS103において、補給エラー発生した場合(S105:YES)の具体例を示す図である。
【0163】
同図(a)のように、メタノールの再利用時に、位置Mpにおいて第1メタノールチャンバ111からカセット20にメタノールが分注され、位置D1pにおいてカセット20から第1メタノールチャンバ111にメタノールが回収される。再利用カウンタがRkのときに、第1メタノールチャンバ111にボトル101からメタノールを補給することができず補給エラーが生じると、同図(b)のように、位置Mpにおいて第2メタノールチャンバ112からカセット20にメタノールが分注され、位置D1pにおいてカセット20から第1メタノールチャンバ111にメタノールが回収される。このとき、吸引分注機構部41により吸引済みの検体は、最大d2個存在する。この処理は、吸引済みのd2個の検体の処理が完了するまで、または、補給エラーが解除されるまで繰り返される。その間に、第1メタノールチャンバ111に貯留されたメタノールが基準位置を超えると、同図(c)のように、位置Mpにおいて第1メタノールチャンバ111からカセット20にメタノールが分注される。
【0164】
その後、同図(d)のように、吸引済みのd2個の検体の処理が完了すると、補給エラーが解除されるまで処理が待機される。しかる後、第1メタノールチャンバ111と第2メタノールチャンバ112への補給が完了し、補給エラーが解除されると、同図(e)のように、メタノールの再利用処理が再開される。このとき、再利用カウンタRkは、補給エラー前の再利用カウンタの値(同図(a)のRk)から再開される。しかる後、同図(f)に示すように、第1メタノールチャンバ111を用いた処理が継続される。
【0165】
図16は、図8のS110において、補給エラー発生した場合(S111:YES)の具体例を示す図である。
【0166】
同図(a)のように、再利用カウンタRkが閾値回数R0に到達すると、交換時の処理が開始され、同図(b)のように、位置Mpにおいて第2メタノールチャンバ112からカセット20にメタノールが分注され、位置D1pにおいてカセット20から第1メタノ
ールチャンバ111にメタノールが回収される。回収カウンタCkがCk1のときに、第2メタノールチャンバ112にボトル101からメタノールを補給することができず補給エラーが生じると、引き続き、第2メタノールチャンバ112から位置Mpのカセット20へ分注が行われる。このとき、位置Mpと位置D1pの間にあって、再利用時に第1メタノールチャンバ111から分注されたカセット20は、(d1−Ck1)個存在する。その後、第2メタノールチャンバ112からの分注が継続されている間に、第1メタノールチャンバ111に貯留されたメタノールが基準位置を超えると、同図(c)のように、第1メタノールチャンバ111からメタノールが排出される。なお、この間も、第1メタノールチャンバ111にメタノールが回収され、回収毎に回収カウンタCkがカウントアップされる。
【0167】
その後、同図(d)のように、吸引済みのd2個の検体の処理が完了すると、補給エラーが解除されるまで処理が待機される。しかる後、第2メタノールチャンバ112への補給が完了し、補給エラーが解除されると、回収カウンタCkが閾値回数C0に到達しているため、同図(e)に示すように、第1メタノールチャンバ111からメタノールが排出される。このとき、位置Mpのカセット20には、第2メタノールチャンバ112からメタノールが分注されている。しかる後、同図(f)に示すように、第1メタノールチャンバ111に基準位置までメタノールが補給されると、再利用時の処理に切り替わり、第1メタノールチャンバ111を用いた処理となる。
【0168】
<流路洗浄時の処理>
本実施の形態の塗抹標本作製装置2では、第1混合チャンバ151から分注ピペットD2aの間(第1混合チャンバ151と、バルブv51a、v51bと、ダイアフラムポンプ162と、分注ピペットD2aと、その間の流路)と、第2混合チャンバ152から分注ピペットD3aの間(第2混合チャンバ152と、バルブv52a、v52bと、ダイアフラムポンプ164と、分注ピペットD3aと、その間の流路)と、をメタノールにより洗浄することができる。以下、第2混合チャンバ152から分注ピペットD3aの間の洗浄は、第1混合チャンバ151から分注ピペットD2aの間の洗浄と略同じであるため、ここでは、第1混合チャンバ151から分注ピペットD2aの間の洗浄についてのみ説明する。
【0169】
図17(a)は、第1混合チャンバ151から分注ピペットD2aの間の洗浄時におけるメタノール分注処理を示すフローチャートである。
【0170】
制御部201は、ユーザにより流路洗浄指示画面500の表示指示を受け付けると(S701:YES)、図17(c)に示す流路洗浄指示画面500を表示操作部2a(図1参照)に表示させる(S702)。流路洗浄指示画面500には、流路洗浄開始ボタン501が配されている。
【0171】
次に、制御部201は、ユーザにより流路洗浄開始ボタン501が押下されることにより、流路洗浄指示を受け付けると(S703:YES)、第1混合チャンバ151内の染色液等を廃液チャンバ165に移送し、廃液チャンバ165内の染色液等を排出させる(S704)。続いて、制御部201は、第2メタノールチャンバ112から、第1混合チャンバ151にメタノールを移送する(S705)。
【0172】
