説明

模擬銃用標的装置

【課題】紙ないしはプラスチックを材料として安価に形成することができ、命中時の演出効果も良好であり、しかも耐久性のある模擬銃用標的装置を提供する。
【解決手段】本体にターゲットを着脱可能に設け、弾丸が命中するとそのターゲットが本体から飛び出すように構成された装置について、上面に少なくとも1個のスリット16を有し、そのスリットの下方を空所とし、かつスリットの縁にターゲット12を掛け止めるため高強度の掛け止め部を設けた本体11と、シート状の部材より成り、下部にて上記スリットに差し込まれ、上記掛け止め部に掛け止められる掛け部を上部に有している上記のターゲット12と、スリット内部へのターゲットの差し込みによりばね力を高めるため、スリットを横断する方向に取り付けられた弾性部材13を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体に着脱可能に設けたターゲットに弾丸が命中すると、そのターゲットが本体から飛び出すように構成された模擬銃用標的装置に関するもので、特にソフトエアガンに適した簡易な模擬銃用標的装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にソフトエアガン或いはエアソフトガンなどと通称され、遊戯銃ないしは玩具銃として扱われている銃は殺傷能力を有していない銃を指す呼称として使われているが、本発明においては、銃を模した外観、機能を有するという意味で模擬銃と称している。この種の銃は、標的に向けて弾丸を発射し命中率などを競うような遊び方で使用されており、その標的も様々のものが市販されている。しかし市販されている標的は同心円状の的を印刷したような簡単なものか、或いは電動式の複雑過ぎるものに分かれる傾向がある。
【0003】
例えば標的に命中すると破壊される様子を表現する演出効果のある「分解演出装置」という特開2002-931号がある。同号の発明は、破壊される様子を演出した後、破壊される前の状態に復元するが、上記のような演出効果を発揮させるためには赤外線センサー類、モーターの駆動系、ギヤ機構、リンク機構などから成る機械装置を必要とし、簡単かつ安価に提供できるものではない。
【0004】
これに対し、実開平6−17796号として開示されている「的になるパッケージ」はコストをかけずに面白い的を形成することを目的とするもので、玩具の銃を形成するプラスチックモデルキットと、シート状の的板と、これらを収納する箱体とでパッケージを構成しており、その内の箱体にフレームを立てて、的板を取り付けるときに輪ゴムを引っ張り、命中すると的板がフレームから外れてジャンプする。従って命中による効果もあり、また廃物利用ともなる点有効であると考えられるが、それには玩具の銃を形成するプラスチックモデルキットを購入しなければならない。その上シート状の的板は板紙からなり、係止用の孔にてフレームの係止用突起に引っ掛ける構造であるので、この孔の縁が損傷した場合には使用不能となる。よって上記の考案のものは、購入者がその後一時的に使用することができるおまけ的なものと考えることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002-931号
【特許文献2】実開平6−17796号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、紙ないしはプラスチックを材料として安価に形成することができ、命中時の演出効果も良好であり、しかも耐久性のある模擬銃用標的装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、不使用時には折り畳んで嵩張らず、使用時には簡単に組み立てられる模擬銃用標的装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、本体にターゲットを着脱可能に設け、弾丸が命中するとそのターゲットが本体から飛び出すように構成された装置として、
上面に少なくとも1個のスリットを有し、そのスリットの下方を空所とし、かつスリットの縁にターゲットを掛け止めるため強度の高い掛け止め部を設けた本体と、
シート状の部材より成り、下部にて上記スリットに差し込まれ、上記掛け止め部に掛け止められる掛け部を上部に有しているターゲットと、
スリット内部へのターゲットの差し込みによりばね力を高めるために、スリットを横断する方向に取り付けられた弾性部材を備えて構成する
という手段を講じたものである(請求項1)。
【0008】
