説明

模型移動体

【課題】ケース内に両端で回転自在に軸支される駆動軸を有するエンジンと、フレームに回転自在に軸支され駆動軸の一方の端部に接続される被駆動軸とを備えた模型移動体において、エンジンの振動のエネルギーがフレームに伝達されることを抑制した模型移動体を提供する。
【解決手段】エンジン2のケース21aは、被駆動軸41,42に接続される駆動軸21の一方の端部側でフレーム11に固定され、駆動軸21の他方の端部側でフレーム11に対して解放されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジコンヘリコプターやラジコン飛行機等の模型移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、模型移動体としてのラジコンヘリコプターとして、地面に対して垂直となる様に一対の板状のフレームが間隔を存して平行に配置され、この両フレーム間に駆動軸としてのクランクシャフトが地面に対して垂直となる様にエンジンが配置されたものが知られている。クランクシャフトはクランクケース内に両端部で軸支され、クランクシャフトの上方の端部が遠心クラッチを介してフレームに回転自在に固定された被駆動軸と接続される。そして、エンジンのクランクケースの下方側面がマウントプレートを介してフレームに固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
遠心クラッチは、エンジンの駆動軸側に設けられたクラッチシューと、クラッチシューを受け入れる様に被駆動軸側に設けられたクラッチドラムとで構成される。クラッチシューは駆動軸の回転数が所定回転数以上となると回転力をクラッチドラムに伝達する。そして、遠心クラッチは、クラッチシューとクラッチドラムとの互いの軸がずれない様に、クラッチドラムの内部にクラッチシュー側に延伸された軸部を設け、クラッチシュー側にこの軸部を受け入れる軸受部を設けている。
【0004】
ここで、エンジンは、シリンダ内を往復運動するピストンを備え、このピストンの往復運動を駆動軸の回転力に変換する。そして、エンジンの作動中は、シリンダ内のピストンの往復運動により振動のエネルギーが発生する。そして、従来のラジコンヘリコプターのエンジンは、上述した様に、クランクケースの下方側面でフレームに固定されているため、振動のエネルギーによりクランクケースの下方を中心にして振れる。従って、クランクケースがフレームに固定された位置から離れた遠心クラッチには大きな振動のエネルギーが伝達され易い。
【0005】
このエンジンの振動のエネルギーが遠心クラッチに伝達されると、振動のエネルギーは遠心クラッチから被駆動軸とフレームとを介してラジコンヘリコプター全体に伝達される。この振動のエネルギーの伝達により騒音が発生したり、ラジコンヘリコプターの部品を固定するボルトが緩んだり、互いに噛合するギヤ等の接触する部品同士が磨耗したりする虞がある。特に、近年のエンジンの高出力化に伴い、このような不具合が発生する虞がより高まっている。
【特許文献1】実用新案登録第3056951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、エンジンの振動のエネルギーがフレームに伝達されることを抑制した模型移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、ケース内に両端部で回転自在に軸支される駆動軸を有するエンジンと、フレームに回転自在に軸支され駆動軸の一方の端部に接続される被駆動軸とを備えた模型移動体において、エンジンのケースは、被駆動軸に接続される駆動軸の一方の端部側でフレームに固定され、駆動軸の他方の端部側でフレームに対して解放されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、エンジンのケースは被駆動軸に接続される駆動軸の一方の端部側でフレームに固定され駆動軸の他方の端部側でフレームに対して解放されている。そして、エンジンはフレームに固定された位置を中心に振れる。このため、エンジンは、駆動軸の他方の端部側で振動エネルギーを放出し、従来と比較して被駆動軸に接続される駆動軸の一方の端部側での振動のエネルギーの放出を抑えることができる。
