説明

模様付けローラー及びこのローラーを用いた模様の形成方法

【課題】建築物の外壁、内壁、天井、床面等に新規な模様を形成したり、あるいはそれらの部位に用いられる建材表面に模様を形成する為のローラー及びそのローラーを用いた模様の形成方法に関する。
【解決手段】模様付けローラーにあっては、模様形成外囲基準面としての円柱状基面とこの基面への円周方向に平行な複数の座金状凸条と凸条間に挟まれた溝部分を部分的に覆う円弧状突起を形成する。また、座金状凸条の高さが円弧状突起の高さに比べ高くすること、円弧状突起の円周方向片端ないし両端の突起高さを他の部分に比べ高くしたこと、座金状凸条が3本以上であり、異なる溝に形成した隣接する円弧状突起が円柱状基面の円周方向において、異なる角度位置に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁、内壁、天井、床面等に新規な模様を形成したり、あるいはそれらの部位に用いられる建材表面に模様を形成する為のローラー及びそのローラーを用いた模様の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁、内壁、天井、床面等に凹凸のある模様を、塗材を用いて直接形成するための方法が、種々提案され、また実施されている。それらの方法を大別すると、塗装(吹き付けを含む)により模様を形成するもの、ローラーを用いて模様を形成するもの、鏝を用いて模様を形成するもの、これらの複合によるものがある。なお、文献によっては、模様形成部分となるローラーとその他の部分である取手、ローラーの支持軸等を含めて、単にローラーと称する場合もある。
【0003】
これら模様の形成方法のうち、ローラーを用いた塗装方法に、例えば特開昭60−241971、本件出願人による特開2002−317551に示される技術がある。また、模様を形成するためのローラーカバーの意匠に意匠登録第728172号があった。
【0004】
特許文献1として示す、特開昭60−241971ではローラー表面に平行な凸条を設け、ローラー表面全面に塗材を馴染ませて、被塗装面に複数の平行なあるいは複数の正弦カーブを示す模様を形成するものであった。
【特許文献1】特開昭60−241971号公報(第1図、第2図)
【0005】
また、特許文献2として示す、特開2002−317551では、先に被塗装面に塗材を塗り付けておき、その塗材が未乾燥状態にある間に、ローラー表面に形成された平行な凸条を押さえつけることにより、押さえつけた部分と押さえ前の表面模様の二つを活かすものであった。
【特許文献2】特開2002−317551号公報(特許請求の範囲、図面)
【0006】
特許文献3として示す、意匠登録第728172号では、ローラーカバーの意匠を示し、このローラーカバーを用いた商品が、明研化学工業(株)から商品名「ボッセルコート」として存在している。この商品では、塗材を壁面等に塗り付けた後、その塗材が未乾燥状態にある間に、ローラーカバー表面の凹凸が全て塗材に転写されるように転動させ、ローラーカバー表面の凹凸と塗材の粘性の相互作用による模様形成を特徴とするものである。
【特許文献3】意匠登録第728172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ローラー表面の全ての凹凸を塗材に馴染ませるものにあっては、ローラー表面の凹凸の形跡を示すものの、塗材の粘性により凹凸の形状をそのまま転写することは困難となったり、また、転写することができたとしても、模様作製途中に徐々に離型性が確保できなくなり模様の連続性が確保できないという課題があった。
【0008】
ローラー表面の一部だけを転写するものにあっても、ローラーと塗材の離型性の観点から、転写模様は単純な形状を選択しなければ実用上の実施が不可能であると言う課題があった。そして、特許文献2に開示される発明では、吹き付けあるいはローラー塗り、鏝により塗り付けられた塗材表面に形成される模様は、ローラーの転動方向における平行線あるいは転動方向とは直角な平行線であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明では、新規ローラーとそのローラーを利用した模様の形成方法を提供するものである。ローラーにあっては、ローラー表面の一部だけを転写するものにあり、且つ、使用条件の選択により、転写模様の形成に当たってローラー表面に形成された凸模様の突起の高い部分は全部転写、凸模様の次に高い部分は部分的な転写をなすことにより、地模様であるローラー押さえ前の模様に対して、必須で転写模様をなす部分と部分的に転写模様をなす部分の二つを同時に形成するものにしている。
