説明

横型回転式熱処理炉

【課題】乾燥及び熱分解を連続して行うことができ、設備コストの増加を抑えることができながら、熱媒体の循環を安定的に行うことができる横型回転式熱処理炉とする。
【解決手段】軸心回りに回転する内筒10及びこの内筒10から所定間隔X1,X2を隔てて設置された外筒20を有し、この内筒10及び外筒20間の加熱室R1,R2に流通される熱媒体H1,H2により被処理物C1が乾燥及び熱分解をされる構成とされた横型回転式熱処理炉1であって、加熱室が加熱室R1,R2に分割され、かつ各別に熱媒体H1,H2が流通されることで、被処理物C1の熱処理が複数に区画されて行われる構成とされ、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室R1における所定間隔X1が相対的に広くされ、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室R2における所定間隔X2が相対的に狭くされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型回転式熱処理炉に関するものである。より詳しくは、内筒及び外筒間の加熱室に流通される熱媒体によって内筒内の被処理物が熱処理される外熱式の横型回転式熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の横型回転式熱処理炉は、被処理物を熱処理するために使用されるものであり、現在では、乾燥、炭化、熱分解、燃焼等の処理条件が異なる熱処理を連続して行う場合にも使用されている。そこで、処理条件が異なる熱処理を連続して行う場合は、各熱処理において必要となる熱量等が異なるため、改良が加えられる。具体的には、例えば、加熱室内に複数の電気ヒーターが軸方向に並べて設置される形態、加熱室が軸方向に関して複数に分割される形態などが存在する。また、加熱室が複数に分割される形態としては、熱量調節のために、各加熱室内にバーナー等の加熱手段が設置される形態等が存在する(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
しかしながら、電気ヒーターが設置される形態には、エネルギー効率が悪く、特に高温環境下での信頼性、耐久性に乏しいとの問題がある。また、各加熱室内に加熱手段が設置される形態には、加熱手段を複数設ける事になるため、設備コストが大幅に増加するとの問題がある。この点、加熱室外に加熱手段が設置され、この加熱手段で加熱された熱媒体が各加熱室に流入される形態も考えられる。しかしながら、各加熱室に流入される熱媒体が各別の加熱手段で加熱されるとすると、設備コストが増加するとの問題が残る。他方、各加熱室に流入される熱媒体が同一の加熱手段で加熱されるとすれば、設備コスト増加の問題は解決される。しかしながら、この方法においては、熱媒体の供給流量を加熱室ごとに異なるものとする場合に問題が生じる。供給流量を異なるものとするために、各熱媒体の流速を異なるものとすると、例えば、熱媒体を循環利用するのに妨げとなる。
【0004】
一方、加熱室内における熱媒体の流通が制御される形態として、加熱室内に螺旋状の整流板が設置される形態が提案されている(例えば、特許文献4,5参照。)。しかしながら、これらの提案は、熱効率を向上させるためもの(特許文献4)、あるいはダストを掻き集めるためのもの(特許文献5)であり、内容が異なる熱処理を連続して行うために好適な形態を開示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3101264号公報
【特許文献2】特許第3086450号公報
【特許文献3】特許第3049242号公報
【特許文献4】特開2005−164094号公報
【特許文献5】特開2006−299010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、処理条件が異なる熱処理を連続して行うことができ、設備コストの増加を抑えることができながら、熱媒体の循環を安定的に行うことができる横型回転式熱処理炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
軸心回りに回転する内筒及びこの内筒から所定間隔を隔てて同心状に設置された外筒を有し、この内筒及び外筒間の加熱室に流通される熱媒体により前記内筒内に供給された被処理物が一端側から他端側へ移送される過程において熱処理される構成とされた横型回転式熱処理炉であって、
前記加熱室が前記被処理物の移送方向に関して複数に分割され、かつ各加熱室に各別に熱媒体が流通されることで、被処理物の熱処理が複数に区画されて行われる構成とされ、
前記外筒の前記内筒からの所定間隔が、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に広くされ、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に狭くされている、
ことを特徴とする横型回転式熱処理炉。
【0008】
(主な作用効果)
