標的核酸の検出方法及び該検出方法に用いる容器
【課題】ハイブリダイゼーション法を利用することなく、標的核酸を簡便かつ高精度に検出する方法、及び該検出方法に用いる容器を提供する。
【解決手段】検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド31及び第二のリガンド32が結合された標的核酸30の検出方法であって、第一のリガンド31と特異的に結合する第一の受容体331が複数結合された第一の微粒子33、及び第二のリガンド32と特異的に結合する第二の受容体341が複数結合された第二の微粒子34を調製する工程と、底面に沈降物捕捉部を有する容器内で、標的核酸30を含有している可能性のある試料、第一の微粒子33及び第二の微粒子34を混合する工程と、混合工程後に、連結された標的核酸30と第一の微粒子33及び第二の微粒子34からなる凝集物並びに/又は第一の微粒子33及び第二の微粒子33の沈降物の、容器底面における捕捉分布を観測する工程を有する標的核酸の検出方法。
【解決手段】検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド31及び第二のリガンド32が結合された標的核酸30の検出方法であって、第一のリガンド31と特異的に結合する第一の受容体331が複数結合された第一の微粒子33、及び第二のリガンド32と特異的に結合する第二の受容体341が複数結合された第二の微粒子34を調製する工程と、底面に沈降物捕捉部を有する容器内で、標的核酸30を含有している可能性のある試料、第一の微粒子33及び第二の微粒子34を混合する工程と、混合工程後に、連結された標的核酸30と第一の微粒子33及び第二の微粒子34からなる凝集物並びに/又は第一の微粒子33及び第二の微粒子33の沈降物の、容器底面における捕捉分布を観測する工程を有する標的核酸の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の核酸の有無あるいは濃度を検出する方法及び該検出方法に用いる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に存在する特定の標的核酸を検出する代表的な技術としては、ハイブリダイゼーション法を利用したものが知られている(特許文献1参照)。そしてこの方法は、多種類の核酸が含まれる試料中から、非常に少量のDNAやRNAの標的核酸をプローブで検出する技術である。
【0003】
一方、試料中に存在する特定の標的分子を、凝集させることで検出する方法も知られている。そして、この方法で凝集反応を行い、その結果得られた凝集物を検出する容器として、これまで種々のものが提案されてきており、例えば、凝集物の凝集パターンを目視で判定できる容器が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−51099号公報
【特許文献2】特公昭63−60854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、核酸は、非特異的にハイブリダイゼーションすることがあり、例えば、標的核酸が非標的核酸と類似の塩基配列を有する場合などは、試料中から標的核酸だけを選択的に検出することが困難となることがあり、特許文献1に記載の方法では、必ずしも高い精度で標的核酸を検出することができないという問題点があった。
また、特許文献2に記載の容器は、赤血球の検出に用いるものであり、核酸と赤血球は分子サイズをはじめ構造に大きな相違があるため、そのまま標的核酸の検出に用いることができないという問題点があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ハイブリダイゼーション法を利用することなく、標的核酸を簡便かつ高精度に検出する方法、及び該検出方法に用いる容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドが結合された、標的核酸の検出方法であって、前記第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が複数結合された第一の微粒子、及び前記第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された第二の微粒子を調製する工程と、底面に沈降物捕捉部を有する容器内において、前記標的核酸を含有している可能性のある試料、前記第一の微粒子及び第二の微粒子を混合する工程と、前記混合工程後に、第一のリガンドと第一の受容体との結合及び第二のリガンドと第二の受容体との結合を介してそれぞれ連結された前記標的核酸と前記第一の微粒子及び第二の微粒子からなる凝集物並びに/又は前記第一の微粒子及び第二の微粒子の沈降物の、前記容器底面における捕捉分布を観測する工程を有することを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項2に記載の発明は、検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドが結合された、標的核酸の検出方法であって、前記第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が底面に複数結合された容器を調製する工程と、前記第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された磁性微粒子を調製する工程と、前記容器内に、前記標的核酸を含有している可能性のある試料及び前記磁性微粒子を添加する工程と、該添加工程後に、前記磁性微粒子に対して前記容器外側より磁力を印加して該容器底面における磁性微粒子の分布を観測する工程を有することを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の検出方法と、請求項2に記載の検出方法をいずれも行うことを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法において、濃度既知の標的核酸を含有している試料(1)を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有していない試料(2)を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有している可能性のある試料(3)を用いた時の観測結果とを比較して、前記試料(3)中の標的核酸の有無又は濃度を確認することを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法において、既知の異なる濃度の標的核酸を含有している試料を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有している可能性のある試料(4)を用いた時の観測結果とを比較して、前記試料(4)中の標的核酸の有無又は濃度を確認することを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項6に記載の発明は、前記リガンドが、親水性有機化合物、ジゴキシゲン、フルオロセイン、アレクサ、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、アミノ酸残基数が6以上のポリペプチド、単糖が2以上結合した糖鎖、ビオチン、タンパク質、ポリヒスチジン、HA、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Flag)及びこれらの誘導体からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項7に記載の発明は、前記標的核酸が、第一のリガンドを結合させた第一のプライマー、及び第二のリガンドを結合させた第二のプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法によって調製されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項8に記載の発明は、前記標的核酸が、第一のプライマーを用いて、第一のリガンドを結合させたヌクレオチドを少なくとも一つ取り込ませながら、さらに第二のプライマーを用いて、第二のリガンドを結合させたヌクレオチドを少なくとも一つ取り込ませながら、ポリメラーゼ連鎖反応法によって調製されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項9に記載の発明は、前記標的核酸が複数の異なる種類であり、これら標的核酸中の第一及び第二のリガンドのうち少なくとも一方は標的核酸の種類ごとに異なることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項10に記載の発明は、前記標的核酸が生体由来であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項11に記載の発明は、前記第一及び第二の微粒子が、粒径0.1〜10μmであり、互いに光学的に区別可能であることを特徴とする請求項1及び3〜10のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項12に記載の発明は、複数の前記容器が同一プレート上に設けられており、各容器の容量が0.1〜0.5mlであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項13に記載の発明は、前記容器の沈降物捕捉部は、すり鉢状をなす底面に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸が同心円状に配されたものであり、中心から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)が0.2〜20μm、中心から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)が0.5〜50μmであり、山と中心とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)が15〜45°であることを特徴とする請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項14に記載の発明は、前記容器の沈降物捕捉部は、すり鉢状をなす底面に、複数個の凹部が独立して設けられたものであり、底面と水平面とのなす角度(θ2)が15〜45°であることを特徴とする請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項15に記載の発明は、前記凹部の、開口部の直径(L)が0.05〜100μm、深さ(d)が0.03〜60μmであることを特徴とする請求項14に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項16に記載の発明は、請求項13に記載の検出方法と、請求項14又は15に記載の検出方法をいずれも行うことを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項17に記載の発明は、前記磁性微粒子の粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項2〜10及び12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項18に記載の発明は、前記容器が、底面が略半球面状もしくは略円錐面状であり、底面と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であることを特徴とする請求項2〜10、12及び17のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
【0007】
請求項19に記載の発明は、請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、すり鉢状をなす底面に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸が同心円状に配され、中心から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)が0.2〜20μm、中心から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)が0.5〜50μmであり、山と中心とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器である。
請求項20に記載の発明は、請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、すり鉢状をなす底面に、複数個の凹部が独立して設けられ、底面と水平面とのなす角度(θ2)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器である。
請求項21に記載の発明は、前記凹部の、開口部の直径(L)が0.05〜100μm、深さ(d)が0.03〜60μmであることを特徴とする請求項20に記載の標的核酸の検出用容器である。
請求項22に記載の発明は、請求項2〜10、12及び17のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、底面が略半球面状もしくは略円錐面状であり、底面と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器である。
請求項23に記載の発明は、請求項19〜22のいずれか一項に記載の容器が、同一プレート上に複数個設けられていることを特徴とする標的核酸の検出用容器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器底面における沈降物の捕捉分布を視覚的に観測することで、標的核酸の有無あるいは濃度を簡便かつ高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について、詳しく説明する。
本発明の標的核酸の検出方法は大別して、検出対象の核酸にリガンドが結合された構造の標的核酸を得る工程と、該標的核酸を検出する工程とに分かれる。以下、各工程ごとに詳しく説明する。
【0010】
<標的核酸を得る工程>
まず、標的核酸を得る工程について説明する。
本発明において、検出対象の核酸は特に限定されず、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、hnRNA、合成RNA等を含む全ての核酸又は核酸類似体であり、生体に由来するものであっても、人工的に合成されたものであってもよい。
【0011】
検出対象の核酸に結合されるリガンドは、従来公知のものを用いることができ、好ましいものとして、例えば、親水性有機化合物、ハプテン、ジゴキシゲン、フルオロセイン、アレクサ、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、アミノ酸残基数が6以上のポリペプチド、単糖が2以上結合した糖鎖、ビオチン、タンパク質、ポリヒスチジン、HA、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Flag)及びこれらの誘導体等を用いることができるが、これらに限定されない。ビオチン、ジゴキシゲン、フルオロセイン、アレクサなどは市場からの入手が容易で低価格という利点がある。また、糖鎖やペプチドは化学構造のデザインに自由度が高く、複数種類をそろえることが容易であるという利点がある。使用するリガンドは、検出対象の核酸、試料等によって適宜選択すれば良い。
【0012】
標的核酸中には、種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドがそれぞれ一つ以上結合されている。検出対象の核酸に第一及び第二のリガンドが結合された構造の標的核酸を得る方法は、図1に示すように、例えば、(i)検出対象の核酸10に、光やプラチナを用いてあるいはリンカーを介して該核酸の塩基及び/又は5’末端に第一のリガンド31及び第二のリガンド32を共有結合させる方法(図1(a))、一例を挙げると、核酸の5’末端の塩基のアミノ基と、リガンドのカルボキシル基とを共有結合させる方法、(ii)核酸合成時に第一のリガンド31を結合させた第一のプライマー11、及び第二のリガンド32を結合させた第二のプライマー12を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により塩基配列を伸長させる方法(図1(b))、(iii)PCR法において、第一のリガンド31を結合させたヌクレオチド13を少なくとも一つ、及び第二のリガンド32を結合させたヌクレオチド14を少なくとも一つ、それぞれ取り込ませながら塩基配列を伸長させる方法(図1(c))、(iv)ターミナルデオキシジルトランスフェラーゼを用いて、第一のリガンド31又は第二のリガンド32を結合させたヌクレオチドを、核酸の3’末端にテーリングする方法(図1(d))等の各種方法を用いることができる。
【0013】
生体試料又は任意の被検体等のように、標的核酸が他の核酸と共に存在する試料では、前記(ii)及び(iii)の方法が好適である。標的核酸が単独で存在する場合には、何れの方法を用いてもよい。なお、例えば、生体試料等に含まれる検出対象の核酸は、PCR法によって増幅させてから検出しても良いが、増幅させずにそのまま検出に供してもよい。
【0014】
図1に示すように、標的核酸30中のリガンドは、第一のリガンド31及び第二のリガンド32の二種類である。核酸の構造は柔軟であり、本発明においては、後述するように、標的核酸が種類の異なる第一の微粒子及び第二の微粒子に結合することが必須である。
【0015】
