説明

樹脂シート、積層板、電子部品、プリント配線板及び半導体装置

【課題】薄膜化に対応することが可能であり、両面それぞれに異なる用途、機能、性能または特性等を付与することができ、一方の面が溝加工性及び導体層との密着性に優れ、当該面に微細回路形成が可能である樹脂シート、並びに前記樹脂シートを用いて作製した積層板、電子部品及び半導体装置を提供する。
【解決手段】一面側を形成する第一樹脂層と他面側を形成する第二樹脂層を含む多層構造を有する樹脂シートであり、前記第一樹脂層は、少なくとも硬化性樹脂を含み、前記第二樹脂層は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含み、厚みが5〜30μmであることを特徴とする、樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート、積層板、電子部品及び、プリント配線板半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化、軽量化、小型化、薄型化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、高密度実装化が進んでいる。これらの電子機器に使用されるプリント配線板の回路配線は高密度化する傾向にあり、ビルドアップした多層配線構造が採用されている。
【0003】
近年、プリント配線板の微細回路形成を達成する技術として、セミアディティブ法(SAP法)が行われ始めている。SAP法は、樹脂表面をデスミア処理して表面を粗化し、パラジウム触媒を利用した無電解銅めっき層を表面に形成し、さらに該銅めっき層上に感光性レジストを形成して、露光・現像などのプロセスを経由してパターニングを行った後、電解銅めっきで回路パターンを形成し、最後にレジストを剥離し無電解銅めっき層をフラッシュエッチングで除去して微細配線を形成する方法である(例えば、特許文献1参照)。この方法で微細配線を形成する場合、レジストの露光・現像精度や配線間のパラジウム触媒残渣によるめっき異常析出などの問題があり、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下で微細配線を形成することは困難である。
【0004】
また、セミアディティブ法では樹脂層表面に凸型の配線が形成される。ビルドアップ基板や多層配線板においては、この後の工程に樹脂層を積層する工程が含まれるが、樹脂組成によっては樹脂の埋め込み性の問題が生じる。特に回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線領域では、樹脂の埋め込み性が悪くなると絶縁信頼性を確保するのが困難となる。
【0005】
また、スクライブ、プラズマ、又はレーザーなどによって樹脂層に溝を形成し、樹脂表面をデスミア処理して表面を粗化し、パラジウム触媒を利用した無電解銅めっき層を表面に形成後、電解銅めっきで導体を形成し、最後に溝部分以外の導体めっきをエッチングで除去して回路を形成する方法がある(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、絶縁層の溝側壁面の凹凸が大きくなると溝を形成する際の精度が低下し、L/Sが10μm/10μm以下の微細配線の形成が困難になるという、新たな問題があった。
【0006】
また、多層配線構造のプリント配線板は、その各層を薄くすることが行われている。しかし、従来の多層プリント配線板では、絶縁層の一方の面に回路配線の間隙を埋め込むための埋め込み性が要求され、他方の面には上述のように樹脂層に溝を形成して当該溝に導体層を形成することで回路を形成するための溝加工性及び導体層との密着性が要求される場合は、両方の特性を満足するような絶縁層材料を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−64930号公報
【特許文献2】特開平10−4253号公報
【特許文献3】特開2006−41029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、薄膜化に対応することが可能であり、両面それぞれに異なる用途、機能、性能または特性等を付与することができ、一方の面が溝加工性及び導体層との密着性に優れ、当該面に微細回路形成が可能である樹脂シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記樹脂シートを用いて作製した積層板、電子部品及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記発明(1)〜(25)により達成される。
(1)一面側を形成する第一樹脂層と他面側を形成する第二樹脂層を含む多層構造を有する樹脂シートであり、
前記第一樹脂層は、少なくとも硬化性樹脂を含み、
前記第二樹脂層は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含み、厚みが5〜30μmであることを特徴とする、樹脂シート。
(2)少なくとも前記第一樹脂層の表面を高分子フィルム及び表面の10点平均粗さ(Rz)が4.0μm以下の銅箔よりなる群から選ばれるキャリアフィルムで被覆してなる、上記(1)に記載の樹脂シート。
(3)前記第一樹脂層が、さらに無機充填材を含み、当該無機充填材中の2μm超過の粗粒が500ppm以下である、上記(1)又は(2)に記載の樹脂シート。
(4)前記第一樹脂層に含まれる無機充填材の含有量が1〜60重量%である、上記(3)に記載の樹脂シート。
(5)前記第一樹脂層に含まれる無機充填材の平均粒径が0.01〜0.4μmである、上記(3)又は(4)に記載の樹脂シート。
(6)前記無機充填材は球状のシリカである、上記(3)乃至(5)のいずれか一に記載の樹脂シート。
(7)前記第一樹脂層が、無機充填材を含まない、上記(1)又は(2)に記載の樹脂シート。
(8)前記第一樹脂層に含まれる硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及び/又は感光性樹脂を含む、上記(1)乃至(7)のいずれか一に記載の樹脂シート。
(9)前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂およびベンゾシクロブテン樹脂の中から選ばれる少なくとも1種を含む、上記(8)に記載の樹脂シート。
(10)前記第二樹脂層は、エポキシ樹脂と、不定形の第1無機充填材と、前記第1無機充填材と平均粒子径が異なりかつその平均粒子径が10〜100nmである第2無機充填材とを含む、上記(1)乃至(9)のいずれか一に記載の樹脂シート。
(11)前記第二樹脂層は、エポキシ樹脂と、平均粒子径1μm〜10μmのシリコーンゴム微粒子と、平均粒子径0.2μm〜5μmのベーマイト微粒子と、平均粒子径10nm〜100nmのシリカナノ粒子とを含む、上記(1)乃至(10)のいずれか一に記載の樹脂シート。
(12)前記第一樹脂層と前記第二樹脂層の間に基材層を含む、上記(1)乃至(11)のいずれか一に記載の樹脂シート。
(13)前記第一樹脂層、前記基材層及び前記第二樹脂層からなる3層構造を有する、上記(12)に記載の樹脂シート。
(14)前記基材層に用いられる基材がガラスクロスである、上記(12)又は(13)に記載の樹脂シート。
(15)前記第一樹脂層の厚みが6〜28μmである、上記(1)乃至(14)のいずれか一に記載の樹脂シート。
(16)前記第一樹脂層の厚さが、前記第一樹脂層の厚さ及び前記第二樹脂層の厚さを合計した厚さの15〜50%である、上記(15)に記載の樹脂シート。
(17)全体厚みが60μm以下である、上記(1)乃至(16)のいずれか一に記載の樹脂シート。
(18)上記(1)乃至(16)のいずれか一に記載の樹脂シートのみ、又は、少なくとも一面側の最外層の位置に当該樹脂シートをその第一樹脂層が表面側に向くように配置して積層されてなる積層板。
(19)上記(1)乃至(17)のいずれか一に記載の樹脂シートの硬化物からなる絶縁層、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝、及び、当該溝内部に設けられた導体層を有する導体路構造を備える電子部品。
(20)上記(1)乃至(17)のいずれか一に記載の樹脂シートの硬化物からなる絶縁層、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝、及び、当該溝内部に設けられた導体層を有するビルドアップ層を少なくとも一層含むプリント配線板。
(21)前記溝の最大幅が1〜10μmである、上記(20)に記載のプリント配線板。
(22)前記導体層と接する前記溝の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05〜0.45μmである、上記(20)又は(21)に記載のプリント配線板。
(23)前記溝の深さが2〜20μmであり、前記第一樹脂層の厚みが、前記溝の深さの1.2〜1.4倍である、上記(20)乃至(22)のいずれか一に記載のプリント配線板。
(24)前記ビルドアップ層で被覆される導体回路の高さが5〜20μmであり、前記第二樹脂層の厚みが、前記導体回路の高さの1〜1.5倍である、上記(20)乃至(23)のいずれか一に記載のプリント配線板。
(25)上記(20)乃至(24)のいずれか一に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂シートは、薄膜化に対応することが可能であり、両面それぞれに異なる用途、機能、性能または特性等を付与することができ、一方の面が溝加工性及び導体層との密着性に優れ、当該面に微細回路形成が可能である。
さらに、本発明によれば、前記樹脂シートを用いて、積層板、並びに高密度で、接続信頼性に優れるプリント配線板等の電子部品及び半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる樹脂シートの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の樹脂シートを製造する工程の一例を示す工程図である。
【図3】本発明のプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明のプリント配線板の製造方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹脂シートは、一面側を形成する第一樹脂層と他面側を形成する第二樹脂層を含む多層構造を有する樹脂シートであり、
前記第一樹脂層は、少なくとも硬化性樹脂を含み、
前記第二樹脂層は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含み、厚みが5〜30μmであることを特徴とする。
【0013】
本発明の第一樹脂層は、少なくとも硬化性樹脂を含み、レーザー加工法やフォトリソグラフィ法で溝を形成することにより微細回路のパターニングをした後の溝内部の側壁面の凹凸が適切になり、当該第一樹脂層と形成された導体層との密着性が高くなる。
一方、前記第二樹脂層は、前記第一樹脂層とは異なる組成であり、前記第二樹脂層が、前記第一樹脂層と異なる特性(例えば回路埋め込み性等)を有するように設計されている。ここで、樹脂層が異なる組成であるとは、それぞれの樹脂層に含有される樹脂、無機充填材等各成分の種類、含有量、及び樹脂の分子量等の少なくとも1つが異なるものであれば良い。
【0014】
以下、図1に基づいて、本発明の樹脂シートについて説明する。
図1は、本発明にかかる樹脂シートの一例を模式的に示す断面図である。図1に示される樹脂シート100は、第一樹脂層1、第二樹脂層2、第一樹脂層の表面を被覆するキャリアフィルム3、第二樹脂層の表面を被覆するキャリアフィルム4、及び基材層5からなる。
【0015】
(第一樹脂層)
まず、第一樹脂層について説明する。
前記第一樹脂層は、少なくとも硬化性樹脂を含む。前記硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂及び/又は感光性樹脂を用いることができる。前記第一樹脂層が硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を主成分として含む場合は、当該第一樹脂層は、公知のレーザー加工法により選択的に溝を形成して微細回路のパターニングすることが可能となる。前記第一樹脂層が硬化性樹脂として感光性樹脂を主成分として含む場合は、当該第一樹脂層は、公知のフォトリソグラフィ法により選択的に溝を形成して微細回路のパターニングすることが可能となる。なお、本発明において、硬化性樹脂の主成分とは、硬化性樹脂全体の50重量%以上を占める成分を意味する。
【0016】
前記熱硬化性樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、トリアジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂およびベンゾシクロブテン樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂を含むことが、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線を形成する点から好ましい。
第一樹脂層の硬化性樹脂として前記熱硬化性樹脂を主成分とする場合には、これらの熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂及び/又はシアネート樹脂とを含むことが好ましく、特にシアネート樹脂を含むことが好ましい。これにより、第一樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができる。さらに、シアネート樹脂を含むと、第一樹脂層の電気特性(低誘電率、低誘電正接)、機械強度、レーザー加工性、特にエキシマレーザーやYAGレーザー加工性等にも優れる。
第一樹脂層の硬化性樹脂として前記熱硬化性樹脂と感光性樹脂とを併用する場合には、これらの熱硬化性樹脂の中でも、耐熱性をより向上することができる点からエポキシ樹脂を含むことが好ましく、アルカリ現像性を向上させる点から、さらにフェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0017】
前記シアネート樹脂は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
シアネート樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ビフェニルアラルキル型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂等を挙げることができる。
