説明

樹枝状化合物を含有する歯科材料及び樹枝状化合物の使用

【課題】歯科材料に添加することで、驚くほど有利な特性を有する歯科材料を製造できる化合物を提供する。
【解決手段】1つのコアと2つのシェルからなり、そのコアと第一のシェルと第二のシェルがポリウレタン基を介して互いに結合されており、かつその第二のシェルが(メタ)アクリレートとの反応によって変性されている少なくとも1種の樹枝状化合物を歯科材料に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹枝状化合物を含有する歯科材料に関する。
【背景技術】
【0002】
デンドリマーもしくはハイパーブランチポリマーは、中心分子の周りにシェル状の構成を有し、ほぼ対称的な高分枝鎖状の基本骨格となっており、最外殻部に官能基を備えていてよいオリゴマー化合物もしくはポリマー化合物である。これらを以下に樹枝状化合物と呼称する。
【0003】
デンドリマーとハイパーブランチポリマーとの区別は、分子対称性によってなされる。デンドリマーが厳密な反応操作によって高い対称性をもって合成されている一方で、ハイパーブランチポリマーはランダムな分枝に基づいて部分的に非対称性を示すが、これは明らかにより廉価に製造できる。
【0004】
デンドリマーもしくはハイパーブランチポリマーは、特にポリマーの機械的特性の改善のために使用される。填料含有の微粒子状の充填可能な、従ってアマルガム状の歯科材料中でのデンドリマーは、DE4443702号A1に記載されている。US200300114553号A1は、類似の硬化可能な自己支持性の歯科材料に関するが、これはデンドリマー構造又はハイパーブランチ構造を有する結晶性成分を含有してよい。レオペクシー性の歯科材料中でデンドリマーを使用することは、例えばUS20020068771号A1に記載された。
【特許文献1】DE4443702号A1
【特許文献2】US200300114553号A1
【特許文献3】US20020068771号A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、歯科材料に添加することで、驚くほど有利な特性を有する歯科材料を製造できる化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、1つのコアと2つのシェルから構成され、そのコアと第一のシェルと第二のシェルがポリウレタン基を介して互いに結合されており、かつその第二のシェルが(メタ)アクリレートとの反応によって変性されている少なくとも1種の樹枝状化合物を歯科材料に使用することによって解決される。
【0007】
有利には、ポリウレタン骨格(コアと第一のシェルと第二のシェル)は、ジイソシアネートと三価又は多価のアルコールとの公知の反応によって形成される。ジイソシアネートは、この場合に有利には4〜12個のC原子、特に6〜10個のC原子を有する。ヘキサメチレンジイソシアネートが殊に好ましい。アルコールとしては、例えばペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール又は、有利にはトリメチロールプロパンが該当する。
【0008】
外側のシェルの変性のために適した(メタ)アクリレートは、第一には、ヒドロキシル基を有するメタクリレート及びアクリレートであり、とりわけヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0009】
式I:
【0010】
【化1】

によって表される化合物が特に適していると見なされる。
【0011】
化合物Iは以下の特徴を有する:
・ 該化合物は2つのシェルと1つのコアを有する。
【0012】
・ 外側の第二のシェルは6箇所でHEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)変性されている。
【0013】
・ コアとシェルはポリウレタン基(ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチロールプロパンから得られる)を介して結合されている。
【0014】
化合物Iはオリゴマー化の生成物であるので、この生成物は常に完全に上述の理想式に相当するわけではない。この生成物には、一般に、ハイパーブランチポリマーと同様の樹枝状化合物である対称性が低い他の化合物が含まれる。本願では、概念“化合物I”と式Iとによって、そのような対称性が低い化合物も包含している。
【0015】
樹枝状化合物、例えば式Iの化合物は、自体公知の方法に従って、例えばJ. Serb. Chem. Soc. 69, 441-453 (2004)に記載されるのと同様にして製造できる。
【0016】
該当する歯科材料は自体公知であり、例えばウールマンの工業化学事典(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry)(CD-Rom(2002年))(Robert G. Craig, Dieter Welker, Dental Materials, Stand 15. 2000年6月)において、特に“セメント(Cements)”及び“合成樹脂(Synthetic Resins)”で記載されている。複合材料が好ましく、特に充填複合材料が好ましい。
【0017】
特に前記の樹枝状化合物は、機械的特性の最適化のために、特に弾力素及び/又はレオロジー改善剤として使用される。曲げ強さは、例えば以下に記載される化合物Iによって、該化合物Iを添加しない同じ歯科用複合材料と比較して10MPaより高く向上される。更に、不所望な重合収縮が有利な影響を受けうる。
【0018】
本発明により使用される樹枝状化合物は、硬化前の歯科材料のレオロジー特性をも改善する。剪断力の負荷下に、すなわちモデリングに際して、ペースト粘度は低下する。剪断を中止すると同時に、大きな粘度上昇が観察される(アエロジルと同様であるが、生成物特性への悪影響はない:というのもアエロジルによっては透明性が損なわれ、アエロジルの分解が不可欠である)。
【0019】
歯科用複合材料中の樹枝状化合物の濃度範囲は1〜10質量%、有利には1〜5質量%、殊に有利には1〜3質量%であることが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下の成分
・ Bis−GMA 14質量%
・ TEDMA 6質量%
・ 非凝集性SiO粒子(20nm) 9質量%
を含んで成るモノマー分散液を、0.01質量%の安定剤BHT(4−メチル−2,6−ジ−t−ブチル−フェノール、CAS128−37−0)並びに開始剤カンファーキノン(0.3質量%)及び0.2質量%の2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート(Quantacure(商標)EHA、CAS21245−02−3、グレートレイクス・ケミカルズ(Great Lakes Chemicals)社)と混合する。
【0021】
1質量%の化合物Iを40℃まで軽く加熱しながら添加する。引き続きシラン化された歯科用ガラス(Ba−Al−シリケートガラス;70.0質量%)を添加する。均質混和をした後に、充填複合材料として適した歯科材料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのコアと2つのシェルを有し、そのコアと第一のシェルと第二のシェルはポリウレタン基を介して結合されており、かつ第二のシェルは(メタ)アクリレートとの反応によって変性されている樹枝状化合物少なくとも1種を含有する歯科材料。
【請求項2】
第一のシェルと第二のシェルとが、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応から得られるポリウレタン骨格から構成される、請求項1記載の歯科材料。
【請求項3】
第二のシェルが、ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応によって変性されている、請求項1記載の歯科材料。
【請求項4】
樹枝状化合物が基本的に式I
【化1】

に相当する、請求項1から3までのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項5】
歯科材料中の弾力素としての、請求項1から4までのいずれか1項に記載されるような樹枝状化合物の使用。
【請求項6】
歯科材料のレオロジー特性の改善のための、請求項1から4までのいずれか1項に記載されるような樹枝状化合物の使用。

【公開番号】特開2006−298919(P2006−298919A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114717(P2006−114717)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(399011900)ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (56)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH 
【Fターム(参考)】