説明

標的粒子を検出するためのマイクロエレクトロニクスセンサデバイス

本発明は、キャリア(11)の結合面(12)の結合位置(3)と結合する標的粒子(1)を検査するマイクロエレクトロニクスセンサデバイスに関する。好適実施例では、入射光ビームが前記キャリア(11)へ入り込む。該キャリア(11)の前記結合位置では、減衰全内部反射(FTIR)が起こる。その結果生じた出力光ビーム(L2)の光の量は、光検出器(31)によって検出され、かつ前記結合面での前記標的粒子の存在に関する情報を供する。しかも作動ユニット(50)は、磁場(B)又は電場-特に所与の変調周波数(COIn)を有する-との相互作用によって、前記の結合標的粒子(1)の運動を誘起する。該運動の誘起により、前記標的粒子の効果はバックグランドから区別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアの結合面の結合位置で結合する標的粒子を検出するためのマイクロエレクトロニクスセンサデバイス及び方法に関する。しかも本発明は当該デバイスの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、力(たとえば磁力)を作用させることができるように粒子によるタグが付された微生物を検査する方法を開示している。この方法の一の実施例では、光ビームは、透明材料を通り抜けて、その光ビームが内部全反射される面へ導光される。エバネッセント波としてその透明材料を飛び出すこの光ビームは、その表面で微生物及び/又は他の成分によって散乱され、その後光検出器によって検出されるか、又は視覚的に観察できるようにその微生物を照射するのに用いられる。この測定手法及びこれと同様の測定手法の問題は、関心信号が大抵の場合において大きな基本となる信号の小さな変化でしかないため、たとえば全ての信号に適用可能な電子的な利得には限界があることで、正確で確かな測定が難しくなることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0048599号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この状況に基づき、本発明の目的は、より高い感度及び/又は精度の実現が求められる結合した標的粒子の検出において、該検出を改善させる手段を供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス、請求項2に記載の方法、及び請求項13に記載の使用によって実現される。好適実施例は従属請求項において開示されている。
【0006】
本発明のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、キャリアの「結合面」の結合位置に結合する標的粒子を定性的又は定量的に検出する機能を有する。ここで前記結合面及びキャリア(及び当然のこととして前記標的粒子)は必ずしも当該デバイスに属しているわけではない。前記「標的粒子」は具体的には、標的成分(たとえば生体分子、複合体、細胞断片、又は細胞のような生体物質)と、検出可能な特性(たとえば光学密度、磁気感受率、電荷、蛍光、又は放射能)を有する「ラベル粒子」(たとえば原子、分子、複合体、ナノ粒子、微粒子等)の結合物を有して良い。ナノ粒子という語は、少なくとも1つの寸法が3nm〜5000nmの範囲にあって、好適には10nm〜3000nmの範囲にあって、より好適には50nm〜1000nmの範囲にある粒子に用いられる。キャリアは通常、たとえば透明材料からなる固形物である。前記固形物は、本明細書において「結合面」と呼ばれる、少なくとも1つ-しかし一般的には多数-の結合位置を有する1つの特別な表面領域を有する。前記結合位置は通常、前記結合面に付着し、かつ試料流体中の標的粒子(分子)と選択的に結合可能な捕獲分子によって実現される。一般的に前記結合は、化学結合、静電引力、ファン・デア・ワールス力等に基づくことが可能である。
【0007】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは以下の部品を有する。
【0008】
a) 「センサ信号」を供するセンサユニットであって、前記センサ信号は当該センサユニットの感度領域内に標的粒子が存在することを示す、センサユニット。前記「感度領域」とは当然のこととして、前記センサユニットが標的粒子を検出することのできる容積である。前記センサユニットは任意の測定原理を適用して良い。任意の測定原理とはたとえば光学検出、磁場若しくは電場又はこれらに対する感受率の検出、超音波検出等である。
b) 前記センサユニットの感度領域についての、前記結合面での結合した標的粒子の運動を選択的に誘起する「作動ユニット」。本明細書においては、「前記感度領域についての運動」とは、前記感度領域内部での運動及び/又は前記感度領域の境界を交差する運動である。一般的には、前記作動ユニットは、適切な効果を適用することで、標的粒子の所望の運動-たとえば周囲の試料流体の力学的振動若しくは流体力学的運動、又は、外部印加される磁力及び/若しくは静電力によって誘起される前記標的粒子の振動-を実現して良い。前記運動は、前記標的粒子の結合が壊されずに保持されるようなものでなければならない。典型的には前記運動は振動である。
c) 前記センサユニットのセンサ信号を評価する「評価モジュール」。前記評価は、前記作動ユニットによって誘起された前記の結合した標的粒子の運動を考慮する。このため、前記の誘起された運動は、別個の測定によって検出されるか、又は、好適には前記作動ユニットの制御入力から推定されて良い。従って前記評価モジュールは典型的には、前記センサユニットと前記作動ユニットのいずれとも結合する。前記結合は、専用の(アナログ)電子回路及び/又は関連するソフトウエアが実装されたデジタルデータ処理ハードウエアによって実現されて良い。