外筒の内筒からの所定間隔を、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に広くし、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に狭くすることで、各加熱室に供給する熱媒体の流速を同一とすることができる。結果、内容が異なる熱処理を連続して行うことができ、設備コストの増加を抑えながら、熱媒体の循環を安定的に行うことができる横型回転式熱処理炉となる。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
前記各加熱室に熱媒体を螺旋状に流通させる整流板が設けられ、
この整流板によって形成された螺旋状流路の断面積が、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に広くされ、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に狭くされている、
請求項1記載の横型回転式熱処理炉。
【0010】
(主な作用効果)
各加熱室に熱媒体を螺旋状に流通させる整流板を設け、この整流板によって形成した螺旋状流路の断面積を、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に広くし、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に狭くすることで、各加熱室に供給する熱媒体の流量(供給流量)が異なる場合であっても、各熱媒体を円滑に流通させることができ、しかも設備コストの増加を抑えることができる。
【0011】
〔請求項3記載の発明〕
前記整流板のピッチが、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に長くされ、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に短くされている、
請求項2記載の横型回転式熱処理炉。
【0012】
(主な作用効果)
整流板のピッチを、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に長くし、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に短くすることで、簡易に螺旋状流路の断面積を相対的に広く、あるいは狭くすることができ、しかも設備コストの増加を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、内容が異なる熱処理を連続して行うことができ、設備コストの増加を抑えながら、熱媒体の循環を安定的に行うことができる横型回転式熱処理炉となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態の横型回転式熱処理炉の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図1に、石油化学製品、汚泥、産業廃棄物等の被処理物C1を熱処理する横型回転式熱処理炉1を示した。横型回転式熱処理炉1は、軸心回りに回転する円筒状の内筒10と、この内筒10から所定間隔(X1,X2)を隔てて同心状に設置された、内筒10の回転に伴う回転をしない円筒状の外筒20と、から主になる。
【0016】
内筒10の両端面には開口が形成されており、一方の開口には被処理物C1の供給等を行う入口ケーシング30が、他方の開口には被処理物C1を熱処理して得た製品C2の排出等を行う出口回転ケーシング40が、それぞれ挿入されている。
【0017】
入口ケーシング30は、図示しない部材等によって固定されており、内筒10の回転に伴う回転をしない。したがって、入口ケーシング30と内筒10との接続部分は、適宜のシール機構を用いてシールしておくのが好ましい。このシール機構としては、例えば、特開平02−113088号公報、特開平10−206021号公報、特開平10−300358号公報、特開2008−256287号公報等に記載されたシール機構を採用することができる。
【0018】
入口ケーシング30は、円筒状の筒体内にスクリューコンベアが設置される等して構成されている。当該筒体の一方端部(内筒10に対して遠位側の端部)には、内筒10内と連通する被処理物C1の供給口31が形成されており、この供給口31に対して内筒10側の部位には、内部ガスGの排気口32が形成されている。供給口31から筒体内に供給された被処理物C1は、図示しないスクリューコンベアによって当該筒体内を一方端部側から他方端部(内筒10に対して近位側の端部)側へ搬送され、当該筒体の他方端面に形成された開口から内筒10内に供給(装入)される。
【0019】
