説明

模様付ブロー成形品の製法およびそれによって得られる模様付ブロー成形品

【課題】容易に剥げることのない鮮明な色模様を、簡単かつ経済的に付与することのできる模様付ブロー成形品の製法と、それによって得られる模様付ブロー成形品を提供する。
【課題手段】内側に着色樹脂層1が形成されその外側に透明樹脂層2が形成された多層ブロー成形品を準備し、その外側からレーザ光を照射し、上記透明樹脂層2を通過させて着色樹脂層表面1に到達させ、その照射位置を、上記着色樹脂層1表面に沿って順次移動させることにより、上記着色樹脂層1表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様(文字3、説明書き4)を現出させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字や図形等の模様が付与された模様付ブロー成形品の製法と、それによって得られる模様付ブロー成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる、いわゆるブローボトルは、薄肉で軽量でありながら耐久性にも優れ、安価に製造することができることから、化粧料容器や食品容器、薬品容器等、様々な用途に広く用いられている。
【0003】
しかし、上記ブローボトルは、一般に、極性基がなく結晶化度の高いポリオレフィン系樹脂で成形されるため、印刷インクとの親和性がなく、そのままでは、印刷によって商品名や商品説明に関する表示を付与することができないという問題がある。また、これらの内容をラベルに表示してボトル表面に貼付することも考えられるが、ラベルを貼付するための接着剤に対しても親和性が小さいため、ラベルがすぐに剥がれてしまうという問題がある。
【0004】
そこで、ブローボトル表面を、火炎処理やコロナ処理によって改質したり、大気圧プラズマ照射によって改質することによって、印刷インクや接着剤との親和性を高めることが提案されている(下記の特許文献1を参照)。
【0005】
また、ブロー成形の途中で、その中間体であるパリソン表面にインクを吹き付けて模様や文字を付与した後、金型を閉じて最終形状を付与することにより、上記模様や文字を成形品の表面に固着させる方法も提案されている(下記の特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−310143公報
【特許文献2】特開平11−170361公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のように、ブローボトル表面に改質処理を行うと、その改質処理時に、ボトル表面に傷が付いたりボトル形状が変形したりするおそれがあり、好ましくない。また、改質のために余分なコストがかかり、経済的でないという問題もある。
【0008】
一方、上記特許文献2のように、パリソン表面に模様を印刷しようとすれば、金型近傍に、別途印刷装置を設置する必要があり、場所をとるだけでなく、金型内側が印刷インクで汚れるため、金型を開く都度、その内側に付着した残留インクを除去しなければならず煩雑な手間を要するという問題がある。また金型による賦形時に、パリソン表面の模様が不鮮明になったり歪んだりするおそれもある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、容易に剥げることのない鮮明な色模様(文字等を含む)を、簡単かつ経済的に付与することのできる模様付ブロー成形品の製法と、それによって得られる模様付ブロー成形品の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、内側に着色樹脂層が形成されその外側に透明樹脂層が形成された多層ブロー成形品を準備する工程と、上記多層ブロー成形品の外側からレーザ光を照射し、上記透明樹脂層を通過させて着色樹脂層表面に到達させ、その照射位置を、上記着色樹脂層表面に沿って順次移動させることにより、上記着色樹脂層表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様を現出させる工程とを備え、上記色模様を、上記透明樹脂層を透かして見せるようにした模様付ブロー成形品の製法を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、内側に着色樹脂層が形成されその外側に透明樹脂層が形成された多層ブロー成形品を準備する工程と、上記多層ブロー成形品の表面の少なくとも一部に金属薄膜層を形成する