前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2’−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル、フェノールノボラック型シアネートエステル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等が挙げられる。
これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。ノボラック型シアネート樹脂を含むことにより、第一樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができ、機械強度、電気特性(低誘電率、低誘電正接)を向上させることができる。また、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ビフェニルアラルキル型シアネート樹脂も低線膨張、低吸水性、機械強度に優れるため好ましく使うことができる。
【0018】
前記シアネート樹脂の分子量は、特に限定されないが、5.0×10〜4.5×10が好ましく、特に6.0×10〜3.0×10が好ましい。分子量が前記下限値未満であると第一樹脂層の機械的強度が低下する場合があり、また、プリント配線板等の製造時に絶縁層を形成する際、タック性が生じ、第一樹脂層の一部が欠ける場合がある。また、分子量が前記上限値を超えると硬化反応が速くなり、プリント配線板等の製造時に成形不良が生じたりする場合がある。
【0019】
また、特に限定されないが、シアネート樹脂はその誘導体も含め、1種類を単独で用いることもできるし、異なる分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0020】
前記熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂(特にノボラック型シアネート樹脂)を用いる場合は、エポキシ樹脂(実質的にハロゲン原子を含まない)を併用することが好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えばビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる分子量を有する2種類以上を併用したり、前記エポキシ樹脂を2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0022】
これらエポキシ樹脂の中でも特にアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性および難燃性を向上させることができる。アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。また、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂も低線膨張、低吸水性、機械強度に優れるため好ましく使うことができる。
【0023】
エポキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、5.0×10〜2.0×10が好ましく、特に8.0×10〜1.5×10が好ましい。分子量が前記下限値未満であるとプリント配線板等の製造時に、絶縁層を形成する際、タック性が生じ、第一樹脂層の一部が欠ける場合があり、前記上限値を超えるとプリント配線板等の半田耐熱性が低下する場合がある。分子量を上記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
【0024】
上記熱硬化性樹脂は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。第一層の硬化性樹脂として感光性樹脂を含まず、前記熱硬化性樹脂のみを用いる場合は、通常、硬化剤を組み合わせて熱硬化性樹脂として用いられる。第一樹脂層の硬化性樹脂として熱硬化性樹脂と感光性樹脂とを併用する場合は、前記熱硬化性樹脂を含むことにより、第一樹脂層の耐熱性を向上することができる。
上記熱硬化性樹脂の含有量は、前記硬化性樹脂が熱硬化性樹脂を主成分とする場合は、特に限定されないが、第一樹脂層中の固形分基準で20〜90重量%、更に30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると第一樹脂層を形成するのが困難となる場合があり、前記上限値を超えると第一樹脂層の強度が低下する場合がある。
上記熱硬化性樹脂の含有量は、前記硬化性樹脂が感光性樹脂を主成分とする場合は、特に限定されないが、第一樹脂層中の固形分基準で10〜40重量%が好ましく、特に15〜35重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると耐熱性を向上させる効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると靭性を向上させる効果が低下する場合がある。したがって、熱硬化性樹脂の含有量を前記範囲内とすることで、両者のバランスに優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
また、レーザー加工法の場合、前記第一樹脂層は、さらに熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。これにより、得られる絶縁樹脂層の機械強度の向上、導体回路とのメッキ密着性が向上し、耐湿信頼性の向上を図ることができる。
【0026】
前記熱可塑性樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマ−、ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、およびメタクリル変性ポリブタジエン等のジエン系エラストマーを挙げることがきるが、本発明は何らこれらに限定さない。単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。これらの中でも、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびフェノキシ樹脂の中から選ばれるものを用いるのが好ましい。これにより、メッキ密着性、機械強度、耐熱性、および耐薬品性をさらに高めることができるものである
【0027】
前記ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0028】
前記ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、ポリブタジエン変性ポリイミド、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド等の変性ポリイミドが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)社製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。また、日本化薬(株)製「BPAM−01」および「BPAM−155」等のアクリロニトリル、および/またはポリブタジエン変性ポリアミドが挙げられる。これら各種熱可塑性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
前記フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂の末端はフェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製1256、4250(ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製YX6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)や、その他東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YL7553BH30、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482等が挙げられる。
【0030】
前記感光性樹脂としては、特に限定されないが、アルカリ可溶性感光性樹脂を含むことが好ましく、アルカリ可溶性感光性樹脂及び光重合性化合物を含むことが特に好ましい。
前記感光性樹脂としてアルカリ可溶性基を含む樹脂を用いることにより、現像処理時に二重結合部分が未反応の樹脂を除去する際に、現像液として通常用いられる有機溶剤の代わりに、環境に対する負荷のより少ないアルカリ水溶液を適用することができると共に、二重結合部分が硬化反応に寄与することから第一樹脂層の耐熱性を維持することができる。
【0031】
前記アルカリ可溶性感光性樹脂としては、例えばクレゾール型、フェノール型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、カテコール型、レゾルシノール型、ピロガロール型等のノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、メタクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、水酸基、カルボキシル基等を含む環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(具体的には、ポリベンゾオキサゾール構造およびポリイミド構造の少なくとも一方を有し、かつ主鎖または側鎖に水酸基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を有する樹脂、ポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有する樹脂、ポリイミド前駆体構造を有する樹脂、ポリアミド酸エステル構造を有する樹脂等)等が挙げられる。
【0032】
また、前記アルカリ可溶性感光性樹脂としては、より好ましくはアルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂が挙げられる。
前記アルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂としては、例えば光および熱の両方で硬化可能な硬化性樹脂を挙げることができる。
前記アルカリ可溶性基としては、例えば水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。このアルカリ可溶性基は熱硬化反応に寄与することもできる。
このような樹脂としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等の光反応基を有する熱硬化性樹脂や、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、酸無水物基等の熱反応基を有する光硬化性樹脂等が挙げられる。なお、光硬化性樹脂は、さらにエポキシ基、アミノ基、シアネート基等の熱反応基を有していてもよい。具体的には、(メタ)アクリル変性フェノール樹脂、(メタ)アクリロイル基含有アクリル酸重合体、カルボキシル基含有(エポキシ)アクリレート等が挙げられる。また、カルボキシル基含有アクリル樹脂のような熱可塑性樹脂であっても構わない。これらの中でも(メタ)アクリル変性フェノール樹脂が好ましい。
【0033】
アルカリ可溶性感光性樹脂として光反応基を有する熱硬化性樹脂を用いる場合、前記光反応基の変性率(置換率)は、特に限定されないが、前記アルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂の反応基全体の20〜80%が好ましく、特に30〜70%が好ましい。光反応基の変性量を上記の範囲とすることで、特に解像性に優れる。
【0034】
一方、アルカリ可溶性感光性樹脂として熱反応基を有する光硬化性樹脂を用いる場合、前記熱反応基の変性率(置換率)は、特に限定されないが、前記アルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂の反応基全体の20〜80%が好ましく、特に30〜70%が好ましい。熱反応基の変性量を上記の範囲とすることで、特に解像性に優れる。
【0035】
前記アルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、30,000以下であることが好ましく、特に5,000〜150,000が好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、第一樹脂層を形成する際の製膜性に特に優れる。
ここで、重量平均分子量は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて評価でき、予め、スチレン標準物質を用いて作成された検量線により重量平均分子量を算出することができる。なお、測定溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、40℃の温度条件下で測定することができる。
【0036】
前記アルカリ可溶性感光性樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記第一樹脂層全体の固形分基準で15〜50重量%が好ましく、特に20〜40重量%が好ましい。特に、第一樹脂層の樹脂成分(無機充填材を除く全部の成分)のうち、10〜80重量%、好ましくは15〜70重量%であってもよい。アルカリ可溶性感光性樹脂の含有量が前記下限値未満であると光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂との相溶性を向上させる効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると現像性またはフォトリソグラフィ法によるパターニングの解像性が低下する場合がある。アルカリ可溶性感光性樹脂の含有量を上記の範囲とすることで、フォトリソグラフィ法により樹脂をパターニングしたあと、溝内部に形成された導体層の密着性を向上させることができる。
【0037】
前記感光性樹脂としてアルカリ可溶性感光性樹脂を用いる場合は、光重合性化合物を併用することが好ましい。これにより、前述したアルカリ可溶性感光性樹脂と共にパターニング性をより向上することができる。
【0038】
前記光重合性化合物としては、特に限定されないが、例えばグリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0039】
このような光重合性化合物の中でも、2官能以上の光重合性化合物が好ましく、特に3官能以上の第2光重合性化合物が特に好ましい。これにより、無機充填材を実質的に含まない場合であっても第一樹脂層の形状保持性に優れる。これは、3次元的に光架橋が起こり、光架橋密度が高くなり、熱時弾性率が低くならないためと考えられる。
このような3官能以上の光重合性化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート等が挙げられる。
