説明

標的療法のための画像ベースの計画方法及び装置

本発明は、一般に生物医学デバイスに関する。特に、本発明は、所与の標的造影剤の個別の4D再分布を考慮する標的投薬療法のための患者ごとに最適化された処置計画を供給する方法及び装置を与える。臨床予後における改善は、病気対応及び生存率を鑑み、及び/又は生活の質を鑑み実現されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、より効率的な投薬処置プログラムを提供する生物医学デバイス及び方法に関する。更に、本発明は、個別化された投薬処置スキーム及び改善された医療予後のための患者における放射性標識薬物の生体分布の4Dイメージングに関する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンといった人間における多くの病気は、標的を絞らないものではなく(non-targeted)、標的を絞って(targeted)システム的に投与される投薬により一層特別に処置されることができる。しかしながら、標的処置スキーム(例えば、免疫療法)における標的造影剤の生体分布は、しばしば患者ごとに強い変動を示す。結果として、副作用を抑えつつ有益な効果を最大限に発揮させるために必要とされる投薬要件は、同様に患者ごとに非常に異なる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
にも関わらず、現在の慣行では、1つの投薬がすべてに適合する(one-dose-fits-all)という概念に基づかれるか、又は単純に体重あたり、若しくは体表面積あたりに基づかれて、可能であれば、絶対最小値及び/又は最大値の制限を伴い、投薬が行われることがしばしばである。これは、患者固有の外部放射線処置スキームのデザインに日常的に注ぎ込まれる、計画のための努力とは明らかに異なる。
【0004】
標的療法に対する現在の投薬方法は、特定の患者における標的造影剤の詳細な空間的及び時間的生体分布を考慮していない。たとえ薬物が体重あたり又は体表面積あたりに基づき投与されるとしても、この分布は、患者ごとに非常に異なる場合がある。患者間の変動から生じる最も好ましくない生体分布であっても安全であるように、個別の生体分布を考慮しない投薬推奨量は、異なる患者にわたって平均され、患者固有の制限量より低いように拘束される(例えば、危険な臓器への投薬量により規定される)。結果として、薬物の効果は、異なる患者にわたって平均され、患者自身の固有の投薬限界で各患者に薬を投与する場合に達成できる効果を下回ることになる。
【0005】
患者固有の薬量測定が実行されたとしても、現在では、複合表示平面イメージングに基づかれるものが多い。しかし、その場合でも、原理上は平面イメージングが人体の複雑な3Dジオメトリにおいて定量的な結果を与えることを期待することができない。薬量測定における個別の断層撮影情報を含めようとする貴重な試みの一つは、Sgouros, G.らによる「Patient-Specific, 3-Dimensional Dosimetry in Non-Hodgkin's Lymphoma Patients Treated with 131I-anti-B1 Antibody: Assessment of Tumor Dose-Response.」、J Nucl Med 44(2)、260〜268頁に記載され、その全体及びすべての目的のため参照により本書に含まれる。Sgourosらが用いる個別の3D情報の収集方法は、SPECTイメージングである。しかしながら、Sgourosらのアプローチは、絶対的な3D薬量測定には関連しない。むしろ、SPECTにより測定される3D活動分布が、平面イメージングにより測定されるような腫瘍ごとの累積カウントに基づき注目する腫瘍領域ごとに正規化されるものである。更に、3Dデータが通常一度に一つの箇所で取得されるので、実際の4Dデータに基づかれるものとはなっていない。
【0006】
更に、Sgourosらのアプローチにおける画像ベースの薬量測定は、腫瘍領域に対してのみ行われ、危険な臓器に対しては行われない。最後に、薬量測定からは、何ら治療計画は得られない。
【0007】
Fullerらによる米国特許出願公開第2004/0225174 A1号は、小線源治療を用いる放射線量の配置を最適化する方法を記載する。その方法は、放射線シードの正確な外科的配置を決定するため、患者の超音波及びCTイメージングを必要とする。本発明は、生体構造データのみに基づき放射線シードの分布を計画する方法を提案し、部分的に、標的造影剤の効能及び薬理学的データに関する患者固有の画像モデリングに基づく、治療的投薬計画の最適化のための方法又は装置を想定しない。
【0008】
Groenらによる米国特許出願公開第2004/0023211 A1号は、分布ベースの薬物動態モデル(population based pharmacokinetic model)と表現型耐性検査との組み合わせを用いて、薬物療法を最適化するシステムを記載する。しかしながら、この方法は、患者における標的造影剤の濃度の4Dイメージングを使用することは想定しておらず、各薬物に対する各個別の患者における薬物濃度の定量的な監視を実行する可能性を明確に否定している。
【0009】
Liangらによる米国特許出願公開第2004/0015070 A1号は、生体構造領域の3Dシミュレーションを与えるシステムを記載する。それは、可能性としてのリスク及び有害な効果を予想及び評価するため、ユーザが「仮想的な」インターベンションを実行することを可能にする。しかしながら、この発明は、投薬計画を最適化する目的で患者における対時間での標的造影剤の濃度の画像化を教示又は提案するものではない。
【0010】
Wessolらによる米国特許出願公開第2002/0046010 A1号は、患者における領域を通る放射性粒子の動きをモデル化することを介して放射線治療薬量測定計画を改善するシステムを記載する。しかしながら、この方法は、最適な全体の処置戦略を決定する際に、患者固有な薬理的又は薬物動態的データのモデル化を必要とするステップを教示又は提案するものではない。
