説明

横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタックおよび燃料電池

【課題】未消費の酸素を含むガスの滞留を抑制し、発電効率の向上したセルスタック及びそれを用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック1bにおいて、多孔質支持体11の主面のうち少なくとも一方の主面に配置された燃料電池セルのうち、内側電極層およびインターコネクタが、多孔質支持体の幅方向に沿って少なくとも2つに分割されて配置されており、分割された内側電極層の表面および該内側電極層の間における多孔質支持体上に沿って固体電解質層13bが積層されて、多孔質支持体の幅方向に沿って隣り合う内側電極層の間の空間に溝が形成されているとともに、該溝が燃料電池セルに供給される第2の反応ガスが流れる第2の反応ガス流路として構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック(以下、単にセルスタックという場合がある。)およびそれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換段数を少なくし、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する高い発電効率を有する発電方法として、燃料電池が注目されている。とりわけ、固体酸化物形燃料電池は、発電温度が600℃〜1000℃と高く、燃料電池内の内部抵抗が小さいため、燃料電池の中で最も発電効率が高く、さらに残燃料を利用してガスタービンによるさらなる発電、あるいはコージェネレーション用の熱源として用いることができ、化学エネルギーを高い変換効率で電気エネルギーに変換できる特性を有する。特に横縞型固体酸化物形燃料電池は、少ないセルスタックの本数で高い電圧を得られる。
【0003】
従来のセルスタックは、長手方向に沿って燃料ガスを流すためのガス流路を内部に備え、一端側に前記ガス流路の燃料ガス導入口を有し、他端側に前記ガス流路の燃料ガス排出口を有してなる電気絶縁性の多孔質支持体上に、燃料極層、固体電解質層および空気極層が順次積層された多層構造の燃料電池セルを複数個配列し、隣接する燃料電池セルを、インターコネクタを介して電気的に接続したものである。
このようなセルスタックから実用的な電力を得るにあたっては、隣接するセルスタック同士を、スタック間接続部材を介して、電気的に接続してバンドルを形成することが好ましい。発電時には、該バンドルを収納した収納容器内を高温にし、水素を含む燃料ガスを、セルスタックのガス流路内に流し、さらに空気等の酸素を含む酸素含有ガスをセルスタック外面に曝すことで発電させる。
【0004】
特許文献1には、多孔質支持体の強度を高めるとともに高い発電性能を保持するために、多孔質支持体を緻密質にし、多孔質支持体にガス流路から燃料極層にガスを供給するための複数の貫通孔を形成させることが開示されている。
【0005】
特許文献2には、スタック間接続部材とセルスタックとの接続部で生じる接続抵抗による集電損失を小さくするために、該接続部を所定の接触面積にすることが開示されている。
【0006】
しかし、上記のようなセルスタックから得られる電力は、供給する燃料ガス流量および酸素含有ガス流量から見込まれる電力よりも低いものであった。原因は、セルスタックの発電時において、セルスタックの短手方向(以下、多孔質支持体の幅方向、単に幅方向という場合がある。)の中央部の温度が上昇し、セルスタックの表面側に供給される水素含有ガスや燃料ガス等の反応ガス(上述の例では、酸素含有ガス)の粘度が増加し、発電で使用された後の水素または酸素の濃度が低下した反応ガス(以下、消費ガスという場合がある。)が、セルスタックの表面で滞留する場合がある。この場合に、水素または酸素の濃度が低下した消費ガスが滞留することで、水素または酸素の濃度が十分な反応ガスを各燃料電池セル(外側電極層)に供給することができず、発電量や発電効率が低下するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−250368号
