説明

標識柱の固定構造

【課題】標識柱を路面に対して迅速容易に設置・撤去することができ、しかも盗難の恐れの無い固定構造を提供する。
【解決手段】符号18を付して示したのは軸部材であって標識柱に固着されている。符号19を付して示したのは有底円筒状の埋設脚部材であって路面に埋設されている。軸部材18の下端面にはキー穴18aが、埋設脚部材19の底面にはキー突起19aがそれぞれ設けられている。(A)は埋設脚部材19に軸部材18を差し入れた初期の状態を示し、キー穴18aとキー突起19aとが合わないので下降を阻止されている。軸部材18を(B)のように回し、更に(C)のように回すと、キー穴18aとキー突起19aとが一致して、(D)のように軸部材18が設置完了位置まで下降する。この(D)に描かれた状態で案内突起18bが案内横溝19cに入っていて、軸部材18の引き抜きを阻止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者や通行車両の交通を規制する標識柱を路面に固定して設置するための構造に係り、特に、迅速容易に着脱することができ、しかも盗まれたり、いたずらで抜き取られたりする恐れが無いように改良した新規な固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は標識柱の公知例を示す部分破断正面図である。
一般に標識柱1は、本体1aを台座1bの上に立てて一体的に連設し、反射シート1cを貼着するなどして視認性の向上が図られている。
これを路面に設置するため、本図8(A)のように台座1bと一体にボルト2を設けるとともに、路面6に掘られた穴に有底筒状の埋設用脚5を配設して接着剤7で固定し、
前記の一体ボルト2を埋設用脚5の内周面のメネジに螺合して緊定する。
前記と異なる公知例として、図8(B)のように台座1bに複数個の取付孔10a、同10bを設け、本体1aと別体に構成されたボルト16を矢印aのように挿通して埋設用脚(本図8(B)において図示を省略)に螺合して路面に設置する。
【0003】
標識柱の設置を迅速容易にするための公知発明として、特開2002−180425号公報に開示された技術が有る。図9は該公報に記載された標識柱取付け構造の説明図である。
図9(A)のように構成された埋設用脚を路面に設置するとともに、標識柱に(B)のような接続具を設け、
(C)のように嵌め合わせて矢印B方向に回すと、(D)のように固定される。
また、矢印A方向に回すと、固定が解除されて取り外しが可能になる。
【特許文献1】特開2002−180425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
標識柱の固定構造には、固定強度,製造コスト,耐候性等、種々の特性が要求される。 しかし、設置・撤去を迅速容易に行ない得ることも重要な特性である
一旦設置したら滅多に移動させない標識柱も沢山有るが、例えば祭礼時の交通規制や、
季節的な交通規制(海水浴場付近、スキー場付近など)においては、標識を移動させたり一時的に設置したり一時的に撤去したりしなければならない場合がしばしばである。
このような場合、前記公知発明に係る標識柱の固定構造(図9)は非常に有効であり、優れた実用的効果を発揮する。
しかしながらその反面、設置・撤去が容易であるが故に、いたずらや盗難が絶えないという悩みがある。
この問題を考察すると、設置・撤去の容易性と防犯性との両立が困難であることを思い知らされる。
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的は、設置・撤去の容易性と防犯性とを両立せしめ得る標識柱の固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明構造を比喩的に言えば、知恵の輪を内蔵した標識柱取付け構造である。
知恵の輪であるから、取付け取外しの手順を知っていれば迅速容易に設置・除去することができるが、手順を知らないとなかなか操作できない。このため、いたずらや盗難を防止することができる。