【0009】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、前記センサ信号のより正確で確かな評価を可能にするという利点を有する。その理由は、前記センサユニットの測定は、前記の検出された標的粒子の誘起された運動と相関するからである。たとえば全ての結合した標的粒子が前記感度領域から外れる(又は前記感度領域へ入り込む)ように運動することで2つの信号が得られる。1つは標的粒子が存在した状態での測定であり、もう1つは標的粒子が存在しない状態での参照測定である。これらの信号から、前記標的粒子の実際の効果を高精度で推定することができる。
【0010】
本発明はさらに、キャリアの結合面の結合位置に結合する標的粒子を検査する方法に関する。当該方法は、
a) センサユニットによってセンサ信号を測定する手順であって、前記センサ信号は前記センサユニットの感度領域内に標的粒子が存在することを示す、手順、
b) 前記センサユニットについての前記の結合した標的粒子の運動を作動ユニットによって選択的に誘起する手順、
c) 前記標的粒子の誘起された運動を考慮しながら前記センサ信号を評価モジュールによって評価する手順、
を有する。
【0011】
当該方法は一般的には、上述のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスによって実行可能な手順を有する。従って当該方法の詳細、利点、及び改良型についての先の記載を参照して欲しい。
【0012】
以降では、上述のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス及び方法に関する本発明の様々な他の発展型が記載されている。
【0013】
第1の特別な実施例では、標的粒子は、作動ユニットの活動によって、センサユニットの感度とは異なる感度領域の領域を通り抜けるように動く。従って標的粒子は、存在する感度領域が異なるときには、異なるセンサユニットのセンサ信号を生じさせる。センサユニットの感度は該センサユニットの感度領域全体にわたって連続的に変化することが好ましい。この場合、標的粒子の最小の運動さえもセンサユニットのセンサ信号の変化を誘起する。一般的には、センサユニットの感度が不均一であることで、標的粒子の誘起された運動はセンサ信号に対して影響を及ぼす。この影響はこの信号の評価中も考慮することができる。
【0014】
既に述べたように、標的粒子の運動は複数の異なる方法で誘起することができる。好適実施例では、標的粒子は磁場及び/又は電場との相互作用によって運動する。これは、標的粒子が、磁場又は電場が結合可能な特性を有する場合に可能である。そのような場合とはたとえば、粒子が磁気若しくは電気双極子モーメントを有する場合、又は係るモーメントが誘起可能である場合である。この実施例では、標的粒子の運動は、磁場又は電場の発生によって非常によく制御することができる。磁場又は電場を発生させるためには、作動ユニットが磁場又は電場発生装置を有することが好ましい。磁場又は電場発生装置とはたとえば、永久磁石、電磁石、又は電極若しくは電極対である。
【0015】
標的粒子の誘起された運動は任意で変調されて良い。その変調は所与の変調周波数によって周期的に行われることが好ましい(その周波数は周期的な進行期間を決定する。この周期的な進行は必ずしも正弦状である必要はない)。この目的のため、作動ユニットは、その活動を制御しながら、かつ好適には調節可能なように変調させる変調装置を有して良い。結合した標的粒子の運動を能動的に変調させることは、この運動を、意図した評価目的にとって最適なモードに調節できるという利点を有する。しかも制御された活動の変調に関する情報は評価モジュールによって利用されて良い。その理由は、その情報は確かに標的粒子の誘起された運動に関する必要な情報を有するからである。よって変調装置が作動ユニットを制御する際に用いる制御信号は、センサ信号の評価中に考慮するため、並行して評価モジュールへ供給されて良い。さらに同一の周波数領域で粒子の運動を誘起及び検出する-たとえば同期する変調及び復調手法を用いる-ことによって、他の周波数領域でのノイズ源は極端に効率的に抑制することができる。
【0016】
既に述べたように、センサユニットは如何なる適切な測定原理を用いても良い。好適実施例では、センサユニットは、センサ信号が出力光ビームから得られる光学測定を用いる。その出力光ビームは、キャリアから放出し、かつ結合面での入射光ビームの減衰全内部反射から得られる光を有する。この実施例では、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、入射光ビームを結合面へ向かうように放出する光源を有する。その際、入射光ビームは、結合面に対して適切な角度をなした状態で全内部反射を起こす。光源はたとえば、レーザー又は発光ダイオード(LED)であって良く、任意で入射光ビームを整形及び導光する光学系が供されて良い。しかもセンサデバイスは、上述の出力光ビームを検出する光検出器を有する。この検出は典型的には、出力光ビーム中での光の量(たとえばこのビームの強度として表される)の測定を有する。光検出器は、所与のスペクトルの光を検出することができる如何なる適切な(複数の)センサを有しても良い。そのようなセンサとはたとえば、フォトダイオード、フォトレジスタ、太陽電池、CCDチップ、又は光電子増倍管である。
【0017】