【0040】
ここで、前記光重合性化合物の含有量は、特に限定されないが、前記第一樹脂層全体の固形分基準で5〜50重量%が好ましく、特に10〜40重量%が好ましい。含有量が前記上限値を超えると第二樹脂層又は基材層との密着強度が低下する場合があり、前記下限値未満であると形状保持性が低下する場合がある。
【0041】
第一樹脂層は、無機充填材を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記第一樹脂層が無機充填材を含む場合、前記無機充填材は、2μm超過の粗粒が500ppm以下であることが好ましい。本発明の第一樹脂層は、無機充填材を含むことにより、多層プリント配線板、半導体素子、メタルコア配線板等の電子部品の絶縁層に用いた場合に、低熱膨張、高弾性、低吸水となり、実装信頼性、反り量が向上する。そして、このような機能を果たす無機充填材について、2μm超過の粗粒が500ppm以下としたことから、前記第一樹脂層からなる部分の絶縁層は、レーザー加工法やフォトリソグラフィ法で溝を形成することによる微細回路のパターニングにおいて、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の溝加工性に優れ、溝内部の側壁面の凹凸が大きくなりすぎるのを抑制できるようになる。溝内部の側壁面の凹凸が適切であると、絶縁層に形成された溝と当該溝に形成された導体層との密着性に優れる点から好ましい。一方で、無機充填材を含みながら凹凸に悪影響を与える粗粒含有量を規定したことから、溝加工後の溝内部の側壁面の凹凸が適切になり、当該絶縁層と形成された導体層との密着性が高い絶縁層を形成することができる。
また、導体層と接する溝内部の絶縁層側壁面の凹凸は、溝内部の導体層表面の凹凸に反映される。本発明によれば、溝内部に形成される導体層の表面凹凸が小さくなるため、1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減でき、高周波対応の微細配線を形成できる。高周波信号になると導体層の表面の信号伝播となるが、導体層の表面凹凸が大きすぎると、伝送距離が伸びるため、伝達が遅くなったり、伝播中の損失が大きくなってしまう。
前記無機充填材は、更に、2μm超過の粗粒が300ppm以下、特に2μm超過の粗粒が5ppm以下であることが好ましい。これにより、第一樹脂層は、さらに溝加工性及び導体層との密着性に優れる。
なお、2μm超過の粗粒が500ppm以下の無機充填材を得る方法は特に限定されない。例えば、2μm超過の粗粒を除去する方法として、有機溶剤、および/または水中のスラリー状態で、平均粒径の10倍以上の細孔径フィルターで粗粒を数回除去し、次いで2μmの細孔径フィルターで2μm超過の粗粒除去を繰り返して実施することにより得ることができる。
【0042】
前記無機充填材の粗粒径、および含有量の測定は、粒子画像解析装置(シスメックス社製FPIA−3000S)により測定することができる。無機充填材を水中または有機溶剤中で超音波により分散させ、得られた画像から、2μm超過の無機充填材の個数を算出して測定することができる。具体的には、無機充填材の円相当径で2μm超過の粒子数と解析総粒子数で含有量は規定される。
【0043】
上記無機充填材の最大粒径としては、2.0μm以下であることが好ましい。これにより、上記特定した第一樹脂層の表面粗さを実現しやすくなり、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる。また、特に限定はされないが、無機充填材の最大粒径は1.8μm以下がより好ましく、1.5μm以下が特に好ましい。これにより絶縁信頼性、信号応答性、溝内のめっき付き性や層間接続信頼性を高める作用を効果的に発現させることができる。
【0044】
また、上記無機充填材の平均粒径としては、0.01〜0.4μmであることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線形成を実現しやすくなる。また、無機充填材の平均粒径が上記範囲の場合には、レーザー加工法により、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線形成するための溝加工性に優れるようになり、上記特定した樹脂層の表面粗さを実現しやすくなる。無機充填材の平均粒径は0.02〜0.20μmであることが特に好ましい。これにより絶縁信頼性、信号応答性、溝内のめっき付き性や層間接続信頼性を高める作用を効果的に発現させることができる。
【0045】
無機充填材の平均粒子径の測定は、例えばレーザー回折散乱法、または動的光散乱法により測定することができる。無機充填材を水中で超音波により分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)、または動的光散乱法式粒度分布測定装置(HORIBA製、LB−550)により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることで測定することができる。
【0046】
上記無機充填材の2μm超過の粗粒量が上記上限値を上回ると、無機充填材がレーザー加工を阻害し、第一樹脂層に溝を形成できない箇所が生じたり、溝形状がいびつになったり樹脂にクラックが入るおそれがあり、粗粒フィラーの脱落による絶縁信頼性やめっき付き性が低下するおそれがある。さらにはレーザー光で溝を形成する時間が長くなるため、作業性が低下する可能性が生じる。また、レーザー加工後に溝側壁面に残留した無機充填材により、めっき後の導体層の表面凹凸が大きくなる。これにより、回路配線の精度が悪くなり、高密度プリント配線板においては絶縁信頼性を害する場合がある。さらには1GHzを超える高周波数領域においては表皮効果により信号応答性を害する場合がある。無機充填材の平均粒径が上記上限値を上回っても同様の恐れがある。
【0047】
また、上記無機充填材の平均粒径が上記下限値未満となると、第一樹脂層の熱膨張係数、弾性率の物理的性質を低下させ、半導体素子搭載時の実装信頼性を害するおそれがあり、また第一樹脂層中の無機充填材の分散性の低下や、凝集の発生が生じたり、第一樹脂層のBステージ状態における柔軟性の低下による樹脂フィルム化が困難になるおそれがある。
【0048】
上記無機充填材としては、特に限定されるものではないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。無機充填材として、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したりすることもできる。これらの中でも特に、低熱膨張性、難燃性、及び弾性率に優れる点から、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。これらの中でもその形状は球状シリカが好ましい。
【0049】
無機充填材の含有量は、第一樹脂層全体の固形分基準で1〜60重量%、更に5〜50重量%、特に10〜40重量%であることが、微細配線の形状に優れ、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる点から好ましい。
【0050】
また、前記第一樹脂層には、上記無機充填材の均一分散性を向上し、レーザー加工法により微細配線形成するための溝を加工する際に、溝内部の側壁面を均一に粗化できる点から、カップリング剤を含むことが好ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシラン化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランおよび2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、その他として、3−メルカトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、及び3−メタクロキシプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。硬化性樹脂との密着の点から、エポキシシラン、アミノシラン等が好適に用いられる。
【0051】
また、本発明の第一樹脂層は、前記硬化性樹脂が前記感光性樹脂を含む場合は、さらに光重合開始剤を含んでいてもよい。これにより、パターニング性をより向上することができる。
このような光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルフィニルサルファイド、ベンジル、ジベンジル、ジアセチルなどが挙げられる。
【0052】
前記光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記第一樹脂層全体の固形分基準で0.5〜5重量%が好ましく、特に1〜3重量%が好ましい。光重合開始剤の含有量が前記下限値未満であると光重合を開始する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると反応性が高くなりすぎ、樹脂シート作製前における第一樹脂材料の保存性や上記の第一樹脂層パターニング後の解像性が低下する場合がある。したがって、光重合開始剤を上記の範囲とすることで、両者のバランスに優れた第一樹脂層を提供することができる。
【0053】
なお、本発明の樹脂シート作製において、前記第一樹脂層を形成する際は、前記第一樹脂層を構成する成分からなる第一樹脂材料を溶媒に溶解させたワニス(第一樹脂ワニス)が用いられる。
前記溶媒としては、特に限定されないが、前記樹脂組成物に対して良好な溶解性を示す溶媒が好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン(ANON)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。尚、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。
【0054】
前記第一樹脂ワニスの不揮発分は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。これにより、第一樹脂材料の基材への含浸性を向上できる。
【0055】
前記第一樹脂層は、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、硬化促進剤、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を含有していても良い。
【0056】
前記第一樹脂層の厚みは、6〜28mであることが好ましく、特に6〜21μmであることが好ましく、さらに6〜14μmであることが好ましい。
第一樹脂層の厚さは、絶縁信頼性を向上させる上で前記下限値以上が好ましく、多層プリント配線板の薄膜化を達成する上で前記上限値以下が好ましい。第一樹脂層の厚みが前記下限値未満であると、溝加工をした際に、溝が第一樹脂層を貫通してしまうことがある。樹脂シートが基材層を有する場合、溝が基材層にまで達すると、当該溝に導体層を形成した場合に、基材層にまで電気が導通してしまい、絶縁信頼性に劣る。また、樹脂シートが基材層を有さない場合、溝が第二樹脂層にまで達すると、溝加工性が悪くなる。一方、第一樹脂層の厚みが前記上限値を超えると、樹脂シート全体の薄膜化が達成できず、得られる多層プリント配線板も薄膜化することが困難となる。
【0057】
(第二樹脂層)
次に、第二樹脂層について説明する。
前記第二樹脂層は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含む第二樹脂からなり、厚みが5〜30μmである。
前記第二樹脂層は、前記第一樹脂層とは異なる組成であり、前記第二樹脂層が、前記第一樹脂層と異なる特性(例えば回路埋め込み性等)を有するように設計されている。
【0058】
前記第二樹脂層は、特に限定されないが、エポキシ樹脂と、不定形の第1無機充填材と、前記第1無機充填材と平均粒子径が異なりかつその平均粒子径が10〜100nmである第2無機充填材とを含む第二樹脂組成物(A)、または、エポキシ樹脂と、平均粒子径1μm〜10μmのシリコーンゴム微粒子と、平均粒子径0.2μm〜5μmのベーマイト微粒子と、平均粒子径10nm〜100nmのシリカナノ粒子とを含む第二樹脂組成物(B)からなることが好ましい。
【0059】
まず、前記第二樹脂組成物(A)について詳細に説明する。
前記第二樹脂組成物(A)は、前記不定形の第1無機充填材と前記第2無機充填材(例えば、ナノシリカ)とが、表面電位の相違による相互作用により引き付けられる。そのため、前記第2無機充填材が、前記不定形の第1無機充填材の周囲に存在し、第2無機充填材が前記不定形の第1無機充填材のスペーサーとしての作用を示す。その結果、前記不定形の第1無機充填材間に作用するファンデルワールス力による引き付け合う力が低減され、その凝集が防止される。これによって、前記不定形の第1無機充填材が第二樹脂組成物(A)中に高分散状態で含有され、ワニスの流動性低下が抑制される。
【0060】
本発明の第二樹脂組成物(A)は、不定形の第1無機充填材を含むことにより、該第二樹脂組成物(A)を用いて得られる第二樹脂層の低熱膨張性、耐熱性およびドリル加工性を向上させることができる。
前記不定形の第1無機充填材としては、例えば破砕シリカ、硼酸亜鉛、タルク、水酸化アルミ、ベーマイト(ギブサイトを変性して得られるアルミナ一水和物)等が挙げられる。
これらの中でも水酸化アルミ、ベーマイトが好ましい。第二樹脂組成物(A)を用いて得られる第二樹脂層の耐熱性およびドリル加工性をより向上させることができるからである。
【0061】
前記第1無機充填材の平均粒子径は、特に限定されないが、0.3〜5μmであることが好ましく、特に0.5〜5μm、さらに0.5〜3μmであることが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、特に第1無機充填材の高充填性と流動性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
前記第1無機充填材の平均粒子径の測定は、レーザー回折散乱法により測定することができる。無機充填材を水中で超音波により分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることで測定することができる。
【0062】
前記第1無機充填材の含有量は、特に限定されないが、前記第二樹脂組成物(A)全体の固形分基準で20〜65重量%であることが好ましく、特に25〜55重量%であることが好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に耐熱性と流動性とのバランスに優れる。
【0063】
前記第1無機充填材の1%熱分解温度は、260℃以上が好ましく、特に、300℃以上が好ましい。前記1%熱分解温度は、示差熱天秤(TG/DTA)で、10℃/minの昇温速度で、初期重量から1%重量減少点の温度で規定される。300℃以上の1%熱分解温度を有する第1無機充填材として、例えばベーマイト等が挙げられる。