【特許文献2】特開2006−19059号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、セルスタックの表面側に供給される反応ガスがセルスタックの表面上に滞留することを抑制でき、発電効率の向上した横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック及びそれを用いた燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、内側電極層およびインターコネクタを、幅方向に沿って少なくとも2つに分割させて多孔質支持体上に配置し、分割された内側電極層の表面および該内側電極層の間における多孔質支持体上に沿って固体電解質層を積層させ、幅方向に沿って隣り合う内側電極層の間に溝を構成することで、セルスタック上に消費ガスが滞留することを抑制でき、発電効率の向上したセルスタックを提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1) 長手方向に沿って第1の反応ガスを流すための第1の反応ガス流路を内部に備え、長手方向の一端側に前記第1の反応ガス流路の導入口を有し、他端側に前記第1の反応ガス流路のガス排出口を有してなる中空平板状でかつ電気絶縁性の多孔質支持体の主面上に、内側電極層、固体電解質層および外側電極層がこの順に積層された多層構造を有する燃料電池セルを、前記多孔質支持体の長手方向に沿って複数配置し、隣接する一方の前記内側電極層と、隣接する他方の前記外側電極層とがインターコネクタを介して電気的に接続されてなる横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタックであって、前記多孔質支持体の主面のうち少なくとも一方の主面に配置された前記燃料電池セルのうち、前記内側電極層および前記インターコネクタが、前記多孔質支持体の幅方向に沿って少なくとも2つに分割されて配置されており、分割された前記内側電極層の表面および該内側電極層の間における前記多孔質支持体上に沿って前記固体電解質層が積層されて、前記多孔質支持体の幅方向に沿って隣り合う前記内側電極層の間の空間に溝が形成されているとともに、該溝が前記燃料電池セルに供給される第2の反応ガスが流れる第2の反応ガス流路として構成されていることを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
(2) 前記内側電極層および前記インターコネクタが、前記多孔質支持体の幅方向中央部で2つに分割されている前記(1)に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
(3) 前記外側電極層が、前記多孔質支持体の幅方向に沿って一端側より他端側にかけて前記固体電解質層上に沿って配置されている前記(1)または(2)に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
(4) 前記外側電極層が、分割された前記内側電極層と対応する部位に分割されて配置されている前記(1)または(2)に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
(5) 前記第2の反応ガス流路の前記多孔質支持体の幅方向における間隔が、前記多孔質支持体の幅方向の長さの1/3以下である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
(6) 前記多孔質支持体は、少なくとも一方の主面に、長手方向に沿って少なくとも1つの支持体溝が形成されており、この溝を介して前記内側電極層および前記インターコネクタが少なくとも2つに分割されている前記(1)〜(5)のいずれかに記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
(7) 前記(1)〜(6)のいずれかに記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタックを収納容器内に複数収容してなることを特徴とする燃料電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルスタックの表面側に供給された反応ガスのうち、発電で使用された後の消費ガスが滞留することを抑制でき、発電効率の向上した横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタックを提供することができる。また上記の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタックを収納容器に収納することで、発電効率の向上した燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態にかかるセルスタックの表面図であり、図2(b)は、本実施形態にかかるセルスタックの裏面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるセルスタックにかかる図2(a)および図2(b)中のA−A線断面図である。
【図4】(a)は、本発明の一実施形態にかかるセルスタックの表面図であり、(b)は、セルスタックからセル接続材および空気極層を取り除いた図4(a)中のB−B断面図である。
