説明

標的化ペプチドに対するチオール媒介性薬物結合

ソマトスタチンおよび他の標的化ペプチドに対する、治療的および診断的薬物のチオール特異的結合に関する組成物および方法。本発明は、チオール特異的薬物結合のためのペプチドアナログ、およびその使用方法を提供する。本明細書中で開示されるような、チオール特異的薬物結合のための配列を含むための、既存のペプチドリガンドの改変は、薬物、キレート化剤、または同位元素を結合するためにフェニルイソチオネート化学を用いたペプチドの調製を可能にし、そのペプチド結合物は改善したインビトロおよびインビボ安定性を有する。この方法は一般的に適用可能であり、そしてペプチドのカルボキシル末端の改変が標的への結合を抑制する全てのペプチドに関して有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

(優先権の情報)
2003年3月10日に提出された米国仮特許出願第60/452,928号に対する優先権を主張し、それは本明細書中に全体として援用される。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、一般的にはペプチドに対して部位特異的結合する薬剤に関する方法、およびそのような方法によって産生された組成物に関連する。より具体的には、本発明はソマトスタチンペプチドに対するチオールに媒介した薬物の結合、その得られた薬物/ペプチド複合体、ならびにその使用に関連する。
【背景技術】
【0003】
略号の表
AE オーアスタチン(Auristatin)E
AEB オーアスタチンE誘導体
AEBL AEBのマレイミド誘導体
AR42J SSTR陽性ラット膵臓がん細胞
COS−7 SSTR陰性サル腎臓細胞
CP1 ソマトスタチンアナログ
DMF ジメチルホルムアミド
DTPA ジエチレントリアミンペンタ酢酸
FKMMAE オーアスタチンE誘導体
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IC50 50%阻害濃度
IMR−32 SSTR陽性ヒト神経芽細胞腫細胞
LS174T SSTR陰性ヒト直腸がん細胞
MEM−MX−DTPA MX−DTPAのマレイミド誘導体
MTD 最大耐容量
MTT 3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物
MX−DTPA DTPA誘導体
SCN チオシアン酸塩
SST ソマトスタチン
SSTR ソマトスタチンレセプター
(関連する技術の説明)
腫瘍特異的結合薬物を、腫瘍の診断および腫瘍特異的薬物伝達のために使用し得る。存在する腫瘍特異的結合薬物は、調節性ペプチドを含み、それは多くの腫瘍において過剰発現する高親和性レセプターに結合する。これらのペプチドは、表面に発現したレセプターに結合する低拡散性分子であるので、それらは治療薬および/または診断薬のインビボにおける標的化に特に有用である。上述の高親和性レセプターはまた、他の組織にも存在するが、腫瘍細胞におけるレセプターの速い回転が、正常組織と比較した場合に差次的なペプチド取り込みの可能性を提供する。1つの例として、高親和性ソマトスタチン(SST)結合部位は、ほとんどの内分泌腫瘍において多く発現し、そして放射性標識されたSSTアナログがそのような腫瘍の診断および治療に使用され成功した。例えば、Weckbeckerら(1993)Pharmacol Ther 60:245−64;Srkalovicら(1990)J Clin Endocrinol Metab 70:661−9;Buscailら(1995)Proc Natl Acad Sci USA 92:1580−4;Reubiら(1995)J Clin Endocrinol Metab 80:2806−14;Reubiら(1996)Metabolism 45:39−41;Buscailら(1994)Proc Natl Acad Sci USA 91:2315−9;Patel(1997)J Endocrinol Invest 20:348−67;Patelら(1995)Life Sci 57:1249−65;Brunsら(1994)Ann NY Acad Sci 733:138−46;ReisineおよびBell(1995)Endocr Rev 16:427−42;Krenningら(1993)Eur J Nucl Med 20:716−31;Plonowskiら(2002)Int J Oncol 20:397−402;Szepeshaziら(2001)Clin Cancer Res 7:2854−61;Kiarisら(2001)Eur J Cancer 37:620−8;Plonowskiら(2000)Cancer Res 60:2996−3001;Kahanら(1999)Int J Cancer 82:592−8;Plonowskiら(1999)Cancer Res 59:1947−53を参照のこと。
【0004】
これらの利点にもかかわらず、診断および治療におけるペプチドアナログの使用は、これらアナログのインビボにおける比較的短い半減期によって制限される。例えば、DecristoforoおよびMather(1999)Nucl Med Biol 26:389−96を参照のこと。例えば、フェニルイソチオシアネート部分を用いた末端アミノ基によるソマトスタチンアナログの結合は、結合物のエドマン分解および(例えば、放射性同位元素のための)キレート部分または結合した薬物の喪失を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、結合後に改善された安定性を有する標的化ペプチドおよびペプチドアナログの長く求められた必要性が当該分野に存在する。この必要性を満たすために、本発明は、インビトロおよびインビボにおける使用に適当な安定性を有する、ソマトスタチンアナログペプチドを含む標的化ペプチドへのチオール特異的結合に関する方法および組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(本発明の要旨)
本発明は、チオール特異的薬物結合のためのペプチドアナログ、およびその使用方法を提供する。本明細書中で開示されるような、チオール特異的薬物結合のための配列を含むための、既存のペプチドリガンドの改変は、薬物、キレート化剤、または同位元素を結合するためにフェニルイソチオネート化学を用いたペプチドの調製を可能にし、そのペプチド結合物は改善したインビトロおよびインビボ安定性を有する。この方法は一般的に適用可能であり、そしてペプチドのカルボキシル末端の改変が標的への結合を抑制する全てのペプチドに関して有用である。
【0007】
代表的なペプチドアナログは、式(A−B)のソマトスタチンアナログであり、ここでAはシステイン、または1つまたはそれ以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であり、そして1つまたはそれ以上のシステイン残基に対するチオール結合によって薬物(例えば放射性同位元素)またはキレート化剤への結合に適当である;そしてBはソマトスタチンレセプターに特異的に結合する、天然に存在するソマトスタチンペプチド、または合成ソマトスタチンペプチドである。式(A−B)の代表的なソマトスタチンアナログを、配列番号5〜7で述べる。
【0008】
本明細書中で記載するような、式(A−B)のペプチドアナログに関して、Aペプチドは少なくとも1つのシステインを含み、それはチオール特異的な薬物の結合を媒介する。従って、本発明の代替の実施形態において、Aペプチドは1つのシステインまたは複数のシステインを含む。Aが末端システインを含む場合、その末端システインはN−保護され、そしてSCN試薬が使用される。代表的なAペプチドを、配列番号1〜3で述べる。
【0009】
キレート化剤を使用する場合、そのキレート化剤は1つまたはそれ以上のシステイン残基において、薬物(例えば放射性同位元素)のソマトスタチンアナログへの結合を媒介する。従って、ペプチドアナログへのチオール特異的な薬物の結合は、直接的または間接的、すなわちキレート化剤により得る。本発明はキレート化剤を採用し、それは本発明のペプチドアナログを調製するために有用なDTPAのマレイミド誘導体(MEM−MX−DTPA)である。
【0010】
本発明のペプチドアナログは、フリーのシステインを介したチオール特異的結合に適当である。そのチオール結合は、安定な結合、例えばチオエーテル結合であり得る。あるいは、特定の適用に関して望ましいように、そのチオール結合は、ジスルフィド結合、酸不安定性結合(例えば、ヒドラゾン結合)、または酵素不安定性結合のような、不安定性または加水分解性であり得る。
【0011】
式(A−B)のソマトスタチンアナログに関して、Bペプチドはあらゆるソマトスタチンペプチド、すなわちヒトソマトスタチンレセプター(SSTR)のようなソマトスタチンレセプターに特異的に結合するあらゆるペプチドである。ソマトスタチンペプチドは、アナログのSSTR発現細胞への結合を媒介する。代表的なソマトスタチンペプチドを配列番号4で述べる。
【0012】
その同種レセプターへのペプチドアナログ結合の親和力を高めるために、本発明はさらに、複数の本発明のペプチドアナログが結合するマトリックスを含む組成物を提供する。代表的なマトリックスとしては、ポリエチレングリコール、ポリデキストラン、シクロデキストリン、ポリリジン等で作られたマトリックスが挙げられるがこれらに限定されない。ペプチドアナログが薬物またはキレート化剤にチオール結合によって結合する場合、その薬物またはキレート化剤もマトリックスに結合する。あるいは、薬物およびペプチドアナログは、それぞれ直接マトリックスに結合し得る。
【0013】
本発明のペプチドアナログは、チオール結合を形成し得る、治療薬および診断薬を含むあらゆる薬物との結合に適当である。代表的な治療薬は、放射性同位元素、細胞毒(例えば、チューブリン阻害剤)、治療的遺伝子、免疫刺激剤、抗血管形成剤、および化学療法剤を含む。代表的な診断薬は、検出可能な標識、特に例えば磁気共鳴画像化法、シンチグラフィー、超音波、または蛍光を使用することによってインビボで検出可能なものを含む。
【0014】
本発明の代表的な実施形態において、ペプチドアナログは放射性同位元素に結合する。治療的適用に関して、有用な放射性同位元素は、αエミッター、βエミッター(例えば、90イットリウム)およびオージェ電子を含む。診断的適用に関して、有用な放射性同位元素は、ポジトロンエミッターおよびγエミッター(例えば、111インジウムまたは131ヨウ素)を含む。DTPAのマレイミド誘導体またはDTPAアナログのようなキレート化剤は、放射性同位元素の、本発明の標的化ペプチドへの結合を媒介し得る。
【0015】
本発明はさらに、哺乳類およびヒト患者を含む対象において、ペプチドアナログを標的化ペプチドとして使用する方法を提供する。従って、本発明のペプチドアナログは、インビボにおいて同種のレセプターに結合し得る。例えば、本発明のソマトスタチンアナログは、インビボにおいて1つまたはそれ以上のソマトスタチンレセプターに特異的に結合する。この結合が、ヒトを含む哺乳類における診断的および治療的方法の基礎である。
【0016】
従って、本発明のペプチドアナログの投与によって、インビボにおいてSSTR陽性細胞を検出する方法も提供される。本発明の代表的な実施形態において、その方法は以下の工程を含み、それによってSSTR陽性細胞が検出される:(a)式(A−B)のソマトスタチンアナログを含む組成物を患者に投与すること、ここでAはシステイン、または1つまたはそれ以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であり、ここでAはチオール結合によって1つまたはそれ以上のシステインに結合し、そしてここでBはソマトスタチンペプチドである;および(b)検出可能な標識を検出する工程。