結合面で全内部反射を起こすには、この面は2つの媒質-たとえばガラスと水-の界面でなければならない。入射光ビームが適切な角度(全内部反射(TIR)の臨界角よりも大きな角度)でその界面に衝突する場合、その界面でTIRを起こすことができる。係る設定は通常、全内部反射したビームのエバネッセント波を指数関数的に減衰させることによって到達するTIR界面でのわずかな容積の試料を検査するのに用いられる。この容積中に存在する標的粒子は続いてエバネッセント波の光の一部を散乱及び/又は吸収する。よって前記エバネッセント波の光の一部は反射光ビームとはもはや結合しない。「減衰全内部反射」のシナリオでは、センサデバイスの出力光ビームは入射光ビームの反射光を有する。エバネッセント波の散乱及び/又は吸収によって失われるわずかな量の光は、検査領域内の標的成分に関する必要な情報を含む。バイオアッセイでの測定される検体の濃度に依存して、関心対象である信号(失われた光)は、大きなDC-つまり一定の-バックグラウンドに対して非常に小さい。さらにバックグラウンドが相対的に大きいため、その信号は如何なるところからも発生する外乱となりがちである。この状況では、上で提案したように標的粒子の誘起された運動を利用することで測定精度が改善される。
【0018】
上述の実施例の別な発展型によると、入射光ビームは変調されて良い。その変調は所与の入力周波数によって周期的に行われることが好ましい。入射光ビームを変調することではっきりとした特徴がその入射光ビームに与えられる。そのはっきりとした特徴によって、この入射光ビームへ戻るセンサ信号の効果を、他の効果-たとえば周辺光の寄与-と区別することが可能となる。
【0019】
出力光ビームが発生する上記の実施例では、このビームは任意でカメラ(たとえばCCDカメラ)によって検出されて良い。その際、以下の条件でビームをカメラに露光する。
【0020】
(a) 出力光ビームの変調周波数ωに位相ロックされるが、ωよりも小さい周波数(フレーム速度)(この変調周波数はたとえば、標的粒子の変調された運動及び/又は入射光ビームの変調に相当して良い)。
【0021】
(b) 出力光ビームの変調周期(T=2π/ω)よりも短い露光(シャッターを開く)時間。
【0022】
よってカメラによって、そのカメラの最大フレーム速度よりも高速の出力光ビームの変調周波数を観測することが可能である。
【0023】
センサユニットによって供されるセンサ信号は、1つ以上の所与の周波数について、評価モジュールによって復調されることが好ましい。1つ以上の所与の周波数とは特に、標的粒子の誘起された運動の変調、及び/又は入射光ビームの変調(係る変調及び入射光ビームが用いられる場合)である。この変調を実行するため、評価ユニットは、復調装置は信号技術分野の人たちには周知である復調装置を有して良い。復調の助けを借りることで、真に標的粒子及び/又は入射光ビームへ戻る効果を他の効果-つまり外乱-から区別することが可能となる。
【0024】
上述の実施例の特別な実現形態では、標的粒子の誘起された運動の変調及び入射光ビームの変調は調節されることで、運動の変調が復調されたセンサ信号において光変調に対する側帯域として現れる。このことはたとえば、正弦状の光変調が、正弦状の運動変調よりもはるかに高い周波数で起こる場合に該当する。
【0025】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は方法が適用される具体的な処理に依存して、センサ信号は、様々な態様について評価されて良い。センサ信号は、センサユニットの感度領域内での標的粒子の存在及び/又は量について評価されることで、たとえば試料流体中の特定の生体分子の濃度を決定することが可能となることが好ましい。あるいはその代わりに又はそれに加えて、センサ信号は、標的粒子と結合表面との間の結合の結合特性について評価されても良い。この場合、特定の作用する力-たとえば電場又は磁場によって誘起される力-に対する標的粒子の反応は、これらの標的粒子が結合する強さ-つまり結合位置(捕獲分子)の特性-に依存する。従って標的粒子の誘起された運動の特定態様-たとえば減衰係数、共鳴周波数、振幅、位相シフト等-は、結合面での結合位置及び/又は動作条件(たとえば周辺流体の粘性)に関して価値ある情報を有する。
【0026】
本発明はさらに、分子診断、生物学的な試料分析、化学的な試料分析、食物の分析、及び/又は科学捜査分析についての上述のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの利用にも関する。分子診断はたとえば、標的粒子に直接的若しくは間接的に付着する磁気ビーズ又は蛍光粒子の助けを借りることで実現可能である。
本発明の上記態様及び他の態様は以降で説明する(複数の)実施例を参照することで明らかとなる。これらの実施例は添付図面の助けを借りた例として記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの設定を概略的に図示している。
【図2】キャリアの結合面の結合位置に結合する標的粒子をより詳細に図示している。
【図3】様々な軸の周りでの結合した標的粒子の変調に係る様々な例を概略的に図示している。
【図4】様々な軸の周りでの結合した標的粒子の変調に係る様々な例を概略的に図示している。
【図5】様々な軸の周りでの結合した標的粒子の変調に係る様々な例を概略的に図示している。
【図6】様々な軸の周りでの結合した標的粒子の変調に係る様々な例を概略的に図示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図中の同一参照番号は同一又は類似の部品を表すものとする。
【0029】