【図5】本発明のさらに他の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【図6】本発明のさらに他の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【図7】本発明のさらに他の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【図8】本発明のさらに他の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【図9】本発明のさらに他の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【図10】本発明のさらに他の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【図11】本発明のさらに他の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【図12】本発明のさらに他の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のセルスタックおよびそれを用いた燃料電池の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(セルスタック)
図1は、本発明の一実施形態にかかるセルスタックの一部を破断して示す斜視図である。図2(a)は、本発明の一実施形態にかかるセルスタックの表面を示す図であり、図2(b)は、本実施形態にかかるセルスタックの裏面を示す図である。図3は図2(a)および図2(b)中のA−A線断面図である。
【0015】
図1に示すように、セルスタック1aは、中空平板状の電気絶縁性の多孔質支持体11の表裏面に、複数の燃料電池セル13を多孔質支持体11の長手方向(以下、単に長手方向という場合がある。)に沿って所定間隔において配置し、それらをセル間接続部材17を介して直列に接続した「横縞型」といわれるものである(図2(a)および(b)参照)。
【0016】
燃料電池セル13は、図1に示すように、多孔質支持体11の表裏面に、内側電極としての燃料極層(集電燃料極層13dおよび活性燃料極層13a)およびインターコネクタ17aが、多孔質支持体11の幅方向に沿って2つに分割されて配置されており、分割された燃料極層の表面および該燃料極層の間における多孔質支持体11上に沿って固体電解質層13bが配置されている(図3参照)。また固体電解質層13b上には、外側電極として空気極層13cが配置されている。それにより、多孔質支持体11の幅方向に隣り合う燃料極層の間の空間に第2の反応ガス流路として空気流路20である溝が形成される。また、それぞれの燃料電池セル13は、集電燃料極層13d、活性燃料極層13a、固体電解質層13bおよび空気極層13cを順次積層した層構造となっており、集電燃料極層13d上にインターコネクタ17aが配置されている。なお、以下の説明において、内側電極層として燃料極層を、外側電極層として空気極層13cを用いるタイプのセルスタックを用いて説明する。
【0017】
空気流路20を設けることで、隣接するセルスタック1a同士を、スタック間接続部材を介して直列に複数接続し、これを収納した収納容器内を高温にし、水素を含む燃料ガスを、セルスタック1aのガス流路内に流し、さらに酸素を含む酸素含有ガスをセルスタック外面に曝し発電させる際に、隣接するセルスタック1a間で、セルスタック1aの短手方向中央部に、酸素が使用され、酸素量の低減した酸素含有ガスである消費ガスの滞留が発生するのを抑制でき、酸素を多く含有する酸素含有ガスを継続してセルスタック1aの全面に曝すことができるため、本来の発電性能を発揮できる。
【0018】
空気流路20を形成する際に、多孔質支持体11の幅方向に分割された燃料極層およびインターコネクタ17aは、多孔質支持体11の幅方向の中央部で2つに分割され配置されることが好ましい。
特にセルスタック1aにおいて、セルスタック1aの幅方向の中央部の温度が上昇し、消費ガスがセルスタック1aの幅方向の中央部で滞留する場合がある。ここで、セルスタック1aの幅方向の中央部に空気流路20を設けることで、消費ガスが滞留することを抑制でき、空気極層13cに充分な酸素を含有する酸素含有ガスを継続して供給することができる。
【0019】
また、空気ガス流路20は、幅方向における間隔が、多孔質支持体11の幅の1/3以下の長さであるのが好ましい。
空気ガス流路20の多孔質支持体11の幅方向における間隔が、多孔質支持体11の幅の1/3より長いと、燃料セル13の設置できる面積が狭く、充分な発電量を得ることができるセルスタック1aとすることが難しくなる。