【0017】
SSTR関連の疾患および障害の治療方法も提供される。本発明の代表的な実施形態において、その方法は、そのような治療を必要とする患者に、式(A−B)のソマトスタチンアナログを含む組成物を投与する工程を含み、ここでAはシステイン、または1つまたはそれ以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であり、ここで治療薬は1つまたはそれ以上のシステイン残基に対するチオール結合によってAに結合し、そしてここでBはソマトスタチンペプチドであり、それによってSSTR関連疾患または異常が治療される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の詳細な説明
I.定義
以下の用語は当業者によってよく理解されると考えられるが、本発明の説明を容易にするために以下の定義を述べる。
【0019】
「ソマトスタチンペプチド」という用語は、細胞に発現するソマトスタチンレセプターのようなソマトスタチンレセプター(SSTR)に特異的に結合するペプチドを指す。天然のソマトスタチンは、配列番号8で述べるアミノ酸配列を有するペプチドである。従って、「ソマトスタチンペプチド」という用語は、配列番号8の全長配列、およびソマトスタチンレセプターに特異的に結合するそのフラグメントを含む。
【0020】
「ソマトスタチンペプチド」という用語はまた、環状および直線状ペプチドアナログも含む。多くのそのようなペプチドアナログが当該分野において、例えば米国特許6,465,613号;同第6,001,801号;同第5,770,687号;同第5,750,499号;同第5,708,135号;同第5,633,263号;同第5,620,675号;同第5,597,894号;同第5,716,596号;同第5,633,263号;同第5,411,943号;同第5,073,541号;同第4,904,642号;同第4,871,717号;同第4,853,371号;同第4,485,101号において記載され、そして本発明によって使用し得る。これらはそれぞれこれによって参考文献に組み込まれる。代表的なソマトスタチンペプチドを、配列番号4として述べる。
【0021】
本明細書中でSSTRと省略される、「ソマトスタチンレセプター」という用語は、ヒトソマトスタチンレセプターのような、哺乳類ソマトスタチンレセプターを指す。SSTRは、当該分野で公知であり、そして当該分野において伝統的な技術を用いて容易に合成、組換え発現、および/または検出し得る。「SSTR」という用語は、SSTRサブタイプ、すなわちSSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR4、およびSSTR5を含み、それらは同様の結合性質を有する構造的に関連した膜貫通糖タンパク質である。
【0022】
「結合」という用語は、2つの分子、例えばペプチドリガンドおよびレセプター間の親和性を指す。本明細書中で使用されるように、「結合」は分子の混合物中における、別の分子よりも特定の分子の選択的に結合することを意味する。リガンドのレセプターへの結合は、その結合親和性が約1×10−1から約1×10−1またはそれより高いなら特異的と考えられ得る。
【0023】
本明細書中においてペプチドの結合能力を記載するために使用されるような、「特異的に(または選択的に)結合する」という語句は、タンパク質および他の生物学的材料の異種集団においてそのタンパク質の存在に限定的な結合反応を指す。「特異的に結合する」という語句はまた、本明細書中下記で記載されるような、選択的な標的化を指す。
【0024】
開示されたペプチドアナログによって治療可能な疾患または異常を説明するために本明細書中で使用されるような、「ソマトスタチン関連」という用語は、異常なSSTR発現および/または機能によって特徴付けられる状態を指す。異常なSSTR発現は、その発現がその特定の正常細胞型に通常関連する表面発現レベルより有意に高いレベルである、特定の正常細胞型表面におけるソマトスタチンレセプター発現を指す。例えば、神経芽細胞腫として特徴付けられる腫瘍は、ソマトスタチンレセプターを異常に発現し、そこで神経芽細胞腫の細胞は、その神経芽細胞腫が得られた神経組織よりも高いレベルのソマトスタチンレセプター表面発現を有する。異常なSSTR機能は、異常に亢進した、または異常に抑制されたSSTRによるシグナル伝達の状態を指す。そのような状態は、例えばソマトスタチン調節因子の異常な産生によって特徴付けられ、その産生は、その状態が無い場合の同じ因子の産生より有意に高い。ソマトスタチン調節因子、成長ホルモンおよびインスリン様成長因子1の過剰産生に関連する先端巨大症は、そのような状態の例である。
【0025】
本明細書中で使用されるような「薬物」という用語は、生物学的または検出可能な活性を有するあらゆる物質を指す。従って、「薬物」という用語は、医薬品、診断薬、またはその組み合わせを含む。「薬物」という用語はまた、本発明のペプチドアナログが特異的に結合するレセプターを発現する細胞(例えば、SSTR細胞)に望ましく伝達されるあらゆる物質を含む。
【0026】
量、結合親和性等のような測定可能な値を指す場合に本明細書中で使用されるような、「約」という用語は、そのような変動は開示された方法を実施するのに適当であるので、特定の値から±20%または±10%、または±5%、または±1%、または±0.1%の変動を含むように意味する。
【0027】
「a」、「an」および「the」という用語は、1つまたはそれ以上を指して、当該分野における慣例に従って使用される。
【0028】
(II.ペプチドアナログ)
本発明のペプチドアナログは、チオール結合によるペプチドへの部位特異的薬物結合を提供するように設計される。一般的に、ペプチドへの薬物結合の部位は、リガンド結合に関与する残基、例えばインビボにおいて標的分子への結合に関与する残基から離れた部位として選択される。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、チオールによる薬物結合は、内部ペプチド部位において行われる。本明細書中でチオールによる結合部位を記載するために使用されるような「内部」という用語は、非末端部位、すなわち分子のカルボキシルまたはアミノ末端より他の部位を指す。内部チオールは、代表的にはペプチド鎖の非末端アミノ酸にチオール官能基を含む。内部チオール官能基はまた、末端システインのチオール基を含み得、ここでその末端アミノまたはカルボキシル基は誘導体化から保護される。
【0030】
開示されるアナログは、インビトロおよびインビボにおける適用で必要とされるような改善した安定性を示す。特に、フェニルイソチオシアネート化学を用いたアナログのカルボキシルまたはアミノ末端いずれかにおける薬物結合を採用する、既存のソマトスタチンアナログは、エドマン分解に感受性であるために、適用可能性が制限される。本明細書中で開示されるペプチドアナログデザインはまた、さらなる薬物および/または標識の結合に使用し得る「フリーの」または未改変のアミノ末端を保存することにおいて有用である。
【0031】
本発明のペプチドアナログは、式(A−B)であり、ここでAはシステイン、または1つまたはそれ以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であり、そして1つまたはそれ以上のシステイン残基に対するチオール結合による薬物またはキレート化剤への結合に適当である;そしてBは標的化ペプチドである。「標的化ペプチド」という用語は、本明細書中で、一般的に同種レセプターに特異的に結合する低分子量ペプチドを記載するために使用される。
【0032】
開示される方法は、高親和性結合を示す他の低分子量ペプチド、例えば血管作用性腸ポリペプチド(VIP)、ボンベシン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、サブスタンスP、エンケファリン、ニューロキニン、およびその誘導体およびレセプター結合フラグメントへの薬物/キレート化剤の結合に特に関連する。これらのペプチド、および同種レセプターへのその結合は、よく特徴付けられている。従って、本明細書中における開示の精査した後、当業者は薬物/キレート化剤のチオールによる結合のための内部部位を有するペプチドアナログを容易に調製し得る。
【0033】
本発明の代表的なアナログを、実施例に記載する。実施例1は、モデル有機薬物(オーアスタチンE)および放射性同位元素(インジウム−111)に結合したソマトスタチンアナログを記載する。これらのアナログは、本発明の典型的な実施形態を示し、そして本明細書中で開示される新規組成物が、これらの特定の実施形態に制限されることは意図されない。
【0034】
(II.A.一般的な考察)
本発明の結合ペプチドまたはペプチドアナログは、様々な変化、置換、挿入および欠失の対象であり得、ここでそのような変化はその使用においてある利点を提供する。従って、「ペプチド」という用語は、ペプチド誘導体の様々な形式のいずれも含み、それはアミド、タンパク質との結合物、環状化ペプチド、ポリマー化ペプチド、保存的置換された改変体、アナログ、フラグメント、ペプトイド、化学的に改変されたペプチド、およびペプチド模倣物を含む。
【0035】
本発明のペプチドは、天然に存在するアミノ酸、合成アミノ酸、遺伝的にコードされたアミノ酸、遺伝的にコードされていないアミノ酸、およびその組み合わせを含み得る。ペプチドは、L型およびD型アミノ酸の両方を含み得る。
【0036】
代表的な遺伝的にコードされていないアミノ酸としては、2−アミノアジピン酸;3−アミノアジピン酸;β−アミノプロピオン酸;2−アミノ酪酸;4−アミノ酪酸(ピペリジン酸);6−アミノカプロン酸;2−アミノヘプタン酸;2−アミノイソ酪酸;3−アミノイソ酪酸;2−アミノピメリン酸;2,4−ジアミノ酪酸;デスモシン;2,2’−ジアミノピメリン酸;2,3’−ジアミノプロピオン酸;N−エチルグリシン;N−エチルアスパラギン;ヒドロキシリシン;アロ−ヒドロキシリシン;3−ヒドロキシプロリン;4−ヒドロキシプロリン;イソデスモシン;アロ−イソロイシン;N−メチルグリシン(サルコシン);N−メチルイソロイシン;N−メチルバリン;ノルバリン;ノルロイシン;およびオルニチンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
代表的な誘導体化アミノ酸は、例えばフリーのアミノ基が誘導体化されて塩酸アミン、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、またはホルミル基を形成する分子を含む。フリーのカルボキシル基は、誘導体化されて塩、メチルおよびエチルエステルまたは他の型のエステルまたはヒドラジドを形成し得る。フリーの水酸基は、誘導体化されてO−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成し得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導体化されてN−イム−ベンジルヒスチジンを形成し得る。
【0038】
「保存的置換された改変体」という用語は、1つまたはそれ以上の残基が機能的に同様の残基で保存的に置換されたアミノ酸を含み、そして本明細書中で記載されるような標的化活性を示すペプチド、例えば配列番号第4−7番で述べるソマトスタチンペプチドまたはソマトスタチンペプチドアナログを指す。「保存的置換された改変体」という語句はまた、残基が化学的に誘導体化された残基と置換されたペプチドを含む。
【0039】