【0010】
請求項1に記載の発明は、模様形成外囲基準面としての円柱状基面とこの基面への円周方向に平行な複数の座金状凸条と凸条間に挟まれた溝部分を部分的に覆う円弧状突起を形成したことを要旨としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、座金状凸条の高さが円弧状突起の高さに比べ高いことを要旨としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記円弧状突起の円周方向片端ないし両端の突起高さを他の部分に比べ高くしたことを要旨としている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの項に記載の発明において、前記座金状凸条が3本以上であり、異なる溝に形成した隣接する円弧状突起が円柱状基面の円周方向において、異なる角度位置に形成されていることを要旨としている。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの項に記載の発明において、円弧状突起が覆う円周方向角度が60度ないし240度であることを要旨としている。
【0015】
請求項6に記載の発明は、ローラーを利用する発明であり、被塗付面に対し、請求項1ないし請求項5のいずれかの項に記載の模様付けローラーにおける凸条と突起の高低差以上の塗布厚みとなる塗料を塗り付け、前記模様付けローラーを用いて表面を押さえ、ローラーによる押さえ模様と押さえの生じない部分を形成することを要旨としている。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、表面を押さえるに際し、模様付けローラー表面に離型性を向上させる液体を浸して使用することを要旨としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、被塗装面に対して、平行線と平行線に挟まれる溝部分に不連続に存在する矩形状の押さえ模様を形成することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、押さえ模様における平行線は必須とすることになり、矩形状押さえ模様は塗材の厚みあるいは押さえの強さにより部分的なものとすることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、矩形状の押さえ部分の円周方向片端あるいは両端を他に比べてより明瞭に発現させることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加え、複数の平行線押さえ模様に対し、隣接する矩形状の押さえ模様が同じ位置あるいは同じ長さにないものを形成できることとなる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加え、矩形状の押さえ部分の発現を明確なものにするとともに、矩形状の押さえが無い部分との対比を明瞭にすることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発明のローラーを使用して、被塗装面に平行線と平行線に挟まれた部分に形成される矩形状の押さえ模様を形成することができる。また、ローラーに設けられた複数の座金状凸条に対して、隣接する円弧状突起がローラーの円周方向において、異なる角度位置に形成されているときには、矩形状の押さえ模様が隣接して同じ位置にはならない模様を形成できる。そして、ローラーの座金状凸条の高さが円弧状突起の高さに比べ高いものであるとき、平行線の押さえ模様は明瞭に、矩形状の押さえ模様は明瞭ないし一部不明瞭に発現させることができる。更に、ローラーに形成された円弧状突起が、円周方向片端ないし両端の突起高さを他の部分に比べ高くしたものであるとき、矩形状の押さえ模様を一部不明瞭に発現させる際に、その押さえ模様が存在する部分と押さえ模様が存在しない部分を区切って明確にさせる効果を持つ。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の発明の効果に加え、押さえ模様の形成をより大きな面積にて持続して形成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明を具体化した実施形態を説明する。