図1は、本発明によるマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの一般的な設定を概略的に図示している。本設定の中心的な部品はキャリア11である。キャリア11は、たとえばガラス又はポリスチレンのようなプラスチックで作られて良い。キャリア11は試料チャンバ2の隣に設けられている。試料チャンバ2内には、検出される標的成分(たとえば薬、抗体、DNA等)を有する試料流体が供されて良い。前記試料は磁性粒子-たとえば超常磁性ビーズ-をさらに有する。前記粒子は通常(たとえば抗体によるコーティングを介して)上述の標的成分に対するラベルとして結合する。簡明を期すためだけに、標的成分と磁性粒子の結合物が図示され、以降では「標的粒子1」と呼ぶことにする。磁性粒子の代わりに、他のラベル粒子-たとえば荷電粒子又は蛍光粒子-も同様に用いられて良いことに留意して欲しい。
【0030】
キャリア11と試料チャンバ2の界面は、「結合面」と呼ばれる表面12によって形成される。この結合面12は、標的粒子に対して選択的に結合か可能な捕獲素子3-たとえば抗体-によってコーティングされる。
【0031】
当該センサデバイスはたとえば、試料チャンバ2の隣接する空間内であってかつ結合面12に磁場を制御可能なように発生させる、コイル及びコアを備えた電磁石を有する。この磁場Bの助けを借りることで、標的粒子1を操作する-つまり磁化させ、かつ(勾配を有する磁場が用いられる場合には)顕著に運動させる-ことができる。よってたとえば、前記表面に対する標的粒子1の結合を加速させるために、標的粒子1を結合面12へ引き付けることが可能である。試料チャンバ2の上部に位置する第2電磁石51’は任意で、(全ての結合位置3が占められたために)結合しなかった粒子1を「洗い流す」のに用いられて良い。この「洗い流す」手順は、U字形状の電磁石を用いて実行可能なように第1電磁石51を用いた磁場を印加することで、全ての未結合標的粒子が測定面積/容積から除去されることによって実現されて良い。この場合では、標的粒子1と結合位置3との間の結合力は、印加された磁力よりも大きいので、その結合は洗い流す手順中でもそのままの状態を保つ(結合位置3と表面12との間の結合も同様に十分強いと仮定する)。また静電力を利用することで、交流電場を用いた(非磁性)ラベル粒子を駆動させることにも留意して欲しい。
【0032】
当該センサデバイスは、入射光ビームL1を発生させる光源21-たとえばレーザー又はLED-をさらに有する。入射光ビームL1は「入射窓」を介してキャリア11へ入り込む。入射光ビームL1は、全内部反射(TIR)の臨界角θcよりも大きな角θで結合面12に到達するので、「出力光ビーム」L2では全内部反射が起こる。出力光ビームL2は他の表面(「射出窓」)を介してキャリア11を飛び出し、かつ光検出器31によって検出される。光検出器31は、出力光ビームL2の光の量(たとえばスペクトル全体又はスペクトルのある特定部分でのこの光ビームの強度によって表される)を決定する。測定されたセンサ信号Sは、検出器31と結合する評価及び記録モジュールによる観察期間にわたって評価され、かつ任意で監視される。
【0033】
光源21-たとえば市販されているCD(λ=780nm)、DVD(λ=658nm)、又はBD(λ=405nm)のレーザーダイオードが用いられて良い。コリメータレンズは入射光ビームL1を平行にするのに用いられて良い。たとえば0.5mmのピンホールはビーム径を減少させるのに用いられて良い。
【0034】
入射光ビームL1のエバネッセント波の誘導によって蛍光粒子1から放出される蛍光のサンプリングにも検出器31を用いることが可能である。この蛍光はたとえば、反射光L2からのスペクトル上の区別が可能である。以降の説明は反射光の測定に焦点を置いているが、本明細書で論じられる原理は蛍光の検出にも必要な変更を加えることによって適用可能である。
【0035】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、標的粒子1を検出する光学手段を用いる。(たとえば唾液、血液などの試料流体の)バックグラウンドの影響を除去又は少なくとも抑制するため、検出手法は表面選択的でなければならない。上述したように、これは減衰全内部反射の原理を用いることによって実現される。この原理は、入射光ビームL1が全内部反射するときにはエバネッセント波が(指数関数的に強度を減少させながら)試料2へ進行して行くという事実に基づく。このエバネッセント波が他の媒質-結合した標的粒子等-と相互作用する場合、入射光の一部は試料流体へ入り込むように結合(これは「減衰全内部反射」と呼ばれる)し、かつ反射強度は減少する(その一方で反射強度は清浄な界面で相互作用がない場合には100%である)。外乱の量-つまりTIR表面上又は該TIR表面の非常に近傍(約200nm以内)に存在する(ただし試料チャンバ2の他の部分は除く)粒子の量-に依存して、反射強度は減少する。この「近傍領域」とは、試料チャンバ内でのエバネッセント波の侵入深さξによって定義される。侵入深さξは、波長λ、入射光ビームL1の入射角θ、並びに、基板11の屈折率nA及び界面12直上の媒質(たとえば血液又は水)の屈折率nBに依存し、かつ次式によって与えられる。
【0036】
【数1】

この強度の減少は、結合した標的粒子1の量、つまり試料中での標的粒子の濃度についての直接的な指標である。約100〜200nmのエバネッセント波の典型的な相互作用距離が、抗体、標的分子、及び磁気ビーズの典型的な寸法に匹敵するとき、バックグラウンドの影響が最小となることは明らかである。波長λが長くなることで相互作用距離も長くなるが、バックグラウンドとなる液体の影響は依然として非常に小さいままである。
【0037】
上述の光学測定手順は印加磁場に独立である。これにより、前処理、測定、及び洗浄手順をリアルタイムで光学的にモニタリングすることが可能となる。モニタリングされた信号はまた、測定又は個々の処理手順を制御するのに用いられても良い。
【0038】