本発明の装置は、弾丸が命中するとそのターゲットが本体から飛び出すというパフォーマンスを有する点において良好な演出効果を期待することができるものであり、それを安価に実現し、かつ耐久性を具備することを特徴とする。このために本発明は、上面に少なくとも1個のスリットを有し、そのスリットの下方を空所とし、かつスリットの縁にターゲットを掛け止めるため高強度の掛け止め部を設けた本体を具備する。なお、ターゲット取り付け部がスリットであることは本体を紙箱製とする場合に開口度合いが少なく、構造の脆弱化を招かないで済むという利点にもつながる。
【0009】
本発明に係る装置は、スリットの縁にターゲットを掛け止めることと、そのための掛け止め部が高強度に設けられていることを一つの特徴とする。スリットの縁が掛け止め部であることにより、特別の構造を設けなくても目的を達成できる可能性がある。高強度の掛け止め部は、例えば本体を構成している部材をスリットの縁において折り曲げるか、或いは別部材をスリットの縁に張り合わせるようにして構成することができる(請求項2)。前者の部材を折り曲げることによりスリットの縁が強化されるし、後者の張り合わせる部材は紙以外でも良いので、さらにスリットの縁を強化することもできる。
【0010】
上記ターゲットとしては、シート状の部材より成り、下部にて上記スリットに差し込まれ、上記掛け止め部に掛け止められる掛け部を上部に有しているものを使用する。ターゲットは、本体よりも上に出る上部の表面に標的となる図柄を有していることが望ましい。しかし、本発明におけるターゲットは本体から飛び出すように構成されているので、重量が過大でないという要請はあるが、それ以外の具体的な形状、構造については自由に選択することができる。
【0011】
上記掛け止め部と掛け部との関係については、次の態様を採用することができる。例えば、掛け止め部がスリットの縁から突き出ており掛け部はターゲットに形成された開口部(の縁)であるケースと、掛け止め部がスリットの縁であり掛け部はターゲットの一面から突き出た部分であるケースである(請求項3)。
【0012】
そして本発明の装置は、ターゲットを飛び出させる弾性部材として、スリット内部へのターゲットの差し込みによりばね力を高めるために、スリットを横断する方向に取り付けられた弾性部材を備えて構成する。このようにして、弾性部材を配置することでターゲットの取り付けが容易になる。また、弾性部材として輪ゴムを使用することができ、かつその場合には弾性部材の取り付けが非常に容易になる。
【0013】
上記した本体、ターゲット及び弾性部材を取り付ける弾性部材保持体は紙製、プラスチック製又は同効の資材より成るシート材によって形成し、本体と弾性部材保持体は紙製、プラスチック製又は同効の資材より成るシート材を用いたブランクを折り曲げて立体に組み立てることができる(請求項4)。本体は箱構造、弾性部材保持体は枠構造を取ることができ、何れも折り畳み可能とすることができるので、組み立てと折り畳みの容易な模擬銃用標的装置の実現に寄与する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、紙ないしはプラスチックを材料として安価に形成することができ、命中時の演出効果も良好であり、しかも耐久性のある模擬銃用標的装置を提供することができる。また、本発明によれば、不使用時には折り畳んで嵩張らず、使用時には簡単に組み立てられる模擬銃用標的装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図示の実施形態を参照し、本発明に係る模擬銃用標的装置についてより詳細に説明する。図1ないし図3は、本発明に係る例1の模擬銃用標的装置10を示すもので、この装置10は、図2に示すように直方体形状から成る箱型の本体11、ターゲット12、輪ゴムから成る弾性部材13及び弾性部材保持体14によって構成されている。
【0016】
例1の模擬銃用標的装置10の場合、本体11は図3に示すように紙製、プラスチック製又は同効の資材より成るシート材を用いたブランク15を折り曲げて立体に組み立てる構造を有しており、このブランク15は、スリット16を2個長手方向に配列した上面17、それと前後2辺を共有する前面18と後面19、左右両辺を共有する左面21と右面22及び底面23の各部分を有しており、各面は夫々の辺部に付属するのり代によって接触し、所期の立体形状を維持することができる。のり代によって各面を接着してしまえば、強固な箱構造になるが、接着しないことにより折り畳みと再組み立てを自由に行なうことができる。従って底面用のり代23aを除くのり代は厳密にはのり代と言えない性格の部分でもあるが、説明の便宜上のり代と呼ぶ。
【0017】
