説明

標的免疫調節抗体および融合タンパク質に基づく組成物および方法

本発明は、標的免疫調節抗体および融合タンパク質が癌細胞の免疫寛容に対抗するまたは免疫寛容を逆転させることができるという将来性ある発見に基づく。癌細胞は、腫瘍微小環境における特定の免疫抑制機構を介して化学療法剤または腫瘍標的抗体による排除から逃れることができ、このような癌細胞の能力は免疫寛容として認識されている。そのような免疫抑制機構には、免疫抑制サイトカイン(例えば、形質転換成長因子ベータ(TGF-β))および制御性T細胞ならびに/または免疫抑制性骨髄樹状細胞(DC))が含まれる。腫瘍誘導性の免疫寛容に対抗することにより、本発明は、任意に別の既存の癌処置と併用する、癌処置に有効な組成物および方法を提供する。本発明は、耐性または播種性癌細胞に対するT細胞媒介性の適応抗腫瘍免疫を活性化および梃入れすることにより腫瘍誘導性の免疫寛容に対抗し、化学療法の抗腫瘍効果を増強する戦略を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、癌療法のための標的免疫調節抗体および融合タンパク質の分野、より詳細には、癌細胞の免疫寛容に対抗(counteract)または誘導する標的免疫刺激または免疫抑制抗体および融合タンパク質に基づく組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
免疫系は、微生物および異質または潜在的有害物質を認識しそしてそれから身を守る手段をヒトの体に提供する。モノクローナル抗体を用いる癌の受動免疫療法および腫瘍細胞を攻撃するT細胞の受動移行は臨床的に有効であることが実証されているが、これらの免疫エフェクターを誘導し腫瘍細胞に対する免疫記憶を確立するワクチン接種能動療法という目標は依然として達成困難である。いくつかの腫瘍特異的および腫瘍関連抗原が同定されているが、これらの抗原は一般に免疫原性が弱く、かつ、腫瘍は、免疫学的攻撃から自身を逃す寛容環境を形成するのに様々な機構を利用している。このような免疫寛容を克服する戦略ならびに強固なレベルの抗体および/またはT細胞応答の活性化は、有効な癌免疫療法の鍵を握るものである。
【発明の概要】
【0003】
発明の要旨
本発明は、標的免疫調節抗体および融合タンパク質が癌細胞の免疫寛容に対抗するまたは逆転(reverse)させることができるという将来性ある発見に基づく。癌細胞は、腫瘍微小環境における特定の免疫抑制機構を介して化学療法剤または腫瘍標的抗体による排除から逃れることができ、そのような癌細胞の能力は免疫寛容として認識されている。そのような免疫抑制機構には、免疫抑制サイトカイン(例えば、形質転換成長因子ベータ(TGF-β))および制御性T細胞ならびに/または免疫抑制性骨髄樹状細胞(DC))が含まれる。腫瘍により誘導される免疫寛容に対抗することにより、本発明は、癌処置に有効な組成物および方法を、必要に応じて別の既存の癌処置との併用で、提供する。本発明は、耐性または播種性癌細胞に対するT細胞媒介性の適応抗腫瘍免疫を活性化および梃入れ(leverage)することにより腫瘍により誘導される免疫寛容に対抗し、化学療法の抗腫瘍効果を増強する戦略を提供する。
【0004】
1つの態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子を提供する。標的部分は標的分子に特異的に結合し、免疫調節部分は以下の分子の1つに特異的に結合する:(i)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);(ii)プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2);(iii)核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL);(iv)形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR);(v)プログラム死1(PD-1);および(vi)核因子κB受容体活性化因子(RANK)。
【0005】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍細胞、腫瘍抗原、腫瘍血管系、腫瘍微小環境または腫瘍浸潤性免疫細胞の成分に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFvまたはFc含有ポリペプチドを含む。1つの局面において、標的部分は、上皮成長因子受容体(EGFR1、Erb-B1)、HER2/neu(Erb-B2)、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子受容体(IGF-1R)、TRAIL受容体、上皮細胞接着分子、癌胎児性抗原、前立腺特異的膜抗原、Mucin-1、CD30、CD33またはCD40に特異的に結合する。
【0006】
1つの局面において、標的部分は、制御性T細胞、骨髄サプレッサー細胞または樹状細胞の成分に特異的に結合する。別の局面において、標的部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:(i)CD4;(ii)CD25(IL-2α受容体;IL-2αR);(iii)細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4;CD152);(iv)インターロイキン10(IL-10);(v)形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR);(vi)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);(vii)プログラム死1(PD-1);(viii)プログラム死1リガンド(PD-L1もしくはPD-L2);(ix)核因子κB受容体活性化因子(RANK);または(x)核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL)。
【0007】
1つの局面において、免疫調節部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:(i)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);(ii)プログラム死1リガンド(PD-L1もしくはPD-L2);または(iii)核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL)。
【0008】
1つの局面において、免疫調節部分は、TGF-βに結合する分子を含む。別の局面において、免疫調節部分は、形質転換成長因子ベータ受容体TGF-βRII、TGF-βRIIbまたはTGF-βRIIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、免疫調節部分は、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、TGF-βの活性または機能を阻害する。
【0009】
1つの局面において、標的部分は、HER2/neu、EGFR1、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に対応するアミノ酸配列を含む。
【0010】
1つの局面において、標的部分は、プログラム死1(PD-1)、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。別の局面において、標的部分は、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメイン(ectodomain)を含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、PD-1外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびTGFβRII外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 11または12に対応するアミノ酸配列を含む。
【0011】
1つの局面において、標的部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)または核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。別の局面において、標的部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、RANK外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびTGFβRII外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 13または14に対応するアミノ酸配列を含む。
【0012】
1つの局面において、免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)に特異的に結合する分子を含む。別の局面において、免疫調節部分は、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)の活性または機能を阻害する。
【0013】
1つの局面において、標的部分は、HER2/neu、EGFR1、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 15、16、17、18、19、20、21、22、23または24に対応するアミノ酸配列を含む。
【0014】
1つの局面において、標的部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)または核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。別の局面において、標的部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、RANK外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびPD-1外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 25または26に対応するアミノ酸配列を含む。
【0015】
1つの局面において、免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する分子を含む。別の局面において、免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)の活性または機能を阻害する。
【0016】
1つの局面において、標的部分は、HER2/neu、EGFR1、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 27、28、29、30、31、32、33、34、35または36に対応するアミノ酸配列を含む。
【0017】
1つの局面において、免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、PD-1の機能を増大させる。
【0018】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に特異的に結合し、かつ免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。さらなる局面において、標的部分は、TNF-αに結合する抗体を含み、かつ免疫調節部分は、PD-1リガンド1(PD-L1またはB7-H1)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 37に対応するアミノ酸配列を含む。別の局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外リガンド結合ドメインを含み、かつ免疫調節部分は、PD-1リガンド1(PD-L1またはB7-H1)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびPD-L1由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 38または39に対応するアミノ酸配列を含む。
【0019】
1つの局面において、標的部分は、CD20、CD25またはCD4に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを含み、かつ免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 40、41、42、43、44または45に対応するアミノ酸配列を含む。
【0020】
1つの局面において、標的部分は、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 46または47に対応するアミノ酸配列を含む。
【0021】
1つの局面において、標的部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。さらなる局面において、この分子は、SEQ ID NO: 48または49に対応するアミノ酸配列を含む。
【0022】
1つの局面において、免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)受容体のシグナル伝達機能を活性化する。
【0023】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含み、かつ免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。さらなる局面において、標的部分は、TNF-αに結合する抗体を含み、かつ免疫調節部分は、TGF-β由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 50に対応するアミノ酸配列を含む。1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、免疫グロブリンFc領域および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 51または52に対応するアミノ酸配列を含む。
【0024】
1つの局面において、標的部分は、CD20、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)またはCD4に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを含み、かつ免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。さらなる局面において、この分子は、SEQ ID NO: 53、54、55、56、57または58に対応するアミノ酸配列を含む。
【0025】
1つの局面において、標的部分は、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 59または60に対応するアミノ酸配列を含む。
【0026】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含み、かつ免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、標的部分は、TNF-αに結合する抗体を含み、かつ免疫調節部分は、RANKの細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメイン由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 61に対応するアミノ酸配列を含む。1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびRANKの細胞外RANK結合ドメインまたは外部ドメイン由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 62または63に対応するアミノ酸配列を含む。
【0027】
1つの局面において、標的部分は、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 64または65に対応するアミノ酸配列を含む。
【0028】
1つの局面において、標的部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 66または67に対応するアミノ酸配列を含む。
【0029】
1つの局面において、標的部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)由来の配列および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 68または69に対応するアミノ酸配列を含む。
【0030】
様々な局面において、この分子は、1つまたは複数の抗原、抗原決定基またはエピトープに融合または直接連結されている。
【0031】
別の態様において、本発明は、本発明の分子および細胞を含む組成物であって、細胞が腫瘍細胞、免疫細胞または樹状細胞である組成物を提供する。
【0032】
別の態様において、本発明は、免疫寛容に対抗または克服する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に1つまたは複数の本発明の分子を投与する工程を包含する。
【0033】
別の態様において、本発明は、新生物疾患を予防または処置する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に1つまたは複数の本発明の分子を投与する工程を包含する。様々な局面において、対象は、別の抗癌療法との併用で、1つまたは複数の本発明の分子を投与される。1つの局面において、抗癌療法は、化学療法分子、抗体、低分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤または細胞傷害剤を含む。別の局面において、抗癌療法は、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーションまたは高周波アブレーションを含む。
【0034】
別の態様において、本発明は、新生物疾患を予防または処置する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に、別の細胞傷害性抗癌療法との併用で、CD4+制御性T細胞(Treg)を標的にしこれを排除する抗体を投与する工程を包含する。1つの局面において、Tregを標的にしこれを排除する抗体は、抗CD4抗体である。様々な局面において、細胞傷害性抗癌療法は、化学療法分子、腫瘍標的抗体、低分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤または腫瘍標的細胞傷害剤を含む。別の局面において、細胞傷害性抗癌療法は、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーションまたは高周波アブレーションを含む。
【0035】
別の態様において、対象は、任意のワクチンとの併用で、1つまたは複数の本発明の分子を投与される。別の局面において、ワクチンは、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、腫瘍エピトープ、腫瘍抗原含有融合タンパク質、腫瘍細胞または樹状細胞を含む。別の局面において、ワクチンは、病原体抗原、病原体関連抗原、病原体エピトープまたは病原体抗原含有融合タンパク質を含む。
【0036】
別の態様において、本発明は、免疫細胞を処置する方法であって、細胞をエクスビボまたはインビトロで本発明の分子と接触させる方法を提供する。別の態様において、本発明は、新生物疾患の処置方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に、本発明の分子と接触させた免疫細胞の組成物を投与する工程を包含する。
【0037】
別の態様において、本発明は、免疫寛容を誘導または推進する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に1つまたは複数の本発明の分子を投与する工程を包含する。
【0038】
別の態様において、本発明は、自己免疫または炎症疾患を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に1つまたは複数の本発明の分子を投与する工程を包含する方法を提供する。1つの局面において、対象は、別の抗炎症または免疫抑制療法との併用で、1つまたは複数の本発明の分子を投与される。別の態様において、本発明は、免疫細胞の処置方法であって、細胞をエクスビボまたはインビトロで本発明の分子と接触させる方法を提供する。別の態様において、本発明は、自己免疫もしくは炎症疾患を処置するまたは移植細胞もしくは組織の拒絶を予防する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に、本発明の分子と接触させた免疫細胞の組成物を投与する工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
(図1)図1は、形質転換成長因子ベータ受容体II型(TGF-β-RII)もしくはTGF-β-RIIBまたはそれらのフラグメントの例示的なアミノ酸配列を示しており、(i)形質転換成長因子ベータ受容体II型(TGF-β-RII)(SEQ ID NO: 79);および(ii)形質転換成長因子ベータ受容体IIB型(TGF-β-RIIB)(SEQ ID NO: 80)が含まれる。
図1には、TGF-βに結合する細胞外ドメイン(ECD)領域を含む形質転換成長因子ベータ受容体II(TGF-β-RII)またはTGF-β-RIIBの例示的な短縮変異体も示されており、(i)TGF-βR-II(ΔC末端):C末端の最終38アミノ酸を欠くTGFβRII(SEQ ID NO: 81)およびTGF-βR-IIB(ΔC末端):C末端の最終38 aaを欠くTGFβRIIB(SEQ ID NO: 82);(ii)TGF-βR-II(Δcyt):キナーゼドメインおよび膜近傍領域を欠くTGFβRII(SEQ ID NO: 83)ならびにTGF-βR-IIB(Δcyt):キナーゼドメインおよび膜近傍領域を欠くTGFβRIIB(SEQ ID NO: 84);(iii)細胞外ドメインを含むN末端領域を含むTGF-βR-II(SEQ ID NO: 85)および細胞外ドメインを含むN末端領域を含むTGF-βR-IIB(SEQ ID NO: 86);(iv)TGF-βに結合する細胞外ドメインを含むTGF-βR-II(SEQ ID NO: 87)およびTGF-βに結合する細胞外ドメインを含むTGF-βR-IIB(SEQ ID NO: 88);ならびに(v)TGF-βに結合する細胞外ドメインの領域を含むTGF-βR-II(SEQ ID NO: 89)が含まれる。
さらに、図1は、TGF-βに結合する形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)もしくはTGFβ-RIIBまたはそれらのフラグメントの例示的なキナーゼ欠損変異体、欠失変異体または点変異体も示しており、(i)点変異を含む形質転換成長因子ベータ受容体II - TGF-βR-IIのアミノ酸配列(K277R)は、そのATP結合部位に点変異を含み、かつキナーゼとして不活性である(SEQ ID NO: 90);ならびに(ii)アミノ酸配列中に欠失を含む形質転換成長因子ベータ受容体II(欠失変異体) - 形質転換成長因子ベータ受容体II(Δi) - TGF-βR-II(Δi2)はアミノ酸498から508の欠失を含み、かつキナーゼとして不活性である(SEQ ID NO: 91)、が含まれる。
(図2)図2は、抗HER2/neu抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗HER2/neu重鎖 + TGFβ-RII ECD融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 1)および抗HER2/neu軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 70)が含まれる。
(図3)図3は、抗EGFR1抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗EGFR1重鎖 + TGFβ-RII ECD融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)および抗EGFR1軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 71)が含まれる。
(図4)図4は、抗CD20抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD20重鎖 + TGFβ-RII ECD融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 3)および抗CD20軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 72)が含まれる。
(図5)図5は、抗VEGF抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗VEGF重鎖 + TGFβ-RII ECD融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 4)および抗VEGF軽鎖配列(SEQ ID NO: 73)が含まれる。
(図6)図6は、抗ヒトCTLA-4抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CTLA-4重鎖 + TGFβ-RII細胞外ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 5)および抗CTLA-4軽鎖(SEQ ID NO: 74)が含まれる。
(図7)図7は、IL-2、Fcおよび形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、IL-2 + Fc + TGFβ-RII細胞外ドメイン(SEQ ID NO: 6)およびTGFβ-RII細胞外ドメイン + Fc + IL-2(SEQ ID NO: 7)が含まれる。リンカー

はオプションであり、これはEPKSCDK(SEQ ID NO: 105)または当技術分野で周知の別のリンカー配列で置換することができる。Fcにおいて特定のアミノ酸配列を置換することができ、下線部のEをDにおよび下線部のMをLにする置換が含まれる。
(図8)図8は、抗CD25抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD25(ダクリズマブ)重鎖およびTGFβ-RII細胞外ドメイン(SEQ ID NO: 8)ならびに抗CD25(ダクリズマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 75)(図8A);ならびに抗CD25(バシリキシマブ)重鎖およびTGFβ-RII細胞外ドメイン(SEQ ID NO: 9)ならびに抗CD25(バシリキシマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 76)が含まれる。
(図9)図9は、抗CD4抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD4重鎖およびTGFβ-RII細胞外ドメイン(SEQ ID NO: 10)ならびに抗CD4軽鎖(SEQ ID NO: 77)が含まれる。
(図10)図10は、プログラム死1(PD-1)外部ドメイン、Fcおよび形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(外部ドメイン)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、PD-1外部ドメイン + Fc + TGFβRII外部ドメイン(SEQ ID NO: 11)およびTGFβRII外部ドメイン + Fc + PD-1外部ドメイン(SEQ ID NO: 12)が含まれる。リンカー配列EPKSCDK(SEQ ID NO: 105)はオプションであり、これは除去するかまたは別のリンカーで置換することができる。
(図11)図11は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)外部ドメイン、Fcおよび形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(外部ドメイン)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、RANK外部ドメイン + Fc + TGFβRII外部ドメイン(SEQ ID NO: 13)およびTGFβRII外部ドメイン + Fc + RANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 14)が含まれる。リンカー配列EPKSCDK(SEQ ID NO: 105)はオプションであり、これは除去するかまたは別のリンカーで置換することができる。
(図12)図12は、プログラム死1リガンド1(PD-L1もしくはB7-H1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2もしくはB7-DC)に結合する例示的な免疫調節部分を示しており、全長PD-1またはそのフラグメント(SEQ ID NO: 92)、PD-1細胞外ドメイン(外部ドメイン)またはそのフラグメント(SEQ ID NO: 93)およびPD-1細胞外ドメイン(外部ドメイン)リガンド結合領域(SEQ ID NO: 94)が含まれる。
(図13)図13は、抗HER2/neu抗体およびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗HER2/neu重鎖 + PD-1外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 15)および抗HER2/neu軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 70)が含まれる。
(図14)図14は、抗EGFR1抗体およびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗EGFR重鎖 + PD-1外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 16)および抗EGFR軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 71)が含まれる。
(図15)図15は、抗CD20抗体およびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD20重鎖 + PD-1外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 17)および抗CD20軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 72)が含まれる。
(図16)図16は、抗VEGF抗体およびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗VEGF重鎖 + PD-1外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 18)および抗VEGF軽鎖配列(SEQ ID NO: 73)が含まれる。
(図17)図17は、抗ヒトCTLA-4抗体およびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CTLA-4重鎖 + PD-1外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 19)および抗CTLA-4軽鎖(SEQ ID NO: 74)が含まれる。
(図18)図18は、抗CD25抗体およびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD25(ダクリズマブ)重鎖およびPD-1外部ドメイン(SEQ ID NO: 20)ならびに抗CD25(ダクリズマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 75)(図18A)、ならびに抗CD25(バシリキシマブ)重鎖およびPD-1外部ドメイン(SEQ ID NO: 21)ならびに抗CD25(バシリキシマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 76)(図18B)が含まれる。
(図19)図19は、IL-2、FcおよびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、IL-2 + Fc + PD-1外部ドメイン(SEQ ID NO: 22)およびPD-1外部ドメイン + Fc + IL-2(SEQ ID NO: 23)が含まれる。リンカー