内筒10内に供給された被処理物C1は、入口ケーシング30側(一端側)から出口ケーシング40側(他端側)へ移送され、この過程において、例えば、乾燥、炭化、熱分解、燃焼等の処理条件が異なる熱処理が連続して行われる。被処理物C1を一端側から他端側へ移送する方法としては、例えば、内筒10内にスクリューコンベア等の移送手段を設置し、この移送手段を利用して移送する方法を採用することもできる。ただし、本形態の熱処理炉1においては、内筒10の軸心が水平面に対して、例えば0.1/100〜10/100傾いており、内筒10の一端側が他端側よりも若干高くなっている。したがって、被処理物C1は、内筒10の回転に伴って、内筒10の内周面によって攪拌されつつ、一端側から他端側へ移送される。被処理物C1の攪拌効率は、内筒10の内周面に図示しない攪拌羽根を取り付けることによって向上させることができる。攪拌羽根によって内筒10の底部に滞留する被処理物C1が掻き上げられ、被処理物C1と伝熱面である内筒10の内周面との接触効率が向上する。この攪拌羽根としては、内筒10の軸方向に延在するもの、斜め方向に延在するもの等を適用することができる。
【0020】
内筒10内を出口回転ケーシング40まで移送された被処理物C1は、この出口回転ケーシング40、及びこの出口回転ケーシング40と連通状態とされた出口固定ケーシング43を通して、熱処理後の被処理物C1である製品C2として、装置外に排出される。出口回転ケーシング40は、筒体内に図示しないスクリュー状の羽根等が設けられた構成である。この出口回転ケーシング40は、内筒10に固定されており、内筒10と伴に回転する。この内筒10及び出口回転ケーシング40の回転と共に筒体内設けられたスクリュー状の羽根も回転し、この羽根の回転に伴って被処理物C1が筒体内を一端側から他端側へ(紙面右側へ)搬送される。筒体内を他端部まで搬送された被処理物C1は、当該筒体の他方端面に形成された開口から出口固定ケーシング43内に押し出される。
【0021】
この出口固定ケーシング43には、上方に向けて開口する不活性ガスNの供給口41、及び、下方に向けて開口する製品C2の排出口42が形成されている。この供給口41及び排出口42は、いずれも出口回転ケーシング40を通して内筒10内と連通する構成とされており、出口回転ケーシング40から出口固定ケーシング43内に押し出された被処理物C1は、排出口42から製品C2として排出される。
【0022】
他方、供給口41から出口固定ケーシング43内に供給された不活性ガスNは、出口回転ケーシング40を通して内筒10内に供給される。内筒10内に供給されたキャリアガスNは、被処理物C1の熱処理に伴って発生した乾留ガスなどと共に、内部ガスGとして、入口ケーシング30の筒体内に送り込まれる。この筒体内に送り込まれた内部ガスGは、他方端部側から一方端部側へ(紙面左側へ)流れ、排気口32から排気される。
【0023】
以上のように、本形態の熱処理炉1は、被処理物C1の移送方向とガスの流通方向とが逆方向となる向流式とされているが、熱処理の内容等によっては、並流式とすることもできる。また、キャリアガスNは、内筒10内で発生した水蒸気や乾留ガスなどを排気口32から排出することが目的である。特に被処理物C1の発火を防止し、あるいは乾留ガス等の排出を促進するためには、例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気等を使用することが好ましい。また、熱処理の内容として燃焼等が含まれる場合においては、キャリアガスNの供給を省略し、又は酸素含有ガス等に変えることができる。
【0024】
外筒20は、内筒10から所定間隔(X1,X2)を隔てて同心状に設置されおり、当該外筒20の内周面と内筒10の外表面との間に形成される加熱室(R1,R2)に熱媒体H(H1,H2)が流通される。この熱媒体Hは、例えば、熱風等の熱気体、熱湯等の熱液体、これらの混合物等からなり、この熱媒体Hの熱が内筒10を介して間接的に被処理物C1に伝達され、被処理物C1の熱処理が行われる。なお、加熱室(R1,R2)の外周を構成する外筒20は、熱損失防止のために、断熱材20Xで構成されている。
【0025】
本形態において、加熱室(R1,R2)は、被処理物C1の移送方向に関して2つの加熱室R1及び加熱室R2に分割されており、各加熱室R1,R2に各別に熱媒体H1,H2が流通される。各加熱室R1,R2に各別に熱媒体H1,H2が流通されることで、被処理物C1の熱処理が複数に区画されて行われる。本形態では、加熱室R1内を流通する熱媒体H1によって熱処理される加熱ゾーンZ1と、加熱室R2内を流通する熱媒体H2によって熱処理される加熱ゾーンZ2とに区画されている。各加熱ゾーンZ1,Z2において行われる熱処理の内容は特に限定されるものではないが、本形態の熱処理炉1は、加熱ゾーンZ1において被処理物C1の乾燥処理を、加熱ゾーンZ2において被処理物C2の熱分解処理を行う場合に好適である。また、特に図示はしないが、加熱ゾーン(加熱室)を3つ以上の複数とすることもできる。
【0026】
熱媒体H1,H2の供給流量は、加熱室R1,R2ごとに異なるものとされている。この熱媒体H1,H2の供給流量は、加熱室ごとに供給する熱量を異なるものとするために相違させるのが一般的であるが、その他の目的のために相違させることもできる。
【0027】