典型的な用途の材料については、キャリア11の媒質Aはガラス及び/又は透明プラスチックであって良く、媒質Aの屈折率nAは典型的には1.52である。試料チャンバ2内の媒質Bは水ベースであり、かつ屈折率nBは1.3付近である。これは臨界角θc=60°に相当する。従って入射角θ=70°は、ある程度大きな屈折率を有する流体の媒質を可能にする上で現実的な選択である(nA=1.52で、nBは最大で1.43を仮定している)。nBの値が大きくなると、大きなnA及び/又は入射角が必要となる。
【0039】
作動用の磁気ラベルと組み合わせられた上記の光学読み取りの利点は以下である。
【0040】
- 安価なカートリッジ:キャリア11は比較的単純なポリマー材料の射出成形で構成することができる。
【0041】
- 多検体検査をする際に大規模多重化を行う能力:使い捨てカートリッジ内の結合面12は大面積にわたって光学的に走査されて良い。あるいはその代わりに、大面積での可視化が可能となることで、大きな検出用アレイが可能となる。(光学的に透明な表面上に設けられる)そのようなアレイは、たとえば光学表面上での様々な結合分子のインクジェットプリントによって作製されて良い。当該方法はまた、多重ビーム、多重検出器、及び(機械的に動くか、又は電磁的に作動する)多重作動磁石を用いることによって、ウエルプレート内での高スループット検査を可能にする。
【0042】
- 作動と検知が独立する。(大きな磁場及び磁場勾配による)標的粒子の作動は検知処理に影響を及ぼさない。従って当該光学方法は作動中での信号の連続的なモニタリングを可能にする。これによってアッセイプロセスに多くの知見が与えられ、かつ信号の傾斜に基づく容易な動力学的検出方法が可能となる。
【0043】
- 当該システムが、エバネッセント場の指数関数的減少することによって非常に表面敏感になることである。
【0044】
容易なインターフェース:カートリッジと読み取り装置との間に電気的相互接続を必要としない。光学窓及び光学グレードの測定表面はカートリッジのプローブにしか必要とされない。従って無接触読み取り装置の実現が可能となる。
【0045】
- 低ノイズの読み取りが可能となる。
【0046】
上述の測定手法の問題は、開始時の信号-つまり標的粒子1が結合面12に付着しないときのセンサ信号S-が大きいという事実である。結合面への標的粒子の結合はこの大きな信号を減少させる。よって結合面に結合する標的粒子の量に相当する信号’x’は(1-x)を得ることで測定される。この(1-x)は本来の光学信号Sである。これは欠点である。なぜなら関心対象の信号’x’は測定された光学信号(1-x)と比較して相当に小さいからである。このことは、開始時信号が’x’信号に対して大きいため、所謂「利得問題」を引き起こす恐れがある。従って、’x’信号を増幅することは困難である。なぜならバックグラウンド信号も同様に増幅されてしまい、その結果たとえば増幅器及びADCの「オーバーフロー」、並びにたとえばレーザー強度のふらつき又は検出器ノイズによるノイズ寄与の増幅が生じる恐れがあるからである。また測定された’x’信号は利得のばらつきに対して非常に敏感である。なぜなら利得のばらつきはxの変化と区別できないからである。さらにバックグラウンド信号が変化する場合、たとえば外部光源からの光が検出器又はカートリッジに衝突するので、測定結果に影響を及ぼすが、このことは非常に望ましくない。
【0047】
従って回路設計及び信号処理の観点から、(1-x)測定を、’x’ -つまり結合面12に結合する標的粒子1の量-のみを測定する測定に変換することが非常に望ましい。
【0048】
本明細書で提案した上記問題に対する解決法は通常のバイオアッセイから開始される。通常のバイオアッセイとはつまり、標的分子を有する磁気ビーズ及び試料の注入、「標的粒子」1への磁気ビーズ及び標的分子の結合、結合位置3への標的粒子1の結合、並びに、非結合標的粒子の洗い流しである。その結果、標的粒子1が捕獲素子3-たとえばタンパク質BSA-opi-を介して表面に付着する結合面12が存在する。入射光ビームL1から外れて結合する光の量は、結合面12に結合する標的粒子1の量に比例する。しかし外れて結合する光の量はまた、標的粒子1と結合面12との間の距離-つまり表面直上のエバネッセント場(感度領域13)内に存在する「標的粒子」の量-にも依存する。
【0049】
このことは図2においてより詳細に図示されている。(結合面12と標的粒子1の間に存在する)捕獲素子3が柔軟性を有するので、標的粒子1は、勾配∇Bを有する交流磁場及び/又は電場(図示されていない)を印加することによって上下に運動させることができる。これにより、外れて結合する光の量も変化する。そのため標的粒子が表面に結合する領域での「明滅」として観測することができる。よってある特定周波数ωmで変調することのできる信号が存在する。それによりセンサ信号Sのこの周波数ωmでの変調が可能となる。つまり標的粒子1の変調された運動による光振幅の変化を測定することができる。この変化は結合面12上に存在する標的粒子1の量に比例する。つまり(1-x)測定ではなく所望の’x’測定が行われる。
【0050】
結合面12と標的粒子1の間のタンパク質3を伸縮させながら結合面12と標的粒子1の間の距離dを変化させることは複数の方法によって行うことが可能である。
【0051】
- 変調された磁場Bを印加することによる方法(標的粒子1は超常磁性であるため)。しかし非常に高い周波数(つまり10kHzよりも高い周波数)を実現することは容易ではない。なぜなら磁気コイルは多くの電力を放散して、多くの熱を発生させる傾向にあるからである。それでも数kHzの周波数も可能である。
【0052】
- 電気泳動による方法。(勾配を有する)静磁場を用いることによって標的粒子1を結合面12へ引き付けることは可能であり、かつ電場によって標的粒子1を結合面12から引き離すことも可能である。電場が切られるとき、標的粒子は磁場によって再度表面に引き戻される。周期的な電場を印加することによって、標的粒子の周期的な上下運動を実現することができる。この方法を用いることによってより高い周波数を実現することが可能となる。HF磁場を発生させるよりもHF電場を発生させる方がはるかに容易だからである。静磁場によってより大きな振動振幅、つまり結合した標的粒子あたりでの信号を大きくすることが可能となる。