はオプションであり、これはEPKSCDK SEQ ID NO: 105または当技術分野で周知の別のリンカー配列で置換することができる。Fcにおいて特定のアミノ酸配列を置換することができ、下線部のEをDにおよび下線部のMをLにする置換が含まれる。
(図20)図20は、抗CD4抗体およびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD4重鎖およびPD-1外部ドメイン(SEQ ID NO: 24)ならびに抗CD4軽鎖(SEQ ID NO: 77)が含まれる。
(図21)図21は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)外部ドメイン、FcおよびPD-1外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、RANK外部ドメイン + Fc + PD-1外部ドメイン(SEQ ID NO: 25)およびPD-1外部ドメイン + Fc + RANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 26)が含まれる。リンカー配列EPKSCDK(SEQ ID NO: 105)はオプションであり、これは除去するかまたは別のリンカーで置換することができる。
(図22)図22は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL)に結合する例示的な免疫調節部分を示しており、全長RANKもしくはそのフラグメント(SEQ ID NO:95)、RANKの細胞外リガンド結合ドメインもしくは外部ドメイン(SEQ ID NO: 96)、RANKのRANKL結合配列もしくは残基(SEQ ID NO: 93)またはオステオプロテゲリン(OPG)のRANKL結合配列(SEQ ID NO: 98)が含まれる。
(図23)図23は、抗HER2/neu抗体およびRANK外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗HER2/neu重鎖 + RANK外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 27)および抗HER2/neu軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 70)が含まれる。
(図24)図24は、抗EGFR1抗体およびRANK外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗EGFR重鎖 + RANK外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 28)および抗EGFR軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 71)が含まれる。
(図25)図25は、抗CD20抗体およびRANK外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD20重鎖 + RANK外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 29)および抗CD20軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO: 72)が含まれる。
(図26)図26は、抗VEGF抗体およびRANK外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗VEGF重鎖 + RANK外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 30)および抗VEGF軽鎖配列(SEQ ID NO: 73)が含まれる。
(図27)図27は、抗ヒトCTLA-4抗体およびRANK外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CTLA-4重鎖 + RANK外部ドメイン融合アミノ酸配列(SEQ ID NO: 31)および抗CTLA-4軽鎖(SEQ ID NO: 74)が含まれる。
(図28)図28は、抗CD25抗体およびRANK外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD25(ダクリズマブ)重鎖およびRANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 32)ならびに抗CD25(ダクリズマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 75)(図28A)、ならびに抗CD25(バシリキシマブ)重鎖およびRANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 33)ならびに抗CD25(バシリキシマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 76)(図28B)が含まれる。
(図29)図29は、IL-2、FcおよびRANK外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、IL-2 + Fc + RANK外部ドメイン(SEQ ID NO:34)およびRANK外部ドメイン + Fc + IL-2(SEQ ID NO: 35)が含まれる。リンカー

はオプションであり、これはEPKSCDK SEQ ID NO: 105または当技術分野で周知の別のリンカー配列で置換することができる。Fcにおいて特定のアミノ酸配列を置換することができ、下線部のEをDにおよび下線部のMをLにする置換が含まれる。
(図30)図30は、抗CD4抗体およびRANK外部ドメインを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD4重鎖およびRANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 36)ならびに抗CD4軽鎖(SEQ ID NO: 77)が含まれる。
(図31)図31は、プログラム死1(PD-1)に結合する例示的な免疫調節部分を示しており、PD-1リガンド1(PD-L1もしくはB7-H1)もしくはPD-1リガンド2(PD-L2もしくはB7-DC)またはそれらのフラグメント(例えば、SEQ ID NO: 101)、全長ヒトPD-1リガンド1(B7-H1;PDCD1L1;PD-L1もしくはCD274)タンパク質またはそのフラグメント(SEQ ID NO: 99)およびPD-L1細胞外結合ドメイン(外部ドメイン)またはそのフラグメント(SEQ ID NO: 100)が含まれる。
(図32)図32は、抗腫瘍壊死因子(TNFα)抗体およびPD-1リガンドを含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗TNFα重鎖 + PD-1L(SEQ ID NO: 37)および抗TNFα軽鎖(SEQ ID NO: 78)が含まれる。配列KKAE(SEQ ID NO: 107)は、KRVE(SEQ ID NO: 108)またはKKVE(SEQ ID NO: 109)で置換することができる。
(図33)図33は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、FcおよびPD-1リガンドを含む例示的な融合タンパク質を示しており、TNFR2 ECD + IgG Cγ1 + PD-L1(SEQ ID NO: 38)およびPD-L1 + IgG Cγ1 - TNFR2 ECD(SEQ ID NO: 39)が含まれる。
(図34)図34は、抗CD20抗体およびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD20重鎖 + PD-L1配列(SEQ ID NO: 40)および抗CD20軽鎖配列(SEQ ID NO: 72)が含まれる。
(図35)図35は、抗CD25抗体およびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD25(ダクリズマブ)重鎖およびPD-L1(SEQ ID NO: 41)ならびに抗CD25(ダクリズマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 75)(図35A)、ならびに抗CD25(バシリキシマブ)重鎖およびPD-1外部ドメイン(SEQ ID NO: 42)ならびに抗CD25(バシリキシマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 76)(図35B)が含まれる。
(図36)図36は、IL-2、FcおよびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、融合タンパク質hPD-1リガンド1 + Fc + IL-2(SEQ ID NO:43)および融合タンパク質IL-2 + Fc + PD-1リガンド1(SEQ ID NO: 44)が含まれる。リンカー

はオプションであり、これはEPKSCDK SEQ ID NO: 105または当技術分野で周知の別のリンカー配列で置換することができる。Fcにおいて特定のアミノ酸配列を置換することができ、下線部のEをDにおよび下線部のMをLにする置換が含まれる。
(図37)図37は、抗CD4抗体およびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD4重鎖およびPD-1リガンド1(PD-L1)(SEQ ID NO: 45)ならびに抗CD4軽鎖(SEQ ID NO: 77)が含まれる。
(図38)図38は、CTLA-4の細胞外ドメイン、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびPD-lリガンド(PD-L1)由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、オンコスタチンMシグナルペプチド + CTLA-4 ECD + IgG Cγ1 + PD-L1(SEQ ID NO: 46)およびPD-1L1 + IgG Cγ1 + CTLA-4 ECD(SEQ ID NO: 47)が含まれる。示されるIgG配列は、(下線付きの太字)においてオプションのCからSへの変換を有することができる。リンカーQEPKSCDK SEQ ID NO: 110はオプションであり、これはEPKSCDK SEQ ID NO: 105または別のリンカー配列で置換することができる。
(図39)図39は、形質転換成長因子β(TGF-β)の配列、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびPD-lリガンド(PD-L1)の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、TGFβ-1 + Fc + PD-L1(SEQ ID NO: 48)およびPD-1L1 + Fc + TGFβ-1(SEQ ID NO: 49)が含まれる。リンカー

はオプションであり、これはEPKSCDK SEQ ID NO: 105または当技術分野で周知の別のリンカー配列で置換することができる。Fcにおいて特定のアミノ酸配列を置換することができ、下線部のEをDにおよび下線部のMをLにする置換が含まれる。
(図40)図40は、形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR)に結合する例示的な免疫調節部分を示しており、形質転換成長因子ベータ(TGF-β1、TGF-β2もしくはTGF-β3またはそれらのフラグメント、TGF-β1全長配列(SEQ ID NO: 102)および成熟(活性)TGF-β1配列(Ala 279 - Ser 390;112アミノ酸)(SEQ ID NO: 103)が含まれる。
(図41)図41は、TNF-αに結合する抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗TNFα重鎖 + TGF-β1(SEQ ID NO: 50)および抗TNFα軽鎖(SEQ ID NO: 78)が含まれる。配列KKAE(SEQ ID NO: 107)は、KRVE(SEQ ID NO: 108)またはKKVE(SEQ ID NO: 109)で置換することができる。
(図42)図42は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン(TNFR2 ECD)、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、TNFR2 ECD + IgG Cγ1 + TGF-β1(SEQ ID NO: 51)およびTGF-β1 + IgG Cγ1 + TNFR2 ECD(SEQ ID NO: 52)が含まれる。
(図43)図43は、抗CD20抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD20重鎖 + 成熟TGFβ1配列(SEQ ID NO: 53)および抗CD20軽鎖配列(SEQ ID NO: 72)が含まれる。
(図44)図44は、抗CD25抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD25(ダクリズマブ)重鎖およびTGF-β1(SEQ ID NO: 54)ならびに抗CD25(ダクリズマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 75)(図44A)、ならびに抗CD25(バシリキシマブ)重鎖およびTGF-β1(SEQ ID NO: 55)ならびに抗CD25(バシリキシマブ)軽鎖(SEQ ID NO: 76)(図44B)が含まれる。
(図45)図45は、IL-2、Fcおよび形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、TGF-β1 + Fc + IL-2(SEQ ID NO: 56)およびIL-2 + Fc + TGF-β1(SEQ ID NO: 57)が含まれる。リンカー

はオプションであり、これはEPKSCDK SEQ ID NO: 105または当技術分野で周知の別のリンカー配列で置換することができる。Fcにおいて特定のアミノ酸配列を置換することができ、下線部のEをDにおよび下線部のMをLにする置換が含まれる。
(図46)図46は、抗CD4抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗CD4重鎖およびTGF-β(SEQ ID NO: 58)ならびに抗CD4軽鎖(SEQ ID NO: 77)が含まれる。
(図47)図47は、CTLA-4の細胞外ドメイン、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、オンコスタチンMシグナルペプチド + CTLA-4 ECD + IgG Cγ1 + TGF-β1(SEQ ID NO: 59)およびTGF-β1 + IgG Cγ1 + CTLA-4 ECD(SEQ ID NO: 60)が含まれる。示されるIgG配列は、(下線付きの太字)においてオプションのCからSへの変換を有することができる。リンカーQEPKSCDK SEQ ID NO: 110はオプションであり、これはEPKSCDK SEQ ID NO: 105または別のリンカー配列で置換することができる。
(図48)図48は、TNF-αに結合する抗体およびRANK外部ドメインの配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、抗TNFα重鎖 + RANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 61)および抗TNFα軽鎖(SEQ ID NO: 78)が含まれる。配列KKAE(SEQ ID NO: 107)は、KRVE(SEQ ID NO: 108)またはKKVE(SEQ ID NO: 109)で置換することができる。
(図49)図49は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン(TNFR2 ECD)、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびRANK外部ドメイン由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、TNFR2 ECD + IgG Cγ1 + RANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 62)およびRANK外部ドメイン + IgG Cγ1 + TNFR2 ECD(SEQ ID NO: 63)が含まれる。
(図50)図50は、CTLA-4の細胞外ドメイン、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびRANK外部ドメイン由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、オンコスタチンMシグナルペプチド + CTLA-4 ECD + IgG Cγ1 + RANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 64)およびRANK外部ドメイン + IgG Cγ1 + CTLA-4 ECD(SEQ ID NO: 65)が含まれる。示されるIgG配列は、(下線付きの太字)においてオプションのCからSへの変換を有することができる。リンカーQEPKSCDK SEQ ID NO: 110はオプションであり、これはEPKSCDK SEQ ID NO: 105または別のリンカー配列で置換することができる。
(図51)図51は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびRANK外部ドメイン由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、TGF-β + IgG Cγ1 + RANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 66)およびRANK外部ドメイン + IgG Cγ1 + TGF-β(SEQ ID NO: 67)が含まれる。
(図52)図52は、PD-1リガンド(PD-L1)由来の配列、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびRANK外部ドメイン由来の配列を含む例示的な融合タンパク質を示しており、PD-L1 + IgG Cγ1 + RANK外部ドメイン(SEQ ID NO: 68)およびRANK外部ドメイン + IgG Cγ1 + PD-L1(SEQ ID NO: 69)が含まれる。
(図53)図53は、制御性T細胞(Treg)が腫瘍微小環境に蓄積し、CD8+ T細胞媒介性の抗腫瘍免疫を活性化させる化学療法の能力に対抗することを示している。(a)ドキソルビシン(10μM)による4時間のヒト(SW780)およびマウス(MB49)癌細胞の処置に応じたカルレティキュリン(CRT)の表面露出。CRTの表面露出は、Dylight標識抗CRT抗体またはアイソタイプ対照(IgG1)抗体で染色した未処置対照またはドキソルビシン処置細胞の免疫蛍光サイトメトリーにより決定した。(b)エクスビボまたはインビボでドキソルビシン処置したMB49腫瘍細胞による腫瘍反応性免疫応答のプライミング。ドキソルビシン(10μM)を用いて4時間エクスビボで前処置した5 x 106のMB49細胞を、同系免疫正常C57BL/6マウスの片腹に注射した。あるいは、C57BL/6マウスに5 x 105の生存MB49腫瘍細胞を注射し、次いで、腫瘍接種後第10日にドキソルビシン(10μg)を腫瘍内投与した。腫瘍反応性免疫応答は、MB49細胞溶解産物、無関係のペプチド(ヘマグルチニンHA)または培地のみのいずれかによるインビトロ再チャレンジに応じた排出リンパ節(DLN)細胞によるIFN-γ産生を測定することによって決定した。(c)ドキソルビシン処置腫瘍細胞によるワクチン接種は、生存腫瘍細胞による再チャレンジ後の腫瘍形成を予防するCD8+T細胞媒介性の抗腫瘍免疫を誘導する。ドキソルビシン(10μM)を用いて4時間インビトロで前処置したMB49細胞(5 x 106)を、同系免疫正常C57BL/6マウスの片腹に皮下注射した。ナイーブのまたはワクチン接種したマウスに対して、CD8+T細胞を排除する抗CD8抗体(クローンGK2.43)(5μg x 2用量、iv)による前処置と共にまたはそれを伴わずに、未処置の生存MB49腫瘍細胞の反対腹部への注射によるチャレンジを行った。(d)腫瘍がすでに確立しているマウスへの化学療法の遅れた実施は、その免疫原性および抗腫瘍効果を低下させる。C57BL/6マウスに、5 x 105の生存同系MB49腫瘍細胞を注射し、次いで、腫瘍接種後第3日、第7日または第10日にドキソルビシン(10μg)を腫瘍内投与した。(e)腫瘍は、それらの微小環境におけるCD4+CD25+FoxP3+細胞(Treg)の蓄積を促す。5 x 105の生存MB49腫瘍細胞の皮下接種後第0日および第14日の免疫正常C57BL/6マウスの脾臓、排出リンパ節(DLN)および腫瘍から単離したCD4+Tリンパ球中のCD4+CD25+FoxP3+細胞(Treg)の比率のフローサイトメトリー分析。(f)腫瘍微小環境に浸潤したTregは、ドキソルビシン処置腫瘍細胞による腫瘍反応性免疫応答のプライミングを抑制する。ナイーブのC57BL/6マウスに、5 x 106のドキソルビシンで死滅させたMB49細胞を、腫瘍保有マウスの腫瘍およびDLNから免疫磁気分離を通じて単離した5 x 106のCD4+CD25+細胞の静脈内養子移入と共にまたはそれを伴わずに、ワクチン接種した。腫瘍反応性免疫応答は、MB49細胞溶解産物、無関係のペプチド(ヘマグルチニンHA)または培地のみのいずれかによるインビトロ再チャレンジに応じた排出リンパ節(DLN)細胞によるIFN-γ産生を測定することによって決定した。(g)腫瘍微小環境に浸潤したTregは、化学療法により誘導される腫瘍細胞死に応じた適応抗腫瘍免疫の活性化を抑制する。ナイーブのC57BL/6マウスに、5 x 106のドキソルビシンで死滅させたMB49細胞を、CD8+T細胞を排除する抗CD8抗体(クローンGK2.43)(5μg x 2用量、iv)または腫瘍保有マウスの腫瘍およびDLNから単離した5 x 106のCD4+CD25+細胞の養子移入のいずれかによる前処置と共にまたはそれを伴わずに、ワクチン接種(左腹)した。ワクチン接種マウスにおける保護的抗腫瘍免疫は、未処置の生存MB49腫瘍細胞の反対腹部への注射によるチャレンジを行った際の腫瘍の成長の評価により決定した。
(図54)図54は、腫瘍微小環境におけるTGF-βの阻害が「適応性」のFoxP3+制御性T細胞を減少させ、化学療法の抗腫瘍効果を増強することを示している。(a)腫瘍の成長は、血清TGF-βのレベルを漸進的に増加させる。5 x 105の生存MB49腫瘍細胞の接種後第0日、第14日および第28日のマウス血清におけるTGF-βレベルを、ELISAを用いて評価した。(b)腫瘍細胞のTGF-βの自律的発現は、腫瘍保有マウスにおけるTGF-β増加の主因である。腫瘍保有マウスまたはそれらの腫瘍非保有体のいずれかから単離した腫瘍細胞または排出リンパ節細胞を、24 時間、無血清培地中でエクスビボ培養し、上清中のTGF-β量/106細胞を、ELISAにより測定した。(c)TGFβRII:Fcは、濃度依存的な様式で、MB49腫瘍細胞の上清中のTGF-βを捕捉(sequester)する。MB49腫瘍細胞を、段階的濃度のTGFβRII:Fc(0〜400 ng/ml)の存在下で24時間培養した後、上清中のTGF-β(pg/ml/106細胞)をELSIAにより測定した。(d)TGF-βは、腫瘍微小環境において「適応性」のFoxP3+制御性T細胞を誘導する。MB49腫瘍細胞の接種後第5日のマウスを、未処置のままおく(対照)かまたはTGFβRII:Fcで3週間処置(1μg腫瘍内;週2回)し、その後に腫瘍浸潤性のCD4+CD25+T細胞における細胞内FoxP3発現のフローサイトメトリー分析を行った。(e、f)TGFβRII:Fcによる腫瘍内TGF-βの捕捉は、腫瘍組織中のCD4+CD25+FoxP3+Tregを減少させ、ドキソルビシンの抗腫瘍効果を改善する。MB49腫瘍保有マウスに、ドキソルビシン(5 mg/kg i.p.週3回)を、週2回のTGFβRII:Fc処置(1μg腫瘍内)と共にまたはそれを伴わずに、投与した。腫瘍細胞中のCD4+CD25+FoxP3+細胞(Treg)の比率をフローサイトメトリーにより評価し(e)、腫瘍により誘導されたTGF-β媒介性の免疫寛容への対抗がドキソルビシンのインビボ抗腫瘍効果に対して及ぼす影響を決定するために腫瘍容積をモニターした(f)。
(図55)図55は、抗CD4抗体を介したCD4+制御性T細胞の排除が、化学療法により誘導される腫瘍反応性CD8+T細胞の活性化を促進し、化学療法の抗腫瘍効果を増強することを示している。(a)腫瘍保有マウスの抗CD4抗体処置による腫瘍浸潤性CD4+CD25+FoxP3+T細胞のインビボ排除。5 x 105のMB49腫瘍細胞をs.c.注射したC57BL/6マウスを、未処置のままおく(対照)かまたは腫瘍チャレンジ後第5日または第9日に抗CD4抗体(クローンGK1.5)をi.p.投与した。腫瘍チャレンジ後第16日のマウスから単離した腫瘍浸潤性のCD4+CD25+FoxP3+T細胞は、フローサイトメトリーにより検出した。(b)腫瘍保有マウスの抗CD4抗体または抗CD8抗体処置によるCD4+T細胞、CD4+CD25+FoxP3+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの標的特異的排除。5 x 105のMB49腫瘍細胞をs.c.注射したC57BL/6マウスを、未処置のままおくか、または腫瘍接種後第7日に開始するドキソルビシン処置(5 mg/kg i.p.週3回)を、腫瘍接種後第5日および第9日の抗CD4抗体(クローンGK1.5)または抗CD8抗体(クローンGK2.43)のいずれかの投与と共にまたはそれを伴わずに行った。腫瘍チャレンジ後第16日のマウスから単離した末梢血単核細胞のフローサイトメトリー分析により、総単核細胞中のCD4+T細胞またはCD8+T細胞の比率、および総CD4+T細胞中のCD4+CD25+FoxP3+T細胞の比率を決定した。(c)CD4+制御性T細胞の排除は、化学療法により誘導される腫瘍反応性CD8+T細胞の活性化を促進する。5 x 105のMB49腫瘍細胞をs.c.注射したC57BL/6マウスを、未処置のままおくか、または腫瘍接種後第7日に開始するドキソルビシン処置(5 mg/kg i.p.週3回)を、腫瘍接種後第5日および第9日の抗CD4抗体(クローンGK1.5)の投与と共にまたはそれを伴わずに行った。腫瘍反応性免疫応答は、MB49細胞溶解産物によるインビトロ刺激に応じた腫瘍および排出リンパ節由来のCD8+T細胞におけるIFN-γ発現のフローサイトメトリー分析により決定した。(d)CD4+制御性T細胞の排除は、腫瘍反応性CD8+T細胞の活性化を通じて化学療法のインビボ抗腫瘍効果を亢進する。5 x 105のMB49腫瘍細胞をs.c.注射したC57BL/6マウスを、未処置のままおくか、または腫瘍接種後第7日に開始するドキソルビシン処置(5 mg/kg i.p.週3回)を、腫瘍接種後第5日および第9日の抗CD4抗体(クローンGK1.5)または抗CD8抗体(クローンGK2.43)のいずれかの投与と共にまたはそれを伴わずに行った。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの排除がドキソルビシンのインビボ抗腫瘍効果に及ぼす影響を決定するために腫瘍容積をモニターした。
(図56)図56は、抗CD4抗体を介したCD4+制御性T細胞の排除が、適応抗腫瘍免疫の活性化を実現することによって化学療法の抗腫瘍効果を亢進および維持することを示している。(a)シスプラチンまたはシスプラチンおよびゲムシタビンの組み合わせのいずれかによる4時間のMB49癌細胞の処置に応じたカルレティキュリン(CRT)の表面露出。CRTの表面露出は、Dylight標識抗CRT抗体またはアイソタイプ対照(IgG1)抗体で染色した未処置対照または化学療法処置細胞の免疫蛍光サイトメトリーにより決定した。(b、c)CD4+制御性T細胞の排除は、シスプラチンにより誘導される腫瘍反応性IFN-γ+CD8+T細胞およびエフェクターメモリー(CD8+CD62L-)T細胞の活性化を実現する。5 x 105のMB49腫瘍細胞をs.c.注射したC57BL/6マウスを、未処置のままおくか、または腫瘍接種後第7日に開始するシスプラチン処置(0.5 mg/kg i.p.週4回)を、腫瘍接種後第5日および第9日の抗CD4抗体(クローンGK1.5)の投与と共にまたはそれを伴わずに行った。腫瘍反応性免疫応答は、MB49細胞溶解産物によるインビトロ刺激に応じた腫瘍および排出リンパ節(DLN)由来のCD8+T細胞におけるIFN-γ発現のフローサイトメトリー分析により決定した(b)。エフェクターメモリーTEM細胞の比率は、CD8+CD62L-細胞のフローサイトメトリー分析により決定した(c)。(d、e、f)CD4+制御性T細胞の排除は、腫瘍反応性CD8+T細胞の活性化を通じて化学療法のインビボ抗腫瘍効果を亢進する。5 x 105のMB49腫瘍細胞をs.c.注射したC57BL/6マウスを、未処置のままおくか、または腫瘍接種後第7日に開始するシスプラチン(0.5 mg/kg)またはシスプラチンおよびゲムシタビンの組み合わせのいずれかによる処置(i.p.週4回)を、腫瘍接種後第5日および第9日の抗CD4抗体(クローンGK1.5)または抗CD8抗体(クローンGK2.43)のいずれかの投与と共にまたはそれを伴わずに行った。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの排除が化学療法のインビボ抗腫瘍効果および腫瘍接種後第50日までに完全腫瘍退縮を示すマウスの比率に及ぼす影響を決定するために腫瘍容積をモニターした。原発性腫瘍の退縮後の適応抗腫瘍免疫の確立は、マウスの反対腹部への生存MB49腫瘍細胞の再チャレンジにより決定した。
(図57)図57は、腫瘍細胞において化学療法により誘導されるNKG2Dリガンドの発現がCD4+制御性T細胞の排除と協調してCD8+T細胞媒介性の腫瘍退縮を刺激することを示している。(a)遺伝毒性化学療法剤は、癌細胞においてマウスNKG2Dリガンド(Rae-1)の発現を誘導する。マウスCT26結腸癌細胞におけるRae1転写物の上方制御のカイネティクスは、イリノテカン(25μg/ml)またはオキサリプラチン(10μg/ml)処置後の定量リアルタイムPCRにより決定した。定量RT-PCRは、Rae-1特異的プライマー[センス、

