説明

樹脂コンパウンド、樹脂コンパウンド製造装置及び樹脂コンパウンドの製造方法

【課題】樹脂コンパウンドを乾燥し易くすること。
【解決手段】樹脂製品製造用の樹脂コンパウンド10である。樹脂コンパウンド10は柱体状に形成されており、その一端部から他端部に向けて貫通する中空孔が形成されている。かかる樹脂コンパウンド10は、例えば、溶融樹脂を成型孔から連続的に押出す工程と、前記成型孔から連続的に押出される溶融樹脂の略中心に中空孔を形成する工程と、前記中空孔に空気を注入する工程とを備える製造方法によって製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線の被覆等、樹脂製品を製造するための樹脂コンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の樹脂コンパウンドの製造方法として、特許文献1及び特許文献2に開示のものがある。
【0003】
特許文献1及び特許文献2では、溶融樹脂を線状に押出して冷却固化し、冷却固化された線状樹脂をカッター等で切断することで短円柱粒状の樹脂コンパウンドを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−200417号公報
【特許文献2】特開2008−68517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂コンパウンドが水分を含んでいると、当該樹脂コンパウンドを用いて樹脂製品を製造する場合に、発泡部分が生じてしまう恐れがある。樹脂コンパウンドに含まれる水分が加熱によって気化してしまうからである。このため、樹脂コンパウンドは十分に乾燥していることが好ましい。
【0006】
しかしながら、樹脂コンパウンドの乾燥には長時間要する。特に、電線の被覆用の樹脂コンパウンドには、難燃剤として、吸湿し易い天然水酸化マグネシウムが配合されることがあるため、乾燥に長時間要する。
【0007】
そこで、この発明は、樹脂コンパウンドを乾燥し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る樹脂製品製造用の樹脂コンパウンドは、柱体状に形成されると共にその一端部から他端部に向けて貫通する中空孔が形成されている。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る樹脂製品製造用の樹脂コンパウンドであって、前記中空孔は、略円孔とされている。
【0010】
第3の態様に係る樹脂コンパウンド製造装置は、溶融樹脂を連続的に押出す成型孔を有するダイスと、前記ダイスに溶融樹脂を供給する樹脂供給部と、空気吐出口が前記成型孔の吐出口と略同方向に指向するようにして、前記成型孔の略中心に配設された空気注入管と、前記空気注入管に空気を供給する空気供給部とを備える。
【0011】
第4の態様は、第3の態様に係る樹脂コンパウンド製造装置であって、前記空気注入管は、前記成型孔の吐出口よりも突出しているものである。
【0012】
第5の態様に係る樹脂コンパウンドの製造方法は、溶融樹脂を成型孔から連続的に押出す工程と、前記成型孔から連続的に押出される溶融樹脂の略中心に中空孔を形成する工程と、前記中空孔に空気を注入する工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様によると、樹脂コンパウンドの表面積が、中空孔の内周表面によって増えるため、樹脂コンパウンドが乾燥し易くなる。
【0014】
第2の態様によると、中空孔は略円孔であるため、樹脂コンパウンド製造時に空気を注入すること等によって中空孔を製造し易い。
【0015】
第3の態様によると、溶融樹脂が成型孔から押出される際、空気注入管の外周面によって中空孔が形成されている。また、空気注入管の配設部分から離れた箇所でも、空気注入管より注入される空気によって中空孔が閉塞しないように保たれている。このため、より確実に中空孔が保たれた樹脂コンパウンドを製造することができる。
【0016】
第4の態様によると、前記空気注入管は、前記成型孔の吐出口よりも突出しているため、溶融樹脂が成型孔の吐出口より押出される際に、中空孔が閉塞され難く、より確実に中空形状が保たれた樹脂コンパウンドを製造することができる。
【0017】
第5の態様によると、溶融樹脂が成型孔から押出される際にその略中心に中空孔が形成され、その中空孔に空気が注入される。このため、より確実に中空形状が保たれた樹脂コンパウンドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】樹脂コンパウンドを示す斜視図である。
【図2】樹脂コンパウンド製造装置の内部構造を示す説明図である。
【図3】樹脂コンパウンド製造装置の内部構造を示す説明図である。
【図4】樹脂コンパウンド製造装置による樹脂コンパウンドの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<樹脂コンパウンド>
以下、実施形態に係る樹脂コンパウンドについて説明する。図1は樹脂コンパウンド10を示す概略斜視図である。
【0020】
この樹脂コンパウンド10は、樹脂製品を成型するのに先立って製造される粒状物であり、樹脂及び添加剤等の複数の材料を混練して固めることにより製造されている。この樹脂コンパウンド10を製造するための複数の材料は、製造対象となる樹脂製品に必要とされる特性等に応じて選ばれる。ここでは、樹脂製品として電線の被覆を想定し、樹脂コンパウンド10が、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の母材に加えて、天然水酸化マグネシウム等の難燃剤を含む場合で説明する。
