説明

標識リング

【課題】標識リングの標識体を多方向から認識可能とする。
【解決手段】架空送電線Aを把持する把持部11と、該把持部に支持された標識体20とを有する標識リング10において、標識体は、把持部により回転可能に支持されると共にその回転中心に対して放射状に配置された複数の標識片22を備え、複数の標識片が風車の羽根車として機能することにより標識体が回転を行う。これにより、各標識片が向きを変え、多方向からの認識が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線に取り付けて使用する標識リングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空送電線のルートが鳥、特に保護鳥の生息地を通過する場合がある。このような架空送電線には、鳥が架空送電線に衝突するのを防止するために、図10に示すような標識リングを取り付けることがある。
【0003】
この標識リングは、導体を把持する把持部1と、その把持部1の下部に吊り下げられた標識体2とから構成されている。把持部1は、断面C字型の開口リング体であって、架空送電線Aを把持した後に開口部を閉じて、開口部の一方に設けられた凸部1aを、開口部の他方に設けられた凹部1bに嵌合させることによって、架空送電線Aに取り付けるものである。また、把持部1の下部側には、後述する標識片2aを取り付けるための標識片取付け孔1cが設けられている。
【0004】
標識体2は、剛性のある板状の標識片2aと、該標識片2aの上部にこれと把持部1を連結させるための連結片2bとから構成されている。この標識体2は、連結片2bを把持部1の標識片取付け孔1cに通し、その先端部2dを標識片2aに固定することによって把持部1に吊り下げられている。標識片2aの上部両側近くには孔2c、2cが設けられ、この孔2c、2cに連結片2bの先端部2d、2dが嵌め込まれて固定されている。把持部1及び標識体2はプラスチック等で形成されている。
【0005】
この標識リングは、風によって標識体2の標識片2aがヒラヒラと動くので、これによって、鳥に架空送電線の存在を知らしめ、鳥が架空送電線に衝突するのを防止していた(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−200932号公報
【特許文献2】特開平9−200934号公報
【特許文献3】特開平9−200931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記各引用文献に記載の従来の標識リングは、いずれも、標識片が平板状であることから、標識片の正面からは視覚的に良好に認識することが可能だが、見る方向によって、特に、標識片の平面に平行な方向から見た場合には認識が困難となり、標識としての機能が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、多方向から視覚的に認識が可能な標識リングを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、架空送電線を把持する把持部と、該把持部に支持された標識体とを有する標識リングにおいて、前記標識体は、前記把持部により回転可能に支持されると共にその回転中心に対して放射状に配置された複数の標識片を備え、前記複数の標識片が風車の羽根車として機能することにより前記標識体が回転を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記標識体は、前記把持部から垂下された支軸により回転可能に支持されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記複数の標識片は、二以上の色彩又は模様による種類分けが行われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、複数の標識片が風車の羽根車として機能することで標識体が回転するので、風を受ける環境下では、回転により常に各標識片が方向を変えることとなり、その回転の中心に対する全方位から視覚的に良好に認識可能とすることが可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明は、標識体が垂下支持された支軸により回転を行うので、鉛直軸回りの全方位からの視覚的認識が可能となり、さらに良好に認識を行うことが可能となる。
【0014】
請求項3記載の発明は、複数の標識片が複数の色彩又は模様により種類分けされているため、標識体が回転を行うと各標識片の各位置において、色彩又は模様が絶えず変化を繰り返すこととなり、標識体を視覚的に際だって目立たせることが可能となり、その認識性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)は第一の実施形態に係る標識リングの正面図、図1(B)は側面図ある。
【図2】標識リングの標識体の平面図である。
【図3】標識リングの一部の構成を断面で示した説明図である。
【図4】図4(A)は第二の実施形態に係る標識リングの正面図、図4(B)は側面図である。
【図5】第二の実施形態に係る標識リングの平面図である。
【図6】本発明の第三の実施形態であり、図6(A)は標識片を二色の色彩により種類分けを行った場合の正面図、図6(B)はその側面図を示している。