工程と、上記金属薄膜層の外側からレーザ光を照射し、上記金属薄膜層を除去加工してその除去跡から透明樹脂層を通過させて着色樹脂層表面まで到達させ、その照射位置を、上記着色樹脂層表面に沿って順次移動させることにより、上記金属薄膜層に、レーザ光の照射軌跡からなる透かし模様を形成するとともに、上記着色樹脂層表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様を現出させる工程とを備え、上記着色樹脂層表面の色模様を、上記金属薄膜層の透かし模様および上記透明樹脂層を透かして見せるようにした模様付ブロー成形品の製法を第2の要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、少なくとも上記レーザ光を照射する部分における着色樹脂層の厚みが0.2〜2mm、同じく透明樹脂層の厚みが0.2〜3mmに設定された多層ブロー成形品を用いるようにした模様付ブロー成形品の製法を第3の要旨とする。
【0013】
そして、本発明は、上記第1の要旨である製法によって得られる模様付ブロー成形品であって、内側に着色樹脂層が形成されその外側に透明樹脂層が形成された多層ブロー成形品からなり、上記着色樹脂層表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様が付与されており、その色模様が、上記透明樹脂層を透かして見えるようになっている模様付ブロー成形品を第4の要旨とする。
【0014】
また、本発明は、上記第2の要旨である製法によって得られる模様付ブロー成形品であって、内側に着色樹脂層が形成されその外側に透明樹脂層が形成された多層ブロー成形品からなり、その表面の少なくとも一部に金属薄膜層が形成されており、上記金属薄膜層に、レーザ光の照射軌跡からなる透かし模様が形成されているとともに、上記着色樹脂層表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様が付与されており、上記着色樹脂層表面の色模様が、上記金属薄膜層の透かし模様および上記透明樹脂層を透かして見えるようになっている模様付ブロー成形品を第5の要旨とする。
【0015】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、少なくとも上記レーザ光の照射軌跡からなる色模様が付与された部分における着色樹脂層の厚みが0.2〜2mm、同じく透明樹脂層の厚みが0.2〜3mmに設定されている模様付ブロー成形品を第6の要旨とする。
【0016】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記着色樹脂層の明度(マンセル表色系によるマンセル値、以下同じ)が7〜10であり、色模様の明度が0〜6である模様付ブロー成形品を第7の要旨とし、上記着色樹脂層の明度が0〜6であり、色模様の明度が7〜10である模様付ブロー成形品を第8の要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、本発明の第1の要旨である模様付ブロー成形品の製法は、ブロー成形品への色模様の付与を、多層ブロー成形品に対するレーザ光照射によって行うようにしたものである。この製法によれば、多種多様な色模様を、短時間で簡単にブロー成形品に付与することができるため、従来の、ブロー成形品の表面改質処理やパリソンへの印刷等に比べて、製造の手間とコストを大幅に削減することができる。
【0018】
また、本発明の第2の要旨である模様付ブロー成形品の製法は、上記ブロー成形品の表面に金属薄膜層を設け、その上からレーザ光照射を行うことにより、ブロー成形品内側の着色樹脂層表面に色模様を形成すると同時に金属薄膜層に透かし模様を形成するようにしたものである。この製法によれば、上記と同様の効果が得られるだけでなく、得られたブロー成形品の色模様が、金属薄膜層に形成された透かし模様を透かして見えるため、この部分が、より奥行きのある、立体的な模様にみえるという利点を有する。
【0019】
そして、これらの製法のなかでも、特に、上記着色樹脂層の厚みが0.2〜2mm、上記透明樹脂層の厚みが0.2〜3mmに設定された多層ブロー成形品を用いるようにしたものは、ブロー成形品ならではの薄肉性と、レーザ光照射による色模様発現性のバランスに優れ、製造上、好適である。
【0020】