;アンチセンス、

およびプローブ

を用いて行った。(b)遺伝毒性化学療法剤は、癌細胞においてヒトNKG2Dリガンド(MHC-I関連AおよびB分子 - MICA/MICB)のp53非依存的な細胞表面発現を誘導する。p53発現(p53+/+)またはp53欠損(p53-/-)の同質HCT116細胞を、イリノテカン(25μg/ml)で16時間処置するかまたは未処置のままおいた。イリノテカンにより誘導されるMICA/Bの細胞表面発現の上方制御は、抗ヒトMICA/B MAb(R&D Systems)で標識した腫瘍細胞のフローサイトメトリー分析により決定した。(c)&(d)NKG2Dリガンドの誘導は、インビボでの化学療法の抗腫瘍効果に寄与する。2 x 105の同系CT26腫瘍細胞をs.c.注射した免疫正常Balb/Cマウスに対して、腫瘍接種後第5日に開始するイリノテカン処置(50 mg/kg i.p.週3回)を、各化学療法施行の16時間前のNKG2Dブロッキング抗体(CX5、eBIOscience)(200μg i.p.)による事前処置と共にまたはそれを伴わずに、行った。NKG2Dのブロックがイリノテカンのインビボ抗腫瘍効果に及ぼす影響を決定するために腫瘍容積をモニターした。(e)腫瘍保有マウスの抗CD4抗体処置によるCD4+CD25+FoxP3+T細胞のインビボ排除。2 x 105のCT26腫瘍細胞をs.c.注射したBalb/Cマウスを、未処置のままおくか、または腫瘍接種後第7日に開始するイリノテカン処置(50 mg/kg i.p.週3回)を、腫瘍接種後第5日および第9日の抗CD4抗体(クローンGK1.5)の投与と共にまたはそれを伴わずに行った。腫瘍チャレンジ後第16日のマウスから単離した脾臓および排出リンパ節におけるCD4+CD25+FoxP3+T細胞を、フローサイトメトリーにより検出した。(f)CD4+制御性T細胞の排除は、イリノテカンにより誘導される腫瘍反応性IFN-γ+CD8+T細胞の活性化を促進する。2 x 105のCT26腫瘍細胞をs.c.注射したBalb/Cマウスを、未処置のままおくか、または腫瘍接種後第7日に開始するイリノテカン処置(50 mg/kg i.p.週3回)を、腫瘍接種後第5日および第9日の抗CD4抗体(クローンGK1.5)の投与と共にまたはそれを伴わずに行った。腫瘍反応性免疫応答は、CT26細胞溶解産物、無関係のペプチド(ヘマグルチニンHA)または培地のみのいずれかによるインビトロ刺激に応じた腫瘍および排出リンパ節(DLN)由来のCD8+T細胞におけるIFN-γ発現のフローサイトメトリー分析により決定した。(g)&(h)腫瘍細胞における化学療法により誘導されるNKG2Dリガンドの発現は、CD4+制御性T細胞の排除と協調してCD8+T細胞媒介性の腫瘍退縮を刺激する。2 x 105のCT26腫瘍細胞をs.c.注射したBalb/Cマウスを、未処置のままおくか、または腫瘍接種後第7日に開始するイリノテカン処置(50 mg/kg i.p.週3回)を、腫瘍接種後第5日および第9日の抗CD4抗体(クローンGK1.5)および/または抗CD8抗体(クローンGK2.43)の投与と共にまたはそれを伴わずに行った。CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞の排除がイリノテカンのインビボ抗腫瘍効果に及ぼす影響を決定するために腫瘍容積をモニターした。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
癌の予防または処置のための標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質:化学療法は、最も一般的な類型の進行癌を有する患者の全身処置のかなめとなるものである。大部分のヒトの癌は、化学療法剤が活用する直接的な死へのシグナル伝達経路を妨害する遺伝的変化およびシグナル伝達機構を有している。化学療法剤は、腫瘍細胞を直接的に死滅させるために様々な機構を利用するものであるが、本発明は、これらの薬剤が、インビボでのそれらの抗腫瘍効果にとって重要となる自然および適応抗腫瘍応答を活性化する免疫アジュバント効果を有することを報告する。本発明はまた、抗腫瘍CD8+T細胞が、様々な細胞傷害性化学療法剤に対する腫瘍のインビボ応答において有益な役割を果たすことを報告する。化学療法剤は、「免疫原性」の腫瘍細胞死を誘導し、樹状細胞による抗原の交差提示を促進することができるのに対して、腫瘍は、それらが自然および適応免疫応答の活性化を抑制し免疫エフェクター細胞による免疫学的攻撃から逃れられるようにする寛容環境を構築する。本発明は、腫瘍微小環境において腫瘍により誘導される免疫寛容に対抗する戦略が、播種性癌細胞に対するT細胞媒介性の適応抗腫瘍免疫を活性化および梃入れすることにより化学療法の抗腫瘍効果を増強できることを報告する。
【0041】
本発明は、標的免疫調節抗体および融合タンパク質が癌細胞の免疫寛容に対抗または逆転させることができるという将来性ある発見に基づく。癌細胞は、腫瘍微小環境における特定の免疫抑制機構を介して化学療法剤または腫瘍標的抗体による排除から逃れることができ、そのような癌細胞の能力は免疫寛容として認識されている。腫瘍誘導性の免疫寛容に対抗することにより、本発明は、癌処置に有効な組成物および方法を、必要に応じて別の既存の癌処置との併用で、提供する。
【0042】
本発明は、再発性または播種性の癌に対する持続的・長期的な保護の維持のために、腫瘍微小環境において免疫寛容に対抗しT細胞媒介性の適応抗腫瘍免疫を推進する標的免疫刺激抗体および融合タンパク質に基づく組成物および方法を提供する。これらの腫瘍標的免疫刺激分子は、以下の少なくとも1つにより腫瘍細胞に対する効果的・長期的なT細胞媒介性の免疫応答を促進するよう設計される:
(i)抗体依存細胞傷害性(ADCC)の増強を通じた腫瘍細胞死の推進;
(ii)樹状細胞(DC)の成熟を亢進することによる死亡腫瘍細胞由来の腫瘍抗原の効果的な交差提示の促進;および
(iii)制御性T細胞および骨髄サプレッサー細胞により媒介される免疫抑制を打ち消すことによる抗腫瘍CD8+T細胞の活性化および増殖の増進。これらの抗腫瘍免疫応答は、腫瘍細胞の免疫エフェクター媒介細胞傷害性に対する感作と並行して活性化され、それによって、腫瘍縮小を亢進し適応抗腫瘍免疫を強化するポジティブフィードバックループを確立し得る。本発明の腫瘍標的免疫刺激モノクローナル抗体(mAb)は、(インサイチュ腫瘍ワクチンとして)治療過程の間に内因的な腫瘍細胞から得られる多数の交差提示された腫瘍抗原に対する抗腫瘍免疫を生成およびブーストすると同時に、播種性癌細胞を消滅させる抗腫瘍免疫応答に梃入れする能力を提供する。したがって、本発明の標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、受動および能動免疫療法という従来は異なっていた領域を統合し、標的となる癌に対する効果的な自然および適応免疫応答を活用するこれらの戦略の相乗的利益を同時に梃入れする新規のプラットフォームを提供することができる。
【0043】
腫瘍標的モノクローナル抗体による癌の受動免疫療法は臨床的に有効であることが実証されているが、腫瘍細胞に対してT細胞媒介性免疫を誘導し免疫学的記憶を確立するワクチン接種能動療法という目標は依然として到達困難である。いくつかの腫瘍特異的および腫瘍関連抗原が同定されているが、腫瘍は様々な機構を利用してそれらがT細胞媒介性の抗腫瘍免疫応答の活性化を抑制できるようにする寛容環境を形成する。本発明の腫瘍標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、腫瘍微小環境におけるそのような免疫寛容を克服し、効果的な癌免疫療法または化学免疫療法のための強固なレベルのT細胞応答を活性化するよう設計されている。したがって、本発明の腫瘍標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、多くの類型のヒト癌の処置を前進させる広い臨床的汎用性を有する。
【0044】
本発明の腫瘍標的免疫刺激mAbおよび/または融合タンパク質は、(インサイチュ腫瘍ワクチンとして)治療過程の間に内因的な腫瘍細胞から得られる多数の交差提示された腫瘍抗原に対する抗腫瘍免疫を生成およびブーストすると同時に、播種性癌細胞を消滅させる抗腫瘍免疫応答に梃入れする能力を提供する。したがって、本発明の腫瘍標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、受動および能動免疫療法という従来は異なっていた領域を統合し、標的となる癌に対する効果的な自然および適応免疫応答を活用するこれらの戦略の相乗的利益を同時に梃入れする新規のプラットフォームを提供することができる。この本発明のアプローチは、以下の局面の少なくとも1つにおいて、従来的な腫瘍抗原、同種腫瘍細胞またはDCベースのワクチンと区別されかつそれらよりも優れている:(i)患者の腫瘍自体が抗原のインビボ供給源となるので、予め個々の腫瘍抗原を定義、クローンおよび精製しておく必要がない;(ii)患者自身の腫瘍由来の抗原に対して自然調製される多価抗腫瘍免疫応答は、事前に選択した腫瘍抗原よりも免疫逃避を許容する可能性が低い;(iii)腫瘍標的免疫刺激抗体または融合タンパク質の免疫アジュバント効果による抗腫瘍免疫応答の活性化は、腫瘍細胞の免疫エフェクター媒介細胞傷害性に対する感作と並行して起こり、それによって、腫瘍縮小を亢進し適応抗腫瘍免疫を強化するポジティブフィードバックループを確立する;および(iv)本発明の分子は、多くの類型のヒト癌の処置を前進させる広い臨床的汎用性を有する。
【0045】
さらに、本発明の標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、以下の局面の少なくとも1つにおいて既存の治療分子と区別されかつそれらよりも優れている:(i)再発性または播種性の癌に対する長期的な保護の維持のため(多様な癌の予防または処置のため)に腫瘍微小環境における免疫寛容に対抗し、T細胞媒介性の適応抗腫瘍免疫を推進する点;(ii)多様な癌の養子細胞療法のための免疫細胞組成物を生成する点;および(iii)多様な癌または感染疾患の予防のための免疫アジュバントまたはワクチンとして機能する点。
【0046】
本発明の標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、腫瘍微小環境において免疫抑制網を破壊する能力を提供する。腫瘍は、幅広い制御機構を利用して免疫応答を回避または抑制する。癌細胞は、抗原提示樹状細胞の分化および成熟を阻害するサイトカインおよび分子の発現を通じて腫瘍微小環境における免疫寛容を能動的に推進する。腫瘍細胞により産生される免疫抑制サイトカインおよびリガンドには、以下のものが含まれる:(i)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);(ii)プログラム死1リガンド1(PD-L1;B7-H1);(iii)血管内皮成長因子(VEGF);および(iv)インターロイキン10(IL-10)。樹状細胞(DC)の成熟をブロックすることに加えて、これらの分子は、免疫抑制性CD4+T細胞の特別なサブセット(制御性T細胞;Treg細胞)および骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の展開を推進する。Tregは、CD25[インターロイキン2(IL-2)受容体α鎖]およびフォークヘッドボックスP3(FOXP3)転写因子を構成的に発現するCD4+T細胞の少数派の部分集団である。Treg(CD4+CD25+FoxP3+細胞)は、インビトロおよびインビボで、CD4+およびCD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)およびNKT細胞、B細胞ならびに抗原提示細胞(APC)を含む幅広い範囲の免疫細胞の活性化、増殖およびエフェクター機能を抑え込むことによって免疫寛容を維持する。腫瘍微小環境におけるTreg細胞の蓄積は腫瘍の免疫寛容を強化し、腫瘍の進行および転移を促進する。免疫抑制サイトカイン(TGF-β;PD-L1)の発現増加および腫瘍浸潤性Tregは、多様な類型の癌を有する患者の生存率の低下と相関する。本発明は、Tregを媒介する腫瘍により誘導される免疫寛容が、細胞傷害性化学療法剤および腫瘍標的抗体に対する癌の抵抗性の重要な決定因子となることを報告する。本発明の標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、標的腫瘍細胞または腫瘍浸潤性Treg細胞および骨髄サプレッサー細胞(DCまたはMDSC)により発現される鍵となる免疫抑制分子を阻害する。したがってそれらは、腫瘍微小環境内でのTregの展開または機能を阻害するという標的に向けた能力を提供する。別の局面において、それらは、腫瘍微小環境におけるTregにより誘導される免疫抑制に対抗する能力を提供する。
【0047】
本発明の標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、腫瘍微小環境内でのTregおよび骨髄サプレッサー細胞(DCまたはMDSC)の展開または機能を阻害する能力を提供する。Treg(CD4+CD25+FoxP3+細胞)は、多数の免疫抑制サイトカインおよび分子を発現し、それらは協力して免疫寛容を誘導し腫瘍の進行および転移を促進する働きをする。これらには、(i)抗原提示細胞(APC)上のリガンドCD80(B7-1)またはCD86(B7-2)に結合しT細胞の共刺激を阻害する抑制性共受容体(co-inhibitory receptor)である、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4;CD152);(ii)抑制性共受容体であるプログラム死1(PD-1)と連動してT細胞の活性化および増殖を阻害するリガンドである、プログラム死1リガンド1(PD-L1;B7-H1);(iii)樹状細胞の成熟および抗原提示機能を制限し、ナイーブT細胞の増殖および活性化を阻害し、免疫エフェクター細胞における細胞傷害性分子(グランザイムA/B、FasL、Apo2L/TRAIL、IFN-γ)の発現を抑制し、そしてTregの展開および機能を推進することにより免疫応答を制御するサイトカインである、形質転換成長因子ベータ(TGF-β);(iv)核因子κB受容体活性化因子(RANK)と連動して破骨細胞の分化、Tregの展開および腫瘍の転移を推進するリガンドである、核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)、が含まれる。さらに、Tregは、その他の表面分子;(v)MHCクラスIIに結合するCD4関連分子である、LAG-3;(vi)グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;TNFRSF18);および(vii)IL-10、も発現する。本発明の標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、Tregまたは骨髄サプレッサー細胞により発現される標的分子に結合すると共にそれらの展開、生存または機能を推進する1つまたは複数の免疫抑制分子を捕捉および阻害する能力を提供する。1つの局面において、標的免疫刺激抗体および/または融合タンパク質は、Tregの数を直接的に削減する。
【0048】
1つの態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子を提供する。標的部分は、腫瘍細胞または腫瘍微小環境(腫瘍間質、腫瘍血管系もしくは腫瘍浸潤性免疫細胞)において標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分は、標的腫瘍細胞または腫瘍浸潤性Treg細胞および骨髄サプレッサー細胞(DCもしくはMDSC)により発現される免疫抑制分子に特異的に結合する。
【0049】
1つの態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子を提供する。標的部分は、Treg細胞、骨髄サプレッサー細胞(MDSC)または樹状細胞(DC)により発現される標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分は、それらの展開、生存または機能を推進する免疫抑制分子に特異的に結合する。
【0050】
1つの態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子を提供する。標的部分は標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分は以下の分子の1つに特異的に結合する:(i)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);(ii)プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2);(iii)核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL);(iv)血管内皮成長因子(VEGF);(v)形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR);(vi)プログラム死1(PD-1);および(vii)核因子κB受容体活性化因子(RANK)。
【0051】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍細胞、腫瘍抗原、腫瘍血管系、腫瘍微小環境または腫瘍浸潤性免疫細胞の成分に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFvまたはFc含有ポリペプチドを含む。1つの局面において、標的部分は、上皮成長因子受容体(EGFR1、Erb-B1)、HER2/neu(Erb-B2)、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子受容体(IGF-1R)、TRAIL受容体、上皮細胞接着分子、癌胎児性抗原、前立腺特異的膜抗原、Mucin-1、CD30、CD33またはCD40に特異的に結合する。
【0052】
1つの局面において、標的部分は、制御性T細胞、骨髄サプレッサー細胞または樹状細胞の成分に特異的に結合する。別の局面において、標的部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:(i)CD4;(ii)CD25(IL-2α受容体;IL-2αR);(iii)細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4;CD152);(iv)インターロイキン10(IL-10);(v)形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR);(vi)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);(vii)プログラム死1(PD-1);(viii)プログラム死1リガンド(PD-L1もしくはPD-L2);(ix)核因子κB受容体活性化因子(RANK);(x)核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL);(xi)LAG-3;または(xii)グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;TNFRSF18)。
【0053】
1つの局面において、免疫調節部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:(i)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);(ii)プログラム死1リガンド(PD-L1もしくはPD-L2);(iii)核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL);または(iv)血管内皮成長因子(VEGF)。
【0054】
1つの局面において、免疫調節部分は、TGF-βに結合する分子を含む。別の局面において、免疫調節部分は、形質転換成長因子ベータ受容体TGF-βRII、TGF-βRIIbまたはTGF-βRIIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、免疫調節部分は、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 79〜91に対応するTGF-β結合アミノ酸配列を含む。さらなる局面において、免疫調節部分はTGF-βの活性または機能を阻害する。
【0055】
1つの局面において、標的部分は、HER2/neu、EGFR1、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に対応するアミノ酸配列を含む。
【0056】
1つの局面において、標的部分は、プログラム死1(PD-1)、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。別の局面において、標的部分は、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、PD-1外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびTGFβRII外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 11または12に対応するアミノ酸配列を含む。
【0057】
1つの局面において、標的部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)または核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。別の局面において、標的部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、RANK外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびTGFβRII外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 13または14に対応するアミノ酸配列を含む。
【0058】
1つの局面において、免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)に特異的に結合する分子を含む。別の局面において、免疫調節部分は、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 92、93または94に対応するPD-L1結合アミノ酸配列を含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)の活性または機能を阻害する。
【0059】
1つの局面において、標的部分は、HER2/neu、EGFR1、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 15、16、17、18、19、20、21、22、23または24に対応するアミノ酸配列を含む。
【0060】
1つの局面において、標的部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)または核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。別の局面において、標的部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、RANK外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびPD-1外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 25または26に対応するアミノ酸配列を含む。
【0061】
1つの局面において、免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する分子を含む。別の局面において、免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 95、96、97または98に対応するRANKL結合アミノ酸配列を含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)の活性または機能を阻害する。
【0062】
1つの局面において、標的部分は、HER2/neu、EGFR1、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 27、28、29、30、31、32、33、34、35または36に対応するアミノ酸配列を含む。
【0063】
本発明は、以下の少なくとも1つにより免疫寛容を誘導または推進する新規の標的免疫抑制抗体および融合タンパク質を提供する:
(i)樹状細胞、T細胞および/またはB細胞の活性化の阻害;ならびに
(ii)制御性T細胞および免疫抑制性骨髄DCの展開および/またはサプレッサー機能の推進。本発明のこれらの標的免疫抑制分子は、自己免疫もしくは炎症疾患を処置するためまたは移植細胞、組織もしくは臓器の拒絶を予防するために望ましくないまたは過剰な免疫または炎症応答を抑制するよう設計される。
【0064】
標的免疫抑制抗体および/または融合タンパク質:自己反応性のT細胞の異常な活性化および/または免疫寛容機構の故障は、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患および関節リウマチを含む様々な疾患を引き起こす自己免疫の展開を推進する。本発明の標的免疫抑制抗体および/または融合タンパク質は、望ましくないまたは過剰な免疫または炎症応答を抑制し、免疫寛容を回復または推進するよう設計される。したがって、本発明の組成物および方法は、多様な自己免疫または炎症疾患の処置および移植細胞、組織または臓器グラフトの拒絶の予防に関して広い臨床的汎用性を有する。
【0065】
本発明の標的免疫抑制抗体および/または融合タンパク質は、標的となる炎症誘発サイトカインまたは免疫細胞の活性を阻害すると同時に制御性T細胞の展開および/または機能を促進する免疫抑制分子の標的送達を通じて免疫寛容を推進する能力を提供する。本発明のこれらの分子は、以下の局面の少なくとも1つにおいて既存の治療分子と区別されかつそれらよりも優れている:(i)本発明の分子は、疾患細胞、組織または臓器の環境下にある免疫細胞または炎症誘発分子に免疫抑制分子を標的送達することができる;(ii)本発明の分子は、標的となる炎症誘発分子または免疫細胞の阻害と、免疫寛容を推進する免疫抑制分子の同時送達を組み合わせ、それによって免疫エフェクター細胞の抑制を改善する;および(iii)本発明の分子は、免疫寛容または免疫抑制の2つの独立したまたは相乗作用的な機構を同時に利用する機構を提供することができる。
【0066】
さらに、本発明の標的免疫抑制抗体および/または融合タンパク質は、以下の局面の少なくとも1つにおいて既存の治療分子と区別されかつそれらよりも優れている:(i)自己免疫または炎症疾患を処置するために望ましくないまたは過剰な免疫または炎症応答を抑制する点;および(ii)移植細胞、組織または臓器グラフトの拒絶を予防する点。
【0067】
1つの局面において、免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 99、100または101に対応するPD-1結合アミノ酸配列を含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、PD-1の機能を増大させる。