【図7】図7(A)は標識片を二種類の模様により種類分けを行った場合の正面図、図7(B)はその側面図を示している。本発明の実施形態6に係る標識片の正面、側面及び平面を示す図である。
【図8】従来の標識リングの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一の実施形態:概要]
以下、本発明の第一の実施形態について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。図1(A)は本発明の第一の実施形態に係る標識リング10の正面図、図1(B)は側面図、図2は後述する標識体20の平面図、図3は標識リング10の一部の構成を断面で示した説明図である。
図示の標識リング10は、架空送電線Aを把持する把持部11と、該把持部11に支持された標識体20とを備えている。以下、各部を説明する。
【0017】
[把持部]
把持部11は、断面C字型の開口リング体12を備え、開口部の内側に架空送電線Aを入れた状態で、開口部の一方に設けられた凸部12aを、開口部の他方に設けられた凹部12bに嵌合させることによって開口部を閉じて架空送電線Aを把持する構造となっている。
また、開口リング体12の下部には、後述する標識体20を回転可能に取り付けるための丸棒状の支軸13が下方に垂下装備されている。開口リング体12と支軸13は、必要強度が得られる金属或いは樹脂等により一体的に形成されている。
【0018】
[標識体]
標識体20は、把持部11の支軸13に取り付けられる基部21と、基部21に対して平面視で放射状に設けられた四枚の標識片22とを備えている。
基部21は、円筒状であり、図3に示すように、支軸13が挿入可能となっている。前述した支軸13の下端部には、当該下端部から上方に向かってスリット13bが形成されて二叉状となっており、支軸13の下端部おけるスリット13bを挟んでその両側には、それぞれ半径方向に膨出した係止突起13aが形成されている。そして、スリット13bによって支軸13の先端部を縮径させることにより、各係止突起13aが妨げとならずに、支軸13を基部21の上方から挿入することが可能となっている。そして、各係止突起13aが基部21の下側まで押し込まれると、支軸13の剛性により各係止突起13aが外側に広がることで、支軸13に対する基部21の脱落を防止する構造となっている。
また、支軸13における係止突起13a以外の部位は基部21の内径よりも小径であることから、支軸13に対し基部21と基部21に保持される各標識片22が回転可能となっている。
【0019】
標識片22は長円の平板状であり、その平板面は支軸13と並行(鉛直上下方向)に向けられた状態で基部21に支持されている。
また、四枚の標識片22は、図2に示すように、平面視において、基部21を中心として90°間隔でほぼ半径方向に沿った状態で基部21に取り付けられ、これにより放射状の配置が実現されている。
そして、各標識片22の半径方向外側となる側縁部は、基部21を中心とする回転方向についていずれも同じ方向に向かって折曲されている。そして、各標識片22が風力を受けると、支軸13の両側で各々の標識片22が風を受けて互いに逆方向のトルクを生じるが、折曲部22aの存在により片側の回転方向のトルクが勝り、図2の矢印方向に標識体20が回転を生じるようになっている。
なお、この標識体20は、その形状を維持するのに十分な剛性が有り、所定の耐久性を有する素材、例えば、金属或いは樹脂等により一体的に形成されている。
【0020】
[第一の実施形態の効果]
上記標識リング10では、四枚の標識片22が風車の羽根車として機能し、これにより標識体20を支軸13回りに回転させることができ、風を受ける環境下では、回転により常に各標識片22が方向を変えることとなり、その回転の中心に対する全方位から視覚的に良好に認識可能とすることが可能となる。
また、標識体20を支持する支軸13が開口リング体12から垂下支持されているので、標識体20はほぼ鉛直軸回りに回転を行うこととなり、鉛直軸回りの全方位からの視覚的認識が可能となり、より良好に認識を行うことが可能となる。
【0021】
また、標識体20は、支軸13を挟んでその両側に標識片22を有し、これにより支軸13回りに双方向についてトルクを生じるが、標識片22に折曲部22aを設け、これにより、トルクのバランスを一方に傾けて標識体20を回転させている。つまり、支軸13の周囲で全て同じ方向にトルクが発生する場合と異なり、過大な回転力が発生せず、標識体20を適度な速度で回転させることが可能である。
標識体20が高速度で回転を行うと各標識片22は逆に視覚的に認識効果が低減するが、標識体20を適度に低速回転させることができるので、全方位について高いに認識性を発揮することが可能である。
【0022】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態について、図4及び図5を参照して詳細に説明する。図4(A)は本発明の第二の実施形態に係る標識リング10Aの正面図、図4(B)は側面図、図5は平面図を示す。
なお、標識リング10Aについて前述した標識リング10と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略するものとする。
【0023】