また、本発明の第1の要旨である製法によって得られる模様付ブロー成形品は、その色模様が鮮明に形成されているため、例えば細かい文字の羅列であっても、その内容が読み取りやすい。そして、どのような文字、図案でも、デザイン通りに形成されており、線幅や配置にずれや歪みがないため、美麗な外観を有している。
【0021】
しかも、その色模様が、多層ブロー成形品の内側に配置する着色樹脂層の表面に形成され、外側の透明樹脂層を透かして見えるようになっているため、剥がれたり傷付いたりすることがなく、長期にわたって美麗な状態が維持されるという利点を有する。さらに、上記色模様は、上記レーザ光の照射条件の設定を変更するだけで、即座に変更ができるため、ニーズに応じた多種多様な色模様が付与された商品を、短期間で納品することができるという利点を有する。
【0022】
また、本発明の第2の要旨である製法によって得られる模様付ブロー成形品は、上記と同様の効果を有するだけでなく、その表面の少なくとも一部に金属薄膜層が形成されており、華やかな印象が付与されており、しかも、上記金属薄膜層に形成された透かし模様を透かして、透明樹脂層内側の色模様が見えるため、その部分が、あたかも金属部分を深く彫り込んだかのような、奥行きのある、立体的な模様にみえるという利点を有する。
【0023】
また、本発明の模様付ブロー成形品のなかでも、特に、上記着色樹脂層の明度が7〜10であり、色模様の明度が0〜6であるものは、ブロー成形品の地色、すなわち透明樹脂層を透かして見える着色樹脂層の色が、明度の高い淡色でありながら、色模様の色が、明度の低い濃色となっているため、そのコントラストが強く、鮮明な印象を与えることができる。
【0024】
逆に、上記着色樹脂層の明度が0〜6であり、色模様の明度が7〜10であるものは、ブロー成形品の地色が、明度の低い濃色でありながら、色模様の色が、明度の高い淡色となっているため、そのコントラストがやはり強く、鮮明な印象を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態である化粧料容器の斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】(a)、(b)は、ともに上記化粧料容器の製法の説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態である化粧料容器の斜視図である。
【図5】(a)、(b)は、ともに上記化粧料容器の製法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態である化粧料容器の斜視図を示している。この化粧料容器は、保湿用化粧水を収容するためのもので、その縦断面図である図2に示すように、内側に、白色のポリプロピレンからなる着色樹脂層1が形成され、その外側に、透明なアイオノマー樹脂からなる透明樹脂層2が形成された、2層ブロー成形ボトルによって構成されている。
【0028】
そして、上記化粧料容器(図1に戻る)の胴体部の正面には、この化粧水のブランド名である「Listen」の文字3と、内容物である化粧料の効能と使用方法に関する説明書き4とが、ともに濃い灰色で表示されている。
【0029】
上記文字3および説明書き4は、容器表面に印刷されているのではなく、透明樹脂層2の内側の、着色樹脂層1の表面に表示されており、これが、容器表面を覆う透明樹脂層2を透かして、着色樹脂層1の白地の上にくっきりと鮮明に見えて、視認できるようになっている。
【0030】
上記化粧料容器は、例えばつぎのようにして得ることができる。
【0031】
すなわち、まず、内側の着色樹脂層1を形成するための着色樹脂材料と、外側の透明樹脂層2を形成するための透明樹脂材料とを準備し、これら2種類の樹脂を共押出しダイを用いて2層が積層されたパリソンを成形する。そして、このパリソンをブロー金型に装着しブロー成形することによって、図1に示すようなボトル形状の成形品を得る。
【0032】
つぎに、図3(a)に示すように、上記ボトル形状の成形品の胴体部正面に向かって、2方向からレーザ光を照射して、外側の透明樹脂層2を通過させ、その内側の着色樹脂層1の表面上の、文字3および説明書き4を付与しようとする位置に、順次、焦点距離を合わせながら移動させる。これにより、図3(b)に示すように、その焦点距離の合った部分の樹脂が焦げて、レーザ光の照射軌跡となる限られた領域に濃い灰色の焦げ跡Pが形成され、その結果、上記着色樹脂層1の表面、より正確には、上記着色樹脂層1と透明樹脂層2の界面に、図1に示すような文字3および説明書き4が現出するのである。
【0033】
