説明

標本採取チューブ及びそれを備える内視鏡装置

【課題】標本が湧出する場所において、効率良く標本を採取することが可能な標本採取チューブ及び内視鏡装置を提供する。
【解決手段】
内視鏡装置の鉗子チャネル内に挿通され、対象物から標本を採取するための標本採取チューブであって、チューブ本体部と、前記チューブ本体部の先端部分に設けられ、前記対象物側の端部の内径が変化するように開閉可能に構成される開閉部と、を備え、前記開閉部は、開いた状態において前記チューブ本体部の外径より大きい内径を有することを特徴とする当該標本採取チューブを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内視鏡装置の鉗子チャネルを通じて、体内中の標本を採取する標本採取チューブ及びそれを備える内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から体内の診断において、胃液や腸液などの体内分泌物を標本として採取し、その組成やpH、細菌の有無を検査することで、臓器の状態や疾病の判断を行う方法はよく知られている。
【0003】
例えば、膵臓癌、胆道癌、肝臓癌の発見に関して、膵液や胆汁またはそれらが混じった十二指腸液に含まれる腫瘍マーカー量を検出することによって膵臓、胆道、肝臓にできた癌の早期診断を行うことができる。この十二指腸液は、十二指腸中程の壁面にある山状の部分である乳頭部の表面の開口部から膵管、胆管を通った膵液、胆汁が混じりあい湧出している液体であることが知られている。
【0004】
十二指腸液の採取方法としては、特許文献1に記載されるゾンデと呼ばれる採取具を用いた方法がある。ゾンデは、中空になった棒状の器具であり、側面に吸引穴を複数有し、この吸引穴から外部標本の吸引を行う採取具である。
【0005】
このゾンデは、内視鏡装置による観察下、もしくはX線による透視下などにおいて、十二指腸付近に留置され、ゾンデ側面の吸引穴から十二指腸液を吸い取ることで標本採取が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−071070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるゾンデのような装置を標本採取に使う場合、次のような問題が発生する。
例えば、十二指腸のように標本が湧出するような場所でゾンデによる採取を行った場合、吸引穴が単なる孔になっているため、乳頭部表面の開口部である対象物を覆いきれない。結果として十二指腸液の採取に際して、液の採取漏れ(十二指腸液を吸引穴へ導入できないこと)が多く発生してしまうため、標本の採取効率が悪いという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、標本が湧出する場所において、効率良く標本を採取することが可能な標本採取チューブ及び内視鏡装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の標本採取チューブは、内視鏡装置の鉗子チャネル内に挿通され、対象物から標本を採取するための標本採取チューブであって、チューブ本体部と、チューブ本体部の先端部分に設けられ、対象物側の端部の内径が変化するように開閉可能に構成される開閉部と、を備え、開閉部は、開いた状態においてチューブ本体部の外径より大きい内径を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、開閉部は、閉じた状態における内径がチューブ本体部の外径以下の大きさとなるように形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、チューブ本体部は、第1チューブと、第1チューブに内包された第2チューブと、を備え、開閉部は、第1チューブの先端部に接続されていることを特徴とすることが好ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、チューブ本体部の先端部に対向する後端部に設けられ、吸引を行う吸引部を備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、チューブ本体部の後端部に設けられ、開閉部と対象物とにより形成される内部空間に液体成分を供給する注水部を備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、開閉部の内径の大きさを操作する操