また、標的核酸中の第一のリガンド及び第二のリガンドの数は、それぞれ一つずつでも良いが、それぞれ二つ以上でもよい。核酸対微粒子の体積比は極めて大きいため、一つの核酸に三つ以上の微粒子が結合する可能性は低い。従って、一つの標的核酸中に、複数のリガンドがあっても、標的核酸が結合した微粒子の凝集度には影響を与えないものと考えられる。
【0016】
また、標的核酸が複数種類ある場合には、例えば、前記(ii)あるいは(iii)の方法を同時に行って、複数種類の標的核酸を同時に調製しても良い。この場合、各標的核酸中の第一のリガンド及び第二のリガンドのうち少なくとも一方は、標的核酸の種類ごとに異なることが好ましい。
【0017】
<標的核酸を検出する工程>
次に標的核酸を検出する工程について説明する。
検出工程は大別して2つの手法に別れ、これら単独でも検出を行うことは可能であるが、二つの手法を組み合わせることによって、より精度の高い検出結果を得ることが可能である。以下2つの手法を順に説明する。
【0018】
[第一の手法]
(第一の微粒子及び第二の微粒子を調製する工程)
第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が複数結合された第一の微粒子、及び第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された第二の微粒子を調製する。
本発明で用いる微粒子とは分散性微粒子のことであり、例えば、コロイド粒子のように溶液中で分散する微粒子を意味し、ラテックス粒子が好適に用いられるが、これに限定されない。第一の微粒子及び第二の微粒子の粒径は、0.1〜10.0nmであることが好ましい。このような粒径の微粒子を用いれば、安定した凝集塊が得られ易い。
【0019】
本発明において、特異的結合とは、例えば、抗原と抗体等のように、特定の物質間で選択的に形成される、特異性の高い分子間力に基づく結合を意味する。
【0020】
ラテックス粒子は主にポリスチレンから成り、親水性と分散性とを高めるためメタクリル酸が共重合されている。ラテックス粒子には、表面に官能基がないプレーンタイプと官能基を有する官能基タイプがある。プレーンタイプの表面の荷電はメタクリル酸の存在のため負の電荷を有しており、タンパク質分子中の正の電荷を持つ領域とイオン結合することができる。また、タンパク質分子と疎水結合させることも可能である。プレーンタイプのラテックス粒子はタンパク質と混合するだけでタンパク質を吸着するので、タンパク質の固定操作が容易である。受容体としては、後述のように種々のものを用いることができるが、各種タンパク質を用いる場合に、このようなプレーンタイプのラテックス粒子が微粒子として好適に用いられる。
【0021】
官能基を有するラテックス粒子は、表面にカルボキル基やアミノ基等が露出するように設計されており、様々なタイプの官能基タイプラテックス粒子が利用可能である。官能基タイプラテックス粒子に受容体を結合させる場合は、官能基タイプラテックス粒子中の官能基と、受容体の官能基を結合させれば良く、従来公知の方法を適用することができ、例えば、水溶性カルボジイミドでカルボン酸とアミノ基を結合させるEDAC方法、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とをあらかじめ混合してカルボン酸とアミノ基とを結合させる方法、双極性を有するリンカーを用いてアミノ基同士を架橋する方法、活性化したアルデヒド基やトシル基と受容体中の官能基を結合する方法等がある。本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のいかなる方法を用いてもよいが、特にEDAC法が好ましい。そして、プレーンタイプのラテックス粒子同様、受容体として各種タンパク質を用いる場合に、官能基タイプラテックス粒子は好適に用いられる。
なお、ラテックス粒子以外の微粒子であっても、微粒子の種類に応じて、従来公知の方法によって受容体を結合させることができる。
【0022】
第一の微粒子に結合される第一の受容体には、標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する受容体を用い、第二の微粒子に結合される第二の受容体には、第二のリガンドと特異的に結合する受容体を用いる。受容体としては、例えば、抗体、レクチン、ストレプトアビジン等を用いることができるが、これらに限定されない。なかでも、タンパク質、特に抗体が好適に用いられる。
【0023】
本発明においては、一つの実施形態として、一つの微粒子には単一種類の受容体を結合させる。そして本実施形態においては、標的核酸には少なくとも二種類のリガンドが結合されているため、一種類の標的核酸に対して少なくとも二種類の微粒子を調製する。即ち、図2に示すように、第一のリガンド31と特異的に結合する第一の受容体331が結合された第一の微粒子33(図2(a))、及び第二のリガンド32と特異的に結合する第二の受容体341が結合された第二の微粒子34(図2(b))を調製する。
【0024】
また、本発明の他の実施形態として、一つの微粒子に二種類以上の受容体を結合させても良い。そして本実施形態では、一つの標的核酸中の二種類以上のリガンドのうち、一種のリガンドと特異的に結合する受容体と、残りの種類のリガンドと特異的に結合する受容体以外の受容体を一つの微粒子に結合させる。即ち、標的核酸中の二種類以上のリガンドのうち一種だけが一つの微粒子に結合するように設計する。
【0025】
第一の微粒子及び第二の微粒子は、互いに光学的に区別可能であることが好ましい。具体的には、例えば、第一の微粒子及び第二の微粒子を、同色ではなく異なる色とすることが好ましい。このようにすることで、操作段階での微粒子の識別が容易となり、また凝集像を観察した時に一種類の微粒子で自己凝集を起こした場合にも色によって容易に区別が可能であり、自己凝集を第一の微粒子及び第二の微粒子による凝集と誤判定する可能性が低くなる。すなわち、標的核酸の検出をより高精度に行うことができる。
【0026】
なお、本工程における微粒子への受容体の結合は、標的核酸を検出する際に実施しても良いが、予め受容体を結合させた微粒子を検出に供しても良い。また、本工程は、上記の標的核酸を調製する工程と前後して実施して良い。
【0027】
(標的核酸を含有している可能性のある試料、第一の微粒子及び第二の微粒子を混合する工程)
次に、標的核酸を含有している可能性のある試料、前記第一の微粒子及び第二の微粒子を混合する工程について説明する。
本工程は、後述の、底面に沈降物捕捉部を有する容器内において行う。検出に供する標的核酸を含有している可能性のある試料が、実際に標的核酸を含有していれば、上記したような第一のリガンドと第一の受容体との結合、及び第二のリガンドと第二の受容体との結合を介して、標的核酸と微粒子が連結され、後述のように凝集物が生じる。検出に供する試料が標的核酸を含有していなければ、このような結合は生じず、凝集物も生じない。
本工程は、標的核酸を含有している可能性のある試料、第一の微粒子及び第二の微粒子を同時に混合して行っても良く、或いは、標的核酸を含有している可能性のある試料に対して、第一の微粒子及び第二の微粒子を順に混合して、逐次的に行っても良い。標的核酸を含有している可能性のある試料、第一の微粒子及び第二の微粒子は、それぞれ溶液として用いることが好ましい。
【0028】
本工程で用いる溶液は緩衝液が好ましく、凝集を促進する緩衝液がより好ましい。このような好ましい緩衝液として、例えば、以下の組成からなる緩衝液;200mM MOPSO(pH7.4)、4%デキストラン、100mM NaCl、0.1%アジ化ナトリウムが挙げられるが、標的核酸及び微粒子の種類に応じて適宜選定すれば良い。本工程において異なる種類の緩衝液を混合する場合には、微粒子は当該異なる緩衝液で2〜3回洗浄してから用いることが好ましい。
【0029】
混合に供する第一及び第二の微粒子の量は、多すぎると検出精度が低下するので、標的核酸より小過剰であることが好ましく、具体的には、数十〜数百nMの標的核酸に対し、0.01〜0.5w/v%の微粒子量であることがより好ましい。
【0030】
前記のリガンド−受容体の組み合わせとして、例えば、抗原及び抗体を用いる場合は、本工程は、0〜37℃で、5〜30分間行うことが好ましい。その他のリガンド−受容体の組み合わせの場合も、この組み合わせの種類に応じて適した温度、時間、緩衝液を適宜選択すれば良い。
【0031】
図3に、標的核酸と第一及び第二の微粒子が連結した様子を示す。図3において、標的核酸30中の第一のリガンド31は、第一の微粒子33と第一の受容体331を介して連結する。また、標的核酸30中の第二のリガンド32は、第二の微粒子34と第二の受容体341を介して連結する。即ち、一つの標的核酸30が第一の微粒子33及び第二の微粒子34と連結することによって、第一の微粒子33及び第二の微粒子34が互いに連結される。さらに、一つの微粒子に複数の標的核酸30が連結し、その標的核酸30のそれぞれが他の微粒子と連結することによって、多数の微粒子が互いに連結された結果、微粒子の凝集が生じることになる。なお、図3において受容体から延ばされた点線は、結合された核酸を簡易的に表している。
これにより、標的核酸が試料中に含有されていれば、微粒子の凝集が生じる。
【0032】
(容器底面における沈降物の捕捉分布を観測する工程)
続いて、容器の底面における沈降物の捕捉分布を観測する。
ここで沈降物とは、前記凝集物や、標的核酸との連結に供されることなく沈降した第一及び第二の微粒子のことを指す。本工程によって標的核酸を検出することができる。ここで、前記凝集物の有無あるいはその程度は、肉眼あるいは画像処理等によって判定する。画像処理であれば、例えば、CCDカメラにより取り込んだ画像データを解析するなどの手法を用いることができる。
【0033】
次に、標的核酸の検出を行う具体的な方法について詳しく説明する。
上記のようなリガンドが結合している濃度既知の標的核酸を含有している試料(1)を用い、該標的核酸を前述の方法に従って微粒子と混合して、容器底面における凝集物の捕捉分布を観測し、陽性コントロールとする。さらに該標的核酸を含有していない試料(2)を前述の方法に従って微粒子と混合して、容器底面における沈降物の捕捉分布を観測し、陰性コントロールとする。そして、該標的核酸を含有している可能性のある試料(3)を同様に前述の方法に従って微粒子と混合し、容器底面における沈降物の捕捉分布を観測し、上記陽性コントロール及び陰性コントロールと比較することで、前記試料(3)中の標的核酸の有無または濃度を確認する。具体的には、試料(3)を用いた場合の捕捉分布のパターンが陽性コントロールに一致するか類似していれば、陽性と判断されて、試料(3)中には標的核酸が含有されていることが確認される。これに対して、試料(3)を用いた場合の捕捉分布のパターンが陰性コントロールに一致するか類似していれば、陰性と判断されて、試料(3)中には標的核酸が含有されていないことが確認される。一方、試料(3)を用いた場合の捕捉分布のパターンが、陽性コントロールと陰性コントロールの中間を示す場合には、擬陽性と判断される。この場合は、試料(3)中に標的核酸が少量含有されている可能性がある。このようにして、試料(3)中の標的核酸の有無を簡便に確認することができる。また同様にして、例えば、試料(3)を用いた場合の沈降物の捕捉量を陽性コントロール及び陰性コントロールと比較することで、試料(3)中の標的核酸の量を確認することができる。
【0034】
また、既知の異なる濃度の標的核酸を含有する試料を用いて得られた、容器底面における凝集物の捕捉分布をコントロールとし、該標的核酸を含有している可能性のある試料(4)を用いた時の沈降物の捕捉分布をコントロールと比較することで、前記同様、該試料(4)中の標的核酸の有無または濃度を確認することも可能である。
また、あらかじめ標的核酸の有無や濃度の違いによる沈降物の捕捉分布の違いを確認して記録しておけば、前記コントロールを用いなくとも、該標的核酸を含有している可能性のある試料を検出に供するだけで、該試料中の標的核酸の有無または濃度を確認することも可能である。このようにすることで、検出工程を簡略化することができる。
【0035】
また、試料中に複数種類の標的核酸が含有されている場合には、例えば、標的核酸の種類ごとに異なる第一及び第二のリガンドを用いて、複数種類のうちの一種の標的核酸中の第一及び第二のリガンドと特異的に結合する第一及び第二の受容体が結合された微粒子のみを混合に供すれば、当該一種の標的核酸を選択的に検出することができる。同様に標的核酸の種類に応じて、該標的核酸中の第一及び第二のリガンドと特異的に結合する第一及び第二の受容体が結合された微粒子を、各標的核酸ごとに調製し、これら微粒子を混合に供すれば、二種以上の標的核酸を同時に検出することができる。
このように、検出対象の核酸を単独で、或いは複数の検出対象の核酸を同時に検出することができる。
【0036】
ここで、標的核酸中の第一及び第二のリガンドは、前述のように標的核酸の種類ごとに全て異なるリガンドを用いても良いが、第一及び第二のリガンドのうち一方のリガンドを、複数種類の核酸の間で共通のものとしても良い。このようにすることで、検出工程を簡略化することができる。
【0037】
なお、以上述べた検出方法では、一種類の標的核酸について二種類のリガンドを用いているが、三種類以上のリガンドを用いても良い。この場合、リガンドに特異的に結合する受容体が複数結合された微粒子を、リガンドの種類ごとに調製すれば良い。
【0038】
(標的核酸の検出に用いる容器)
標的核酸の検出に用いる本発明の容器について、以下詳しく説明する
本発明においては、該容器を単独で用いても良いが、該容器を複数同一プレート上に設けたものを用いることもでき、このようなものとして具体的には、例えば、該容器をウェルとする96ウェルマイクロプレートを挙げることができる。ただしもちろん、ウェルの数は96に限定されるものではない。このような複数の容器を備えている場合、一つの容器の容量は0.1〜0.5mlであることが好ましい。
【0039】
本発明の容器の底面には、沈降物を捕捉する部位が設けられており、標的核酸と微粒子が連結することで生じた凝集物と、該凝集物以外の沈降物をより簡便に且つ高精度に識別できるようになっている。沈降物捕捉部について具体的に説明すると、例えば、図4に示すような、容器40のすり鉢状をなす底面41に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸42が同心円状に配されたものが挙げられる。ここで凹凸42の、底面の中心43から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)は0.2〜20μmであることが好ましく、中心43から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)は0.5〜50μmであることが好ましく、山と中心43とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)は15〜45°であることが好ましい。また、凹凸42の数は、10〜50個であることが好ましい。
【0040】
また、沈降物捕捉部の他の具体例として、例えば、図5に示すような、容器50のすり鉢状をなす底面51に、複数個の凹部52が独立して設けられたものが挙げられる。ここで、底面51と水平面とのなす角度(θ2)は15〜45°であることが好ましい。なおθ2とは、より具体的には、底面51の傾斜面における凹部52を除いた任意の一点と、底面51中心とを結ぶ直線が、水平面となす角度のことである。
そして、該凹部52は略半球状であり、その開口部の直径(L)は0.05〜100μmであることが好ましく、深さ(d)は0.03〜60μmであることが好ましい。
なお、凹部52の形状は、ここに示す略半球状に限定されず、前記第一の微粒子及び/又は前記第二の微粒子を複数個、好ましくは3〜7個程度収容できるものであれば、異なる形状及びサイズのものでも良い。凹部52の数は、数十〜数百程度であることが好ましい。
【0041】
沈降物捕捉部の前述のサイズ及び形状は、前記凝集物と該凝集物以外の沈降物との識別を簡便に且つ高精度に行うことができるよう、特に見出されたものであり、このような沈降物捕捉部を備えた容器を用いることで、標的核酸を簡便に且つ高精度に検出することができる。したがって、前記範囲を外れた場合、沈降物の捕捉分布パターンが、前記凝集物と該凝集物以外の沈降物との間で区別がつきにくくなることがある。
また、図4及び図5で挙げた容器を併用することで、標的核酸の検出をより高い精度で行うことができる。
【0042】
図4に示すような沈降物捕捉部を有する容器40を使用した場合の、沈降物の捕捉分布について、図6を参照しながら説明する。
第一の微粒子33及び第二の微粒子34と混合した試料中に標的核酸が含有されていない時(陰性)は、図6(a)及び(b)に示すように、標的核酸との連結に関与しなかった第一の微粒子33及び第二の微粒子34が底面41に沈降し、大部分が凹凸42を乗り越えて底面最下部近傍にまで到達する。一方、標的核酸が含有されている時(陽性)は、図6(c)及び(d)に示すように、前述のように第一の微粒子33及び第二の微粒子34が標的核酸を介して互いに連結されて凝集物が生じ、沈降する。該凝集物はサイズが大きいため、凹凸42を乗り越えることなく、底面41上の沈降した場所にそのまま留まって、底面41全面に渡って薄く堆積する。標的核酸の量が多ければ凝集物の堆積量が多くなり、少なければ堆積量が少なくなるので、試料中の標的核酸濃度に応じて容器底面の色の濃さが変化する。なお、図6中、(a)及び(c)は、凝集物及び/又は該凝集物以外の沈降物が、沈降物捕捉部に捕捉されている状態での容器40の縦断面図、(b)及び(d)は、容器40の底面を上方から見た時の図である。
【0043】
次に、底面が図5に示すような形状の容器50を使用した場合の、沈降物の捕捉分布について、図7を参照しながら説明する。