【0011】
Wessolらによる米国特許出願公開第2002/0046010 A1号は、3D生体構造情報に基づき埋め込み型生物医学デバイスを製造するシステム及び方法を記載するが、所与の標的造影剤に対する処置の効能を最適化するのに患者固有な薬理的又は薬物動態的データをモデル化する方法を教示又は提案するものではない。
【0012】
Chenらによる米国特許第5,684,889号は、対象物をスキャンし、イメージング造影剤の強度の画像を生成することを反復することにより、イメージング造影剤の動力学を測定するシステム及び方法を記載する。それは、対象物の処置計画を開発するのに使用されることができる。しかしながら、この方法は、治療的造影剤の生体分布の予測的なモデリングに対する4D生体分布マップを生成するのに診断的なイメージング造影剤を使用することは教示又は提案されていない。更に、'889特許は、患者固有の処方計画を最適化するために臨床的で患者固有なデータを使用することを想定できない。
【0013】
上記参照された文献における特徴及び欠点の記述は、背景目的としてのみ意図され、本発明の利点を強調し、その利点への文脈を与えることを意図するにすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、副作用を抑えつつ有益な効果を最大化する標的投薬療法のための患者固有の処置計画へと、患者の4D医療画像を変換する方法及び装置に関する。この処置計画の本質は、1つの特有な標的投薬処置に対する一人の固有の患者の適格性に関する単純なyes/noの決定から、標的投薬処置を含む療法の組み合わせを用いる洗練された処置計画にまでの広い範囲にわたることができる。
【0015】
本発明の1つの側面は、4Dイメージングを実行する装置に関する。その装置は、例えばPET、SPECT、X線CT、MR、超音波又は光学イメージングを含む高感度のイメージングモダリティで得られる医療イメージングデータのための4D画像処理及びレジストレーションユニットと、可能であれば薬物動態モデルを用いて、多数の時間点に対して測定されたボクセル又は3D領域あたりの画像強度から、診断バージョンの標的造影剤に関する対時間での濃度曲線を推定するユニットと、その診断バージョンの標的造影剤の濃度曲線から、治療バージョンの標的造影剤のボクセル又は3D領域あたりの濃度の時間的挙動及び/又は対時間での積分を推定するユニットと、その推定された治療造影剤濃度のマップに基づき、患者固有の治療投与手順を生成するユニットと、その治療計画の効果(及び可能であれば有害度)の推定を計算するオプションのユニットとを有する。
【0016】
本発明の別の側面は、4D生体分布イメージングを実行する方法に関する。1つの実施形態において、本発明の方法は、患者固有の治療投与手順を生成するため、個人における薬物又は標的造影剤の対時間での生体分布のイメージングを実行するステップに関する。この実施形態の側面は、標的造影剤を診断形式で患者に投与するステップと、その診断的標的造影剤の患者への投与後、時間期間にわたり系列的な3次元画像を取得するステップとを有する。標準的なイメージング手順に基づき、例えば、PET、SPECT、X線CT、MR、超音波又は光学イメージングを用いて、高品質画像が得られることができる。別の側面では、本発明は、時間的経過にわたり患者における診断的標的造影剤のイメージングをするステップを有する。方法の1つの側面は、例えば薬物動態モデルの使用を介して、その診断形式の標的造影剤の濃度の第1の4Dマップを推定するステップを含む。本発明の別の側面では、その方法は、その診断形式の標的造影剤の濃度の第1の4Dマップを用いて、その診断形式及び治療形式の造影剤間での物理的及び生物動力学的特性の差異も考慮した、その治療形式の標的造影剤の濃度の第2の4Dマップを推定するステップを有する。更なる側面においては、本発明の方法は、その治療的標的造影剤に関する推定された4D濃度マップを用いて、患者固有の治療投与手順を生成するステップを有する。追加的な側面においては、本発明の方法は、その治療計画の効果と可能性としての有害度との推定をオプションで計算する。
【0017】
本発明の利点は、所与の標的造影剤の個別の4D生体分布を考慮した標的薬物療法に対する個々の患者に対して最適化された処置計画により、病気応答及び生存率を鑑み、及び生活品質を鑑み、臨床予後における改善が実現されることができる点にある。
【0018】
本発明のシステム、方法及びプロセスに関する追加的な有利な特徴及び機能は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。本発明の背景を説明するため、及び特定の場合にはその実行に関する追加的な詳細を与えるために本書で使用される文献及び他の素材は、参照により含まれ、利便性のため、添付の参考文献において参照される。
【0019】
明示的に反対のことが述べられない限り、以下の説明及び規定は、従来において知られる用語の規定を補足する。
【0020】
陽電子放出断層撮影(PET又はPETスキャン)は、陽電子の放出からの放射線の検出に基づき生理的な画像を取得することに関する診断的検査である。陽電子は、患者に対して投与される放射性物質から放出される小さな粒子である。この技術を用いて明らかにされた人体の連続画像が、様々な病気を評価するのに使用される。
【0021】