作手段を備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、開閉部の端面に端面の円周方向に延びる溝が形成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、第1チューブ及び前記開閉部の内部を連通しその両端が開口した穴を有し、前記開閉部の端面が穴の一方の開口を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、開閉部の端面に開口した穴に吸引力を付与するための吸引機構を備えることが好ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、開閉部の端面に、少なくとも1つの一端のみが開口された穴を有するとともに、前記開閉部の内側面にヒーターを設けることが好ましい。
【0019】
また、本発明の好ましい態様によれば、末端になるに従い内径が拡がる筒状の形状を有し、開閉部の内側に保水性部材が設けられていることが好ましい。
【0020】
また、本発明の好ましい態様によれば、保水性部材は、ろ紙または筆であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の内視鏡装置は、上述の標本採取チューブと、
前記標本採取チューブを挿通可能な鉗子チャネルを有する挿入部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる標本採取チューブ及び内視鏡装置は、標本が湧出する場所において、開閉部を対象物よりも末端の内径が大きい、開いた状態にして対象物を覆うので、標本が開閉部の外に漏れることなく効率良く標本を採取することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】医療用内視鏡装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施例1の医療用標本採取チューブの先端部の斜視構成を示す図である。
【図3】(a)は、開いた状態の開閉部の斜視構成を示す図であり、(b)は、閉じた状態の開閉部の斜視構成を示す図である。
【図4】十二指腸の乳頭部に当接した状態の開閉部の断面構成を示す図である。
【図5】非吸引状態にある実施例1の変形例3の医療用標本採取チューブの先端部の斜視構成を示す図であり、(b)は、吸引状態にある変形例3の医療用標本採取チューブの先端部の斜視構成を示す図である。
【図6】実施例1の変形例4の医療用標本採取チューブの先端部の斜視構成を示す図である。
【図7】(a)は、実施例2の開閉部の正面構成を示す図であり、(b)は図7(a)の線VII―VIIに沿った断面構成を示す図である。
【図8】(a)は、実施例2の変形例1の開閉部の正面構成を示す図であり、(b)は図8(a)の線VIII―VIIIに沿った開閉部の断面構成を示す図であり、(c)は、開閉部の図8(a)の線VIII―VIIIに沿った開閉部の体内壁に吸着した状態の断面構成を示す図である。
【図9】(a)は、実施例2の変形例2の開閉部の正面構成を示す図であり、(b)は図8(a)の線IX−IXに沿った開閉部の断面構成を示す図である。
【図10】実施例3の開閉部の斜視構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる標本採取チューブ及び内視鏡装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
まず、後述する実施例である医療用標本採取チューブ1が用いられる医療用内視鏡装置10について図1を参照しつつ説明する。図1は、医療用内視鏡装置10の概略構成を示す図である。
【0025】
医療用内視鏡装置10は、内視鏡本体100と装置本体200と、を備えている。内視鏡本体100は、スコープ部100aと、接続コード部100bと、を備えている。また、装置本体200は、電源装置と、内視鏡本体100からの映像信号を処理するビデオプロセッサ(不図示)と、ビデオプロセッサからの映像信号をモニタ表示する表示ユニット204と、を備えている。
【0026】
スコープ部100aは、操作部140と挿入部141に大別される。挿入部141は、細長で生体の体腔内へ挿入可能な可撓性を有する部材で構成されている。挿入部141内には、操作部140側から内視鏡先端部141aまで鉗子チャネル(内視鏡挿通チャネル)(不図示)と呼ばれる細孔が形成されている。後述する医療用標本採取チューブ1は、鉗子チャネルに挿通され、先端部141aから突出可能である。使用者(不図示)は、操作部140に設けられているアングルノブ等により、医療用標本採取チューブ1の諸操作を行うことができる。