第一の微粒子33及び第二の微粒子34と混合した試料中に標的核酸が含有されていない時(陰性)は、図7(a)及び(b)に示すように、標的核酸との連結に関与しなかった第一の微粒子33及び第二の微粒子34が底面51に沈降し、大部分が凹部52に捕捉され、底面51の最下部近傍にまで到達せず、底面51の、凹部52が設けられている領域のほぼ全面に渡って保持される。一方、標的核酸が含有されている時(陽性)は、図7(c)及び(d)に示すように、前述のように第一の微粒子33及び第二の微粒子34が標的核酸を介して互いに連結されて凝集物が生じ、沈降する。該凝集物はサイズが大きいため、凹部52に捕捉されることなく大部分が底面51の最下部近傍にまで到達する。標的核酸の量が多ければ、底面51の最下部近傍における凝集物の堆積量が多くなると共に底面51を覆う面積が大きくなり、少なければ、底面51の最下部近傍における凝集物の堆積量が少なくなると共に底面51を覆う面積が小さくなる。したがって、試料中の標的核酸濃度に応じて容器底面の変色部位の色の濃さ及び領域が変化する。なお、図7中、(a)及び(c)は、凝集物及び/又は該凝集物以外の沈降物が、沈降物捕捉部に捕捉されている状態での容器50の縦断面図、(b)及び(d)は、容器50の底面を上方から見た時の図である。
【0044】
このように、測定に供する試料中の標的核酸の有無あるいは濃度の違いにより、容器底面における沈降物の捕捉分布が変化するので、標的核酸の検出を簡便に且つ高精度に行うことができる。
【0045】
また、例えば、図4あるいは図5に示すような本発明の容器は、金型成型等の従来公知の手法により製造することができる。
【0046】
[第二の手法]
(磁性微粒子及び容器底面への受容体の結合)
次に、標的核酸を検出する第二の手法について説明する。
まず磁性微粒子に、標的核酸中の第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体を結合する工程について説明する。
【0047】
用いる磁性微粒子としては、例えば、四酸化三鉄(Fe3 O4 )、三酸化二鉄(γ−Fe2 O3 )、各種フェライト、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属あるいはコバルト、ニッケル、マンガンなどを含む合金からなる磁性微粒子、又はこれら磁性微粒子を内部に含んだポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカプラミド、ポリエチレンテレフタレートなどの疎水性重合体、若しくはポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(2−オキシエチルアクリレート)、ポリ(2−オキシエチルメタクリレート)、ポリ(2,3−ジオキシプロピルアクリレート)、ポリ(2,3−ジオキシプロピルメタクリレート)、ポリエチレングリコールメタクリレートなどの架橋した親水性重合体、又は前記重合体のモノマーの2−4種程度の共重合体などのラテックス、ゼラチン、リポソーム、あるいは前記磁性微粒子をラテックス、ゼラチン、リポソームなどの表面に固定化した粒子などが挙げられる。
【0048】
磁性微粒子の粒径は、0.1μm〜20μmであることが好ましい。
粒径が前記寸法を外れると、沈降物の捕捉分布パターンが、前記凝集物と該凝集物以外の沈降物との間で区別がつきにくくなることがある。
磁性微粒子に、標的核酸中の第二のリガンドに対する第二の受容体を結合する方法としては、該受容体を物理的に吸着させる方法、あるいは化学的に担持させる方法が挙げられる。
【0049】
物理的に吸着させる方法としては、例えば、磁性微粒子に、受容体を直接吸着させて固定化する方法、受容体をアルブミンなどの他のタンパク質に化学的に結合させてから吸着させて固定化する方法が挙げられる。
化学的に担持させる方法としては、例えば、磁性微粒子の表面に存在するアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、エポキシ基などの各種官能基を活性化して、受容体上の各種官能基と結合させて、直接磁性微粒子上に受容体を固定化する方法、磁性微粒子と受容体とをスペーサー分子を介して化学結合させることで固定化する方法、例えばアルブミンなどの他のタンパク質に受容体を化学結合させた後、該タンパク質を磁性微粒子に化学結合させる方法が挙げられる。ここで化学結合させる方法は、いずれも従来公知の方法を適用すれば良い
【0050】
次に、容器底面に、標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体を結合する工程について説明する。
ここで用いる容器は、透明、半透明、着色したものなどいずれでも良い。材質としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、メチルペンテン樹脂(TPX) 、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂等のプラスチック等が挙げられる。そして、金型成型等の従来公知の方法によって成型すれば良い。
容器底面に標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体を結合する方法としては、微粒子や磁性微粒子へ受容体を結合する方法を適用することができ、結合させる受容体の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0051】
これら磁性微粒子や容器に結合される受容体としては、例えば、抗体、レクチン、ストレプトアビジン、ニッケル等を用いることができるが、これらに限定されない。ニッケルを用いることができるのは、これがキレート形成能を有するからである。
【0052】
本手法においては、標的核酸には少なくとも二種類のリガンドが結合されているため、一種類の標的核酸に対して少なくとも二種類の受容体を準備する。そして、第一のリガンド31と特異的に結合する第一の受容体331が底面に結合された容器80(図8)、及び第二のリガンド32と特異的に結合する第二の受容体341が結合された磁性微粒子90(図9)を調製する。
【0053】
また本発明では、一つの磁性微粒子、容器に二種類以上の受容体を結合させてもよい。本実施形態では、一つの標的核酸中の二種類以上のリガンドのうち、一種のリガンドと特異的に結合する受容体と、残りの種類のリガンドと特異的に結合する受容体以外の受容体を、一つの磁性微粒子あるいは容器に結合させる。即ち、標的核酸中の二種類以上のリガンドのうち一種だけが、一つの磁性微粒子あるいは容器に結合するように設計する。
【0054】
(容器内に、標的核酸を含有している可能性のある試料及び前記磁性微粒子を添加する工程)
次に、標的核酸を含有している可能性のある試料及び前記磁性微粒子を添加する工程について説明する。
本工程は、標的核酸を含有している可能性のある試料と磁性微粒子を混合した後に、該混合物を容器に添加しても良く、標的核酸を含有している可能性のある試料と磁性微粒子を同時に容器に添加しても良いが、好ましくは標的核酸を含有している可能性のある試料を容器に添加した後に、磁性微粒子を該容器に添加する。標的核酸を含有している可能性のある試料、磁性微粒子は、それぞれ溶液として用いることが好ましい。この場合、緩衝液を用いることが好ましく、好ましい緩衝液として、例えば、PBSが挙げられるが、状況に応じて適宜選定すれば良い。
【0055】
容器への添加に供する磁性微粒子の量は、多すぎると検出精度が低下するので、標的核酸より小過剰であることが好ましく、具体的には、数十〜数百nMの標的核酸に対し、0.01〜0.5w/v%の微粒子量であることがより好ましい。そして、容器底面に結合された第一の受容体の数は、標的核酸中の第一のリガンドの数よりも多ければ良く、リガンドの数の1.2〜2倍程度であることが好ましい。
【0056】
検出に供する標的核酸を含有している可能性のある試料が、実際に図10(a)に示すような標的核酸30を含有していれば、図10(b)に示すように、第一のリガンド31と第一の受容体331との結合を介して容器80の底面81に標的核酸30が連結され、図10(c)に示すように、第二のリガンド32と第二の受容体341との結合を介して、該標的核酸30と磁性微粒子90が連結される。即ち、容器80及び磁性微粒子90が標的核酸30を介して連結される。検出に供する試料が標的核酸を含有していなければ、このような結合は生じず、磁性微粒子90は容器80に連結されない。
【0057】
(容器底面における磁性微粒子の分布を観測する工程)
続いて、磁石等の磁性体を、容器外側から容器底面に当てることで、容器内の磁性微粒子に磁力を印加した時の、磁性微粒子の分布パターンを肉眼あるいは画像処理等の手法を用いて観察する。画像処理等は、前述と同様の方法を適用すれば良い。
【0058】
これにより、標的核酸が試料中に含有されている時(陽性)は、図11(a)〜(c)に示すように、磁性体によって磁性微粒子90を集めようと試みても、容器80と磁性微粒子90が標的核酸30を介して連結しているので、磁性微粒子90を集めることができず、磁性微粒子90は容器80の底面81のほぼ全面に渡って保持される。標的核酸30の量が多ければ、容器80の底面81を覆う磁性微粒子90が多くなり、少なければ容器底面81を覆う磁性微粒子90が少なくなるので、試料中の標的核酸30の濃度に応じて、底面81の色の濃さが変化する。一方、標的核酸が試料中に含有されていない時(陰性)は、図11(d)〜(f)に示すように、磁性体によって磁性微粒子90が底面81の磁性体近傍に集められる。
このように、測定に供する試料中の標的核酸の有無あるいは濃度の違いにより、容器底面における磁性微粒子の分布パターンが変化するので、標的核酸の検出を簡便且つ高精度に行うことができる。なお、図11中、(a)及び(b)は、磁性微粒子90が容器80に連結されている状態での容器80の縦断面図、(d)及び(e)は、磁性微粒子90が容器80に連結されていない状態での容器80の縦断面図、(c)及び(f)は、容器80の底面を上方から見た時の図である。
【0059】
前記のリガンド−受容体の組み合わせとして、例えば、抗原及び抗体を用いる場合は、本工程は、0〜37℃で、5〜30分間行うことが好ましい。その他のリガンド−受容体の組み合わせの場合も、この組み合わせの種類に応じて適した温度、時間、緩衝液を適宜選択すれば良い
【0060】
次に、標的核酸の検出を行う具体的な方法について詳しく説明する。
上記のようなリガンドが結合している濃度既知の標的核酸を含有している試料(1)を用い、該標的核酸を前述の方法に従って容器内に添加し、磁性微粒子を容器内に添加して、磁力を印加した時の磁性微粒子の分布パターンを確認し、陽性コントロールとする。さらに、該標的核酸を含有していない試料(2)を前述の方法に従って容器内に添加し、磁性微粒子を容器内に添加して、磁力を印加した時の磁性微粒子の分布パターンを確認し、陰性コントロールとする。そして、該標的核酸を含有している可能性のある試料(3)を同様に前述の方法に従って容器内に添加し、磁性微粒子を容器内に添加して、容器底面における磁性微粒子の分布パターンを、上記陽性コントロール及び陰性コントロールと比較することで、前記試料(3)中の標的核酸の有無または濃度を確認する。
【0061】
また、既知の異なる濃度の標的核酸を含有する試料を用いて得られた、容器底面における磁性微粒子の分布パターンをコントロールとし、該標的核酸を含有している可能性のある試料(4)を用いた時の磁性微粒子の分布パターンをコントロールと比較することで、該試料(4)中の標的核酸の有無または濃度を確認することも可能である。
また、あらかじめ標的核酸の有無や濃度の違いによる磁性微粒子の分布パターンの違いを確認して記録しておけば、前記コントロールを用いなくとも、該標的核酸を含有している可能性のある試料を検出に供するだけで、該試料中の標的核酸の有無または濃度を確認することも可能である。このようにすることで、検出工程を簡略化することができる。
【0062】
また、試料中に複数種類の標的核酸が含有されている場合には、例えば、標的核酸の種類ごとに異なる第一及び第二のリガンドを用いて、複数種類のうちの一種の標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が結合された容器に、当該一種の標的核酸中の第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が結合された磁性微粒子のみを添加すれば、当該一種の標的核酸を選択的に検出することができる。同様に、複数種類の標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体がすべて結合された容器に、当該複数種類の標的核酸中の第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が結合された磁性微粒子をすべて添加すれば、当該複数種類の標的核酸を同時に検出することができる。
このように、検出対象の核酸を単独で、或いは複数の検出対象の核酸を同時に検出することができる。
【0063】
ここで、標的核酸中の第一及び第二のリガンドは、前述のように標的核酸の種類ごとに全て異なるリガンドを用いても良いが、第一及び第二のリガンドのうち一方のリガンドを、複数種類の核酸の間で共通のものとしても良い。このようにすることで、検出工程を簡略化することができる。
【0064】
なお、以上述べた検出方法では、一種類の標的核酸について二種類のリガンドを用いているが、三種類以上のリガンドを用いても良い。この場合、各リガンドと特異的に結合する受容体を用いるが、これら三種類以上の受容体のうち、容器に結合するものと磁性微粒子に結合するものとは、目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0065】
(標的核酸の検出に用いる容器)
本工程で用いる容器は、磁性微粒子に磁力を印加した時の、該容器に連結されていない磁性微粒子の集まり易さを考慮して、例えば、図8に示すものが挙げられる。すなわち、底面81が略半球面状であり、底面81と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であるものを好ましいものとして挙げることができる。底面81は、ここに示す略半球面状以外にも、略円錐面状であっても良い。なおθ3とは、より具体的には、底面81の傾斜面における任意の一点と、底面81中心とを結ぶ直線が、水平面となす角度のことである。
そして第一の手法同様、このような容器を単独で用いても良いが、該容器を複数同一プレート上に設けたものを用いることもできる。このようなものとして具体的には、例えば、該容器をウェルとする96ウェルマイクロプレートを挙げることができる。ただしもちろん、ウェルの数は96に限定されるものではない。このような複数の容器を備えている場合、一つの容器の容量は0.1〜0.5mlであることが好ましい。第二の手法で用いる容器は、金型成型等の従来公知の手法により成型した容器底面に、前述の手法で受容体を結合させれば良い。
【0066】
ここまで第二の手法について述べた点以外については、概ね第一の手法と同様の手法を第二の手法でも適用することができる。
【0067】
本発明においては、第一の手法及び第二の手法を併用することで、標的核酸の検出をより高精度に行うことができる。そして、第一の手法においては前述の通り、図4及び図5で挙げた容器を併用すれば、さらに一層高精度に標的核酸の検出を行うことができる。
【0068】
以上詳述したように、本発明の標的核酸の検出方法によれば、検出対象の核酸を低コストで簡便且つ高精度に検出することができる。これにより、例えば、臨床検査の低コスト化、簡便化に有効である。
【0069】
本発明の標的核酸の検出方法は、例えば、検出対象の核酸の1塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)を検出する手段として用いることができる。この場合、複数の異なるハプテンが結合された標的核酸を得る方法としてPCR法を適用する場合、例えば、PCR−SSP法(Polymerase Chain Reaction − Sequence Specific Primer method)を好適に用いることができる。PCR−SSP法は、二種類のプライマーの片方の3’末端が、検出対象の核酸中のSNPサイトと重なるように配列を設計することで、SNPサイトとプライマーの3’末端とのマッチングの有無によって、PCRによる増幅を制御する方法である。
【0070】
以下、さらに原理の詳細を説明する。
第一のリガンドが結合されたプライマーとして、例えば、配列番号2に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にジゴキシゲニン(DIG)を結合させたもの、配列番号3に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にFITCを結合させたもの、配列番号4に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にビオチンを結合させたものを、それぞれ作製する。次に、配列番号5に示す塩基配列から成る検出対象の核酸に対して、PCR−SSP法で増幅反応を行う。この時、配列番号5に示す塩基配列中にrとして記載したように、サンプルのSNPサイトが塩基A(アデニン)と塩基G(グアニン)の2タイプがアリルとして存在するとき、アリルタイプは、A/Aのホモ、A/Gのヘテロ、G/Gのホモと3タイプとなる。
サンプルのSNPサイトがA/Aのホモである場合、DIG標識された配列番号2のプライマーがSNPサイトとマッチングし、ビオチン標識された配列番号4のプライマーとともにPCRによって検出対象の核酸の増幅が行われる。FITC標識された配列番号2のプライマーでは増幅が行われないので、増幅産物は両5’末端にDIGとビオチンが別々に結合された2本鎖DNA(標的核酸1)となる。
同様な考え方で、サンプルのSNPサイトがG/Gのホモである場合、PCR産物は両5’末端にFITCとビオチンが別々に結合された2本鎖DNA(標的核酸2)となる。
さらにサンプルのSNPサイトがA/Gのヘテロであった場合、標的核酸1と標的核酸2が混合した増幅産物が得られる。これら核酸の増幅の有無を検出することで、SNPタイピングが可能となる。