本発明の知恵の輪が、通常の知恵の輪に比して異なる点の一つとして、内部に隠れていて外観には現れていないことが重要な特徴である。
通常の知恵の輪は目で見ながら操作して外れないように作られているので、構造が複雑で高精度に製作されている。これに比して本発明の知恵の輪は目で見ることができないので、簡単な構造で足り、高精度を要しない。
【0006】
本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して説明すると次の通りである。この[課題を解決するための手段]の欄は、図面との対照が容易なように括弧書きで図面符号を付記してあるが、この括弧付き符号は本発明の構成を図面の通りに限定するものではない。
有底円筒状の埋設脚部材(19)は路面に埋設して固定されている。標識柱(1)に固着された軸部材(18)は、前記埋設脚部材の中へ下向きに差し込まれる。
(A)図は差し込んだだけの状態を描いてある。
埋設脚部材の底面に設けられたキー突起(19a)と軸部材(18)の下端面に設けられたキー穴(18a)とが合っていないため、軸部材はキー突起の上に乗っかっており、該軸部材の下端は一旦停止レベルSに在る。
前記のキー突起(19a)とキー穴(18a)とが合うように、軸部材を回した状態が
図1(B)に描かれている。
キー突起(19a)とキー穴(18a)との嵌合により、軸部材(18)は符号Eを付して示した設置完了レベルまで落ち込んでいる。
この(B)図の状態まで軸部材を回すと、(A)図の断面には現れていなかった案内突起(18b)が回ってきて、上方への抜き出しを阻止する。
この図1に表されているように、(A)図のごとく差し込んだだけでは標識柱の設置・固定が完了せず、入れて回すことによって(B)図のように設置が完了する。
前記の逆順に操作すれば抜き出し可能であるが、(B)図の状態では、イ.引き抜こうとしても案内突起(18b)が引っ掛かって抜けない。さらに、ロ.回そうとしてもキー突起(19a)とキー穴(18a)とが噛み合っていて回らない。
【0007】
上述の原理に基づいて創作した請求項1に係る発明の構成は、
(図1参照)、標識柱(1)の下端に設けられた円柱状の軸部材(18)を、路面に埋設された有底円筒状の埋設脚部材(19)の中へ下向きに差し込んで固定する構造において、
前記軸部材の差し込み位置について、設置完了時のレベル(軸の下端について見ればE)と、該設置完了レベルよりも上方に位置する一旦停止レベル(同じくS)とを想定し、
(図2参照)前記有底筒状の埋設脚部材に差し入れられた軸部材を、回転させずに一旦停止レベルまで案内する縦方向の案内機構と、
(図3参照)前記一旦停止レベルに到達した軸部材の回転を許容する回転方向の案内機構と、
(図1参照)埋設脚部材へ下向きに差し込まれた軸部材を、一旦停止レベルで停止させるストッパ機構と、
一旦停止レベルで停止した軸部材が所定角度回動したら、差し込み方向の一旦停止を解除して設置完了レベルまでの差し込みを許容するストッパ解除機構と、
設置完了レベルまで差し込まれた軸部材を、設置完了レベルでは回動できないように係止する回動係止機構と、
前記回動係止機構によって回動を係止された状態の軸状部材を、その回動角位置では上方へ抜き出せないように阻止するロック機構と、
を具備していることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明に係る標識柱固定構造の構成は、前記請求項1の発明構造の構成要件に加えて、
(図2参照)前記軸部材(18)の下端付近から側方へ、軸の半径方向に案内突起(18b)が突出しており、
前記埋設脚部材(19)の内周面に上下方向の案内縦溝(19b)が形成されていて、この案内縦溝と前記案内突起との協働によって前記縦方向の案内機構が構成され、
該案内縦溝に連通せしめて前記埋設脚部材の内周面を部分的に拡開した形状の案内横溝(19c)が形成されていて、この案内横溝と前記案内突起との協働によって前記回転方向の案内機構が構成され、