【0064】
第二樹脂組成物(A)は、前記第1無機充填材と平均粒子径が異なり、かつその平均粒子径が10〜100nmである第2無機充填材を含む。これにより、前記不定形の第1無機充填材を用いた際に生じるワニスの流動性の低下を抑制することができる。
前記第2無機充填材としては、例えば燃焼法などの乾式法により得られる溶融シリカや沈降法やゲル法などの湿式法により得られるゾルゲルシリカなどが挙げられる。
【0065】
第2無機充填材材の分散性を向上させることができ、ワニスの流動性低下をさらに抑制できることから、第1の樹脂組成物は、第2無機充填材を予め有機溶媒に分散させたスラリーを用いて調製されることが好ましい。特に、ナノサイズのシリカを予め有機溶媒に分散したスラリーを用いることが好ましい。
このような第2無機充填材(特にシリカ)を予め有機溶媒に分散したスラリーを用いることで、不定形の第1無機充填材を用いた際に生じる、ワニスの流動性の低下を抑制することができる理由は、次のように考えられる。まず、ナノサイズのシリカのようなナノサイズの粒子は、凝集し易く、樹脂組成物に配合する際に2次凝集体等を形成してしまうことが多いが、スラリー状のものを用いることで、このような2次凝集を防止することができ、それによって流動性が低下するのを防止することができる。次に、上述した第2無機充填材(ナノサイズのシリカ)の表面電位と、前記不定形の第1無機充填材の表面電位との相違による、前記不定形の第1無機充填材の凝集防止効果が高まるからである。
【0066】
前記第2無機充填材の平均粒子径は、特に15〜90nmが好ましく、最も25〜75nmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、第二樹脂組成物(A)における第2無機充填材の高充填性、およびワニスの高流動性も向上させることができる。
前記平均粒子径は、例えば、超音波振動電流法(ゼータ電位)、超音波減衰分光法(粒度分布)、レーザー回折散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
例えば、無機充填材を水中で超音波により分散させ、動的光散乱式粒度分布装置(HORIBA製、LB−550)により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることで測定することができる。
【0067】
前記第2無機充填材の含有量は、特に限定されないが、前記第二樹脂組成物(A)全体の固形分基準で0.5〜20重量%が好ましく、特に1〜10重量%が好ましく、さらに0.5〜5重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に第二樹脂組成物(A)の基材への含浸性に優れ、第二樹脂層の成形性及び回路埋め込み性に優れる。
【0068】
前記第1無機充填材の含有量(w1)と、前記第2無機充填材の含有量(w2)との重量比(w2/w1)は、特に限定されないが、0.02〜0.5であることが好ましく、特に0.06〜0.4であることが好ましい。重量比が前記範囲内であると、特に成形性を向上することができる。
【0069】
第二樹脂組成物(A)は、特に限定されないが、平均粒子径が0.2〜3μmの第3無機充填材を含むことが好ましい。上記平均粒子径を有する第3無機充填材を、前記第1無機充填材および第2無機充填材と併用することにより、前記第二樹脂組成物(A)を用いて得られる第二樹脂層の耐熱性および寸法安定性を特に向上することができる。また、第1無機充填材、第2無機充填材及び第3無機充填材を組み合わせて用いることにより、第3無機充填材のようなサブミクロンオーダーの無機充填材と第1充填材のような不定形無機充填材とを組み合わせた、従来の樹脂組成物と比較して、基材に対する含浸性を向上させることができ、さらに第二樹脂層の回路埋め込み性を向上させることができる。
【0070】
前記第3無機充填材の平均粒子径は、特に0.3〜2.5μmが好ましく、最も0.4〜1.5μmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、特に第二樹脂組成物(A)における第3無機充填材の高充填化と当該樹脂組成物を用いて得られる樹脂シートやプリント配線板等のプレス成形や穴あけ加工等の作業性とのバランスを向上することができる。
前記第3無機充填材の平均粒子径の測定は、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、第1無機充填材と同様の方法により、第3無機充填材の平均粒子径を測定することができる。
【0071】
前記第3無機充填材の最大粒子径は特に限定されないが、10μm以下であることが好ましく、特に5μm以下であることが好ましい。これにより、プリント配線板等の作製におけるドリル加工時のビット折損率を低減することができる。
【0072】
前記第3無機充填材としては、シリカ、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ等が挙げられる。これらの中でもシリカが好ましく、特に球状の溶融シリカが好ましい。このような溶融シリカは、他の無機充填材と比較して低熱膨張性に優れるからである。また、前記球状シリカの製造方法は、特に限定されることなく、公知の方法によって得ることができる。前記球状シリカの製造方法としては、例えば乾式シリカ法、湿式シリカ法、ゾル-ゲル法等を挙げることができる
【0073】
前記第2無機充填材の含有量(w2)と、前記第3無機充填材の含有量(w3)との重量比(w2/w3)は、特に限定されないが、0.02〜1.5であることが好ましく、特に0.05〜1.2であることが好ましい。重量比が前記範囲内であると、特に第二樹脂組成物(A)を用いた樹脂シートを積層する際のプリント配線板等の成形性に優れる。
【0074】
前記第3無機充填材(特にシリカ)の比表面積は、特に限定されないが、1m/g以上、250m/g以下であることが好ましい。比表面積が前記上限値を超えると第3無機充填材同士が凝集しやすくなり、第二樹脂組成物(A)の構造が不安定になる場合がある。また前記下限値未満であると第二樹脂組成物(A)中に第3無機充填材を充填し難い場合がある。尚、比表面積は、BET法により求めることができる。
【0075】
前記第3無機充填材(特にシリカ)は、予め官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理して用いてもよい。表面処理を予め施すことで、第3無機充填材の凝集を抑制することができ、第二樹脂組成物(A)中にシリカを良好に分散させることができる。また、エポキシ樹脂と第3無機充填材の表面の密着性が向上するため、機械強度に優れる絶縁層が得られる。
【0076】
前記官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の官能基含有シラン類としては公知のものを使用することができる。例えば、エポキシシラン、スチリルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、メルカプトシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメトキシルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、クロロプロピルシラン、ウレイドシラン化合物等を挙げることができる。
【0077】
前記アルキルシラザン類としては、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンなどを挙げることができる。これらの中でもアルキルシラザン類としてはヘキサメチルジシラザン(HMDS)が好ましい。
【0078】
前記第3無機充填材(特にシリカ)へ予め表面処理する官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の量は、特に限定しないが、前記第3無機充填材100重量部に対して0.01重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.1重量部以上、3重量部以下が好ましい。官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の含有量が前記上限値を超えると、プリント配線板等の製造時において絶縁層にクラックが入る場合があり、前記下限値未満であると、樹脂成分と第3無機充填材との結合力が低下する場合がある。
【0079】
前記第3無機充填材(特にシリカ)を予め官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理する方法は、特に限定されないが、湿式方式または乾式方式が好ましい。特に好ましくは湿式方式が好ましい。湿式方式の方が、乾式方式と比較した場合、前記第3無機充填材の表面へ均一に処理することができる。
【0080】
前記第3無機充填材(特にシリカ)の含有量は、特に限定されないが、第二樹脂組成物(A)全体の固形分基準で20重量%以上、85重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは25重量%以上、75重量%以下である。前記第3無機充填材の含有量が前記下限値未満であると、樹脂シートの硬化物の線熱膨張率が高くなったり、吸水率が高くなったりする場合がある。また、前記上限値を超えると、第二樹脂組成物(A)の流動性の低下により第二樹脂層の成形性が低下する場合がある。前記第3無機充填材の含有量を前記範囲内とすることにより、第二樹脂組成物(A)の硬化物の線熱膨張係数を35ppm以下にすることができる。
【0081】
前記第二樹脂組成物(A)に含まれるエポキシ樹脂としては、前記第一樹脂組成物に用いられるものと同様のものを用いることができる。中でも特に、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂、およびアントラセン型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらのエポキシ樹脂を用いることにより、得られる電子部品の吸湿半田耐熱性および難燃性を向上させることができる。
【0082】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、第二樹脂組成物(A)全体の固形分基準で5〜60重量%とすることが好ましい。含有量が前記下限値未満であると第二樹脂組成物(A)の硬化性が低下したり、当該樹脂組成物を用いて得られる第二樹脂層の耐湿性が低下したりする場合がある。また、前記上限値を超えると第二樹脂層の線熱膨張率が大きくなったり、耐熱性が低下したりする場合がある。前記エポキシ樹脂の含有量は、特に好ましくは第二樹脂組成物(A)全体の固形分基準で7〜50重量%である。
【0083】
前記エポキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、1.0×10〜2.0×10が好ましい。分子量が前記下限値未満であると前記第二樹脂組成物(A)を用いて形成される第二樹脂層の表面にタック性が生じる場合が有り、前記上限値を超えると該第二樹脂層の半田耐熱性が低下する場合がある。分子量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
【0084】
前記第二樹脂組成物(A)は、特に限定されないが、シアネート樹脂を含むことが好ましい。これにより、難燃性をより向上することができる。
前記シアネート樹脂としては、前記第一樹脂組成物に用いられるものと同様のものを用いることができる。中でも、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、および低熱膨張性に優れ、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、およびジシクロペンタジエン型シアネートエステルが架橋密度の制御、および耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0085】
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、第二樹脂組成物全体(A)の固形分基準で5〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量%であり、特に好ましくは10〜40重量%である。含有量が前記範囲内であると、シアネート樹脂は、効果的に耐熱性、及び難燃性を発現させることができる。シアネート樹脂の含有量が前記下限未満であると熱膨張性が大きくなり、耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えると強度が低下する場合がある。
【0086】
また、第二樹脂組成物(A)は、特に限定されないが、カップリング剤を含むことが好ましい。これにより、第二樹脂組成物(A)を用いて得られる第二樹脂層の機械強度を向上させることができる。前記カップリング剤としては、前記第一樹脂組成物に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0087】
第二樹脂組成物(A)では、特に前記第1無機充填材として、ベーマイトを用いる場合は、カップリング剤として、芳香族アミノシランを用いることが好ましい。これにより、ベーマイトと芳香族アミノシランの相乗効果により第二樹脂組成物(A)の硬化物の吸水性をより低下させることができ、且つこの第二樹脂組成物(A)を用いて得られる第二樹脂層の回路埋め込み性を向上させることができる。
前記芳香族アミノシランとしては、例えばN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン等の2級の芳香族アミノシラン、および3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン等の1級の芳香族アミンが挙げられる。これらの中でも、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の2級の芳香族アミノシランが好ましい。
【0088】
第二樹脂組成物(A)は、さらにフェノール系硬化剤を使用することができる。フェノール系硬化剤としてはフェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類など公知慣用のものを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0089】