続いて、制御部201は、染色処理機構部D2の位置D2pに空のカセット20が位置付けられまで処理を待機させる(S704)。位置D2pに空のカセット20が位置付けられると(S706:YES)、制御部201は、第1混合チャンバ151から、位置D2pにある空のカセット20にメタノールを分注する(S707)。こうして処理が終了する。このように、第2メタノールチャンバ112に貯留されている新しいメタノールが
、第1混合チャンバ151から分注ピペットD2aに流されることにより、この間の流路等に付着している汚れが効果的に洗浄される。
【0173】
図17(b)は、第1混合チャンバ151から分注ピペットD2aの間の洗浄時におけるメタノールの回収処理を示すフローチャートである。
【0174】
制御部201は、染色処理機構部D3の位置D3pに、S705でメタノールを分注された空のカセット20が位置付けられるまで処理を待機させる(S711)。位置D3pに空のカセット20が位置付けられると(S711:YES)、制御部201は、位置D3pにある空のカセット20から、廃液チャンバ165にメタノールを回収し(S712)、廃液チャンバ165内のメタノールを排出させる(S713)。こうして処理が終了する。このように第2メタノールチャンバ112からのメタノールは、第1混合チャンバ151から分注ピペットD2aまでの流路の洗浄に用いられた後、排出される。この場合、位置D3pにおいて回収されたメタノールにより、回収ピペットD3bから回収されたメタノールが排出されるまでの流路(回収ピペットD3bと、バルブv56、廃液チャンバ165と、バルブv55と、その間の流路)も洗浄することができる。
【0175】
なお、第2混合チャンバ152から分注ピペットD3aの間の洗浄が、上記と同様に行われると、位置Wpにおいて回収されたメタノールにより、回収ピペットWbから回収されたメタノールが排出されるまでの流路が洗浄される。
【0176】
以上、本実施の形態によれば、第1メタノールチャンバ111には、ボトル101から新しいメタノールが供給されると共に、回収ピペットD1bを介してメタノールが回収され、第1メタノールチャンバ111のメタノールが再利用される。これにより、メタノールの処理量を軽減することが可能となる。また、第2メタノールチャンバ112には、ボトル101に収容される新しいメタノールのみが供給される。これにより、分注ピペットMaから新しいメタノールを分注することが可能となる。
【0177】
また、本実施の形態によれば、第2メタノールチャンバ112に貯留されている新しいメタノールを、第1混合チャンバ151と第2混合チャンバ152に供給することができる。これにより、第1混合チャンバ151と分注ピペットD2aの間と、第2混合チャンバ152と分注ピペットD3aの間とを、新しいメタノールを用いて効果的に洗浄することが可能となる。
【0178】
また、本実施の形態によれば、補給エラーが発生した場合、第2メタノールチャンバ112からカセット20にメタノールが分注されるため、メタノールの分注処理を継続することが可能となる。
【0179】
また、本実施の形態によれば、補給エラーが発生した場合、吸引分注機構部41による吸引済みであった全ての検体への分注が可能なメタノールが、第2メタノールチャンバ112に貯留されている。これにより、補給エラーが発生した場合でも、吸引済みの検体を無駄にすることがなくなる。
【0180】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0181】
たとえば、上記実施の形態では、1つのカセット20には、1つのスライドガラス10(塗抹標本)が収容されたが、これに限らず、複数のスライドガラス10(塗抹標本)が収容されるようにしても良い。
【0182】
また、上記実施の形態では、染色液としてのメイグリュンワルド液についても、メタノールと同様に再利用することができる。たとえば、図5において、第1染色液チャンバ121のメイグリュンワルド液が、分注ピペットD1aを介して分注され、回収ピペットD2bを介してカセット20から回収したメイグリュンワルド液が、第1染色液チャンバ121に回収されるようにすることができる。また、第1染色液チャンバ121のメイグリュンワルド液が汚れると、適宜、第2染色液チャンバ122の新しいメイグリュンワルド液が使用されるようにすることができる。
【0183】
この場合、ユーザは、メイグリュンワルド液の再利用をやめて、第2染色液チャンバ122のメイグリュンワルド液のみを利用するような運用に容易に変更することができる。すなわち、本実施の形態では、第1染色液チャンバ121と第2染色液チャンバ122が配されているため、再利用に用いていた第1染色液チャンバ121を取り外して洗浄せずとも、容易に、第2染色液チャンバ122のメイグリュンワルド液を用いるように運用を変更できる。
【0184】
また、上記実施の形態では、メタノールの再利用時に、メタノールの再利用の回数(再利用カウンタRk)が、予め決められた回数(閾値回数R0)に到達すると、第1メタノールチャンバ111のメタノールの使用が停止され、交換処理が開始された(図8のS107)。さらに、メタノール再利用時に、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置よりも下になると、液面が基準位置となるように第1メタノールチャンバ111にメタノールが補給された(図12のS402)。しかしながら、これに限らず、メタノールの再利用時に、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置よりも下になっても、メタノールの補給を行わないようにすることもできる。この場合、第1メタノールチャンバ111を交換するための処理は、メタノールの再利用回数(再利用カウンタRk)に応じて実行されるのではなく、第1メタノールチャンバ111の残量に基づいて実行されるようにしても良い。さらに、第1メタノールチャンバ111のメタノールの使用を停止する条件は、メタノールの使用回数に限られない。例えば、第1メタノールチャンバ111内のメタノールの濁度を監視し、再利用を繰り返した結果、メタノールの濁度が一定の値を超えた場合に、使用を停止するようにしてもよい。