【0068】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に特異的に結合し、かつ免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。さらなる局面において、標的部分は、TNF-αに結合する抗体を含み、かつ免疫調節部分は、PD-1リガンド1(PD-L1またはB7-H1)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 37に対応するアミノ酸配列を含む。別の局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外リガンド結合ドメインを含み、かつ免疫調節部分は、PD-1リガンド1(PD-L1またはB7-H1)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびPD-L1由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 38または39に対応するアミノ酸配列を含む。
【0069】
1つの局面において、標的部分は、CD20、CD25またはCD4に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを含み、かつ免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 40、41、42、43、44または45に対応するアミノ酸配列を含む。
【0070】
1つの局面において、標的部分は、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 46または47に対応するアミノ酸配列を含む。
【0071】
1つの局面において、標的部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む。さらなる局面において、この分子は、SEQ ID NO: 48または49に対応するアミノ酸配列を含む。
【0072】
1つの局面において、免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 99、100または101に対応するアミノ酸配列を含む。さらなる局面において、免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)受容体のシグナル伝達機能を活性化する。
【0073】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含み、かつ免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。さらなる局面において、標的部分は、TNF-αに結合する抗体を含み、かつ免疫調節部分は、TGF-β由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 50に対応するアミノ酸配列を含む。1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、免疫グロブリンFc領域および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 51または52に対応するアミノ酸配列を含む。
【0074】
1つの局面において、標的部分は、CD20、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)またはCD4に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを含み、かつ免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。さらなる局面において、この分子は、SEQ ID NO: 53、54、55、56、57または58に対応するアミノ酸配列を含む。
【0075】
1つの局面において、標的部分は、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 59または60に対応するアミノ酸配列を含む。
【0076】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含み、かつ免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)またはオステオプロテゲリン(OPG)の細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメインを含む。さらなる局面において、標的部分は、TNF-αに結合する抗体を含み、かつ免疫調節部分は、RANKの細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメイン由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 61に対応するアミノ酸配列を含む。1つの局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の局面において、この分子は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、免疫グロブリンFc領域およびRANKの細胞外RANK結合ドメインまたは外部ドメイン由来の配列を含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 62または63に対応するアミノ酸配列を含む。
【0077】
1つの局面において、標的部分は、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)またはオステオプロテゲリン(OPG)の細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 64または65に対応するアミノ酸配列を含む。
【0078】
1つの局面において、標的部分は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 66または67に対応するアミノ酸配列を含む。
【0079】
1つの局面において、標的部分は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)由来の配列および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分は、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外RANKL結合ドメインまたは外部ドメインを含む。別の局面において、この分子は、SEQ ID NO: 68または69に対応するアミノ酸配列を含む。
【0080】
様々な局面において、この分子は、1つまたは複数の抗原、抗原決定基またはエピトープに融合または直接連結されている。
【0081】
別の態様において、本発明は、本発明の分子および細胞を含む組成物であって、細胞が腫瘍細胞、免疫細胞または樹状細胞である組成物を提供する。
【0082】
別の態様において、本発明は、免疫寛容に対抗または克服する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に1つまたは複数の本発明の分子を投与する工程を包含する。
【0083】
別の態様において、本発明は、新生物疾患を予防または処置する方法を提供する。1つの局面において、新生物疾患は、その腫瘍細胞上にCD4を発現しない非T細胞悪性腫瘍である。1つの態様において、この方法は、それを必要とする対象に、細胞傷害性抗癌療法との併用で、CD4+制御性T細胞(Treg)を標的にしこれを排除する抗体を投与する工程を包含する。1つの局面において、Tregを標的にしそれを排除する抗体は、抗CD4抗体である。様々な局面において、細胞傷害性抗癌療法は、化学療法分子、腫瘍標的抗体、低分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤もしくは腫瘍標的細胞傷害剤、抗血管新生剤またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の局面において、細胞傷害性抗癌療法は、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーションまたは高周波アブレーションを含む。
【0084】
別の態様において、この方法は、それを必要とする対象に、CTLA-4、PD1、PD-1L、RANKL、TGF-β、GITR、4-1BB、OX-40またはToll様受容体(TLR 1-10)を標的にする免疫刺激抗体、融合タンパク質、ペプチドまたはリガンドとの併用で、CD4+制御性T細胞(Treg)を標的にしこれを排除する抗体または分子を投与する工程を包含する。1つの局面において、TLRアゴニストは、TLR-8またはTLR-9の活性化因子を含む。1つの局面において、TLRアゴニストは、CpGヌクレオチドを含む免疫刺激核酸配列を含む。1つの局面において、Tregを標的にしこれを排除する抗体は、抗CD4抗体である。
【0085】
別の態様において、本発明は、新生物疾患を予防または処置する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に、1つまたは複数の本発明の分子を投与する工程を包含する。様々な局面において、対象は、別の抗癌療法との併用で、1つまたは複数の本発明の分子を投与される。1つの局面において、抗癌療法は、化学療法分子、抗体、低分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤、細胞傷害剤、標的治療剤または抗血管新生剤を含む。別の局面において、抗癌療法は、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーションまたは高周波アブレーションを含む。別の局面において、対象は、制御性T細胞(Treg)の産生もしくは機能を阻害するまたはTregの数を削減する抗体または分子との併用で、1つまたは複数の本発明の分子を投与される。1つの局面において、Tregを標的にしこれを排除する抗体は、抗CD4抗体である。別の局面において、Tregの機能に対抗する分子は、CTLA-4、PD1、PD-1L、RANKL、TGF-β、GITRを標的にする抗体、融合タンパク質、ペプチドまたはリガンドである。別の局面において、Tregの機能に対抗する分子は、4-1BBまたはOX-40を標的にする抗体または融合タンパク質またはリガンドである。別の局面において、Tregの機能に対抗する分子は、Toll様受容体(TLR 1-10)のアゴニストである。1つの局面において、TLRアゴニストは、TLR-8またはTLR-9の活性化因子を含む。1つの局面において、TLRアゴニストは、CpGヌクレオチドを含む免疫刺激核酸配列である。
【0086】
1つの局面において、化学療法剤は、トポイソメラーゼ作用剤、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、カンプトテシン、カンプトテシンアナログ、イリノテカン、エピポドフィロトキシン(epipodophyilotoxin)、エトポシド、アルキル化剤、シクロホスファミド、シスプラチン、シスプラチンアナログ、オキサリプラチン、代謝拮抗物質、フルオロピリミジンアナログ、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、アザシチジン、抗微小管剤、タキサン、パクリタキセルまたはドセタキセルである。
【0087】
別の態様において、対象は、任意のワクチンとの併用で、1つまたは複数の本発明の分子を投与される。別の局面において、ワクチンは、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、腫瘍エピトープ、腫瘍抗原含有融合タンパク質、腫瘍細胞または樹状細胞を含む。別の局面において、ワクチンは、病原体抗原、病原体関連抗原、病原体エピトープまたは病原体抗原含有融合タンパク質を含む。1つの局面において、ワクチンは、破傷風毒素由来の代理CD4+T細胞ヘルパーエピトープを含む。1つの局面において、このCD4+Tヘルパー配列は、破傷風毒素フラグメントCのドメイン(pDOM1)を含む。1つの局面において、pDOM配列は、細胞浸透性のカチオン性ポリペプチド(例えば、アルギニン-9)に融合される。別の局面において、Arg9-pDOM配列は、ワクチンを含む特異抗原に融合される。
【0088】
別の態様において、本発明は、免疫細胞を処置する方法であって、細胞をエクスビボまたはインビトロで本発明の分子と接触させる方法を提供する。別の態様において、本発明は、新生物疾患を処置する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に、本発明の分子と接触させた免疫細胞の組成物を投与する工程を包含する。
【0089】
別の態様において、本発明は、免疫寛容を誘導または推進する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に1つまたは複数の本発明の分子を投与する工程を包含する。
【0090】
別の態様において、本発明は、自己免疫または炎症疾患を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に1つまたは複数の本発明の分子を投与する工程を包含する方法を提供する。1つの局面において、対象は、別の抗炎症または免疫抑制療法との併用で、1つまたは複数の本発明の分子を投与される。別の態様において、本発明は、免疫細胞の処置方法であって、細胞をエクスビボまたはインビトロで本発明の分子と接触させる方法を提供する。別の態様において、本発明は、自己免疫もしくは炎症疾患を処置するまたは移植細胞もしくは組織の拒絶を予防する方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に、本発明の分子と接触させた免疫細胞の組成物を投与する工程を包含する。
【0091】
本明細書において言及されているすべての刊行物、特許および特許出願は、各々個々の刊行物、特許または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み入れられることが示されているものとして、参照により本明細書に組み入れられる。
【0092】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の参照を包含する。したがって、例えば、「方法」に対する参照は、本願に接した当業者に明らかとなるであろう、本明細書中に記載される類型の1つまたは複数の方法および/または工程を包含する、等である。
【0093】
別途定義がなされていない限り、本明細書中で使用されるすべての技術・科学用語は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験には本明細書中に記載されているのと類似または等価な任意の方法および材料を使用することができるが、ここではその好ましい方法および材料について説明する。
【0094】
本明細書中で使用される場合、「免疫細胞」または「免疫エフェクター細胞」は、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、抗原提示細胞(APC)を包含する。
【0095】
本明細書中で使用される場合、「新生物」または「腫瘍」は、それらの派生語を含めて、新規で異常な組織成長物を意味し、これは良性または癌性であり得る。関連する局面において、新生物は、様々な癌を含むがこれらに限定されない新生物疾患または障害の指標となる。例えば、そのような癌には、前立腺癌、膵癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、肝癌、腎癌、肺癌、精巣癌、乳癌、卵巣癌、膵癌、脳癌および頭頸部癌、黒色腫、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等が含まれ得る。
【0096】
本明細書中で使用される場合、「対象」は、その派生語を含めて、ヒトまたはイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ラットおよびマウスを含む脊椎動物を意味する。
【0097】
本明細書中で使用される場合、「標的部分」は、特定の分子または細胞成分を見つけ出しこれらに結合する能力を有する分子をあらわす。標的部分は、抗体、抗体フラグメント、scFv、Fc含有ポリペプチド、融合抗体、ポリペプチド、ペプチド、アプタマー、リガンド、核酸またはこれらの任意の組み合わせであり得る。1つの態様において、標的部分は、細胞または組織中に存在する分子に結合することができる。1つの局面において、標的部分は、疾患細胞または組織、例えば癌細胞または腫瘍中の分子に結合することができる。別の局面において、標的部分は、正常細胞または組織、例えば免疫細胞に結合することができる。別の局面において、標的部分は、免疫応答を調節する細胞性または細胞外分子に結合することができる。別の局面において、標的部分は、成長因子受容体、成長因子、サイトカイン受容体、サイトカインまたは細胞表面分子に結合する。
【0098】
別の態様において、標的部分は腫瘍標的部分である。腫瘍標的部分は、腫瘍細胞の成分に結合することができるかまたは腫瘍細胞近傍(例えば、腫瘍血管系または腫瘍微小環境)に結合することができる。1つの態様において、腫瘍標的部分は、腫瘍細胞、腫瘍微小環境、腫瘍血管系、腫瘍関連リンパ球、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、腫瘍細胞表面分子、腫瘍抗原決定基、腫瘍抗原含有融合タンパク質、腫瘍関連細胞、腫瘍関連免疫細胞または腫瘍ワクチンの成分に結合する。
【0099】
例えば、様々な態様において、標的部分は、上皮成長因子受容体(EGFR、EGFR1、ErbB-1、HER1)、ErbB-2(HER2/neu)、ErbB-3/HER3、ErbB-4/HER4、EGFRリガンドファミリー;インスリン様成長因子受容体(IGFR)ファミリー、IGF結合タンパク質(IGFBPs)、IGFRリガンドファミリー(IGF-1R);血小板由来成長因子受容体(PDGFR)ファミリー、PDGFRリガンドファミリー;線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)ファミリー、FGFRリガンドファミリー、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)ファミリー、VEGFファミリー;HGF受容体ファミリー:TRK受容体ファミリー;エフリン(EPH)受容体ファミリー;AXL受容体ファミリー;白血球チロシンキナーゼ(LTK)受容体ファミリー;TIE受容体ファミリー、アンジオポイエチン1、2;受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体(ROR)受容体ファミリー;ジスコイジンドメイン受容体(DDR)ファミリー;RET受容体ファミリー;KLG受容体ファミリー;RYK受容体ファミリー;MuSK受容体ファミリー;形質転換成長因子アルファ(TGF-α)、TGF-α受容体;形質転換成長因子ベータ(TGF-β)、TGF-β受容体;インターロイキン13受容体アルファ2鎖(IL13Ralpha2)、インターロイキン6(IL-6)、IL-6受容体、インターロイキン4、IL-4受容体、サイトカイン受容体、クラスI(ヘマトポイエチンファミリー)およびクラスII(インターフェロン/IL-10ファミリー)受容体、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリー、TNF-α、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNTRSF)、細胞死受容体ファミリー、TRAIL受容体;癌・精巣(CT)抗原、系統特異的抗原、分化抗原、アルファ・アクチン4、ARTC1、切断点クラスター領域・エーベルソン(Bcr-abl)融合産物、B-RAF、カスパーゼ5(CASP-5)、カスパーゼ8(CASP-8)、ベータ・カテニン(CTNNB1)、細胞分裂周期27(CDC27)、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、CDKN2A、COA-1、dek-can融合タンパク質、EFTUD-2、伸長因子2(ELF2)、Etsバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS(ETC6-AML1)融合タンパク質、フィブロネクチン(FN)、GPNMB、低密度脂質受容体/GDP-Lフコース;ベータ-Dガラクトース2-アルファ-Lフコシルトランスフェラーゼ(fucosyltraosferase)(LDLR/FUT)融合タンパク質、HLA-A2、アルファ2ドメインのアルファ・ヘリックスの残基170にアルギニンからイソロイシンへの交換を含むHLA-A2遺伝子(HLA-A*201-R170I)、MLA-A11、熱ショックタンパク質70-2変異体(HSP70-2M)、KIAA0205、MART2、黒色腫遍在変異体(melanoma ubiquitous mutated)1、2、3(MUM-1,2,3)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、ネオPAP、ミオシンクラス1、NFYC、OGT、OS-9、pml-RARalpha融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、K-ras(KRAS2)、N-ras(NRAS)、HRAS、RBAF600、SIRT2、SNRPD1、SYT-SSX1または-SSX2融合タンパク質、トリオースリン酸イソメラーゼ、BAGE、BAGE-1、BAGE-2、3、4、5、GAGE-1、2、3、4、5、6、7、8、GnT-V(異常なN-アセチルグルコサミニル(giucosaminyl)トランスフェラーゼV、MGAT5)、HERV-K-MEL、KK-LC、KM-HN-1、LAGE、LAGE-1、黒色腫CTL認識(recognixed)抗原(CAMEL)、MAGE-A1(MAGE-1)、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-AS、MAGE-A6、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-3、MAGE-B1、MAGE-B2、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、ムチン1(MUC1)、MART-1/Melan-A(MLANA)、gp100、gp100/Pme117(S1LV)、チロシナーゼ(TYR)、TRP-1、HAGE、NA-88、NY-ESO-1、NY-ESO-1/LAGE-2、SAGE、Sp17、SSX-1、2、3、4、TRP2-1NT2、癌胎児性抗原(CEA)、カリクレイン(Kallikfein)4、マンマグロビンA(mammaglobm-A)、OA1、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原、TRP-1/gp75、TRP-2、アディポフィリン、黒色腫非存在性インターフェロン誘導性タンパク質2(interferon inducible protein absent in nielanorma 2)(AIM-2)、BING-4、CPSF、サイクリンD1、上皮細胞接着分子(Ep-CAM)、EpbA3、線維芽細胞増殖因子5(FGF-5)、糖タンパク質250(gp250腸カルボキシルエステラーゼ(iCE)、アルファ・フェトタンパク質(AFP)、M-CSF、mdm-2、MUCI、p53(TP53)、PBF、FRAME、PSMA、RAGE-1、RNF43、RU2AS、SOX10、STEAP1、スルビビン(BIRCS)、ヒトテロメラーゼリバーストランスクリプターゼ(hTERT)、テロメラーゼ、ウィルムス腫瘍遺伝子(WT1)、SYCP1、BRDT、SPANX、XAGE、ADAM2、PAGE-5、LIP1、CTAGE-1、CSAGE、MMA1、CAGE、BORIS、HOM-TES-85、AF15q14、HCA66I、LDHC、MORC、SGY-1、SPO11、TPX1、NY-SAR-35、FTHLI7、NXF2 TDRD1、TEX15、FATE、TPTE、免疫グロブリンイディオタイプ、ベンス・ジョーンズタンパク質、エストロゲン受容体(ER)、アンドロゲン受容体(AR)、CD40、CD30、CD20、CD19、CD33、CD4、CD25、CD3、癌抗原72-4(CA 72-4)、癌抗原15-3(CA 15-3)、癌抗原27-29(CA 27-29)、癌抗原125(CA 125)、癌抗原19-9(CA 19-9)、ベータ・ヒト絨毛ゴナドトロピン、1-2ミクログロブリン、扁平上皮細胞癌抗原、ニューロン特異的エノラーゼ(enoJase)、熱ショックタンパク質gp96、GM2、サルグラモスチム、CTLA-4、707アラニンプロリン(707-AP)、T細胞認識腺癌抗原4(adenocarcinoma antigen recognized by T cell 4)(ART-4)、癌胎児性抗原ペプチド1(CAP-1)、カルシウム活性化塩化物チャネル2(CLCA2)、シクロフィリンB(Cyp-B)、ヒト印環腫瘍2(HST-2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)タンパク質(HPV-E6、HPV-E7、メジャーまたはマイナーカプシド抗原、その他)エプスタイン・バーウイルス(EBV)タンパク質(EBV潜伏性膜タンパク質 - LMP1、LMP2;その他)、B型またはC型肝炎ウイルスタンパク質、ならびにHIVタンパク質を含むがこれらに限定されない分子または成分に特異的であるかまたはそれらに結合する。本発明の組成物はさらに、ペプチド/ポリペプチドとして、および/またはそれらのコード体として、上記物質を含み得る。
【0100】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍細胞、腫瘍抗原、腫瘍血管系、腫瘍微小環境または腫瘍浸潤性免疫細胞の成分に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFvまたはFc含有ポリペプチドを含む。1つの局面において、標的部分は、上皮成長因子受容体(EGFR1、Erb-B1)、HER2/neu(Erb-B2)、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子受容体(IGF-1R)、TRAIL受容体、上皮細胞接着分子、癌胎児性抗原、前立腺特異的膜抗原、Mucin-1、CD30、CD33、CD40またはそれらの組み合わせに特異的に結合する。
【0101】
