説明

樹脂クリップ部構造

【課題】 引き抜きの際に挿入部から樹脂クリップ本体が外れるのを防止し得るようにする。
【解決手段】 相手部品21に形成された係止孔22へ挿入可能な挿入部23と、挿入部23に挟着されると共に係止孔22に係止可能な中折れ形状の樹脂クリップ本体24とを備え、樹脂クリップ本体24が、閉作動により挿入部23を挟着可能な挟着機能部25と、開作動により係止孔22に係止可能な係止機能部26とを並べて連結した構造を備え、挟着機能部25が、外側面の根元位置に係止孔22によって閉方向に押圧される押圧面部27を有すると共に、外側面の押圧面部27よりも先端側の部分に係止孔22に遊嵌する遊嵌部28を有し、係止機能部26が、外側面の根元位置に係止孔22に嵌着係止される孔係止用凹部30を有すると共に、外側面の中間位置に最大出張部31を有する樹脂クリップ部構造において、挟着機能部25の外側面に、少なくとも押圧面部27から最大出張部31と対応する位置まで延びる延長押圧面部41を設けるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂クリップ部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両では、各種の樹脂部品が使用されている。このような樹脂部品は、ネジ止めなどによって取付けられているが、ネジ止め箇所が多くなると取付作業性が悪くなるので、ネジ止め箇所を減らして取付作業性を向上するために、挿入作業のみによって係止固定が可能な樹脂クリップが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の樹脂クリップは、図6〜図10に示すようなものであり、図6に示すように、相手部品1に形成された係止孔2へ挿入可能な挿入部3と、この挿入部3に挟着されると共に係止孔2に係止可能な中折れ形状の樹脂クリップ本体4とを備えている。
【0004】
樹脂クリップ本体4は、図7に示すように、閉作動により挿入部3を挟着可能な挟着機能部5と、開作動により係止孔2に係止可能な係止機能部6とを並べて連結した構造を備えている。
【0005】
挟着機能部5は、外側面の根元位置に係止孔2によって閉方向に押圧される押圧面部7を有すると共に、外側面の押圧面部7よりも先端側の部分に係止孔2に遊嵌する遊嵌部8を有している。
【0006】
また係止機能部6は、外側面の根元位置に係止孔2に嵌着係止される孔係止用凹部10を有すると共に、外側面の中間位置に最大出張部11を有している。
【0007】
このような構成を有する樹脂クリップは、図8に示すように、挿入部3に先端側から中折れ形状の樹脂クリップ本体4を被せるように取付けると、図9に示すように、挟着機能部5によって樹脂クリップ本体4が挿入部3に挟着される。
【0008】
この状態で、相手部品1の係止孔2へ、樹脂クリップ本体4が取付けられた挿入部3を挿入すると、係止機能部6によって樹脂クリップ本体4が係止孔2へ係止される。
【0009】
この挿入の過程で、係止機能部6は、外側面の中間位置に形成された最大出張部11が係止孔2を通過するまでは、係止孔2によって閉作動され、開方向付勢力が蓄積される。最大出張部11が係止孔2を通過した後は、開方向付勢力が解放され、外側面の根元位置に形成された孔係止用凹部10に係止孔2が嵌着されると、上記開方向付勢力によって係止孔2を係止する。
【0010】
また、挟着機能部5は、外側面の押圧面部7よりも先端側の部分に形成された遊嵌部8の位置では、係止孔2に対して遊嵌されるが、外側面の根元位置に形成された押圧面部7は係止孔2によって閉方向に押圧されるので、これにより、挟着機能部5の挿入部3に対する挟着力が高められ、挿入部3から樹脂クリップ本体4が外れることが防止される。
【特許文献1】特開2000−249117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記樹脂クリップには、相手部品1に形成された係止孔2から、挿入部3および樹脂クリップ本体4を引き抜く際に、最大出張部11が係止孔2を通過するあたりの位置に差し掛かった所で、図10に示すように、挟着機能部5の押圧面部7が係止孔2から離れることにより閉方向の押圧力を受けなくなるので、挟着機能部5が引抜力の影響を受けるなどして開作動してしまい、挿入部3から樹脂クリップ本体4が外れる場合があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、相手部品に形成された係止孔へ挿入可能な挿入部と、該挿入部に挟着されると共に前記係止孔に係止可能な中折れ形状の樹脂クリップ本体とを備え、該樹脂クリップ本体が、閉作動により前記挿入部を挟着可能な挟着機能部と、開作動により前記係止孔に係止可能な係止機能部とを並べて連結した構造を備え、前記挟着機能部が、外側面の根元位置に係止孔によって閉方向に押圧される押圧面部を有すると共に、外側面の押圧面部よりも先端側の部分に係止孔に遊嵌する遊嵌部を有し、前記係止機能部が、外側面の根元位置に前記係止孔に嵌着係止される孔係止用凹部を有すると共に、外側面の中間位置に最大出張部を有する樹脂クリップ部構造において、前記挟着機能部の外側面に、少なくとも前記押圧面部から前記最大出張部と対応する位置まで延びる延長押圧面部を設けた樹脂クリップ部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、挟着機能部の外側面に、少なくとも押圧面部から最大出張部と対応する位置まで延びる延長押圧面部を設けることにより、引き抜きの際に、最大出張部が係止孔を通過するあたりの位置に差し掛かった所でも、係止孔が延長押圧面部を閉方向へ押圧し続けることとなるので、挿入部から樹脂クリップ本体が外れることが確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