【0185】
また、上記実施の形態では、図5に示した流路の接続範囲は、各バルブによって切り替えられたが、これに限らず、たとえば、それぞれの流路にシリンジポンプを設け、駆動するシリンジポンプを切り替えることにより流路の接続範囲が切り替えられるようにしても良い。
【0186】
また、上記実施の形態では、回収ピペットD1bを介してカセット20から回収されたメタノールは、第1メタノールチャンバ111に移送されているが、これに限らず、第1メタノールチャンバ111以外のチャンバに移送しても良い。この場合、かかるチャンバに移送されたメタノールを再利用しても良い。また、回収されたメタノールを、廃液チャンバ165に回収するようにしても良く、塗抹標本作製装置2外に排出するようにしても良い。
【0187】
また、上記実施の形態では、再利用時に補給エラーが発生した場合のメタノール分注処理(図13(a))において、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置より上であると(S504:YES)、第1メタノールチャンバ111からメタノールを分注する(S505)ようにした。しかしながら、S505において、第1メタノールチャンバ111の液面が基準位置となるよう、第1メタノールチャンバ111からバルブv14を介してメタノールを排出するようにしても良い。
【0188】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内におい
て、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0189】
2 … 塗抹標本作製装置(標本作製装置)
20 … カセット(収容体)
41 … 吸引分注機構部(吸引部)
44 … 塗抹機構部(塗抹部)
111 … 第1メタノールチャンバ(第1容器)
112 … 第2メタノールチャンバ(第2容器)
151 … 第1混合チャンバ(第3容器)
152 … 第2混合チャンバ(第3容器)
165 … 廃液チャンバ(第4容器)
113 … 圧力調節器(固定液供給部、固定液回収部、固定液排出部、補給部)
114、115 … 圧力調節器(固定液供給部)
161、163 … 圧力調節器(染色液供給部)
166 … 圧力調節器(染色液回収部、廃液排出部)
116 … ダイアフラムポンプ(固定液供給部)
162、164 … ダイアフラムポンプ(染色液供給部)
201 … 制御部
202 … 記憶部
400 … 閾値回数設定画面(条件受付手段)
Ma … 分注ピペット(固定液供給部)
D1a〜D3a … 分注ピペット(染色液供給部)
D1b … 回収ピペット(固定液回収部)
D3b、Wb … 回収ピペット(染色液回収部)
v11、v12、v14〜v17、v18a、v18b、v19a … バルブ(固定液供給部)
v51a、v51b、v52a、v52b … バルブ(染色液供給部)
v11、v14〜v16 … バルブ(固定液回収部、固定液排出部)
v11〜v16 … バルブ(補給部)
v53〜v56 … バルブ(染色液回収部、廃液排出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容体に収容された標本を固定液を用いて固定し、固定された標本を染色液を用いて染色する標本作製装置であって、
標本を固定するための固定液を貯留する第1容器と、
標本を固定するための固定液を貯留する第2容器と、
染色液を貯留する第3容器と、
前記第1および第2容器に貯留された固定液を、標本を収容した収容体に選択的に供給可能な固定液供給部と、
前記第3容器に貯留された染色液を、標本を収容した収容体に供給可能な染色液供給部と、
収容体に供給された固定液を前記第1容器に回収する固定液回収部と、を備え、
前記固定液供給部は、前記染色液供給部の流路を洗浄するために、前記第2容器に貯留された固定液を当該流路に供給可能に構成される、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の標本作製装置において、
前記第1容器の固定液の利用を制限する制限条件を記憶する記憶部を備え、
前記固定液供給部は、前記第1容器の固定液を繰り返し使用した結果、前記制限条件が満たされると、前記第1容器に代えて前記第2容器の固定液を前記収容体へ供給する、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項3】
請求項2に記載の標本作製装置において、
前記制限条件は、前記第1容器の固定液の使用限度回数を含む、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の標本作製装置において、
前記第1容器の固定液を排出する固定液排出部をさらに備え、
前記固定液排出部は、前記制限条件が満たされると、前記第1容器の固定液を排出する、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項5】
請求項4に記載の標本作製装置において、
固定液を補給する補給部をさらに備え、
前記補給部は、前記固定液排出部が前記第1容器の固定液を排出させた後、前記第1容器に固定液を補給し、
