説明

模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法及び製造器具

【課題】白身部分3の中に、模様状の黄身部分2が存在する目玉焼1を簡単に製造する製造方法、及びその製造方法に用いる器具を提供する。
【解決手段】移動しない状態にした黄身の上に、模様を切り抜いた模様板を載置し、その後模様板載置部分の黄身を加熱凝固させる、模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法である。未凝固の黄身を移動しない状態にするには、黄身の周囲の白身部分を半凝固乃至凝固させる方法がある。また、本発明は、黄身を納める凹部を設けた容器に、割卵した全卵を落し、黄身を前記凹部に納めた状態で、この黄身の上に、模様を切り抜いた模様板を載置し、その後加熱して黄身及び白身を凝固させる、模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法である。また、黄身を納める凹部を設けた容器と、模様を切り抜いた模様板とからなる模様付き黄身を有する目玉焼製造のための器具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄身の部分を、任意の形状、例えばハート型に成形した目玉焼を製造する方法、及びこの製造方法に用いる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
目玉焼は、加熱したフライパンに割卵した全卵を落し込み、白身及び黄身を凝固乃至は半凝固させたものである。目玉焼は、通常、ほぼ円形に広がった白身のほぼ中央部に丸い黄身が存在する形状を有する。従来から、目玉焼について、白身部分や黄身部分を所定の形状にした目玉焼が提案されている。例えば、フライパンの中に載置し、その中央部の内枠内に全卵を投入し、黄身のみが中央部の内枠内に残り、白身は内枠底部の間隙から内枠の外へ流れ出して外枠の内側面に広がり、この外枠の形状に合致した目玉焼ができるようにした目玉焼具が提案されており、上記の外枠の形状を円形、ハート形、楕円形、その他動物の形など所定の形状にすることが提案されている(特許文献1)。この目玉焼具を用いると、所定の形状の白身部分の中に、丸い黄身が存在する目玉焼が作れる。
【0003】
また、黄身を所定の形状にした目玉焼が提案されている(特許文献2)。すなわち、フライパンに白身だけを落し、白身の盛り上がっている部分に所定の模様を形成させる器具を置いて加熱して白身を凝固させ、その後この器具を取り除くことによって、凝固した白身に所定の模様例えばハート形の穴を形成し、この穴の中に黄身を入れて再び加熱して黄身を凝固させることが提案されている。これによると、白身の中に黄身で文字や模様を形成した目玉焼が得られる。しかし、この方法は、煩雑である。
【特許文献1】実開平7−9229号公報
【特許文献2】特開2003−299463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、目玉焼において、白身部分の中に、模様状の黄身部分が存在する目玉焼を簡単に製造する製造方法、及びその製造方法に用いる器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、白身部分の中に、模様状の黄身部分が存在する目玉焼を作るべく種々実験し、検討した。例えば、フライパンの上に、所定の模様を切り抜いた適当な厚さの模様板を置き、その模様板の模様の中に黄身が納まるように全卵を落として加熱し、凝固させてみた。この方法では、黄身の底部が辛うじて模様板の模様になるが、黄身の上面は丸味のままであった。この現象は模様板の厚みを厚くしても同様であった。ところが、たまたま、黄身を移動しない状態にして、その未凝固の黄身の上に模様板を載置して加熱したところ、黄身が凝固する過程で模様板の模様の中に入り込み、所定の模様が形成されることを知見した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0006】