本明細書に開示される組成物および方法に組み込むことのできる抗体の例には、トラスツズマブ(抗HER2/neu抗体);パーツズマブ(抗HER2 mAb);セツキシマブ(上皮成長因子受容体EGFRに対するキメラモノクローナル抗体);パニツムマブ(抗EGFR抗体);ニモツズマブ(抗EGFR抗体);ザルツムマブ(抗EGFR mAb);ネシツムマブ(抗EGFR mAb);MDX-210(ヒト化抗HER-2二特異性抗体);MDX-210(ヒト化抗HER-2二特異性抗体);MDX-447(ヒト化抗EGF受容体二特異性抗体);リツキシマブ(キメラマウス/ヒト抗CD20 mAb);オビヌツズマブ(抗CD20 mAb);オファツムマブ(抗CD20 mAb);トシツムマブI131(抗CD20 mAb);イブリツモマブチウキセタン(抗CD20 mAb);ベバシズマブ(抗VEGF mAb);ラムシルマブ(抗VEGFR2 mAb);ラニビズマブ(抗VEGF mAb);アフリバーセプト(IgG1 Fcに融合されたVEGFR1およびVEGFR2の細胞外ドメイン);AMG386(IgG1 Fcに融合されたアンジオポイエチン1および2結合ペプチド);ダロツズマブ(抗IGF-1R mAb);ゲムツズマブオゾガマイシン(抗CD33 mAb);アレムツズマブ(抗Campath-1/CD52 mAb);ブレンツキシマブベドチン(抗CD30 mAb);カツマキソマブ(上皮細胞接着分子およびCD3を標的にする二特異性mAb);ナプツモマブ(抗5T4 mAb);ジレンツキシマブ(抗カルボニックアンヒドラーゼix);またはファーレツズマブ(抗葉酸受容体)等の抗体が含まれるがこれらに限定されない。他の例には、Panorex(商標)(17-1A)(マウスモノクローナル抗体);Panorex(@(17-1A)(キメラマウスモノクローナル抗体);BEC2(抗イディオタイプmAb(ami-idiotypic mAb)、GDエピトープ模倣)(BCG含む);Oncolym(Lym-1モノクローナル抗体);SMART M195 Ab、ヒト化13'1LYM-1(Oncolym)、Ovarex(B43.13、抗イディオタイプマウスmAb);腺癌のEGP40(17-1A)全癌抗原(pancarcinoma antigen)に結合する3622W94 mAb;Zenapax(SMART Anti-Tac(IL-2受容体);SMART M195 Ab、ヒト化Ab、ヒト化);NovoMAb-G2(全癌特異的Ab);TNT(ヒストン抗原に対するキメラmAb);TNT(ヒストン抗原に対するキメラmAb);Gliomab-H(モノクローナルヒト化Ab);GNI-250 Mab;EMD-72000(キメラEGFアンタゴニスト);LymphoCide(ヒト化IL.L.2抗体);およびMDX-260二特性、GD-2標的、ANA Ab、SMART IDIO Ab、SMART ABL 364 AbまたはImmuRAIT-CEA等の抗体が含まれる。抗体の例には、US5736167、US7060808およびUS5821337に開示される抗体も含まれる。
【0102】
1つの態様において、標的部分は、制御性T細胞、骨髄サプレッサー細胞または樹状細胞の成分に特異的に結合する。別の局面において、標的部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:CD4;CD25(IL-2α受容体;IL-2αR);細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4;CD152);インターロイキン10(IL-10);形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR);形質転換成長因子ベータ(TGF-β);プログラム死1(PD-1);プログラム死1リガンド(PD-L1もしくはPD-L2);核因子κB受容体活性化因子(RANK);核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL);LAG-3;グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;TNFRSF18);またはインターロイキン4受容体(IL-4R)。1つの局面において、標的部分は、標的分子の機能を増大させるアゴニストである。別の局面において、標的部分は、標的分子の機能を阻害するアンタゴニストである。
【0103】
1つの局面において、標的部分は、免疫系を調節する特定のサイトカイン、サイトカイン受容体、共刺激分子、共阻害分子または免疫調節受容体に結合する。別の局面において、標的部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー;腫瘍壊死因子α(TNF-α);腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー;インターロイキン12(IL-12);IL-12受容体、4-1BB(CD137);4-1BBリガンド(4-1BBL;CD137L);OX40(CD134;TNR4);OX40リガンド(OX40L;CD40;CD40リガンド(CD40L);CTLA-4;プログラム死1(PD-1);PD-1リガンド1(PD-L1;B7-H1);またはPD-1リガンド2(PD-L2;B7-DC);B7ファミリー;B7-1(CD80);B7-2(CD86);B7-H3;B7-H4;GITR/AITR;GITRL/AITRL;BTLA;CD70;CD27;LIGHT;HVEM;Toll様受容体(TLR)(TLR1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)。1つの局面において、標的部分は、標的分子の機能を増大させるアゴニストである。別の局面において、標的部分は、標的分子の機能を阻害するアンタゴニストである。
【0104】
1つの局面において、標的部分は、制御性T細胞、骨髄サプレッサー細胞または樹状細胞の成分に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、Fc含有ポリペプチドまたはペプチドを含む。別の局面において、標的部分は、免疫系を調節するサイトカイン、サイトカイン受容体、共刺激分子または共阻害分子に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFvまたはFc含有ポリペプチドを含む。別の局面において、標的部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:CD4;CD25(IL-2α受容体、IL-2αR);細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4;CD152);インターロイキン10(IL-10);形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR);形質転換成長因子ベータ(TGF-β);プログラム死1(PD-1);PD-1リガンド1(PD-L1;B7-H1);PD-1リガンド2(PD-L2;B7-DC);核因子κB受容体活性化因子(RANK);核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL);LAG-3;グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;TNFRSF18);インターロイキン4受容体(IL-4R);腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー;腫瘍壊死因子α(TNF-α);腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー;インターロイキン12(IL-12);IL-12受容体;4-1BB(CD137);4-1BBリガンド(4-1BBL;CD137L);OX40(CD134;TNR4);OX40リガンド(OX40L;CD40;CD40リガンド(CD40L);CTLA-4;B7ファミリー;B7-1(CD80);B7-2(CD86);B7-H3;B7-H4;GITR/AITR;GITRL/AITRL;BTLA;CD70;CD27;LIGHT;またはHVEM。1つの局面において、標的部分は、標的分子の機能を増大させるアゴニストである。別の局面において、標的部分は、標的分子の機能を阻害するアンタゴニストである。
【0105】
本明細書に開示される組成物および方法に組み込むことのできる抗体の例には、ザヌリムマブ(Zanulimumab)(抗CD4 mAb)、ケリキシマブ(抗CD4 mAb);イピリムマブ(MDX-101;抗CTLA-4 mAb);トレミリムマブ(Tremilimumab)(抗CTLA-4 mAb);(ダクリズマブ(抗CD25/IL-2R mAb);バシリキシマブ(抗CD25/IL-2R mAb);MDX-1106(抗PD1 mAb);GITRに対する抗体;GC1008(抗TGF-β抗体);メテリムマブ(metelimumab)/CAT-192(抗TGF-β抗体);レルデリムマブ(lerdelimumab)/CAT-152(抗TGF-β抗体);ID11(抗TGF-β抗体);デノスマブ(抗RANKL mAb);BMS-663513(ヒト化抗4-1BB mAb);SGN-40(ヒト化抗CD40 mAb);CP870,893(ヒト抗CD40 mAb);インフリキシマブ(キメラ抗TNF mAb;アダリムマブ(ヒト抗TNF mAb);セルトリズマブ(ヒト化Fab抗TNF);ゴリムマブ(抗TNF);エタネルセプト(IgG1 Fcに融合されたTNFRの細胞外ドメイン);ベラタセプト(Fcに融合されたCTLA-4の細胞外ドメイン);アバタセプト(Fcに融合されたCTLA-4の細胞外ドメイン);ベリムマブ(抗Bリンパ球刺激因子);ムロモナブ-CD3(抗CD3 mAb);オテリキシズマブ(Otelixizumab)(抗CD3 mAb);テプリズマブ(抗CD3 mAb);トシリズマブ(抗IL-6R mAb);REGN88(抗IL-6R mAb);ウステキヌマブ(抗IL-12/23 mAb);ブリアキヌマブ(抗IL-12/23 mAb);ナタリズマブ(抗α4インテグリン);ベドリズマブ(抗α4β7インテグリンmAb);T1h(抗CD6 mAb);エプラツズマブ(抗CD22 mAb);エファリズマブ(抗CD11a mAb);およびアタシセプト(Fcに融合された膜貫通活性化因子・カルシウム調節リガンド相互作用因子(transmembrane activator and calcium-modulating ligand interactor)の細胞外ドメイン)等の抗体が含まれるがこれらに限定されない。
【0106】
1つの態様において、本発明は、「免疫調節部分」に融合された標的部分を含む分子を提供する。本明細書中で使用される場合、「免疫調節部分」は、制御性T細胞、骨髄サプレッサー細胞または樹状細胞の特定成分に結合し、Tregまたは骨髄サプレッサー細胞の数または機能を調節するリガンド、ペプチド、ポリペプチドまたはFc含有ポリペプチドをあらわす。さらなる局面において、「免疫調節部分」は、免疫系を調節するサイトカイン、サイトカイン受容体、共刺激分子または共阻害分子に特異的に結合する。別の局面において、免疫調節部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR);形質転換成長因子ベータ(TGF-β);プログラム死1(PD-1);PD-1リガンド1(PD-L1;B7-H1);PD-1リガンド2(PD-L2;B7-DC);核因子κB受容体活性化因子(RANK);もしくは核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL);または血管内皮成長因子(VEGF)。別の局面において、免疫調節部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;AITR;TNFRSF18);GITRL/AITRL;4-1BB(CD137);4-1BBリガンド(4-1BBL;CD137L);OX40(CD134;TNR4);OX40リガンド(OX40L);B7-H3;B7-H4;BTLA;CD40;CD40リガンド(CD40L);CD70;CD27;LIGHT;またはHVEM。別の局面において、免疫調節部分は、以下の分子の1つに特異的に結合する:腫瘍壊死因子α(TNF-α);インターロイキン12(IL-12);IL-12R;インターロイキン10(IL-10);IL-10R。別の局面において、免疫調節部分は、CTLA-4の細胞外ドメインを含む。1つの局面において、免疫調節部分は、結合した分子の機能を増大させるアゴニストである。別の局面において、免疫調節部分は、標的分子の機能を阻害するアンタゴニストである。
【0107】
別の局面において、免疫調節部分は、以下の受容体の1つの細胞外ドメインまたはリガンド結合配列を含む:形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βRII、TGF-βRIIbもしくはTGF-βRIII);プログラム死1(PD-1);核因子κB受容体活性化因子(RANK);血管内皮成長因子受容体(VEGFR1もしくはVEGFR2);またはIL-10R。別の局面において、免疫調節部分は、以下の受容体の1つの細胞外ドメインまたはリガンド結合配列を含む:腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2);4-1BB(CD137);OX40(CD134;TNR4);CD40;IL-12R;またはグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;AITR;TNFRSF18)。さらなる局面において、この特定受容体の細胞外ドメインは、同族リガンド(cognate ligand)に結合し、そのリガンドとそのネイティブの受容体との相互作用を阻害する。
【0108】
別の局面において、免疫調節部分は、以下のリガンドまたは活性なリガンドフラグメントの1つまたは複数を含む:形質転換成長因子ベータ(TGF-β);PD-1リガンド1(PD-L1);PD-1リガンド2(PD-L2);またはIL-10。別の局面において、免疫調節部分は、以下のリガンドまたは活性なリガンドフラグメントの1つまたは複数を含む:4-1BBリガンド(4-1BBL;CD137L);OX40リガンド(OX40L);IL-12;CD40L;またはGITRL/AITRL。
【0109】
別の局面において、免疫調節部分は、標的部分のC末端に融合される。別の局面において、免疫調節部分は、標的部分のN末端に融合される。1つの局面において、融合分子は、X-Fc-Yにより表され、ここでXは標的部分であり、Fcは免疫グロブリンFc領域であり、そしてYは免疫調節部分である。別の局面において、融合分子は、Y-Fc-Xにより表され、ここでXは標的部分であり、そしてYは免疫調節部分である。1つの局面において、標的部分はさらに免疫調節部分でもあり得る。
【0110】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍細胞、腫瘍抗原、腫瘍血管系、腫瘍微小環境または腫瘍浸潤性免疫細胞の成分に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFvまたはFc含有ポリペプチドを含み、かつ免疫調節部分は、以下の受容体の1つの細胞外ドメインまたはリガンド結合配列を含む:形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βRII、TGF-βRIIbもしくはTGF-βRIII);プログラム死1(PD-1);核因子κB受容体活性化因子(RANK);血管内皮成長因子受容体(VEGFR1もしくはVEGFR2);またはIL-10R。
【0111】
1つの局面において、標的部分は、腫瘍細胞、腫瘍抗原、腫瘍血管系、腫瘍微小環境または腫瘍浸潤性免疫細胞の成分に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFvまたはFc含有ポリペプチドを含み、かつ免疫調節部分は、以下のリガンドまたは活性なリガンドフラグメントの1つまたは複数を含む:4-1BBリガンド(4-1BBL;CD137L);OX40リガンド(OX40L);IL-12;CD40L;またはGITRL/AITRL。
【0112】
別の局面において、標的部分は、制御性T細胞、骨髄サプレッサー細胞または樹状細胞の特定成分に結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、Fc含有ポリペプチドまたはリガンドを含み、かつ免疫調節部分は、以下の受容体の1つの細胞外ドメインまたはリガンド結合配列を含む:形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βRII、TGF-βRIIbもしくはTGF-βRIII);プログラム死1(PD-1);核因子κB受容体活性化因子(RANK);またはIL-10R。別の局面において、免疫調節部分は、以下のリガンドまたは活性なリガンドフラグメントの1つまたは複数を含む:4-1BBリガンド(4-1BBL;CD137L);OX40リガンド(OX40L);IL-12;CD40L;またはGITRL/AITRL。別の局面において、制御性T細胞、骨髄サプレッサー細胞または樹状細胞の特定の標的成分は、以下の分子の1つである:CD4;CD25(IL-2α受容体、IL-2αR);細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4;CD152);インターロイキン10(IL-10);形質転換成長因子ベータ(TGF-β);プログラム死1(PD-1);プログラム死1リガンド(PD-L1もしくはPD-L2);核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL);LAG-3;グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;TNFRSF18);またはインターロイキン4受容体(IL-4R)。
【0113】
別の局面において、標的部分は、以下の1つに結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、Fc含有ポリペプチドまたはリガンドを含み:CTLA-4;4-1BB(CD137);OX40(CD134;TNR4);CD40;IL-12R;またはグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;AITR;TNFRSF18);かつ免疫調節部分は、以下から選択される異なる分子を含む:(i)以下の受容体の1つの細胞外ドメインまたはリガンド結合配列:形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βRII、TGF-βRIIbもしくはTGF-βRIII);プログラム死1(PD-1);核因子κB受容体活性化因子(RANK);またはIL-10R;または(ii)以下の1つに結合するFc含有ポリペプチドまたはリガンド:CTLA-4;4-1BB(CD137);OX40(CD134;TNR4);CD40;IL-12R;またはGITR(AITR;TNFRSF18)。
【0114】
別の局面において、標的部分および免疫調節部分は、以下のいずれかから選択される2つの異なる分子である:TGF-β、CTLA-4、PD-1、4-1BB(CD137)、OX40(CD134;TNR4)、CD40;IL-12RもしくはGITR/AITR(TNFRSF18)またはToll様受容体(TLR)に結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、Fc含有ポリペプチドまたはリガンド;形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βRII、TGF-βRIIbもしくはTGF-βRIII)、プログラム死1(PD-1)、核因子κB受容体活性化因子(RANK)またはIL-10Rの細胞外ドメインまたはリガンド結合配列。1つの局面において、融合分子は、X-Fc-Yにより表され、ここでXは免疫調節性標的部分であり、そしてYは異なる免疫調節部分である。
【0115】
別の局面において、標的部分は、以下の分子の1つに結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、Fc含有ポリペプチドを含み:CD4;CD25(IL-2α受容体、IL-2αR);またはCD20;かつ免疫調節部分は、以下のリガンドまたは活性なリガンドフラグメントの1つを含む:形質転換成長因子ベータ(TGF-β);PD-1リガンド1(PD-L1);PD-1リガンド2(PD-L2);またはIL-10。
【0116】
別の局面において、標的部分は、腫瘍壊死因子α(TNF-α);インターロイキン12(IL-12);IL-6R、Bリンパ球刺激因子、CD11a、CD6またはCD22に結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、Fc含有ポリペプチドを含み;かつ免疫調節部分は、以下の1つを含む:(i)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);PD-1リガンド1(PD-L1);もしくはIL-10のリガンドもしくは活性なリガンドフラグメント;または(ii)RANK、4-1BB(CD137);OX40(CD134;TNR4);CD40;IL-12R;もしくはGITR/AITR(TNFRSF18)の細胞外ドメインもしくはリガンド結合フラグメント。
【0117】
別の局面において、標的部分は、免疫グロブリンFcに融合されたCTLA-4の細胞外ドメインを含み、かつ免疫調節部分は、以下の1つを含む:(i)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);PD-1リガンド1(PD-L1);もしくはIL-10のリガンドもしくは活性なリガンドフラグメント;または(ii)TNFR2、RANK、4-1BB(CD137)、OX40(CD134;TNR4)、CD40、IL-12RもしくはGITR/AITR(TNFRSF18)のリガンド結合フラグメント。
【0118】
別の局面において、標的部分および免疫調節部分は、以下のいずれかから選択される2つの異なる分子である:腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン12(IL-12)、IL-6R、Bリンパ球刺激因子、CD11a、CD6もしくはCD22に結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、Fc含有ポリペプチド;TNFR2、RANK、4-1BB(CD137)、OX40(CD134;TNR4)、CD40、IL-12RもしくはGITR/AITR(TNFRSF18)のリガンド結合フラグメント;形質転換成長因子ベータ(TGF-β)、PD-1リガンド1(PD-L1);もしくはIL-10のリガンドもしくは活性なリガンドフラグメント;またはCTLA-4-Fc。1つの局面において、融合分子は、X-Fc-Yにより表され、ここでXは免疫調節性標的部分であり、そしてYは異なる免疫調節部分である。
【0119】
抗体:1つの態様において、標的部分または融合タンパク質は、免疫グロブリンである。本明細書中で使用される場合、「免疫グロブリン」という用語は、天然または人工の一価または多価抗体を包含し、それにはポリクローナル、モノクローナル、多特異的、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab発現ライブラリにより生成されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれるがこれらに限定されない。「抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子、をあらわす。免疫グロブリンイオンは、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。
【0120】
本明細書中に開示される抗体には、例えばFab、Fab'およびF(ab')2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド架橋Fvs(sdfv)およびVLまたはVHドメインのいずれかを含むフラグメントであるがこれらに限定されない抗体フラグメントが含まれる。1つの態様において、標的部分は、抗体またはscFvである。
【0121】
単鎖抗体を含む抗原結合抗体フラグメントは、可変領域を単独でまたは以下の全部もしくは一部との組み合わせで含み得る:ヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメイン。抗原結合フラグメントはまた、可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインの任意の組み合わせを含み得る。また、Fcフラグメント、抗原・Fc融合タンパク質およびFc・標的部分も含まれる。抗体は、鳥類およびほ乳類を含む任意の動物源由来であり得る。1つの局面において、抗体は、ヒト、ネズミ(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマまたはニワトリ由来である。さらに、そのような抗体は、ヒト化型の抗体であり得る。抗体は、一特異性、二特異性、三特異性またはそれ以上の多特異性であり得る。
【0122】
本明細書における抗体は、特に、所望の生物学的活性を示す限り、その重鎖および/または軽鎖の一部が特定種由来の抗体の対応配列と同一もしくは相同であるかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属しておりそしてその鎖の残りの部分が別種由来の抗体の対応配列と同一もしくは相同であるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属している「キメラ」抗体、およびそのような抗体のフラグメントを包含する(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 81: 6851-6855)。本明細書における関心対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル、類人猿等)由来の可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化(primatized)」抗体が含まれる。
【0123】
抗体の生産には様々な方法が用いられる。単一型の抗体を産生するクローン細胞株に関するハイブリドーマ技術は、マウス(ネズミ)、ハムスター、ラットおよびヒトを含む様々な種の細胞を使用する。抗体を調製する別の方法は、組み換えDNA技術を含む遺伝子操作を使用する。例えば、これらの技術により作製された抗体には、特に、キメラ抗体およびヒト化抗体が含まれる。キメラ抗体は、1を超える類型の種由来のDNAコード領域を組み合わせたものである。例えば、キメラ抗体は、可変領域をマウスからおよび定常領域をヒトから得ているものであり得る。ヒト化抗体は、非ヒト部分を含んでいるものの大部分はヒトから得ている。キメラ抗体と同様、ヒト化抗体は、完全なヒト定常領域を含み得る。しかしキメラ抗体とは異なり、可変領域は、部分的にヒト由来であり得る。ヒト化抗体の非ヒト合成部分は、多くの場合、マウス抗体のCDR由来である。いずれの場合も、これらの領域は、その抗体が特定の抗原を認識しそれに結合するのに重要となる。
【0124】
1つの態様において、ハイブリドーマは、標的部分および免疫調節部分を含む標的融合タンパク質を産生することができる。1つの態様において、抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドを含む標的部分は、ポリペプチドからなる免疫調節部分にリンカーを介してまたはリンカーを介さずに連結または融合される。リンカーは、アミノ酸リンカーであり得る。1つの態様において、リンカーは(GGGGS)nであり、ここでnは1、2、3、4、5、6、7または8である。例えば、