PETスキャンは、ガンを発見するのに、及びガンにおける生化学的な変化を特徴付ける事によりガン治療の効果を検査するのに最も頻繁に使用される。これらのスキャンは全身で実行されることができる。心臓のPETスキャンは、心筋に対する血流を決定するため、及び冠動脈疾患の兆候の評価を手助けするために使用されることができる。機能低下を示す心臓領域が、先の心臓発作の結果として瘢痕しているのではなく、つまり心筋梗塞が起きているのではなく、正常に機能しているかどうかを決定するのにも、心臓のPETスキャンが使用されることができる。心筋かん流調査と組み合わせると、PETスキャンは、機能していない心筋と血管形成又は冠動脈バイパス手術等の処置により利益を受ける心筋とを差別化することを可能にする。上記処置は、適切な血流を再度確立し、心臓の機能を改善することになるものである。脳のPETスキャンは、原因不明の記憶障害を持つ患者、脳腫瘍が疑わしい又は脳腫瘍が発見された患者、又は医学的治療の効果が少ない(responsive to)発作性疾患を持つ患者、これらの原因により手術が必要と思われる患者を評価するのに使用される。
【0022】
検査を開始する前に、放射性物質が生産され、多くの場合通常グルコースである生化学複合物に付けられるか又は標識される(tagged)。その生化学複合物は、時には水又はアンモニアである。この物質が患者に対して投与されると、放射能は体の適切な領域に集まり、PETスキャナで検出される。放射能は非常に短期間で消滅することが多く、その量は非常に小さいため、人体の正常な機能に影響を与えることはない。
【0023】
PET画像における異なる色又は輝度の度合いは、組織又は器官の機能の異なるレベルを表す。例えば、健康な組織はエネルギー源としてグルコースを使用するので、標識グルコースをある程度集める。それがPET画像において現れることになる。しかしながら、正常組織よりも多くのグルコースを使用するガン組織は、より多くその物質を集めることになり、PET画像では正常組織より明るく見える。
【0024】
放射性物質は、静注として投与される(しかし、既存の静脈ラインを介して与えられる、又はガスとして吸入される場合もある)。その物質が全身を巡り、調査対象の組織に集まるには約30〜90分要することになる。この間、患者は静かに休んでいなければならず、投与された物質の局所化を変化させてしまう激しい動き又は散歩を控えなければならない。その後、スキャンが開始される。これは、30〜45分かかる。
【0025】
PETは身体機能の調査を可能にするので、例えばCT又はMRIといった他のイメージング検査を用いて生体構造における変化が明らかとなる前に、病気を示唆する生化学処理における変化を医師が発見するのに役立つ。より大きな診断作業(work-up)の一部であるとき、PETスキャンの値は強調される。これはしばしば、CT又はMRIといった他のイメージング検査とPETスキャンとの比較を伴う。
【0026】
単光子放出(コンピュータ)断層撮影(SPECT又はSPET)は、ガンマ光線を放出する放射性医薬品(単光子放出物又は陽電子放出物)から断面画像を生み出す断層的核イメージング技術である。断層撮影イメージングにおいて使用されるオリジナルの概念に基づき、SPECTデータが得られる。検出器ヘッドを頭尾軸の周りで回転することにより、画像化される身体部分の複数の表示が得られる。適切な再構成技術を用いて、ガンマカメラの軸方向の撮像野により決定される軸方向撮像野FOVで断面画像が計算される。
【0027】
SPECTカメラは、患者軸の周りを回転することができるか、又は取得時間を短縮するため2若しくは3個のカメラからなるかのいずれかである標準的なガンマカメラである。2、3のシステムでは、コンピュータ断層撮影CTと同様なリング状の検出器アレイを用いるが、この種のシステムは、広くは使用されていない。データ取得は少なくとも半円(180°)にわたるが(これは心臓イメージングのため幾つかのシステムにより使用されるものである)、ほとんどは完全な円を用いる。データ再構成は、放出された光線が患者内で減衰されるという事実も考慮しなければならない。即ち、患者内部の奥から発する光子は周囲の組織によりかなり減衰されることになる。
【0028】
CTスキャンにおいては吸収がイメージング処理の本質である一方、SPECTにおいては、減衰が画像を劣化させる。従って、減衰訂正なしに再構成されたヘッドのデータは、その深いところにある物に比べて、周辺の脳構造の実質的なアーチファクト(artificial)強調を示す場合がある。この問題に対処する最も簡単な方法は、再構成前にデータをフィルタリングすることである。3頭カメラで使用される、より優雅なしかしより手間のかかる方法は、2つのカメラヘッドの間にガンマ光線ライン源を導入することである。それは、患者により部分的に吸収された後反対側カメラヘッドにより検出される。その後、他の2つが放出データを収集する間、このカメラヘッドは、送信データを生み出す。送信データを収集するカメラは、適切なガンマ光線を収容するため、収束コリメータで適合されなければならないことに留意されたい。
【0029】
磁気共鳴イメージング(MRイメージング)は、無線周波数RFパルスにより乱された後、再び向きを整える原子核(例えば水素原子核、つまり陽子)からなるスピン系から生じる無線周波数信号のバーストを、強い磁場(B0磁場)と傾斜磁場とを用いて局所化するイメージング方法である。MRイメージングは、任意の方向における高分解能、高コントラストな2次元画像スライスを生み出すが、真のボリュームイメージング技術でもあり、3次元ボリュームが直接測定されることもできる。
【0030】
「B0磁場」、いわゆる磁束密度又は磁気誘導は、MRイメージャにおいて使用される主磁場である。現在のMRシステムにおいては、主磁場は0.02から7テスラまでの、対時間で一定値を持つものである。超伝導磁石を用いて0.5T以上の磁場強度が生成される。高磁場強度は、好適な信号対ノイズ比(SNR)を持つ。
【0031】
MRイメージングは更に、速度及び運動の高次モーメントを定量化する機能を持ち(流量定量化参照)、従って、血流も定量化することができる。MRイメージングの適用分野は、ここ数十年で着実に広がった。現在、MRイメージングは、脳及び背骨のほとんどの病気における好ましい断面画像イメージングモダリティであり、筋骨格系の疾患を画像化する際主要な重要性を帯びている。頭、首及び骨盤におけるMRイメージングは、臨床的な使用の実質的なレベルを達成し、超高速MRイメージング技術の出現と共に腹部、腎臓及び胸部における用途も急速に増大している。