すなわち、本発明は、移動しない状態にした黄身の上に、模様を切り抜いた模様板を載置し、その後模様板載置部分の黄身を加熱凝固させることを特徴とする模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法である。また、本発明は、割卵した全卵を鉄板上に落し、鉄板を加熱して白身部分を半凝固乃至凝固させることによって、黄身を移動しない状態にし、この黄身の上に模様を切り抜いた模様板を載置し、その後模様板載置部分の黄身を加熱凝固させることを特徴とする模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法である。
【0007】
また本発明は、黄身を納める凹部を設けた容器に、割卵した全卵を落し、黄身を前記凹部に納めて黄身を移動しない状態にし、この黄身の上に、模様を切り抜いた模様板を載置し、その後加熱して黄身及び白身を凝固させることを特徴とする模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法である。更に、本発明は、上記の発明方法に使用する器具、すなわち、黄身を納める凹部を設けた容器と、模様を切り抜いた模様板とからなる模様付き黄身を有する目玉焼製造のための器具である。この黄身を納める凹部は、容器の底面に凹みを作って形成したもの、或は容器の底面に傾斜を付けて形成したものが好ましい。また、模様板に取っ手を付けるのが好ましく、またこの模様板はシリコーン製のものが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
通常の目玉焼は、ほぼ円形に広がった白身のほぼ中央部に丸い黄身が存在する形状である。本発明によれば、簡単な器具を用いて、簡単な方法で、その丸い黄身部分の上部の部分が任意の模様、例えばハート形、星形、動物形、人形をした目玉焼、或は、その丸い黄身部分の全部が任意の形状、例えばハート形、星形、動物形、人形をした目玉焼を得ることができる。この目玉焼は、見た目に変化が出て、消費者の興味を引き、或は食欲をそそる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法に関する。ここで「模様付き黄身」とは、目玉焼における黄身部分の上部の部分或は黄身部分の全部がハート形、星形、動物形、人形など任意の模様・形状になっていることを指す。図1は、本発明方法で得られた模様付き黄身を有する目玉焼の斜視図である。1は目玉焼である。2はその黄身部分で、3はその白身部分である。この例では、黄身部分2の全部がハート形を呈している。
【0010】
本発明の目玉焼の製造方法を説明する。本発明は、目玉焼を製造するとき、未凝固の状態の黄身に上に模様を切り抜いた模様板を載置し、その後黄身を加熱凝固させて、模様付き黄身を有する目玉焼を得るものである。この模様板を載置して黄身を加熱凝固させるとき、黄身が移動すると模様が崩れる。そのため、本発明では、黄身を移動しない状態にしてから黄身の上に模様板を載置する。この黄身を移動しない状態にするには、以下に説明するように、周りの白身部分を半凝固乃至凝固させることによって黄身を移動しなくする方法、また凹部を設けた容器を用い、その凹部の中に黄身を納めて移動しなくする方法などがある。
【0011】
目玉焼を製造すべく全卵を鉄板に落下させると、全卵は、広がった白身のほぼ中心部に黄身が盛り上がって存在する状態になる。この状態で鉄板の加熱を始めると、まず、白身部分が凝固をはじめる。周囲の白身部分の凝固によって黄身部分は未凝固の状態で移動しない状態になる。この状態のとき、未凝固の黄身の上に模様例えばハート形を切り抜いた模様板を載置し、その後模様板載置部分の黄身を加熱凝固させる。黄身は凝固する過程で、ハート形に切り抜いた模様板のハート形内に入り込み、最終的には、黄身部分の上部の部分にハート形が形成され、或は黄身部分全部が美麗なハート形になる。かくして、模様付き黄身を有する目玉焼が得られる。
【0012】
また、黄身を納める凹部を設けた容器を用意する。この容器に割卵した全卵を落し、黄身部分を凹部に納める。次いで、黄身の上に、模様例えばハート形を打ち抜いた模様板を載置する。その後、容器をフライパン、オーブン、蒸し器、電子レンジなどを用いて加熱し、容器内の黄身部分と白身部分を凝固させる。黄身は凝固する過程で、ハート形に切り抜いた模様板のハート形内に入り込み、最終的には、黄身部分の上部の部分にハート形が形成され、或は黄身部分全部が美麗なハート形になる。かくして、模様付き黄身を有する目玉焼が得られる。模様板を載せて凝固する際に、黄身が移動すると、黄身に模様を形成させることができない。本発明では、黄身を納める凹部を設けた容器を用い、この加熱凝固時に黄身が移動しないようにする。