【0021】
樹脂コンパウンド10に、上記天然水酸化マグネシウムのような吸湿物質を含んでいる。樹脂コンパウンド10に水分が含まれていると、樹脂製品に発泡部分が生じてしまうことがある。そこで、本実施形態では、樹脂コンパウンド10を迅速に事前乾燥して樹脂製品成型時の発泡を抑制するため、樹脂コンパウンド10を次の形状としている。
【0022】
すなわち、樹脂コンパウンド10は、2つの底面11、12と、2つの底面11、12間を囲む側面13とを有する柱体状に形成されている。ここでは、樹脂コンパウンド10が円柱状に形成されている例で説明する。もっとも、樹脂コンパウンドは、楕円柱状、多角柱状等であってもよい。
【0023】
また、この樹脂コンパウンド10には、その一端部側の底面11から他端部側の底面12に向けて貫通する中空孔15が形成されている。中空孔15は、ここでは、略円孔状に形成されている。もっとも、中空孔は、楕円孔状、多角形孔状であってもよい。
【0024】
このように構成された樹脂コンパウンド10の表面積は、中空孔15を形成しない場合と比較して、中空孔15の内周面積分程度大きい。また、樹脂コンパウンド10の外周表面と中空孔15の内周表面との双方から乾燥できる。このため、樹脂コンパウンド10に含まれる水分が蒸発乾燥し易くなり、乾燥効率がよくなると共に、短時間での乾燥が可能となる。
【0025】
例えば、直径3mm、長さ5mmの円柱状の樹脂コンパウンド(中空孔は形成されていない)を想定すると、表面積は61mm2となる。この樹脂コンパウンドを乾燥させるのに120分要していたとする。
【0026】
ここで、乾燥時間はおおよそ表面積に比例すると考えられる。すると、上記樹脂コンパウンドに直径1mmの中空孔15を形成すると、表面積は75mm2となり、表面積の比例関係から乾燥時間は98分になると考えられる。また、上記樹脂コンパウンドに直径2mmの中空孔15を形成すると、表面積は86mm2となり、表面積の比例関係から乾燥時間は85分になると考えられる。本例では、中空孔15の直径を2mmにすることで、乾燥時間を35分(29%以上)短縮可能であると想定できる。
【0027】
また、樹脂コンパウンド10の外形状は、柱体状に形成されているため、製造し易い。また、樹脂コンパウンド10に形成された中空孔15は略円孔状に形成されているため、この点からも樹脂コンパウンド10を製造し易い。このような樹脂コンパウンド10の製造装置及び製造方法の一例については後述する。
【0028】
なお、上記実施形態では、樹脂コンパウンド10が吸湿物質として天然水酸化マグネシウムを含む例で説明したが、その他の吸湿物質を含む場合であってもよい。また、樹脂コンパウンド10は、格別な吸湿物質を含んでいなくともよい。
【0029】
<樹脂コンパウンド製造装置及び樹脂コンパウンドの製造方法>
図2は水平断面における樹脂コンパウンド製造装置20の内部構造を示す説明図であり、図3は垂直断面における樹脂コンパウンド製造装置20の内部構造を示す説明図であり、図4は樹脂コンパウンド製造装置20による樹脂コンパウンド10の製造工程を示す説明図である。
【0030】
この樹脂コンパウンド製造装置20は、樹脂供給部30と、ダイス34と、空気供給部40と、空気注入管44とを備えている。
【0031】
樹脂供給部30は、上記ダイス34に溶融樹脂を供給可能に構成されている。かかる樹脂供給部30としては、例えば、樹脂コンパウンド10を製造するための各種樹脂剤、添加剤等を投入するためのホッパと、投入された各種樹脂材、添加剤等を、スクリュー等で攪拌混練及び加熱しつつ送込む混練部等を有する一般的な樹脂混練装置を用いることができる。そして、本樹脂供給部30によって混合及び加熱されて溶融された樹脂が、ダイス34に向けて送込まれる。なお、樹脂供給部30における溶融樹脂供給路の途中には、加熱溶融した樹脂を脱気するための真空ベント32が設けられている。また、樹脂供給部30とダイス34との間に、加熱溶融した樹脂中の異物を除去するためのブレーカープレート33が設けられている。
【0032】
ダイス34は、樹脂供給部30より供給された溶融樹脂を連続的に押出す成型孔36を有している。ここでは、ダイス34には、成型孔36が複数形成されている。それぞれの成型孔36は、先端側に向けて順次縮径するテーパ孔状に形成されており、その先端部の吐出口の内径は製造対象となる樹脂コンパウンド10の直径と略同じ大きさに設定されている。そして、樹脂供給部30より供給された溶融樹脂が各成型孔36に送込まれることにより、外周形状が略円状を呈する線状樹脂部材10Bが連続的に押出成型されるようになる。
【0033】
空気供給部40は、エアコンプレッサ、モータによりファンを回転させて空気を送込む機構等であり、工場設備として設けられている圧縮空気配管等を介して供給される。空気供給部40は、空気を連続的かつ安定した圧力で供給することが好ましい。
【0034】