前記フェノール系硬化剤の配合量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂との当量比(フェノール性水酸基当量/エポキシ基当量)が1.0未満、0.1以上が好ましい。これにより、未反応のフェノール系硬化剤の残留がなくなり、第二樹脂組成物(A)を用いて得られる第二樹脂層の吸湿耐熱性が向上する。更に、厳しい吸湿耐熱性を必要とする場合、上記当量比は0.2〜0.5の範囲が特に好ましい。また、フェノール系硬化剤は、硬化剤として作用するだけでなく、シアネート基とエポキシ基との硬化を促進することができる。
【0090】
第二樹脂組成物(A)は、必要に応じて、上記成分以外の添加物を、特性を損なわない範囲で添加することが出来る。上記成分以外の成分としては、例えば、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン、および4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤、アクリレート類等の界面活性剤、染料、および顔料等の着色剤等を挙げることができる。
【0091】
次に、前記第二樹脂組成物(B)について詳細に説明する。
前記第二樹脂組成物(B)は、エポキシ樹脂と、平均粒子径1μm〜10μmのシリコーンゴム微粒子と、平均粒子径0.2μm〜5μmのベーマイト微粒子と、平均粒子径10nm〜100nmのシリカナノ粒子とを含有する。これにより、前記第二樹脂組成物(B)のワニスが低粘度の状態で、前記3種類の粒子を多量に含有させることができる。これは、正の表面ゼータ電位を有するベーマイト粒子の周囲に、負の表面ゼータ電位を有するシリカナノ粒子が選択的に付着し、同符号の表面ゼータ電位を有するシリコーンゴム微粒子とベーマイト粒子との反発力が弱まることにより、多量の粒子を含んでいてもワニスが低粘度となるからである。
また、上記のような充填材粒子を多量に含んでいるにも関わらず、粘度の低い、前記第二樹脂組成物(B)を用いることによって、本発明の樹脂シートは、当該第二樹脂組成物(B)からなる第二樹脂層が、回路の埋め込み性に優れ、さらに、難燃性、低熱膨張性、ドリル加工性、及びデスミア耐性に優れる。また、本発明の樹脂シートが基材層を有する場合は、前記第二樹脂組成物(B)は、基材への含浸性に優れる。
【0092】
また、上記のような第二樹脂組成物(B)を用いた積層板やプリント配線板等は、前記第二樹脂組成物(B)のワニスが低粘度のためにフローは大きいものの、前記第二樹脂組成物(B)がシリコーンゴム微粒子と、ベーマイト粒子と、シリカナノ粒子とを併用して含有することにより、これらの粒子の流動性と樹脂流動性とのバランスが良く、シリコーンゴム微粒子のクッション効果により粒子による圧力のばらつきが少なく、表面のスジ状ムラは非常に少ない。
【0093】
前記エポキシ樹脂としては、前記第二樹脂組成物(A)に含まれるエポキシ樹脂と同様のものを用いることができる。
【0094】
前記シリコーンゴム微粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、及びシリコーンゴムからなるコア部をシリコーン樹脂で被覆したコアシェル構造粒子等が挙げられる。前記シリコーンゴム微粒子としては、KMP−605、KMP−600、KMP−597、KMP−594(信越化学(株)製)、トレフィルE−500、トレフィルE−600(東レ・ダウコーニング(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0095】
前記シリコーンゴム微粒子は、平均粒子径が1〜10μmであり、前記第二樹脂組成物(B)の基材への含浸性及び当該樹脂組成物からなる第二樹脂層の回路埋め込み性に優れる点から、1〜5μmが好ましい。
【0096】
前記シリコーンゴム微粒子の含有量は、特に限定されないが、第二樹脂組成物(B)全体の固形分基準で5〜50重量%であることが好ましく、前記第二樹脂組成物(B)の基材への含浸性及び当該樹脂組成物からなる第二樹脂層の回路埋め込み性に優れる点から、特に10〜40重量%であることが好ましい。
【0097】
前記ベーマイト粒子は、酸化アルミニウムの1水和物であり、AOH−30、AOH−60(いずれもナバルテック(株)製)、粒状のBMBシリーズ、板状のBMTシリーズ、および鱗片状のBMFシリーズ(いずれも河合石灰工業(株)製)等の市販品を用いることもできる。
【0098】
前記ベーマイト粒子は、平均粒子径が0.2〜5μmであり、前記第二樹脂組成物(B)の基材への含浸性及び当該樹脂組成物からなる第二樹脂層の回路埋め込み性に優れる点から、0.5〜4μmが好ましい。
【0099】
前記ベーマイト粒子の含有量は、特に限定されないが、第二樹脂組成物(B)全体の固形分基準で5〜50重量%であることが好ましく、前記第二樹脂組成物(B)の基材への含浸性及び当該樹脂組成物からなる第二樹脂層の回路埋め込み性に優れる点から、特に10〜40重量%であることが好ましい。
【0100】
前記シリカナノ粒子は、平均粒子径が10〜100nmであり、含浸性の点から、40〜100nmが好ましい。平均粒子径が10nm未満では、基材のフィラメント間を広げることができず、また100nmより大きい場合は、フィラメント間に入り込むことができない場合があるからである。
【0101】
前記シリカナノ粒子としては、特に限定されないが、例えば、VMC(Vaporized Metal Combustion)法、PVS(Physical Vapor Synthesis)法等の燃焼法、破砕シリカを火炎溶融する溶融法、沈降法、ゲル法等の方法によって製造したものを用いることができる。これらの中でもVMC法が特に好ましい。前記VMC法とは、酸素含有ガス中で形成させた化学炎中にシリコン粉末を投入し、燃焼させた後、冷却することで、シリカ微粒子を形成させる方法である。前記VMC法では、投入するシリコン粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ微粒子の粒子径を調整できる。
また、NSS−5N(トクヤマ(株)製)、Sicastar43−00−501(Micromod社製)、Admanano(アドマナノ)((株)アドマテックス製)等の市販品を用いることもできる。
【0102】
前記シリカナノ粒子の含有量は、特に限定されないが、第二樹脂組成物(B)全体の固形分基準で1〜10重量%であることが好ましく、特に2〜5重量%であることが好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に前記第二樹脂組成物(B)の基材への含浸性及び当該樹脂組成物からなる第二樹脂層の回路埋め込み性に優れる。
【0103】
前記シリカナノ粒子の含有量に対する、前記シリコーンゴム微粒子の含有量の重量比(シリコーンゴム微粒子の重量/シリカナノ粒子の重量)は、特に限定されないが、1〜15であることが好ましく、1〜10であることが好ましく、特に2〜5であることが好ましい。
【0104】
前記シリカナノ粒子の含有量に対する、前記ベーマイト粒子の含有量の重量比(ベーマイト粒子の重量/シリカナノ粒子の重量)は、特に限定されないが、1〜50であることが好ましく、特に2〜20であることが好ましい。
【0105】
前記シリカナノ粒子の含有量に対する、前記シリコーンゴム微粒子の含有量の重量比、及び前記シリカナノ粒子の含有量に対する、前記ベーマイト粒子の含有量の重量比は、前記範囲内であると、特に成形性を向上することができ、前記範囲より大きい又は小さいと、ボイド発生による半田不具合耐熱性、絶縁信頼性の低下が起こりやすくなる。
【0106】
尚、前記シリコーンゴム微粒子、前記ベーマイト粒子、及び前記シリカナノ粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法、および動的光散乱法により測定することができる。例えば、粒子を水中で超音波により分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)、または動的光散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製、LB−550)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とする。
【0107】
さらに、第二樹脂組成物(B)は、特性を損なわない範囲で、シリカ、水酸化アルミニウム、タルク等の無機充填材を含んでいてもよい。
【0108】
前記第二樹脂組成物(B)は、上記シリコーンゴム微粒子、ベーマイト微粒子、シリカナノ粒子等の無機充填材及びエポキシ樹脂以外に、前記第二樹脂組成物(A)に含まれるシアネート樹脂、フェノール系硬化剤等の無機充填材及びエポキシ樹脂以外の成分と同様のものを含むことができる。
【0109】
本発明の樹脂シート作製において、前記第二樹脂層を形成する際は、前記第一樹脂層を形成する際と同様に、前記第二樹脂層を構成する成分からなる第二樹脂材料を溶媒に溶解させたワニス(第二樹脂ワニス)が用いられる。
前記溶媒としては、第一樹脂ワニスに用いられるものと同様のものを用いることができる。
前記第二樹脂ワニスが含む不揮発分は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。これにより、第二樹脂材料の基材への含浸性を向上できる。
【0110】
前記第二樹脂層の厚さは、5〜30μmであり、特に10〜20μmであることが好ましい。これにより、内層回路基板の導体回路の埋め込み性が優れ、かつ高い絶縁信頼性を付与することができる。なお、本発明の樹脂シートを積層する支持体が凸型の導体回路を有さない場合は、前記第二樹脂層は極力薄くすることができる。
【0111】
(キャリアフィルム)
本発明の樹脂シートは、少なくとも前記第一樹脂層の表面を高分子フィルム及び表面の10点平均粗さ(Rz)が4.0μm以下の銅箔よりなる群から選ばれるキャリアフィルムで被覆してなることが好ましく、前記第一樹脂層の表面及び前記第二樹脂層の表面が前記キャリアフィルムで被覆してなることがより好ましい。前記キャリアフィルムは、樹脂層への異物混入や樹脂層表面等の汚染を防止する目的で保護フィルムとして使用される。また、前記第二樹脂層の表面は、高分子フィルムで被覆してなることが特に好ましい。さらに、前記第一樹脂層の表面を被覆する前記キャリアフィルムは、当該キャリアフィルムをエッチング等で剥離した後に、前記第一樹脂層の表面を無粗化又は低粗度で平坦とし、微細配線加工を容易とすることができる。図1に示す本発明の一例の樹脂シート100は、第一樹脂層1の表面がキャリアフィルム3で被覆され、第二樹脂層2の表面がキャリアフィルム4で被覆される。
【0112】
前記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートで構成されるシートが安価および剥離強度の調節が簡便なため最も好ましい。これにより、Bステージ状態の絶縁層、または、加熱加圧ラミネート後の絶縁層から適度な強度で剥離することが容易となる。
【0113】
前記銅箔としては、表面の10点平均粗さ(Rz)が4.0μm以下であることが好ましく、特に2.0μm以下であることが好ましい。これにより、前記銅箔を第一樹脂層の表面に積層した場合、当該銅箔をエッチング等で剥離した第一樹脂層の表面が無粗化又は低粗度で平坦とすることができ、微細配線加工が容易となる。
【0114】
前記キャリアフィルムの厚みは、特に限定されないが、10〜70μmのものを用いると、樹脂シートを製造する際の取り扱い性が良好であり好ましい。
【0115】
(基材層)
本発明の樹脂シートは、第一樹脂層と第二樹脂層との間に基材層を有していることが好ましく、特に、第一樹脂層、基材層及び第二樹脂層からなる3層構造を有することが好ましい。図1に示す本発明の一例の樹脂シート100は、第一樹脂層1、基材層5及び第二樹脂層2からなる3層構造を有する。
本発明の樹脂シートは、第一樹脂層と第二樹脂層との間に基材層を有する場合、前記基材層に用いられる基材に第一樹脂層を構成する第一樹脂材料及び/又は第二樹脂層を構成する第二樹脂材料が含浸している。
本発明の樹脂シートは、基材層を有していることにより、樹脂シートの強度が向上することができ、低熱膨張性に優れる。
なお、本発明の樹脂シートは、前記基材層とは別の中間層を含む多層構造であってもよい。
【0116】
前記基材層に用いられる基材としては、ガラス織布、ガラス不織布等のガラスクロス、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材等が挙げられる。これらの中でもガラスクロスが好ましい。これにより、樹脂シートの強度を向上することができ、熱膨張係数を小さくすることができる。
【0117】
このようなガラスクロスを構成するガラスとしては、例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもTガラスが好ましい。これにより、ガラスクロスの熱膨張係数を小さくすることができ、それによって樹脂シートの熱膨張係数を小さくすることができる。
【0118】
前記基材層に用いられる基材の厚みは、特に限定されないが30μm以下であることが好ましく、特に25μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは20μm以下である。これにより、基材層を薄くでき樹脂シートの全体の厚さを薄くすることができる。
【0119】
本発明の樹脂シートは、上記多層構造であることにより、回路パターンに応じて樹脂量を調整することができる。ここで、第一樹脂層と第二樹脂層とがそれぞれ異なる厚さである樹脂シートを図1に基づいて説明する。図1では、第一樹脂層の方が第二樹脂層よりも薄いため、基材層の中心が中心線A−Aよりも上側(図1中上側)に配置されている。
樹脂シートが第一樹脂層と第二樹脂層との間に基材層を含まず、第一樹脂層と第二樹脂層とがそれぞれ異なる厚さである場合は、中心線A−Aに対して、第一樹脂層と第二樹脂層との境界線がずれて配置される。
なお、第一樹脂層の厚さと第二樹脂層の厚さが同じで、基材層の中心または第一樹脂層と第二樹脂層との境界線が中心線A−Aに重なっていてもよい。
【0120】
本発明の樹脂シートでは、第一樹脂層の厚さと第二樹脂層の厚さを異なるものとすることができるため、第一樹脂層は導体層を形成する溝の深さ等に対応して樹脂量を調整することができ、第二樹脂層は内層回路基板の導体回路の残銅率等に対応して樹脂量を調整することができる。従って、余分な樹脂層を設ける必要が無くなるため、樹脂シートの厚さを薄くすることができ、前記樹脂シートを用いて得られる積層板、プリント配線板等の電子部品、半導体装置の厚さを薄くすることもできる。
【0121】
前記樹脂シートが有する前記第一樹脂層の厚さは、前記第一樹脂層の厚さ及び前記第二樹脂層の厚さを合計した厚さのうち、15〜50%であることが好ましく、特に25〜50%であることが好ましい。第1樹脂層の厚さの割合が前記範囲内であることにより、プリント配線板を製造する際に、内層回路基板の導体回路の凹凸を第二樹脂層に充填し、第一樹脂層に溝加工による回路パターンを形成する絶縁層を成形することができるとともに、好適な絶縁層の厚みを確保することができる。
【0122】