【0020】
さらに、セルスタック1aは、図4(a)および(b)に示すような、空気流路20を形成した形状とすることもできる。図4(a)は、セルスタック1aの表面を示す図であり、図4(b)は、セルスタック1aからセル接続材17bおよび空気極層13cを取り除いた図4(a)中のB−B線断面図である
空気流路20は、図4(a)に示すように、一端側から他端側にかけて空気流路20の幅方向の長さが広くなるように形成することで、一端側から他端側にかけて消費ガスを効率よく他端側へ流すことができる。さらに、図4(b)に示すように、一端側から他端側にかけて空気流路20における固体電解質層13bの厚みが薄くなるように形成することで、上記同様の効果が得られる。
【0021】
多孔質支持体11の表裏面における互いに隣接する燃料電池セル13同士は、セル間接続部材17により直列に接続されている(図3参照)。すなわち、一方の燃料電池セル13の集電燃料極層13dの上にインターコネクタ17aが形成され、このインターコネクタ17aは、長手方向両端部を含めその周囲が固体電解質層13bによりガスシール状態で被覆され、固体電解質層13bから帯状に露出している。このインターコネクタ17aの露出した部分がセル接続材17bにより被覆され、このセル接続材17bが、他方の燃料電池セル13の空気極層13c上に形成され、これにより、燃料電池セル13同士が直列に電気的に接続された構造となっている。なお、図には示していないが、インターコネクタ17aの露出した部分を、空気極層13cにて被覆した形状としてもよい。なお図1に示したとおり、多孔質支持体11の幅方向において、セル接続材17bは、空気極層13cを覆うように設けられている。また、多孔質支持体11の一端側における表面および裏面に配置された燃料電池セル13同士は、Ag−Pd等の貴金属等からなる折り返し部材14(図2参照)により電気的に接続されている。
【0022】
多孔質支持体11は多孔質であり、さらにその内部には、第1の反応ガス流路として内径の小さな複数のガス流路12が隔てられて長手方向に延びるようにして貫通して設けられている。ガス流路12の数は、発電性能および構造強度の点から、例えば3〜20個が好ましく、6〜17個であるのがより好ましい。このように、多孔質支持体11の内部にガス流路12を複数形成することにより、多孔質支持体11の内部に大きなガス流路を1本形成する場合に比べて、多孔質支持体11を扁平板状とすることができ、セルスタック1a(多孔質支持体11)の体積当たりの燃料電池セル13の面積を増加し発電量を大きくすることができる。よって、必要とする発電量を得るためのセルスタック1aの本数を減らすことができる。
【0023】
このガス流路12内に水素を含む燃料ガスを流し、かつ空気極層13cを空気等の酸素を含む酸素含有ガスに曝すことにより、活性燃料極層13aおよび空気極層13c間で下記式(i)および(ii)に示す電極反応が生じ、両極間に電位差が発生し、発電するようになっている。
【0024】
【化1】

【0025】
以下、セルスタック1aを構成する各部材の材質を詳しく説明する。
(多孔質支持体11)
本発明に係る多孔質支持体11は、Mg酸化物(MgO)と、Ni若しくはNi酸化物(NiO)と、希土類元素酸化物とから形成されている。なお、希土類元素酸化物を構成する希土類元素としては、Y、La、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prなどを例示することができ、希土類元素酸化物としては、例えばY23やYb23等が挙げられ、特にY23が好ましい。
【0026】
MgOは70〜80体積%、希土類元素酸化物は10〜20体積%、NiあるいはNiO(NiOは、発電時には、通常、水素ガスにより還元されてNiとして存在する。)は、NiO換算で10〜25体積%、特に15〜20体積%の範囲で多孔質支持体11中に含有し、総量として100体積%となるように含有されているのがよい。
【0027】
多孔質支持体11は、燃料電池セル13間の電気的ショートを防ぐために電気絶縁性であることが必要であり、通常、10ル・cm以上の抵抗率を有することが望ましい。Ni等の含量が前記範囲を超えると、電気抵抗値が低下し易い。
【0028】
なお、多孔質支持体11は、ガス流路12内の燃料ガスを活性燃料極層13aの表面まで導入可能でなければならず、このため、多孔質であることが必要である。一般に、その開気孔率は25%以上、特に30〜40%の範囲にあるのがよい。
【0029】
(燃料極層)
燃料極層は、前記式(ii)の電極反応を生じさせるものであり、本実施形態においては、固体電解質層13b側の活性燃料極層13aと、多孔質支持体11側の集電燃料極層13dとの二層構造に形成されている。なお、燃料極層は、必ずしも活性燃料極層13aと集電燃料極層13dとの2層より形成する必要はなく、1層のみから形成することもできる。