【0027】
また、操作部140からは、接続コード部100bが延設されている。接続コード部100bは、ユニバーサルコード150を備えている。ユニバーサルコード150は、コネクタ250を介して生体外装置200に接続されている。
【0028】
また、ユニバーサルコード150は、電源装置やビデオプロセッサからの電源電圧信号及びCCD駆動信号等をスコープ部100aに通信すると共に、スコープ部100aの撮像部(不図示)からの映像信号をビデオプロセッサに通信する。なお、生体外装置200内のビデオプロセッサには、図示しないVTRデッキ、ビデオプリンタ等の周辺機器を接続可能である。ビデオプロセッサは、スコープ部100aの撮像部からの映像信号に対して所定の信号処理を施して、表示ユニット204の表示画面上に内視鏡画像を表示できる。また、スコープ部100a内には、撮像部の撮像範囲を照明するための照明部(不図示)が設けられている。
【実施例1】
【0029】
<構成>
実施例1に係る医療用標本採取チューブ1について図2〜図4を参照しつつ説明する。図2は、本発明に係る実施例1の医療用標本採取チューブ1の先端部の斜視構成を示す図である。図3(a)は、開いた状態の開閉部4の斜視構成を示す図である。図3(b)は、閉じた状態の開閉部4の斜視構成を示す図である。図4は、十二指腸の乳頭部Tに当接した状態の開閉部4の断面構成を示す図である。
【0030】
また、実施例1の医療用標本採取チューブ1は、挿入部141の鉗子チャネルに挿通される、第1可撓性チューブ2とそれに内包される第2可撓性チューブ3とから構成されるチューブ本体部と、第1可撓性チューブ2の先端部2a(チューブ本体部の先端部)に設けられ、対象物側の端部である末端4aの内径が変化するように開閉可能に構成された開閉部4と、第2可撓性チューブ3の先端部3aと開閉部4の末端4aとをつなぐワイヤ5と、で構成されている。
【0031】
開閉部4は、対象物である十二指腸の乳頭部Tを覆う大きさを有し、弾力性を有する材料から形成されている。ここで、十二指腸乳頭部Tの大きさは、鉗子チャネルの径より大きく、開いた状態の開閉部4の末端4a内径より小さいという関係を有しているとする。また、実施例1において開いた状態の開閉部4の形状は筒状となっており、より詳しくはラッパ形状(テーパに広がる筒の形状)となっている。
【0032】
ここで、ワイヤ5は少なくとも3本以上で構成されることが好ましい。これにより安定した動作を行うことができる。
開閉部4は、操作部140を操作することにより、第2可撓性チューブ3の押し引きを行う。この時、操作手段であるワイヤ5を通して押し引きの力が開閉部4の末端4aに伝わるため、第2可撓性チューブ3は開閉部4の開閉操作が可能となっている。本実施例の場合、第2可撓性チューブ3が押されると開閉部4が開いた状態(図3(a)参照)になり、第2可撓性チューブ3が引っ張られると開閉部4が閉じた状態(図3(b)参照)になる。本実施例では、開閉部4の閉じた状態、開いた状態間の操作をワイヤ5を通して行っているが、開閉部4の開閉操作が可能な機構であればどのような機構であっても良い。
【0033】
また、開閉部4の外径の大きさは、第2可撓性チューブ3の開閉部4に対する相対位置を変えることで調整される。このため、対象物の大きさに対応して開口部4の外径の大きさを、操作部140により操作手段を介して調整できる。従って、対象物の大きさが異なる場合にも柔軟に対応できる。また、ここで、開いた状態の開閉部4の末端4aの外径は、鉗子チャネルの内径よりも大きい。さらに、閉じた状態の開閉部4の外径の大きさは、第1可撓性チューブ2の先端部2aの外径より小さいか、または等しいように形成されている。
【0034】
<標本の採取手順>
前述の医療用標本採取チューブを用いて標本を採取する手順について説明する。
(1)内視鏡本体100のスコープ部100aを被検者の口内へ導入する。表示ユニット204を用いて図示されない内視鏡光学系による観察画像で内視鏡先端部141aの位置を確認しながら、十二指腸乳頭部Tが観察できる位置まで内視鏡先端部141aが、誘導される。
【0035】
(2)内視鏡本体100の内視鏡先端部141aの内部に設けられた処置具挿通チャネルに医療用標本採取チューブ1が挿通されている。この医療用標本採取チューブ1の開閉部4を、十二指腸乳頭部T近傍へ誘導する。この際、開閉部4は閉じた状態である(図3(b)参照。)。