【0053】
図1のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、上述の方法に係る完全な実施例-つまり結合した標的粒子1の振動運動を誘起するのに用いられる作動ユニット50-を含んでいる。作動ユニット50は、制御及び変調ユニット52、並びに試料チャンバ2の上下に設けられた電磁石51と51’を有する。制御及び変調ユニット52は、電磁石51と51’と結合することで、感度領域13内部で勾配を有する磁場Bを誘起する。この磁場はsin(ωmt)に比例する変調信号に従って変調される。この変調信号は、制御及び変調ユニット52から評価モジュール32へやり取りされることで、考慮される。あるいはその代わりに作動ユニットは、試料チャンバ2の上下に電極及び対向電極を有するように設計されて良い。その電極及び対向電極を介して、変調された電場を試料チャンバ2の内部に発生させることができる。
【0054】
上述した変調方法を用いることによって、センサ信号Sは評価モジュール32内で適切に復調されることで、結合面12に結合する標的粒子1の量に直接比例する信号を実現することが可能となる。しかしその方法はまた、結合面と標的粒子との間に存在する捕獲素子3(たとえばタンパク質)のある特定の特性を測定することも可能にする。タンパク質に関する構造の情報は、観測されたQ因子及び共鳴周波数から得ることができる。タンパク質のサイズは標的粒子の観測された振動振幅から得ることができる。しかも測定が実行される流体(たとえば唾液)の粘性もまた推定することができる。
【0055】
さらにセンサ表面上の粒子の検出された信号とz位置との関係が非線形であるため、変調信号の和は、前記z位置の平均に関する情報を与える。これは、結合プローブの特性を評価するのに用いられるのみならず、光学表面に対する結合長を測定するのにも用いることができる。
【0056】
上述の方法では、復調によってセンサ信号Sから得られた’x’の値はバックグラウンド信号から独立している。さらに’x’は、変調/復調に用いられる周波数以外の周波数で起こる如何なる外乱-外部光、電子的干渉等-にも影響されない。
【0057】
図3は本発明の別な実施例を概略的に図示している。上述の図に類似した結合面12が図示されている。結合面12の下にある2つの矢印は光の進路を表す。左側の矢印は結合面12に衝突する光を表し、右側の矢印は結合面12から反射される光を表す。矢印の先端部は、結合面12へ向かう光の方向、及び結合面12から離れる光の方向をそれぞれ表す。図3では、互いに結合し、かつ結合面12に結合する2つの標的粒子1が図示されている。標的粒子1のこのクラスタは非対称な物理的形状を形成するので、これらの標的粒子1には不均一な力が加えられる。より一般的には、個々の標的粒子又は結合した標的粒子には力学的トルクを印加することが可能であり、力学的トルクを印加するには、粒子(又は粒子の結合)が非球形状であることが必要である。たとえば標的粒子は磁気的及び/又は電気的異方性-たとえば形状異方性及び/又は結晶異方性-を有して良い。不均一な物理的及び/又は化学的特性によって及ぼされる、標的粒子1についての力並びに配向が検出可能となる。物理的特性は電磁的特性-たとえば配向に依存する光吸収のような光学特性-であって良い。化学的特性は標的粒子1のコーティングとしての化学な部分(moiety)であって良い。たとえば標的粒子1は、光学活性部分-たとえば化学発光酵素又は基板-によって非球状にコーティングされて良い。上述したように標的粒子の配向を変調しながらの化学発光反応が可能であるとき、光電場で発生する光信号も変調される。この変調信号を検出することで、様々な種類の標的粒子1が区別され、また複数の標的粒子1の間での様々な種類の生物学的結合も区別される。このことは、標的粒子1の回転を利用することによって、標的粒子1の特性及び標的粒子1の結合の特性に関する結論を得ることができることを意味する。上述した回転を有する標的粒子1の検出に係る別な効果は感度の改善であり、この手段によって検出感度は改善される。例では、射出光は完全には反射されないが、標的粒子1の量-具体的には標的粒子1に含まれるラベル粒子の量-に依存して、右側での射出光は左側での入射光に対して減衰する。このことは、標的成分(たとえば生体分子、複合体、細胞断片、又は細胞のような生体物質)の数又は量に相関するラベル粒子での光の反射に起因する。
【0058】
図3に図示された破線は、標的粒子1が回転可能な回転軸を表している。この例では、2つの標的粒子1が結合するクラスタである。回転方向をさらに図示するため、回転軸に対して対をなすように曲がった矢印が図示されている。この矢印は、図面から遠ざかるように標的粒子1の回転方向を与える。回転のための力を生じさせる磁場又は電場を変化させることによって、回転方向は、前記方向とは反対である図面へ入り込む方向に変化させることができる。標的粒子1の回転は、該粒子の物理的特性によって生じると考えられている。よって、標的粒子1からなる2粒子クラスタの形状は完全な球ではないので、標的粒子1には不均一な力又はトルクが作用することで回転が起こる。図4は本発明の同様な例を図示している。ここでも標的粒子1は互いに結合することで、2粒子からなるクラスタを形成し、かつ基本的には結合面12に対して平行となるように同一距離に配置されている。回転軸は、結合面12に対して垂直な破線で図示されている。このことは、回転方向が基本的には結合面12に対して平行であることで、結合面12に対する標的粒子1の距離が基本的に同一のままである地点で、標的粒子1の回転運動が起こることを意味する。繰り返しになるが、回転方向は時計回り又は反時計回りに変化して良い。図5は別な例を図示している。この例では、回転方向が図の面内に属するため、回転軸がその図の面へ入り込む方向をとる。標的粒子1が2粒子のクラスタとして結合しているため、この軸の周りでの回転は、標的粒子1が相対位置を時間的に変化させていることを意味する。