【0030】
<活性燃料極層13a>
固体電解質層13b側の活性燃料極層13aは、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスから形成される。例えば、希土類元素が固溶しているZrO2(安定化ジルコニア)と、Niおよび/又はNiO(以下、Ni等という場合がある。)とからなる。この希土類元素が固溶した安定化ジルコニアとしては、後述する固体電解質層13bに使用されているものと同様のものを用いるのがよい。
【0031】
活性燃料極層13a中の安定化ジルコニア含量は、35〜65体積%の範囲にあることが好ましく、またNi等の含量は、良好な発電性能を発揮させるため、NiO換算で65〜35体積%の範囲にあるのがよい。
さらに活性燃料極層13aの開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのがよい。
【0032】
また、固体電解質層13bとの熱膨張差に起因して発生する熱応力を吸収し、活性燃料極層13aの割れや剥離などを防止するという点から、活性燃料極層13aの厚みは、5〜30μmの範囲にあることが望ましい。
【0033】
<集電燃料極層13d>
燃料極層のうち、多孔質支持体11側の集電燃料極層13dは、多孔質支持体11と同様、Ni若しくはNi酸化物と、希土類元素酸化物との混合体より形成することが好ましい。
【0034】
Ni或いはNi酸化物(NiOは、発電時には、通常、水素ガスにより還元されてNiとして存在する。)は、NiO換算で30〜60体積%の範囲で希土類元素酸化物中に含有されているのがよい。集電燃料極層13dは、電流の流れを損なわないように、導電性であることが必要であり、通常、400S/cm以上の導電率を有していることが望ましい。良好な電気伝導度を有するという点から、Ni等の含量は30体積%以上が望ましい。
【0035】
また、この集電燃料極層13dの厚みは、電気伝導度を向上するという点から、80〜200μmであることが望ましい。
【0036】
以上のように、燃料極層を固体電解質層13b側の活性燃料極層13aと、多孔質支持体11側の集電燃料極層13dとの二層とした構造であれば、多孔質支持体11側の集電燃料極層13dのNiO換算でのNi量或いはNiO量を30〜60体積%の範囲内で調整することにより、セルスタック1aの作製時、加熱時、冷却時において両者の熱膨張差に起因して発生する熱応力を小さくすることができるため、燃料極層の割れや剥離などを抑制することができる。このため、燃料ガス(水素ガス)を流して発電を行う場合においても、多孔質支持体11との熱膨張係数の整合性は安定に維持され、熱膨張差による割れを有効に回避することができる。
【0037】
(固体電解質層13b)
固体電解質層13bは、希土類またはその酸化物を固溶させたZrO2からなる安定化ZrO2からなる緻密質なセラミックスで構成されている。
ここで、固溶させる希土類元素またはその酸化物としては、例えばSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなど、または、これらの酸化物などが挙げられ、好ましくは、Y、Yb、または、これらの酸化物が挙げられる。また、固体電解質層13bは、8モル%のYが固溶している安定化ZrO2(8mol% Yttoria Stabilized Zirconia、以下、「8YSZ」という。)と熱膨張係数がほぼ等しいランタンガレート系(LaGaO3系)固体電解質層を挙げることもできる。また、固体電解質層13bは、例えば、厚さが10〜100μmであり、例えば、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、好ましくは、95%以上の範囲に設定される。このような固体電解質層13bは、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有すると同時に、燃料ガスまたは酸素含有ガスのリーク(ガス透過)を防止するためにガス遮断性を有している。
【0038】
(空気極層13c)
空気極層13cは、導電性セラミックスから形成されている。導電性セラミックスとしては、例えば、ABO3型のペロブスカイト型酸化物が挙げられ、このようなペロブスカイト型酸化物としては、例えば、遷移金属型ペロブスカイト型酸化物、好ましくは、LaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物など、特にAサイトにLaを有する遷移金属型ペロブスカイト型酸化物を挙げることができる。さらに好ましくは、600〜1000℃程度での電気伝導性が高いという観点から、LaCoO3系酸化物が挙げられる。