この発明では、先願となる特許文献2として示した、特開2002−317551号公報の発明により達成される平行線の押さえ模様と押さえのない部分の意匠創作に加えて、平行線間における不連続、矩形状に表れる、矩形部分を完全に押さえた模様ないしは矩形部分において不完全あるいは完全に押さえた模様を形成できるローラー及び模様の形成方法を提供するものである。
【0025】
この発明のローラーでは、模様形成外囲基準面としての円柱状基面とこの基面に対して模様付けのための凹凸を形成したことを基本としている。外囲基準面とは、形成される模様に対して、模様形成の面とはならないものの、模様を転写させる座金状凸条あるいは円弧状突起の基準面として存在し、塗材側からローラーを見た時、外囲する形に位置する基準面のことを言う。
【0026】
この発明において、座金状凸条あるいは円弧状突起も、その両者が存在しない円柱状基面に対して、二種類の凸状あるいは突起を設けていることを示す比較表現である。従って、座金状凸条と言う部品を作製し、組み立てることを意味するものではない。
【0027】
ローラーの座金状凸条は、凸条が座金形状にあり、厚み幅2〜10mm、その高さ3〜30mmに形成され、その複数の凸条は5〜100mm、好ましくは10〜50mmの間隔とし、平行に形成される。この発明のローラーでは平行を条件とし、且つ実施例ではローラーの軸に対して直角方向の直線としているが、ローラーの転動に対して直線を形成しないものとなる、ローラーの軸に対して傾きを設けたもの、平行とならない凸条の形成も可能である。
【0028】
円弧状突起は、隣接する座金状凸条間に形成されるものであり、座金状凸条の高さと同じないしはそれより10mm低くして形成される。座金状凸条と同じ高さの場合は、座金状凸条により表現される平行線と円弧状突起により表現される矩形状の押さえ模様が、塗材に対して同じ強さの押さえ模様となり、模様としての変化には乏しくなる。
【0029】
そこで、円弧状突起の高さを座金状凸条の高さに比べ、0.5〜5mm低くすることにより、座金状凸条により表現される平行線と部分的に塗材を押さえた模様を形成できることとなる。塗材の塗り付け厚みを大きくしたときには、両者の高低差を10mmまで大きくすることも可能である。高低差を0.5〜5mm、好ましくは1〜3mmとすることは、塗材の塗り付け厚みを大きくしない状態で変化のある意匠模様を効率よく形成することになる。
【0030】
更に、円弧状突起の円周方向片端ないし両端の突起高さを他の部分に比べ高くすることにより、矩形状の押さえ模様の片端又は両端を明瞭に発現させることができる。
【0031】
加えて、座金状凸条を3本以上形成させたローラーを作製する際には、円弧状突起も2カ所以上形成させることが多いが、ローラーを用いて形成される意匠に変化を求めた場合、異なる溝に形成したその隣接する円弧状突起が円柱状基面の円周方向において、異なる角度位置に形成されていることが好ましい。
【0032】
一本の溝において複数の円弧状突起を設ける場合には、自然と円柱状基面の円周方向において、異なる角度位置に形成されることとなる。
【0033】
そして、ローラーの外周径を20〜30cmにすれれば、円弧状突起が覆う円周方向角度を小さなものとすることができるが、手に持って使用するローナーカバーの場合には円弧状突起が覆う円周方向角度が60度ないし240度とするのが望ましい。この角度が60度未満あるいは240度より大きい場合には円弧状突起により形成される部分と円弧状突起が存在せず押さえ模様を形成しない部分とのバランスが悪くなり、60度未満では矩形状の押さえ模様がまばらにしか存在しなくなり、240度越えの場合には押さえ模様が存在しない部分が大きすぎる印象を与える。
【0034】
ローラーの形状を概略円柱状体と見たとき、手動利器として利用する場合には、その大きさを、模様形成幅となる円柱の長さを5〜40cm、好ましくは20〜30cm、円柱の外径では直径2〜10cm、好ましくは4〜8cmとするのが良い。この大きさにあるとき、ローラーの大きさあるいは重さにおいて、使用勝手が良いものとなる。但し、コーナーあるいは模様形成幅が限られる部分では、小さくしたものも利用される。
【0035】