保存的置換の例は、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンのような1つの非極性(疎水性)残基と別のものの置換;アルギニンおよびリシン間、グルタミンおよびアスパラギン間、グリシンおよびセリン間のような、1つの極性(親水性)残基と別のものの置換;リシン、アルギニンまたはヒスチジンのような塩基性残基と別のものの置換;またはアスパラギン酸またはグルタミン酸のような酸性残基と別のものの置換を含む。
【0040】
本発明のペプチドはまた、ペプチドの必要な標的化活性および/またはチオール特異的薬物結合部位が維持される限り、その配列が本明細書で開示されるペプチドの配列と比較して、1つまたはそれ以上の残基の追加および/または欠失を含むペプチドを含む。「フラグメント」という用語は、本明細書中で開示されるペプチドのものより短いアミノ酸残基配列を含むペプチドを指す。
【0041】
本発明のペプチドを標識または固体マトリックス、またはキャリアに簡便に固定し得る「リンカー」を提供するために、さらなる残基もペプチドのいずれかの末端に加え得る。アミノ酸残基リンカーは、通常少なくとも1残基であり、そして40またはそれより多い残基であり得、より多くの場合1から10残基であるが、単独ではレセプター結合活性を有するペプチドアナログを構成しない。結合のために使用される典型的なアミノ酸残基は、チロシン、システイン、リシン、グルタミン酸およびアスパラギン酸等である。それに加えて、ペプチドを、末端−NHアシル化(例えば、アセチル化、またはチオグリコール酸アミド化)によって、または末端カルボキシルアミド化(例えば、アンモニア、メチルアミン等の末端改変によって)によって改変、または環状化し得る。周知であるように、末端改変は、プロテイナーゼ消化による感受性を抑制するために有用であり、そして従って溶液中、特にプロテアーゼが存在し得る生物学的液体中のペプチドの半減期を延長するよう作用する。
【0042】
本明細書中で使用されるような「ペプトイド」という用語は、1つまたはそれ以上のペプチド結合が、カルバ(carba)結合(CH−CH)、デプシ結合(CO−O)、ヒドロキシエチレン結合(CHOH−CH)、ケトメチレン結合(CO−CH)、メチレン−オキシ結合(CH−O)、還元結合(CH−NH)、チオメチレン結合(CH−S)、チオペプチド結合(CS−NH)、およびN−改変結合(−NRCO−)を含むがこれに限らない、偽ペプチド(pseudopeptide)結合によって置換されたペプチドを指す。例えば、Corringerら(1993)J Med Chem 36:166−72、Garbay−Jaureguiberryら(1992)Int J Pept Protein Res 39:523−7、Tungら(1992)Pept Res 5:115−8、Urgeら(1992)Carbohydr Res 235:83−93、およびPavoneら(1993)Int J Pept Protein Res 41:15−20を参照のこと。
【0043】
本明細書中で使用されるような「ペプチド模倣物」という用語は、参照ペプチドの標的化活性を実質的に再現することによって参照ペプチドの生物学的活性を模倣するリガンドを指すが、ペプチドまたはペプトイドではない。ペプチド模倣物は、代表的には約700ダルトンより少ない分子量を有する。
【0044】
(II.B.ソマトスタチンアナログ)
ソマトスタチンアナログは、本発明の代表的なペプチドアナログとして記載される。ソマトスタチンアナログは、式(A−B)を有するとして記載され、ここでAはシステイン、または1つまたはそれ以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であり、そして1つまたはそれ以上のシステイン残基に対するチオール結合による薬物またはキレート化剤への結合に適当である;そしてBはソマトスタチンペプチドである。代表的な式(A−B)のソマトスタチンアナログを、配列番号第5−7番で記載する。
【0045】
Aペプチドは、少なくとも1つのシステインを含み、それがチオール特異的薬物結合を媒介する。従って、本発明の代替の実施形態において、Aペプチドは1つのシステインまたは複数のシステインを含む。代表的なAペプチドを、配列番号第1−3番で記載する。
【0046】
式(A−B)のソマトスタチンアナログにおいて、Bペプチドはあらゆるソマトスタチンペプチド、すなわちヒトソマトスタチンレセプターのようなソマトスタチンレセプターに特異的に結合するあらゆるペプチドである。本発明のソマトスタチンアナログは、ソマトスタチンペプチドを含み得、ここでカルボキシル末端は、インビボにおける安定性を改善するためにアルコールまたはアミドに改変されている。あるいは、例えばそのような構造が腫瘍の取り込みを改善し、そして血液クリアランスを促進する場合、ソマトスタチンアナログは、未改変のカルボキシル末端(すなわち、そのカルボン酸の形式で)を有するソマトスタチンペプチドを含み得る。例えば米国特許第5,830,431号を参照のこと。代表的なソマトスタチンペプチドを、配列番号第4番で記載する。
【0047】
(II.C.チオール結合)
本発明のペプチドアナログは、フリーのシステインによるチオール特異的結合に適当である。ペプチドアナログに対するチオール特異的薬物結合は、直接的または間接的、すなわちキレート化剤によるものであり得る。本発明は、本発明のペプチドアナログを調製するのに有用なキレート化剤、MX−DTPAを採用する。MX−DTPAキレート化剤のマレイミド誘導体は、ペプチドアナログのチオール基(すなわち、1つまたはそれ以上のフリーシステインのSH基)と反応してチオエーテル結合を形成する。MEM−MX−DTPAを使用する場合、アミノ基(−NH)との反応性を除外するために、反応条件は約7.5より低いpHを有しているべきである。
【0048】
本発明のチオール結合方法は、薬物/キレート化剤の調節性および標的化ペプチドへの結合に一般的に適用可能であり、そしてソマトスタチンレセプターに制限することを意図しない。MEM−MX−DTPAは、あらゆる調節性または標的化ペプチドのフリーのチオールに対する結合に適当である。
【0049】
チオール結合は、安定な結合、例えばチオエーテル結合であり得る。従って、本発明の1つの実施形態において、薬物またはキレート化剤に、安定なチオエーテル結合を提供するチオール反応性グループ(例えば、マレイミドグループ)で官能性を持たせる。任意で、薬物は、薬物の一部をペプチドから放出し得るように、切断可能部位を含み得る。代表的な切断可能部位は、酸不安定性および酵素不安定性部位を含む。
【0050】
本発明の別の実施形態において、特定の適用に望ましいように、チオール結合は不安定であり得る。例えば、薬物またはキレート化剤に、ペプチドとのジスルフィド結合の形成を可能にするチオール基で官能性を持たせる。そのように調製した結合物は、酸化還元活性であるので、血清中で安定であり、そして細胞サイトゾルの還元的環境下に入った時に放出される。
【0051】
(II.D.薬物)
本発明のペプチドアナログは、チオール結合を形成し得るあらゆる薬物との結合に適当である。代表的な治療薬は、放射性同位元素、細胞毒(例えば、チューブリン阻害剤)、治療遺伝子、免疫刺激剤、抗血管形成剤、および化学療法剤を含む。代表的な診断薬は、インビボにおいて、例えば磁気共鳴画像化法、シンチグラフィー画像化法、超音波、または蛍光を用いることによって検出し得る、検出可能な標識を含む。
【0052】
本発明の代表的な実施形態において、ペプチドアナログは放射性同位元素に結合し、それは放射性同位元素の選択によって治療的および/または診断的適用に有用である。放射線治療に有用な放射性同位元素は、α−エミッター、β−エミッター、およびオージェ電子のような高エネルギー放射性同位元素を含むがこれに限らない。診断的適用に有用な放射性同位元素は、ポジトロンエミッターおよびγ−エミッターを含むがこれに限らない。
【0053】
チオール特異的結合によって結合した薬物を含むソマトスタチンアナログを、例えばアナログのチロシン残基においてさらにヨウ素化し、アナログの検出または治療効果を促進し得る。ヨウ素化方法は当該分野で公知であり、そして代表的なプロトコールは、例えばKrenningら(1989)Lancet 1:242−4およびBakkerら(1990)J Nucl Med 31:1501−9において見出し得る。
【0054】
(II.E.ペプチドアナログの結合性質)
式(A−B)のソマトスタチンアナログに関して、Bペプチドはあらゆるソマトスタチンペプチド、すなわちヒトソマトスタチンレセプター(SSTR)のようなソマトスタチンレセプターに特異的に結合するあらゆるペプチドである。代表的なソマトスタチンペプチドを、配列番号第4および8番で記載する。ソマトスタチンペプチドは、アナログのSSTR発現細胞への結合を媒介する。ソマトスタチンアナログのSSTRおよびSSTR発現細胞への結合を決定する代表的な方法を、実施例2−3で記載する。
【0055】
SSTR陽性細胞は、あらゆるサブタイプのソマトスタチンレセプターを発現する細胞を含み得る。本発明の1つの実施形態において、ソマトスタチンアナログは1つの型のソマトスタチンレセプター(例えば、ソマトスタチンレセプター2型)に特異的に結合し得るが、2番目の型のソマトスタチンレセプター(例えば、ソマトスタチンレセプター5型)には実質的に結合しない。本発明の別の実施形態において、ソマトスタチンアナログは、複数のソマトスタチンレセプター型(例えば、ソマトスタチンレセプター2型および4型)に特異的に結合し得る。
【0056】
結合親和力を高めるために、本発明はさらにキャリアを含む組成物を提供し、それは複数のペプチドアナログをカプセルに封入、または結合する。薬物がペプチドアナログにチオール特異的結合によって結合している場合、薬物もそれによってキャリアと結合する。あるいは、薬物およびペプチドアナログはそれぞれ直接マトリックスに結合し得る。キャリア/ペプチドアナログ組成物を調製するために使用されるペプチドアナログは、同一または同一でない、すなわちここでペプチドアナログは異なる薬物/キレート化剤を含み得る。異なるペプチドアナログはまた、同じレセプターに結合する、異なるペプチドを含み得る。
【0057】
代表的なキャリアは、マイクロカプセル、例えば重合体ミセルまたは結合物(Goldmanら(1997)Cancer Res 57:1447−51;米国特許第4,551,482、5,714,166、5,510,103、5,490,840、および5,855,900号)、マイクロスフィアまたはナノスフィア(Manomeら(1994)Cancer Res 54:5408−13;Saltzmanら(1997)Adv Drug Deliv Rev 26:209−230)、グリコサミノグリカン(米国特許第6,106,866号)、脂肪酸(米国特許第5,994,392号)、脂肪エマルション(米国特許第5,651,991号)、脂質または脂質誘導体(米国特許第5,786,387号)、コラーゲン(米国特許第5,922,356号)、ポリサッカライドまたはその誘導体(米国特許第5,688,931号)、ナノサスペンション(nanosuspension)(米国特許第5,858,410号)、およびポリソーム(米国特許第5,922,545号)を含む。
【0058】
増加したペプチドアナログ結合の親和力を有する組成物を調製するために、ポリマーマトリックスは好ましいキャリアである。本発明において有用なポリマーマトリックスは、ポリエチレングリコール、ポリデキストラン、シクロデキストリン、ポリリシン等で作られたマトリックスを含むがこれに限らない。様々な大きさのポリマー分子を評価して、ペプチド結合物の結合および患者に投与した後の体内分布を最適化し得る。
【0059】