【0036】
(3)第2可撓性チューブ3を開閉部4の末端4a側へ押し出し、開閉部4を開いた状態(図3(b)参照。)にする。そして、表示ユニット204を用いて内視鏡光学系による観察画像で内視鏡先端部141aの位置を確認しながら、開閉部4が十二指腸乳頭部Tを覆うように接触させる(図4参照。)。この時、末端4aの端面は体内壁43と当接している。
【0037】
(4)第2可撓性チューブ3は、中空に構成されている。また、第2可撓性チューブ3の手元(操作部140)側の末端は、注水部101と接続されている。そして、第2可撓性チューブ3の手元側から開閉部4側に向かって、第2可撓性チューブ3内へ注水部101により水を送る。この水は、第2可撓性チューブ3の先端から十二指腸乳頭部Tに向かって流れ出る。
【0038】
開閉部4と体内壁43とにより形成される内部空間S内に水と標本である十二指腸液が混じった液体を溜めていく。第2可撓性チューブ3の先端部3aがこの液体に浸るくらいまで開閉部4内に液体が溜まったら、送水を停止し、液体の採取を行う。このとき、第2可撓性チューブ3の手元側の末端は吸引部102と接続されているため、吸引部102からの吸引により、第2可撓性チューブ3は、水と十二指腸液が混じった液体を吸引し、採取することができる。
【0039】
(5)その後、第2可撓性チューブ3を引っ張ることで開閉部4を閉じた状態にする。このように開閉部4を閉じた状態にすることで、壁面に標本が付着している場合においても、標本が、開閉部4内から標本が落ちることなく保持される。これにより、壁面に付着した標本は開閉部4から漏れることなく回収される。
【0040】
内視鏡挿通チャネルから医療用標本採取チューブ1を抜き取り、標本を採取する。
【0041】
本実施例によれば、標本である十二指腸液が湧出する場所において、開閉部4を対象物よりも末端の内径が大きい、開いた状態にして対象物を覆うので、医療用標本採取チューブ1は、標本を開閉部の外に漏らすことなく効率良く標本を採取することができる。これは他の実施例においても同様である。
【0042】
また、内部空間Sの容量に対して標本の量が少ない場合であっても、手順(4)のように、水を供給することにより、標本と水とが混ざった液体で内部空間Sを満たし吸引することで、医療用標本採取チューブ1は、標本を的確に採取することができる。また、本実施例では内部空間Sに供給する液体として水を用いたが、この液体は水に限られるものではなく、例えば標本を分析するためのマーカーを含んだ液体や、生理食塩水等のバッファーであっても良い。
【0043】
(実施例1の変形例1)
実施例1において、医療用標本採取チューブ1は、注水部101から第2可撓性チューブ3を通して水を内部空間S内に溜めた後、水と十二指腸液が混じった液体を吸引部102により吸引することで十二指腸液の採取を行っている。これに限られず、内部空間S内に水を送り続けることで第1可撓性チューブ2の内周面と第2可撓性チューブ3の外周面との間の空間を伝わって流れていく液体を採取しても良い。この場合、吸引を行わずに液体を採取することができる。
【0044】
(実施例1の変形例2)
実施例1において、内部空間S内に水を溜めた後、吸引することで十二指腸液の採取を行ったが、変形例2では、医療用標本採取チューブ1は、水を送り込むことをせず、代わりに開閉部4(内部空間S)内に溜まった十二指腸液を第2可撓性チューブ3を通して吸引部102により吸引することで直接的に十二指腸液を採取する。
【0045】
(実施例1の変形例3)
以下に、実施例1の変形例3について、図5を参照して説明する。図5(a)は、非吸引状態にある実施例1の変形例3の医療用標本採取チューブ1の先端部の斜視構成を示している。また、図5(b)は、吸引状態にある変形例3の医療用標本採取チューブ1の先端部の斜視構成を示している。
【0046】
変形例3は、第1可撓性チューブ2から構成されるチューブ本体部と、第1可撓性チューブ2の先端部2a(チューブ本体部の先端部)に設けられた開閉可能な開閉部4と、を備えている。また、実施例1と同様に、開閉部4は弾力性のある材料で構成されている。そして、実施例1で用いた中空管である第2可撓性チューブ3の代わりに棒(中実)状である可撓性棒部材33を備える。この可撓性棒部材33の先端部33aは、開閉部4の末端4aとをつなぐワイヤ5を備えており、実施例1と同様にワイヤ5の押し引きにより開閉部4の操作を行う。