(図1と図3とを併せて参照)前記有底円筒状の埋設脚部材(19)の底面に、一旦停止レベル(S)に対応する高さを有するキー状の突起(19a)が形成されていて、このキー突起と前記軸部材の下端面との当接によって前記のストッパ機構が構成され、
(図1と図4とを併せて参照)前記軸部材の下端面に、前記キー状突起と嵌合し得る形状のキー溝状の穴(18a)が形成されていて、該キー穴と前記キー突起(19a)との協働によって前記ストッパ解除機構、及び前記回動係止機構が構成され、
(図1(B)参照)前記案内突起(18b)と前記案内横溝(19c)とによって前記ロック機構が構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明に係る固定構造の構成は、前記請求項2の発明構造の構成要件に加えて(図6(E)参照)静止部材である埋設脚部材に形成されているキー突起(23a)に対し、可動部材である軸部材の円弧状長穴(22c)が嵌合して回動係止機構が作用しているとき、
軸部材が埋設脚部材に対して回動し得る遊び角度(φ)が設けられており、この遊び角度を与える間隙寸法は、当該標識柱の設計図面における一般公差の10倍以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明に係る固定構造の構成は、前記請求項3の発明構造の構成要件に加えて
(図7参照)埋設脚部材(19)に形成されている前述のキー突起に対して軸部材(18)のキー穴(前述)が嵌合している状態において、
前記案内突起(18b)の上面に当接するプランジャ(24)と、該プランジャを下方に付勢して案内突起を押さえつけるコイルスプリング(25)とが、前記埋設脚部材に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明構造によれば、
イ.路面に埋設された埋設脚部材の中心孔の中へ標識柱の軸部材を差し込んで、ほぼ直角に回すという簡単な操作で、標識柱を路面に設置することができ、従来例のボルトのように何回も回して締め付ける必要が無い。
また、「少し持ち上げて、所定の方向へ回す」という簡単な操作で、標識柱を路面から取り外すことができる。
このため、交通事情の変化に対応して標識柱を移動させることが容易であり、迅速に設置・離脱作業を施工することができる。
さらに、着脱が容易であるにも拘わらず、取り外し手順を知らなければ標識柱を抜き取ることができないので、いたずらや盗難によって標識柱を抜き取られる恐れが無い。
【0012】
請求項2の発明構造を前記請求項1の構造に併せて適用すると、
軸部材に案内突起を設け、
埋設脚部材の内周面に上下方向の案内縦溝を設け、
案内縦溝に連通せしめて案内横溝を設け、
埋設脚部材の底面にキー状の突起を設け、
キー状突起と嵌合し得る形状のキー溝状の穴を軸部材に設ける、
といった簡単な構造部分の協働によって、前記請求項1の構成に必要な案内機能、ストッパ機能、ストッパ解除機能、回動係止機能、及びロック機能を果たさせることができ、高度の機能を有する固定構造を小型、低コストで構成することができる。
【0013】
請求項3の発明構造を前記請求項2の構造に併せて適用すると、
標識柱を路面に設置した状態で、該標識柱の軸部材が埋設脚部材から抜ける恐れが無いという効果を確保しつつ、該軸部材を埋設脚部材に対して若干回動せしめることができる。
こうした回動角度の遊びを利用して、例えば標識柱の固定状態をより強固ならしめる等の高度構造を付加する可能性が得られる。
【0014】
請求項4の発明構造を請求項3の構造に併せて適用すると、軸部材と埋設脚部材との嵌合状態、ひいては路面に対する標識柱の設置状態を、より強固ならしめることができる。
本願発明の基本構造は、ボルトなどのネジ部材を用いず、軸部材と筒状埋設脚部材との
「軸・孔対偶嵌合」に拠っている。ところが、着脱の容易性を重視すると「軸・孔嵌合」を余りシビアにできず、さりとて「軸・孔嵌合」を甘くすると標識柱の設置状態が強固でなくなるという困難を抱えている。