なお、上記文字3および説明書き4を現出させるためのレーザ光の照射条件は、予め入力したプログラムに従って制御されるようになっている。
【0034】
したがって、このようにして得られた図1の化粧料容器は、その胴体部正面に、文字3および説明書き4(これらを総称して「色模様」という)が鮮明に付与されており、線幅や配置にずれや歪みがないため、上記文字3の見栄えがよいだけでなく、細かい文字の羅列からなる説明書き4も、その内容が読み取りやすい。
【0035】
しかも、上記色模様は、内側の着色樹脂層1の表面に形成され、外側の透明樹脂層2を透かして見えるようになっているため、剥がれたり傷付いたりすることがなく、長期にわたって、その美麗な状態が維持されるという利点を有する。さらに、上記色模様は、上記レーザ光の照射条件の設定を変更するだけで、即座に変更ができるため、ニーズに応じた多種多様な色模様が付与された商品を、短期間で納品することができるという利点を有する。
【0036】
なお、上記の例において、着色樹脂層1を形成するための着色樹脂材料としては、一般に、顔料や染料等の着色剤を配合した樹脂材料が用いられる。また、樹脂自体が不透明の、何らかの色を有するものである場合は、その樹脂自体を「着色樹脂材料」として用いることができる。このような樹脂材料の樹脂成分としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンの他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)等、各種の熱可塑性樹脂があげられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、PE、PP等のポリオレフィンを用いることが、成形性や着色性の上で好適である。
【0037】
そして、上記着色樹脂層1の色は、これをレーザ光照射によって焦がしたときの焦げ跡Pの色との対比が明確になるような色であることが好ましく、例えば、その明度が7〜10であることが好適である。着色樹脂層1の色がこの範囲の、白色もしくはごく淡い淡色)であれば、とりわけ、レーザ光照射による焦げ跡Pの色(濃色)と、背景となる着色樹脂層1の色との濃淡の差が大きくなり、文字3等の色模様を、鮮明に視認させることができる。なお、上記焦げ跡Pの色、すなわち色模様の色は、明度が0〜6の濃色〜黒色となるようレーザ光の照射条件を調整することが好適である。
【0038】
また、上記着色樹脂層1の色の明度が、0〜6の濃色〜黒色である場合、レーザ光照射による焦げ跡Pの色が淡色(例えば明度7〜10)になるよう調整すると、両者の濃淡の差が大きくなるため、上記の場合と同様に、文字3等の色模様を、鮮明に視認させることができる。
【0039】
一方、透明樹脂層2を形成するための透明樹脂材料としては、熱可塑性樹脂であって透明なものが好ましく、このような透明樹脂材料の樹脂成分としては、上記PE、PP等のポリオレフィン、PET、PC、AS、ABSの他、透明性と諸物性に優れたアイオノマー樹脂があげられる。これらも、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、透明性や耐久性の上で、ABSやアイオノマー樹脂を用いることが好適である。
【0040】
そして、上記透明樹脂層2の透明度は、鮮明な色模様を得ることを考慮すれば、完全な透明であることが好ましいが、多少透明性が減じられた、半透明のものであっても、その内側に設けられる着色樹脂層1と、その表面に現出する色模様とが外側から見えるようになっていれば差し支えない。例えば、透明樹脂層2を意図的にやや半透明にすることによって、全体にやわらかい印象を与えることができる。
【0041】
さらに、2層ブロー成形品を得る方法は、上記の例のように、2層構造のパリソンをダイレクトブローする方法以外に、2層構造のブロープリフォームを成形した後、これを二軸延伸ブローするようにしてもよい。また、着色樹脂層1のみからなる単層ブローボトルを得た後、その外側に、透明樹脂材料を塗工したり、インモールド成形したりすることにより、2層構造のブローボトルにしてもよい。さらに、透明樹脂層2のみからなる単層ブローボトルを得た後、その内側に、着色樹脂材料を注入し皮膜化する等して着色樹脂層1を形成して、2層構造のブローボトルにしてもよい。これらも、本発明の「多層ブロー成形品」に含まれるものとする。
【0042】