ローラーの作製に当たっては、ローラーの支持軸に直接装着できる略円柱形状のもの、あるいは、ローラーを薄肉のパイプ形状とし、筒状のローラーカバーを装着するもの、そのどちらであっても良い。そして、全体を中空とした場合、あるいは発泡体により作製した時には、ローラー全体を軽量なものとすることができる。但し、支持軸に接する部分あるいは筒状のローラーカバーがその支持部分と接する部分は形状が保持できることが必要であり、ローラーを転がす時の軸に接する部分では、耐摩耗性を有することが必要である。
【0036】
ローラーの素材としては、プラスチック、ゴム、あるいはそれらの発泡体、木を利用することができる。ローラーの製作は、円筒状の素材を研削加工により所定形状としたり、ローラーの模型を作製後、プラスチック、ゴムの発泡成形あるいは素材の選択次第によりブロー成形により軽量となるローラーカバーの製作を行うことができる。また、座金状凸条の形成までを研削加工あるいは射出成形とし、当該凸条の間に挟まれる部分の円弧状突起部分を別作製とし、接着等により一体化することもできる。その際、ローラーの素材を組み合わせて作製することもできる。
【0037】
製作後のローラーは、以下の手順により利用することが可能である。
始めに、被塗装面である建築物の外壁、内壁、天井、床面等あるいはこれら表面を構成する建築材料、土木構造物の表面に対して模様形成用の塗材を吹き付け、ローラー塗り、コテ塗りにより塗り付ける。次に、この発明のローラーに水、塗料用シンナー等の離型性を向上させる液体である離型剤に浸して、塗材が未硬化の状態において表面を転動させ、ローラーによる押さえ模様が生じる部分と押さえの無い部分を形成させる。離型剤を用いない場合、小面積であれば押さえ模様の形成が可能ではあるが、纏まった面積の押さえは不可能であり、通常は離型剤を溜めたバケットに何度もローラーを浸して、押さえ作業が行われる。
【実施例】
【0038】
以下、前記実施形態を具体化した実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
ローラーは次の手順により製作した。始めに、塩化ビニル樹脂製の外径52mm、長さ227.5mmの円柱状体を用意し、両端の座金状凸条のみ5mmの厚みとし、他は4.5mm厚とし、座金状凸条の間隔を14mmとする深さ8mmにある12本の溝を有し、13本の座金状凸条のある円柱体を作製した。次に、ローラーの支持軸装着用の孔を円柱の中心軸に直径7mmに穿孔した。但し、両端部分のみ円柱の中心軸に直径16mm、深さ6mmの孔を設け、ねじ止めが可能な形状とした。図1では、実施例1によるローラーの外観を斜視図により示している。図中、符号1が座金状凸条であり、符号2が円弧状突起を示している。実施例1を示した図1では、円弧状突起が図の右側と左側に交互に表れるものとして表現されている。
【0039】
円弧状突起は、発泡ポリエチレン製とし、座金状凸条間に形成された深さ8mmの溝部分に対して、模様形成外囲基準面としての溝部分の底より6mm厚にて、溝部分の円周方向にて半周である180度覆うものを作製した。この円弧状突起を先の座金状凸条のある円柱体に対して、溝に対する覆い位置が互い違いとなるように接着剤により固定させた。
【0040】
(実施例2)
座金状凸条のある円柱体の作製までは、実施例1と同じとし、円弧状突起の形状、固定位置に変化を加えた。円弧状突起の形状については、概ね6mm厚であるが、その両端では8mmとなるように6mm厚部分に対して接線となる厚み減少曲線を持つものである。円弧状突起の覆い角度は180度で有ることは同じであるが、固定位置を隣接する2つの円弧状突起において、120度ずらしたものとし、2本の溝を隔てて同じ覆い位置に円弧状突起が表れるものとした。なお、素材についても実施例1と同じものを利用し、円弧状突起の固定も接着剤により行った。
【0041】
(実施例3)
ローラーは次の手順により製作した。始めに、塩化ビニル樹脂製の外径52mm、長さ225.5mmの円柱状体を用意し、両端の座金状凸条のみ5mmの厚みとし、他は4.5mm厚とし、座金状凸条の間隔を交互に14mmと21mmとする深さ8mmにある10本の溝を有し、11本の座金状凸条のある円柱体を作製した。次に、ローラーの支持軸装着用の孔を円柱の中心軸に直径7mmに穿孔した。但し、両端部分のみ円柱の中心軸に直径16mm、深さ6mmの孔を設け、ねじ止めが可能な形状とした。
【0042】