である。別の態様において、リンカーは、EPKSCDK(SEQ ID NO: 105)である。別の態様において、リンカーは、IEGRDMD(SEQ ID NO: 106)である。様々な局面において、リンカーの長さは、標的部分の結合または免疫調節部分の機能を最適化するよう変更され得る。様々な局面において、免疫調節部分は、標的抗体またはFc含有融合タンパク質の重鎖のFc領域のC末端に融合されたポリペプチドである。別の局面において、免疫調節部分は、標的抗体の軽鎖のC末端に融合されたポリペプチドである。別の局面において、融合タンパク質は、X-Fc-Yを含み、ここでXは標的ポリペプチドであり、そしてYは免疫調節ポリペプチドである。
【0125】
例えば、ハイブリドーマは、SEQ.ID.NO:1〜69に対応するポリペプチドを産生することができる。
【0126】
抗体フラグメントは、インタクトな抗体の一部分、例えばその抗原結合または可変領域を含む一部分を含み得る。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab'、F(ab')2およびFvフラグメント;FcフラグメントまたはFc融合産物;ダイアボディ(diabodies);直鎖抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成される多特異的抗体が含まれる。
【0127】
インタクトな抗体は、抗原結合可変領域ならびに軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメインCH1、CH2およびCH3を含む抗体である。定常ドメインは、ネイティブ配列の定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントもしくは任意のその他の修飾Fc(例えば、グリコシル化またはその他の加工がなされたFc)であり得る。
【0128】
インタクトな抗体は、抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域もしくは任意のその他の修飾Fc領域)に起因する生物学的活性を意味する1つまたは複数の「エフェクター機能」を有し得る。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合;補体依存細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存細胞媒介細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体(BCR)の下方制御;および抗原提示細胞または樹状細胞による抗原の交差提示が含まれる。1つの態様において、標的抗体またはFc含有融合タンパク質は、免疫調節部分の標的細胞への集中的または優先的送達を促進する。別の局面において、標的抗体は、標的細胞の死を誘導するかまたはそれを免疫細胞媒介細胞傷害作用に感作することができる。別の局面において、Fc融合タンパク質または抗体は、免疫調節部分もしくは抗体結合腫瘍標的由来の免疫原性アポトーシス物質またはその両方の、抗原提示細胞(APC)への、(APC上での)それらのFcおよびFc受容体間の相互作用を通じた送達を促進することができる。
【0129】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、インタクトな抗体は異なる「クラス」に分類され得る。インタクトな抗体の主要なクラスは5つ存在し:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、そしてこれらのいくつかはさらに「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgC3、IgG4、IgAおよびIgA2に分割され得る。重鎖定常ドメインは、抗体クラスの違いに対応して、それぞれ、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる。様々な免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元配置が周知となっている。
【0130】
ペプチド:本発明のいくつかの局面において、標的部分または免疫調節部分は、ペプチドまたはポリペプチドである。ペプチドには、そのアミノ酸残基の配列が本明細書中に示されているペプチドの任意のアナログ、フラグメントまたは化学的誘導体が含まれる。したがって本発明のペプチドは、様々な変更、置換、挿入および欠失に供され得、そのような変更はその用途に一定の利益を提供する。この点、本発明のペプチドは、記載されているペプチドの配列に対応するものであって、同一ということではなく、1つまたは複数の変更がなされかつ1つまたは複数のアッセイにおいてその未修飾ペプチドとして機能する能力を保持しているものである。
【0131】
「アナログ」という用語は、1つまたは複数の残基が機能的に同等の残基と保存的に置換されかつ本明細書中に記載される活性を示す、本明細書中に具体的に示されている配列と実質的に同一のアミノ酸残基配列を有する任意のペプチドを包含する。保存的置換の例には、1つの非極性(疎水性)残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンと別残基との置換、1つの極性(親水性)残基と別残基との置換、例えばアルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、グリシンとセリンの間の置換、1つの塩基性残基、例えばリジン、アルギニンもしくはヒスチジンと別残基との置換、または1つの酸性残基、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸と別残基との置換、が含まれる。
【0132】
「フラグメント」という用語は、そのアミノ酸残基の配列が本明細書中に開示されているポリペプチドよりも短いアミノ酸残基配列を有する任意の対象ポリペプチドをあらわす。
【0133】
本明細書中で使用される場合、「腫瘍標的ペプチド」は、腫瘍細胞の細胞成分、腫瘍血管系および/または腫瘍微小環境の成分に特異的に結合する、100未満のアミノ酸を含有するポリマーを包含する。
【0134】
本発明のペプチドは、組み換えDNA技術を含む、ポリペプチド分野の当業者に公知の任意の技術により合成することができる。純度、抗原特異性、望ましくない副産物の少なさ、生産の容易さ等の理由から、合成化学技術、例えば固相メリフィールド型合成が好ましい。多くの利用可能な技術の優れた要約は、固相ペプチド合成についてはSteward et al., "Solid Phase Peptide Synthesis"* W. H. Freeman Co., San Francisco, 1969; Bodanszky, et al., "Peptide Synthesis", John Wiley & Sons, Second Edition, 1976; J. Meienhofer, "Hormonal Proteins and Peptides", Vol.2. p.46, Academic Press (New York), 1983; Merrifield, Adv. Enzymol., 32: 221-96, 1969; Fields et al., Int. J. Peptide Protein Res., 35: 161-214, 1990; および米国特許第4,244,946号、ならびに古典的溶液合成についてはSchroder et al., "The Peptides", Vol.1, Academic Press (New York), 1965において見出すことができる。そのような合成において使用可能な適当な保護基は、上記文献およびJ. F. W. McOmie, "Protective Groups in Organic Chemistry", Plenum Press, New York, 1973に記載されている。
【0135】
アプタマー:本発明の1つの局面において、標的部分は、アプタマーである。様々な態様において、アプタマーは、腫瘍細胞、腫瘍血管系および/または腫瘍微小環境の分子に特異的なものである。「アプタマー」という用語は、特定分子に対する特異的結合特性に基づいて選択されたDNA、RNAまたはペプチドを包含する。例えば、アプタマーは、本明細書中に開示されるような、腫瘍細胞、腫瘍血管系、腫瘍微小環境および/または免疫細胞における特定遺伝子産物への結合に関して選択され得、選択は当技術分野で公知かつ当業者に馴染みのある方法により行われる。その後、そのアプタマーは、免疫応答を調節または制御するため、対象に投与され得る。
【0136】
特定タンパク質、DNA、アミノ酸およびヌクレオチドに対する親和性を有するアプタマーがいくつか記載されている(例えば、K. Y. Wang, et al., Biochemistry 32: 1899-1904 (1993); Pitner et al., 米国特許第5,691,145号; Gold, et al., Ann. Rev. Biochem. 64: 763-797 (1995); Szostak et al., 米国特許第5,631,146号)。高親和性・高特異性結合アプタマーが、コンビナトリアルライブラリから得られている(前出のGold, et al.)。アプタマーは、使用した選択法に依存して、マイクロモルからサブナノモル範囲の平衡解離定数の高い親和性を有し得、アプタマーはまた、高選択性、例えば、千倍の、7-メチルGとGの間の識別性(Haller and Sarnow, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 8521-8526 (1997))またはDとL-トリプトファンの間の識別性(前出のGold et al.)も示し得る。アプタマーは、標的となる特定分子に基づいて選択され得る(例えば、EGFRまたはその他の癌マーカーを標的にするアプタマー)。インビトロ選択の標準的手順、例えば、Science 249 (4968) 505-510 (1990)およびNature (London), 346 (6287) 818-822 (1990)に記載されるSELEX実験、は公知であり、これを完全実施するかまたは当技術分野公知の変更および改良を加えて実施することができる。
【0137】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師またはその他の臨床関係者が求める組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を惹起する対象化合物の量を意味する。
【0138】
「薬学的に許容できる」は、担体、希釈剤または賦形剤が、処方物の他の成分と適合し、かつそのレシピエントに対して有害であってはならないことを意味する。
【0139】
「投与」およびまたは「投与する」という用語は、処置を必要とする個人に組成物を治療有効量で提供することを意味すると理解されるべきである。投与は、腫瘍内または全身(静脈内)投与であり得る。さらに、病原体抗原ワクチン(例えば、破傷風毒素)によるレシピエントのワクチン接種と併用される。加えて、制御性T細胞(例えば、シクロホスファミド)または骨髄サプレッサー細胞(例えば、ゲムシタビン)を排除または不活性化する薬剤と併用される。さらなる例において、腫瘍反応性または病原体抗原反応性の免疫細胞の生成のため - 養子細胞免疫療法のための、免疫細胞および腫瘍細胞のエクスビボ処置が行われる。投与は、皮内または皮下であり得る。
【0140】
さらに、投与は、制御性T細胞(シクロホスファミド)または骨髄サプレッサー細胞(例えば、ゲムシタビン)を排除または不活性化する1つまたは複数の治療剤と併用され得る。本明細書で特定される本発明の薬学的組成物は、1つまたは複数の本明細書中に記載される病因/兆候(例えば、癌、病原性感染因子、それらの合併症)の予防的および/または治療的処置のための、非経口、局所、経口、経鼻(もしくはそれ以外では吸入)、直腸または局部投与、例えば、エアゾールによる投与もしくは経皮投与に有用である。薬学的組成物は、投与方法に依存して様々な単位剤形で投与され得る。適当な単位剤形には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、坐剤、貼付剤、スプレー点鼻剤、注射剤、移植用徐放処方物、混合液剤等が含まれるがこれらに限定されない。
【0141】
それ以外の定義がなされていない限り、本明細書中で使用されるすべての技術・科学用語は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験には本明細書中に記載されているのと類似または等価な任意の方法および材料を使用することができ、その変形物および派生物も本願の開示の精神および範囲に包含されるものと理解されるべきである。
【0142】
以下の実施例は、本発明の態様をさらに解説するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。これらは使用され得るものの典型であるが、当業者に公知のその他の手順、方法論または技術が代わりに使用されてもよい。
【実施例】
【0143】
実施例1
抗体によるCD4+制御性T細胞の排除を通じた腫瘍免疫寛容への対抗は、腫瘍反応性CD8+T細胞の活性化を促進し、細胞傷害性抗癌剤のインビボ抗腫瘍効果を増強する。
化学療法剤による腫瘍細胞の免疫原性死(immunogenic death)は、CD8+T細胞媒介性の抗腫瘍免疫を誘導することができる。腫瘍細胞は、特定の化学療法剤に応答して、細胞内カルレティキュリン(CRT)の細胞表面への迅速な転位を示し、そこでの凝集は、抗原提示樹状細胞(DC)による死滅した腫瘍細胞の認識および貪食のためのシグナルを提供する。アントラサイクリン系化学療法剤であるドキソルビシンによるマウスMB49またはヒトSW780膀胱癌細胞の処置によりCRTの迅速な表面露出が誘導されることが、Dylight 488標識抗CRT抗体で染色した細胞の免疫蛍光サイトメトリーにより検出された(図1a)。ドキソルビシンのエクスビボ処置が腫瘍細胞の免疫原性死を誘導するかどうかを決定するため、未処置の生存MB49細胞またはインビトロでドキソルビシンにより前処置した同数のMB49細胞のいずれかを、同系免疫正常C57BL/6マウスの一方の腹部に注射した。生存腫瘍細胞を注射したマウスと異なり、ドキソルビシン処置腫瘍細胞を注射したマウスは、MB49細胞溶解産物によるインビトロ再チャレンジに応じて排出リンパ節(DLN)細胞によるIFN-γ産生の増大を示した(図1b)。無関係のペプチド(ヘマグルチニンHA)に対するインビトロ暴露後にはDLN細胞による対応するIFN-γ分泌の増大が観察されなかったことから、ドキソルビシンにより死滅させたMB49細胞のワクチン接種は、腫瘍特異的免疫応答を生じることが分かった。ドキソルビシン処置MB49腫瘍細胞の注射は、未処置の生存MB49腫瘍細胞の反対腹部への注射によるチャレンジ後の腫瘍の成長からマウスを保護した(図1c)ドキソルビシン処置腫瘍細胞のワクチン接種による腫瘍成長からの保護は、生存腫瘍細胞によるチャレンジの前に抗CD8抗体を用いてCD8+T細胞を排除したマウスにおいては観察されなかった(図1c)。これらの観察は、化学療法剤によるエクスビボ処置が、CD8+T細胞媒介性の適応抗腫瘍免疫を生成する腫瘍細胞の免疫原性死を誘導できることを示している。
【0144】
腫瘍により誘導される免疫寛容は、化学療法に応じたCD8+T細胞の活性化を阻害する。化学療法剤によるインビボ処置が、腫瘍を事前に確立しておいたマウスにおいてCD8+T細胞媒介性の免疫応答を活性化することができるかどうかを試験するため、C57BL/6マウスに生存同系MB49腫瘍細胞を注射し、次いで、腫瘍接種後の様々な時点でドキソルビシンを腫瘍内投与した。ドキソルビシンにより死滅させたMB49細胞をナイーブなマウスにワクチン接種した場合と異なり、MB49腫瘍を既に有するマウスへの腫瘍接種後第10日のインビボ処置は、MB49細胞溶解産物によるインビトロ再チャレンジに応じてDLN細胞による対応するIFN-γ分泌の増大を誘導しなかった(図1b)。腫瘍接種後第3日のドキソルビシン処置は腫瘍の成長を停止させることができたが、第10日の同用量のドキソルビシンの遅れた投与は、既存のMB49腫瘍の成長の進行を防げなかった(図1d)。これらの結果は、既存の癌の微小環境において腫瘍により誘導された免疫寛容が、化学療法により誘導される腫瘍細胞死に応じた適応抗腫瘍免疫の活性化に対抗することを示している。
【0145】
制御性T細胞(Treg)は、腫瘍微小環境に蓄積し、CD8+T細胞媒介性の抗腫瘍免疫を活性化する化学療法の能力に対抗する。FoxP3+ Tregが腫瘍微小環境における免疫寛容の強化に関与するかどうかを調査するため、我々は、腫瘍接種後第0日および第14日の免疫正常C57BL/6マウスの脾臓、排出リンパ節(DLN)および腫瘍におけるCD4+Tリンパ球中のCD4+CD25+FoxP3+細胞(Treg)の比率を試験した。腫瘍保有マウスは、腫瘍接種後第14日の脾臓およびDLNにおいてCD4+T細胞中のTregの比率をわずかに増大させていたにすぎなかったが、この時点での腫瘍浸潤性CD4+T細胞の大部分はCD4+CD25+FoxP3+細胞であった(図1e)。腫瘍微小環境に浸潤するTregが化学療法により誘導される腫瘍細胞死に応じた適応抗腫瘍免疫の活性化を抑制することができるかどうかを調査するため、腫瘍保有マウスの腫瘍およびDLNから単離したCD4+CD25+細胞を同系C57BL/6ナイーブマウスに養子移入し、その後にドキソルビシンにより死滅させたMB49細胞のワクチン接種を行った。腫瘍浸潤性CD4+CD25+細胞のナイーブマウスへの養子移入は、その後の、MB49細胞溶解産物によるインビトロ再チャレンジに応じた排出リンパ節(DLN)細胞によるIFN-γ産生を増大させるというドキソルビシン処置MB49腫瘍細胞のインビボワクチン接種の能力を阻害した(図1f)。腫瘍特異的免疫応答を抑制する腫瘍浸潤性CD4+CD25+細胞の能力と同じように、これらの細胞の養子移入は、ドキソルビシン処置MB49細胞によるワクチン接種により付与される、未処置生存MB49腫瘍細胞チャレンジ後の腫瘍成長に対する保護に対抗した(図1g)。これらの結果は、腫瘍微小環境が、化学療法により誘導される腫瘍細胞死に応じたCD8+T細胞媒介性抗腫瘍免疫の活性化に対抗するFoxP3+ Tregの蓄積を支援していることを示している。
【0146】
腫瘍微小環境におけるTGF-βの阻害は、腫瘍浸潤性FoxP3+制御性T細胞を減少させ、化学療法の抗腫瘍効果を増強する。TGF-βは、ナイーブな末梢CD4+CD25-FoxP3-T細胞におけるFoxP3発現を誘導し、それらの「適応性」のFoxP3+ Tregへの変化を促進し、これは胸腺において生成された生来のFoxP3+ Tregの免疫抑制能を分担する。ヒト癌は、多くの場合、TGF-βの成長阻害効果に対して不応性になり、かつTGF-βの発現および分泌を増大させる能力を獲得することから、我々は、この切り替えにより腫瘍細胞が腫瘍微小環境において適応性Tregの数を増加させることができるのかどうかを調査した。生存MB49腫瘍細胞の接種後第0日、第14日および第28日のマウスにおけるTGF-βの血清レベルの試験は、腫瘍の成長が、血清TGF-βレベルを漸次的に増加させることを実証した(図2a)。腫瘍保有マウスにおけるのTGF-βの正確な供給源を評価するため、腫瘍保有マウスから単離した腫瘍細胞または排出リンパ節細胞の上清中のTGF-βの総量を、24時間の無血清培地中でのエクスビボ培養後に測定した。TGF-β/106細胞のレベルの測定は、腫瘍細胞が腫瘍保有マウスにおけるTGF-βレベルの増大の主たる供給源であることを示した(図2b)。腫瘍細胞の自律的なTGF-β発現に加えて、腫瘍保有マウス由来のT細胞もまた、腫瘍非保有マウス由来のそれらの同等物と比較して高レベルのTGF-βを発現していた(図2b)。TGF-βの上昇が腫瘍微小環境におけるTregの上方制御を担うものであるかどうかを決定するため、TGFβRIIの細胞外ドメインおよびマウスIgG1重鎖のFc部分を含む可溶性キメラタンパク質(TGFβRII:Fc)で腫瘍保有マウスを処置した。この融合タンパク質は、TGF-βの内因性TGFβRIIへの結合と干渉し、安定なTGF-βアンタゴニストとして機能する。ELISAアッセイは、濃度依存的な様式でMB49腫瘍細胞の上清中のTGF-βを捕捉するTGFβRII:Fcの能力を確認した(図2c)。MB49腫瘍細胞の接種後第5日、マウスを3週間の間、未処置のままおくかまたはTGFβRII:Fcで処置(1μg腫瘍内;週2回)し、その後に腫瘍浸潤性のCD4+CD25+T細胞における細胞内FoxP3発現のフローサイトメトリー分析を行った。TGFβRII:Fcによる腫瘍のインビボ処置は、腫瘍浸潤性CD4+T細胞におけるFoxP3発現を大きく低下させ(図2d)、かつ腫瘍組織におけるCD4+CD25+FoxP3+Tregを劇的に減少させた(図2e)。腫瘍微小環境におけるTGF-βの阻害が化学療法の抗腫瘍効果を改善できるかどうかを決定するため、MB49腫瘍保有マウスに、ドキソルビシン(5 mg/kg i.p.週3回)を、週2回のTGFβRII:Fc処置(1μg腫瘍内)と共にまたはそれを伴わずに、投与した。ドキソルビシンまたはTGFβRII:Fcのいずれか単独での処置とは異なり、両薬剤による併用処置は、MB49腫瘍の成長を停止させることができた。これらの結果は、腫瘍微小環境における腫瘍細胞の自律的なTGF-β発現が、「適応性」のFoxP3+Tregを誘導し、その腫瘍誘導性のTGF-β媒介性免疫寛容への対抗が化学療法の抗腫瘍効果を増強することを示している。
【0147】
抗CD4抗体によるCD4+制御性T細胞の排除は、化学療法により誘導される腫瘍反応性CD8+T細胞の活性を促進し、化学療法の抗腫瘍効果を増強する。CD4+制御性T細胞の排除が腫瘍微小環境におけるCD8+T細胞の活性化を増強することにより化学療法の抗腫瘍効果を改善することができるかどうかを決定するため、同系の腫瘍を保有する免疫正常マウスに、抗CD4抗体(クローンGK1.5)を投与してCD4+T細胞を排除するかまたは抗CD8抗体(クローンGK2.43)を投与してCD8+T細胞を排除し、その後に特定の化学療法剤で処置した。抗CD4抗体または抗CD8抗体の投与後第7日のMB49腫瘍保有マウス由来の末梢血単核細胞のフローサイトメトリー分析は、それぞれ、CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの標的特異的な排除を確認した(図3a)。抗CD4抗体で処置したマウスは、末梢血におけるおよび腫瘍浸潤性細胞中のCD4+CD25+FoxP3+T細胞の喪失を示した(図3a、b)。抗体によるCD4+CD25+FoxP3+細胞の排除が腫瘍微小環境において化学療法により誘導される腫瘍反応性CD8+T細胞の活性化を促進するかどうかを決定するため、我々は、未処置のままおくかまたは(抗CD4抗体と共にまたはそれを伴わずに)ドキソルビシン処置したMB49腫瘍保有マウスの腫瘍および排出リンパ節から抽出したCD8+T細胞におけるIFN-γの発現を評価した。フローサイトメトリー分析は、未処置マウス由来のCD8+T細胞がMB49細胞溶解産物によるインビトロ再チャレンジに応じてIFN-γを発現しないことを示した(図3c)。IFN-γ+CD8+T細胞は、ドキソルビシン単独処置マウスにおいても確認されていたが、抗体によるCD4+T細胞の排除は、ドキソルビシン処置動物においてIFN-γを発現する腫瘍反応性CD8+T細胞の比率をさらに上昇させた(図3c)。腫瘍反応性CD8+T細胞の活性化が化学療法のインビボ抗腫瘍効果を決定するかどうかを直接的に評価するため、我々は、抗体によるCD8+T細胞またはCD4+T細胞の排除がドキソルビシン(5 mg/kg)全身処置に対するMB49腫瘍保有マウスの応答に対して及ぼす影響を試験した。ドキソルビシン単独の処置は、MB49腫瘍の成長を阻害したが、腫瘍の進行を停止させることはできなかった。CD8+T細胞の排除はドキソルビシンのインビボ抗腫瘍効果を完全に損なわせたが、CD4+T細胞の排除はドキソルビシンに対する応答を増強し、腫瘍の退縮をもたらした(図3d)。
【0148】
抗CD4抗体によるCD4+制御性T細胞の排除は、適応抗腫瘍免疫の活性化を実現することによって化学療法の抗腫瘍効果を亢進および維持する。アントラサイクリン、例えばドキソルビシンで処置した腫瘍細胞は、抗腫瘍免疫応答の惹起に特に有効であるが、その他の化学療法剤は、免疫原性の腫瘍細胞死を誘導する効果が小さい。カルレティキュリンの表面露出は、化学療法剤に応じた腫瘍細胞死の免疫原性の重要な決定因子である。ドキソルビシン処置に応じたCRTの細胞表面への効果的な転位(図1a)と比較して、シスプラチンまたはシスプラチンおよびゲムシタビンの組み合わせのいずれかの等毒性量によるMB49腫瘍細胞の処置は、CRT露出の増加に対する効果が小さかった(図4a)。腫瘍反応性IFN-γ+CD8+T細胞は、ドキソルビシン処置したMB49腫瘍保有マウスの腫瘍において明確であったが(図3c)、シスプラチン処置は、MB49細胞溶解産物によるインビトロ再チャレンジに応じたCD8+T細胞におけるIFN-γ発現の対応する上昇を誘導することができなかった(図4b)。Treg媒介性の免疫寛容への対抗がシスプラチンによる抗腫瘍免疫の活性化を実現するかどうかを試験するため、免疫正常・腫瘍保有マウスを、抗CD4抗体によるTregの排除の後にシスプラチンで処置した。抗体によるCD4+T細胞の排除は、シスプラチン処置動物における腫瘍反応性IFN-γ+CD8+T細胞およびCD8+CD62L-T細胞の比率を増大させた(図4b、c)。シスプラチンによるMB49腫瘍保有マウスの処置は、腫瘍の成長を部分的に阻害したが、腫瘍の進行を停止させなかった。CD8+T細胞の排除は、シスプラチンのインビボ抗腫瘍効果を完全に打ち消したが、CD4+T細胞の排除は、シスプラチンに対する応答を増強し、腫瘍の成長を停止させた(図4d)。シスプラチンおよびゲムシタビンの組み合わせによる腫瘍保有マウスの処置も、腫瘍の成長を停止させることができたが、腫瘍の成長は治療終了後に直ちに再開し、腫瘍摂取後第50日に腫瘍を有さない動物はいなくなった(0/8)(図4e)。これに対して、CD4+T細胞を排除したマウスは、単剤または併用療法のいずれに対してもより持続的な応答を示し、7/16のマウスが完全な腫瘍退縮を示した。治癒したマウスのいずれも(7/7)が生存MB49腫瘍細胞による反対腹部への再チャレンジにより腫瘍を発生させなかったことから、この腫瘍の完全退縮は、適応抗腫瘍免疫の成立を伴うものであることが分かった。