上述の原理により、核酸のSNPを検出する場合に、その多型に対応したハプテンで修飾された標的核酸を得ることが可能となる。
さらに、検出対象の核酸のSNPを複数検出することも可能となる。この場合、SNPサイトが異なるごとに異なる種類のハプテンを結合したプライマーを用意して、前述の方法に従い、PCR−SSP法により検出対象の核酸を増幅させればよい。
【実施例】
【0071】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
ここでは、前述の原理に基づいたSNPタイピングの実施例を示す。
[実験例1]
<DNA(検出対象の核酸)の抽出>
ヒト血液よりDNAを抽出した。具体的には、核酸自動抽出機「Magtration System 6CG(プレジション・システム・サイエンス株式会社製)」を使用し、使用手順は、同製品取り扱い説明書に準じた。
(1)被験者の血液5mlを採血した。
(2)採血した血液の全血100μlをスクリューキャップ式1.5mlチューブに分注した。
(3)装置を立ち上げ、抽出試薬、被検体をセットし、操作プログラムに従い機械を操作してDNA抽出を開始した。抽出液はTE(10mM Tris−HCl(pH8.0 or 7.5)+1mM EDTA)を用いた。
(4) 抽出後、分光光度計「nano drop (米国ナノドロップ社製)」を使用して、吸光度を測定し、抽出後濃度を計測した。
前記手法により、あらかじめ標的SNPのアリルタイプが判っている9人の被験者から血液を採取し、DNA抽出を行った結果、100μl全血液から表1に示す濃度のゲノム DNA 100μlが得られた。
【0072】
【表1】
【0073】
<リガンドが結合された検出対象の核酸の増幅>
配列番号2に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にDIGを結合させたもの、配列番号3に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にFITCを結合させたもの、配列番号4に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にビオチンを結合させたものそれぞれ用いて、前記ゲノムDNAをテンプレートとしたPCRによって、SNPを含む配列番号5に示す塩基配列を有する検出対象の核酸の増幅を行った。
(1)ゲノムDNAを20ng/μlとなるようにTEで濃度調整した。
(2) 表2に示す通り、試薬を被検体分調製した。
(3)調製した試薬をPCR用チューブに20μlずつ分注した。
(4)被検体溶液を(3)のPCR用チューブに1μlずつ加えた。
(5)PCR用チューブをサーマルサイクラー「Gene AmpPCRsystem9700(Applied Biosystems社製)」にセットして、表3に示す条件によりPCR反応を行った。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
上記手法により、被験者1〜9の被検体について標的核酸の増幅反応を行った。
また、配列番号6に示す塩基配列から成る核酸の5’末端にDIGを結合させたものと、配列番号7に示す塩基配列から成る核酸の5’末端にビオチンを結合させたものとからなる二重鎖の人工合成標的核酸(I)を調製し、配列番号8に示す塩基配列から成る核酸の5’末端にFITCを結合させたものと、配列番号9に示す塩基配列から成る核酸の5’末端にビオチンを結合させたものとからなる二重鎖の人工合成標的核酸(II)を調製し、これら人工合成標的核酸(I)及び(II)を混合して、人工合成標的核酸(I)及び(II)がそれぞれ100nMになるようにTEを用いて濃度調整して、陽性コントロールとした。またTEを陰性コントロールとした。
【0077】
<標的核酸の検出>
前記工程で作製した、リガンドが結合されている標的核酸の検出を行った。
以下に各検出方法の手順及び検出結果を示す。
[実施例1]
図4に示す容器を用いて標的核酸の検出を行った。
(1)抗DIG抗体(DAKO社製、カタログNo:D5105)に感作させたラテックス粒子A(粒子径0.1μm、セラディン社製)の溶液を、緩衝液(200mM MOPSO(pH7.4)、4%デキストラン、100mM NaCl、0.1%アジ化ナトリウム)を用いて希釈し、金型成型により作製した図4に示す容器a(h;0.2μm、l;0.5μm、θ1;30°)をウェルとする96ウェル反応プレートに、一つのウェルにつき50μlずつ分注した。
(2)抗ビオチン抗体(DAKO社製、カタログNo:M0743)感作ラテックス粒子溶液を、前記緩衝液を用いて希釈し、前記96ウェルプレートに、一つのウェルにつき50μlずつ分注した。
(3)被検体、陽性コントロール及び陰性コントロールを各20μlずつ添加して、良く分散させた。
(4)室温で5分間静置後、陽性コントロール、陰性コントロールと比較して、被検体の沈降物の容器底面における捕捉分布を観測し、陽性、陰性を判定した。
【0078】
[実施例2]
抗DIG抗体に感作させたラテックス粒子Aの溶液の代わりに、抗FITC抗体(DAKO社製、カタログNo:D5101)に感作させたラテックス粒子B(粒子径10μm、マグスフェア社製)の溶液を用い、容器aの代わりに金型成型により作製した図4に示す容器b(h;20μm、l;50μm、θ1;30°)をウェルとする96ウェル反応プレートを用いたこと以外は実施例1と同様の手法にて、標的核酸の検出を行った。
【0079】
[実施例3]
図5に示す容器を用いて標的核酸の検出を行った。
容器aの代わりに、金型成型により作製した図5に示す容器c(L;0.05μm、d;0.03μm、θ2;30°)をウェルとする96ウェル反応プレートを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、標的核酸の検出を行った。
【0080】
[実施例4]
抗DIG抗体に感作させたラテックス粒子Aの溶液の代わりに、抗FITC抗体(DAKO社製、カタログNo:D5101)に感作させたラテックス粒子Bの溶液を用い、容器cの代わりに金型成型により作製した図5に示す容器d(L;100μm、d;60μm、θ2;30°)をウェルとする96ウェル反応プレートを用いたこと以外は実施例3と同様の手法にて、標的核酸の検出を行った。
【0081】
[実施例5]
図8に示す容器を用いて標的核酸の検出を行った。
(1)96ウェルプレート「イモビライザーアミノロックウェルモジュールプレート(Nunc社製、カタログNo:436023)」の底面に、従来公知の方法に従って抗ビオチン抗体を結合させた。
(2)前記緩衝液を一つのウェルにつき50μlずつ分注した。
(3)被検体、前記陽性コントロール及び前記陰性コントロールを各20μlずつ分注した。
(4)5分間室温で静置した。
(5)抗DIG抗体を結合した磁性微粒子「Dynabeads M−450 Epoxy(DYNAL社製、カタログNo:DB14001)」の溶液を、一つのウェルにつき50μlずつ分注してよく分散させた。
(6)5分間室温で静置した。
(7)プレートの底面外側より磁石をあて、陽性コントロール、陰性コントロールと比較して、磁性微粒子の容器底面における分布パターンを肉眼あるいは画像処理等の手法により観察して、陽性、陰性を判定した。
【0082】
[実施例6]
抗DIG抗体を結合した磁性微粒子の代わりに、抗FITC抗体を結合した磁性微粒子を用いたこと以外は、実施例5と同様の手法にて、標的核酸の検出を行った。
【0083】
(判定結果)
以上、実施例1〜6の検出結果と、該検出結果に基づく総合的な判定結果を表4に示した。総合的な判定として、実施例1〜6の判定結果のうち少なくとも3つの検出結果が同じであれば、その結果を最終的なタイピング結果とした。そして、本発明により、標的核酸の検出を高精度に行うことができることが確認された。
【0084】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、臨床検査の簡便化、低コスト化等に好適であり、医療関連分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】標的核酸を得る方法を示す概念図である。
【図2】受容体が結合された微粒子を示す図である。
【図3】標的核酸と連結されて凝集を生じる時の微粒子を示す概念図である。
【図4】本発明の容器の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の容器の他の例を示す断面図である。
【図6】図4に示す容器を用いた場合の沈降物捕捉分布の一例を示す図である。
【図7】図5に示す容器を用いた場合の沈降物捕捉分布の一例を示す図である。
【図8】本発明の容器の他の例を示す断面図である。
【図9】受容体が結合された磁性微粒子を示す図である。
【図10】標的核酸を介して、図8に示す容器及び図9に示す磁性微粒子を連結した状態を示す概念図である。
【図11】図10における磁性微粒子の分布パターンの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
30・・・標的核酸、31・・・第一のリガンド、32・・・第二のリガンド、33・・・第一の微粒子、331・・・第一の受容体、34・・・第二の微粒子、341・・・第二の受容体
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の核酸の有無あるいは濃度を検出する方法及び該検出方法に用いる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に存在する特定の標的核酸を検出する代表的な技術としては、ハイブリダイゼーション法を利用したものが知られている(特許文献1参照)。そしてこの方法は、多種類の核酸が含まれる試料中から、非常に少量のDNAやRNAの標的核酸をプローブで検出する技術である。
【0003】
一方、試料中に存在する特定の標的分子を、凝集させることで検出する方法も知られている。そして、この方法で凝集反応を行い、その結果得られた凝集物を検出する容器として、これまで種々のものが提案されてきており、例えば、凝集物の凝集パターンを目視で判定できる容器が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−51099号公報
【特許文献2】特公昭63−60854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、核酸は、非特異的にハイブリダイゼーションすることがあり、例えば、標的核酸が非標的核酸と類似の塩基配列を有する場合などは、試料中から標的核酸だけを選択的に検出することが困難となることがあり、特許文献1に記載の方法では、必ずしも高い精度で標的核酸を検出することができないという問題点があった。
また、特許文献2に記載の容器は、赤血球の検出に用いるものであり、核酸と赤血球は分子サイズをはじめ構造に大きな相違があるため、そのまま標的核酸の検出に用いることができないという問題点があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ハイブリダイゼーション法を利用することなく、標的核酸を簡便かつ高精度に検出する方法、及び該検出方法に用いる容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドが結合された、標的核酸の検出方法であって、前記第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が複数結合された第一の微粒子、及び前記第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された第二の微粒子を調製する工程と、底面に沈降物捕捉部を有する容器内において、前記標的核酸を含有している可能性のある試料、前記第一の微粒子及び第二の微粒子を混合する工程と、前記混合工程後に、第一のリガンドと第一の受容体との結合及び第二のリガンドと第二の受容体との結合を介してそれぞれ連結された前記標的核酸と前記第一の微粒子及び第二の微粒子からなる凝集物並びに/又は前記第一の微粒子及び第二の微粒子の沈降物の、前記容器底面における捕捉分布を観測する工程を有することを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項2に記載の発明は、検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドが結合された、標的核酸の検出方法であって、前記第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が底面に複数結合された容器を調製する工程と、前記第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された磁性微粒子を調製する工程と、前記容器内に、前記標的核酸を含有している可能性のある試料及び前記磁性微粒子を添加する工程と、該添加工程後に、前記磁性微粒子に対して前記容器外側より磁力を印加して該容器底面における磁性微粒子の分布を観測する工程を有することを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の検出方法と、請求項2に記載の検出方法をいずれも行うことを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法において、濃度既知の標的核酸を含有している試料(1)を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有していない試料(2)を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有している可能性のある試料(3)を用いた時の観測結果とを比較して、前記試料(3)中の標的核酸の有無又は濃度を確認することを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法において、既知の異なる濃度の標的核酸を含有している試料を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有している可能性のある試料(4)を用いた時の観測結果とを比較して、前記試料(4)中の標的核酸の有無又は濃度を確認することを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項6に記載の発明は、前記リガンドが、親水性有機化合物、ジゴキシゲン、フルオロセイン、アレクサ、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、アミノ酸残基数が6以上のポリペプチド、単糖が2以上結合した糖鎖、ビオチン、タンパク質、ポリヒスチジン、HA、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Flag)及びこれらの誘導体からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項7に記載の発明は、前記標的核酸が、第一のリガンドを結合させた第一のプライマー、及び第二のリガンドを結合させた第二のプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法によって調製されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項8に記載の発明は、前記標的核酸が、第一のプライマーを用いて、第一のリガンドを結合させたヌクレオチドを少なくとも一つ取り込ませながら、さらに第二のプライマーを用いて、第二のリガンドを結合させたヌクレオチドを少なくとも一つ取り込ませながら、ポリメラーゼ連鎖反応法によって調製されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項9に記載の発明は、前記標的核酸が複数の異なる種類であり、これら標的核酸中の第一及び第二のリガンドのうち少なくとも一方は標的核酸の種類ごとに異なることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項10に記載の発明は、前記標的核酸が生体由来であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項11に記載の発明は、前記第一及び第二の微粒子が、粒径0.1〜10μmであり、互いに光学的に区別可能であることを特徴とする請求項1及び3〜10のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項12に記載の発明は、複数の前記容器が同一プレート上に設けられており、各容器の容量が0.1〜0.5mlであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項13に記載の発明は、前記容器の沈降物捕捉部は、すり鉢状をなす底面に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸が同心円状に配されたものであり、中心から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)が0.2〜20μm、中心から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)が0.5〜50μmであり、山と中心とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)が15〜45°であることを特徴とする請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項14に記載の発明は、前記容器の沈降物捕捉部は、すり鉢状をなす底面に、複数個の凹部が独立して設けられたものであり、底面と水平面とのなす角度(θ2)が15〜45°であることを特徴とする請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項15に記載の発明は、前記凹部の、開口部の直径(L)が0.05〜100μm、深さ(d)が0.03〜60μmであることを特徴とする請求項14に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項16に記載の発明は、請求項13に記載の検出方法と、請求項14又は15に記載の検出方法をいずれも行うことを特徴とする標的核酸の検出方法である。