【0013】
原料の卵は制限されないが、鶏卵が好ましく用いられる。新鮮な卵が好ましい。黄身が崩れやすい古い卵は、模様板を載置するとき、卵黄膜が破れ黄身が流れ出す危険があるので、取扱いが難しい。また、上述の電子レンジを用いて加熱凝固する場合は、卵黄膜を爪楊枝、箸、竹くしなどで刺し、卵黄膜に穴をあけてから加熱する。マイクロ波による加熱は、温度が急激に上昇するので、黄身の凝固時間が短くなる。黄身の模様の形成は、加熱凝固時に黄身が模様板に沿って模様内に流れ込み、凝固することにより行なわれるから、凝固時間が短かいと、美麗な模様が形成されないことがある。そのため、電子レンジのワット数を下げてなるべくゆっくり加熱するのが好ましい。加熱凝固が終了したら、容器から取り出し、皿に移して消費者に供する。目玉焼には、片面焼き(サニーサイド)と両面焼き(ターンオーバー)があるが、本発明では片面焼きが好ましい。両面焼きは、折角成形した黄身表面が汚くなるからである。
【0014】
上述の黄身を納める凹部を設けた容器について説明する。この容器は、鉢状でも、皿状でもよく、その形状は限定されないが、その底面に黄身を納める凹部を備えている。図2は、本発明で用いる容器の一例の斜視図である。4は容器で、この例は鉢状の容器である。5は凹部である。この凹部5は、上述した如く、割卵した卵を加熱凝固するとき、黄身部分を移動しないようにするためのものである。この凹部は、例えば、容器の底を円形状に窪ませて設けたものでも、また中華鍋の如く容器の底面に中心に向かって傾斜を付けて形成させたものでもよい。この凹部の径は、黄身の径よりも多少大きくても差し支えない。深さは、黄身がある程度固定できる深さであればよい。例えば、鶏卵の場合、凹部の径は直径30〜50mm、深さは0.5〜3.0mmが好ましい。コーヒーカップの受け皿なども上記の容器として使用できる。
【0015】
容器4に鉢状の容器を用いる場合には、その形状を変えることによって、例えば、四角形、星形、ハート形、動物形、人形など任意の形状にすることにより、白身部分の形を変えることができる。また容器4の使用にあたっては、加熱凝固して仕上がった目玉焼が容器から良く剥がれるように、容器4の内面に油を敷くか離型紙を敷くのが好ましい。容器の素材は、陶磁器製でも、金属製でもよいが、特に好ましいのは、シリコーン製の容器である。シリコーンは、離型性に優れているからである。
【0016】
次に、黄身の模様付けに用いる模様板について説明する。この模様板は、板を模様に切り抜いて作成する。この模様は、例えばハート形、星形、動物形、人形などである。図3は、本発明で用いる模様板の一例の斜視図である。6は模様板、7は模様板を切り抜いて設けた模様で、ここではハート形にしてある。8は取っ手であり、模様板を凝固した目玉焼から取り外すときに指で摘む部分である。この取っ手8は設けても設けなくてもよい。模様7の大きさは、黄身の大きさよりやや小さめの方が、模様7の隅々まで行き渡るので好ましい。模様7を黄身より大きくするのはその意味において好ましくない。また、模様7の形状は、極端に鋭角な部分が無い方が好ましい。これは卵黄膜を傷つけなくするためである。
【0017】
目玉焼の黄身部分に模様を付ける場合、黄身部分の上部の部分に所定の模様が付されるか、或は黄身の部分全部が所定の形状になるかは、模様板の厚さ及び重さに大きく影響される。したがって、この模様板の厚さ及び重さを適宜に変えることによって、黄身部分への模様の付与部分を調整することができる。例えば、径が30mmの鶏卵の材料にし、模様板の模様をハート形にし、その模様の大きさを黄身の径とほぼ同じくしたとき、厚さ2.5mmで重さ3gの模様板を使用した場合は、黄身部分の上部に厚さ2〜3mmのハート模様が形成された。また、厚さ5.0mmで重さ30gの模様板を使用した場合は、黄身部分の上部に厚さ5〜6mmのハート模様が形成された。
【0018】