本発明の1つの実施形態において、ポリエチレングリコール(PEG)マトリックスを使用する。「ポリエチレングリコール」という用語は、直鎖または分岐ポリエチレングリコールポリマーおよびモノマーを指す。PEGモノマーは、式:−(CHCHO)−である。薬物および/またはペプチドアナログを、直接または間接的に、すなわち糖のような適当なスペーサーグループによってPEGに結合し得る。PEG/ペプチドアナログ/薬物組成物はまた、インビボにおいて薬物の安定性および標的部位への伝達を促進するために、親油性および/または親水性の部分をさらに含み得る。
【0060】
ペプチドおよび薬物を、カルボジイミド結合、エステル化、過ヨウ素酸ナトリウム酸化に続く還元的アルキル化、およびグルタルアルデヒド架橋を含むがこれに限らない、当該分野で公知の方法を用いて、薬物または薬物キャリアと結合し得る。PEGを含む組成物を調製する代表的な方法を、特に米国特許第6,461,603号;同第6,309,633号;および同第5,648,095号において見出し得る。
【0061】
(II.F.合成)
ペプトイドを含む本発明のペプチドを、ペプチド合成の当業者に公知のあらゆる技術によって合成し得る。固相メリフィールド合成のような合成化学技術が、純度、抗原特異性、望ましくない副産物を含まないこと、産生の容易さ等のために好ましい。代表的な技術の総説は、StewartおよびYoung(1984)Solid Phase Peptide Synthesis、Pierce Chemical Co.、Rockville、Illinois;Merrifield(1969)Adv Enzymol Relat Areas Mol Biol 32:221−296;FieldsおよびNoble(1990)Int J Pept Protein Res 35:161−214;Bodanszky(1993)Principles of Peptide Synthesis、Springer−Verlag、New Yorkにおいて見出し得る。固相合成技術は、Anderssonら(2000)Biopolymers 55:227−50、そこで引用された参考文献、および米国特許第6,015,561号、同第6,015,881号、同第6,031,071号、および同第4,244,946号において見出し得る。天然に存在するアミノ酸を含むペプチドも、組換えDNA技術を用いて産生し得る。それに加えて、特定のアミノ酸配列を含むペプチドを、市販の供給源から購入し得る(例えば、San DiegoのBiopeptide Co.,LLC、Livermore、CaliforniaのCalifornia and PeptidoGenics)。
【0062】
ペプチド模倣物は、その化学的構造に基づいてハッシュビトマップ(hushed bitmap)構造フィンガープリントをペプチドに割り当て、そして広範囲な化学データベースにおいてそのフィンガープリントの各化合物のものとの類似性を決定することによって同定される。フィンガープリントを、その目的のためにDaylight Chemical Information Systems,Inc.(Mission Viejo、California)によって市販で配布されているフィンガープリンティングソフトウェアを用いて、販売元の指示に従って決定し得る。代表的なデータベースは、SPREI’95(Munchen、GermanyのInfoChem GmbH)、Index Chemicus(Philadelphia、PennsylvaniaのISI)、World Drug Index(London、United KingdomのDerwent)、TSCA93(United States Environmental Protection Agency)、MedChem(Claremont、CaliforniaのBiobyte)、Maybridge Organic Chemical Catalog(Cornwall、EnglandのMaybridge)、Available Chemicals Directory(San Leandro、CaliforniaのMDL Information Systems)、NCI96(United States National Cancer Institute)、Asinex Catalog of Organic Compounds(Moscow、RussiaのAsinex Ltd.)、およびNP(Moscow、RussiaのInterBioScreen Ltd.)を含むがこれに限らない。参照ペプチドのペプチド模倣物を、フィンガープリントと比較して少なくとも0.85の類似性(Tanamoto係数)を有するフィンガープリントを含むものとして選択する。ペプチド模倣物をまた、以下のものによってデザインし得る:(a)ペプチドの標的化活性を司る薬理活性基(pharmacophoric group)を同定する;(b)ペプチドの活性配置において、薬理活性基の空間的配置を決定する;および(c)薬物学的に許容できる鋳型を選択し、それにペプチドの活性配置においてその空間的配置を維持するのを可能にするような方法で、薬理活性基を配置する。標的化活性を司る薬理活性基を同定するために、ペプチドの改変体を調製し、そして標的化活性に関してアッセイし得る。あるいは、またはそれに加えて、ペプチドおよびその標的分子の複合体の三次元構造を、相互作用の証拠、例えばペプチド側鎖の標的分子の割れ目への適合、水素結合の可能性のある部位等に関して調査し得る。薬理活性基の空間的配置を、NMR分光学またはX線回折研究によって決定し得る。最初の三次元モデルを、エネルギー最小化および分子力学シミュレーションによって精密にし得る。モデル化の鋳型を、鋳型データベースを参照することによって選択し得、そして代表的には2−8ファルマコフォア(pharmacophore)の配置を可能にする。鋳型への薬理活性基の追加が、ペプチドにおけるその空間的配置を維持するペプチド模倣物が同定される。ペプチド模倣物のデザインおよび調製の技術は、米国特許第5,811,392号;米国特許第5,811,512号;米国特許第5,578,629号;米国特許第5,817,879号、米国特許第5,817,757号;および米国特許第5,811,515号において見出し得る。
【0063】
本発明のあらゆるペプチドまたはペプチド模倣物を、薬物学的に許容できる塩の形式で使用し得る。本発明のペプチドと塩を形成し得る適当な酸は、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、桂皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸等のような無機酸を含む。HClおよびTFA塩が特に好ましい。
【0064】
本発明のペプチドと塩を形成し得る適当な塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等のような無機塩基;およびモノ−、ジ−、およびトリ−アルキルおよびアリールアミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン等)、および任意で置換されたエタノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン等)のような有機塩基を含む。
【0065】
(III.ペプチドアナログの使用)
本発明のソマトスタチンアナログは、インビトロおよびインビボにおけるソマトスタチンレセプターの検出、およびSSTR関連の疾患および障害の診断および治療に有用性を有する。開示されたペプチドアナログによって治療可能な疾患または異常を説明するために本明細書中で使用されるような「ソマトスタチン関連」という用語は、異常なSSTR発現および/または機能によって特徴付けられる状態を指す。異常なSSTR発現は、その発現がその特定の正常細胞型と通常関連する表面発現レベルより有意に高いレベルである、特定の正常細胞型の表面におけるソマトスタチンレセプター発現を指す。例えば、神経芽細胞腫として特徴付けられる腫瘍は、ソマトスタチンレセプターを異常に発現し、そこで神経芽細胞腫の細胞は、その神経芽細胞腫細胞が得られた神経組織よりも高いレベルのソマトスタチンレセプター表面発現を有する。異常なSSTR機能は、異常に上昇した、または異常に抑制されたSSTRによるシグナル伝達の状態を指す。そのような状態は、例えばソマトスタチン調節因子の異常な産生によって特徴付けられ、その産生はその状態が無い場合の同じ因子の産生より有意に高い。ソマトスタチン調節因子、成長ホルモンおよびインスリン様成長因子−1の過剰産生と関連する先端巨大症は、そのような状態の例である。
【0066】
開示されたペプチドの有用性は、その同種レセプターに特異的に結合する能力による。患者に投与された場合、本発明のペプチドアナログは標的化ペプチドとしてふるまう。従って、ペプチドアナログに結合した薬物を、インビボにおいて特定の細胞に伝達し得る。
【0067】
「標的化」という用語は、コントロール組織と比較して、標的組織におけるペプチドまたはペプチドアナログの選択的な動きおよび/または蓄積を指す。
【0068】
本明細書中で使用される「標的組織」という用語は、患者に対する投与後の、ペプチドアナログの意図される蓄積部位を指す。例えば、本発明の方法は、SSTR細胞を含む標的組織を採用する。
【0069】
本明細書中で使用される「コントロール組織」という用語は、投与されたペプチドの結合および/または蓄積を、実質的に欠くと思われる部位を指す。例えば、本発明の方法によって、SSTR細胞を欠くコントロール組織、すなわち実質的にSSTR細胞である組織は、SSTRがんおよび非がん細胞を含む。
【0070】
「選択的標的化」という用語は、本明細書中でペプチドアナログの選択的な局在化を指して使用され、標的組織におけるペプチドアナログの量は、コントロール組織におけるペプチドアナログの量より約2倍多く、約5倍またはより多くの量、または約10倍またはより多くの量である。「選択的標的化」という用語はまた、コントロール組織に対する標的化の欠如を伴う、標的組織におけるペプチドアナログの結合または蓄積を指す。
【0071】
「がん」という用語は、白血病およびリンパ腫のような造血系悪性腫瘍から起こる固形腫瘍を含む、患者におけるあらゆる組織の原発性および転移腫瘍およびがんの両方を指す。特に、本発明のソマトスタチンアナログは、神経内分泌系の悪性腫瘍、および乳房、肺、腎臓、膵臓、胃、直腸および脳のような、多くの他の固形腫瘍の治療に有用である。例えば、Weckbeckerら(1993)Pharmacol Ther 60:245−64;Srkalovicら(1990)J Clin Endocrinol Metab 70:661−9;Buscailら(1995)Proc Natl Acad Sci USA 92:1580−4;Reubiら(1995)J Clin Endocrinol Metab 80:2806−14;Reubiら(1996)Metabolism 45:39−41;Buscailら(1994)Proc Natl Acad Sci USA 91:2315−9;Patel(1997)J Endocrinol Invest 20:348−67;Patelら(1995)Life Sci 57:1249−65;Brunsら(1994)Ann NY Acad Sci 733:138−46;ReisineおよびBell(1995)Endocr Rev 16:427−42;Krenningら(1993)Eur J Nucl Med 20:716−31;Plonowskiら(2002)Int J Oncol 20:397−402;Szepeshaziら(2001)Clin Cancer Res 7:2854−61;Kiarisら(2001)Eur J Cancer 37:620−8;Plonowskiら(2000)Cancer Res 60:2996−3001;Kahanら(1999)Int J Cancer 82:592−8;Plonowskiら(1999)Cancer Res 59:1947−53を参照のこと。
