説明

横型連続熱処理炉における金属帯の張力検出方法

【課題】横型連続熱処理炉において、炉内支持ロール間のカテナリー量を精度よく検出することができ、これにより炉内張力を高精度に検出することができる炉内張力検出方法を提供する。
【解決手段】炉内支持ロール間の中央位置の炉側壁に形成された透孔を通して、パスラインに対して仰角又は俯角となる角度を設けた方向から光学式カテナリー検出装置により金属帯のカテナリー量を検出し、この検出量に基づき金属帯の炉内張力を求める。金属帯が所定の幅をもって撮影されるので、金属帯を背景の炉内壁部から明確に識別することができ、このため金属帯のカテナリー量を容易に且つ精度良く検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は横型連続熱処理炉における金属帯の炉内張力検出方法に関し、金属帯のカテナリー量に基づき金属帯の炉内張力を高精度に検出することができる張力検出方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストリップの横型連続焼鈍炉は、炉内部と炉入口及び出口近傍に配置された支持ロールよりストリップをカテナリー状に懸架支持し、この状態で炉内を搬送しつつ連続的に焼鈍処理を施す焼鈍炉である。この種の炉では、ストリップの炉内張力を検出し、この検出値に基づいてストリップの走行状態を的確に制御することが極めて重要である。
【0003】
特許文献1には、ストリップの炉内張力を検出する方法として、炉内支持ロール間の中央位置の炉側壁に形成された透孔を通して、イメージセンサ等の光学的カテナリー検出装置によりストリップのカテナリー量を検出し、このカテナリー量に基づきストリップの炉内張力を求める方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−354828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法は、パスラインに対して水平方向(真横)からストリップを検出するため、ストリップと背景(炉壁)との識別が難しく、このためカテナリー量を精度よく検出できない場合がある。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、炉内支持ロール間の金属帯のカテナリー量を精度よく検出することができ、これにより炉内張力を高精度に検出することができる炉内張力検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]複数の支持ロールを備え、金属帯が前記支持ロールにより支持されつつ通板する横型連続熱処理炉における金属帯の張力検出方法において、
炉内支持ロール間の中央位置の炉側壁に形成された透孔を通して、パスラインに対して仰角又は俯角となる角度を設けた方向から光学式カテナリー検出装置により金属帯のカテナリー量を検出し、該検出量に基づき金属帯の炉内張力を求めることを特徴とする横型連続熱処理炉における金属帯の炉内張力検出方法。
【0007】
[2]上記[1]の炉内張力検出方法において、光学式カテナリー検出装置により検出される金属帯の画像の上下幅hがカメラ視野の1/10以上であり、且つカテナリー許容範囲の上限位置に金属帯がある場合における金属帯の画像の上下幅をh、カテナリー許容範囲の下限位置に金属帯がある場合における金属帯の画像の上下幅をh、カテナリー許容範囲の上下中心位置に金属帯がある場合における金属帯の画像の上下幅をhとした場合に(h−h)/h≧0.05を満足するような条件で、光学式カテナリー検出装置により金属帯のカテナリー量を検出することを特徴とする横型連続熱処理炉における金属帯の炉内張力検出方法。
ここで、上記光学的カテナリー検出装置(センサ)としては、通常イメージセンサが用いられるが、それ以外の検出装置を用いてもよく、例えば、光電管を縦にいくつか並べた光電管方式の検出装置等を用いてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パスラインに対して仰角又は俯角となる角度を設けた方向から光学式カテナリー検出装置により金属帯のカテナリー量を検出するため、金属帯が所定の幅をもって撮影され、金属帯を背景の炉内壁部から明確に識別することができる。このため金属帯のカテナリー量を容易に且つ精度良く検出することができ、金属帯の炉内張力を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、炉体及び設置されたイメージセンサなどを示す斜視図
【図2】図1の実施形態を、炉体幅方向を縦断面した状態で示す説明図