【0032】
MRイメージングは、NMR現象を利用する。即ち、多くの原子核がスピンと呼ばる特性を示すという事実を利用する。これらのスピンは、外部磁場において方向付けされる。外部無線周波数パルスは、この方向付けされた状態を乱し、原子核にエネルギーを吸収させる。そのエネルギーは後に再放出される。再放出された信号の強度は、スピンを乱すのに使用されたパルスシーケンスと照射した組織とに依存する。NMR現象は多くのコントラスト機構を持つので、MRイメージングは非常にコントラストに優れている。NMR現象は、T1緩和及びT2緩和処理により主に決定されるが、移動陽子の密度(陽子密度)、磁化率効果、磁化移動(MT)、拡散及び流動効果といった他のパラメタが、関連するコントラスト決定パラメタとされることもできる。MRイメージングは、追加的な傾斜磁場を用いる事により実現されるNMR信号の空間的な局所化を必要とする。結果として、信号挙動が小さなボリューム要素(ボクセル)において観測されることができる。画像データ再構成は、現在、フーリエ変換イメージングと呼ばれる技術を用いて最も頻繁に実行される。
【0033】
MRイメージングにおいて測定される信号は、弱く、人体組織における非常に多数の陽子スピンが原因で観測されることができるに過ぎない。従って、イメージングにおける主な関心事は、画像において適切な信号対ノイズ比SNRを得ることである。これは、複数の方法で実現されることができる。まず、主磁場強度における増加が、低磁場強度においてはほぼ2次的に、高磁場強度においては線形的にSNRを増大させる。複数の測定を平均化することも、SNRを改善するが、時間の平方根でのみ増大するに過ぎない。SNRを改善するのに更に広く使用される戦略は、局所コイル(表面コイル)の使用である。
【0034】
NMR(核磁気共鳴)現象は、陽子や電子といった多くの元素粒子はスピンと言われる固有の角モーメントを持つという前提に基づく、量子理論の枠組み内で理解される物理現象である。NMR現象は、原子核、特にMRイメージングで関連するのは水素H原子核、即ち陽子のスピンに関してなされた物理的観測を扱うものである。
【0035】
NMRの基本的な原理は以下のようなものである。MRイメージングにおいては磁場強度0.01T〜7Tの強い外部B0磁場にサンプルが置かれる。この磁場内で、サンプルにおける核スピンは、B0磁場に沿って平行、又は逆平行な向きを向く。2つの状態の間には、

分のわずかなエネルギー差が存在する。ここで、γは磁気回転比であり、

は、Planck定数を2πで割ったものである。結果として、逆平行言い換えるとスピンダウン状態に対して、平行言い換えるとスピンアップ状態の分布には差がある。その差は、熱平衡における統計的機構の分布法則であるボルツマン分布により決定される。2つの状態のエネルギー差は非常に小さく、10-7電子ボルト(eV)のオーダであるので、スピンダウン状態ではなくスピンアップ状態にある105のスピンにおける1のオーダの非常に小さな超過しかない。(人体を含む)有機サンプルは、ccmあたりに非常に大量の水素スピンを含むので、強い磁場内に斯かるサンプルをこうして配置した結果は、にもかかわらず、知覚できる巨視的な磁化である。2つのスピンレベル間のエネルギーにより与えられる陽子エネルギーを持つ電磁波でサンプルが照射されるとき、熱平衡分布が乱されることになる。スピンは反転され(flipped)、スピンダウンレベルの増加したエネルギーを持つことになる。従って、多くのスピンのアンサンブルが全体の磁化を示すことになる。この磁化は、いずれかの旧式の磁化のように振舞うことになる。実際、スピンの反転は、旧式の物理の用語でいえば、主磁場の方向から離れての磁化を傾けること(フリップ角)に対応する。スピンアンサンブルの振る舞いは、Bloch式により決定され、主磁場の周りでのスピンの歳差運動(歳差)をもたらす。
【0036】
2種類の情報が得られることができる。旧式のNMR実験においては、周波数、及び照射波のエネルギーが特定の範囲にわたり集められる。スピンシステムが存在するときはいつでも、吸収又は共鳴(従って名前が付いている)が生じる。それは、照射波(電磁波)のエネルギーに対応するエネルギー差に正確にマッチする2つ(又は水素以外の他の原子核においてはそれ以上)のエネルギーレベルを持つ。対応する周波数は、La I/磁化移動と呼ばれる。スピンシステムが一度又は繰り返し励起されるとき、磁化、磁化率、運動及び流動効果、並びにスピン拡散は、信号強度に影響を与える。これらの現象は、MRイメージングにおいては重要である。
【0037】
サンプルのNMR分光法は、主磁場として非常に高い磁場強度を必要とする。なぜなら、異なる共鳴ラインがNMRスペクトルにおいて互いから好適に分離されることができるためである。医療MRイメージングは現在7Tまでの磁場強度を用いる。
【0038】
超音波イメージングは、超音波のすべての診断的な使用を表すのに用いられる語句である。すべての超音波検査は、超音波トランスデューサが、組織内に伝播する短いパルスの超音波を送信するというパルスエコー法に基づかれる。各パルスは、狭い超音波ビーム内を移動する。その形状は、トランスデューサの寸法、超音波波長、及び機械的又は電気的焦点の度合いにより決定される。超音波パルスの伝播速度(音速)は、媒体の弾性及び密度により決定され、体内の軟組織においてほぼ一定である(およそ1,540 m/s)。音響インピーダンスに変化があるときはいつでも、超音波のいくらかがエコーとしてトランスデューサに反射されるか、又は退行散乱される。各パルスの持続時間は、1〜2μsのオーダにあり、パルス反復周波数PRFは通常、1〜5 kHzである(1秒あたり1,000〜5,000パルス)。パルス送信の間、即ち、およそ時間の99.7〜99.9%は、トランスデューサはエコーの検出器として機能する。パルス送信からエコーの受信までの時間間隔(t)は、トランスデューサから反射器までの距離又は範囲(r)を決定するのに使用される。即ち、r = ct/2である。ここで、cは音速(およそ1,540 m/s)である。係数2は、一周分の移動距離2rを説明するために含まれる。