【0009】
これにより、本発明は、ピストンの往復運動によるエンジンの振動のエネルギーが被駆動軸を介してフレームに伝達されることを抑制し、騒音を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の模型移動体の実施の形態を図を参照して詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の模型移動体はラジコンヘリコプターであり、図1は本実施形態のラジコンヘリコプターを側面から示した説明的断面図、図2は本実施形態のラジコンヘリコプターを正面から示した説明的断面図、図3は本実施形態のラジコンヘリコプターを上方から示した説明的断面図である。
【0012】
ラジコンヘリコプターは、板状の一対のメインフレーム11を備える。両メインフレーム11は地面に対して垂直な状態で互いに間隔を存して平行に配置され、ロッド12aにより連結されている。又、メインフレーム11の上方には一対の板状のサブフレーム13が設けられている。両サブフレーム13は、地面に対して垂直な状態でメインフレーム11の間隔よりも狭い間隔を互いに存して平行に配置され、ロッド12b(図2参照)により連結されている。サブフレーム13の下方部は、メインフレーム11の上方部とロッド12cにより接続されている。尚、図3ではサブフレーム13は省略して示している。
【0013】
エンジン2は、単気筒のいわゆる4サイクルエンジンであり、燃料としてガソリンが用いられている。又、エンジン2は、図1に示す様に、クランクケース21a内に回転自在に軸支される駆動軸としてのクランクシャフト21と、クランクシャフト21にコンロッド22aを介して接続されシリンダ23内を往復運動するピストン22とを備える。
【0014】
エンジン2は、クランクシャフト21の軸線が地面に垂直となる状態でメインフレーム11の間に配置される。エンジン2は、クランクシャフト21の軸線に対して垂直となる様に、即ち地面に対して水平となる様にシリンダ23が設けられている。そして、シリンダ23内でのピストン22の往復運動により、クランクシャフト21には径方向の振動のエネルギーが発生する。
【0015】
クランクシャフト21の上端部にはフライホイール24が設けられている。フライホイール24の下面にはファン24aが設けられている。ファン24aはクランクシャフト21の回転力を利用して冷却風を生成する。そして、生成された冷却風を、クランクケース21aにボルト21bで固定されたファンカバー24bにより、シリンダ23側へ導く。冷却風はトップカバー24cによりシリンダ23の周囲を流れる様に案内されてシリンダ23を冷却する。尚、図2では、トップカバー24cを省略して示している。
【0016】
フライホイール24の上端には動力継手3が設けられている。動力継手3の上端には遠心クラッチ41が設けられている。遠心クラッチ41の上端には駆動ギヤ42が設けられている。駆動ギヤ42は回転翼43のシャフト44に設けられた被駆動ギヤ45と噛合する。本実施形態においては、遠心クラッチ41及び駆動ギヤ42の軸部が被駆動軸に該当する。尚、シャフト44は一対のサブフレーム13の間に回転自在に軸支されている。
【0017】
又、エンジン2の下方にはスタータグリップ25a(図2参照)を備えるリコイルスタータ25が設けられている。このスタータグリップ25aを引張することによりクランクシャフト21を回転させ、エンジン2を始動させることができる。
【0018】
又、ファンカバー24bにはクランクシャフト21の軸線に対して径方向外方に張り出す一対の突片2aが設けられている。突片2aは上下両端に雄ネジを有するマウントゴム5aを介してマウントプレート5に固定され、マウントプレート5はメインフレーム11に固定される。エンジン2がマウントゴム5aを介してメインフレーム11に固定されることにより、エンジン2の振動のエネルギーがメインフレーム11に伝達されることをより抑制することができる。
【0019】
尚、本実施形態においては、マウントゴム2aにより2箇所でエンジン2をマウントプレート5に固定しているが、これに限られず、例えば、エンジン2をマウントゴム2aにより3箇所以上でマウントプレート5に固定してもよい。