しかる処、請求項4の構造を適用することにより、スプリングの付勢力でガタを無くし、標識柱の設置状態を強固ならしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の1実施形態を示す模式的な断面図であり、(B)は設置を完成した状態を、(A)は設置操作の中間工程を、それぞれ描いてある。
先ず本段落において、本発明が前提とする構成を述べる。
標識柱1の下端に、円柱状の軸部材18が固定的に装着されている。前記の「円柱状」とは、標識柱の固定構造として機能する部分が円柱状であれば足り、標識柱の本体に埋設されている部分の形状を問わない。
一方、有底円筒状の埋設脚部材19が路面に埋設されている。前記の「円柱状」とは、ネガチブな円柱形の内周面を有すれば足り、外周面の形状を問わない。
【0016】
本図1は、標識柱が水平な路面に設置される状態を描いてある。説明の便宜上、この状態を標準として、上下、垂直、水平、側方、縦,横を呼称する。
本実施形態においては、設計段階で軸部材18の下端を目安にして、設置完了レベルEと一旦停止レベルSとが設定されている。
本図1には本実施形態の構造の全てが現れてはいないので、構成・作用の概略を本図1について説明する。
前記有底円筒状埋設脚部材19の底面にキー突起19aが突設されている。埋設脚部材の中へ差し込まれた軸部材18は、前記の一旦停止レベルSで差し込みを阻止される。
この一旦停止レベルまでの差し込み操作は、図2を参照して後に詳述する縦方向案内機構によって、軸部材18を回動させずに真っすぐ下降させ、図4を参照して後に詳述するストッパ機構によって一旦停止レベルSで停止せしめられる。
【0017】
一旦停止レベルSまで差し込まれた軸部材18は、図3を参照して後に詳述する回転方向案内機構によって案内され、約90度回って(B)の状態になる。
このとき軸部材18は、図4を参照して後に詳述するストッパ解除機構によって下降を許容され、設置完了レベルEまで下がるとともに、図4を参照して後に詳述する回動係止機構によって回動を阻止される。
この(B)図の状態で、図3を参照して後に詳述するロック機構によって軸部材18の抜け出し(上昇)を係止され、盗難・いたずら防止効果を奏する。
【0018】
本実施形態の構成,作用を説明する梗概を示しておくと、
図2を参照して、縦方向の案内機構を説明し、
図3を参照して、回転方向の案内機構及びロック機構を説明し、
図4を参照して、ストッパ機構、回動係止機構、及びストッパ解除機構を説明し、
これらの機構が協働して迅速な着脱と盗難防止効果を発揮するメカニズムを図5について説明する。
【0019】
図2は、縦方向案内機構を抽出して模式的に描いた分解斜視図である(この図2に描かれている構成部分が本発明機構の何処に位置しているかについては、本図2と図1とを併せて御参照願いたい)。
軸部材18の下端に案内突起18bが設けられて、側方(円柱状軸部材の半径方向)へ突出している。
一方、円筒状の部材である埋設脚部材19の内周面に、前記案内突起18bと摺動自在に嵌合する案内縦溝19bが形成されている。
上述の構成によって、埋設脚部材19に差し入れられた軸部材18は、軸心周りに回動することなく下降する。
前記案内縦溝19bの下端部に連通する水平方向の案内横溝19cが形成されている。この案内横溝については、次の段落で詳しく説明する。
【0020】
図3は、回転方向の案内機構、及びロック機構を抽出して模式的に描いた分解斜視図である(この図3に描かれている構成部材は前掲の図2と同様である)。
図3(A)は、軸部材18を埋設脚部材19内に差し込むため、案内突起18bを案内縦溝19bに臨ませた状態である。
図3(B)は軸部材18の案内突起18bが案内縦溝19bを通過し終えた状態であり、
該案内突起18bが案内横溝19cに入っている。
案内横溝19cは、埋設脚部材19の内周面を部分的に拡開した形になっていて、前記案内縦溝19bを通過した案内突起18bを水平方向に案内する。
これにより、軸心周りの回動を係止されて案内縦溝19bを通過した案内突起18bは案内横溝19cに案内されて図3(C)のようになる。