円弧状突起は、発泡酢酸ビニル樹脂製とし、座金状凸条間に形成された深さ8mmの溝部分に対して、模様形成外囲基準面としての溝部分の底より6mm厚にて、14mm幅部分は半周である180度覆うものを作製し、21mm幅部分は1/3周である120度覆うものを作製した。これら2種類の円弧状突起を先の座金状凸条のある円柱体に対して、溝に対する覆い位置が最初に14mm幅部分に固定するものを基点として、次に固定する21mm幅のものを120度ずらした位置とし、次に固定する14mm幅部分に固定するものを120度ずらした位置と云うように基点に於いて120度ずつずらしながら接着剤により固定させた。
【0043】
(実施例4)
座金状凸条のある円柱体の作製までは、実施例1と同じとし、円弧状突起の形状、固定位置に変化を加えた。円弧状突起の形状については、概ね6mm厚であるが、その両端では8mmとなるように6mm厚部分に対して接線となる厚み減少曲線を持つものである。円弧状突起の覆い角度は180度のものと120度のものを準備した。2種類の円弧状突起の固定位置については、添付する図2としての展開図の位置とした。なお、素材についても実施例1と同じものを利用し、円弧状突起の固定も接着剤により行った。
【0044】
図2は、ローラーにおける座金状凸条及び円弧状突起の形成位置が断面として分かるように模様形成外囲基準面より少し外側における展開図を示すものであり、左から右下がりの斜線部分は座金状凸条の形成部分1aであり、右から左下がりの斜線部分は円弧状突起の形成部分2aを示すものとしている。また、図3では請求項3とした、円弧状突起の円周方向片端ないし両端の突起高さを他の部分に比べ高くしたことを示すために、図2の展開図のなかでローラーの展開面の半周分に円弧状突起を設けた部分における、ローラーの軸に直角に切断したときの断面図を示している。
【0045】
比較例は、実施例1における円弧状突起を設けないものである。
【0046】
上記した模様付けローラーの使用に当たっては、別に用意したローラーハンドルの支持軸にローラーを挿入し、ナット止めすることにより回転可能に固定し、以下に記述する模様形成用塗材を塗り付けた後、その表面を押さえるようにして、模様付けを行った。ローラーハンドルの支持軸には、ローラーが行き止まりとなる突起と挿入側にナット止めできる雄ねじが設けてある。
【0047】
前もって塗装用基板であるフレキシブルボードに下塗り塗料を塗っておき、模様形成用塗材である菊水化学工業(株)製の商品名グラナダ、20kgに寒水砂1厘を10kg加え、調整水によりスタッコガン(エアースプレーガンの一種)で塗装可能な粘度とし、塗装用基板に対し、平米当たり3kg程度及び5kg程度吹き付けた。次に、塗材が未硬化なうちに、実施例1〜実施例4、比較例のローラーに柄を装着したものを利用し、塗料用シンナーを適宜浸しながら塗材表面を転動させローラーの表面凹凸模様を転写させた。
【0048】
転写模様が形成された塗装板の模様は、塗材の塗布量が3kg/平米のものと5kg/平米のものでは違いがみられ、少ない塗布量の場合は、座金状凸条による平行線は転写されるものの、円弧状突起部分の転写は塗材が厚く吹き付けられている部分のみを押さえる形となった。また、塗布量が大きい場合には、座金状凸条による平行線および円弧状突起による矩形状押さえ模様が形成された。
【0049】
実施例及び比較例による押さえ模様の違いでは、比較例では平行線のみの発現となるが、実施例1では平行線と矩形状押さえ部分が平行線に対し、互い違いに表れるものとなった。実施例2では、平行線と矩形状押さえ部分が平行線に対し、隣接する矩形形状が1/3ずつずれて、矩形の押さえ部分が平行線に対し斜めに並べた押さえ模様となった。実施例3では、平行線と平行間隔が2種類の平行線に対し矩形状押さえ部分が、幅広の溝部分に形成した矩形形状の一方では1/2ずれ、一方では互い違いに配置された、矩形の押さえ部分が平行線に対し斜めに並べた押さえ模様となった。実施例4では、平行線に対し長さの異なる矩形状押さえ部分が見かけランダムに配置したものとなり、矩形状の押さえ模様に方向性を感じさせないものとなった。
【0050】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・円弧状突起の配置が、一定の方向性を持たないことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の模様付けローラー。この構成を有するローラーを用いて模様形成を行うことにより得られる仕上げ面は、ローラーの塗り継ぎが判別しづらく、仕上げ面を正面以外の方向から観た場合に、規則性のある斜め模様の発生が無く、模様の斑も発生しづらくなる効果がある。