なお、色模様を現出させる胴体部において、上記着色樹脂層1の厚みを、0.2〜2mmに設定し、上記透明樹脂層2の厚みを、0.2〜3mmに設定することが好適である。すなわち、各層1、2の厚みが、上記の範囲より厚くなると、容器全体が厚肉となり、「薄肉で軽量」というブロー成形品らしいよさが得られにくく、好ましくない。逆に、着色樹脂層1の厚みが、上記の範囲より薄くなると、レーザ光照射によって鮮明な焦げ目を得ようとすると、着色樹脂層1に破れが生じるおそれがあり、また透明樹脂層2の厚みが、上記の範囲より薄くなると、ブロー成形品の耐久性、成形性に問題が生じるおそれがあるからである。
【0043】
また、上記の例では、レーザ光照射によって現出させる色模様が、ブランド名を示す文字3と説明書き4とであったが、上記色模様としては、文字やイラスト、あるいはこれらの組み合わせといった、様々なバリエーションのものを現出させることができる。
【0044】
そして、上記レーザ光の照射は、従来からガラス加工等に用いられるNd:YAGレーザ等によって行うことができる。そして、上記レーザ光の照射による加工方法としては、上記の例のように、2本のレーザ光を異なる方向から照射し、着色樹脂層1の表面上の所定位置で交点を結ぶようにし、順次、その表面上を移動しながら所望の色模様を現出させる方法が好適である。また、それ以外に、多数のレーザ光を光学的に集束させて焦点をつくり、その部分を移動する方法、2本の測定用レーザ光を目的位置に照射し、その交点を目標として位置決めしながら加工用のレーザ光を照射する方法等を用いてもよい。
【0045】
なお、本発明の対象となるブロー成形品は、上記の例のように、ボトル形状の化粧料容器に限るものではなく、食品容器や薬品容器等、様々な分野に利用される容器を含むものである。また、容器以外の、装飾品や生活用品として用いられるブロー成形品であってもよい。そして、その形態も、比較的剛性の高いボトルに限らず、スクイズボトルや、チューブ、スタンディングパウチ等、ブロー成形されたものであれば、どのような形態であってもよい。
【0046】
そして、上記の例では、ブロー成形品が着色樹脂層1と透明樹脂層2との2層ブロー成形品であったが、上記着色樹脂層1の内側に、さらにガスバリア層を設けたものや、着色樹脂層1の外側に、2層以上の透明樹脂層が積層されたもの等、3層以上の多層ブロー成形品であっても差し支えない。ただし、透明樹脂層2の内側に設けられた着色樹脂層1の表面に、レーザ光照射によって色模様を形成することが本発明の特徴であり、必ず、ブロー成形品の外側に透明樹脂層2が設けられ内側に着色樹脂層1が設けられた構成になっていなければならない。
【0047】
図4は、本発明の他の実施の形態である化粧料容器の斜視図を示している。この化粧料容器は、図1に示す化粧料容器と略同一の構成を有し、同一部分に同一番号を付して、その説明を省略する。ただし、この化粧料容器の胴体部の正面に表示された色模様である文字3および説明書き4のうち、文字3の背景となる部分に、帯状の金属薄膜層10が形成されている。
【0048】
より詳しく説明すると、上記金属薄膜層10は、厚み0.04μmのアルミニウム薄膜層からなり、透明樹脂層2内側の着色樹脂層1に形成された文字3に対応する部分に、文字3と同一形状の透かし模様11が形成されており、この透かし模様11と、その下の透明樹脂層2を透かして、着色樹脂層1に形成された文字3が見えるようになっている。
【0049】
上記化粧料容器は、例えばつぎのようにして得ることができる。
【0050】
すなわち、まず、図1に示す化粧料容器と同様、内側の着色樹脂層1を形成するための着色樹脂材料と、外側の透明樹脂層2を形成するための透明樹脂材料とを準備し、これら2種類の樹脂を共押出しダイを用いて2層が積層されたパリソンを成形する。そして、このパリソンをブロー金型に装着しブロー成形することによって、図4に示すようなボトル形状の成形品を得る。
【0051】
つぎに、上記成形品の胴体部正面の上部に、ミラー印刷によって、帯状の金属薄膜層10を形成する。そして、図5(a)に示すように、上記ボトル形状の成形品の胴体部正面に向かって、2方向からレーザ光を照射して、胴体部の上部においては、上記金属薄膜層10と透明樹脂層2を通過させ、その内側の着色樹脂層1の表面上の、文字3を付与しようとする位置に、順次、焦点距離を合わせながら移動させる。
【0052】