図1の例では、弾性部材保持体14もブランク20によって形成されている。このブランク20は、本体11の内部に組み込んで用いるもので、本体内部高さより僅かに低い高さを持つ片面3箇所の柱部24を有する前後の板部25、26と、両板部25、26をつなぐ中央板部27とから成り、中央板部27は本体内部の幅より僅かに狭い幅を持っている。中央板部27は、さらに、本体のスリット16の直下に位置するスリット28を2個長手方向に配列し、スリット16、28を横断する方向に弾性部材13である輪ゴムを取り付けるために、中央板部27の前後両辺部に各2箇所ずつ形成した切り込み29、30を有している。
【0018】
例1の模擬銃用標的装置10では、別部材をスリットの縁に張り合わせるようにして高強度の掛け止め部31を形成している。例1の場合、掛け止め部31としてスリット16の縁から突き出る部分を有する別部材32を、本体11の内面に貼り付けている(図3参照)。従って例1において掛け止め部31に掛け止められるターゲット12の掛け部33は、ターゲットのやや下部に形成された開口部34の一部であり、具体的には開口部34の下縁になる。35は実際の標的となる部分であり、ターゲット上部に適切な大きさ及び形態に設けられている。
【0019】
このように構成された例1の模擬銃用標的装置10を使用するには、図4Aに示したようにターゲット12をスリット16に後方からやや斜めに差し込み、ターゲット12を弾性部材13の輪ゴムの弾力に抗して押し込み、開口部34が掛け止め部31の位置に来たところで掛け止め部31を掛け部33に係止させ、ターゲット12を自立状態にする。ここでソフトエアガンから弾丸36を発射し、それが標的部分35に命中すると、ターゲット12が後方へ押圧されるのに伴って掛け止め部31から掛け部33の係止が外れるので(図4B)、ターゲット12が上記輪ゴムの弾力によって本体11から飛び出すこととなる(図4C)。
【0020】
掛け止め部と掛け部の関係は上記例1に限らずその逆の関係に構成することができるので、それを例2として次に説明する。例2は図5ないし図7に示すように直方体形状から成る箱型の本体11′、ターゲット12′、輪ゴムから成る弾性部材13及び弾性部材保持体14′によって構成されている点など、基本的な点は例1のものと同じであるので、共通する構成については符号を援用して詳細な説明を省略し、以下要点についてのみ説明する。
【0021】
例2の模擬銃用標的装置10′は、本体11′を構成している部材を、スリット16′の縁において折り曲げることによって強度の高い掛け止め部37を形成することを特徴とする。即ち、例2における掛け止め部37は、スリット16′を形成するためにスリット16′の1辺を残して本体上面を打ち抜き、打ち抜き部を残した1辺にて折り曲げることによって強度を高めた掛け止め部37を形成したものである。
【0022】
例2において掛け止め部37に掛け止められるターゲット12′の掛け部38は、ターゲット12′のやや下部に形成されたターゲット前面から突き出た部分であり、厳密には突き出た部分の上縁になる。この掛け部38としては、例えば凸形状の紙製の部品39を作製し、それを開口部34の裏側からターゲット12に接着して形成することができる。従って例2の場合、本体11′の主要部分及び弾性部材13を取り付ける弾性部材保持体14については例1のものと同じ構成で良いが、掛け止め部37については上記折り曲げ構成を採用した図6に示すブランク15′及び例1のものと同じブランク20を使用し、各部を折り曲げて立体に形成することになる。
【0023】
例2の模擬銃用標的装置10′を使用する方法は例1の場合と同じである。図7に具体的に説明されているように、ターゲット12′をスリット16′に弾性部材13の弾力に抗して押し込みながら、掛け部38を折り曲げによって強度を高めた掛け止め部37に掛け止める。ただし、ターゲット12′はコの字型の掛け部38を有し、例1の掛け部33とは異なるので、弾丸命中による例2のターゲット12′の外れ方は例1のものとやや異なる可能性があるので、ソフトエアガンの威力や標的の性格などの相違に応じて例1と例2のものを使い分けることができる。
【0024】
本発明に係る例1及び例2の模擬銃用標的装置10、10′では、左面21、右面22を開いて本体11、11′を扁平に折り畳み、かつまた弾性部材保持体14を扁平に折り畳むことができる。その状態は図8に示されているが、このように折畳みが可能であるによって、持ち歩くことが苦にならずどこへでも携帯できるので大変有利である。
【0025】