本形態においては、外筒20の内筒10からの所定間隔(X1,X2)が、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室R1において相対的に広くされ(所定間隔X1)、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室R2において相対的に狭くされている(所定間隔X2)。所定間隔X1,X2を異なるものとすることで、熱媒体H1,H2の供給流量が加熱室R1,R2ごとに異なるものとされている場合においても、熱媒体H1,H2の流速を同一とすることができる。ここで、外筒20の内筒10からの所定間隔(X1,X2)は、相対的な広狭の関係以外は特に限定されず、被処理物C1を熱処理するために必要な熱量、加熱室(R1,R2)の軸方向に関する長さ、熱媒体Hの温度等をファクターとして適宜決定することができる。また、加熱ゾーン(加熱室)が3つ以上の複数とされる場合は、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室における所定間隔を相対的に広くし、供給流量が相対的に少ない加熱室における所定間隔を相対的に狭くすればよい。
【0028】
加熱室(R1,R2)は、図1中に拡大して示すように、内筒10から延出し、かつ外筒20に及ぶ仕切り壁10Xによって、加熱室R1と加熱室R2とに分割されている。加熱室(R1,R2)を構成する内筒10は回転するものの、同じく加熱室(R1,R2)を構成する外筒20は回転しない。したがって、仕切り壁10Xは、外筒20に及ぶものの、当該外筒20には連結されない状態とされている。したがって、仕切り壁10Xの先端部と外筒20の内周面とが離間している必要はなく、部材摩耗の観点等から許容されるのであれば、当接していてもよい。また、仕切り壁10Xは、図示はしないが、外筒20から延出し、かつ内筒10に及ぶ形態とすることもできる。なお、本明細書において、加熱室の「分割」は、各熱媒体H1,H2が隣接する加熱室に流出しないように行うものである。しかしながら、上記したように、内筒10は回転するものの外筒20は回転しないことによる構造上の限界が存在するため、熱媒体が隣接する加熱室にわずかに流出する場合も含むものとする。
【0029】
本形態においては、仕切り壁10Xを挟んだ両加熱室R1,R2に、熱媒体H1,H2を螺旋状に流通させる整流板61,62が設けられている。この整流板61,62は、前述特許文献4等に開示された整流板と同様に、熱媒体H1,H2のショートパスを防止する機能を有し、熱効率を向上させる効果を有する。しかしながら、本形態の両整流板61,62は、従来の整流板と異なり、この整流板61,62によって形成された螺旋状流路の断面積(熱媒体の流れ方向に直交する断面積)が、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室R1において相対的に広くされ、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室R2において相対的に狭くされた構成とされている。整流板61,62をこのような構成とすることで、各加熱室R1,R2に供給する熱媒体H1,H2の流量(供給流量)が異なる場合であっても、当該熱媒体H1,H2を円滑に流通させることができ、しかも設備コストの増加を抑えることができる。また、この場合においては、各整流板61,62のピッチL1,L2が、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室R1において相対的に長くされ(ピッチL1)、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室R2において相対的に短くされている(ピッチL2)のが好ましい。整流板61,62のピッチL1,L2を、このように相違させることで、簡易に螺旋状流路の断面積を相対的に広く、あるいは狭くすることができ、しかも設備コストの増加を抑えることができる。
【0030】
次に、各加熱室R1,R2に熱媒体H1,H2を流通させるための形態を説明する。
本形態の熱処理炉1においては、外筒10の入口ケーシング30側端部に形成された流入口11から加熱室R1内に熱媒体H1が、外筒10の出口回転ケーシング40側端部に形成された流入口12から加熱室R2内に熱媒体H2が、各別に流入される。各流入口11,12は、熱媒体H1,H2の流入方向が加熱室R1,R2に対して接線方向となるように形成されていると好適である。また、各流入口11,12の軸方向や周方向に関する形成位置、形成する数などは特に限定されるものではないが、加熱室R1の流入口11は、入口ケーシング30側端部に、かつ加熱室R1内に流入された熱媒体H1がまず内筒10の底面を加熱するように形成されていると好適である。この形態によると、入口ケーシング30から供給され、内筒10内において、まず、入口ケーシング30側の底部に堆積する被処理物C1が効果的に加熱される。なお、図示例において、流入口(11,12)は、各加熱室R1,R2に1つとされているが、2つ以上の複数とすることもできる。
【0031】