【0020】
又、エンジン2は、クランクシャフト21の動力継手3が設けられた一方の端部側でマウントプレート5に取り付けられ、クランクシャフト21のリコイルスタータ25が設けられた他方の端部側でメインフレーム11に対して解放されている。このため、エンジン2は、振動のエネルギーによりマウントプレート5に取り付けられた箇所を中心に振れ、クランクシャフト21の他方の端部側で振動のエネルギーを放出し、クランクシャフト21の一方の端部側での振動のエネルギーの放出を抑制することができる。
【0021】
これにより、エンジン2の振動のエネルギーがクランクシャフト21の一方の端部から動力継手3を介してメインフレーム11に伝達され難くなり、騒音の発生や、ラジコンヘリコプターの部品を固定するボルトの緩みや、駆動ギヤ42や被駆動ギヤ45などの接触する部品同士の磨耗等を極力回避することができる。
【0022】
次いで、図4を参照して動力継手3を詳細に説明する。尚、図4では、動力継手3を分解した状態で示している。
【0023】
動力継手3は、駆動軸としてのクランクシャフト21側に設けられた駆動部材6と、遠心クラッチ41及び駆動ギヤ42で構成される被駆動軸側に設けられた被駆動部材7とで構成される。駆動部材6はフライホイール24の上に図示しないボルトで固定される円板部61と、円板部61の上面中央に遠心クラッチ41側に延びる円柱部62と、円柱部62の外周面から径方向外方に延び、周方向に等間隔で十字状に配置された4つの片部63とで構成される。
【0024】
被駆動部材7は、天板71と天板71の外周縁から垂下する筒状部72とで構成される。天板71は、駆動部材6の円柱部62と片部63とに対してクランクシャフト21の軸線方向に間隔を存するように配置される。筒状部72は、駆動部材6の片部63を径方向に間隔を存して受け入れられる様に構成されている。筒状部72の内周面には、片部63間の隙間を埋める様に配置された弾性部材としての4つの扇状ゴム73が焼付けにより固着されている。
【0025】
尚、筒状部72の周壁に径方向内方に突出する凸部を形成し、扇状ゴム73の径方向外方の曲面に凸部を受け入れる凹部を形成して位置決めしてもよい。これにより、扇状ゴム73の筒状部72に対する周方向への剛性が更に高まり、駆動部材6の回転力を被駆動部材7により確実に伝達させることができる。
【0026】
又、扇状ゴム73の径方向内方端は、円柱部62と径方向に間隔を存する様に切欠部73aが形成されている。これにより、動力継手3は、円柱部62から直接扇状ゴム73に径方向の振動のエネルギーが伝達されることを主に防止することができる。
【0027】
又、扇状ゴム73の径方向外方側の両端には切欠部73bが形成されている。この切欠部73bにより、扇状ゴム73の片部63と接触する接触部分73cと筒状部72の内周面との間に隙間が形成され、接触部分73cが径方向外方に撓み易くなる。これにより、エンジン2の振動のエネルギーが遠心クラッチ41や駆動ギヤ42の被駆動軸側に伝達されることをより抑制することができる。
【0028】
次いで、本実施形態のラジコンヘリコプターの作動について説明する。
【0029】
まず、リコイルスタータ25のスタータグリップ25aを引張してクランクシャフト21を回転させエンジン2を始動させる。エンジン2が作動すると、ピストン22はシリンダ23内で往復運動を行い、クランクシャフト21はこのピストン22の往復運動を回転力に変換する。
【0030】
このとき、ピストン22の往復運動によりエンジン2の振動のエネルギーが主に発生するが、マウントゴム5aが撓むことにより、エンジン2の振動のエネルギーがマウントプレート5を介してメインフレーム11に伝達されることを抑制する。これにより、騒音の発生や、ラジコンヘリコプターの部品を固定するボルトが緩んだり、駆動ギヤ42や被駆動ギヤ45などの接触する部品同士の磨耗等を抑制することができる。
【0031】
又、エンジン2は、リコイルスタータ25が設けられたクランクシャフト21の他方の端部側でピストン22の往復運動による振動のエネルギーを逃がすことができるため、マウントプレート5に取り付けられるエンジン2のクランクシャフト21の一方の端部側の振動のエネルギーの放出を抑制することができる。