【0059】
異なる光学検出法と関連する結合面12の別な構造が図6に図示されている。結合面12は図3-5に図示されているように平坦面ではなく、図面内に属する垂直軸に対して対称的である曲がった面である。結合面12の一の部分は左から右へ下がるように傾斜し、かつ結合面12の他の部分は左から右へ上がるように傾斜している。いずれの部分も同一の長さを有し、かつ中央部分で交差することで、対称的なシンクを形成する。その結果、図3-5に図示されているような全反射が結合面12で起こらない。図6では、入射光は主として、結合面12の一の傾斜部分を通り抜けるように導光され、かつ結合面12の他の傾斜部分-前記一の部分とは対照的に傾斜する-へ向かう方向に回折される。結合面12の他の傾斜部分へ到達する前に光は標的粒子1を通過する。ここで光は吸収される。結合面12の他の傾斜部分では、図6に図示されているように、光は再度結合面12を通過して、再度同一方向に回折される。検出器は、上述の構造からの反射光を受光する(図1参照)。本例では、標的粒子1の回転は図4に記載した回転と同一方向だが、他の回転方向を指定することも可能である。
【0060】
低周波数ωmで標的粒子1の運動を変調することの問題は、係る変調の結果生じる低周波信号の検出が、1/fノイズ(電子機器)が復調した信号ノイズに対して支配的に寄与する恐れのある範囲で行われることである。この問題を解決するため、光源21のさらなる強度変調及びそれに関連する復調手法を用いることができる。その点において図1は、光源21から放出される入射光ビームL1が変調されて、かつその変調に対応する正弦変調信号sin(ω1t)が評価モジュール32へ送られることをも示している。レーザーダイオードの高周波変調(最大数百MHz)は、注入レーザー電流を変調させることによって簡単に実現することができる。このレーザー電流の変調は、光フィードバックによる強度ノイズを抑制するため、光学記録用途において広く用いられている。この光強度変調(高周波数ω1)と上述の磁場又は電場変調(変調周波数ωm)を組み合わせることによって、中程度の周波数による磁場/電場変調による信号を、電子機器のノイズに関して有利となる高周波数領域に変換することができる。この方法では、振動する標的粒子信号は、次式による高周波数(MHz)領域での側帯域の和及び鎖として現れる。
【0061】
【数2】

この2重変調法を用いることによって、(中程度の周波数で)振動する標的粒子の信号は高周波数にて簡便に測定することができる。レーザー強度のばらつき及び(周波数ω1で存在する)意図しない反射(stray reflection)に起因する信号からの誤差を生むクロストークを除去するため、側帯域は、ω1で生じる主帯域から十分に分離されなければならない。このためには、レーザーを駆動する安定して振動する回路が必要となる。たとえば100kHzのレーザー変調周波数ω1及び1kHzの磁場又は電場変調周波数ωmを用いることによって、100kHzで動作するときには、レーザー駆動装置の安定性は1kHzを十分に下回っていなければならない。このことは実際すぐにでも実現することができる。
【0062】
さらにセンサ表面上の粒子の検出信号とz位置との間の関係が非線形であるため、信号中の高次の相互変調の項は前記z位置の平均に関する情報を与える。このことは、結合プローブの特性を評価するのに用いられるだけではなく、光学表面に対する結合長を測定するのにも用いることができる。
【0063】
(CCD)カメラが結合面12を観察するのに用いられる際、前記カメラは、磁場又は電場の変調(周波数ωm)及び/又はレーザー入力光ビームの変調(周波数ω1)を追跡するには遅すぎると考えられる。この問題は、
(1) カメラのフレーム速度を変調周波数に位相ロックすること、及び
(2) 照射(シャッターを開く)時間を十分に短く調節することによって変調周期の(一部)をサンプリングすること、
によって解決することができる。
【0064】
変調周期に対する照射時期の位相をシフトさせることによって、全周期の走査が可能となる。カメラを用いることの利点は、単一スポットによる方法と比較して多スポット処理での利点を有することである。
【0065】
本発明は特定の実施例を参照することで上のように説明されてきたが、様々な修正型及び拡張型が可能である。たとえば以下のようなものが可能である。
【0066】
- センサは、粒子の任意の特性に基づいて、センサ表面上(又は付近)での磁性粒子の存在を検出するのに適したセンサであって良い。たとえば磁性粒子の存在は、磁気的方法、光学的方法(たとえば蛍光、化学発光、吸収、表面プラズモン共鳴等の可視化)、超音波検出(たとえば表面音響波等)、電気的検出等によって検出されても良い。
【0067】
- 分子アッセイに加えて、大きな部分-たとえば細胞、ウイルス、又は細胞若しくはウイルスの断片、細胞組織等-もまた本発明によるセンサデバイスによって検出可能である。
【0068】
- 検出は、センサ表面に対するセンサ素子の走査を行っても可能であるし、前記走査を行わなくても可能である。
【0069】
- 測定データは、動学的又は間断的に信号を記録することによっても得ることができるし、端点測定として得ることも可能である。
【0070】
- 当該デバイス及び方法は、複数の種類の生化学アッセイ法-たとえば結合/未結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、変位アッセイ、酵素アッセイ等-で用いられて良い。