また、本変形例では、吸引部102が、第2可撓性チューブ3ではなく、第1可撓性チューブ2(可撓性チューブ2)の手元側の末端と接続されている。
変形例3の標本の採取手順は、実施例1と同様に上述した(1)〜(3)の手順を行う。そして、(3)の手順後に可撓性チューブ2の手元側から吸引部102により可撓性チューブ2を通して吸引を行うことで、開閉部4の内部空間Sの体積が、減少する(図5(b)参照。)。
【0047】
これにより、開閉部4の体積変化分の吸引効果が生じる。吸引力によって標本である十二指腸液が、可撓性チューブ2の内周面2aと可撓性棒部材33の外周面3aとの間の空間内へ図5(b)の矢印方向に吸引される。そして、十二指腸液は、可撓性チューブ2の内周面2a、もしくは可撓性棒部材33の外周面3aに付着する。その後、医療用標本採取チューブ1は、挿入部141から引き抜かれ標本が回収される。
【0048】
(実施例1の変形例4)
実施例1の変形例4について、図6を参照しつつ説明する。図6は、実施例1の変形例4の医療用標本採取チューブ1の先端部の斜視構成を示す図である。
実施例1では、第2可撓性チューブ3を押し引きしてその力をワイヤ5により開閉部4の末端4aに伝えることが、開閉部4の開閉状態を制御している。これに対して、変形例4では、開閉部4に装着されたワイヤ51が持つバネ性が、開閉状態を制御している。なお、説明を簡単にするため、図6において、第2可撓性チューブ3の図示を省略する。
【0049】
ワイヤ51は、開閉部4の側面4cに沿うようにして装着されている。ワイヤ51に対して負荷が掛かっていない状態では、ワイヤ51は、開閉部4の末端4aから後端4dに向かい、開閉部4の外径が漸減するような形状を呈している。この負荷が掛かっていない状態の開閉部は、開いた状態となっている。
【0050】
ワイヤ51の一端部は、第1可撓性チューブ2に接続されている。開閉部4が内視鏡先端部141a(図1参照。)内に配置されているときは、開閉部4は、ワイヤ51の弾性力に抗して閉じた状態である。そして、開閉部4が内視鏡先端部141aから突出すると、開閉部4は、ワイヤ51の弾性力により開いた展開した状態になる。
【0051】
内視鏡挿通チャネル内へ医療用標本採取チューブ1を挿通する。この時、ワイヤ51のバネ性に抗するように開閉部4に力を加えて、開閉部4を閉じた状態にしてから、医療用標本採取チューブ1を、内視鏡挿通チャネルの入口へ挿通させる。挿通チャネル内では内視鏡挿通チャネルの内壁からの力によって、開閉部4は、閉じた状態を保っている。これに対して、開閉部4が、内視鏡先端部141aから内視鏡挿通チャネル外へ出ると、ワイヤ51のバネ性によって自己的に開いた状態になる。
【0052】
開いた状態にした後は、実施例1や変形例1〜2と同様の手順により、第2可撓性チューブ3によって十二指腸液を採取する。
【0053】
医療用標本採取チューブ1を回収する際は、開閉部4が内視鏡挿通チャネルの内壁によって閉じる方向に力が加わり、開閉部4が閉じた状態になる。
【0054】
また、上記変形例1〜4は、十二指腸液を吸引する手順は、実施例1と同様である。さらに、変形例1、2、4は、第2可撓性チューブ3を第1可撓性チューブ2内に挿通させる構成である。
【0055】
(実施例1の変形例5)
変形例5の医療用標本採取チューブ1は、開閉部4を開いた状態にさせるバネ性を持った変形例4のワイヤ51の代わりに、形状記憶合金から構成されるワイヤを備える構成である。本変形例では、電流によって生じるジュール熱により開閉部4の開閉状態は制御される。変形例5のその他の構成及び効果は、変形例4と同じである。
【実施例2】
【0056】
実施例2に係る医療用標本採取チューブ1について図7を参照しつつ説明する。図7(a)は、実施例2の開閉部4の正面構成を示す図である。図7(b)は図7(a)の線V
II―VIIに沿った断面構成を示す図である。
【0057】
上述した実施例1では、医療用標本採取チューブ1の開閉部4を、対象物である十二指腸乳頭部T近傍の体内壁43に接触させることにより開閉部4内の内部空間Sの密封性を確保している。これに対して、実施例2は、体内壁43に対する密封性をさらに向上できる開閉部4を備える医療用標本採取チューブ1である。
【0058】