前記したペロブスカイト型酸化物において、AサイトにLaおよびSrが共存してもよく、また、BサイトにFe、CoおよびMnが共存してもよい。
このような空気極層13cは、前記した式(i)の電極反応を生ずることができる。
空気極層13cの開気孔率は、例えば、20%以上、好ましくは、30〜50%の範囲に設定される。開気孔率が前記した範囲内にあれば、空気極層13cが良好なガス透過性を有することができる。
空気極層13cの厚さは、例えば、30〜100μmの範囲に設定される。前記した範囲内にあれば、空気極層13cが良好な発電性能を有することができる。
なお、図1に示すセルスタック1aにおいては、空気極層13cが、分割された燃料電極層と対応する部位に配置されている。
このような空気極層13cを形成することで、例えば、酸素含有ガス流量が少ない場合に、大部分の酸素は、該空気極層13cで消費されるために、セルスタック1bのようなタイプのセルスタックよりも広く空気流路20の体積を確保でき、消費ガスを効率よく一端から他端側へ流すことができる。
【0039】
(セル間接続部材17)
隣接する燃料電池セル部13同士を直列に接続するために使用されるセル間接続部材17は、一方の燃料電池セル13の集電燃料極層13dと隣接する他方の燃料電池セル13の空気極層13cとを電気的に接続するものであり、インターコネクタ17aとセル接続材17bとから構成され、これらは電気的に接続されている。
【0040】
(インターコネクタ17a)
インターコネクタ17aは導電性セラミックスから形成されるが、燃料ガス(水素ガス)及び空気等の酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、かかる導電性セラミックスとしては、一般に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)が使用される。また、多孔質支持体11内のガス流路12を通る燃料ガスと空気極層13cの表面側を通る空気等の酸素含有ガスとのリークを防止するため、かかる導電性セラミックスは緻密質でなければならず、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度(アルキメデス法)を有していることが好適である。なお、インターコネクタ17aの端面と、固体電解質層13bの端面との間には、適当な接合層(例えばY23)を介在させることにより、シール性を向上させることもできる。
また、インターコネクタ17aとしては、金属層と、ガラスの入った金属ガラス層との二層構造としてもよい。金属層は、例えば、AgとNiの合金からなり、金属ガラス層は、Agとガラスからなる。金属ガラス層により、多孔質支持体11内のガス流路12を通る燃料ガスのセルスタックの表面側へ供給される反応ガス(酸素含有ガス)へのリーク、および空気極層13cの表面側を通る酸素含有ガスのセルスタックの内側へ供給される反応ガス(燃料ガス)へのリークを有効に防止することができる。
【0041】
(セル接続材17b)
一方、セル接続材17bは多孔質とされている。セル接続材17bとしては、LaCoO3系等の導電性セラミック(例えば空気極層材料)、Ag−Pd等の貴金属から構成された多孔質とすることができる。セル接続材17bの材料の空気極層13cへの塗布量が少ない場合にはセル接続材17bの材料が空気極層13cの気孔中に浸入し、層としては形成されない。特に、Ag−Pd等の貴金属はコスト低減の観点から塗布量が少ないため、空気極層13cは、空気極層材料とAg−Pd等の集電材料が混在して構成され、セル接続材17bは形成されない。一方、LaCoO3系等の導電性セラミックは、塗布量が多く、この場合には空気極層13c上にセル接続材17bが形成される。なお、空気極層13cがセル接続材17bを兼ねるものとしてもよい。この場合、一方の燃料電池セル13の集電燃料極層13d上に設けられたインターコネクタ17aに隣接する他方の燃料電池セル13の空気極層13cが接続されることで、隣り合う燃料電池セル13を電気的に直列に接続することができる。
さらに、空気極層13cとインターコネクタ17aとが電気的に接続されている場合であっても、空気極層13c上にセル接続材17bを設けることもできる。この場合、一方の燃料電池セル13内を流れる電流を、効率よく他方の燃料電池セル13に供給することができる。
【0042】
図5は、本発明の他の一実施形態にかかるセルスタック1bの一部を破断して示す斜視図である。
セルスタック1bは、図5に示すように空気極層13cが、幅方向に沿って一端側より他端側にかけて固体電解質層13b上に沿って配置されている。