請求項17に記載の発明は、前記磁性微粒子の粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項2〜10及び12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
請求項18に記載の発明は、前記容器が、底面が略半球面状もしくは略円錐面状であり、底面と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であることを特徴とする請求項2〜10、12及び17のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法である。
【0007】
請求項19に記載の発明は、請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、すり鉢状をなす底面に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸が同心円状に配され、中心から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)が0.2〜20μm、中心から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)が0.5〜50μmであり、山と中心とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器である。
請求項20に記載の発明は、請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、すり鉢状をなす底面に、複数個の凹部が独立して設けられ、底面と水平面とのなす角度(θ2)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器である。
請求項21に記載の発明は、前記凹部の、開口部の直径(L)が0.05〜100μm、深さ(d)が0.03〜60μmであることを特徴とする請求項20に記載の標的核酸の検出用容器である。
請求項22に記載の発明は、請求項2〜10、12及び17のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、底面が略半球面状もしくは略円錐面状であり、底面と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器である。
請求項23に記載の発明は、請求項19〜22のいずれか一項に記載の容器が、同一プレート上に複数個設けられていることを特徴とする標的核酸の検出用容器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器底面における沈降物の捕捉分布を視覚的に観測することで、標的核酸の有無あるいは濃度を簡便かつ高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について、詳しく説明する。
本発明の標的核酸の検出方法は大別して、検出対象の核酸にリガンドが結合された構造の標的核酸を得る工程と、該標的核酸を検出する工程とに分かれる。以下、各工程ごとに詳しく説明する。
【0010】
<標的核酸を得る工程>
まず、標的核酸を得る工程について説明する。
本発明において、検出対象の核酸は特に限定されず、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、hnRNA、合成RNA等を含む全ての核酸又は核酸類似体であり、生体に由来するものであっても、人工的に合成されたものであってもよい。
【0011】
検出対象の核酸に結合されるリガンドは、従来公知のものを用いることができ、好ましいものとして、例えば、親水性有機化合物、ハプテン、ジゴキシゲン、フルオロセイン、アレクサ、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、アミノ酸残基数が6以上のポリペプチド、単糖が2以上結合した糖鎖、ビオチン、タンパク質、ポリヒスチジン、HA、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Flag)及びこれらの誘導体等を用いることができるが、これらに限定されない。ビオチン、ジゴキシゲン、フルオロセイン、アレクサなどは市場からの入手が容易で低価格という利点がある。また、糖鎖やペプチドは化学構造のデザインに自由度が高く、複数種類をそろえることが容易であるという利点がある。使用するリガンドは、検出対象の核酸、試料等によって適宜選択すれば良い。
【0012】
標的核酸中には、種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドがそれぞれ一つ以上結合されている。検出対象の核酸に第一及び第二のリガンドが結合された構造の標的核酸を得る方法は、図1に示すように、例えば、(i)検出対象の核酸10に、光やプラチナを用いてあるいはリンカーを介して該核酸の塩基及び/又は5’末端に第一のリガンド31及び第二のリガンド32を共有結合させる方法(図1(a))、一例を挙げると、核酸の5’末端の塩基のアミノ基と、リガンドのカルボキシル基とを共有結合させる方法、(ii)核酸合成時に第一のリガンド31を結合させた第一のプライマー11、及び第二のリガンド32を結合させた第二のプライマー12を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により塩基配列を伸長させる方法(図1(b))、(iii)PCR法において、第一のリガンド31を結合させたヌクレオチド13を少なくとも一つ、及び第二のリガンド32を結合させたヌクレオチド14を少なくとも一つ、それぞれ取り込ませながら塩基配列を伸長させる方法(図1(c))、(iv)ターミナルデオキシジルトランスフェラーゼを用いて、第一のリガンド31又は第二のリガンド32を結合させたヌクレオチドを、核酸の3’末端にテーリングする方法(図1(d))等の各種方法を用いることができる。
【0013】
生体試料又は任意の被検体等のように、標的核酸が他の核酸と共に存在する試料では、前記(ii)及び(iii)の方法が好適である。標的核酸が単独で存在する場合には、何れの方法を用いてもよい。なお、例えば、生体試料等に含まれる検出対象の核酸は、PCR法によって増幅させてから検出しても良いが、増幅させずにそのまま検出に供してもよい。
【0014】
図1に示すように、標的核酸30中のリガンドは、第一のリガンド31及び第二のリガンド32の二種類である。核酸の構造は柔軟であり、本発明においては、後述するように、標的核酸が種類の異なる第一の微粒子及び第二の微粒子に結合することが必須である。
【0015】
また、標的核酸中の第一のリガンド及び第二のリガンドの数は、それぞれ一つずつでも良いが、それぞれ二つ以上でもよい。核酸対微粒子の体積比は極めて大きいため、一つの核酸に三つ以上の微粒子が結合する可能性は低い。従って、一つの標的核酸中に、複数のリガンドがあっても、標的核酸が結合した微粒子の凝集度には影響を与えないものと考えられる。
【0016】
また、標的核酸が複数種類ある場合には、例えば、前記(ii)あるいは(iii)の方法を同時に行って、複数種類の標的核酸を同時に調製しても良い。この場合、各標的核酸中の第一のリガンド及び第二のリガンドのうち少なくとも一方は、標的核酸の種類ごとに異なることが好ましい。
【0017】
<標的核酸を検出する工程>
次に標的核酸を検出する工程について説明する。
検出工程は大別して2つの手法に別れ、これら単独でも検出を行うことは可能であるが、二つの手法を組み合わせることによって、より精度の高い検出結果を得ることが可能である。以下2つの手法を順に説明する。
【0018】
[第一の手法]
(第一の微粒子及び第二の微粒子を調製する工程)
第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が複数結合された第一の微粒子、及び第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された第二の微粒子を調製する。
本発明で用いる微粒子とは分散性微粒子のことであり、例えば、コロイド粒子のように溶液中で分散する微粒子を意味し、ラテックス粒子が好適に用いられるが、これに限定されない。第一の微粒子及び第二の微粒子の粒径は、0.1〜10.0nmであることが好ましい。このような粒径の微粒子を用いれば、安定した凝集塊が得られ易い。
【0019】
本発明において、特異的結合とは、例えば、抗原と抗体等のように、特定の物質間で選択的に形成される、特異性の高い分子間力に基づく結合を意味する。
【0020】
ラテックス粒子は主にポリスチレンから成り、親水性と分散性とを高めるためメタクリル酸が共重合されている。ラテックス粒子には、表面に官能基がないプレーンタイプと官能基を有する官能基タイプがある。プレーンタイプの表面の荷電はメタクリル酸の存在のため負の電荷を有しており、タンパク質分子中の正の電荷を持つ領域とイオン結合することができる。また、タンパク質分子と疎水結合させることも可能である。プレーンタイプのラテックス粒子はタンパク質と混合するだけでタンパク質を吸着するので、タンパク質の固定操作が容易である。受容体としては、後述のように種々のものを用いることができるが、各種タンパク質を用いる場合に、このようなプレーンタイプのラテックス粒子が微粒子として好適に用いられる。
【0021】
官能基を有するラテックス粒子は、表面にカルボキル基やアミノ基等が露出するように設計されており、様々なタイプの官能基タイプラテックス粒子が利用可能である。官能基タイプラテックス粒子に受容体を結合させる場合は、官能基タイプラテックス粒子中の官能基と、受容体の官能基を結合させれば良く、従来公知の方法を適用することができ、例えば、水溶性カルボジイミドでカルボン酸とアミノ基を結合させるEDAC方法、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とをあらかじめ混合してカルボン酸とアミノ基とを結合させる方法、双極性を有するリンカーを用いてアミノ基同士を架橋する方法、活性化したアルデヒド基やトシル基と受容体中の官能基を結合する方法等がある。本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のいかなる方法を用いてもよいが、特にEDAC法が好ましい。そして、プレーンタイプのラテックス粒子同様、受容体として各種タンパク質を用いる場合に、官能基タイプラテックス粒子は好適に用いられる。
なお、ラテックス粒子以外の微粒子であっても、微粒子の種類に応じて、従来公知の方法によって受容体を結合させることができる。
【0022】
第一の微粒子に結合される第一の受容体には、標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する受容体を用い、第二の微粒子に結合される第二の受容体には、第二のリガンドと特異的に結合する受容体を用いる。受容体としては、例えば、抗体、レクチン、ストレプトアビジン等を用いることができるが、これらに限定されない。なかでも、タンパク質、特に抗体が好適に用いられる。
【0023】
本発明においては、一つの実施形態として、一つの微粒子には単一種類の受容体を結合させる。そして本実施形態においては、標的核酸には少なくとも二種類のリガンドが結合されているため、一種類の標的核酸に対して少なくとも二種類の微粒子を調製する。即ち、図2に示すように、第一のリガンド31と特異的に結合する第一の受容体331が結合された第一の微粒子33(図2(a))、及び第二のリガンド32と特異的に結合する第二の受容体341が結合された第二の微粒子34(図2(b))を調製する。
【0024】
また、本発明の他の実施形態として、一つの微粒子に二種類以上の受容体を結合させても良い。そして本実施形態では、一つの標的核酸中の二種類以上のリガンドのうち、一種のリガンドと特異的に結合する受容体と、残りの種類のリガンドと特異的に結合する受容体以外の受容体を一つの微粒子に結合させる。即ち、標的核酸中の二種類以上のリガンドのうち一種だけが一つの微粒子に結合するように設計する。
【0025】
第一の微粒子及び第二の微粒子は、互いに光学的に区別可能であることが好ましい。具体的には、例えば、第一の微粒子及び第二の微粒子を、同色ではなく異なる色とすることが好ましい。このようにすることで、操作段階での微粒子の識別が容易となり、また凝集像を観察した時に一種類の微粒子で自己凝集を起こした場合にも色によって容易に区別が可能であり、自己凝集を第一の微粒子及び第二の微粒子による凝集と誤判定する可能性が低くなる。すなわち、標的核酸の検出をより高精度に行うことができる。
【0026】
なお、本工程における微粒子への受容体の結合は、標的核酸を検出する際に実施しても良いが、予め受容体を結合させた微粒子を検出に供しても良い。また、本工程は、上記の標的核酸を調製する工程と前後して実施して良い。
【0027】
(標的核酸を含有している可能性のある試料、第一の微粒子及び第二の微粒子を混合する工程)
次に、標的核酸を含有している可能性のある試料、前記第一の微粒子及び第二の微粒子を混合する工程について説明する。
本工程は、後述の、底面に沈降物捕捉部を有する容器内において行う。検出に供する標的核酸を含有している可能性のある試料が、実際に標的核酸を含有していれば、上記したような第一のリガンドと第一の受容体との結合、及び第二のリガンドと第二の受容体との結合を介して、標的核酸と微粒子が連結され、後述のように凝集物が生じる。検出に供する試料が標的核酸を含有していなければ、このような結合は生じず、凝集物も生じない。
本工程は、標的核酸を含有している可能性のある試料、第一の微粒子及び第二の微粒子を同時に混合して行っても良く、或いは、標的核酸を含有している可能性のある試料に対して、第一の微粒子及び第二の微粒子を順に混合して、逐次的に行っても良い。標的核酸を含有している可能性のある試料、第一の微粒子及び第二の微粒子は、それぞれ溶液として用いることが好ましい。
【0028】
本工程で用いる溶液は緩衝液が好ましく、凝集を促進する緩衝液がより好ましい。このような好ましい緩衝液として、例えば、以下の組成からなる緩衝液;200mM MOPSO(pH7.4)、4%デキストラン、100mM NaCl、0.1%アジ化ナトリウムが挙げられるが、標的核酸及び微粒子の種類に応じて適宜選定すれば良い。本工程において異なる種類の緩衝液を混合する場合には、微粒子は当該異なる緩衝液で2〜3回洗浄してから用いることが好ましい。
【0029】
混合に供する第一及び第二の微粒子の量は、多すぎると検出精度が低下するので、標的核酸より小過剰であることが好ましく、具体的には、数十〜数百nMの標的核酸に対し、0.01〜0.5w/v%の微粒子量であることがより好ましい。
【0030】
前記のリガンド−受容体の組み合わせとして、例えば、抗原及び抗体を用いる場合は、本工程は、0〜37℃で、5〜30分間行うことが好ましい。その他のリガンド−受容体の組み合わせの場合も、この組み合わせの種類に応じて適した温度、時間、緩衝液を適宜選択すれば良い。
【0031】
図3に、標的核酸と第一及び第二の微粒子が連結した様子を示す。図3において、標的核酸30中の第一のリガンド31は、第一の微粒子33と第一の受容体331を介して連結する。また、標的核酸30中の第二のリガンド32は、第二の微粒子34と第二の受容体341を介して連結する。即ち、一つの標的核酸30が第一の微粒子33及び第二の微粒子34と連結することによって、第一の微粒子33及び第二の微粒子34が互いに連結される。さらに、一つの微粒子に複数の標的核酸30が連結し、その標的核酸30のそれぞれが他の微粒子と連結することによって、多数の微粒子が互いに連結された結果、微粒子の凝集が生じることになる。なお、図3において受容体から延ばされた点線は、結合された核酸を簡易的に表している。
これにより、標的核酸が試料中に含有されていれば、微粒子の凝集が生じる。
【0032】
(容器底面における沈降物の捕捉分布を観測する工程)
続いて、容器の底面における沈降物の捕捉分布を観測する。
ここで沈降物とは、前記凝集物や、標的核酸との連結に供されることなく沈降した第一及び第二の微粒子のことを指す。本工程によって標的核酸を検出することができる。ここで、前記凝集物の有無あるいはその程度は、肉眼あるいは画像処理等によって判定する。画像処理であれば、例えば、CCDカメラにより取り込んだ画像データを解析するなどの手法を用いることができる。
【0033】
次に、標的核酸の検出を行う具体的な方法について詳しく説明する。
上記のようなリガンドが結合している濃度既知の標的核酸を含有している試料(1)を用い、該標的核酸を前述の方法に従って微粒子と混合して、容器底面における凝集物の捕捉分布を観測し、陽性コントロールとする。さらに該標的核酸を含有していない試料(2)を前述の方法に従って微粒子と混合して、容器底面における沈降物の捕捉分布を観測し、陰性コントロールとする。そして、該標的核酸を含有している可能性のある試料(3)を同様に前述の方法に従って微粒子と混合し、容器底面における沈降物の捕捉分布を観測し、上記陽性コントロール及び陰性コントロールと比較することで、前記試料(3)中の標的核酸の有無または濃度を確認する。具体的には、試料(3)を用いた場合の捕捉分布のパターンが陽性コントロールに一致するか類似していれば、陽性と判断されて、試料(3)中には標的核酸が含有されていることが確認される。これに対して、試料(3)を用いた場合の捕捉分布のパターンが陰性コントロールに一致するか類似していれば、陰性と判断されて、試料(3)中には標的核酸が含有されていないことが確認される。一方、試料(3)を用いた場合の捕捉分布のパターンが、陽性コントロールと陰性コントロールの中間を示す場合には、擬陽性と判断される。この場合は、試料(3)中に標的核酸が少量含有されている可能性がある。このようにして、試料(3)中の標的核酸の有無を簡便に確認することができる。また同様にして、例えば、試料(3)を用いた場合の沈降物の捕捉量を陽性コントロール及び陰性コントロールと比較することで、試料(3)中の標的核酸の量を確認することができる。