これにより、図5(b)に示すように、まず、レーザ光が通過する部分の金属薄膜層10が除去加工され、その除去跡からレーザ光がさらに進んで、透明樹脂層2を通過して着色樹脂層1に到達する。そして、上記着色樹脂層1表面の、レーザ光の焦点距離の合った部分の樹脂が焦げて、レーザ光の照射軌跡となる限られた領域に濃い灰色の焦げ跡Pが形成され、その結果、上記着色樹脂層1の表面、より正確には、上記着色樹脂層1と透明樹脂層2の界面に、図4に示すような文字3が現出する。また、このレーザ光の照射に伴い、その照射軌跡となる部分の金属薄膜層10が除去されるため、上記金属薄膜層10に、上記焦げ跡Pと同一形状の透かし模様11が形成される。
【0053】
なお、図5(a)は、各層の厚みを誇張して表示しているため、レーザ光による着色樹脂層1表面の焦点となる位置(焦げ跡Pが形成される部分)と、金属薄膜層10を通過するレーザ光の位置(除去加工される部分)とがずれるようにみえるが、実際は、各層の厚みがごく薄いため、両者の位置はぴったり重なるといってよく、焦げ跡Pからなる色模様と、金属薄膜層10に形成される透かし模様11は、同一形状といって差し支えない。
【0054】
一方、上記ボトル形状の成形品の胴体部の下部においては、図1の場合と同様、その胴体部の透明樹脂層2を通過したレーザ光によって、上記着色樹脂層1表面の、その焦点距離の合った部分の樹脂が焦げて、レーザ光の照射軌跡となる限られた領域に濃い灰色の焦げ跡Pが形成され、上記着色樹脂層1と透明樹脂層2の界面に、図4に示すような説明書き4が現出する。
【0055】
なお、上記文字3および説明書き4を現出させるためのレーザ光の照射条件は、図1の化粧料容器の場合と同様、予め入力したプログラムに従って制御されるようになっている。
【0056】
このようにして得られた図4の化粧料容器は、その胴体部正面に、文字3および説明書き4からなる色模様が鮮明に付与されており、線幅や配置にずれや歪みがないため、上記文字3の見栄えがよいだけでなく、細かい文字の羅列からなる説明書き4も、その内容が読み取りやすい。
【0057】
そして、上記色模様のうち、文字3の部分は、その背景に設けられた金属薄膜層10の透かし模様11と、その内側の透明樹脂層2とを透かして見えるため、上記金属薄膜層10が華やかな印象を与えるだけでなく、上記文字3が、あたかも金属部分を深く彫り込んだかのような、奥行きのある、立体的な模様にみえるようになっており、より印象的である。
【0058】
また、上記色模様は、前記図1の化粧料容器における色模様と同様、剥がれたり傷付いたりすることがなく、長期にわたって、その美麗な状態が維持されるという利点を有する。さらに、上記色模様は、上記レーザ光の照射条件の設定を変更するだけで、即座に変更ができるため、ニーズに応じた多種多様な色模様が付与された商品を、短期間で納品することができるという利点を有する。
【0059】
なお、上記の例において、金属薄膜層10は、ミラー印刷によって形成されたアルミニウム薄膜層であるが、金属の種類は、アルミニウムに限らず、ステンレス等であってもよい。そして、その形成方法は、ミラー印刷の他、金属箔の転写、蒸着、スパッタリング、ホットスタンプ等があげられる。
【0060】
また、上記金属薄膜層10の厚みは、上記の例に限らず、0.02〜0.1μmに設定することが好適である。すなわち、金属薄膜層10の厚みが上記の範囲よりも厚いと、レーザ照射による除去を短時間でスムーズに行うことができず、生産効率が悪くなるとともに、金属薄膜層10の除去部と非除去部との間、あるいは金属薄膜層10の形成部分と非形成部分との間に微妙な段差が生じて、容器表面の平滑性が損なわれるおそれがあるからである。逆に、金属薄膜層10の厚みが上記の範囲よりも薄いと、成形品表面への金属薄膜層10の形成が困難になるおそれがあり、好ましくない。
【0061】
そして、上記金属薄膜層10は、上記の例のように、成形品表面の限られた部分に形成する以外に、表面全体に形成してもよい。すなわち、文字3や説明書き4等の色模様とのバランスや全体的なデザインに応じて、適宜の領域に形成することができる。
【0062】
なお、上記の例では、レーザ光照射によって、着色樹脂層表面への焦げ跡Pの形成と、その手前の金属薄膜層10の除去加工とを同時に行うため、用いるレーザ光が、金属に対する除去加工性能に優れたものでなければならない。このようなレーザとしては、Nd:YAGレーザが好適である。
【0063】