【0032】
クランクシャフト21の回転力はフライホイール24を介して駆動部材6に伝達される。又、駆動部材6の回転力は被駆動部材7に伝達される。このとき、駆動部材6の片部63と被駆動部材7に設けられた扇状ゴム73とは、周方向でのみ接触する。このため、各片部63は夫々隣接する4つの扇状ゴム73を押圧し回転力を被駆動部材7に伝達させる。
【0033】
エンジン2の回転数が所定回転数以上となると、遠心クラッチ41は回転力を駆動ギヤ42に伝達し、駆動ギヤ42と噛合する被駆動ギヤ45及びシャフト44を介してラジコンヘリコプターの回転翼43が回転する。
【0034】
本実施形態のラジコンヘリコプターによれば、シリンダ23内での混合気の爆発やピストン22の往復運動により発生した振動のエネルギーのうち駆動軸の径方向の振動のエネルギーは、扇状ゴム73により吸収される。又、駆動部材6は、被駆動部材7に固着されておらず、又、駆動軸の回転方向で扇状ゴム73を介して接触しているだけであるため、被駆動部材7に対して軸方向に微動することができる。このため、エンジン2により発生する振動のエネルギーが被駆動軸側に伝達されることを抑制させることができる。
【0035】
又、切欠部73bにより扇状ゴム73の片部63と接触する接触部分73cは径方向外方に撓み易くなっている。このため、片部63の振動のエネルギーを接触部分73cで逃がし易くなり、駆動部材6の振動のエネルギーが被駆動部材7に伝達されることをより抑制することができる。従って、グローエンジンよりも出力の高いガソリンエンジンをラジコンヘリコプターに搭載しても、エンジンの振動のエネルギーによるラジコンヘリコプターの騒音の発生や、部品の損傷等を抑制することができる。
【0036】
尚、本実施形態においては、動力継手3をフライホイール24と遠心クラッチ41との間に配置したものを説明したが、これに限られず、例えば、動力継手3を遠心クラッチ41の上方に設けてもよい。この場合、ギヤ42は、動力継手3の上に配置される。
【0037】
又、本実施形態においては、駆動部材6に片部63を設け、被駆動部材7に筒状部72と扇状ゴム73とを設けたものを説明したが、駆動部材6に筒状部72と扇状ゴム73とを設け、被駆動部材7に片部63を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態のラジコンヘリコプターを側面から示した説明図。
【図2】本実施形態のラジコンヘリコプターを正面から示した説明図。
【図3】本実施形態のラジコンヘリコプターを上方から示した説明図。
【図4】本実施形態の模型移動体用動力継手の説明図。
【符号の説明】
【0039】
11…メインフレーム、 13…サブフレーム、 2…エンジン、 2a…突片、 21…クランクシャフト(駆動軸)、 21a…クランクケース(ケース)、 22…ピストン、 23…シリンダ、 24…フライホイール、 3…動力継手、 41…遠心クラッチ、 42…駆動ギヤ、 43…回転翼、 44…シャフト、 45…被駆動ギヤ、 5…マウントプレート、 5a…マウントゴム、 6…駆動部材、 61…円板部、 62…円柱部、 63…片部、 7…被駆動部材、 72…筒状部、 73…扇状ゴム(弾性部材)、 73b…切欠部、 73c…接触部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に両端部で回転自在に軸支される駆動軸を有するエンジンと、フレームに回転自在に軸支され前記駆動軸の一方の端部に接続される被駆動軸とを備えた模型移動体において、
前記エンジンのケースは、前記被駆動軸に接続される前記駆動軸の一方の端部側で前記フレームに固定され、該駆動軸の他方の端部側で前記フレームに対して解放されていることを特徴とする模型移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−237713(P2008−237713A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84995(P2007−84995)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】