案内横溝19cの形状は、案内突起18bを1回転させ得ないようになっている。本実施形態における回動許容角度は90度である。
【0021】
図4は、ストッパ機構、回動係止機構、及びストッパ解除機構を抽出して模式的に描いた分解斜視図である(この図4に描かれている構成部材は前掲の図2、及び図3と同様である)。
説明の便宜上、図示のように座標軸を想定する。Z軸は軸部材18と埋設脚部材19とに共通する垂直軸である。
有底円筒状の埋設脚部材19の底面にキー状の突起19aが設けられている。その長手方向にXーX軸を設定する。該埋設脚部材19は路面に埋設されているから、このXーX軸は地球を基準として固定された座標軸である。
一方、軸部材18の下端面にキー穴18aが設けられている。その長手方向にχーχ軸を設定する。軸部材18は可動部材であるから、χーχ軸はZ軸に垂直な可動の座標軸である。
軸部材18がZ軸の周りに回動して、χーχ軸がXーX軸に一致すると、キー突起19aとキー穴18aとが嵌合し得る。それ以外の回動角位置では嵌合し得ない。
【0022】
図5は、以上のように構成された本実施形態の作用を説明するための工程図である。
下段に配列した4枚の図は、埋設脚部材19内に軸部材18が差し込まれた状態の要部断面図であり、上段に配列された4枚の図は前掲の図4で説明したキー穴18aとキー突起19aとの対応を模式的に描いた平面図である。
本図5(A)下段の図は、前掲の図1(A)と同様に、埋設脚部材内へ軸部材を差し込んだ初期の状態が描かれていて、その後(B)下段、(C)下段の状態を経る。(D)下段は前掲の図1(B)と同様に設置を完了した状態を描いてある。
【0023】
図5(A)の工程で、埋設脚部材19に対する軸部材18の角位置は、案内突起18bと案内縦溝19bとの嵌合によって規制されており、該軸部材18は回動せずに下降する(縦方向の案内機能)。
このように規制された角位置では、(A)上段のようにキー穴18aとキー突起19aとが直交していて嵌合し得ない。このため、軸部材18の差し込み操作は一旦停止される(ストッパ機能)。
先に述べたように、軸部材18が一旦停止位置まで下降すると、案内突起18bが案内縦溝19bを通過して(図5(B)参照)案内横溝19cに入り、該案内突起18bの水平方向移動(軸部材18の回動)が可能になる(回転方向の案内機能)。
(B)は、軸部材18が約45度回った状態を描いてある。その上段に描かれているように、キー穴18aとキー突起19aとは約45度で交差しているので嵌合できず、従って軸部材18は下降できず、上下方向には一旦停止レベルで止まっている。
この(B)に描かれている工程で、案内突起18bは案内縦溝19bの中に進入している。
【0024】
軸部材18が更に回って90度に達すると図5(C)の状態になり、その上段に示されているようにキー穴18aとキー突起19aとが一致して嵌合が可能になる。すなわち、軸部材18が下降し得るようになる(ストッパ解除機能)。
軸部材18は自重で下降して、図5(D)の状態になり、設置操作が完了する。
この状態で、キー穴18aとキー突起19aとが嵌合しているので、軸部材18の回動が係止されている(回動係止機能)。
この状態で、キー突起19aが案内横溝19cの中に在るので、軸部材18がこの角位置に在る限り、該軸部材は上方への移動を阻止される(ロック機能)。
【0025】
上述した工程(A)→(B)→(C)→(D)の手順を履めば、迅速容易に標識柱が設置され、その逆順に操作すれば、迅速容易に標識柱が撤去される。
しかし、この手順を知らずに、(D)図のように設置された状態で標識柱を引き抜こうとしても引き抜くことができず、盗難やいたずらが防止される。
【0026】
以上に説明した構成・機能から理解できるように、キー穴とキー突起との平面形状は長方形に限られない。極言すれば、キー穴が軸部材と同心の円形でさえなければ良いということになる。
図6に各種の実施形態を示す。図6(A)は前記実施形態と同様の長方形のキー穴とキー突起との対偶であり、符号Oは軸心である。本例は、図示の状態から90度回ると嵌合する。