また、上記の例において、着色樹脂層1の色は、前記の例と同様、これをレーザ光照射によって焦がしたときの焦げ跡Pの色との対比が明確になるような色であることが好ましい。すなわち、焦げ跡Pの色、すなわち色模様の色と、容器全体の地の色となる着色樹脂層1の色とが、互いに近い色合いでは、視覚的な印象が弱いからである。ただし、金属薄膜層10を、容器の表面全体に形成する場合には、容器の地の色、すなわち着色樹脂層1の色が外から見えることがないため、その場合は、焦げ跡Pの色と、金属薄膜層10の光沢色との対比が明確になるように、着色樹脂層1の色を選択することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、容易に剥げることのない鮮明な色模様(文字等を含む)が付与された模様付ブロー成形品の製法と、それによって得られる模様付ブロー成形品に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 着色樹脂層
2 透明樹脂層
3 文字
4 説明書き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に着色樹脂層が形成されその外側に透明樹脂層が形成された多層ブロー成形品を準備する工程と、上記多層ブロー成形品の外側からレーザ光を照射し、上記透明樹脂層を通過させて着色樹脂層表面に到達させ、その照射位置を、上記着色樹脂層表面に沿って順次移動させることにより、上記着色樹脂層表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様を現出させる工程とを備え、上記色模様を、上記透明樹脂層を透かして見せるようにしたことを特徴とする模様付ブロー成形品の製法。
【請求項2】
内側に着色樹脂層が形成されその外側に透明樹脂層が形成された多層ブロー成形品を準備する工程と、上記多層ブロー成形品の表面の少なくとも一部に金属薄膜層を形成する工程と、上記金属薄膜層の外側からレーザ光を照射し、上記金属薄膜層を除去加工してその除去跡から透明樹脂層を通過させて着色樹脂層表面まで到達させ、その照射位置を、上記着色樹脂層表面に沿って順次移動させることにより、上記金属薄膜層に、レーザ光の照射軌跡からなる透かし模様を形成するとともに、上記着色樹脂層表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様を現出させる工程とを備え、上記着色樹脂層表面の色模様を、上記金属薄膜層の透かし模様および上記透明樹脂層を透かして見せるようにしたことを特徴とする模様付ブロー成形品の製法。
【請求項3】
少なくとも上記レーザ光を照射する部分における着色樹脂層の厚みが0.2〜2mm、同じく透明樹脂層の厚みが0.2〜3mmに設定された多層ブロー成形品を用いるようにした請求項1または2記載の模様付ブロー成形品の製法。
【請求項4】
請求項1記載の製法によって得られる模様付ブロー成形品であって、内側に着色樹脂層が形成されその外側に透明樹脂層が形成された多層ブロー成形品からなり、上記着色樹脂層表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様が付与されており、その色模様が、上記透明樹脂層を透かして見えるようになっていることを特徴とする模様付ブロー成形品。
【請求項5】
請求項2記載の製法によって得られる模様付ブロー成形品であって、内側に着色樹脂層が形成されその外側に透明樹脂層が形成された多層ブロー成形品からなり、その表面の少なくとも一部に金属薄膜層が形成されており、上記金属薄膜層に、レーザ光の照射軌跡からなる透かし模様が形成されているとともに、上記着色樹脂層表面に、レーザ光の照射軌跡からなる色模様が付与されており、上記着色樹脂層表面の色模様が、上記金属薄膜層の透かし模様および上記透明樹脂層を透かして見えるようになっていることを特徴とする模様付ブロー成形品。
【請求項6】
少なくとも上記レーザ光の照射軌跡からなる色模様が付与された部分における着色樹脂層の厚みが0.2〜2mm、同じく透明樹脂層の厚みが0.2〜3mmに設定されている請求項4または5記載の模様付ブロー成形品。
【請求項7】
上記着色樹脂層の明度(マンセル表色系によるマンセル値、以下同じ)が7〜10であり、色模様の明度が0〜6である請求項4〜6のいずれか一項に記載の模様付ブロー成形品。
【請求項8】
上記着色樹脂層の明度が0〜6であり、色模様の明度が7〜10である請求項4〜6のいずれか一項に記載の模様付ブロー成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−6387(P2012−6387A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117364(P2011−117364)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】