【0072】
本発明はまた、開示された治療的および診断的方法を組み合わせて使用し得ることを提供する。それに加えて、開示された方法を、当該分野で公知の治療および診断方法と組み合わせて使用し得る。例えば、本発明のペプチドアナログを、検出および治療の2つの目的で投与し得る。
【0073】
(III.A.治療組成物および方法)
本発明の別の実施形態において、治療薬を含むペプチドアナログを使用して、標的化ペプチドが特異的に結合するレセプターの異常を示す細胞によって特徴付けられる疾患または異常を治療し得る。従って、SSTR関連の疾患および障害の治療方法も提供される。本発明の代表的な実施形態において、その方法は、そのような治療が必要な患者に式(A−B)のソマトスタチンアナログを含む組成物を投与することを含み、ここでAはシステイン、または1つまたはそれ以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であり、ここで治療薬は、1つまたはそれ以上のシステイン残基に対するチオール結合によってAに結合しており、そしてここでBはソマトスタチンペプチドであり、それによってSSTR関連疾患または異常が治療される。
【0074】
本明細書中で開示されるソマトスタチンアナログを使用して、成長ホルモン、ソマトメジン(例えば、IGF−1)、インスリン、グルカゴン、および他のオートパラクリン(autoparacrine)増殖因子または膵臓増殖因子の分泌を阻害し得る。従って、本発明の化合物を使用して、先端巨大症および/またはII型糖尿病の治療のような、成長ホルモンの過剰産生から起こる異常を治療し得る。例えば、Jenkinsら(2001)Chemotherapy 47 Suppl 2:162−96を参照のこと。
【0075】
がんの治療のために、本発明のソマトスタチンアナログを、放射性同位元素、細胞毒(例えば、チューブリン阻害剤)、治療遺伝子、免疫刺激剤、抗血管形成剤、および化学療法剤を含むがこれに限らない抗がん剤に結合する。これらの薬物型の代表的なメンバーを、本明細書中の下記にまとめ、これらは相互排除的ではない。本発明のソマトスタチンアナログの投与は、腫瘍増殖の阻害のような、抗腫瘍反応を誘発し得る。実施例4−5を参照のこと。
【0076】
放射線療法の適用のために、本発明のペプチドアナログは、フリーのシステインにおいてアナログに結合した高エネルギー放射性同位元素を含み得る。その放射性同位元素は、ペプチド中に存在するシステイン残基に直接結合し得る、または結合はチオール特異的結合によってペプチドアナログに結合したキレート化剤の使用を含み得る。放射線療法に適当な放射性同位元素は、αエミッター、βエミッター、およびオージェ電子を含むがこれに限らない。代表的な放射性同位元素は、18フッ素、64銅、65銅、67ガリウム、68ガリウム、77臭素、80m臭素、95ルテニウム、97ルテニウム、103ルテニウム、105ルテニウム、99mテクネチウム、107水銀、203水銀、123ヨウ素、124ヨウ素、125ヨウ素、126ヨウ素、131ヨウ素、133ヨウ素、111インジウム、113mインジウム、99mレニウム、105レニウム、101レニウム、186レニウム、188レニウム、121mテルル、99テクネチウム、122mテルル、125mテルル、165ツリウム、167ツリウム、168ツリウム、90イットリウム、およびそこから得られる窒化物または酸化物形式を含む。他の適当な放射性同位元素は、213ビスマス、213鉛、および225アクチニウムのようなαエミッターを含む。
【0077】
開示された方法によって使用するための、分子の放射性同位元素標識化の方法は、当該分野で公知である。例えば、標的化分子を、放射性同位元素がそれに直接結合し得るように誘導体化し得る(Yooら、1997)。あるいは、結合を可能にするためにリンカーを加え得る。代表的なリンカーは、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)−イソチオシアネート、スクシニミジル6−ヒドラジニウムニコチネート(nicotinate)塩酸塩(SHNH)、およびヘキサメチルプロピレンアミンオキシム(HMPAO)を含む。Chattopadhyayら(2001)Nucl Med Biol 28:741−4;Dewanjeeら(1994)J Nucl Med 35:1054−63;Sagiuchiら(2001)Ann Nucl Med 15:267−70;米国特許第6,024,938号を参照のこと。実施例1も参照のこと。
【0078】
血管形成および抑制された免疫反応が、悪性疾患および腫瘍の増殖、侵入、および転移の病因に中心的な役割を果たしている。従って、本発明の方法において有用な薬物はまた、インビボにおいて免疫反応および/または抗血管形成反応を誘導し得るものを含む。
【0079】
「免疫反応」という用語は、脊椎動物対象の免疫系による、抗原または抗原決定基に対するあらゆる反応を指すよう意味する。典型的な免疫反応は、体液性免疫反応(例えば、抗原特異的抗体の産生)および細胞性免疫反応(例えば、リンパ球の増殖)を含む。
【0080】
免疫刺激効果を有する代表的な治療的タンパク質は、サイトカイン(例えば、IL2、IL4、IL7、IL12、インターフェロン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α))、免疫調節性細胞表面タンパク質(例えば、ヒト白血球抗原(HLA)タンパク質)、副刺激分子、および腫瘍関連抗原を含むがこれに限らない。KirkおよびMule(2000)Hum Gene Ther 11:797−806;Mackensenら(1997)Cytokine Growth Factor Rev 8:119−128;WaltherおよびStein(1999)Mol Biotechnol 13:21−28;およびそこで引用された参考文献を参照のこと。
【0081】
「血管形成」という用語は、新規の血管が形成される過程を指す。本明細書中で使用される「抗血管形成反応」および「抗血管形成活性」という用語は、それぞれ新規血管の形成が阻害される生物学的過程を指す。
【0082】
本発明によって使用し得る抗血管形成活性を有する代表的なタンパク質は、トロンボスポンジンI(Dameronら(1994)Science 265:1582−4;Kosfeldら(1993)J Biol Chem 268:8808−14;Tolsmaら(1993)J Cell Biol 122:497−511)、メタロスポンジン(metallospondin)タンパク質(Carpizoら(2000)Cancer Metastasis Rev 19:159−65)、クラスIインターフェロン(Albiniら(2000)Am J Pathol 156:1381−93)、IL12(Voestら(1995)J Natl Cancer Inst 87:581−6)、プロタミン(Ingberら(1990)Nature 348:555−7)、アンジオスタチン(O’Reillyら(1994)Cell 79:315−28)、ラミニン(Sakamotoら(1991)Cancer Res 51:903−6)、エンドスタチン(O’Reillyら(1997)Cell 88:277−85)およびプロラクチンフラグメント(Clappら(1993)Endocrinology 133:1292−9)を含む。それに加えて、いくつかの抗血管形成ペプチドがこれらのタンパク質から単離された(Eijanら(1991)Mol Biother 3:38−40;Maioneら(1990)Trends Pharmacol Sci 11:457−61;Wolteringら(1991)J Surg Res 50:245−51)。
【0083】
本明細書中で開示されたソマトスタチンアナログと結合し、そして本発明の治療方法によって使用し得る、さらなる抗腫瘍薬物は、メルファランおよびクロラムブシルのようなアルキル化剤、ビンデシンおよびビンブラスチンのようなビンカアルカロイド、5−フルオロウラシル、5−フルオロウリジンおよびその誘導体のような代謝拮抗物質を含むがこれに限らない。例えば、Aboud−Pirakら(1989)Biochem Pharmacol 38:641−8;Rowlandら(1993)Cancer Immunol Immunother 37:195−202;Smythら(1987)Immunol Cell Biol 65(Pt4):315−21;Starlingら(1992)Bioconjug Chem 3:315−22;Krauerら(1992)Cancer Res 52:132−7;Hennら(1993)J Med Chem 36:1570−9を参照のこと。
【0084】
本明細書中で開示されるソマトスタチンアナログは、他の治療と併用され得る。この他の治療としては、化学療法、外科的切除、照射、放射線増感、化学的保護(chemoprotection)、抗血管形成治療、免疫刺激治療、遺伝子治療、およびホルモン治療を含むがこれに限らない、組み合わせ治療は、相加的なまたは増強された治療的効果を誘発、および/またはいくつかの抗がん剤の肝毒性を抑制し得る。例えば、Daviesら(1996)Anticancer Drugs 7 Suppl.1:23−31;Leeら(1993)Anticancer Res 13:1453−6;Stewartら(1994)Br J Surg 81:1332を参照のこと。
【0085】
(III.B.診断および検出方法)
本発明はさらに、検出可能な標識を含むペプチドアナログを使用して、標的化ペプチドに特異的に結合するレセプターを有する細胞の存在を検出し得る方法を提供する。その方法は、インビトロおよびインビボにおける検出に適用可能である。
【0086】
本発明の1つの実施形態において、SSTR発現細胞を検出する方法は、以下のものを含み、それによってSSTR発現細胞を検出する:(a)細胞を含む生物学的試料を調製する工程;(b)本発明のソマトスタチンアナログを生物学的試料とインビトロで接触させ工程であって、ここでソマトスタチンアナログは検出可能な標識を含む、工程;および(c)検出可能な標識を検出し工程。例えば、本発明のペプチド結合物を使用して、SSTR陽性細胞または組織を検出および定量し得る。
【0087】
本発明の別の実施形態において、例えば診断に有用であるため、または手術中の補助を提供するために、開示された検出方法をインビボにおいて実施する。従って、本発明の検出方法はまた、以下のものを含み得、それによってSSTR陽性細胞を検出する:(a)患者に、式(A−B)のソマトスタチンアナログを含む組成物を投与する工程であって、ここでAはシステイン、または1つまたはそれ以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であり、ここでAはチオール結合によって1つまたはそれ以上のシステインに結合しており、そして、ここでBはソマトスタチンペプチドである、工程;および(b)検出可能な標識を検出する工程。
【0088】
標識化ペプチドアナログの患者への投与後、および結合に十分な時間の後、組成物の体内分布を視覚化し得る。「結合に十分な時間」という用語は、インビボにおいてペプチドアナログの同種レセプターへの結合を可能にする時間を指す。
【0089】
本明細書中で画像法または検出方法を説明するために使用されるような「インビボ」という用語は、それぞれ本明細書中で下記に簡単に記載される、シンチグラフィー法、磁気共鳴画像化法、超音波、または蛍光のような、一般的に非侵襲的な方法を指す。「非侵襲的な方法」という用語は、インビボでの画像法を促進するために、造影剤の投与を採用する方法を除外しない。インビトロ検出のために、有用な検出可能な標識は、これもまた本明細書中で下記に簡単に記載される、フルオロフォア、エピトープ、または放射活性標識を含む。