【0034】
また、既知の異なる濃度の標的核酸を含有する試料を用いて得られた、容器底面における凝集物の捕捉分布をコントロールとし、該標的核酸を含有している可能性のある試料(4)を用いた時の沈降物の捕捉分布をコントロールと比較することで、前記同様、該試料(4)中の標的核酸の有無または濃度を確認することも可能である。
また、あらかじめ標的核酸の有無や濃度の違いによる沈降物の捕捉分布の違いを確認して記録しておけば、前記コントロールを用いなくとも、該標的核酸を含有している可能性のある試料を検出に供するだけで、該試料中の標的核酸の有無または濃度を確認することも可能である。このようにすることで、検出工程を簡略化することができる。
【0035】
また、試料中に複数種類の標的核酸が含有されている場合には、例えば、標的核酸の種類ごとに異なる第一及び第二のリガンドを用いて、複数種類のうちの一種の標的核酸中の第一及び第二のリガンドと特異的に結合する第一及び第二の受容体が結合された微粒子のみを混合に供すれば、当該一種の標的核酸を選択的に検出することができる。同様に標的核酸の種類に応じて、該標的核酸中の第一及び第二のリガンドと特異的に結合する第一及び第二の受容体が結合された微粒子を、各標的核酸ごとに調製し、これら微粒子を混合に供すれば、二種以上の標的核酸を同時に検出することができる。
このように、検出対象の核酸を単独で、或いは複数の検出対象の核酸を同時に検出することができる。
【0036】
ここで、標的核酸中の第一及び第二のリガンドは、前述のように標的核酸の種類ごとに全て異なるリガンドを用いても良いが、第一及び第二のリガンドのうち一方のリガンドを、複数種類の核酸の間で共通のものとしても良い。このようにすることで、検出工程を簡略化することができる。
【0037】
なお、以上述べた検出方法では、一種類の標的核酸について二種類のリガンドを用いているが、三種類以上のリガンドを用いても良い。この場合、リガンドに特異的に結合する受容体が複数結合された微粒子を、リガンドの種類ごとに調製すれば良い。
【0038】
(標的核酸の検出に用いる容器)
標的核酸の検出に用いる本発明の容器について、以下詳しく説明する
本発明においては、該容器を単独で用いても良いが、該容器を複数同一プレート上に設けたものを用いることもでき、このようなものとして具体的には、例えば、該容器をウェルとする96ウェルマイクロプレートを挙げることができる。ただしもちろん、ウェルの数は96に限定されるものではない。このような複数の容器を備えている場合、一つの容器の容量は0.1〜0.5mlであることが好ましい。
【0039】
本発明の容器の底面には、沈降物を捕捉する部位が設けられており、標的核酸と微粒子が連結することで生じた凝集物と、該凝集物以外の沈降物をより簡便に且つ高精度に識別できるようになっている。沈降物捕捉部について具体的に説明すると、例えば、図4に示すような、容器40のすり鉢状をなす底面41に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸42が同心円状に配されたものが挙げられる。ここで凹凸42の、底面の中心43から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)は0.2〜20μmであることが好ましく、中心43から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)は0.5〜50μmであることが好ましく、山と中心43とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)は15〜45°であることが好ましい。また、凹凸42の数は、10〜50個であることが好ましい。
【0040】
また、沈降物捕捉部の他の具体例として、例えば、図5に示すような、容器50のすり鉢状をなす底面51に、複数個の凹部52が独立して設けられたものが挙げられる。ここで、底面51と水平面とのなす角度(θ2)は15〜45°であることが好ましい。なおθ2とは、より具体的には、底面51の傾斜面における凹部52を除いた任意の一点と、底面51中心とを結ぶ直線が、水平面となす角度のことである。
そして、該凹部52は略半球状であり、その開口部の直径(L)は0.05〜100μmであることが好ましく、深さ(d)は0.03〜60μmであることが好ましい。
なお、凹部52の形状は、ここに示す略半球状に限定されず、前記第一の微粒子及び/又は前記第二の微粒子を複数個、好ましくは3〜7個程度収容できるものであれば、異なる形状及びサイズのものでも良い。凹部52の数は、数十〜数百程度であることが好ましい。
【0041】
沈降物捕捉部の前述のサイズ及び形状は、前記凝集物と該凝集物以外の沈降物との識別を簡便に且つ高精度に行うことができるよう、特に見出されたものであり、このような沈降物捕捉部を備えた容器を用いることで、標的核酸を簡便に且つ高精度に検出することができる。したがって、前記範囲を外れた場合、沈降物の捕捉分布パターンが、前記凝集物と該凝集物以外の沈降物との間で区別がつきにくくなることがある。
また、図4及び図5で挙げた容器を併用することで、標的核酸の検出をより高い精度で行うことができる。
【0042】
図4に示すような沈降物捕捉部を有する容器40を使用した場合の、沈降物の捕捉分布について、図6を参照しながら説明する。
第一の微粒子33及び第二の微粒子34と混合した試料中に標的核酸が含有されていない時(陰性)は、図6(a)及び(b)に示すように、標的核酸との連結に関与しなかった第一の微粒子33及び第二の微粒子34が底面41に沈降し、大部分が凹凸42を乗り越えて底面最下部近傍にまで到達する。一方、標的核酸が含有されている時(陽性)は、図6(c)及び(d)に示すように、前述のように第一の微粒子33及び第二の微粒子34が標的核酸を介して互いに連結されて凝集物が生じ、沈降する。該凝集物はサイズが大きいため、凹凸42を乗り越えることなく、底面41上の沈降した場所にそのまま留まって、底面41全面に渡って薄く堆積する。標的核酸の量が多ければ凝集物の堆積量が多くなり、少なければ堆積量が少なくなるので、試料中の標的核酸濃度に応じて容器底面の色の濃さが変化する。なお、図6中、(a)及び(c)は、凝集物及び/又は該凝集物以外の沈降物が、沈降物捕捉部に捕捉されている状態での容器40の縦断面図、(b)及び(d)は、容器40の底面を上方から見た時の図である。
【0043】
次に、底面が図5に示すような形状の容器50を使用した場合の、沈降物の捕捉分布について、図7を参照しながら説明する。
第一の微粒子33及び第二の微粒子34と混合した試料中に標的核酸が含有されていない時(陰性)は、図7(a)及び(b)に示すように、標的核酸との連結に関与しなかった第一の微粒子33及び第二の微粒子34が底面51に沈降し、大部分が凹部52に捕捉され、底面51の最下部近傍にまで到達せず、底面51の、凹部52が設けられている領域のほぼ全面に渡って保持される。一方、標的核酸が含有されている時(陽性)は、図7(c)及び(d)に示すように、前述のように第一の微粒子33及び第二の微粒子34が標的核酸を介して互いに連結されて凝集物が生じ、沈降する。該凝集物はサイズが大きいため、凹部52に捕捉されることなく大部分が底面51の最下部近傍にまで到達する。標的核酸の量が多ければ、底面51の最下部近傍における凝集物の堆積量が多くなると共に底面51を覆う面積が大きくなり、少なければ、底面51の最下部近傍における凝集物の堆積量が少なくなると共に底面51を覆う面積が小さくなる。したがって、試料中の標的核酸濃度に応じて容器底面の変色部位の色の濃さ及び領域が変化する。なお、図7中、(a)及び(c)は、凝集物及び/又は該凝集物以外の沈降物が、沈降物捕捉部に捕捉されている状態での容器50の縦断面図、(b)及び(d)は、容器50の底面を上方から見た時の図である。
【0044】
このように、測定に供する試料中の標的核酸の有無あるいは濃度の違いにより、容器底面における沈降物の捕捉分布が変化するので、標的核酸の検出を簡便に且つ高精度に行うことができる。
【0045】
また、例えば、図4あるいは図5に示すような本発明の容器は、金型成型等の従来公知の手法により製造することができる。
【0046】
[第二の手法]
(磁性微粒子及び容器底面への受容体の結合)
次に、標的核酸を検出する第二の手法について説明する。
まず磁性微粒子に、標的核酸中の第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体を結合する工程について説明する。
【0047】
用いる磁性微粒子としては、例えば、四酸化三鉄(Fe3 O4 )、三酸化二鉄(γ−Fe2 O3 )、各種フェライト、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属あるいはコバルト、ニッケル、マンガンなどを含む合金からなる磁性微粒子、又はこれら磁性微粒子を内部に含んだポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカプラミド、ポリエチレンテレフタレートなどの疎水性重合体、若しくはポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(2−オキシエチルアクリレート)、ポリ(2−オキシエチルメタクリレート)、ポリ(2,3−ジオキシプロピルアクリレート)、ポリ(2,3−ジオキシプロピルメタクリレート)、ポリエチレングリコールメタクリレートなどの架橋した親水性重合体、又は前記重合体のモノマーの2−4種程度の共重合体などのラテックス、ゼラチン、リポソーム、あるいは前記磁性微粒子をラテックス、ゼラチン、リポソームなどの表面に固定化した粒子などが挙げられる。
【0048】
磁性微粒子の粒径は、0.1μm〜20μmであることが好ましい。
粒径が前記寸法を外れると、沈降物の捕捉分布パターンが、前記凝集物と該凝集物以外の沈降物との間で区別がつきにくくなることがある。
磁性微粒子に、標的核酸中の第二のリガンドに対する第二の受容体を結合する方法としては、該受容体を物理的に吸着させる方法、あるいは化学的に担持させる方法が挙げられる。
【0049】
物理的に吸着させる方法としては、例えば、磁性微粒子に、受容体を直接吸着させて固定化する方法、受容体をアルブミンなどの他のタンパク質に化学的に結合させてから吸着させて固定化する方法が挙げられる。
化学的に担持させる方法としては、例えば、磁性微粒子の表面に存在するアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、エポキシ基などの各種官能基を活性化して、受容体上の各種官能基と結合させて、直接磁性微粒子上に受容体を固定化する方法、磁性微粒子と受容体とをスペーサー分子を介して化学結合させることで固定化する方法、例えばアルブミンなどの他のタンパク質に受容体を化学結合させた後、該タンパク質を磁性微粒子に化学結合させる方法が挙げられる。ここで化学結合させる方法は、いずれも従来公知の方法を適用すれば良い
【0050】
次に、容器底面に、標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体を結合する工程について説明する。
ここで用いる容器は、透明、半透明、着色したものなどいずれでも良い。材質としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、メチルペンテン樹脂(TPX) 、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂等のプラスチック等が挙げられる。そして、金型成型等の従来公知の方法によって成型すれば良い。
容器底面に標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体を結合する方法としては、微粒子や磁性微粒子へ受容体を結合する方法を適用することができ、結合させる受容体の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0051】
これら磁性微粒子や容器に結合される受容体としては、例えば、抗体、レクチン、ストレプトアビジン、ニッケル等を用いることができるが、これらに限定されない。ニッケルを用いることができるのは、これがキレート形成能を有するからである。
【0052】
本手法においては、標的核酸には少なくとも二種類のリガンドが結合されているため、一種類の標的核酸に対して少なくとも二種類の受容体を準備する。そして、第一のリガンド31と特異的に結合する第一の受容体331が底面に結合された容器80(図8)、及び第二のリガンド32と特異的に結合する第二の受容体341が結合された磁性微粒子90(図9)を調製する。
【0053】
また本発明では、一つの磁性微粒子、容器に二種類以上の受容体を結合させてもよい。本実施形態では、一つの標的核酸中の二種類以上のリガンドのうち、一種のリガンドと特異的に結合する受容体と、残りの種類のリガンドと特異的に結合する受容体以外の受容体を、一つの磁性微粒子あるいは容器に結合させる。即ち、標的核酸中の二種類以上のリガンドのうち一種だけが、一つの磁性微粒子あるいは容器に結合するように設計する。
【0054】
(容器内に、標的核酸を含有している可能性のある試料及び前記磁性微粒子を添加する工程)
次に、標的核酸を含有している可能性のある試料及び前記磁性微粒子を添加する工程について説明する。
本工程は、標的核酸を含有している可能性のある試料と磁性微粒子を混合した後に、該混合物を容器に添加しても良く、標的核酸を含有している可能性のある試料と磁性微粒子を同時に容器に添加しても良いが、好ましくは標的核酸を含有している可能性のある試料を容器に添加した後に、磁性微粒子を該容器に添加する。標的核酸を含有している可能性のある試料、磁性微粒子は、それぞれ溶液として用いることが好ましい。この場合、緩衝液を用いることが好ましく、好ましい緩衝液として、例えば、PBSが挙げられるが、状況に応じて適宜選定すれば良い。
【0055】
容器への添加に供する磁性微粒子の量は、多すぎると検出精度が低下するので、標的核酸より小過剰であることが好ましく、具体的には、数十〜数百nMの標的核酸に対し、0.01〜0.5w/v%の微粒子量であることがより好ましい。そして、容器底面に結合された第一の受容体の数は、標的核酸中の第一のリガンドの数よりも多ければ良く、リガンドの数の1.2〜2倍程度であることが好ましい。
【0056】
検出に供する標的核酸を含有している可能性のある試料が、実際に図10(a)に示すような標的核酸30を含有していれば、図10(b)に示すように、第一のリガンド31と第一の受容体331との結合を介して容器80の底面81に標的核酸30が連結され、図10(c)に示すように、第二のリガンド32と第二の受容体341との結合を介して、該標的核酸30と磁性微粒子90が連結される。即ち、容器80及び磁性微粒子90が標的核酸30を介して連結される。検出に供する試料が標的核酸を含有していなければ、このような結合は生じず、磁性微粒子90は容器80に連結されない。
【0057】
(容器底面における磁性微粒子の分布を観測する工程)
続いて、磁石等の磁性体を、容器外側から容器底面に当てることで、容器内の磁性微粒子に磁力を印加した時の、磁性微粒子の分布パターンを肉眼あるいは画像処理等の手法を用いて観察する。画像処理等は、前述と同様の方法を適用すれば良い。
【0058】
これにより、標的核酸が試料中に含有されている時(陽性)は、図11(a)〜(c)に示すように、磁性体によって磁性微粒子90を集めようと試みても、容器80と磁性微粒子90が標的核酸30を介して連結しているので、磁性微粒子90を集めることができず、磁性微粒子90は容器80の底面81のほぼ全面に渡って保持される。標的核酸30の量が多ければ、容器80の底面81を覆う磁性微粒子90が多くなり、少なければ容器底面81を覆う磁性微粒子90が少なくなるので、試料中の標的核酸30の濃度に応じて、底面81の色の濃さが変化する。一方、標的核酸が試料中に含有されていない時(陰性)は、図11(d)〜(f)に示すように、磁性体によって磁性微粒子90が底面81の磁性体近傍に集められる。
このように、測定に供する試料中の標的核酸の有無あるいは濃度の違いにより、容器底面における磁性微粒子の分布パターンが変化するので、標的核酸の検出を簡便且つ高精度に行うことができる。なお、図11中、(a)及び(b)は、磁性微粒子90が容器80に連結されている状態での容器80の縦断面図、(d)及び(e)は、磁性微粒子90が容器80に連結されていない状態での容器80の縦断面図、(c)及び(f)は、容器80の底面を上方から見た時の図である。
【0059】
前記のリガンド−受容体の組み合わせとして、例えば、抗原及び抗体を用いる場合は、本工程は、0〜37℃で、5〜30分間行うことが好ましい。その他のリガンド−受容体の組み合わせの場合も、この組み合わせの種類に応じて適した温度、時間、緩衝液を適宜選択すれば良い
【0060】
次に、標的核酸の検出を行う具体的な方法について詳しく説明する。
上記のようなリガンドが結合している濃度既知の標的核酸を含有している試料(1)を用い、該標的核酸を前述の方法に従って容器内に添加し、磁性微粒子を容器内に添加して、磁力を印加した時の磁性微粒子の分布パターンを確認し、陽性コントロールとする。さらに、該標的核酸を含有していない試料(2)を前述の方法に従って容器内に添加し、磁性微粒子を容器内に添加して、磁力を印加した時の磁性微粒子の分布パターンを確認し、陰性コントロールとする。そして、該標的核酸を含有している可能性のある試料(3)を同様に前述の方法に従って容器内に添加し、磁性微粒子を容器内に添加して、容器底面における磁性微粒子の分布パターンを、上記陽性コントロール及び陰性コントロールと比較することで、前記試料(3)中の標的核酸の有無または濃度を確認する。