模様板の厚さは2〜15mmが好ましい。2mm以下ではクリアーな模様を黄身表面に形成させにくい。また15mm以上では、模様成形後に、模様板を円滑にとり外すことが難しいのでので好ましくない。更に好ましくは5〜10mmである。また、模様板の重量は5〜100gが適当である。好ましくは20〜60gである。また、模様板は円形が好ましい。また、模様の縁と、模様板の外縁との距離が小さいほど、模様板の剥離が容易になる。模様板の素材は特に限定するものでなく、陶磁器製や金属製でよいが、離型性の面からシリコーン製が最も好ましい。
実施例1
【0019】
Mサイズの鶏卵(62g)を、黄身を傷つけないように割卵し、全卵をフライパンの上に落した。白身部分が広がり、そのほぼ中心に黄身が丸く盛り上がった状態で存在した。フライパンを加熱した白身部分が凝固し、黄身部分が凝固しない状態のときに、黄身の上に、模様の大きさが黄身の径とほぼ同じで、ハート形をくり抜いた厚さ3mmのシリコーン板を載せて、加熱を続け、黄身部分を凝固させた。その後、シリコーン板を取り除いた。黄身の上部がハート形をした目玉焼を得た。
実施例2
【0020】
Mサイズの鶏卵(62g)を、黄身を傷つけないように割卵し、凹部の窪みを持ったコーヒーカップの受け皿に移し、その黄身の上に、模様の大きさが黄身の径とほぼ同じで、ハート形をくり抜いた厚さ10mmのシリコーン板を載せて、オーブン(1200ワット)で5分間、加熱凝固させた。その後、シリコーン板を取り除いた。黄身全体がハート形をした目玉焼を得た。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明方法で製造した目玉焼の一例の斜視図
【図2】本発明の製造方法で用いる容器の一例の斜視図
【図3】本発明の製造方法で用いる模様板の一例の斜視図
【符号の説明】
【0022】
1 目玉焼、2 黄身部分、3 白身部分、4 容器、5 凹部、6 模様板、7 模様、8 取っ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動しない状態にした黄身の上に、模様を切り抜いた模様板を載置し、その後模様板載置部分の黄身を加熱凝固させることを特徴とする模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法。
【請求項2】
割卵した全卵を鉄板上に落し、鉄板を加熱して白身部分を半凝固乃至凝固させることによって、黄身を移動しない状態にし、この黄身の上に模様を切り抜いた模様板を載置し、その後模様板載置部分の黄身を加熱凝固させることを特徴とする模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法。
【請求項3】
黄身を納める凹部を設けた容器に、割卵した全卵を落し、黄身を前記凹部に納めて黄身を移動しない状態にし、この黄身の上に、模様を切り抜いた模様板を載置し、その後加熱して黄身及び白身を凝固させることを特徴とする模様付き黄身を有する目玉焼の製造方法。
【請求項4】
黄身を納める凹部を設けた容器と、模様を切り抜いた模様板とからなる模様付き黄身を有する目玉焼製造のための器具。
【請求項5】
黄身を納める凹部が、容器の底面に凹みを作って形成したものである請求項4記載の模様付き黄身を有する目玉焼製造のための器具。
【請求項6】
黄身を納める凹部が、容器の底面に傾斜を付けて形成したものである請求項4記載の模様付き黄身を有する目玉焼製造のための器具。
【請求項7】
模様板に取っ手を付けた請求項4〜6のいずれかに記載の模様付き黄身を有する目玉焼製造のための器具。
【請求項8】
模様板がシリコーン製である請求項4〜7のいずれかに記載の模様付き黄身を有する目玉焼製造のための器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−267610(P2007−267610A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93881(P2006−93881)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506108952)
【出願人】(502447815)
【Fターム(参考)】