引き抜きの際に挿入部から樹脂クリップ本体が外れるのを防止し得るようにするという目的を、挟着機能部の外側面に、少なくとも押圧面部から最大出張部と対応する位置まで延びる延長押圧面部を設ける、という手段で実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0016】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
【0017】
まず、構成を説明すると、この実施例にかかる樹脂クリップは、図1に示すように、相手部品21に形成された係止孔22へ挿入可能な挿入部23と、挿入部23に挟着されると共に係止孔22に係止可能な中折れ形状の樹脂クリップ本体24とを備えている。この樹脂クリップは、相手部品21に対する取付部品の側に設けられる。
【0018】
ここで、係止孔22は、平面視ほぼ矩形状を呈している。挿入部23は、図3に示すように、係止孔22の横寸法とほぼ等しい横リブ23aと、係止孔22の縦寸法とほぼ等しい縦リブ23bとを備えている。横リブ23aと縦リブ23bとは、平面視ほぼH字状に構成されている。横リブ23aは、樹脂クリップ本体24の厚み分だけ縦リブ23bよりも先端が低くなるように(引込んだ状態となるように)形成されている。横リブ23aの先端部と中間部の幅中央部には、切欠23cおよび挟着用孔部23dが形成されている。また、縦リブ23bには、係止孔22に対する挿入性を確保するため、先端側へ向けて幅が狭くなるガイドテーパ部23eが形成されている。
【0019】
樹脂クリップ本体24は、図2に示すように、閉作動により挿入部23を挟着可能な挟着機能部25と、開作動により係止孔22に係止可能な係止機能部26とを並べて連結した構造を備えている。
【0020】
ここで、挟着機能部25と係止機能部26とは、横リブ23aの先端部分と対応する位置(樹脂クリップ本体24の中折れ部分)で連結されている。この場合、挟着機能部25は横リブ23aの幅中央部に設置され、係止機能部26は、横リブ23aの幅両側部に設置されている。
【0021】
挟着機能部25は、外側面の根元位置(両端部)に係止孔22によって閉方向に押圧される押圧面部27を有している。また、外側面の押圧面部27よりも先端側の部分に係止孔22に遊嵌する遊嵌部28を有している。そして、押圧面部27と遊嵌部28との間には、両者間の移行用の傾斜面部29を有している。ここで、挟着機能部25は、非押圧状態で、両押圧面部27が係止孔22の縦寸法よりも若干広い間隔に開くように構成されている。また、押圧面部27は、係止孔22の厚味とほぼ等しい範囲に亘って形成されている。
【0022】
また、挟着機能部25は、図4に示すように、内側面の根元位置(両端部)に、横リブ23aに嵌着する際のガイドとなるガイドテーパ部25aを有している。このガイドテーパ部25aは、根元側が広く、先端側が狭くなるように形成されている。そして、このガイドテーパ部25aの先端側の端部には、挟着用孔部23dに係止される係止爪25bが形成されている。更に、係止爪25bよりも先端側の部分には、横リブ23aの先端部分を収容する収容部25cが形成されている。この収容部25cは、横リブ23aの先端部分とほぼ対応する幅および深さを有している。
【0023】
一方、係止機能部26は、図2に示すように、外側面の根元位置(両端部)に係止孔22に嵌着係止される孔係止用凹部30を有している。そして、外側面の中間位置に最大出張部31を有している。更に、外側面の孔係止用凹部30と最大出張部31との間の部分には、孔係止用凹部30から最大出張部31へ向けて拡がる先拡がりの引抜時ガイド用傾斜部32を有している。また、外側面の最大出張部31よりも先端側の部分には、先端側へ向けて狭くなる先細りの挿入時ガイド用傾斜部33を有している。そして、両側の孔係止用凹部30の間が、連結部34によって連結されている。ここで、係止機能部26は、非押圧状態で、両孔係止用凹部30が係止孔22の縦寸法よりも若干広い間隔に開くように構成されている。また、孔係止用凹部30は、係止孔22の厚味とほぼ等しい範囲に亘って形成されている。そして、孔係止用凹部30は、上記押圧面部27と対応する位置に設けられている。
【0024】
この実施例のものでは、挟着機能部25の外側面に、少なくとも押圧面部27から最大出張部31と対応する位置まで延びる延長押圧面部41を設ける。この延長押圧面部41は、押圧面部27とほぼ面一となるように形成する。また、この延長押圧面部41は、最大出張部31と対応する位置よりも先端側へは、係止孔22の厚味とほぼ等しい長さ程度まで延長しても良い。