【図3】イメージセンサで検出された金属帯の画像を示す説明図
【図4】本発明の好ましい条件を説明するための図面
【図5】本発明の他の実施形態を、炉体幅方向を縦断面した状態で示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、光学的カテナリー検出装置としてイメージセンサを用いる場合を例に、本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は本発明の一実施形態を示すもので、図1は炉体及び設置されたイメージセンサなどを示す斜視図、図2は図1の実施形態を炉体幅方向を縦断面した状態で示す説明図である。
横型焼鈍炉などのような横型連続熱処理炉1の炉内支持ロ−ル3a,3b間の中央位置の炉側壁には、炉内を通板する金属帯5を観察できるような透孔2が設けられている。この透孔2は炉長手方向においてなるべく多数の炉内支持ロール間の中央位置に設けることが望ましい。特に、炉内温度が1200℃以上で板厚が0.1mm程度の金属帯5を熱処理するような炉では、張力異常が即破断に結び付くため、炉長手方向のなるべく多数の位置で張力を検出することが望ましい。そして、この透孔2の炉外側には、該透孔2を通して炉内の金属帯5を側方から観察するイメージセンサ6が設置されている。
金属帯5は炉内の支持ロ−ル3a,3b等と炉外の支持ロール4によって支持され、各支持ロール間でカテナリーを形成する。
【0011】
本発明では、上記イメージセンサ6で金属帯5を撮影し、そのカテナリー量の検出を行うが、その際に、パスラインに対して仰角又は俯角となる角度θを設けた方向からイメージセンサ6による検出(撮影)を行うものであり、この実施形態では、パスラインに対して仰角となる角度θを設けた方向からイメージセンサ6による検出(撮影)を行っている。すなわち、イメージセンサ6の受光軸pが水平に対して上向きの角度(仰角)を有するようにイメージセンサ6を設置し、透孔2を通じて炉内を通板する金属帯5をその側方から撮影している。
炉内雰囲気は1000℃以上の高温であるため金属帯5は赤熱しており、背景の炉内壁(耐火材等)との間に濃淡差が生じる。イメージセンサ6によりこの濃淡差が捉えられ、金属帯5と炉内壁部とを画面上で分離することが可能となり、金属帯エッジの位置の変化量を検出することによりカテナリー量を検出することができる。
【0012】
しかし、パスラインに対して水平方向(真横)から金属帯を検出しようとすると、金属帯は線状にしか捉えられないため、背景の炉内壁面との識別が難しく、このためカテナリー量を精度よく検出できない。これに対して本発明では、パスラインに対して仰角又は俯角となる角度θを設けた方向からイメージセンサ6により金属帯5の画像を得るので、金属帯5が所定の幅をもって撮影され(金属帯5の下面又は上面が斜め側方から撮影される)、このため金属帯5のカテナリー量を容易に且つ精度良く検出することができる。図3は、そのようにしてイメージセンサ6で検出(撮影)された金属帯の画像を示している。
【0013】
また、図5は、パスラインに対して俯角となる角度θを設けた方向からイメージセンサ6による検出(撮影)を行う実施形態を示している。すなわち、イメージセンサ6の受光軸pが水平に対して下向きの角度(俯角)を有するようにイメージセンサ6を設置し、透孔2を通じて炉内を通板する金属帯5をその側方から撮影している。
なお、このようにパスラインに対して俯角となる角度θを設けた方向から検出を行う方法(図5)は、パスラインに対して仰角となる角度θを設けた方向から検出を行う方法(図2)に較べて、炉内雰囲気中のダスト等で透孔2が汚れることにより視野が制限され、検出精度が低くなる場合があり得るので、両者を較べた場合、後者の方法(図2)の方がより好ましい。また、俯角の場合には、カメラから見て金属帯は凹側の形状となるため、金属帯に映り込んだ炉内構造物の影等がカテナリー量の変化により大きく変化し、検出上の外乱となる可能性もある。
上記のようにして、本発明では金属帯5の炉内カテナリー量がリアルタイム且つ高精度に検出され、このカテナリー量から予め求められているカテナリー量と実張力との関係(例えば、特許文献1の図4参照)に基づき炉内張力が算出される。
【0014】
図3に示すような、イメージセンサ6で検出(撮影)される金属帯の画像の上下幅hは、その大きさに特別な制限はないが、小さ過ぎると金属帯の識別・検出精度が低下し、大き過ぎるとカテナリーの検出精度が低下する。
ここで、図4(ア)に示すようにパスラインに対する仰角(又は俯角)である角度θは、以下のように定義することができる。