標識リング10Aは、標識体20Aの四つ標識片22Aが平面視で円弧状である点が前述した標識リング10と異なっている。そして、この標識リング10Aの場合も各標識片22Aが円弧の凹状となる面を支軸13回りの回転方向について同一方向に向けた状態で基部21に支持されている。
各標識片22Aを円弧形状とし、風力を受けた時に支軸13の両側で互いに逆方向にトルクを生じ、円弧形状によりトルクの勝る一方の回転方向(図5の矢印方向)に標識体20Aが回転を生じる点は、前述した標識体20と同様である。
【0024】
かかる構成からなる標識リング10Aの場合も、前述した標識リング10と程同一の効果を得ることができ、これにより、全方位について視覚的に高い認識性を発揮することが可能である。
【0025】
[第三の実施形態]
上述した標識リング10及び10Aは、各標識片22,22Aについて複数の色彩で色分けを行っても良い。
図6は標識リング10Aの四つの標識片22Aについて回転方向の並び順に従って二色の色彩を交互に付した場合を示しており、図6(A)はその正面図、図6(B)はその側面図を示している。
即ち、回転方向の並び順で一番目と三番目の標識片22Aに同一の色彩を付して、二番目と四番目の標識片22Aには異なる同一の色彩を付した場合を示している。
このように複数種の色彩で複数の標識片22Aの種類分けすることにより、標識体20Aの回転時に支軸13の両側が交互に色彩が変化することとなり、全標識片22Aが単一色である場合に比して、標識体20Aをより目立たせることができ、認識性を飛躍的に向上させることが可能となる。
なお、四枚の標識片22Aについて全て異なる色彩としても良い。また、図6では標識リング10Aについて標識片22Aの色分けを行った場合を例示したが、標識リング10の標識片22についても同様の色分けを行っても良いことは言うまでもない。
【0026】
また、標識リング10及び10Aは、各標識片22,22Aについて複数の模様を付して種類分けを行っても良い。
図7は標識リング10Aの四つの標識片22Aについて回転方向の並び順に二種類の模様を交互に付した場合を示しており、図7(A)はその正面図、図7(B)はその側面図を示している。
即ち、回転方向の並び順で一番目と三番目の標識片22Aに同一の模様を付して、二番目と四番目の標識片22Aには異なる同一の模様を付した場合を示している。
このように複数種の模様で複数の標識片22Aの種類分けを行った場合にも、標識体20Aの回転時に支軸13の両側が交互に模様が変化して、認識性を飛躍的に向上させることが可能である。
なお、四枚の標識片22Aについて全て異なる模様を付しても良い。また、標識リング10の標識片22に対しても模様による種類分けを行っても良いことは言うまでもない。
【0027】
[その他]
なお、各標識リング10(又は10A)において、把持部11は、架空送電線Aを締結状態で把持する構造としても良いし、架空送電線A回りに揺動可能に把持する構造としても良い。なお、揺動可能とした場合、架空送電線Aに沿って移動しないように把持部11の両側にはストッパを設けることが望ましい。
また、把持部11は、開口リング体12を用いた構造に限らず、架空送電線Aに装着可能ないかなる構造で把持を行っても良い。
また、上記各実施形態で示したそれぞれの標識リング10,10Aで示した回転方向は一例に過ぎず、例示とは逆方向であっても良いことは言うまでもない。
【0028】
また、支軸13は、鉛直上下方向に向けられていること望ましいが、ある程度は傾斜していても良い。また、把持部11を架空送電線A回りに揺動可能に把持する構造した場合には、支軸13も同時に揺動することとなる、揺動により角度変化を生じても、標識に認識効果が損なわれるものではない。
【0029】
また、各標識片22(又は22A)は、その平板面が支軸13に並行であることが望ましいが、支軸13に対してある程度傾斜していても良い。
但し、各標識片22(又は22A)の平板面が支軸13に垂直となる配置は避けるべきである。
【符号の説明】
【0030】
10,10A 標識リング
11 把持部
12 開口リング体
13 支軸
20,20A 標識体
21 基部
22,22A 標識片
22a 折曲部
A 架空送電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空送電線を把持する把持部と、該把持部に支持された標識体とを有する標識リングにおいて、
前記標識体は、前記把持部により回転可能に支持されると共にその回転中心に対して放射状に配置された複数の標識片を備え、
前記複数の標識片が風車の羽根車として機能することにより前記標識体が回転を行うことを特徴とする標識リング。
【請求項2】
前記標識体は、前記把持部から垂下された支軸により回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載の標識リング。
【請求項3】
前記複数の標識片は、二以上の色彩又は模様による種類分けが行われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の標識リング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−205447(P2012−205447A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69459(P2011−69459)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】