このように空気極層13cを形成することで、セルスタック1bの製造工程が容易となるほか、例えば、酸素含有ガス流量が多い場合に、該空気極層13cで消費されずに、空気流路20によって一端から他端に向かう消費ガス中の酸素を該空気極層13cに曝すことができるので、効率よく発電することができる。
【0043】
図6は、本発明の他の一実施形態にかかるセルスタック1cの一部を破断して示す斜視図である。
セルスタック1cは、図6に示すように、空気極層13cは、直方体形状であり、その両端は、幅方向に分割された隣り合う燃料極層と対応する部位に配置され、多孔質支持体11の幅方向の中央部において、空気極層13cと固体電解質層13bとの間に、空気流路20となる空間が形成される。
このように空気極層13cを形成することで、例えば、空気極層13cにて使用された後の酸素含有ガスである消費ガスが空気流路20を一端から他端に向けて流れることから、空気極層13cに酸素を多く含有する酸素含有ガスを継続して供給することができ、発電効率を向上することができる。
【0044】
図7は、本発明の他の一実施形態にかかるセルスタック2aの一部を破断して示す斜視図である。
セルスタック2aは、図7に示すように、多孔質支持体11の両方の主面に、長手方向に沿って支持体溝21が形成されており、その他はセルスタック1cと同様に構成されたものである。
このように支持体溝21を形成することで、空気ガス流路20を、上記例示のセルスタック1cよりも広い体積で確保することでき、消費ガスをセルスタック1cより効率よく流すことができる。
【0045】
図8は、本発明の他の一実施形態にかかるセルスタック2bの一部を破断して示す斜視図である。
セルスタック2bは、図8に示すように、多孔質支持体11の両方の主面に、長手方向に沿って支持体溝21が形成されており、その他はセルスタック1bと同様に構成されたものである。
このように支持体溝21を形成することで、空気ガス流路20を、上記例示のセルスタック1bよりも広い体積で確保することでき、消費ガスをセルスタック1bより効率よく流すことができる。
【0046】
図9は、本発明の他の一実施形態にかかるセルスタック3の一部を破断して示す斜視図である。
セルスタック3は、図9に示すように、多孔質支持体11の両方の主面に、長手方向に沿って空気流路20を幅方向に2本が形成されており、その他はセルスタック1aと同様に構成されたものである。
このように空気流路20を2本形成することで、より多くの消費ガスを流すことができることから、空気極層13cに酸素を多く含有する酸素含有ガスを継続して供給することができ、発電効率を向上することができる。
【0047】
上記実施形態では、セル接続材17bを、幅方向に分割された隣り合う燃料極層に対応する部位(空気極層13cおよび固体電解質層13b上)同士を覆うように配置させたセルスタックについて例示したが、図10、図11および図12に示すセルスタック4a、セルスタック4bおよびセルスタック4cのように、セル接続材17bを、幅方向に分割された隣り合う燃料極層に対応する部位(空気極層13cおよび固体電解質層13b上)ごとに配置させたセルスタックとしてもよい。なお、図12に示したセルスタック4cにおいては、燃料電池セル13が空気流路20を介して隣り合って2つ配置され、それぞれの燃料電池セル13は、多孔質支持体11の長手方向に沿って電気的に接続される。すなわち、図12に示したセルスタック4cにおいては、多孔質支持体11上に、独立した電流経路を2つ有する構成となっている。
【0048】
上記実施形態では、セルスタックの表裏面に空気流路20が設けられたものを説明したが、これに限定されず、例えば特開平10−3932号公報に記載の公知の燃料電池セルを一方の主面にもち、空気流路20が設けられたセルを他方の主面に持ち合わせたセルスタックを用いても良い。
また、本実施例では、セルスタックの表裏面で、同じ構成の燃料電池セルを配置したセルスタックについて説明したが、これに限定されず、例えば、セルスタックの一方の主面に上記と異なる構成の燃料電池セルを配置したセルスタックでもよいし、多孔質支持体の幅方向に複数本の空気流路20を備えていてもよい。
さらに、支持体溝21が多孔質支持体の長手方向に沿って1つ設けられたセルスタックを例示したが、空気流路20内の幅方向に複数備えていてもよい(図12参照)。
【0049】
本発明のセルスタックは、第1の反応ガスを空気ガス、第2の反応ガスを燃料ガス、内側電極を空気極層および外側電極を燃料極層としたタイプのセルスタックとしてもよい(図示せず)。
【0050】
(燃料電池)
本発明の燃料電池は、上述したようなセルスタックを収納容器内に複数収納することにより構成される。それにより、発電効率の向上した燃料電池とすることができる。