加熱室R1内に流入された熱媒体H1は、整流板61によって螺旋状に仕切り壁10X側(紙面右方)へ流通され、外筒20の仕切り壁10X近傍に形成された流出口13から加熱室R1外に流出される。また、加熱室R2内に流入された熱媒体H2は、整流板62によって螺旋状に仕切り壁10X側(紙面左方)へ流通され、外筒20の仕切り壁10X近傍に形成された流出口14から加熱室R2外に流出される。各流出口13,14は、熱媒体H1,H2の流出方向が加熱室R1,R2に対して接線方向となるように形成されていると好適である。また、各流出口13,14の軸方向や周方向に関する形成位置、形成する数などは特に限定されるものではないが、各加熱室R1,R2において対応する流入口11,12とは反対側の端部に形成されていると好適である。各加熱室R1,R2において流入口11,12及び流出口13,14が相互に反対側の端部に形成されていると、各加熱ゾーンZ1,Z2において全長にわって均一な熱処理が行われるようなる。なお、図示例において、流出口(13,14)は、各加熱室R1,R2に1つとされているが、2つ以上の複数とすることもできる。
【0032】
流出口13,14から流出された熱媒体H1,H2は、ダクト等からなる排出流路D1で合流(混合)された後、図示しないブロワやポンプなどの供給手段によって燃焼炉や電気炉等の加熱手段90に供給され、別途空気等の酸素含有ガスAとともに加熱される。加熱後の熱媒体Hは、ダクト等からなる供給流路D2を通じて流量の異なる2つの熱媒体H1,H2に分流され、再度流入口11,12から加熱室R1,R2内に流入される(分配供給)。加熱室R1,R2内に流入される熱媒体H1,H2は、流速が同一とされており、熱媒体の循環が安定する。このように熱処理炉1は、熱媒体の排出流路D1、加熱手段90、および供給流路D2を備えることで熱処理設備として利用することができる。この点、流出口13,14から流出された熱媒体H1,H2は、合流(混合)することなく、各別の加熱手段で加熱し、再度流入口11,12から加熱室R1,R2内に流入することもできる。しかしながら、熱媒体の加熱手段を複数設けると、設備コストが著しく増加する。また、流出口13,14から流出された熱媒体H1,H2を再利用しないこともできるが、熱媒体H1,H2の余熱が有効利用されず、熱効率が低下する。ところで流入口11,12の上流側の流路(例えば、供給流路D2やこの供給流路D2と流入口11,12とを繋ぐ流路など。)及び流出口13,14の下流側の流路(例えば、排出流路D1やこの排出流路D1と流出口13,14とを繋ぐ流路など。)には、補助的に熱媒体H1,H2の流量を調整することを目的としたダンパなどの流量調整手段を設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、内筒及び外筒間の加熱室に流通される熱媒体によって内筒内の被処理物が熱処理される外熱式の横型回転式熱処理炉として適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…横型回転式熱処理炉、10…内筒、11,12…流入口、13,14…流出口、10X…仕切り壁、20…外筒、30…入口ケーシング、31…供給口、32…排気口、40…出口回転ケーシング、41…供給口、42…排出口、43…出口固定ケーシング、61,62…整流板、90…加熱手段、A…酸素含有ガス、C1…被処理物、C2…製品、G…内部ガス、H,H1,H2…熱媒体、L1,L2…ピッチ、N…不活性ガス、R1,R2…加熱室、X1,X2…所定間隔、Z1,Z2…加熱ゾーン、D1…排出流路、D2供給流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心回りに回転する内筒及びこの内筒から所定間隔を隔てて同心状に設置された外筒を有し、この内筒及び外筒間の加熱室に流通される熱媒体により前記内筒内に供給された被処理物が一端側から他端側へ移送される過程において熱処理される構成とされた横型回転式熱処理炉であって、
前記加熱室が前記被処理物の移送方向に関して複数に分割され、かつ各加熱室に各別に熱媒体が流通されることで、被処理物の熱処理が複数に区画されて行われる構成とされ、
前記外筒の前記内筒からの所定間隔が、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に広くされ、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に狭くされている、
ことを特徴とする横型回転式熱処理炉。
【請求項2】
前記各加熱室に熱媒体を螺旋状に流通させる整流板が設けられ、
この整流板によって形成された螺旋状流路の断面積が、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に広くされ、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に狭くされている、
請求項1記載の横型回転式熱処理炉。
【請求項3】
前記整流板のピッチが、熱媒体の供給流量が相対的に多い加熱室において相対的に長くされ、熱媒体の供給流量が相対的に少ない加熱室において相対的に短くされている、
請求項2記載の横型回転式熱処理炉。

【図1】
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