キャリアフィルムを除いた本発明の樹脂シート全体の厚み(図1中のT0)は、60μm以下であることが好ましく、特に25〜45μmであることが好ましい。キャリアフィルムを除いた樹脂シートの厚さが60μm以下であると、当該樹脂シートを用いて得られるプリント配線板等の薄型化に優れ、最終的に得られる半導体装置を薄型にすることができる。
【0123】
本発明の樹脂シートの面方向の線膨脹係数は、特に限定されないが、25ppm以下であることが好ましく、特に5〜20ppmであることが好ましい。線膨張係数が前記範囲内であると、繰り返しの熱衝撃に対する耐クラック性を向上することができる。
前記面方向の線膨張係数は、例えばTMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて、10℃/分で昇温して評価することができる。
【0124】
次に、本発明の樹脂シートの製造方法について図2を用いて説明する。
本発明の樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば予め前記第一樹脂ワニスをキャリアフィルム3に塗工する方法等により第一キャリア材料1aを製造し、前記第二樹脂ワニスをキャリアフィルム4に塗工する方法等により第二キャリア材料2aを製造する。この第一キャリア材料1a及び第二キャリア材料2aを基材5に樹脂面が基材5に向かい合うように配する。(図2(a))次いで、加熱加圧ラミネートし、基材5に第一樹脂材料および/または第二樹脂材料を含浸させる。(図2(b))
第一キャリア材料1a及び第二キャリア材料2aを基材5にラミネートする方法としては、例えば、真空ラミネート装置を用いて、基材5の一方面側から第一キャリア材料1aを重ね合わせ、他方面側から第二キャリア材料2aを重ね合わせて、減圧下、ラミネートロールで接合、かつ密封した後、熱風乾燥装置で第一及び第二キャリア材料を構成する樹脂ワニス中の不揮発分の溶融温度以上の温度で加熱処理する方法がある。このとき、基材中は前記減圧下を保持しているため、毛細管現象によりに溶融含浸させることができる。前記加熱処理する他の方法は、例えば赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置等を用いて実施することができる。
【0125】
また、このような樹脂シート100を得る他の方法として、(1)基材5に、第二樹脂層2となる第二樹脂ワニスを塗布、片含浸、乾燥し、もう一方の片面に第一樹脂層1となる第一樹脂ワニスをロールコーター、コンマコーター等にて塗布、乾燥してBステージとし、このBステージ化した第一樹脂層1となる樹脂層側および第二樹脂層2となるもう一方の樹脂層側にそれぞれキャリアフィルム3、4を重ね合わせて、加熱、加圧下にラミネートする方法、(2)基材5に、第二樹脂ワニスを塗布、片含浸、乾燥し、第二樹脂層2となる樹脂層側にはキャリアフィルム4を重ね合わせた第二キャリア材料2aを作製し、更に、第一樹脂層1となる第一樹脂ワニスをキャリアフィルム3に塗工等した第一キャリア材料1aを別々に作製し、前記第一キャリア材料1aの第一樹脂層1となる側に、前記第二キャリア材料2aを重ね合わせて、加熱、加圧下にラミネートする方法もある。
【0126】
また、基材層を含まない樹脂シートを得る方法としては、予め第一樹脂ワニスをキャリアフィルム3に塗工する方法等により製造した第一キャリア材料1aと、第二樹脂ワニスをキャリアフィルム4に塗工する方法等により製造した第二キャリア材料2aとを、第一樹脂層及び第二樹脂層が内側になるように配して、プレス積層する方法等が挙げられる。
【0127】
なお、本発明の樹脂シートは、第一樹脂層表面および第二樹脂層表面の両方がキャリアフィルムによって被覆されている形態に限定されず、少なくとも第一樹脂層表面にキャリアフィルムが積層されていることが好ましいが、第一樹脂層表面および第二樹脂層表面の両方がキャリアフィルムによって被覆されていなくてもよい。
【0128】
上記製造方法では、第一キャリア材料に形成される第一樹脂層となる樹脂層及び/又は第二キャリア材料に形成される第二樹脂層となる樹脂層の厚さを変えることにより、第一樹脂層及び/又は第二樹脂層の厚さを変えることができる。本発明の樹脂シートは、このように、容易に第一樹脂層と第二樹脂層との厚さの調整ができ、ひいてはキャリアフィルムを除いた樹脂シート全体の厚さを調整し、薄膜化することができる。
【0129】
また、本発明によれば、前記樹脂シートのみ、又は、少なくとも一面側の最外層の位置に当該樹脂シートをその第一樹脂層が表面側に向くように配置して積層されてなる積層板を得ることができる。
本発明の積層板は、本発明の樹脂シート1枚のみ、又は、複数枚の樹脂シートを積層した積層体を加熱加圧成形することで得られる。前記積層体は、少なくとも一面側の最外層の位置に本発明の樹脂シートをその第一樹脂層が表面側に向くように配置して積層されていれば、最外層の位置以外には、本発明の樹脂シートを用いてもよいし、本発明の樹脂シートでない樹脂シートを用いてもよい。
このように、本発明の積層板は、本発明の樹脂シートのみから得られるものでもよいが、本発明の樹脂シートと、本発明の樹脂シートとは異なる樹脂シートとを併用して得られるものでも構わない。さらに、本発明の樹脂シートにおいても、全体の厚さ及び/又は第一樹脂層の厚さと第二樹脂層の厚さとの比率が異なる樹脂シートを併用して得られるものでも構わない。
【0130】
前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.5〜5MPaが好ましく、特に1〜3MPaが好ましい。また、必要に応じて高温槽等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0131】
さらに、前記積層板の少なくとも1面側において、前記第一樹脂層の表面に金属箔を積層し、加熱加圧することで、金属張積層板を得ることができる。
前記金属張積層板の金属箔に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものは、プリント配線板の内層回路基板として用いることができる。
【0132】
次に、本発明の樹脂シートの硬化物からなる絶縁層、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝、及び、当該溝内部に設けられた導体層を有する導体路構造を備える電子部品について説明する。
前記電子部品としては、プリント配線板、半導体素子、メタルコア配線板等が挙げられる。すなわち、内層回路基板上又はプリント配線板上に形成された前記樹脂シートの硬化物からなる絶縁層、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝、及び、当該溝内部に設けられた導体層を有するビルドアップ層を少なくとも一層含むプリント配線板、金属基板上に形成された前記樹脂シートの硬化物からなる絶縁層、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝、及び、当該溝内部に設けられた導体層を有する導体路構造を備えるメタルコア配線板、及び、ウェハー表面に形成された前記導体路構造からなる再配線を有する半導体素子等が挙げられる。なお、プリント配線板に用いられる基板、メタルコア配線板に用いられる金属基板、半導体素子の再配線に用いられるウェハーとしては、通常用いられるものを適宜選択して用いることができる。
【0133】
プリント配線板に用いられる基板としては、特に限定はされないが、例えば基材に絶縁性樹脂を含浸または塗工したものの両面または片面に銅箔などの金属箔を重ね合わせ、加熱、加圧などにより加工し、必要により導体回路を形成した内層回路基板が挙げられる。基材としては例えばガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材などが挙げられ、絶縁性樹脂としては例えばシアネート樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂など、これらを単独、あるいは複数用いたものが挙げられる。フレキシブル基板に用いられる例えばポリイミド樹脂、液晶ポリマー、エポキシ樹脂などを絶縁性樹脂として用いる場合は、基材を含まなくても用いることもできる。
メタルコア配線板に用いられる金属基板としては、特に限定はされないが、例えば銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄および鉄系合金等が挙げられる。42アロイなどの線膨張係数の低い金属も用いてもよい。
半導体素子の再配線に用いられるウェハーとしては、特に限定はされないが、例えばシリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、炭化シリコン、リン化ガリウム、リン化アルミニウム、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウム、ヒ化インジウム、窒化インジウム、リン化インジウム、リン化ガリウムインジウム、リン化インジウムヒ素、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの半導体材料が挙げられる。
【0134】
以下、本発明のプリント配線板について説明する。本発明のプリント配線板は、樹脂シートの硬化物からなる絶縁層、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝、及び、当該溝内部に設けられた導体層を有するビルドアップ層を少なくとも一層含む。
【0135】
図3は、本発明のプリント配線板の一例を模式的に示す断面図であり、プリント配線板200は、図1に示す樹脂シート100の硬化物からなる絶縁層6、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝7、及び、当該溝内部に設けられた導体層8を有するビルドアップ層101が、内層回路基板9の上に積層してなる。
【0136】
前記溝の最大幅は1〜10μmであることが好ましく、特に8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましく、4μm以下であることが特に好ましい。これにより、微細配線加工が可能となり、高密度化、高実装化の作用を効果的に発現させることができる。
なお、溝の幅とは、溝の長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味し、前記第一樹脂層表面の溝内部に有する導体層の最大幅は、通常、前記溝の最大幅と同じになる。
【0137】
本発明のプリント配線板は、前記溝の深さが2〜20μmであることが好ましく、且つ前記第一樹脂層1の厚みが前記溝の深さの1.2〜1.4倍であることが好ましい。前記溝の深さは、5〜15μmであることが特に好ましい。これにより、溝加工性に優れる第一樹脂層を貫通することなく溝が形成されるため、溝形状がいびつになることなく、微細配線加工が可能となり、さらに、樹脂シートの薄膜化にも対応できる。また、ビルドアップ層が基材層を有する場合には、溝が基材層に達することがなく、絶縁信頼性に優れる。
【0138】
また、本発明のプリント配線板の絶縁層表面の溝の断面形状、及び、当該溝内部に有する導体層の断面形状は、略台形状、蒲鉾状又は三角形であることが好ましい。これにより、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる。
【0139】
本発明において、前記導体層と接する溝内部の前記絶縁層表面の10点平均粗さ(Rz)は、6.0μm以下であることが好ましく、更に、4.0μm以下であることが好ましい。これにより微細配線の絶縁信頼性を効果的に発現させることができる。
導体層と接する溝内部の絶縁層表面の10点平均粗さ(Rz)は、溝内部の導体層表面の10点平均粗さ(Rz)に反映される。10点平均粗さ(Rz)は、測定長間の最大山高さから5点の平均と、最大谷深さから5点の平均の和になるので、溝内部の導体層表面の最大凸部の評価ができる。10点平均粗さ(Rz)が大きすぎると、導体層の最大凸部の影響で、微細配線間の距離が著しく短くなる箇所が発生し、絶縁に不利となり、信頼性が低下する恐れがある。
【0140】
なお、本発明において、10点平均粗さ(Rz)は、JIS B0601で定義されているものである。絶縁層に形成された溝表面の10点平均粗さ(Rz)の測定は、JIS B0601に準じて行うことができ、例えばVeeco社製WYKO NT1100を用いて測定することもできる。
【0141】
また、前記導体層と接する前記溝の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.05〜0.45μmであることが好ましい。導体層と接する溝内部の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、溝内部の導体層表面の算術平均粗さ(Ra)に反映される。絶縁層の溝内部の表面凹凸が最適化されたことにより、絶縁層と導体層との密着性を確保しながら、導体層の表面凹凸が小さくなり、1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減でき、高周波対応の微細配線を形成できる。高周波信号になると導体層の表面の信号伝播となるが、導体層の表面凹凸が大きすぎると、伝送距離が伸びるため、伝達が遅くなったり、伝播中の損失が大きくなってしまう。また、特に限定はされないが、前記溝の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下であることが特に好ましい。これにより高周波数領域における伝送損失の低減作用を効果的に発現させることができる。
【0142】
算術平均粗さ(Ra)が上記下限値未満であると、半田耐熱試験、冷熱サイクル試験等において、導体層の剥離が生じるおそれがあり、上記上限値を超えると、高速信号伝達に支障をきたし、電気信頼性を害するおそれがある。
【0143】
なお、本発明において、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601で定義されているものである。樹脂層に形成された溝表面の算術平均粗さ(Ra)の測定は、JIS B0601に準じて行うことができ、例えばVeeco社製WYKO NT1100を用いて測定することもできる。
【0144】
前記溝内部に有する導体層としては、導体であれば特に限定されず、めっきにより形成されることが好ましい。導体層としては、例えば、銅やニッケル等の金属を含むことが好ましい。なお、前記導体層としては、2種類以上の導体層からなるものであって良い。
【0145】
また、本発明のプリント配線板は、前記ビルドアップ層で被覆される内層回路基板の導体回路の高さが5〜20μmであり、且つ前記第二樹脂層の厚みが前記導体回路の高さの1〜1.5倍であることが好ましい。これにより、内層回路基板の導体回路は、第二樹脂層を貫通することなく第二樹脂層内に埋め込まれるため、本発明のプリント配線板は回路埋め込み性に優れ、導体層の凹凸を充填した絶縁層を成形することができる。