【0039】
検出されたエコーは、Aモード又はMモードといった1次元フォーマットで表示されることができるが、放射線学においては、2次元Bモードフォーマットがほとんど排他的に使用される。トランスデューサは、超音波ビームを送信し、それは、機械的又は電子的手段を用いて注目領域を通り一掃される。電子的なアレイスキャンでは、送信された超音波ビームが電子的に駆動される。トランスデューサの圧電性結晶によりエコーが検出される。そこでは、結晶の機械的変形が無線周波数(RF)電気信号に変換される。電気信号は、信号処理の複数のステップを経て、その後スキャンコンバータメモリに格納される。そこでは、画像が構築され、スキャンの間保持される。画像メモリにおける信号の垂直位置は、エコーの戻り時間により決定され、水平位置は、エコーが検出されたときのビーム軸(スキャンライン)の位置により決定される。画像メモリからの出力がデジタルアナログコンバータを介して、最終的にBモード画像が表示されるモニタに与えられる。
【0040】
こうして、超音波画像は、Aモード、Bモード及びMモードといった純粋な画像技術、並びに、カラードップラ超音波検査、パワードップラ超音波検査、時間ドメイン相関、連続波形CWドップラ及びパルスドップラ超音波といった血流のイメージング及び/又は測定のための様々な方法を有する。超音波は、人間の大人の可聴範囲を超える周波数、例えば、20,000 Hzを超える周波数を備える音波を用いる。医療診断においては、ほぼ2〜15 MHzの周波数範囲にある超音波が、断面画像を生成するのに、並びに血流を測定及び画像化するのに使用される。リアルタイム超音波においては、生理学的運動に追いつくよう十分高いフレームレートで超音波画像が取得される。ちらつき防止(flicker-free)ディスプレイは、1秒あたり少なくとも16フレームを必要とする。リアルタイム超音波画像は、2つの基本的な種類の器具により生み出され、1つは機械的スキャナであり、もう1つは、電子的アレイスキャナである。複合リアルタイムイメージングは、リアルタイムに複合画像を作成するデジタル超音波技術である。その画像は、複数の駆動されたスキャンを異なるスキャンライン角部(angulation)と組み合わせ、こうして古い静的なBスキャナの複合スキャンを近代的なリアルタイムデジタルイメージングと組み合わせることにより生成される。
【0041】
光学イメージングは、遺伝子表現及びたんぱく質リガンド相互作用の検出のためライフサイエンスにおける重要なツールである。光学アクセス又はラベリングの問題が原因で、多くの技術が体内用途には制限されるけれども、光学イメージングは、体内イメージングにおいても同様に増加的に使用される。吸収、反射、蛍光又は生物発光が、コントラスト源として使用されることができる。現在、これらの技術のほとんどは、主にマイクロスコープ・イメージング若しくは表面イメージング、又は小動物における実験的なイメージングに制限される。なぜなら、光の貫通深度が制限されるからである。しかしながら、近赤外線領域(600〜900 nm)の小さなスペクトル窓内の光は、これらの波長での吸収定数が比較的低いことから、組織内に10 cm以上貫通することができる。この窓における最低波長は、比較的高い血液(ヘモグロビン)吸収率により決定される。一方、900 nmを超える吸収は、水が原因によるものである。近赤外線(NIR)蛍光及び発光イメージングはこの光学窓を利用する。
【0042】
通常、特異性及び感度を高めるために光学コントラスト造影剤が使用されなければならない。蛍光イメージングにおいては、外部光源により蛍光プローブ(光学コントラスト造影剤)がアクティベートされ、異なった波長で信号が放出される。高感度電荷結合デバイス(CCD)カメラを用いて蛍光信号はキャプチャされることができる。蛍光検出の感度は、非常に高く、マイクロスコープを用いる設定においては、単一の分子を検出することも可能である。体内光学イメージングは、細胞培養研究又は動物モデルにおいては強力なツールであるが、人間の健康に対する現在の用途は一般的に、目及び皮膚の光学イメージング又は光学マンモグラフィといった「表面に近い」構造に限定されている。
【0043】
例えば、Pittsらによる米国特許第5,602,397号に開示されるように、CCDカメラに対するイオン化電荷のデジタル化された放射表現を与える経済的な光学イメージングデバイスがデザインされる。放射線感応デバイスと波長シフト物質との組み合わせは、光学イメージングデバイスが、特定のピクセル要素に対して、紫外線及び赤外線の組み合わされた任意の吸収放射線を送信することを可能にする。そのCCDカメラは、可視光画像に変換する。イメージングデバイスからの光強度は、結果として、X線フィルムにより形成されるものに類似する画像を生じさせる。
【0044】
「モンテカルロ」モデリングは、コンピュータモデルを用いてランダム成分を伴う現実世界の処理を調査する一般的な技術である。医療イメージングにおける典型的な例は、検出器ジオメトリを変化させるとき、線形性又は分解能といった画像特性における変化を調査することである。モンテカルロモデリングの原理は、関連するすべての要素の振る舞いが数学的に記述できるというものである。SPECTイメージングにおいては、例えば、組織の初期空間分布が一定のボクセル分解能で必要とされる。各ボクセルに対して、トレーサ活動(tracer activity)及び減衰係数が規定される。各ボクセルから、ポアソン確率分布関数に基づきランダムな時間点でガンマ光線が放出され、ランダムな方向に送られることができる。ガンマ光線が横切る各ボクセルにおいて、相互作用の機会がある。即ち、その光線は、反射され、一層少ないエネルギーで異なる方向に進み続ける場合がある。ガンマ光線が組織を回避し続ける場合、検出器に入るか、検出器を通りすぎる(miss)ことができる。検出器での相互作用も、モデル化されなければならない統計的法則に従う。例えば、ガンマ光線が相互作用する位置、放出する光子の数及び方向、及び光電管により抽出される態様といったものである。実際のモンテカルロシミュレーションにおいては、コンピュータプログラムがランダムに(従って「モンテカルロ」である)ボクセルの1つに放射性崩壊を生成し、検出器に向かって組織を通過して進むときの予測を計算する。各崩壊の結果は、真のイベント、散乱イベント又はミスのイベントのいずれかである。斯かる多数の崩壊がシミュレーションされた後、「検出器」に記録されたカウントから画像が再構成され、元の対象物と比較される。