前記固定液供給部は、前記第1容器に対する固定液の補給が終了するまで、前記第2容器から収容体に固定液を供給する、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項6】
請求項5に記載の標本作製装置において、
前記固定液排出部は、前記第1容器から供給された固定液の前記第1容器への回収が終了すると、前記第1容器の固定液を排出し、
前記補給部は、前記第1容器の固定液の排出が終了すると、前記第1容器への補給を開始する、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の標本作製装置において、
前記固定液供給部は、前記第1容器の固定液を複数の収容体に順次供給し、
前記固定液回収部は、収容体に前記第1容器の固定液が供給されてから所定時間経過後
に、その収容体から前記第1容器へ固定液を回収するように構成されており、
前記固定液排出部は、前記固定液供給部による固定液の供給が前記制限条件を満たした場合、その供給が行われてから前記所定時間経過後に前記固定液回収部による前記第1容器への固定液の回収が行われると、前記第1容器の固定液を排出し、
前記補給部は、前記第1容器の固定液の排出が終了すると、前記第1容器への固定液の補給を開始する、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項8】
請求項2ないし7の何れか一項に記載の標本作製装置において、
前記制限条件の入力を受け付けるための条件受付手段を備える、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項9】
請求項5に記載の標本作製装置において、
前記補給部は、前記第1容器の固定液の量が基準量を下回った場合に、前記第1容器に固定液を補給し、
前記固定液供給部は、前記補給部による補給に異常が生じると、前記第1容器に代えて前記第2容器から収容体へ固定液を供給する、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項10】
請求項9に記載の標本作製装置において、
検体を吸引する吸引部と、
前記吸引部が吸引した検体をスライドガラスに塗抹して標本を生成する塗抹部と、をさらに備え、
前記吸引部は、前記補給部による補給に異常が生じると、検体の吸引を停止し、
前記補給部は、前記吸引部により吸引済みであり、且つ、固定液が供給されていない全ての標本の固定を行うために必要な量の固定液を、前記第2容器に貯留させる、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の標本作製装置において、
前記固定液供給部は、固定液を収容体に吐出する吐出部と、前記吐出部と前記第1容器とを接続する第1流路と、前記吐出部と前記第2容器とを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを切り替える切替部と、前記吐出部に向かって固定液が移動するように移動力を生成する移動力生成部と、を備える、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の標本作製装置において、
前記染色液供給部の流路を洗浄するために供給された固定液は、前記第1および第2容器に戻されることなく排出される、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項13】
請求項12に記載の標本作製装置において、
廃液を貯留する第4容器と、
収容体に供給された染色液を前記第4容器に回収可能な染色液回収部と、
前記第4容器に貯留された廃液を排出する廃液排出部と、をさらに備え、
前記染色液供給部は、洗浄のために供給された固定液を、標本を収容していない収容体に供給し、
前記染色液回収部は、収容体に供給された固定液を前記第4容器に回収し、
前記廃液排出部は、前記第4容器に貯留された固定液を廃液として排出する、
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項14】
収容体に収容された標本を固定液を用いて固定し、固定された標本を染色液を用いて染色する標本作製装置であって、
標本を固定するための固定液を貯留する第1容器と、
標本を固定するための固定液を貯留する第2容器と、
前記第1および第2容器に貯留された固定液を、標本を収容した収容体に選択的に供給可能な固定液供給部と、
収容体に供給された固定液を前記第1容器に回収する固定液回収部と、
固定液を排出する固定液排出部と、
固定液を補給する補給部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1容器から収容体に固定液を供給し、その収容体から前記第1容器に固定液を回収するよう前記固定液供給部および前記固定液回収部を制御する第1制御を複数の収容体に対して実行し、
所定数の収容体に対して前記第1制御が完了すると、前記第1容器から固定液を排出したのち前記第1容器へ固定液を補給するよう前記固定液排出部および前記補給部を制御する第2制御を実行し、
前記第2制御を実行している間、前記第2容器から収容体へ固定液を供給するよう前記固定液供給部を制御する第3制御を実行する、
ことを特徴とする標本作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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