【0149】
腫瘍細胞において化学療法により誘導されるNKG2Dリガンドの発現は、CD4+制御性T細胞の排除と協調してCD8+T細胞媒介性の腫瘍退縮を刺激する。NKG2D(NKグループ2、メンバーD)は、NK細胞、γδ-TCR+T細胞およびαβ-TCR+T細胞が腫瘍の免疫監視のために使用するレシチン様II型膜貫通刺激受容体である。マウスおよびヒトのNKG2Dリガンドの発現は、形質転換した上皮細胞系において、遺伝毒性ストレスまたはDNA複製の停滞に応じ、ATM(毛細血管拡張性運動失調症、変異体)またはATR(ATMおよびRad3関連)タンパク質キナーゼにより開始されるDNA損傷チェックポイント経路の活性化を通じて、上方制御される。CT26マウス結腸癌細胞を遺伝毒性化学療法剤で処置すると、レチノイン酸誘導性遺伝子ファミリー(Rae1)のマウスNKG2Dリガンドが上方制御された(図5a)。RT-PCRは、Rae1 mRNAが、イリノテカンまたはオキサリプラチンのいずれかによる処置から2〜4時間でCT26細胞において誘導され、16〜24時間後にプラトーに達し、そして48時間後に下降し始めることを示した(図5a)。フローサイトメトリー分析は、ヒトNKG2Dリガンド(MHC-I関連AおよびB分子 - MICA、MICB)の細胞表面発現もまた、ヒト結腸癌細胞(HCT116)において、イリノテカン処置に応じて上方制御されることを実証した(図1b)。それらのp53状態のみが異なる同質HCT116細胞は、p53がイリノテカンにより誘導されるMICA/Bの上方制御に必要でないことを実証した(図1b)。NKG2Dリガンドの誘導がインビボでの化学療法の抗腫瘍効果に寄与するかどうかを試験するため、同系CT26腫瘍細胞を接種した免疫正常Balb/Cマウスを、NKG2Dブロッキング抗体による前処置(200μg、i.p.)と共にまたはそれを伴わずに、イリノテカンで処置した(50 mg/kg i.p.)。イリノテカン単独処置はCT26腫瘍の成長を阻害したが、イリノテカンの抗腫瘍効果はNKG2Dブロッキング抗体による前処置により打ち消された(図1c)。NKG2Dとそのリガンドの咬合はCD8+T細胞の活性化のための共刺激シグナルを提供するので、我々は、腫瘍細胞においてDNA損傷により誘導されるNKG2Dリガンドの発現がCD4+制御性T細胞の排除と協調してCD8+T細胞媒介性の腫瘍退縮を刺激するかどうかを調査した。CT26腫瘍を保有するBalb/Cマウスに抗CD4抗体(クローンGK1.5)を投与してCD4+T細胞を排除し、および/または抗CD8抗体(クローンGK2.43)を投与してCD8+T細胞を排除し、その後、イリノテカンで処置した。フローサイトメトリー分析は、抗CD4抗体処置マウスの脾臓および排出リンパ節におけるCD4+CD25+FoxP3+T細胞の喪失を確認した(図5d)。抗体によるCD4+T細胞の排除は、イリノテカン処置動物における腫瘍反応性IFN-γ+CD8+T細胞の比率を上昇させた(図5e)。CT26腫瘍保有マウスのイリノテカン単独処置は腫瘍の成長を緩やかにしたが、CD4+T細胞の排除は、イリノテカンに対する応答を増強し、腫瘍の成長を停止させた(図5f)。抗体によるCD8+T細胞の排除がCD4+T細胞を排除したマウスにおける化学療法のインビボ抗腫瘍効果を完全に打ち消したことから、CD4+T細胞排除がイリノテカンの抗腫瘍効果を亢進する能力は、CD8+T細胞により媒介されることが分かった(図5f)。
【0150】
これらのデータは、以下の洞察を提供する:(i)免疫原性の腫瘍細胞死に応じた腫瘍反応性CD8+T細胞の活性化は、インビボでの化学療法の抗腫瘍効果の重要な決定因子である;(ii)腫瘍により誘導されるTregは、腫瘍微小環境におけるCD8+T細胞の活性化を阻害することによって化学療法の抗腫瘍効果を損なわせる;および(iii)腫瘍により誘導される免疫寛容の、抗体によるCD4+制御性T細胞の排除を通じた対抗は、化学療法により誘導される抗腫瘍免疫の活性化をその記憶と共に促進し、それによって化学療法の抗腫瘍効果を増強する;(iv)腫瘍微小環境においてCD4+制御性T細胞の数または機能を減少させる戦略は、CD8+T細胞の活性化を増進し、細胞傷害性抗癌剤(化学療法、腫瘍標的抗体、標的治療、キナーゼ阻害剤)または化学免疫療法(化学療法剤と免疫療法剤の併用)に対する腫瘍の応答を改善することができる。
【0151】
実施例2
例示的な標的免疫調節抗体および融合タンパク質
抗体を含む標的部分は、TGFBR2の細胞外ドメイン由来のポリペプチドを含む免疫調節部分と接続することができる。そのような接続または共役のための架橋剤または活性化剤は、当技術分野で周知である。あるいは、本発明の融合タンパク質は、その融合タンパク質の様々な部分のコード配列を核酸レベルでひとつに連結することができる当技術分野で周知の組み換えDNA技術を用いて合成することができる。その後、本発明の融合タンパク質を、当技術分野で周知の宿主細胞を用いて生産することができる。標的免疫調節抗体および融合タンパク質の例は、図1〜33に示されており、以下でそれを簡潔に解説する。
【0152】
1つの態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子であって、標的部分が標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分が形質転換成長因子ベータ(TGF-β)に特異的に結合する分子を提供する。SEQ ID NO: 1は、抗HER2/neu抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図2)。SEQ ID NO: 2は、抗EGFR1抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図3)。SEQ ID NO: 3は、抗CD20抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図4)。SEQ ID NO: 4は、抗VEGF抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図5)。SEQ ID NO: 5は、抗ヒトCTLA-4抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図6)。SEQ ID NO: 6は、IL-2、Fcおよび形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図7)。SEQ ID NO: 7は、形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)、FcおよびIL-2を含む融合タンパク質を提供する(図7)。SEQ ID NO: 8は、抗CD25抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図8A)。SEQ ID NO: 9は、抗CD25抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図8B)。SEQ ID NO: 10は、抗CD4抗体および形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(ECD)を含む融合タンパク質を提供する(図9)。SEQ ID NO: 11は、PD-1外部ドメイン、Fcおよび形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(外部ドメイン)を含む融合タンパク質を提供する(PD-1外部ドメイン + Fc + TGFβRII外部ドメイン;図10)。SEQ ID NO: 12は、形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(外部ドメイン)、FcおよびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(TGFβRII外部ドメイン + Fc + PD-1外部ドメイン;図10)。SEQ ID NO: 13は、RANK外部ドメイン、Fcおよび形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(外部ドメイン)を含む融合タンパク質を提供する(RANK外部ドメイン + Fc + TGFβRII外部ドメイン;図11)。SEQ ID NO: 14は、形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβ-RII)細胞外ドメイン(外部ドメイン)、FcおよびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(TGFβRII外部ドメイン + Fc + RANK外部ドメイン;図11)。
【0153】
別の態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子であって、標的部分が標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分がプログラム死1リガンド1(PD-L1もしくはB7-H1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2もしくはB7-DC)に特異的に結合する分子である分子を提供する。SEQ ID NO: 15は、抗HER2/neu抗体およびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図13)。SEQ ID NO: 16は、抗EGFR1抗体およびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図14)。SEQ ID NO: 17は、抗CD20抗体およびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図15)。SEQ ID NO: 18は、抗VEGF抗体およびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図16)。SEQ ID NO: 19は、抗ヒトCTLA-4抗体およびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図17)。SEQ ID NO: 20は、抗CD25抗体およびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図18A)。SEQ ID NO: 21は、抗CD25抗体およびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図18B)。SEQ ID NO: 22は、IL-2、FcおよびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(IL-2 + Fc + PD-1外部ドメイン;図19)。SEQ ID NO: 23は、PD-1外部ドメイン、FcおよびIL-2を含む融合タンパク質を提供する(PD-1外部ドメイン + Fc + IL-2;図19)。SEQ ID NO: 24は、抗CD4抗体およびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図20)。SEQ ID NO: 25は、RANK外部ドメイン、FcおよびPD-1外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(RANK外部ドメイン + Fc + PD-1外部ドメイン;図21)。SEQ ID NO: 26は、PD-1外部ドメイン、FcおよびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(PD-1外部ドメイン + Fc + RANK外部ドメイン;図21)。
【0154】
別の態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子であって、標的部分が標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分がNF-κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する分子である分子を提供する。SEQ ID NO: 27は、抗HER2/neu抗体およびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図23)。SEQ ID NO: 28は、抗EGFR1抗体およびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図24)。SEQ ID NO: 29は、抗CD20抗体およびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図25)。SEQ ID NO: 30は、抗VEGF抗体およびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図26)。SEQ ID NO: 31は、抗ヒトCTLA-4抗体およびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図27)。SEQ ID NO: 32は、抗CD25抗体およびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図28A)。SEQ ID NO: 33は、抗CD25抗体およびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図28B)。SEQ ID NO: 34は、IL-2、FcおよびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(IL-2 + Fc + RANK外部ドメイン;図29)。SEQ ID NO: 35は、RANK外部ドメイン、FcおよびIL-2を含む融合タンパク質を提供する(RANK外部ドメイン + Fc + IL-2;図29)。SEQ ID NO: 36は、抗CD4抗体およびRANK外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(図30)。
【0155】
別の態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子であって、標的部分が標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分がプログラム死1(PD-1)に特異的に結合する分子を含む分子を提供する。SEQ ID NO: 37は、抗腫瘍壊死因子(TNFα)抗体およびPD-1リガンド1を含む融合タンパク質を提供する(図32)。SEQ ID NO: 38は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、FcおよびPD-1リガンドを含む融合タンパク質を提供する:(TNFR2 ECD + IgG Cγ1 + PD-L1;図33)。SEQ ID NO: 39は、PD-1リガンド、FcおよびTNFR2細胞外リガンド結合ドメインを含む融合タンパク質を提供する:(PD-L1 + IgG Cγ1 + TNFR2 ECD;図33)。SEQ ID NO: 40は、抗CD20抗体およびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む融合タンパク質を提供する(図34)。SEQ ID NO: 41は、抗CD25抗体およびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む融合タンパク質を提供する(図35A)。SEQ ID NO: 42は、抗CD25抗体およびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む融合タンパク質を提供する(図35B)。SEQ ID NO: 43は、PD-1リガンド1(PD-L1)、FcおよびIL-2を含む融合タンパク質を提供する(PD-L1 - Fc - IL2;図36)。SEQ ID NO: 44は、IL-2、FcおよびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む融合タンパク質を提供する(IL-2 - Fc - PD-L1;図36)。SEQ ID NO: 45は、抗CD4抗体およびPD-1リガンド1(PD-L1)を含む融合タンパク質を提供する(図37)。SEQ ID NO: 46は、CTLA-4の細胞外ドメイン、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびPD-1リガンド(PD-L1)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(オンコスタチンMシグナルペプチド + CTLA-4 ECD + IgG Cγ1 + PD-L1;図38)。SEQ ID NO: 47は、PD-1リガンド(PD-L1)の細胞外ドメイン、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびCTLA-4の細胞外ドメイン由来の配列を含む融合タンパク質を提供する:(PD-L1 + IgG Cγ1 + CTLA-4 ECD;図38)。SEQ ID NO: 48は、形質転換成長因子β(TGF-β)、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびPD-1リガンド1(PD-L1)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(TGFβ-1 + Fc + PD-L1;図39)。SEQ ID NO: 49は、PD-1リガンド1(PD-L1)由来の配列、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)および形質転換成長因子ベータ(TGF-β)を含む融合タンパク質を提供する(PD-L1 + Fc + TGFβ-1;図39)。
【0156】
別の態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子であって、標的部分が標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分が形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR)に特異的に結合する分子を含む分子を提供する。SEQ ID NO: 50は、TNF-αに結合する抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(図41)。SEQ ID NO: 51は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、Fcおよび形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する:(TNFR2 ECD + IgG Cγ1 + TGF-β;図42)。SEQ ID NO: 52は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列、FcおよびTNFR2細胞外リガンド結合ドメインを含む融合タンパク質を提供する:(TGF-β + IgG Cγ1 + TNFR2 ECD;図42)。SEQ ID NO: 53は、抗CD20抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(図43)。SEQ ID NO: 54は、抗CD25抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(図44A)。SEQ ID NO: 55は、抗CD25抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(図44B)。SEQ ID NO: 56は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列、FcおよびIL-2を含む融合タンパク質を提供する(TGF-β + Fc + IL2;図45)。SEQ ID NO: 57は、IL-2、Fcおよび形質転換成長因子β(TGF-β)を含む融合タンパク質を提供する(IL-2 + Fc + TGF-β;図45)。SEQ ID NO: 58は、抗CD4抗体および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(図46)。SEQ ID NO: 59は、CTLA-4の細胞外ドメイン、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(オンコスタチンMシグナルペプチド + CTLA-4 ECD + IgG Cγ1 + TGF-β1;図47)。SEQ ID NO: 60は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびCTLA-4の細胞外ドメイン由来の配列を含む融合タンパク質を提供する:(TGF-β1 + IgG Cγ1 + CTLA-4 ECD)(図47)。
【0157】
別の態様において、本発明は、免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子であって、標的部分が標的分子に特異的に結合し、かつ免疫調節部分がNF-κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する分子である分子を提供する。SEQ ID NO: 61は、TNF-αに結合する抗体およびRANK外部ドメイン由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(図48)。SEQ ID NO: 62は、TNFR2細胞外リガンド結合ドメイン、FcおよびRANK外部ドメイン由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(TNFR2 ECD + IgG Cγ1 + RANK外部ドメイン;図49)。SEQ ID NO: 63は、RANK外部ドメイン由来の配列、FcおよびTNFR2細胞外リガンド結合ドメインを含む融合タンパク質を提供する:(RANK外部ドメイン + IgG Cγ1 + TNFR2 ECD;図49)。SEQ ID NO: 64は、CTLA-4の細胞外ドメイン、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびRANK外部ドメイン由来の配列を含む融合タンパク質を提供する(オンコスタチンMシグナルペプチド + CTLA-4 ECD + IgG Cγ1 + RANK外部ドメイン;図50)。SEQ ID NO: 65は、RANK外部ドメイン由来の配列、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびCTLA-4の細胞外ドメイン由来の配列を含む融合タンパク質を提供する:(RANK外部ドメイン + IgG Cγ1 + CTLA-4 ECD)(図50)。SEQ ID NO: 66は、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列、免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)および核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(TGF-β + IgG Cγ1 + RANK外部ドメイン;図51)。SEQ ID NO: 67は、RANK外部ドメイン由来の配列、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)および形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する:(RANK外部ドメイン + IgG Cγ1 + TGF-β)(図51)。SEQ ID NO: 68は、プログラム死1リガンド1(PD-L1)由来の配列、免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)および核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む融合タンパク質を提供する(PD-L1 + IgG Cγ1 + RANK外部ドメイン;図52)。SEQ ID NO: 69は、RANK外部ドメイン由来の配列、免疫グロブリンFc(IgG Cγ1)およびプログラム死1リガンド1(PD-L1)由来の配列を含む融合タンパク質を提供する:(RANK外部ドメイン + IgG Cγ1 + PD-L1)(図52)。
【0158】
本発明は、上記の実施例を参照して解説されているが、その変形物または派生物も本発明の精神および範囲に包含されることが理解されるであろう。したがって本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8A】