【0146】
なお、本発明のプリント配線板では、本発明の樹脂シートと、本発明の樹脂シートとは異なる従来用いられていた樹脂シートとを併用して得られるものでも構わない。さらに、本発明の樹脂シートにおいても、全体の厚さ及び/又は第一樹脂層の厚さと第二樹脂層の厚さとの比率が異なる樹脂シートを併用して得られるものでも構わない。
【0147】
次に、本発明のプリント配線板の製造方法の一例について、図4をもとに説明する。図4に示すプリント配線板には、内層回路基板としては、凸型の導体回路9aとガラスエポキシ基材9bとを有する内層回路基板9を用い、樹脂シートとしては、図1に示す樹脂シート100のように第一樹脂層1、基材層5及び第二樹脂層2からなる3層構造を有し、第一樹脂層1が、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を主成分とした樹脂シートを用いる。
【0148】
まず、工程(A)により、図1に示す樹脂シート100のキャリアフィルム4を剥離した樹脂シート100’を、第二樹脂層2側が内側となるように配して内層回路基板9上に積層して絶縁層6を形成する。
前記樹脂シート100’を内層回路基板11上に積層する方法としては、特に限定されないが、例えばラミネーター、真空プレス機等を用いて樹脂シートを内層回路基板9に熱圧着する方法等が挙げられる。
内層回路基板9に積層された樹脂シート100’は、樹脂シート100’の第一樹脂層1に導体層が形成される前及び/又は形成された後に、必要に応じて加熱を行い、熱硬化性樹脂を硬化させ、絶縁層6が形成される。
【0149】
次に工程(B)、(C)により、レーザー光10及びマスク11を用いて絶縁層6の第一樹脂層1にレーザー加工法によるパターニングを行う。レーザー光10は回路パターンを施したマスク11を介して第一樹脂層1に照射される。
前記レーザー光10としては、エキシマレーザー又はUV−YAGレーザーを用いることが好ましい。これらのレーザーを使用することにより、精度・形状よく溝7の形成が可能となり、微細配線形成や高密度化が可能となる。特に限定はされないが、エキシマレーザーのレーザー波長は、193nm、248nmであることがより好ましく、193nm、248nmであることが特に好ましい。これにより、精度・形状よく溝7を形成できる作用を効果的に発現させることができる。UV−YAGレーザーの波長は第4高調波の266nm、第5高調波の213nmであることが好ましい。これらより長い波長では、微細配線加工のための均一な溝7を形成できない可能性がある。
【0150】
レーザー光10の照射条件は、第一樹脂層1の表面に、内部表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である溝内部表面ができるように選択する。中でも、溝7の内部表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下となる条件であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下となる条件であることが特に好ましい。これにより、絶縁信頼性や信号応答性を高め、伝送損失を低減し、さらに溝7内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる作用を効果的に発現させることができる。
【0151】
なお、本発明のプリント配線板の製造方法では、レーザー光10によって前記パターニング工程(C)を行った場合、工程(C)と工程(D)の間に、プラズマ又は薬液によってデスミアする工程を含むことが好ましい。これにより、レーザー光10による溝7の形成時に、溝7の側壁面に残留した炭化物を除き、電気信頼性の高い微細配線が可能となる。
【0152】
前記プラズマは、特に限定されないが、窒素プラズマ、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ、四フッ化メタンプラズマ、もしくはこれらの混合ガスのプラズマを使用することができる。
また、プラズマの処理条件としては、プラズマ工程後の第一樹脂層表面乃至溝内部表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.45μm以下となる条件であることが好ましく、同時に、溝7の内部表面の残留した炭化物を十分に除ききる条件であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線が可能となる。1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減でき、さらに溝内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる。また、特に限定はされないが、プラズマ条件をプラズマ工程後の樹脂層の溝7の内部表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下となる条件であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下となる条件であることが特に好ましい。これにより、絶縁信頼性や信号応答性を高め、伝送損失を低減し、さらに溝7内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる作用を効果的に発現させることができる。
【0153】
薬液によるデスミアは、特に限定されないが、過マンガン酸塩、重クロム酸等を使用することができる。また、デスミアの処理条件としては、デスミア工程後の第一樹脂層1表面乃至溝7の内部表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.45μm以下となる条件であることが好ましく、同時に、溝7の内部表面の残留した炭化物を十分に除ききる条件であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性、さらに溝内のめっき付き不良や層間接続不良を低減に優れたビア形成が可能となる。1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減できる。また、特に限定はされないが、デスミア条件をデスミア工程後の溝7の内部表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下となる条件であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下となる条件であることが特に好ましい。これにより、絶縁信頼性や信号応答性を高め、伝送損失を低減し、さら溝7内のめっき付き不良や層間接続不良を低減する作用を効果的に発現させることができる。
【0154】
プラズマ又は薬液によるデスミア工程が不十分で炭化物が溝7の内部表面に残留した場合、複合体の絶縁信頼性が低下する恐れがある。プラズマ又は薬液によるデスミア工程が過度となると、導体層8と接する絶縁層6の溝7内部表面の算術平均粗さ(Ra)が粗くなり、導体層8の表面凹凸により、表皮効果による配線の信号応答性が悪くなったり、また溝7内のめっき付き不良や層間接続不良が発生するおそれがある。
【0155】
本発明の工程(D)では、第一樹脂層1の表面に無電解めっき層12を形成する。
無電解めっき層12の金属の種類は、特に限定されないが、銅やニッケル等が好ましい。これらの金属では絶縁層6と無電解めっき層12の密着が良好である。無電解めっき層の厚さも特に限定されないが、0.1μm以上、5μm以下程度とすることが好ましい。さらに無電解めっき後に、熱風乾燥装置にて150℃〜200℃で10分〜120分の熱処理を行うことにより、第一樹脂層1と無電解めっき層12との密着をより良好にすることができる。
【0156】
本発明のプリント配線板の製造方法では、工程(E)において、電解めっきでさらに電解めっき層13を形成する工程を含むことが好ましい。この工程ではレーザー光10により形成された溝7の内部を電解めっき層13で埋めることができる。
電解めっきには硫酸銅電解めっきが使用できる。また、特に限定されないが、めっき液中にはレベラー剤、ポリマー、ブライトナー剤等の添加剤が含まれることが好ましい。これにより、第一樹脂層1に形成された溝7の内部に対して優先的にめっきが析出し電解めっき層13で埋められ、電解めっき後の樹脂表層上と溝7上のめっき析出レベルが同等となる。電解めっき層13の厚みは、特に限定されないが、第一樹脂層1表面から5μm以上、25μm以下程度とするのが好ましい。
【0157】
本発明の工程(F)では、無電解めっき層12、電解めっき層13により形成された導体14の一部を除去することにより、溝7の部分のみに、無電解めっき層12’及び電解めっき層13’からなる導体層8を形成する。特に限定はされないが、電解めっきにより形成された導体14の一部を除去する方法は、化学エッチング処理、研磨処理、バフ研磨処理等が好ましい。これにより、第一樹脂層1表層上の導体14のみを効果的に除去し、溝7の部分のみの導体層8を残すことが可能である。
こうして、電気信頼性、信号応答性、溝内部のめっき付き性や層間接続性に優れたプリント配線板を作製することが可能である。
【0158】
本発明の製造方法は、工程(F)の後に、絶縁層6及び導体層8の上に別の絶縁層15を形成する工程(G)を含むことができる。
本発明の工程(G)では、絶縁層6及び導体層8の上に別の絶縁層15を形成することで、多層プリント配線板の配線となる各導体層が絶縁層で覆われ配線間の絶縁性が確保される。特に限定はされないが、絶縁層6及び導体層8の上に別の絶縁層15を形成する手法としては、上記絶縁層6を準備する時と同様に、キャリアフィルム付き樹脂シートを例えば真空加圧式ラミネーター装置、平板プレス装置等を用いる方法が挙げられる。
【0159】
上記工程(A)〜(F)を繰り返すことで電気信頼性、信号応答性、溝やビア孔内部のめっき付き性や層間接続性に優れた多層プリント配線板を作製することが可能である。
【0160】
一方、第一樹脂層が硬化性樹脂として感光性樹脂を主成分とする場合は、図4に示す前記工程(A)〜(G)のうち、工程(B)、(C)における第一樹脂層のパターニングを、レーザー加工法ではなく、フォトリソグラフィ法により行う。
フォトリソグラフィ法によるパターニングは、回路パターンを施したマスク11’を介して、活性エネルギー線10’を照射(露光)し、続いて現像処理をすることにより行われる。
フォトリソグラフィ法によるパターニングは、第一樹脂層に含まれる感光性樹脂がネガ型の場合は、露光部が硬化し、未露光部が現像処理によって選択的に除去される。前記感光性樹脂がポジ型の場合は、露光部が分解し、当該露光部が現像処理によって選択的に除去される。
【0161】
前記活性エネルギー線10’としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光、ショートアークランプや(超)高圧水銀灯等を光源とした水銀蒸気の放電による発光等を用いることができる。また、前記活性エネルギー線10’の種類は、ガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。
前記活性エネルギー線10’の露光量は樹脂層の厚さ等によって異なるが、一般には20〜900mJ/cmであり、特に50〜600mJ/cmであることが好ましい。
前記露光機としては、特に限定されないが、例えば、紫外線照射装置、直接描画装置等を用いることができる。
【0162】
前記現像処理は、ディッピング法、シャワ一法、スプレー法、ブラシ法等によって行うことができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、テトラアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。尚、目標の溝深さによって適宜現像時間を調節してパターニングする。
【0163】
次に、半導体装置について説明する。
本発明の半導体装置は、前記本発明に係るプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする。
本発明の半導体装置は、前記本発明に係るプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、前記半田バンプを介して、前記プリント配線板と前記半導体素子とを接続し、前記プリント配線板と前記半導体素子との間に液状封止樹脂を充填することで製造することができる。
【0164】
半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマスなどからなる合金で構成されることが好ましい。半導体素子とプリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダーなどを用いてプリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等の比較的融点の低い金属の層を形成しておいても良い。この接合工程に先んじて、半田バンプ、及び/またはプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【実施例】
【0165】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0166】
実施例1−1〜1−10及び比較例1−1〜1−2は、感光性樹脂を主成分とするネガ型の第一樹脂層を用いた実施例及び比較例である。実施例1−1〜1−10及び比較例1−1〜1−2で得られた樹脂シートの成分の含有量(重量部)を表1に示す。
【0167】
(実施例1−1)
1.第一樹脂ワニスの調製
アルカリ可溶性感光性樹脂として、化合物Aを固形分換算で45重量部、エポキシ樹脂としてナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂(DIC社製、HP−5000)25重量部、ビスA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER828EL)10重量部、光重合性化合物として、トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルTMP)14重量部、硬化剤としてビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成株式会社、MEH7851−4L)4重量部、光重合開始剤として2,2ジメトキシ−1,2ジフェニルエタンー1−オン(長瀬産業社製、イルガキュア651)2重量部を、メチルエチルケトン溶剤中に混合溶解させ、不揮発分65重量部の第一樹脂ワニスを得た。
【0168】
(合成例1)