【0051】
・模様形成用塗材の塗り厚みが、座金状凸条と円弧状突起の高さの差よりも大きく、ローラーの溝の深さよりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の模様の形成方法。この形成方法を採用することにより、ローラーの座金状凸条と円弧状突起の凸部形状により表現される凹凸模様を、模様形成用塗材表面に全て転写することとなる。但し、凸条あるいは突起が塗材を押しつけない部分では、押さえることによる塗材はみ出し部分を除き、模様形成用塗材を塗り付けた時の表面模様を維持している。
【0052】
・模様形成用塗材の塗り厚みが、座金状凸条と円弧状突起の高さの差とほぼ同じであることを特徴とする請求項6に記載の模様の形成方法。前提条件として、模様形成用塗材の塗り付けが平坦にないことが必要である。この形成方法を採用することにより、ローラーの座金状凸条により発現される平行線と円弧状突起により一部押さえした凹凸模様形成することとなる。但し、凸条あるいは突起が塗材を押しつけない部分では、押さえることによる塗材はみ出し部分を除き、模様形成用塗材を塗り付けた時の表面模様を維持している。表面に表れる模様として、充分に押さえられた凸条による模様、塗材の頂部のみ押さえた模様、凸条と突起のより囲まれた押さえの無い模様があり、一つの被塗付面に3種類の模様が得られることとなる。
【0053】
上記実施例は、以下の改造を行うことが可能である。
・座金状凸条と凸条間に挟まれる溝部分に形成される円弧状突起を複数設ける場合において、その高さを違えて形成することができる。
このような円弧状突起の高さが複数存在するローラーを用いて模様形成を行った際には、模様形成用塗材の表面を押さえる面積割合が異なる部分を複数作ることになり、得られる模様が、より変化に富んだものとなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1のローラーの外観斜視図。
【図2】実施例4における座金状凸条部分と円弧状突起部分を示す模様形成外囲基準面より少し外側における展開図。
【図3】実施例における円弧状突起の円周方向端部における突起高さを他の部分に比べ高くしたことを示す断面図。
【符号の説明】
【0055】
1…座金状凸条
2…円弧状突起
1a…座金状凸条部分
2a…円弧状突起部分



【特許請求の範囲】
【請求項1】
模様形成外囲基準面としての円柱状基面と、この基面への円周方向に平行な複数の座金状凸条と凸条間に挟まれた溝部分を部分的に覆う円弧状突起を形成したことを特徴とする模様付けローラー。
【請求項2】
座金状凸条の高さが円弧状突起の高さに比べ高いことを特徴とする請求項1記載の模様付けローラー。
【請求項3】
円弧状突起の円周方向片端ないし両端の突起高さを他の部分に比べ高くしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の模様付けローラー。
【請求項4】
座金状凸条が3本以上であり、異なる溝に形成した隣接する円弧状突起が円柱状基面の円周方向において、異なる角度位置に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の模様付けローラー。
【請求項5】
円弧状突起が覆う円周方向角度が60度ないし240度であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の模様付けローラー。
【請求項6】
被塗付面に対し、請求項1ないし請求項5のいずれかの項に記載の模様付けローラーにおける凸条と突起の高低差以上の塗布厚みとなる塗料を塗り付け、前記模様付けローラーを用いて表面を押さえ、ローラーによる押さえ模様と押さえの生じない部分を形成することを特徴とする模様の形成方法。
【請求項7】
表面を押さえるに際し、模様付けローラー表面に離型性を向上させる液体を浸して使用することを特徴とする請求項6記載の模様の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−86971(P2008−86971A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273915(P2006−273915)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】