【図8B】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18A】

【図18B】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28A】

【図28B】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35A】

【図35B】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44A】

【図44B】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】

【図53A】

【図53B】

【図53C】

【図53D】

【図53E】

【図53F】

【図53G】

【図54A】

【図54B】

【図54C】

【図54D】

【図54E】

【図54F】

【図55A】

【図55B】

【図55C】

【図55D】

【図56A】

【図56B】

【図56C】

【図56D】

【図56E】

【図56F】

【図57A】

【図57B】

【図57C】

【図57D】

【図57E】

【図57F】

【図57G】

【図57H】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節部分に融合された標的部分を含む分子であって、
(a)標的部分が、標的分子に特異的に結合し;かつ
(b)免疫調節部分が、
(i)形質転換成長因子ベータ(TGF-β);形質転換成長因子ベータ受容体(TGF-βR);プログラム死1リガンド1(PD-L1;B7-H1)もしくはプログラム死1リガンド2(PD-L2;B7-DC);プログラム死1(PD-1);核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL);または核因子κB受容体活性化因子(RANK);および
(ii)4-1BB(CD137);4-1BBリガンド(4-1BBL;CD137L);OX40(CD134;TNR4);OX40リガンド(OX40L);グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;AITR);GITRリガンド(GITRL);HVEM;LIGHT;CD27;またはCD70
から選択される分子に特異的に結合する、分子。
【請求項2】
標的部分が、腫瘍細胞、腫瘍抗原、腫瘍血管系、腫瘍微小環境、または腫瘍浸潤性免疫細胞の成分に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、またはFc含有ポリペプチドを含む、請求項1記載の分子。
【請求項3】
免疫調節部分が、TGF-βに結合する分子を含む、請求項2記載の分子。
【請求項4】
免疫調節部分が、形質転換成長因子ベータ受容体TGF-βRII、TGF-βRIIb、またはTGF-βRIIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む、請求項3記載の分子。
【請求項5】
免疫調節部分が、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインを含む、請求項4記載の分子。
【請求項6】
標的部分が、HER2/neu、上皮成長因子受容体(EGFR1)、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)、またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含む、請求項5記載の分子。
【請求項7】
SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に対応するアミノ酸配列を含む、請求項5記載の分子。
【請求項8】
標的部分が、プログラム死1(PD-1)、プログラム死1リガンド1(PD-L1)、またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含む、請求項5記載の分子。
【請求項9】
標的部分が、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項8記載の分子。
【請求項10】
PD-1外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域、およびTGFβRII外部ドメインを含む、請求項9記載の分子。
【請求項11】
SEQ ID NO: 11または12に対応するアミノ酸配列を含む、請求項10記載の分子。
【請求項12】
標的部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)または核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含む、請求項5記載の分子。
【請求項13】
標的部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項12記載の分子。
【請求項14】
RANK外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域、およびTGFβRII外部ドメインを含む、請求項13記載の分子。
【請求項15】
SEQ ID NO: 13または14に対応するアミノ酸配列を含む、請求項14記載の分子。
【請求項16】
免疫調節部分が、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)に特異的に結合する分子を含む、請求項1記載の分子。
【請求項17】
免疫調節部分が、プログラム死1(PD-1)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項16記載の分子。
【請求項18】
標的部分が、HER2/neu、上皮成長因子受容体(EGFR1)、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)、またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含む、請求項17記載の分子。
【請求項19】
SEQ ID NO: 15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24に対応するアミノ酸配列を含む、請求項18記載の分子。
【請求項20】
標的部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)または核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含む、請求項16記載の分子。
【請求項21】
標的部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項20記載の分子。
【請求項22】
RANK外部ドメイン、免疫グロブリンFc領域、およびPD-1外部ドメインを含む、請求項21記載の分子。
【請求項23】
SEQ ID NO: 25または26に対応するアミノ酸配列を含む、請求項22記載の分子。
【請求項24】
免疫調節部分が、核因子κB受容体活性化因子リガンド(RANKL)に特異的に結合する分子を含む、請求項1記載の分子。
【請求項25】
免疫調節部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項24記載の分子。
【請求項26】
標的部分が、HER2/neu、上皮成長因子受容体(EGFR1)、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)、またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含む、請求項25記載の分子。
【請求項27】
SEQ ID NO: 27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36に対応するアミノ酸配列を含む、請求項26記載の分子。
【請求項28】
免疫調節部分が、4-1BB、OX40、またはGITR/AITRに特異的に結合する抗体またはリガンドを含む、請求項1記載の分子。
【請求項29】
標的部分が、HER2/neu、上皮成長因子受容体(EGFR1)、CD20、血管内皮成長因子(VEGF)、CD25、CD4、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)、プログラム死1(PD-1)、プログラム死1リガンド(PD-L1もしくはPD-L2)、核因子κB受容体活性化因子(RANK)リガンド(RANKL)、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;TNFRSF18)、4-1BB、OX40、またはインターロイキン4受容体(IL-4R)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含む、請求項28記載の分子。
【請求項30】
標的部分が、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に特異的に結合し、かつ免疫調節部分が、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む、請求項1記載の分子。
【請求項31】
標的部分が、TNF-αまたは腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外リガンド結合ドメインに結合する抗体を含み、かつ免疫調節部分が、PD-1リガンド1(PD-L1またはB7-H1)由来の配列を含む、請求項30記載の分子。
【請求項32】
SEQ ID NO: 37、38、または39に対応するアミノ酸配列を含む、請求項31記載の分子。
【請求項33】
標的部分が、CD20、CD25、またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはペプチドを含み、かつ免疫調節部分が、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む、請求項1記載の分子。
【請求項34】
SEQ ID NO: 40、41、42、43、または44に対応するアミノ酸配列を含む、請求項33記載の分子。
【請求項35】
標的部分が、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分が、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む、請求項1記載の分子。
【請求項36】
SEQ ID NO: 46または47に対応するアミノ酸配列を含む、請求項35記載の分子。
【請求項37】
標的部分が、形質転換成長因子β(TGF-β)および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分が、プログラム死1リガンド1(PD-L1)またはプログラム死1リガンド2(PD-L2)由来の配列を含む、請求項1記載の分子。
【請求項38】
SEQ ID NO: 48または49に対応するアミノ酸配列を含む、請求項37記載の分子。
【請求項39】
免疫調節部分が、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む、請求項1記載の分子。
【請求項40】
標的部分が、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、CD20、CD25(IL-2α受容体;IL-2αR)、またはCD4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含み、かつ免疫調節部分が、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む、請求項39記載の分子。
【請求項41】
SEQ ID NO: 50、51、52、53、54、55、56、57、または58に対応するアミノ酸配列を含む、請求項40記載の分子。
【請求項42】
標的部分が、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分が、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列を含む、請求項39記載の分子。
【請求項43】
SEQ ID NO: 59または60に対応するアミノ酸配列を含む、請求項42記載の分子。
【請求項44】
標的部分が、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを含み、かつ免疫調節部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項25記載の分子。
【請求項45】
SEQ ID NO: 61、62、または63に対応するアミノ酸配列を含む、請求項44記載の分子。
【請求項46】
標的部分が、CTLA-4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項25記載の分子。
【請求項47】
SEQ ID NO: 64または65に対応するアミノ酸配列を含む、請求項46記載の分子。
【請求項48】
標的部分が、形質転換成長因子β(TGF-β)由来の配列および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項25記載の分子。
【請求項49】
SEQ ID NO: 66または67に対応するアミノ酸配列を含む、請求項48記載の分子。
【請求項50】
標的部分が、プログラム死1リガンド1(PD-L1)由来の配列および免疫グロブリンFc領域(IgG Cγ1)を含み、かつ免疫調節部分が、核因子κB受容体活性化因子(RANK)の細胞外リガンド結合ドメインまたは外部ドメインを含む、請求項25記載の分子。
【請求項51】
SEQ ID NO: 68または69に対応するアミノ酸配列を含む、請求項50記載の分子。
【請求項52】
1つまたは複数の抗原、抗原決定基、またはエピトープに融合または直接連結されている、請求項1記載の分子。
【請求項53】
請求項1記載の分子および細胞を含む組成物であって、細胞が腫瘍細胞、免疫細胞、または樹状細胞である、組成物。
【請求項54】
免疫寛容に対抗または克服する方法であって、それを必要とする対象に1つまたは複数の請求項1〜29記載の分子を投与する工程を包含する、方法。
【請求項55】
新生物疾患を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に1つまたは複数の請求項1〜29記載の分子を投与する工程を包含する、方法。
【請求項56】
別の抗癌療法と併用して対象に投与する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
抗癌療法が、化学療法分子、抗体、低分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーション、または高周波アブレーションを含む、請求項55記載の方法。
【請求項58】
ワクチンと併用して対象に投与する、請求項55記載の方法。
【請求項59】
対象がヒトである、請求項55記載の方法。
【請求項60】
免疫細胞を処置する方法であって、細胞をエクスビボまたはインビトロで請求項1〜29記載の分子と接触させる、方法。
【請求項61】
新生物疾患の処置方法であって、それを必要とする対象に、請求項1〜29記載の分子と接触させた免疫細胞を含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項62】
新生物疾患の処置方法であって、それを必要とする対象に、別の療法と併用して、CD4を標的にする抗体またはFc含有融合タンパク質を投与する工程を包含し、新生物疾患はT細胞悪性腫瘍ではなく、当該療法は、
(i)免疫刺激分子;
(ii)腫瘍標的抗体;または
(iii)細胞傷害性抗癌剤
の1つまたは複数を含む、方法。
【請求項63】
免疫刺激分子が、請求項1〜29記載の免疫刺激抗体または融合タンパク質を含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
免疫刺激分子が、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、プログラム死1(PD-1)、プログラム死1リガンド1(PD-1L1;B7-H1)、プログラム死1リガンド2(PD-1L2;B7-DC)、OX40(CD134;TNR4)、4-1BB(CD137)、CD40、またはグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR;AITR;TNFRSF18)または形質転換成長因子β(TGF-β)に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、Fc含有ポリペプチド、ペプチドまたはリガンドを含む、請求項62記載の方法。
【請求項65】
腫瘍標的抗体が、腫瘍細胞、腫瘍抗原、腫瘍血管系、腫瘍微小環境、または腫瘍浸潤性免疫細胞の成分に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、scFv、またはFc含有ポリペプチドを含む、請求項62記載の方法。
【請求項66】
細胞傷害性抗癌剤が、化学療法分子、抗体、低分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤または電離放射線を含む、請求項62記載の方法。
【請求項67】
自己免疫または炎症疾患を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に、1つまたは複数の請求項30〜51記載の分子を投与する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2013−521311(P2013−521311A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556279(P2012−556279)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027317
【国際公開番号】WO2011/109789
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(398076227)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー (35)
【Fターム(参考)】