【0025】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0026】
樹脂クリップは、図3に示すように、挿入部23に先端側から中折れ形状の樹脂クリップ本体24を被せるように取付けると、図4に示すように、挟着機能部25によって樹脂クリップ本体24が挿入部23に挟着される。
【0027】
この際、挟着機能部25の内側面の根元位置に形成されたガイドテーパ部25aが、横リブ23aに嵌着する際のガイドとなり、ガイドテーパ部25aの先端側の端部に形成された係止爪25bが挟着用孔部23dに係止され、係止爪25bよりも先端側の部分に形成された収容部25cが横リブ23aの先端部分を収容する。
【0028】
この状態で、相手部品21の係止孔22へ、樹脂クリップ本体24が取付けられた挿入部23を挿入すると、係止機能部26によって樹脂クリップ本体24が係止孔22へ係止される。
【0029】
この挿入の過程で、係止機能部26は、外側面の先端位置に形成された先細りの挿入時ガイド用傾斜部33が係止孔22への挿入をガイドする。そして、外側面の中間位置に形成された最大出張部31が係止孔22を通過するまでは、係止孔22によって閉作動され、開方向付勢力が蓄積されて行く。最大出張部31が係止孔22を通過した後は、開方向付勢力が解放され、引抜時ガイド用傾斜部32を越えて外側面の根元位置に形成された孔係止用凹部30に係止孔22が嵌着されると、上記開方向付勢力によって係止孔22を係止する。
【0030】
一方、挟着機能部25は、外側面の押圧面部27よりも先端側の部分に形成された遊嵌部28および傾斜面部29の位置では、係止孔22に対して遊嵌しているが、外側面の根元位置に形成された押圧面部27は係止孔22によって閉方向へ押圧されるので、これにより、挟着機能部25の挿入部23に対する挟着力が高められ(係止爪25bが閉作動され)、挿入部23から樹脂クリップ本体24が外れることが防止される。
【0031】
そして、引き抜きの際に挿入部23から樹脂クリップ本体24が外れるおそれがあるが、この実施例によれば、図5に示すように、挟着機能部25の外側面に、少なくとも押圧面部27から最大出張部31と対応する位置まで延びる延長押圧面部41を設けることにより、引き抜きの際に、最大出張部31が係止孔22を通過するあたりの位置に差し掛かった所でも、係止孔22が延長押圧面部41を閉方向に押圧し続けるので、係止爪25bが開くことがなくなり、挿入部23から樹脂クリップ本体24が外れることが確実に防止される。
【0032】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例にかかる樹脂クリップを相手部品の係止孔へ取付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1の樹脂クリップの斜視図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】図1の側方断面図である。
【図5】引き抜き状態を示す図4と同様の側方断面図である。
【図6】従来例における樹脂クリップを相手部品の係止孔へ取付けた状態を示す斜視図である。
【図7】図6の樹脂クリップの斜視図である。
【図8】図7の分解斜視図である。
【図9】図6の側方断面図である。
【図10】引き抜き状態を示す図9と同様の側方断面図である。
【符号の説明】
【0034】
21 相手部品
22 係止孔
23 挿入部
24 樹脂クリップ本体
25 挟着機能部
26 係止機能部
27 押圧面部
28 遊嵌部
30 孔係止用凹部
31 最大出張部
41 延長押圧面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手部品に形成された係止孔へ挿入可能な挿入部と、該挿入部に挟着されると共に前記係止孔に係止可能な中折れ形状の樹脂クリップ本体とを備え、
該樹脂クリップ本体が、閉作動により前記挿入部を挟着可能な挟着機能部と、開作動により前記係止孔に係止可能な係止機能部とを並べて連結した構造を備え、
前記挟着機能部が、外側面の根元位置に係止孔によって閉方向に押圧される押圧面部を有すると共に、外側面の押圧面部よりも先端側の部分に係止孔に遊嵌する遊嵌部を有し、
前記係止機能部が、外側面の根元位置に前記係止孔に嵌着係止される孔係止用凹部を有すると共に、外側面の中間位置に最大出張部を有する樹脂クリップ部構造において、
前記挟着機能部の外側面に、少なくとも前記押圧面部から前記最大出張部と対応する位置まで延びる延長押圧面部を設けたことを特徴とする樹脂クリップ部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−300143(P2006−300143A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119967(P2005−119967)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】