【0061】
また、既知の異なる濃度の標的核酸を含有する試料を用いて得られた、容器底面における磁性微粒子の分布パターンをコントロールとし、該標的核酸を含有している可能性のある試料(4)を用いた時の磁性微粒子の分布パターンをコントロールと比較することで、該試料(4)中の標的核酸の有無または濃度を確認することも可能である。
また、あらかじめ標的核酸の有無や濃度の違いによる磁性微粒子の分布パターンの違いを確認して記録しておけば、前記コントロールを用いなくとも、該標的核酸を含有している可能性のある試料を検出に供するだけで、該試料中の標的核酸の有無または濃度を確認することも可能である。このようにすることで、検出工程を簡略化することができる。
【0062】
また、試料中に複数種類の標的核酸が含有されている場合には、例えば、標的核酸の種類ごとに異なる第一及び第二のリガンドを用いて、複数種類のうちの一種の標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が結合された容器に、当該一種の標的核酸中の第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が結合された磁性微粒子のみを添加すれば、当該一種の標的核酸を選択的に検出することができる。同様に、複数種類の標的核酸中の第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体がすべて結合された容器に、当該複数種類の標的核酸中の第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が結合された磁性微粒子をすべて添加すれば、当該複数種類の標的核酸を同時に検出することができる。
このように、検出対象の核酸を単独で、或いは複数の検出対象の核酸を同時に検出することができる。
【0063】
ここで、標的核酸中の第一及び第二のリガンドは、前述のように標的核酸の種類ごとに全て異なるリガンドを用いても良いが、第一及び第二のリガンドのうち一方のリガンドを、複数種類の核酸の間で共通のものとしても良い。このようにすることで、検出工程を簡略化することができる。
【0064】
なお、以上述べた検出方法では、一種類の標的核酸について二種類のリガンドを用いているが、三種類以上のリガンドを用いても良い。この場合、各リガンドと特異的に結合する受容体を用いるが、これら三種類以上の受容体のうち、容器に結合するものと磁性微粒子に結合するものとは、目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0065】
(標的核酸の検出に用いる容器)
本工程で用いる容器は、磁性微粒子に磁力を印加した時の、該容器に連結されていない磁性微粒子の集まり易さを考慮して、例えば、図8に示すものが挙げられる。すなわち、底面81が略半球面状であり、底面81と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であるものを好ましいものとして挙げることができる。底面81は、ここに示す略半球面状以外にも、略円錐面状であっても良い。なおθ3とは、より具体的には、底面81の傾斜面における任意の一点と、底面81中心とを結ぶ直線が、水平面となす角度のことである。
そして第一の手法同様、このような容器を単独で用いても良いが、該容器を複数同一プレート上に設けたものを用いることもできる。このようなものとして具体的には、例えば、該容器をウェルとする96ウェルマイクロプレートを挙げることができる。ただしもちろん、ウェルの数は96に限定されるものではない。このような複数の容器を備えている場合、一つの容器の容量は0.1〜0.5mlであることが好ましい。第二の手法で用いる容器は、金型成型等の従来公知の手法により成型した容器底面に、前述の手法で受容体を結合させれば良い。
【0066】
ここまで第二の手法について述べた点以外については、概ね第一の手法と同様の手法を第二の手法でも適用することができる。
【0067】
本発明においては、第一の手法及び第二の手法を併用することで、標的核酸の検出をより高精度に行うことができる。そして、第一の手法においては前述の通り、図4及び図5で挙げた容器を併用すれば、さらに一層高精度に標的核酸の検出を行うことができる。
【0068】
以上詳述したように、本発明の標的核酸の検出方法によれば、検出対象の核酸を低コストで簡便且つ高精度に検出することができる。これにより、例えば、臨床検査の低コスト化、簡便化に有効である。
【0069】
本発明の標的核酸の検出方法は、例えば、検出対象の核酸の1塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)を検出する手段として用いることができる。この場合、複数の異なるハプテンが結合された標的核酸を得る方法としてPCR法を適用する場合、例えば、PCR−SSP法(Polymerase Chain Reaction − Sequence Specific Primer method)を好適に用いることができる。PCR−SSP法は、二種類のプライマーの片方の3’末端が、検出対象の核酸中のSNPサイトと重なるように配列を設計することで、SNPサイトとプライマーの3’末端とのマッチングの有無によって、PCRによる増幅を制御する方法である。
【0070】
以下、さらに原理の詳細を説明する。
第一のリガンドが結合されたプライマーとして、例えば、配列番号2に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にジゴキシゲニン(DIG)を結合させたもの、配列番号3に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にFITCを結合させたもの、配列番号4に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にビオチンを結合させたものを、それぞれ作製する。次に、配列番号5に示す塩基配列から成る検出対象の核酸に対して、PCR−SSP法で増幅反応を行う。この時、配列番号5に示す塩基配列中にrとして記載したように、サンプルのSNPサイトが塩基A(アデニン)と塩基G(グアニン)の2タイプがアリルとして存在するとき、アリルタイプは、A/Aのホモ、A/Gのヘテロ、G/Gのホモと3タイプとなる。
サンプルのSNPサイトがA/Aのホモである場合、DIG標識された配列番号2のプライマーがSNPサイトとマッチングし、ビオチン標識された配列番号4のプライマーとともにPCRによって検出対象の核酸の増幅が行われる。FITC標識された配列番号2のプライマーでは増幅が行われないので、増幅産物は両5’末端にDIGとビオチンが別々に結合された2本鎖DNA(標的核酸1)となる。
同様な考え方で、サンプルのSNPサイトがG/Gのホモである場合、PCR産物は両5’末端にFITCとビオチンが別々に結合された2本鎖DNA(標的核酸2)となる。
さらにサンプルのSNPサイトがA/Gのヘテロであった場合、標的核酸1と標的核酸2が混合した増幅産物が得られる。これら核酸の増幅の有無を検出することで、SNPタイピングが可能となる。
上述の原理により、核酸のSNPを検出する場合に、その多型に対応したハプテンで修飾された標的核酸を得ることが可能となる。
さらに、検出対象の核酸のSNPを複数検出することも可能となる。この場合、SNPサイトが異なるごとに異なる種類のハプテンを結合したプライマーを用意して、前述の方法に従い、PCR−SSP法により検出対象の核酸を増幅させればよい。
【実施例】
【0071】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
ここでは、前述の原理に基づいたSNPタイピングの実施例を示す。
[実験例1]
<DNA(検出対象の核酸)の抽出>
ヒト血液よりDNAを抽出した。具体的には、核酸自動抽出機「Magtration System 6CG(プレジション・システム・サイエンス株式会社製)」を使用し、使用手順は、同製品取り扱い説明書に準じた。
(1)被験者の血液5mlを採血した。
(2)採血した血液の全血100μlをスクリューキャップ式1.5mlチューブに分注した。
(3)装置を立ち上げ、抽出試薬、被検体をセットし、操作プログラムに従い機械を操作してDNA抽出を開始した。抽出液はTE(10mM Tris−HCl(pH8.0 or 7.5)+1mM EDTA)を用いた。
(4) 抽出後、分光光度計「nano drop (米国ナノドロップ社製)」を使用して、吸光度を測定し、抽出後濃度を計測した。
前記手法により、あらかじめ標的SNPのアリルタイプが判っている9人の被験者から血液を採取し、DNA抽出を行った結果、100μl全血液から表1に示す濃度のゲノム DNA 100μlが得られた。
【0072】
【表1】
【0073】
<リガンドが結合された検出対象の核酸の増幅>
配列番号2に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にDIGを結合させたもの、配列番号3に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にFITCを結合させたもの、配列番号4に示す塩基配列から成るプライマーの5’末端にビオチンを結合させたものそれぞれ用いて、前記ゲノムDNAをテンプレートとしたPCRによって、SNPを含む配列番号5に示す塩基配列を有する検出対象の核酸の増幅を行った。
(1)ゲノムDNAを20ng/μlとなるようにTEで濃度調整した。
(2) 表2に示す通り、試薬を被検体分調製した。
(3)調製した試薬をPCR用チューブに20μlずつ分注した。
(4)被検体溶液を(3)のPCR用チューブに1μlずつ加えた。
(5)PCR用チューブをサーマルサイクラー「Gene AmpPCRsystem9700(Applied Biosystems社製)」にセットして、表3に示す条件によりPCR反応を行った。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
上記手法により、被験者1〜9の被検体について標的核酸の増幅反応を行った。
また、配列番号6に示す塩基配列から成る核酸の5’末端にDIGを結合させたものと、配列番号7に示す塩基配列から成る核酸の5’末端にビオチンを結合させたものとからなる二重鎖の人工合成標的核酸(I)を調製し、配列番号8に示す塩基配列から成る核酸の5’末端にFITCを結合させたものと、配列番号9に示す塩基配列から成る核酸の5’末端にビオチンを結合させたものとからなる二重鎖の人工合成標的核酸(II)を調製し、これら人工合成標的核酸(I)及び(II)を混合して、人工合成標的核酸(I)及び(II)がそれぞれ100nMになるようにTEを用いて濃度調整して、陽性コントロールとした。またTEを陰性コントロールとした。
【0077】
<標的核酸の検出>
前記工程で作製した、リガンドが結合されている標的核酸の検出を行った。
以下に各検出方法の手順及び検出結果を示す。
[実施例1]
図4に示す容器を用いて標的核酸の検出を行った。
(1)抗DIG抗体(DAKO社製、カタログNo:D5105)に感作させたラテックス粒子A(粒子径0.1μm、セラディン社製)の溶液を、緩衝液(200mM MOPSO(pH7.4)、4%デキストラン、100mM NaCl、0.1%アジ化ナトリウム)を用いて希釈し、金型成型により作製した図4に示す容器a(h;0.2μm、l;0.5μm、θ1;30°)をウェルとする96ウェル反応プレートに、一つのウェルにつき50μlずつ分注した。
(2)抗ビオチン抗体(DAKO社製、カタログNo:M0743)感作ラテックス粒子溶液を、前記緩衝液を用いて希釈し、前記96ウェルプレートに、一つのウェルにつき50μlずつ分注した。
(3)被検体、陽性コントロール及び陰性コントロールを各20μlずつ添加して、良く分散させた。
(4)室温で5分間静置後、陽性コントロール、陰性コントロールと比較して、被検体の沈降物の容器底面における捕捉分布を観測し、陽性、陰性を判定した。
【0078】
[実施例2]
抗DIG抗体に感作させたラテックス粒子Aの溶液の代わりに、抗FITC抗体(DAKO社製、カタログNo:D5101)に感作させたラテックス粒子B(粒子径10μm、マグスフェア社製)の溶液を用い、容器aの代わりに金型成型により作製した図4に示す容器b(h;20μm、l;50μm、θ1;30°)をウェルとする96ウェル反応プレートを用いたこと以外は実施例1と同様の手法にて、標的核酸の検出を行った。
【0079】
[実施例3]
図5に示す容器を用いて標的核酸の検出を行った。
容器aの代わりに、金型成型により作製した図5に示す容器c(L;0.05μm、d;0.03μm、θ2;30°)をウェルとする96ウェル反応プレートを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、標的核酸の検出を行った。
【0080】
[実施例4]
抗DIG抗体に感作させたラテックス粒子Aの溶液の代わりに、抗FITC抗体(DAKO社製、カタログNo:D5101)に感作させたラテックス粒子Bの溶液を用い、容器cの代わりに金型成型により作製した図5に示す容器d(L;100μm、d;60μm、θ2;30°)をウェルとする96ウェル反応プレートを用いたこと以外は実施例3と同様の手法にて、標的核酸の検出を行った。
【0081】
[実施例5]
図8に示す容器を用いて標的核酸の検出を行った。
(1)96ウェルプレート「イモビライザーアミノロックウェルモジュールプレート(Nunc社製、カタログNo:436023)」の底面に、従来公知の方法に従って抗ビオチン抗体を結合させた。
(2)前記緩衝液を一つのウェルにつき50μlずつ分注した。
(3)被検体、前記陽性コントロール及び前記陰性コントロールを各20μlずつ分注した。
(4)5分間室温で静置した。
(5)抗DIG抗体を結合した磁性微粒子「Dynabeads M−450 Epoxy(DYNAL社製、カタログNo:DB14001)」の溶液を、一つのウェルにつき50μlずつ分注してよく分散させた。
(6)5分間室温で静置した。
(7)プレートの底面外側より磁石をあて、陽性コントロール、陰性コントロールと比較して、磁性微粒子の容器底面における分布パターンを肉眼あるいは画像処理等の手法により観察して、陽性、陰性を判定した。
【0082】
[実施例6]
抗DIG抗体を結合した磁性微粒子の代わりに、抗FITC抗体を結合した磁性微粒子を用いたこと以外は、実施例5と同様の手法にて、標的核酸の検出を行った。
【0083】
(判定結果)
以上、実施例1〜6の検出結果と、該検出結果に基づく総合的な判定結果を表4に示した。総合的な判定として、実施例1〜6の判定結果のうち少なくとも3つの検出結果が同じであれば、その結果を最終的なタイピング結果とした。そして、本発明により、標的核酸の検出を高精度に行うことができることが確認された。
【0084】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、臨床検査の簡便化、低コスト化等に好適であり、医療関連分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】標的核酸を得る方法を示す概念図である。
【図2】受容体が結合された微粒子を示す図である。
【図3】標的核酸と連結されて凝集を生じる時の微粒子を示す概念図である。
【図4】本発明の容器の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の容器の他の例を示す断面図である。
【図6】図4に示す容器を用いた場合の沈降物捕捉分布の一例を示す図である。
【図7】図5に示す容器を用いた場合の沈降物捕捉分布の一例を示す図である。
【図8】本発明の容器の他の例を示す断面図である。
【図9】受容体が結合された磁性微粒子を示す図である。
【図10】標的核酸を介して、図8に示す容器及び図9に示す磁性微粒子を連結した状態を示す概念図である。
【図11】図10における磁性微粒子の分布パターンの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
30・・・標的核酸、31・・・第一のリガンド、32・・・第二のリガンド、33・・・第一の微粒子、331・・・第一の受容体、34・・・第二の微粒子、341・・・第二の受容体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドが結合された、標的核酸の検出方法であって、
前記第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が複数結合された第一の微粒子、及び前記第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された第二の微粒子を調製する工程と、
底面に沈降物捕捉部を有する容器内において、前記標的核酸を含有している可能性のある試料、前記第一の微粒子及び第二の微粒子を混合する工程と、
前記混合工程後に、第一のリガンドと第一の受容体との結合及び第二のリガンドと第二の受容体との結合を介してそれぞれ連結された前記標的核酸と前記第一の微粒子及び第二の微粒子からなる凝集物並びに/又は前記第一の微粒子及び第二の微粒子の沈降物の、前記容器底面における捕捉分布を観測する工程を有することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項2】
検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドが結合された、標的核酸の検出方法であって、
前記第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が底面に複数結合された容器を調製する工程と、