空気注入管44は、中間配管45と吐出管部46を有している。中間配管45は、ダイス34の内外を貫通するように設けられており、吐出管部46は各成型孔36に対応して設けられている。もちろん、成型孔36が一つであれば、吐出管部46は一つであればよい。上記空気供給部40より供給される空気は、中間配管45を介してダイス34内に導入される。また、各吐出管部46は、ダイス34内で中間配管45から分岐して各成型孔36に向けて延在している。吐出管部46は、成型孔36内で成型孔36の中心軸に沿って延びるように配設されており、その先端部は36の吐出口と略同方向に指向している。また、ここでは、吐出管部46の先端部は、成型孔36の吐出口よりも外部に突出している。そして、成型孔36により連続的に押出成型される線状樹脂部材10B内に、吐出管部46の外周形状による中空孔15B(ここでは円孔)が形成される。また、成型孔36より押出成型された線状樹脂部材10Bが吐出管部46を越えて送出されると、吐出管部46より送込まれる空気が吐出管部46によって形成された中空孔15B内に送込まれるようになっている。
【0035】
上記樹脂コンパウンド製造装置20による樹脂コンパウンド10の製造方法について説明する。
【0036】
まず、溶融樹脂を樹脂供給部30からダイス34内の各成型孔36に連続的に送込む。すると、成型孔36によって溶融樹脂が略円状の外形状を呈する線状樹脂部材10Bとして連続的に押出成型される(図4参照)。
【0037】
また、溶融樹脂が成型孔36の吐出口から押出される際、空気注入管44の吐出管部46の外周面によって、線状樹脂部材10Bの中心に連続する中空孔15Bが形成される。ここで、吐出管部46の先端部は、成型孔36の吐出口を越えて延出しているため、成型孔36内での押出圧力が中空孔15Bを押し潰す力として作用し難い。このため、中空孔15Bの形態がより確実に維持される。
【0038】
また、成型孔36より送出された線状樹脂部材10Bが吐出管部46を越えると、吐出管部46の先端部より吐出される空気が中空孔15B内に送込まれる。このように送込まれた空気の圧によって、中空孔15Bがより確実に押しつぶされることなく維持される。なお、送込まれる空気圧は、中空孔15Bを一定形状に維持し、かつ、線状樹脂部材10Bを膨張破壊させない程度に設定されている。好ましくは、空気圧は、成型孔36より送出された線状樹脂部材10Bが外部の冷却機構等に送出され冷却固化するまで、中空孔15Bを一定形状に維持できる程度に設定されている。
【0039】
上記のようにダイス34より連続的に押出成型された線状樹脂部材10Bは、コンベア等の送り機構によって冷却機構及び切断機構等に送込まれる。冷却機構は、冷風、冷却水等によって線状樹脂部材10Bを冷却固化する機構である。切断機構は、切断カッターによって線状樹脂部材10Bを柱体状にカットすることで、上記樹脂コンパウンド10に仕上げる機構である。
【0040】
上記のように製造された樹脂コンパウンド10は、通常、高温乾燥装置等によって乾燥された後、樹脂製品製造用の材料として用いられる。
【0041】
以上のように構成された樹脂コンパウンド製造装置20及び樹脂コンパウンド10の製造方法によると、溶融樹脂が成型孔36から押出される際、空気注入管44の吐出管部46の外周面によって中空孔15Bが形成される。また、吐出管部46の配設部分から離れた箇所でも、吐出管部46より注入される空気によって中空孔15Bが閉塞されないように保たれている。このため、上記樹脂コンパウンド10を効率よく製造することができると共に、より確実に中空形状が保たれた樹脂コンパウンド10を製造することができる。
【0042】
また、吐出管部46は、成型孔36の吐出口よりも突出しているため、成型孔36内部或はその吐出口で、中空孔15Bが閉塞され難く、従って、この点からもより確実に中空形状が保たれた樹脂コンパウンド10を製造することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 樹脂コンパウンド
15 中空孔
20 樹脂コンパウンド製造装置
30 樹脂供給部
34 ダイス
36 成型孔
40 空気供給部
44 空気注入管
46 吐出管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体状に形成されると共にその一端部から他端部に向けて貫通する中空孔が形成された樹脂製品製造用の樹脂コンパウンド。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂コンパウンドであって、
前記中空孔は、略円孔である、樹脂コンパウンド。
【請求項3】
溶融樹脂を連続的に押出す成型孔を有するダイスと、
前記ダイスに溶融樹脂を供給する樹脂供給部と、
空気吐出口が前記成型孔の吐出口と略同方向に指向するようにして、前記成型孔の略中心に配設された空気注入管と、
前記空気注入管に空気を供給する空気供給部と、
を備える樹脂コンパウンド製造装置。
【請求項4】
請求項3記載の樹脂コンパウンド製造装置であって、
前記空気注入管は、前記成型孔の吐出口よりも突出している、樹脂コンパウンド製造装置。
【請求項5】
溶融樹脂を成型孔から連続的に押出す工程と、
前記成型孔から連続的に押出される溶融樹脂の略中心に中空孔を形成する工程と、
前記中空孔に空気を注入する工程と、
を備える樹脂コンパウンドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−148178(P2011−148178A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10828(P2010−10828)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】