θ:金属帯5の幅方向中央部とイメージセンサ6の受光部中心とを結ぶ直線aがパスラインと平行な面に対してなす角度(°)
【0015】
また、図4(ア)に示すように、
θx:イメージセンサ6側の金属帯エッジ部とイメージセンサ6の受光部中心とを結ぶ直線bがパスラインと平行な面に対してなす角度(°)
θy:イメージセンサ6と反対側の金属帯エッジ部とイメージセンサ6の受光部中心とを結ぶ直線cがパスラインと平行な面に対してなす角度(°)
L:イメージセンサ6の受光部からイメージセンサ6側の金属帯エッジ部までの水平距離(mm)
W:金属帯5の板幅(mm)
H:イメージセンサ6の受光部から金属帯5までの垂直距離(mm)
とした場合、
tanθ=H/(L+W/2)
tanθx=H/L
tanθy=H/(L+W)
であり、金属帯5の画像の上下幅hは下式のような値となる。
h=(L+W/2)×(tanθx−tanθy)
【0016】
ここで、本発明では、金属帯5の画像の上下幅hがカメラ視野の1/10以上であり、且つカテナリー許容範囲の上限位置(許容範囲内でカテナリー量が最小となる位置)に金属帯5がある場合における金属帯5の画像の上下幅をh、カテナリー許容範囲の下限位置(許容範囲内でカテナリー量が最大となる位置)に金属帯5がある場合における金属帯5の画像の上下幅をh、カテナリー許容範囲の上下中心位置に金属帯5がある場合における金属帯5の画像の上下幅をhとした場合に(h−h)/h≧0.05を満足するような条件で、イメージセンサ6により金属帯5のカテナリー量を検出すること、具体的には、角度θや距離Lなどを適宜設定してカテナリー量の検出を行うことが好ましい。
【0017】
図4(イ)に、カテナリー許容範囲Dにおける金属帯5の上限位置(許容範囲内でカテナリー量が最小となる位置)、下限位置(許容範囲内でカテナリー量が最大となる位置)及び上下中心位置を示す。ここで、カテナリー許容範囲Dの上限位置は、許容される金属帯張力(この許容張力は金属帯の材質、熱処理温度などで決まる)などに応じて決められる。また、カテナリー許容範囲Dの下限位置は、例えば金属帯5が炉底側の部材と接触しないなどの条件から決められる。
【0018】
金属帯5の画像の上下幅hが小さ過ぎると、金属帯5を所定の幅をもって検出するという本発明の効果が得られにくくなり、金属帯5の識別・検出精度が低下するが、金属帯5の画像の上下幅hがイメージセンサ6のカメラ視野の1/10以上であれば、金属帯5の識別・検出精度は十分確保することができる。一方、金属帯5の画像の上下幅hが大き過ぎると、金属帯5の画像でカテナリーが捉えにくくなり、カテナリー量変動の検出精度が低下するが、上記(h−h)/h≧0.05を満足すれば、すなわち、カテナリー変動の許容範囲の上限・下限間で金属帯5の画像の上下幅hが5%以上変動すれば、カテナリー量変動の検出精度を十分確保することができる。
なお、角度θ及び距離Lで好適条件を示すとすると、例えば金属帯5の板幅Wが500〜600mm程度である場合には、角度θ:3〜5°、距離L:1000〜2000mm程度が好ましい。
【符号の説明】
【0019】
1 横型連続熱処理炉
2 透孔
3a,3b 炉内支持ロール
4 炉外支持ロール
5 金属帯
6 イメージセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持ロールを備え、金属帯が前記支持ロールにより支持されつつ通板する横型連続熱処理炉における金属帯の張力検出方法において、
炉内支持ロール間の中央位置の炉側壁に形成された透孔を通して、パスラインに対して仰角又は俯角となる角度を設けた方向から光学式カテナリー検出装置により金属帯のカテナリー量を検出し、該検出量に基づき金属帯の炉内張力を求めることを特徴とする横型連続熱処理炉における金属帯の炉内張力検出方法。
【請求項2】
光学式カテナリー検出装置により検出される金属帯の画像の上下幅hがカメラ視野の1/10以上であり、且つカテナリー許容範囲の上限位置に金属帯がある場合における金属帯の画像の上下幅をh、カテナリー許容範囲の下限位置に金属帯がある場合における金属帯の画像の上下幅をh、カテナリー許容範囲の上下中心位置に金属帯がある場合における金属帯の画像の上下幅をhとした場合に(h−h)/h≧0.05を満足するような条件で、光学式カテナリー検出装置により金属帯のカテナリー量を検出することを特徴とする請求項1に記載の横型連続熱処理炉における金属帯の炉内張力検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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