(B)は方形キー突起20aと方形キー穴20bとの対偶で、図示の状態から45度回ると嵌合する。(C)は楕円形キー突起21aと楕円形キー穴21bとの対偶であり、図示の状態から90度回ると嵌合する。
(D)は、軸心Oから等距離に配置された円柱形突起22aと円形穴22bとの対偶である。(A)と同様に、図示の状態から90度回ると嵌合する。
【0027】
図6(A)、(B)、(C)、(D)の各例においては、穴と突起とが嵌合したら軸部材の回動が固定的に係止される。
図6(E)は(D)の変形例であり、円形穴22bに代えて円弧状長穴22cが設けられている。このように構成すると、穴と突起とが嵌合した状態において軸部材の回動係止に遊びが与えられる。本例においては角фの遊びができる。
このように、意図的に軸部材の回動係止に遊びを与えておくと、後掲の図7に例示するように他の工夫を施す余地ができてくる。
【0028】
図7に示した実施形態は、軸部材の装着状態を強固ならしめるように改良されたものであって、本図7に描かれている箇所は前掲の図1(A)の右下隅に鎖線円で囲んだ部分に相当する。本図は、標識柱の設置を完了した状態が描かれている。
図7(A)に示したように、案内突起18bの上方にプランジャ24が垂直に配置され、コイルスプリング25で付勢されて案内突起18bを下方へ押し付けている。
軸部材18が回されて案内突起18bが移動したとき、プランジャ24が脱落しないように抜け止め18dが設けられている。
【0029】
図示bーb断面矢視図を(B)に示す。
軸部材18を装着する操作に際して回され、案内突起18bが矢印Rのようにプランジャ24の下方へ移動してきたとき、
プランジャ24は案内突起18bに対して相対的に矢印L方向に移動する。このとき、該プランジャ24の先端(下端)が矢印uのように案内突起18bの上へ乗り上げるように斜面18cが形成されている。
上述の動作が可能なためには、設置完了レベルまで下降した軸部材18が若干回動して図7(B)に示した長さGに相当する遊びを必要とする(回動係止機構によって軸部材18が完全固定されていては、前述の乗り上げ動作(矢印u)ができない)。
このため、前掲の図6(E)に例示したようにして、突起と穴との嵌合に遊びを与えておけば良い。
どのくらいの遊び(突起と穴との間隙寸法)を与えることが本発明の技術的範囲であるかについて考察する。
機械構造物において、ほとんど全部の構成部分に公差が付されているから、一般公差程度の遊びを与えることに特許性は無い。しかし、例えば一般公差の10倍の間隙が設けられている場合は意図的な構成であって、本発明の技術的範囲に属するものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明構造の1実施形態を示す要部垂直断面図であって、(A)は設置途中の状態を、(B)は設置完了の状態をそれぞれ描いてある。
【図2】前記実施形態において縦方向の案内機構を構成している部材を抽出して描いた分解斜視図である。
【図3】前記実施形態において回転方向の案内機構及びロック機構を構成している部材を抽出して描いた分解斜視図である。
【図4】前記実施形態においてストッパ機構、回動係止機構、及びストッパ解除機構を構成している部材を抽出して描いた分解斜視図である。
【図5】前記実施形態における標識柱の設置操作を示す工程図であって、(A)は初期の工程を、(B)は中間の工程を、(C)は設置完了直前の工程を、(D)は設置を完了した実施形態を、それぞれ描いてある。
【図6】本発明における突起と穴との関係の5例を模式的に描いた平面図である。
【図7】前掲の図1に示した実施形態の改良例の要部断面図である。
【図8】従来例の標識柱を設置するための固定構造の2例を部分的に破断して描いた正面図である。
【図9】公知発明における標識柱の固定構造の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1…標識柱
1a…本体
1b…台座
1c…反射シート
2…一体ボルト
3b…ベース