【0045】
核医療における内部線量計算は通常、核医療協会の委員会による医療内部放射線線量(MIRD)により提供される技術、式およびリソースを用いる。MIRDの定式化は、任意のソース器官における放射性崩壊あたりの任意のターゲット器官における放射線の吸収線量を計算するのに、シンボル及び量の固有のセットを用いる。その計算は、放射性崩壊あたりの放出エネルギー、さまざまなターゲット器官に吸収されるその放出エネルギーの割合、これらの器官の質量、並びに注入された放射性物質の物理的崩壊及び生物的消滅の両方に関する。人体の標準化された数学的モデル(ファントム)及び標準化された生物動力学的モデルも使用される。コンピュータプログラム、MIRDose/OLINDAが、様々な放射性医薬品の単位投与活動あたりの線量テーブルを計算する。MIRD概念の詳細なレビューに関しては、例えば、すべての目的のためその全体において参照により本書に含まれる、Toohey, R.E., Stabin, M.D., Watson, E.E.による「AAPM/RSNA physics tutorial for residents: internal radiation dosimetry: principles and applications.」、Radiographics, 2000 Mar ? Apr; 20(2): 533 ? 46を参照されたい。
【0046】
薬物動態モデリングについて述べる。薬物動態モデルは、複雑な物理空間又は処理を表す比較的単純な数学スキームである。削減率の正確な決定にとって正確なPKモデリングは重要である。最も通常使用される薬物動態モデルは、a)1コンパートメント、及びb)2コンパートメントである。
【0047】
すべての薬物は最初に周辺のコンパートメント(Vt)に分散する前に中央コンパートメント(Vc)に分散する。薬物が組織コンパートメントで急速に均衡を保とうとする場合、実用的な目的のため、1つのボリュームターム(volume term)である明らかな分布ボリュームVdのみを用いる、より簡単な1コンパートメントモデルを使用することができる。周辺組織との緩やかな均衡を示す薬は、2コンパートメントモデルを用いて最適に表される。最初の、急速に減少する分布フェーズの間、薬は、中央コンパートメントから組織のコンパートメントへ移動している。二相性プロットの第2のフェーズの間、薬の減少は支配的な処理である。減少は1次のプロセスであるので、このフェーズのログプロット(log plot)は直線になる。
【0048】
1コンパートメントPKモデルは、組織コンパートメントと急速に均衡する薬物、例えばアミノグリコシド抗生物質に使用されることができる。しかしながら、組織コンパートメントと緩やかに均衡する薬物、例えばバンコマイシンには、2コンパートメントモデルが使用されるべきである。1コンパートメントモデルの血清レベル崩壊曲線のログスケールプロットは、直線を生み出し、一方、2コンパートメントモデルの血清レベル崩壊曲線のログスケールプロットは、二相線を生み出す。分布フェーズを考慮できないことは、減少率の推定における重大なエラーをもたらす可能性がある。
【0049】
本発明は、患者固有の療法的治療計画を得るため、標的造影剤の4次元(4D)生体分布イメージングを実行する方法及び装置を提供する。本書で使用される「標的造影剤」は、薬物分子、小さな分子薬物、放射性核種薬物、たんぱく質、ペプチド、抗体、ヌクレオチド、核酸等、又はこれらの合成を表すのに、それが診断的であるか、治療的であるかに関わらず一般的に使用される。それは、例えば、別の分子、病気の、感染した若しくは傷ついた器官、組織、又は細胞といった、相互作用する又はバインドする標的を持つ。「診断形式」の標的造影剤は、例えば、放射性標識薬物、例えば、放射性核種、X線造影剤といった造影剤、又は他の診断物質とすることができる。
【0050】
放射性核種は、診断、処置および調査のために使用される。ガンマ線を放出する放射性化学トレーサは、人間の生体構造及び特定の器官の機能に関する診断情報を提供することができる。これは、例えば、SPECT及びPETスキャンといったある形式の断層撮影を実行するのに有益である。放射性核種は、造血形式の腫瘍における処置の有望な方法でもある。これまでのところ、固形腫瘍の処置に対する成功が制限されている。生化学及び遺伝子学において、放射性核種は、分子にラベル付けし、DNA複製又はアミノ酸移転といった生体器官で生じる化学及び生理的処理を追跡することを可能にするのに使用される。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明の装置は、多数の時間点に対して測定される、ボクセル又は3次元(3D)領域あたりの画像強度から、薬物動態モデルを用いて診断的標的造影剤に対する対時間での3D濃度曲線を推定する第1の手段と、第1の4D濃度マップに基づかれ、かつ、例えば、その診断形式及び治療形式の標的造影剤間での物理及び生物動力学的差異といった特定の変数に対して訂正される治療形式の標的造影剤に対する4D濃度マップを推定する第2の手段と、治療的標的造影剤の推定4D濃度マップからのデータを用いて患者固有の治療的投与手順を生成する第3の手段とを有する。特定の実施形態において、本発明の第3の手段は、例えば、生体構造イメージング、危険な器官に対する線量制限、病気組織に対する線量要件、組み合わされた治療戦略、療法士からの助言、身長、性別、年齢、物理及び病態生理学的状態、遺伝子、環境及び同時並行している治療等といった個別の患者特性といった他の関連データの考慮も含む。他の実施形態では、線量プロファイルの正確な記述を実現するため、第3の手段がモンテカルロタイプの計算を利用する。