医療用標本採取チューブ1の開閉部4は、その体内壁43との接触部分4aである開閉部4の対象物側の端面に円周方向に延びる溝41を有する構造である。接触部分4aを十二指腸乳頭部T近傍の体内壁43に接触させ、力を加えると、体内壁43が盛り上がり溝41に食い込む。これにより、開閉部4と体内壁43とにより形成される内部空間Sの密封性を高めることができる。実施例2の医療用標本採取チューブ1のその他の構成、効果、及び標本の採取手順は実施例1と同じである。
【0059】
(実施例2の変形例1)
実施例2の変形例1に係る医療用標本採取チューブ1について図8を参照しつつ説明する。図8(a)は、実施例2の変形例1の開閉部4の正面構成を示す図である。図8(b)は図8(a)の線VIII―VIIIに沿った開閉部4の断面構成を示す図である。図8(c)は、開閉部4の図8(a)の線VIII―VIIIに沿った開閉部4の体内壁43に吸着した状態の断面構成を示す図である。
【0060】
変形例1の医療用標本採取チューブ1は、実施例1における医療用標本採取チューブ1の第1可撓性チューブ2及び開閉部4に対して、その長手方向に貫通し連通する吸引用の穴6を設けた構成である。この穴6は、両端が開口しており、一方は、開閉部4の端面である接触部4aに開口している。また、もう一方の開口は、第1可撓性チューブ2を貫通して吸引部102と接続されている。
【0061】
穴6は、第1可撓性チューブ2及び開閉部4の円周方向に複数設けられている。また、本変形例1の標本の採取手順は、実施例1と同様に(1)〜(3)の手順を行う。(3)の手順の後に、吸引部102により、穴6を通して吸引を行う。これにより、開閉部4の接触部4aを体内壁43に吸い付かせる工程を行う。
この工程により、開閉部4と体内壁43とにより形成される内部空間Sの密封性を向上させることができる。内部空間Sを密封した後は、実施例1及びその変形例と同様に、吸引力等により標本を吸引する。
【0062】
(実施例2の変形例2)
実施例2の変形例2に係る医療用標本採取チューブ1について図9を参照しつつ説明する。図9(a)は、実施例2の変形例2の開閉部4の正面構成を示す図である。図9(b)は図9(a)の線IX−IXに沿った開閉部4の断面構成を示す図である。
【0063】
実施例2の変形例2は、実施例1における医療用標本採取チューブ1の開閉部4の接触部4aに、一方のみが開口する穴6aを開けた構成である。穴6aは、接触部4aの円周方向に複数離間して設けられている。
【0064】
開閉部4の内側面4bには、ヒーター7が、複数設けられている。また、変形例1の標本の採取手順は、実施例1と同様に(1)、(2)の手順を行う。(3)の手順前にヒーター7によって開閉部4を暖めて、穴6a内の圧力を高めておく。その後、ヒーター7をOFFにする。ここで、開閉部4を十二指腸乳頭部T近傍に接触させる(3)の手順を行う。開閉部4の温度が下がっていくと、穴6aは密閉空間になっているため、穴6a内部の圧力は下がる。これにより、接触部分4aが、体内壁43に吸い付く。このように、開閉部4を暖める工程を行うことにより、開閉部4と体内壁43とにより、形成される内部空間Sの密封性が、向上する。内部空間Sを密封した後は、実施例1及びその変形例と同様に、吸引力等により標本を吸引する。
【実施例3】
【0065】
実施例3に係る医療用標本採取チューブ1について、図10を参照しつつ説明する。図10は、実施例3の開閉部4の斜視構成を示す図である。
実施例3は、吸引することで十二指腸液を採取する実施例1、2と異なり、吸水、保水部材によって十二指腸液を採取する医療用標本採取チューブ1である。
【0066】
実施例3は、実施例1における医療用標本採取チューブ1の開閉部4の内側面4bに吸水性部材8を設けた医療用標本採取チューブ1である。また、実施例3の標本の採取手順は、実施例1と同様に(1)〜(3)の手順を行う。
【0067】
その後に、開閉部4を、十二指腸乳頭部T近傍の体内壁(図4の符号43)に接触させた状態で一定時間待機させる。これにより、吸水部材8に十二指腸液を、吸水させる。採取する吸水部材としては、ろ紙、毛を束ねた筆のように保水性が高いものなどを用いる。実施例3は、吸水部材を用いるので、液体を吸引する実施例1、2ほどには、開閉部4と体内壁との間の密封性が要求されない。そのため、実施例3においては開閉部が、空気を挿通できる材料により形成されていても良く、また側面4cにおいて空気を挿通可能とする穴を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、標本が湧出する場所において、効率良く標本を採取することが可能な標本採取チューブに有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 医療用標本採取チューブ