4b…収納管
5…埋設用脚
6…路面
7…接着剤
10a,10b…取付孔
11…路面
12…凹み部
13…係合孔
14…円孔部
15…細長孔部
16…別体ボルト
17…円板
18…軸部材
18a…キー穴
18b…案内突起
18c…斜面
19…埋設脚部材
19a…キー突起
19b…案内縦溝
19c…案内横溝
20a…方形キー突起
20b…方形キー穴
21a…楕円形キー突起
21b…楕円形キー穴
22a…円柱形突起
22b…円形穴
23a…円柱形突起
23b…円弧状長孔
24…プランジャ
25…コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識柱の下端に設けられた円柱状の軸部材を、路面に埋設された有底円筒状の埋設脚部材の中へ下向きに差し込んで固定する構造において、
前記軸部材の差し込み位置について、設置完了レベルと、該設置完了レベルよりも上方に位置する一旦停止レベルとを想定し、
前記有底筒状の埋設脚部材に差し入れられた軸部材を、回転させずに一旦停止レベルまで案内する縦方向の案内機構と、
埋設脚部材へ下向きに差し込まれた軸部材を、一旦停止レベルで停止させるストッパ機構と、
前記一旦停止レベルに到達した軸部材の回転を許容する回転方向の案内機構と、
一旦停止レベルまで差し込まれて停止した軸部材が所定角度回動したら、差し込み方向の一旦停止を解除して設置完了レベルまでの差し込みを許容するストッパ解除機構と、
設置完了レベルまで差し込まれた軸部材を、設置完了レベルでは回動できないように係止する回動係止機構と、
前記回動係止機構によって回動を係止された状態の軸状部材を、その回動角位置では上方へ抜き出せないように阻止するロック機構と、
を具備していることを特徴とする標識柱の固定構造。
【請求項2】
前記軸部材の下端付近から側方へ、軸の半径方向に案内突起が突出しており、
前記埋設脚部材の内周面に上下方向の案内縦溝が形成されていて、この案内縦溝と前記案内突起との協働によって前記縦方向の案内機構が構成され、
該案内縦溝に連通せしめて、前記埋設脚部材の内周面を部分的に拡開した形状の案内横溝が形成されていて、この案内横溝と前記案内突起との協働によって前記回転向の案内機構が構成され、
前記有底円筒状の埋設脚部材の底面に、一旦停止レベルに対応する高さを有するキー状の突起が形成されていて、このキー突起と前記軸部材の下端面との当接によって前記のストッパ機構が構成され、
前記軸部材の下端面に、前記キー状突起と嵌合し得る形状のキー溝状の穴が形成されていて、該キー溝状穴と前記キー状突起との協働によって前記ストッパ解除機構、及び前記回動係止機構が構成され、
前記案内突起と前記案内横溝とによって前記ロック機構が構成されていることを特徴とする、請求項1に記載した標識柱の固定構造。
【請求項3】
静止部材である埋設脚部材に形成されているキー状突起に対し、可動部材である軸部材のキー溝状穴が嵌合して回動係止機構が作用しているとき、
軸部材が埋設脚部材に対して回動し得る遊び角度が設けられており、この遊び角度を与える間隙寸法は、当該標識柱の設計図面における一般公差の10倍以上であることを特徴とする、請求項2に記載した標識柱の固定構造。
【請求項4】
埋設脚部材に形成されているキー突起に対して軸部材のキー穴が嵌合している状態において、
前記案内突起の上面に当接するプランジャと、該プランジャを下方に付勢して案内突起を押さえつけるコイルスプリングとが、前記埋設脚部材に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載した標識柱の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−70953(P2010−70953A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238371(P2008−238371)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】