【0052】
画像強度は、連続した画像又は対時間で得られる画像強度の測定から決定可能である。いずれかの好ましい実施形態においては、画像強度は、例えば、画像強度の変化率、初期のアップテイク(up-take)画像強度、及び累積画像強度を含む。所与の造影剤に対する画像強度は、濃度の関数である。即ち、高い濃度は、結果としてより大きな強度を生じさせる。
【0053】
更に別の実施形態では、本発明の装置は、腫瘍制御の可能性、薬物効能、薬物有害度等に関する情報と組み合わせて治療手順データを用いて、その治療手順の効果及び有害度を予測する第4の手段をオプションで有する。
【0054】
本発明の装置のいずれかの好ましい実施形態においては、所与の機能を実行する手段が、コンピュータ、コンピュータシステム、コンピュータソフトウェア、アルゴリズム、又はこれらの組み合わせを有し、例えば、コンピュータモニタ又はプリンタといったグラフィック表示のための手段と、インターネット通信手段とをオプションで有する。好ましい実施形態は、例えば、実験濃度曲線データ、患者履歴データ、薬物リスク又は有害度データ、薬物ゲノム学的データ、薬理学データ、生体動力学データ、薬物効能データ、薬物相互作用データ、薬の物理特性を保持するデータ等を含む少なくとも1つのデータベースをオプションで有する。
【0055】
別の好ましい実施形態においては、本発明の方法が、患者固有の治療計画を生成するため、対時間で個々における薬物又は標的造影剤の4D生体分布のイメージングを実行するステップを含む。この方法の1つの実施形態は、標的造影剤を診断形式で患者に投与するステップ、患者に対する診断的標的造影剤の投与後、時間期間にわたり連続した3次元画像を取得するステップとを有する。標準的なイメージング手順に基づき、例えば、PET、SPECT、X線CT、MR、超音波又は光学イメージングを用いて、高品質画像が得られることができる。本方法の別の実施形態は、時間的経過にわたり患者における診断的標的造影剤のイメージングをするステップを有する。別の実施形態では、例えば薬物動態モデルの使用を介して、その診断形式の標的造影剤の濃度の第1の4Dマップを推定するステップを含む。更に別の実施形態では、その方法は、その診断形式の標的造影剤の濃度の第1の4Dマップを用いて、その造影剤の診断及び治療形式間での物理的及び生物動力学的特性の差異も考慮した、その治療形式の標的造影剤の濃度の第2の4Dマップを推定するステップを含む。更なる実施形態においては、本発明の方法は、その治療的標的造影剤に関する推定された4D濃度マップを用いて、患者固有の治療投与手順を生成するステップを有する。追加的な側面においては、本発明の方法は、その治療計画の効果と可能性としての有害度との推定をオプションで計算する。
【0056】
本発明は、更に、個別の患者に対し最適な線量投与計画を生成、提供及び送信するシステム、コンピュータプログラム、ビジネス方法、サーバーサイド及びクライアントサイドシステム、及び方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
一般的な説明及び以下の詳細な説明は例示であり、本発明の追加的な説明を与えるために意図され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
例1
ガンの放射免疫療法
【0058】
本発明の新規な装置及び方法が患者予後を改善するために利用されることができる。図1は、本発明の方法の概略を示す簡略化されたフローチャート図である(ステップ1〜7)。ステップ5でのサブステップ5a〜cへの分解は、ガンの放射免疫に対する例示的な実施形態に関する。
【0059】
本発明の方法を実行するプロセスにおける最初のステップとして(図1を参照して)、診断形式の標的造影剤(例えば、放射性核種薬)が、標準的な投与手順に基づき、患者に対して投与される(ステップ1)。診断形式の標的造影剤の投与の後には、例えば、生体構造情報を参照するためのX線CT又はMRとPET又はSPECTとを組み合わせて用いて、適切なイメージング手順に基づき患者における放射線核種薬の分布の動的又は連続的画像を取得することが続く(ステップ2)。次に、本発明の装置が、薬物動態モデル、ボクセルあたりの画像強度、及び/又は多数の時間点に対して測定される3D領域を用いて、対時間での定量的な4D濃度マップを推定するのに使用される(ステップ3)。このステップは、信号減衰、散乱、空間又は時間分解能の制限、放射線核種の動力学、曲線フィット、及び動力学モデリングのための4D濃度マップの訂正も含む。
【0060】
診断的及び治療的形式の標的造影剤での物理及び動力学的特性における可能性のある差異を考慮して、放射線核種を用いて生成される4D濃度マップから、4D生体分布データ(即ち、対時間での領域あたりの濃度)が、放射免疫線量の治療的形式に対して推定される(ステップ4)。
【0061】
本発明の例示的な実施形態において、ボクセル又は3D領域あたりの治療的放射線量マップが、例えばモンテカルロ法、MIRDスキームに基づくS値手法、又はカーネルベースの技術を用いて、治療的造影剤に対する4D濃度積分マップから推定される(ステップ5a)。このステップは、例えば、本発明の方法に基づき以前に得られた生体構造イメージングデータから治療的線量マップを計算するよう構成される追加的な手段により実行されることができる。次に腫瘍及び危険な器官により吸収される放射線の線量が計算される(ステップ5b)。このステップは、例えば、腫瘍に対する線量要件及び器官にとって危険な吸収放射線線量を計算するよう構成される更に別の手段により実行されることができる。その後、これらのデータは、患者固有の、又は患者に最適な治療的薬量投与計画を生成する追加的な手段により使用される(ステップ5c)。このステップは、オプションで、結合された治療戦略の評価及び、例えば、ガン専門医といった臨床専門家からの入力を含む。