2 第1可撓性チューブ(可撓性チューブ)
3 第2可撓性チューブ
3a先端部
4 開閉部
4a接触部分
4b内側面
4c後端
4d末端
5、51 ワイヤ
6 穴
6a 穴
7 ヒーター
8 吸水性部材
33 可撓性棒部材
41 溝
43 体内壁
101 注水部
102 吸引部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡装置の鉗子チャネル内に挿通され、対象物から標本を採取するための標本採取チューブであって、
チューブ本体部と、
前記第1チューブの先端部分に設けられ、前記対象物側の端部の内径が変化するように開閉可能に構成される開閉部と、を備え、
前期開閉部は、開いた状態において前記チューブ本体側の外径より大きい内径を有することを特徴とする標本採取チューブ。
【請求項2】
前記開閉部は、閉じた状態における内径が前記チューブ本体部の外径以下の大きさとなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の標本採取チューブ。
【請求項3】
前記チューブ本体部は、第1チューブと、前記第1チューブに内包された第2チューブと、を備え、
前記開閉部は、前記第1チューブの先端部に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の標本採取チューブ。
【請求項4】
前記チューブ本体部の前記先端部に対向する後端部に設けられ、吸引を行う吸引部を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の標本採取チューブ。
【請求項5】
前記チューブ本体部の後端部に設けられ、前記開閉部と前記対象物とにより形成される内部空間に液体成分を供給する注水部を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の標本採取チューブ。
【請求項6】
前記開閉部の内径の径の大きさを操作する操作手段を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の標本採取チューブ。
【請求項7】
前記開閉部の端面に端面の円周方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の標本採取チューブ。
【請求項8】
前記第1チューブ及び前記開閉部の内部を連通しその両端が開口した穴を有し、前記開閉部の端面が穴の一方の開口を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の標本採取チューブ。
【請求項9】
前記第1チューブ及び前記開閉部の内部を連通しその両端が開口した穴を有し、前記開閉部の端面が穴の一方の開口を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のチューブ。
【請求項10】
前記開閉部の端面に開口した穴に吸引力を付与するための吸引機構を備えることを特徴とする請求項9に記載の標本採取チューブ。
【請求項11】
前記開閉部の端面に、少なくとも1つの一端のみ開口された穴を有するとともに、前記開閉部の内側面にヒーターを設けることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のチューブ。
【請求項12】
前記開閉部は、末端になるに従い内径が拡がる筒状の形状を有し、前記開閉部の内側には保水性部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の標本採取チューブ。
【請求項13】
前記保水性部材は、ろ紙または筆であることを特徴とする請求項12に記載の標本採取チューブ。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項に記載の標本採取チューブと、
前記標本採取チューブを挿通可能な鉗子チャネルを有する挿入部と、
を備えることを特徴とする内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−5009(P2011−5009A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152068(P2009−152068)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】