【0090】
シンチグラフィー画像化法。シンチグラフィーによるSSTR発現細胞の検出のために、本発明のソマトスタチンアナログを、放射性同位元素のアナログへのチオール特異的結合によって調製する。診断的放射性同位元素は、γエミッターおよびポジトロンエミッターを含むがこれに限らない。放射性同位元素標識薬物を調製する代表的な方法は、本明細書中で上記に記載する。アスコルビン酸、ゲンチシン酸、または他の適当な抗酸化剤のような、放射線分解の損傷を防止するまたは最小限にするための安定化剤を、標識化ペプチドアナログを含む組成物に加え得る。
【0091】
シンチグラフィー画像化法は、SPECT(シングルフォトンエミッションコンピューター連動断層撮影)、PET(ポジトロンエミッション断層撮影)、ガンマカメラ画像化法、および直線走査(rectilinear scanning)を含む。ガンマカメラおよび直線走査機(rectilinear scanner)はそれぞれ、単一平面で放射活性を検出する装置を示す。ほとんどのSPECTシステムは、分析対象のまわりを回転する1つまたはそれ以上のガンマカメラの使用に基づき、そして従って1つ以上の次元において放射活性を統合する。PETシステムは、環状の検出器の配列を含み、それも複数の次元で放射活性を検出する。
【0092】
本発明の方法を実施するのに適当な画像化装置、およびその使用の指示は、市販の供給源から容易に入手可能である。PETおよびSPECTシステムはどちらも、Milpitas、CaliforniaのADAC、およびHoffman Estates、IllinoisのSiemensから提供される。コモンソースフォーカス(common source focus)を有する視準構造を有する複数のセンサーを含む放射線画像化装置のような、シンチグラフィー画像化法の関連する装置も使用し得る。
【0093】
磁気共鳴画像化法(MRI)。磁気共鳴映像に基づく技術は、独特の化学的環境における水プロトンの相対緩和速度(relative relaxation rate)に基づいて画像を作成する。本明細書中で使用されるような、「磁気共鳴画像化法」という用語は、伝統的な磁気共鳴画像化法、磁化移動画像化法(magnetization transfer imaging;MTI)、プロトン磁気共鳴分光学(MRS)、拡散強調画像化法(diffusion−weighted imaging;DWI)および機能的MR画像化法(fMRI)を含む、磁気源技術を指す。Rovarisら(2001)J Neurol Sci 186 Suppl 1:S3−9;PomperおよびPort(2000)Magn Reson Imaging Clin N Am 8:691−713;およびそこで引用される参考文献を参照のこと。
【0094】
磁気源画像化法の造影剤は、常磁性または超常磁性のイオン、酸化鉄粒子(Shenら、1993;Weisslederら、1992)および水溶性造影剤を含むがこれに限らない。常磁性および超常磁性イオンを、鉄、銅、マンガン、クロム、エルビウム、ユーロピウム、ジスプロシウム、ホルミウム、およびガドリニウムを含む金属のグループから選択し得る。好ましい金属は鉄、マンガンおよびガドリニウムである;最も好ましいのはガドリニウムである。
【0095】
診断的標識化の当業者は、金属イオンをキレート部分によって結合し得、それを今度は本発明の方法によって治療薬に結合し得ることを認識する。例えば、ガドリニウムイオンを、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)によってキレート化する。ランタニドイオンを、テトラアザシクロドデカン化合物によってキレート化する。米国特許第5,738,837および5,707,605号を参照のこと。あるいは、造影剤をリポソーム中で運び得る(Schwende-ner、1992)。
【0096】
磁気源を使用して得られる画像を、例えば、超伝導量子干渉装置磁力計(superconducting quantum interference device magnetometer)(SQUID、San Diego、CaliforniaのQuantum Designからの指示と共に入手可能)を用いて得ることができる。米国特許第5,738,837号を参照のこと。
【0097】
超音波。超音波画像化法を使用して、腫瘍を含む標的組織の定量的および構造的情報を得ることができる。ガス微小気泡のような造影剤の投与は、超音波検査の間に標的組織の視覚化を増強し得る。造影剤を、例えば本明細書中で開示されたようなX線誘導薬物伝達のためのペプチドを用いることによって、関心のある標的組織へ選択的に標的化し得る。インビボにおいて微小気泡を提供する代表的な薬物は、ガス充填親油性または脂質に基づく気泡を含むがこれに限らない(例えば、米国特許第6,245,318号、同第6,231,834号、同第6,221,018号、および同第5,088,499号)。それに加えて、ガスまたは液体を多孔性無機粒子に閉じ込め得、それは対象への伝達時に微小気泡の放出を促進する(米国特許第6,254,852および同第5,147,631号)。
【0098】
本発明の使用に適当な気体、液体、およびその組み合わせは、空気;窒素;酸素;二酸化炭素;水素;一酸化二窒素;ヘリウム、アルゴン、キセノン、またはクリプトンのような不活性ガス;六フッ化硫黄、ジサルファー(disulphur)デカフルオライド、またはトリフルオロメチル硫黄ペンタフルオライドのようなフッ化硫黄;六フッ化セレン;テトラメチルシランのような任意でハロゲン化されたシラン;低分子量炭化水素(例えば、7つまでの炭素原子を含む)、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタンまたはペンタンのようなアルカン、シクロブタンまたはシクロペンタンのようなシクロアルカン、プロペンまたはブテンのようなアルケン、またはアセチレンのようなアルキン;エーテル;ケトン;エステル;ハロゲン化低分子量炭化水素(例えば、7つまでの炭素原子を含む);または前述のいずれかの混合物を含む。ハロゲン化炭化水素ガスは、延長した寿命を示し得、そして従っていくつかの適用に好ましい。代表的なこのグループの気体は、任意でブロム化された、デカフルオロブタン、オクタフルオロシクロブタン、デカフルオロイソブタン、オクタフルオロプロパン、オクタフルオロシクロプロパン、ドデカフルオロペンタン、デカフルオロシクロペンタン、デカフルオロイソペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロイソヘキサン、六フッ化硫黄、およびペルフルオロオクタン、ペルフルオロノナン、ペルフルオロデカンを含む。
【0099】
ペプチドアナログの親油性気泡への結合を、標準的なタンパク質−ポリマーまたはタンパク質−脂質結合方法(例えば、カルボジイミド(EDC)またはチオプロピネート(SPDP)による)によって、化学的架橋剤によって達成し得る。標的化の効率を改善するために、大きなガス充填気泡を、分岐または直線状合成ポリマーのような、柔軟なスペーサーアームを用いてペプチドアナログに結合し得る(米国特許第6,245,318号)。ペプチドアナログを、コーティング、吸収、層状に重ねる、または粒子の外側表面をペプチドアナログと反応させることによって、多孔性無機粒子に結合し得る(米国特許第6,254,852号)。
【0100】
超音波装置の説明および超音波データセットを得る技術的方法は、Coatney(2001)ILAR J 42:233−247、Lees(2001)Semin Ultrasound CT MR 22:85−105、およびそこで引用された参考文献において見出し得る。
【0101】
蛍光画像化法。非侵襲的画像化法はまた、蛍光標識の検出を含み得る。親油性の構成部分(治療薬、診断薬、ベクター、または薬物キャリア)を含む薬物を、インビボでの画像化に適当な様々な親油性色素のいずれか1つで標識し得る。例えば、Fraser(1996)Methods Cell Biol 51:147−160;Ragnarsonら(1992)Histochemistry 97:329−333;およびHerediaら(1991)J Neurosci Methods 36:17−25を参照のこと。代表的な標識は、長鎖ジアルキルカルボシアニン(例えば、Eugene、OregonのMolecular Probes Inc.から入手可能なDiI、DiO、およびDiD)、およびジアルキルアミノスチリル色素のような、カルボシアニンおよびアミノスチリル色素を含むがこれに限らない。親油性蛍光標識を、当業者に公知の方法を用いて組み込み得る。例えば、VYBRANTTM細胞標識溶液は、他の親油性構成成分の培養細胞の標識に有効である(Eugene、OregonのMolecular Probes Inc.)。
【0102】
蛍光標識はまた、Cy5.5およびCy5(Arlington Heights、ILのAmershamから入手可能)、IRD41およびIRD700(Lincoln、NebraskaのLi−Cor,Inc.から入手可能)、NIR−1(Kumamoto、JapanのDejindoから入手可能)およびLaJolla Blue(Miami、FloridaのDiatronから入手可能)を含む、スルホン化シアニン色素を含む。Lichaら(2000)Photochem Photobiol 72:392−398;Weisslederら(1999)Nat Biotechnol 17:375−378;およびVinogradovら(1996)Biophys J 70:1609−1617も参照のこと。
【0103】
それに加えて、蛍光標識は、ランタニドイオンから得られた有機キレート、例えばテルビウムおよびユーロピウムの蛍光キレートを含み得る(米国特許第5,928,627号)。そのような標識を、本明細書中で開示されたように、薬物に結合または共有結合し得る。
【0104】
蛍光標識のインビボにおける検出に関して、使用する特定の標識に適当な発光および吸光スペクトルを用いて、画像を作成する。画像を、例えば、拡散光学的分光法(diffuse optical spectroscopy)によって視覚化し得る。さらなる方法および画像化システムが、特に米国特許第5,865,754;6,083,486;および6,246,901号において記載されている。
【0105】
蛍光。FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、FLUORXTM、ALEXA FLUOR(登録商標)、OREGON GREEN(登録商標)、TMR(テトラメチルローダミン)、ROX(X−ローダミン)、TEXAS RED(登録商標)、BODIPY(登録商標) 630/650、およびCy5(Piscataway、New JerseyのAmersham Pharmacia BiotechまたはEugene、OregonのMolecular Probes Inc.から入手可能)を含むがこれに限らない、あらゆる検出可能な蛍光色素を使用し得る。
【0106】
蛍光標識を、使用される特定の標識に適当な発光および吸光スペクトルを用いて直接検出し得る。GSI Lumonics(Watertown、Massachusetts、United States of America)およびGenetic MicroSystems Inc.(Woburn、Massachusetts、United States of America)から入手可能な装置を含む、通常の研究装置は、蛍光のインビトロにおける検出のために開発された。ほとんどの市販のシステムは、光電子増倍管検出を用いた走査技術のある形式を使用する。