【0062】
最後に、各個別の患者に対する治療的効果及び有害推定の観点から、すべてのデータが考慮される(ステップ6)。例えば、腫瘍制御の可能性、正常組織の合併症の可能性、及び投薬感度、生体利用効率、又は代謝に影響を与える可能性がある遺伝変異(例えば、小さなヌクレオチド多型)の観点からである。従って、結果として生じる治療手順は、最適な医療予後を与えるよう、患者ごとに基づき仕立てられることになる。斯かる改善は、標的放射線核種薬を用いて、危険な器官に対する放射線線量限界の観点から許容できる患者固有の最大放射線線量を腫瘍に供給することにより得られることになる。診断及び治療造影剤が1つの同じ物質である別の実施形態も想定される。その場合、治療造影剤の低線量投与は、診断ステップのために使用されることになるであろう。
【0063】
本書で与えられ説明されてきた実施形態及び詳細な実施例は、説明目的のものにすぎず、それを踏まえると、当業者に対しては様々な修正又は変更が提案されることになること、それらの修正又は変更が本願の精神及び範囲内に含まれること、及び添付された特許請求の範囲の範囲内と考えられることを理解されたい。本書で参照されるすべての出版物、特許及び特許出願は、すべての目的のためその全体において参照により本書に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】標的療法用の4D画像ベースの計画のための本発明の方法及び装置の概略を示す簡略化されたフローを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的又は動的に取得された3D画像を定量的に訂正し、及び生体構造基準上に空間的にマップさせる画像処理をする第1の手段と、
多数の時間点に対して測定されるボクセル又は3D領域あたりの強度から、診断バージョンの標的造影剤に対する対時間での対応濃度/活動曲線の推定を計算する第2の手段と、
前記診断バージョンの標的造影剤の濃度曲線から、治療バージョンの前記標的造影剤のボクセル又は3D領域あたりの濃度の時間的挙動及び/又は対時間での積分を推定する第3の手段と、
前記治療バージョンの造影剤の推定4D生体分布及び/又は対時間での積分に基づき、患者固有の治療投与手順を生成する第4の手段と、オプションで、特定の処置の効果、有害度、又はこの両者の推定を計算する第5の手段とを有する、4D医療イメージングデバイス。
【請求項2】
前記第4の手段が、可能性であれば、MIRD定式化に基づくS値法、モンテカルロシミュレーション、又はカーネルベースの手法を含む計算技術を用いて、前記治療バージョンの造影剤の対時間での推定濃度積分マップから、ボクセル又は3D領域あたりの治療的放射線線量マップを計算する手段を更に有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記治療的放射線線量マップに基づき、腫瘍及び危険な器官に対する吸収放射線線量を計算する手段を更に有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記腫瘍及び危険な器官に対する放射線線量に基づき、患者固有の治療的投与計画を生成する手段を更に有する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
医療イメージングを行う方法において、
標準化された手順に基づき、必要な場合に標的造影剤を診断形式で患者に投与するステップと、
標準化された手順に基づき、前記診断形式の標的造影剤の前記患者における分布の連続的又は動的なイメージングデータを取得するステップと、
前記診断形式の標的造影剤の濃度の定量的な4Dマップを推定するステップと、
治療形式の前記標的造影剤の濃度及び/又は対時間での積分の定量的な4Dマップを推定するステップと、
前記4D治療濃度マップ及び/又は対時間での積分に基づき、前記標的造影剤の投与を含む患者固有の治療的手順を生成するステップとを有する、方法。
【請求項6】
前記診断形式の標的造影剤の濃度の定量的な4Dマップを推定するステップが、散乱、減衰、空間又は時間分解能の制限、前記標的造影剤の動力学、又はこれらのいずれかの組み合わせを有する統計的不確かさを訂正するステップを更に有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記治療形式の標的造影剤の濃度の定量的な4Dマップを推定するステップが、前記診断形式及び前記治療形式の標的造影剤間での物理及び/又は動力学的特性における可能性のある差異を考慮するステップを更に有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記患者固有の治療的手順を生成するステップが、標的となる危険な器官に対する前記推定線量及び該推定の不確かさを考慮するステップと、医療専門家との対話を提供するステップとを更に有する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記患者固有の治療手順の効果及び/又は有害度の推定を計算するステップを更に有する、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−505709(P2009−505709A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527545(P2008−527545)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052758
【国際公開番号】WO2007/023408
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】