【0051】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において、種々の改善や変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1a、1b、1c 横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック
2a、2b 横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック
3 横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック
4a、4b、4c 横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック
11 多孔質支持体
12 ガス流路
13 燃料電池セル
13a 活性燃料極層
13b 固体電解質層
13c 空気極層
13d 集電燃料極層
14 折り返し部材
17a インターコネクタ
17b セル接続材
20 空気流路
21 支持体溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って第1の反応ガスを流すための第1の反応ガス流路を内部に備え、長手方向の一端側に前記第1の反応ガス流路の導入口を有し、他端側に前記第1の反応ガス流路のガス排出口を有してなる中空平板状でかつ電気絶縁性の多孔質支持体の主面上に、内側電極層、固体電解質層および外側電極層がこの順に積層された多層構造を有する燃料電池セルを、前記多孔質支持体の長手方向に沿って複数配置し、隣接する一方の前記内側電極層と、隣接する他方の前記外側電極層とがインターコネクタを介して電気的に接続されてなる横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタックであって、
前記多孔質支持体の主面のうち少なくとも一方の主面に配置された前記燃料電池セルのうち、前記内側電極層および前記インターコネクタが、前記多孔質支持体の幅方向に沿って少なくとも2つに分割されて配置されており、分割された前記内側電極層の表面および該内側電極層の間における前記多孔質支持体上に沿って前記固体電解質層が積層されて、前記多孔質支持体の幅方向に沿って隣り合う前記内側電極層の間の空間に溝が形成されているとともに、該溝が前記燃料電池セルに供給される第2の反応ガスが流れる第2の反応ガス流路として構成されていることを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
【請求項2】
前記内側電極層および前記インターコネクタが、前記多孔質支持体の幅方向中央部で2つに分割されている請求項1に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
【請求項3】
前記外側電極層が、前記多孔質支持体の幅方向に沿って一端側より他端側にかけて前記固体電解質層上に沿って配置されている請求項1または2に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
【請求項4】
前記外側電極層が、分割された前記内側電極層と対応する部位に分割されて配置されている請求項1または2に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
【請求項5】
前記第2の反応ガス流路の前記多孔質支持体の幅方向における間隔が、前記多孔質支持体の幅方向の長さの1/3以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
【請求項6】
前記多孔質支持体は、少なくとも一方の主面に、長手方向に沿って少なくとも1つの支持体溝が形成されており、この溝を介して前記内側電極層および前記インターコネクタが少なくとも2つに分割されている請求項1〜5のいずれかに記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタック。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の横縞型固体酸化物形燃料電池セルスタックを収納容器内に複数収容してなることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−233334(P2011−233334A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102011(P2010−102011)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】