【0107】
エピトープの検出。エピトープ標識を使用する場合、エピトープに結合するタンパク質または化合物を使用してエピトープを検出し得る。代表的なエピトープ標識はビオチンであり、それは実施例7で記載するように、アビジン結合フルオロフォア、例えばアビジン−FITCの結合によって検出し得る。あるいは、その標識をアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)ストレプトアビジン結合物の結合、続くHRP酵素産物の比色定量検出によって検出し得る。比色定量またはルミネセンス産物/結合物の産生は、それぞれ分光光度計またはルミノメーターを用いて測定可能である。
【0108】
オートラジオグラフィー検出。放射活性標識の場合、当業者に公知であるように、検出は伝統的なオートラジオグラフィーによって、またはホスフォイメージャーを使用することによって達成し得る。好ましいオートラジオグラフィー方法は、輝尽発光(photostimulable luminescence)画像化プレート(Stamford、ConnecticutのFuji Medical Systems)を採用する。簡単には、輝尽発光は、走査中のレーザーによる刺激後の、照射されたリンプレートからの発光の量である。プレートの発光反応は、活性と直線的に比例する。
【0109】
(III.C.インビボにおける方法)
本発明の組成物を、公知の方法によって処方して医薬品組成物を調製し得る。患者への投与に適当な処方は、水性および非水性滅菌注射溶液を含み、それは抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、抗菌薬、および抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール)、処方を意図される受け手の体液と等張にする溶質(例えば、糖、塩、およびポリアルコール)、懸濁化剤および濃化剤を含み得る。適当な溶媒は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)およびその混合物を含む。その処方を、単位投与量または複数の投与量の容器、例えば密閉アンプルおよびバイアルで提示し得、および患者への投与、または続く意図する適用に適当な同位元素による放射性標識に使用する直前に滅菌液体キャリアの追加のみを必要とする、凍結または凍結乾燥(freeze−dried)(凍結乾燥(lyophilized))状態で保存し得る。
【0110】
本発明による処方は約5から約7、または約6までのpHに緩衝化される。適当な緩衝液は、吸入による投与時に生理学的に許容可能なものである。そのような緩衝液は、クエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液を含み、このうちリン酸緩衝液が好ましい。本発明の処方における使用に特に好ましい緩衝液は、リン酸一ナトリウム二水和物および無水二塩基性リン酸ナトリウムである。
【0111】
ペプチドアナログの適当な投与方法は、脈管内、皮下、または腫瘍内投与を含むがこれに限らない。組成物の肺経路への伝達に関して、組成物をエアロゾルまたは粗いスプレーとして投与し得る。
【0112】
ペプチドアナログの腎臓取り込みを最小限にするために、アミノ酸輸液を、アナログの投与前に投与し得る。例えば、Hammond ら(1993)Br J Cancer 67:1437−9および米国特許第6,277,356号を参照のこと。
【0113】
本発明は、有効な量のペプチドアナログを患者に投与することを規定する。「有効な量」という用語は、本明細書中で望ましい生物学的反応を誘発するのに十分なペプチドアナログの量を記載するために使用される。例えば、がんを有する患者に投与した場合、有効な量は、がん細胞溶解、がん増殖の阻害、がん転移の阻害、および/またはがん抵抗性を含む抗がん活性を誘発するのに十分な量を含む。放射性同位元素またはペプチドアナログの典型的な投与量は、ペプチドに結合した放射性同位元素の特定の活性によって、約0.1pg/kgから500μg/kg、または約1ng/kgから500μg/kg、または約200ng/kgである。あるいは、アナログを、約10μCi/kgから5mCi/kg体重の放射活性の量を有する投与量範囲で投与し得る。一般的に、単回投与で伝達される放射性同位元素の全量は、放射性同位元素および標的化ペプチドの特異的活性によって、約1mCiから約300mCi、通常約5mCiから100mCiである。
【0114】
診断的適用のために、検出可能な量の本発明の組成物を患者に投与する。診断的組成物を指して本明細書中で使用されるような「検出可能な量」は、患者への投与後にアナログの存在をインビボにおいて決定し得るペプチドアナログの投与量を指す。放射性同位元素を用いたシンチグラフィー画像化法のために、検出可能な投与量はベル型曲線によって定義される範囲内の投与量を含み得る。例えば、Breemanら(1999)Int J Cancer 81:658−65を参照のこと。一般的に、放射性同位元素の典型的な投与量は、約10μCiから50mCi、または約100μCiから25mCi、または約500μCiから20mCi、または約1mCiから10mCi、または約10mCiの活性を含み得る。
【0115】
本発明の組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者に望ましい診断的または治療的結果を達成するために有効な組成物の量を投与するために変化し得る。投与レジメも変化し得る。単回注射または複数回注射を使用し得る。選択される投与量レベルおよびレジメは、治療的組成物の活性、処方、投与経路、他の薬物または治療との組み合わせ、検出および/または治療される疾患または異常、および治療される患者の身体的状態および以前の医療歴を含む様々な因子に依存する。有効な量または投与量の決定および調整、およびいつおよびどのようにそのような調整を行うかの評価は、医学の当業者に公知である。例えば、最低投与量を投与し、そして投与量を制限する毒性の非存在下で投与量を増加させる。治療的に有効な量の決定および調整、およびいつおよびどのようにそのような調整を行うかの評価は、医学の当業者に公知である。
【0116】
処方、投与量および投与レジメに関するさらなる指針に関して、Berkowら(2000)The Merck Manual of Medical Information、Merck & Co.,Inc.、Whitehouse Station、New Jersey;Ebadi(1998)CRC Desk Reference of Clinical Pharmacology、CRC Press、Boca Raton、Florida;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott、Williams & Wilkins、Philadelphia、Pennsylvania;Katzung(2001)Basic & Clinical Pharmacology、Lange Medical Books/McGraw−Hill Medical Pub.Div.、New York;Hardmanら(2001)Goodman & Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics、The McGraw−Hill Companies、Columbus、Ohio;SpeightおよびHolford(1997)Avery’s Drug Treatment: A Guide to the Properties,Choices,Therapeutic Use and Economic Value of Drugs in Disease Management、Lippncott、Williams & Wilkins、Philadelphia、Pennsylvaniaを参照のこと。
【実施例】
【0117】
本発明の方法を説明するために、以下の実施例を含む。以下の実施例のある局面を、本発明の実施においてうまく進めるために、本共同発明者によって見出されたまたは企図された技術および手順に関して記載する。これらの実施例は、共同発明者の標準的な実験室での実践を説明する。本開示および当該分野における一般的な技術レベルを考えて、当業者は、以下の実施例は例示のみであると意図され、そして本発明の範囲から離れることなく、多くの変化、改変および変更を採用し得ることを認識する。
【0118】
(実施例1)
ペプチド結合物の調製
CP1−AEBL結合物を、CP1のフリーシステインのチオールによって反応したオーアスタチンEのマレイミド誘導体(AEBL)を用いて調製した。その化学は、同様の有効性を有するAEの構造的改変体であるAEBを選択的に放出する、酸不安定性ヒドラゾン結合を提供する。
【0119】
CP1−FKMMAE結合物を、フリーのCP1システインのチオールによって反応したAEの誘導体(FKMMAE)を用いて調製した。FKMMAE薬物構造は、細胞内酵素カテプシンBによって選択的に切断されるペプチド結合を含む。細胞内で放出された薬物は、AEのモノメチル誘導体であり、そしてAEと同様の有効性を有する。
【0120】
CP1−キレート化剤結合物を、インジウム−111の高親和性キレート化剤であるMX−DTPAのマレイミド誘導体を用いて調製した。MEM−MX−DTPAを、25%モル過剰でCP1と、室温で1.5時間インキュベートした。反応物を、150MのNaCl(70%)およびDMF(30%)を含む100mMのリン酸で希釈した時、pHは中性であった。反応混合物を25−35%の勾配で60分間流すC18逆相カラムにアプライすることによって、反応産物を、HPLCを用いて反応物から分離した。産物の溶出を、215nmおよび280nmにおいてモニターし、そして画分を、可能性のある産物のピークが広がる期間である24−32分に回収した。画分を、質量分析を用いて同定した。CP1−MX−DTPA産物を含む画分をプールし、急速減圧を用いて凍結乾燥し、そして−70℃で保存した。
【0121】
実施例2
ペプチド結合物のレセプターに対する結合親和性
CP1−AEB結合の親和性測定値を、競合的結合アッセイを行うことによって決定した。そのアッセイは、SSTR2を発現するヒト神経芽細胞腫細胞系統であるIMR−32細胞からの部分的に精製した膜抽出物を使用した。CP1−AEB、CP1およびオクトレオチドを、96穴プレート形式に配置した3組の希釈チューブ中のIMR−32膜に滴定した。インジウム−111−オクトレオチド競合物を、10mMのHepes、10mMのMgCl、0.3%のBSA、およびEDTAフリーのプロテアーゼ阻害剤からなる中性pHの希釈液中、室温で1時間IMR−32膜に加えた。IMR−32膜を減圧下で96穴プレート形式のグラスファイバーフィルターペーパーに回収し、そして膜を10mMのTris、150mMのNaCl、pH7.5で4回洗浄した。各複製から得られた膜を、ガンマ放射活性の測定のために、チューブに「打ち出し」た。インジウム−111−オクトレオチドのIMR−32膜に対する結合のIC50を評価するために、各競合物試料を使用した場合に回収された放射活性を、コントロール試料(競合物の非存在下)のパーセントとして表した。図1を参照のこと。
【0122】
(実施例3)
ペプチド結合物の細胞取り込み