【0071】
- 当該デバイス及び方法は、センサ多重化(つまり様々なセンサ及びセンサ表面の並列使用。たとえば様々な捕獲プローブは、たとえば光学基板上への滴下又はインクジェットプリントによって発見することができる)、ラベル多重化(つまり様々な種類のラベルの並列使用)、及びチャンバ多重化(つまり様々な反応チャンバの並列使用)に適している。
【0072】
- 当該デバイス及び方法は、小さな試料体積向けの、迅速で、確かで、かつ使用の容易なポイントオブケアバイオセンサとして用いられて良い。反応チャンバは、1つ以上の磁場又は電場発生手段及び1つ以上の検出手段を含んでいてコンパクトリーダーと併用される使い捨て装置であって良い。また本発明のデバイス、方法、及びシステムは、自動化された高スループット検査に用いられて良い。この場合、反応チャンバは、自動化装置に適合するたとえばウエルプレート又はキューベットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアの結合面の結合位置と結合する標的粒子を検査するマイクロエレクトロニクスセンサデバイスであって:
センサ信号を供するセンサユニットであって、前記センサ信号は当該センサユニットの感度領域内に標的粒子が存在することを示す、センサユニット;
前記センサユニットの感度領域についての、前記結合面での結合した標的粒子の運動を選択的に誘起する作動ユニット;及び、
前記作動ユニットによって誘起された前記の結合した標的粒子の運動を考慮するセンサ信号を評価する評価モジュール;
を有するマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項2】
キャリアの結合面の結合位置に結合する標的粒子を検査する方法であって:
センサユニットによってセンサ信号を測定する手順であって、前記センサ信号は前記センサユニットの感度領域内に標的粒子が存在することを示す、手順;
前記センサユニットについての前記の結合した標的粒子の運動を作動ユニットによって選択的に誘起する手順;及び、
前記標的粒子の誘起された運動を考慮しながら前記センサ信号を評価モジュールによって評価する手順;
を有する方法。
【請求項3】
前記標的粒子が、前記感度領域内の前記センサユニットの各異なる感度の領域を通り抜けるように運動することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的粒子が、磁場又は電場との相互作用によって運動することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記の結合した標的粒子の誘起された運動が、好適には変調周波数によって周期的に変調されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記の結合した標的粒子の誘起された運動が、非球形状を有するように設計された標的粒子の手段によって、前記標的粒子を貫通する軸の周りで変調されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記センサ信号が、前記結合面での入射光ビームの減衰全内部反射から得られる光を有する出力光ビームから得られることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記入射光ビームが、好適には入力周波数で周期的に変調されることを特徴とする、請求項7に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は方法。
【請求項9】
前記出力光ビームがカメラによって検出され、該カメラは、
(a) 前記出力光ビームの変調周波数ωに位相ロックされるが、ωよりも小さい周波数;及び、
(b) 前記出力光ビームの変調周期(T=2π/ω)よりも短い露光時間;
の条件で露光される、
請求項7又は8に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は方法。
【請求項10】
前記センサ信号が、特に前記標的粒子の誘起された運動の変調、及び/又は入射光ビームの変調について復調されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記標的粒子の誘起された運動の変調が、前記の復調されたセンサ信号において入射光ビームの変調に対する側帯域として現れることを特徴とする、請求項10に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は方法。
【請求項12】
前記センサ信号は、前記のセンサユニットの感度領域内での標的粒子の存在及び/又は量について、及び/又は前記標的粒子と前記結合表面との間の結合の結合特性について評価されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス又は請求項2に記載の方法。
【請求項13】
本発明はさらに、分子診断、生物学的な試料分析、又は化学的な試料分析についての請求項1乃至12に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−508199(P2011−508199A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538959(P2010−538959)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054541
【国際公開番号】WO2009/083814
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】