しかし本発明は折り畳み式でない模擬銃用標的装置40も提供することができるのでそれを例3として図9、図10に示す。例3の模擬銃用標的装置40は、下部を開放した箱型に形成され、上面に2個のスリット46を有する本体41と、本体41内部に嵌め合わされる箱型を有し、弾性部材13を取り付ける弾性部材保持体44から成るもので、少なくとも本体41はプラスチックによって形成されている。本体41と弾性部材保持体44は、凹凸から成る嵌合構造45、47によって分離可能である(図10参照)。弾性部材保持体44はその上面にスリットを挟んで設けた切り込み29、30を有し、そこに弾性部材13としてゴムリングを取り付けているもので、スリット46の縁はプラスチック製であるから、そのままターゲット42を掛け止めるため高強度の突状の掛け止め部48を構成する。
【0026】
例3の場合においても使用方法は例1、例2の場合と変わらない。これらのどの例においても、ターゲット12、12′、42を飛び出させる力は輪ゴムに代表される弾性部材13によって得ている訳であるが、その強弱はターゲット12、12′、42を押し下げたときに生じる弾性部材13の弾性力の度合いによって変わり、弾性力は例えば輪ゴムの本数や、伸ばされる長さによって変わるので、各自が適宜に条件を変えることでターゲット12、12′、42の飛び方に変化を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る模擬銃用標的装置の例1を示す斜視図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】例1の装置を構成するブランクを示すもので、Aは本体の展開図、B弾性部材保持体の展開図である。
【図4】例1の装置の使用状態を段階A、B、Cを追って示す説明図である。
【図5】本発明に係る模擬銃用標的装置の例2を示す斜視図である。
【図6】例2の装置を構成するブランクを示すもので、Aは本体の展開図、B弾性部材保持体の展開図である。
【図7】例2の装置の使用状態を段階A、B、Cを追って示す説明図である。
【図8】本発明に係る模擬銃用標的装置の折り畳み状態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る模擬銃用標的装置の例3を示す斜視図である。
【図10】例3の装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10 模擬銃用標的装置
11、11′、41 本体
12、12′、42 ターゲット
13 弾性部材
14、14′、44 弾性部材保持体
15、15′、20 ブランク
16、16′、28、46 スリット
17 上面
18 前面
19 後面
21 左面
22 右面
23 底面
24 柱部
25 前板部
26 後板部
27 中央板部
29、30 切り込み
31、37、48 掛け止め部
32 別部材
33、38 掛け部
34 開口部
35 標的部分
36 弾丸
39 部品
45、47 嵌合構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体にターゲットを着脱可能に設け、弾丸が命中するとそのターゲットが本体から飛び出すように構成された装置であって、
上面に少なくとも1個のスリットを有し、そのスリットの下方を空所とし、かつスリットの縁にターゲットを掛け止めるため高強度の掛け止め部を設けた本体と、
シート状の部材より成り、下部にて上記スリットに差し込まれ、上記掛け止め部に掛け止められる掛け部を上部に有しているターゲットと、
スリット内部へのターゲットの差し込みによりばね力を高めるために、スリットを横断する方向に取り付けられた弾性部材を備えて構成された
模擬銃用標的装置。
【請求項2】
高強度の掛け止め部は、別部材をスリットの縁に張り合わせるか、或いは本体を構成している部材をスリットの縁において折り曲げるようにして構成されている請求項1記載の模擬銃用標的装置。
【請求項3】
掛け止め部がスリットの縁から突き出ており掛け部はターゲットに形成された開口部であるか、或いは、掛け止め部がスリットの縁であり掛け部はターゲットの一面から突き出た部分である請求項1記載の模擬銃用標的装置。
【請求項4】
本体、ターゲット及び弾性部材を取り付ける弾性部材保持体は紙製、プラスチック製又は同効の資材より成るシート材によって形成し、本体と弾性部材保持体は紙製、プラスチック製又は同効の資材より成るシート材を用いたブランクを折り曲げて立体に組み立てた構成を有している請求項1記載の模擬銃用標的装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−136400(P2009−136400A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314002(P2007−314002)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(592153584)株式会社東京マルイ (29)
【Fターム(参考)】