SSTR−陽性細胞系統(ヒト神経芽細胞腫IMR−32、ラット膵臓がんAR42J)または陰性コントロール細胞(ヒト直腸腺がんLS174T)を、6穴プレートで5%COを含む加湿インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートした。約10cpmのインジウム−111−オクトレオチドまたはインジウム−111−CP1−MX−DTPAを、ペプチドプラス1000モル過剰のソマトスタチンを含むカクテルで、3組のウェルにアプライした。プレートを再び5%のCOを含む加湿インキュベーターで、37℃で一晩(20−24時間)インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、そして回収した。細胞試料中に存在する放射活性を測定して、細胞によって取り込まれたアプライしたインジウム−111−標識ペプチドの量を決定した。アプライしたcpmの取り込みパーセントを、3組のセットのウェルそれぞれに関して計算した。過剰のソマトスタチン存在下におけるカウントの有意な抑制によって示されるように、両方のペプチドの取り込みは特異的であった(表1)。
【0123】
【表1】

【0124】
(実施例4)
オーアスタチンペプチド結合物によって誘発される細胞毒性
約50,000のSSTR陽性IMR−32細胞およびSSTR陰性COS−7細胞を、96穴プレートの各ウェルにアプライした。細胞を、5%のCOを含む加湿インキュベーターで、37℃で一晩インキュベートした。CP1−AEBを、IMR−32およびCOS−7細胞を含むウェルに3組滴定した。3−4時間のインキュベーション後、まいた細胞を洗浄し、そして新しい培地をアプライした。プレートをさらに48時間インキュベートした後、CP1−AEBの毒性を分析した。MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド)を細胞にアプライし、そして細胞をMTTの存在下で3から4時間インキュベートした。生きた細胞によるMTTの取り込みレベルを、2つの細胞系統間を比較するために、比色定量的に測定した。図2A−2Bを参照のこと。
【0125】
(実施例5)
(インビボ抗腫瘍活性)
CP1−FKMMAEの殺腫瘍性効果を、マウス異種移植モデルにおいて評価した。IMR−32細胞の皮下注射によって、ヌードマウスに腫瘍を確立した。0.4mg/kgの4回投与後にMTDを決定した、AEを用いた以前の研究に基づいて、複数回投与レジメを評価した。限られた入手可能性のために、AEをMTDの75%で使用した。CP1−FKMMAEを、同じ投与スケジュールによってAEの1×および3×モル当量で投与した。腫瘍体積、動物体重、および血清成長ホルモンレベルを、各治療グループに関して評価した。
【0126】
腫瘍増殖の阻害が、全ての治療グループで観察され、そして3×投与量のCP1−FKMMAEを投与された動物は、最も高いレベルの腫瘍増殖阻害を示した(図3A−3B)。全ての治療グループは、動物体重の増加および安定した成長ホルモンレベルを示し(それぞれ図3Bおよび図4)MTDに達しなかったことを示唆した。
【0127】
本発明は、現在実際的および好ましい実施形態と考えられるものと関連して説明されたが、本発明は開示された実施形態に制限または限定されず、対照的に、添付の請求の範囲内に含まれる様々な改変および相当する計画を含むよう意図されることが理解される。従って、記載された発明の変形は、本発明の新規および明らかでない局面から離れることなく、当業者に明らかであり、そしてそのような変形は下記の請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、非標識オクトレオチド(白丸)、CP1(白四角)、またはCP1−AEBL(白菱形)の存在下で、インジウム−111−オクトレオチドのIMR−32膜への競合結合を示す折れ線グラフである。競合的結合は、結合のコントロールレベル(競合物が存在しない)に対して相対的な結合パーセントとして示される。CP1およびCP1−AEBLは、非標識オクトレオチドと同様の程度インジウム−111−オクトレオチドを阻害する(オクトレオチドIC50〜3nM、CP1 IC50〜2nM、およびCP1−AEBL IC50〜2nM)。
【図2】図2A−2Bは、AEB(白丸)およびCP1−AEBL(白四角)によって誘発されたインビトロ細胞毒性を示す折れ線グラフである。SSTR陽性IMR−32細胞において、CP1−AEBL結合物は、フリーの薬物、AEBより100倍弱かった(図2A)。SSTR陰性COS−7細胞においては、CP1−AEBL結合物の存在下でごくわずかな細胞毒性が観察された(図2B)。誘導されたAEBは、IMR−32細胞およびCOS−7細胞の両方において同様の細胞毒性のバックグラウンドレベルを示した。
【図3】図3A−3Bは、AE(白丸)、1×CP1−FKMMAE(白四角)、または3×CP1−FKMMAE(白菱形)投与後の、IMR−32マウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖阻害を示す折れ線グラフである。コントロール試料は、阻害されない腫瘍の増殖を示す(×)。矢印は、実施例5で説明するように、投与の時間を示す。図3Aは、平均腫瘍体積の減少を示し、それは3×CP1−FKMMAEに対する反応において最も大きかった。図3Bは、平均マウス体重が研究の過程でわずかに増加し、そして全ての治療グループで実質的に同様であったことを示す。
【図4】図4は、AE(白丸)、1×CP1−FKMMAE(白四角)、または3×CP1−FKMMAE(白菱形)投与後の、IMR−32マウス異種移植モデルにおける成長ホルモンレベルを示す折れ線グラフである。コントロール試料は、治療なしの成長ホルモンレベルを示す(×)。矢印は、実施例5で説明するように、投与の時間を示す。血清成長ホルモンレベルをELISAで決定し、下垂体に対する潜在的な毒性を評価した。研究の過程における成長ホルモンレベルの相対的な安定性は、図3Aで示す抗腫瘍反応の特異性を示した。
【配列表】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
(A−B)
のソマトスタチンアナログを含む組成物であって、
ここで、
Aは、チオール結合を介して薬物またはキレート化剤に結合するのに適切である、システイン、または1以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であり;そして、
Bは、ソマトスタチンレセプターに結合する、天然に存在するソマトスタチンペプチドまたは合成ソマトスタチンペプチドあるいはそれらのフラグメントである、
組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、ここで、Aは、配列番号1〜3のいずれか1つに記載のペプチド配列を含むか、または、Aは、単一のシステイン残基である、組成物。
【請求項3】
Bが、配列番号4を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ソマトスタチンアナログが、配列番号5〜7のいずれか1つに記載のペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、ここで、該組成物は、薬物に結合するのに適切な、ヨウ化物またはキレート化剤をさらに含み、ここで、該薬物またはキレート化剤は、チオール結合によって1以上のシステインに結合する、組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、ここで、前記薬物は、治療剤または検出可能標識である、組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、ここで、前記治療剤が、放射性同位体、細胞毒素、免疫刺激剤、抗脈管形成剤、治療用遺伝子、または化学療法剤である、組成物。
【請求項8】
請求項5に記載の組成物であって、ここで、前記キレート化剤が、DTPAのマレイミド誘導体またはDTPAアナログのマレイミド誘導体である、組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、哺乳動物SSTR陽性細胞にインビボで特異的に結合するソマトスタチンアナログをさらに含む、組成物。
【請求項10】
前記SSTR陽性細胞が、ヒトがん細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
哺乳動物被験体内のSSTR陽性細胞を検出するための方法であって、以下:
(a)以下の式:
(A−B)
のソマトスタチンアナログを含む組成物を該被験体に投与する工程であって、ここで、Aは、システイン、または1以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であって、ここで、検出可能標識が該1以上のシステイン残基にチオール結合を介して結合しており;そして、Bは、ソマトスタチンレセプターに結合する、天然に存在するソマトスタチンペプチドまたは合成ソマトスタチンペプチドあるいはそれらのフラグメントである、工程;ならびに
(b)該検出可能標識を検出して、それによって、SSTR陽性細胞が検出される、工程;
を包含する、方法。
【請求項12】
Aは、配列番号1〜3のいずれか1つに記載のペプチド配列を含むか、または、Aは、単一のシステイン残基である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Bが、配列番号4を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ソマトスタチンアナログが、配列番号5〜7のいずれか1つに記載のペプチドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物被験体においてSSTR関連障害を処置するための方法であって、該方法は、以下の式:
(A−B)
のソマトスタチンアナログを含む組成物を該当被験体に投与する工程であって、
ここで、
Aは、システイン、または1以上のシステイン残基を含むペプチド鎖であって、ここで、検出可能標識が該1以上のシステイン残基にチオール結合を介して結合しており;そして、
Bは、ソマトスタチンレセプターに結合する、天然に存在するソマトスタチンペプチドまたは合成ソマトスタチンペプチドあるいはそれらのフラグメントである、工程
を包含し、それによって、SSTR関連障害は処置される、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、ここで、Aは、配列番号1〜3のいずれか1つに記載のペプチド配列を含むか、または、Aは、単一のシステイン残基である、方法。
【請求項17】
Bが、配列番号4を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ソマトスタチンアナログが、配列番号5〜7のいずれか1つに記載のペプチドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、ここで、前記治療剤が、放射性同位体、細胞毒素、免疫刺激剤、抗脈管形成剤、治療用遺伝子、または化学療法剤からなる群より選択される、方法。
【請求項20】
前記SSTR関連障害が、がん細胞である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−522100(P2006−522100A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506984(P2006−506984)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/007143
【国際公開番号】WO2004/081031
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(504012549)バイオジェン アイデック インク  (2)
【Fターム(参考)】