前記第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された磁性微粒子を調製する工程と、
前記容器内に、前記標的核酸を含有している可能性のある試料及び前記磁性微粒子を添加する工程と、
該添加工程後に、前記磁性微粒子に対して前記容器外側より磁力を印加して該容器底面における磁性微粒子の分布を観測する工程を有することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の検出方法と、請求項2に記載の検出方法をいずれも行うことを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法において、濃度既知の標的核酸を含有している試料(1)を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有していない試料(2)を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有している可能性のある試料(3)を用いた時の観測結果とを比較して、前記試料(3)中の標的核酸の有無又は濃度を確認することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法において、既知の異なる濃度の標的核酸を含有している試料を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有している可能性のある試料(4)を用いた時の観測結果とを比較して、前記試料(4)中の標的核酸の有無又は濃度を確認することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項6】
前記リガンドが、親水性有機化合物、ジゴキシゲン、フルオロセイン、アレクサ、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、アミノ酸残基数が6以上のポリペプチド、単糖が2以上結合した糖鎖、ビオチン、タンパク質、ポリヒスチジン、HA、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Flag)及びこれらの誘導体からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項7】
前記標的核酸が、第一のリガンドを結合させた第一のプライマー、及び第二のリガンドを結合させた第二のプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法によって調製されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項8】
前記標的核酸が、第一のプライマーを用いて、第一のリガンドを結合させたヌクレオチドを少なくとも一つ取り込ませながら、さらに第二のプライマーを用いて、第二のリガンドを結合させたヌクレオチドを少なくとも一つ取り込ませながら、ポリメラーゼ連鎖反応法によって調製されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項9】
前記標的核酸が複数の異なる種類であり、これら標的核酸中の第一及び第二のリガンドのうち少なくとも一方は標的核酸の種類ごとに異なることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項10】
前記標的核酸が生体由来であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項11】
前記第一及び第二の微粒子が、粒径0.1〜10μmであり、互いに光学的に区別可能であることを特徴とする請求項1及び3〜10のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項12】
複数の前記容器が同一プレート上に設けられており、各容器の容量が0.1〜0.5mlであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項13】
前記容器の沈降物捕捉部は、すり鉢状をなす底面に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸が同心円状に配されたものであり、中心から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)が0.2〜20μm、中心から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)が0.5〜50μmであり、山と中心とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)が15〜45°であることを特徴とする請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項14】
前記容器の沈降物捕捉部は、すり鉢状をなす底面に、複数個の凹部が独立して設けられたものであり、底面と水平面とのなす角度(θ2)が15〜45°であることを特徴とする請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項15】
前記凹部の、開口部の直径(L)が0.05〜100μm、深さ(d)が0.03〜60μmであることを特徴とする請求項14に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項16】
請求項13に記載の検出方法と、請求項14又は15に記載の検出方法をいずれも行うことを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項17】
前記磁性微粒子の粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項2〜10及び12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項18】
前記容器が、底面が略半球面状もしくは略円錐面状であり、底面と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であることを特徴とする請求項2〜10、12及び17のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項19】
請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、
すり鉢状をなす底面に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸が同心円状に配され、中心から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)が0.2〜20μm、中心から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)が0.5〜50μmであり、山と中心とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器。
【請求項20】
請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、
すり鉢状をなす底面に、複数個の凹部が独立して設けられ、底面と水平面とのなす角度(θ2)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器。
【請求項21】
前記凹部の、開口部の直径(L)が0.05〜100μm、深さ(d)が0.03〜60μmであることを特徴とする請求項20に記載の標的核酸の検出用容器。
【請求項22】
請求項2〜10、12及び17のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、
底面が略半球面状もしくは略円錐面状であり、底面と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか一項に記載の容器が、同一プレート上に複数個設けられていることを特徴とする標的核酸の検出用容器。
【請求項1】
検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドが結合された、標的核酸の検出方法であって、
前記第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が複数結合された第一の微粒子、及び前記第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された第二の微粒子を調製する工程と、
底面に沈降物捕捉部を有する容器内において、前記標的核酸を含有している可能性のある試料、前記第一の微粒子及び第二の微粒子を混合する工程と、
前記混合工程後に、第一のリガンドと第一の受容体との結合及び第二のリガンドと第二の受容体との結合を介してそれぞれ連結された前記標的核酸と前記第一の微粒子及び第二の微粒子からなる凝集物並びに/又は前記第一の微粒子及び第二の微粒子の沈降物の、前記容器底面における捕捉分布を観測する工程を有することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項2】
検出対象の核酸に種類の異なる第一のリガンド及び第二のリガンドが結合された、標的核酸の検出方法であって、
前記第一のリガンドと特異的に結合する第一の受容体が底面に複数結合された容器を調製する工程と、
前記第二のリガンドと特異的に結合する第二の受容体が複数結合された磁性微粒子を調製する工程と、
前記容器内に、前記標的核酸を含有している可能性のある試料及び前記磁性微粒子を添加する工程と、
該添加工程後に、前記磁性微粒子に対して前記容器外側より磁力を印加して該容器底面における磁性微粒子の分布を観測する工程を有することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の検出方法と、請求項2に記載の検出方法をいずれも行うことを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法において、濃度既知の標的核酸を含有している試料(1)を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有していない試料(2)を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有している可能性のある試料(3)を用いた時の観測結果とを比較して、前記試料(3)中の標的核酸の有無又は濃度を確認することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法において、既知の異なる濃度の標的核酸を含有している試料を用いた時の観測結果と、該標的核酸を含有している可能性のある試料(4)を用いた時の観測結果とを比較して、前記試料(4)中の標的核酸の有無又は濃度を確認することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項6】
前記リガンドが、親水性有機化合物、ジゴキシゲン、フルオロセイン、アレクサ、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、アミノ酸残基数が6以上のポリペプチド、単糖が2以上結合した糖鎖、ビオチン、タンパク質、ポリヒスチジン、HA、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Flag)及びこれらの誘導体からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項7】
前記標的核酸が、第一のリガンドを結合させた第一のプライマー、及び第二のリガンドを結合させた第二のプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法によって調製されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項8】
前記標的核酸が、第一のプライマーを用いて、第一のリガンドを結合させたヌクレオチドを少なくとも一つ取り込ませながら、さらに第二のプライマーを用いて、第二のリガンドを結合させたヌクレオチドを少なくとも一つ取り込ませながら、ポリメラーゼ連鎖反応法によって調製されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項9】
前記標的核酸が複数の異なる種類であり、これら標的核酸中の第一及び第二のリガンドのうち少なくとも一方は標的核酸の種類ごとに異なることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項10】
前記標的核酸が生体由来であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項11】
前記第一及び第二の微粒子が、粒径0.1〜10μmであり、互いに光学的に区別可能であることを特徴とする請求項1及び3〜10のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項12】
複数の前記容器が同一プレート上に設けられており、各容器の容量が0.1〜0.5mlであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項13】
前記容器の沈降物捕捉部は、すり鉢状をなす底面に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸が同心円状に配されたものであり、中心から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)が0.2〜20μm、中心から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)が0.5〜50μmであり、山と中心とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)が15〜45°であることを特徴とする請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項14】
前記容器の沈降物捕捉部は、すり鉢状をなす底面に、複数個の凹部が独立して設けられたものであり、底面と水平面とのなす角度(θ2)が15〜45°であることを特徴とする請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項15】
前記凹部の、開口部の直径(L)が0.05〜100μm、深さ(d)が0.03〜60μmであることを特徴とする請求項14に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項16】
請求項13に記載の検出方法と、請求項14又は15に記載の検出方法をいずれも行うことを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項17】
前記磁性微粒子の粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項2〜10及び12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項18】
前記容器が、底面が略半球面状もしくは略円錐面状であり、底面と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であることを特徴とする請求項2〜10、12及び17のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項19】
請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、
すり鉢状をなす底面に、その径方向断面が鋸歯状である複数の凹凸が同心円状に配され、中心から外側へ向けて山から谷を結ぶ第一の傾斜面の長さ(h)が0.2〜20μm、中心から外側へ向けて谷から山を結ぶ第二の傾斜面の長さ(l)が0.5〜50μmであり、山と中心とを結ぶ直線が水平面とのなす角度(θ1)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器。
【請求項20】
請求項1及び3〜12のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、
すり鉢状をなす底面に、複数個の凹部が独立して設けられ、底面と水平面とのなす角度(θ2)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器。
【請求項21】
前記凹部の、開口部の直径(L)が0.05〜100μm、深さ(d)が0.03〜60μmであることを特徴とする請求項20に記載の標的核酸の検出用容器。
【請求項22】
請求項2〜10、12及び17のいずれか一項に記載の標的核酸の検出方法で用いる容器であって、
底面が略半球面状もしくは略円錐面状であり、底面と水平面とのなす角度(θ3)が15〜45°であることを特徴とする標的核酸の検出用容器。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか一項に記載の容器が、同一プレート上に複数個設けられていることを特徴とする標的核酸の検出用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−2948(P2008−2948A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172522(P2006−172522)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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