前記化合物A(メタクリロイル変性ノボラック型ビスフェノールA樹脂)は、ノボラック型ビスフェノール樹脂(DIC社製、フェノライトLF−6161、固形分65重量部)溶液500gを、2Lフラスコ中に投入し、これに触媒としてトリブチルアミン1.65g、および重合禁止剤としてハイドロキノン0.16g添加し、100℃に加温した。その中へ、グリシジルメタクリレート196gを45分間で滴下し、100℃で5時間攪拌反応させることにより、固形分78%のメタクリロイル変性ノボラック型ビスフェノールA樹脂(メタクリロイル変性率50%)を得た。
【0169】
2.第二樹脂ワニスの調製
ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)10重量部、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)20重量部、硬化剤としてビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成株式会社、MEH7851−4L)10重量部、球状シリカD(アドマテックス社製、SO−25R、平均粒子径0.5μm)60重量部を、メチルエチルケトンに混合溶解させ、不揮発分70重量部となるように調整し、第二樹脂ワニスを得た。
【0170】
3.キャリア材料の製造
前記、第一樹脂ワニスをPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート、帝人デュポンフィルム製ピューレックスフィルム36μm)にダイコーター装置を用いて乾燥後の第一樹脂層の厚さが15μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で5分間乾燥して、第一樹脂層用のPET付き樹脂シートを得た。
また、前記第二樹脂ワニスをPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート、帝人デュポンフィルム製ピューレックスフィルム36μm)上に同様に塗工し、乾燥後の第二樹脂層の厚さが20μmになるように、160℃の乾燥機で5分間乾燥して、第二樹脂層用のPET付き樹脂シートを得た。
【0171】
4.樹脂シートの製造
前記第1樹脂層用のPETフィルム付き樹脂シート、および第2樹脂層用のPETフィルム付き樹脂シートをガラス織布(坪重量12g、厚さ13μm、ユニチカグラスファイバー社製Eガラス織布、IPC規格1017)の両面に樹脂層がガラス織布に接するように配し、圧力0.5MPa、温度140℃で1分間の条件で真空プレスにより加熱加圧して、第一樹脂材料及び第二樹脂材料を含浸させ、両面にPETフィルム付きの樹脂シートを得た。第1樹脂層が12μm、基材層が13μm、第2樹脂層が15μmで、PETフィルムを除いた総厚は40μmであった。
【0172】
5.プリント配線板および半導体装置の製造
コア基板(住友ベークライト社製ELC−4785GS−B、厚み0.2mm、9μm銅箔)に回路パターン形成(残銅率70%、L/S=50/50μm、回路高さ9μm)した内層回路基板の表裏に、前記で得られた両面PETフィルム付きのプリプレグの第2樹脂層側のPETフィルムを剥離し、第2樹脂層を内側にして両面重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度130℃、圧力0.2MPa、時間20秒で真空加熱加圧成形し、積層した(評価基板1−1)。
【0173】
得られた積層体から第一樹脂層側のPETフィルムを剥離し、L/S=8/8μmの格子状のネガパターンマスク及び露光機PLA−600FA(キャノン社製)を用いて、露光(露光量:250mJ/cm2)した。次いで、3%TMAHを用いて現像(現像液圧力:0.2MPa、現像時間:30秒間)し、狙い幅8μm、狙い溝間8μm、狙い深さが10μmの溝を形成した。これを両面行った後、温度180℃時間60分加熱硬化させた(評価基板1−2)。
【0174】
この表面を脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき皮膜を約0.2μm形成し、無電解銅めっき層を給電層としパターン電解銅めっき(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナα)を3A/dm、30分行って、絶縁層表から厚さ約3μmの高さの導体を形成した。次に、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った後、フラッシュエッチングで給電層を除去し、導体層高さを絶縁層表面と揃え、L/S=8/8μmの微細配線加工を施した。
これを繰り返して、2−2−2導体層を有する多層配線板を得た(評価基板1−3)。
【0175】
次に、ソルダーレジスト(太陽インキ製造(株)製、PSR−4000 AUS703)を印刷し、半導体素子搭載パッド等が露出するように、所定のマスクで露光し、現像、キュアを行い、回路上のソルダーレジスト層厚さが12μmとなるように形成した。
【0176】
最後に、ソルダーレジスト層から露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層3μmと、さらにその上へ、無電解金めっき層0.1μmとからなるめっき層を形成し、得られた基板を50mm×50mmサイズに切断し、半導体装置用の多層配線板を得た。
【0177】
半導体装置は、前記半導体装置用の多層配線板上に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.6mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載し、次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、当該液状封止樹脂を硬化させることで得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。尚、前記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。
【0178】
(実施例1−2〜1−10、比較例1−1〜1−2)
表1の配合量で実施した以外は、実施例1−1と同様にした。
なお、表1に記載の化合物Bとは、メタクリロイル変性フェノールノボラック型樹脂であり、以下の合成例2によって調製した。
【0179】
(合成例2)メタクリロイル変性フェノールノボラック型樹脂の合成
フェノールノボラック樹脂(DIC社製、フェノライトTD−2090−60M、固形分60重量%)溶液500gを、2Lフラスコ中に投入し、これに触媒としてトリブチルアミン1.7g、および重合禁止剤としてハイドロキノン0.17添加し、100℃に加温した。その中へ、グリシジルメタクリレート205gを45分間で滴下し、100℃で5時間攪拌反応させることにより、固形分75%のメタクリロイル変性フェノールノボラック樹脂(メタクリロイル変性率50%)を得た。
【0180】
また、表1に記載のカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしてはダイセル化学工業社製のサイクロマーP ACA200Mを用い、ナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂としては東都化成工業社製のESN−175を用い、アントラセン型エポキシ樹脂としては三菱化学社製のYX−8800を用い、フェノールノボラック樹脂としては住友ベークライト社製のPR-53647を用い、球状シリカAとしてはトクヤマ社製のNSS−3N(平均粒子径0.125μm、2μm超過の粗粒10ppm)を用い、球状シリカBとしてはアドマテックス社製のアドマナノ(平均粒子径55nm、2μm超過の粗粒5ppm以下)を用い、球状シリカCとしてはアドマテックス社製のSO−32R(平均粒子径1.1μm、2μm超過の粗粒3.3%)を用い、ナフタレンアラルキル型シアネート樹脂としては以下の合成例3により得られる新日鐵化学社製のSN485の誘導体を用い、ベーマイトとしては河合石灰工業社製のBMB(平均粒子径0.5μm、2μm超過の粗粒450ppm)を用いた。
【0181】
(合成例3)ナフタレンアラルキル型シアネート樹脂の合成
ナフタレンアラルキル型フェノール(新日鐵化学社製SN485、水酸基当量215g/eq)を101g(0.47molの水酸基)とメチルイソブチルケトン(以下MIBK)を400g仕込み、室温で攪拌溶解する。溶解後、−10℃まで冷却を行った。−10℃にて臭化シアン(以下BrCN)110g(純度95%、0.987mol)を投入し、内温が−15℃になったら、トリエチルアミン(以下TEA)100g(0.99mol)とMIBK600gの混合液を1時間かけて滴下した。滴下後、さらに30分熟成し、さらに約2時間熟成させ反応を完結させた。得られた溶液に、純水400mlを加えて分液し、さらに5%塩化水素水溶液(HCl)1000mlを加えて分液した。さらに、10%食塩水500gで2回洗浄分液し、純粋500mlにて2回洗浄した。
有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶剤を減圧除去し、固形の樹脂を得た。得られた固形物をヘキサンにて洗浄した後、減圧乾燥することにより、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂を得た。このようにして得られたビフェニルアラルキル型シアン酸エステルは、赤外吸収スペクトル測定(島津製作所製IR Prestige−21、KBr透過法)により分析し、フェノール性水酸基の吸収帯である3200〜3600cm−1が消失し、シアン酸エステルの二トリルの吸収帯である2264cm−1付近を確認した。
【0182】
以下、実施例2−1〜2−11及び比較例2−1は、熱硬化性樹脂を主成分とする第一樹脂層を用いた実施例及び比較例である。実施例2−1〜2−11及び比較例2−1で得られた樹脂シートの成分の含有量(重量部)を表2に示す。
【0183】
(実施例2−1〜2−11、比較例2−1)
実施例2−1〜2−10及び比較例2−1は、表2の配合量で実施した以外は、実施例1−1と同様にして、第一樹脂ワニスの調製、第二樹脂ワニスの調製、キャリア材料の製造、樹脂シートの製造を行った。なお、表2に記載のビスS/ビフェニル型フェノキシ樹脂としては三菱化学社製のYX−8100BH30(固形分30重量%)を用い、硬化促進剤としては四国化成工業社製のキュアゾール2E4MZ又は四国化成工業社製のキュアゾール1B2PZを用いた。その他の成分は実施例1−1〜1−10及び比較例1−1、1−2で用いられた表1に記載の成分と同様のものを用いた。なお、球状シリカDとして用いられているアドマテックス社製のSO−25Rは、平均粒子径が0.5μmであり、2μm超過の粗粒は5000ppmであった。
実施例2−11は、表2の配合量で、基材層に用いる基材として、ユニチカグラスファイバー社製Eガラス織布(IPC規格1017)の代わりに、ガラス織布(坪重量11g、厚さ10μm、旭化成イーマテリアルズ社製Eガラス織布、IPC規格1000)を用い、第一樹脂層が10μm、基材層が10μm、第二樹脂層が20μmで、PETフィルムを除いた総厚を40μmとしたこと以外は、実施例1−1と同様にして、第一樹脂ワニスの調製、第二樹脂ワニスの調製、キャリア材料の製造、樹脂シートの製造を行った。
なお、実施例2−1〜2−11及び比較例2−1において、プリント配線板および半導体装置の製造方法は、実施例1−1〜1−10及び比較例1−1〜1−2とは異なり、以下の方法によって行った。
【0184】
5.プリント配線板および半導体装置の製造
コア基板(住友ベークライト社製ELC−4785GS−B、厚み0.2mm、9μm銅箔)に回路パターン形成(残銅率70%、L/S=50/50μm)した内層回路基板の表裏に、前記で得られた両面PETフィルム付きのプリプレグの第2樹脂層側のPETを剥離し、第2樹脂層を内側にして両面重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度130℃、圧力0.2MPa、時間20秒で真空加熱加圧成形した後、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱硬化を行った(評価基板2−1)。
【0185】
得られた積層体からPETフィルムを剥離し、L/S=8/8μmの格子状パターンマスクを用いて、193nmの波長を有するエキシマレーザーにより絶縁層に狙い幅8μm、狙い溝間8μm、狙い深さ10μmの溝を形成し、得られた積層体を、60℃の膨潤液(アトテックジャパン株式会社製、スウェリングディップ セキュリガント P500)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン株式会社製、コンセントレート コンパクト CP)に20分浸漬後、中和してデスミア処理を行った(評価基板2−2)。
【0186】
この表面を脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき皮膜を約0.2μm形成し、無電解銅めっき層を給電層としパターン電解銅めっき(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナα)を3A/dm、30分行って、絶縁層表から厚さ約3μmの高さの導体を形成した。次に、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った後、フラッシュエッチング(荏原電産社製 SACプロセス)で給電層を除去し、導体層高さを、絶縁層表面と揃え、L/S=8/8μmの微細配線加工を施した。
これを繰り返して、2−2−2導体層を有する多層配線板を得た(評価基板2−3)。
【0187】
次に、ソルダーレジスト(太陽インキ製造(株)製、PSR−4000 AUS703)を印刷し、半導体素子搭載パッド等が露出するように、所定のマスクで露光し、現像、キュアを行い、ソルダーレジスト層厚さが12μmとなるように形成した。
【0188】
最後に、ソルダーレジスト層から露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層3μmと、さらにその上へ、無電解金めっき層0.1μmとからなるめっき層を形成し、得られた基板を50mm×50mmサイズに切断し、半導体装置用の多層配線板を得た。
【0189】
半導体装置は、前記半導体装置用の多層配線板上に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.6mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載し、次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、当該液状封止樹脂を硬化させることで得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。尚、前記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。
【0190】
(評価)
実施例及び比較例で得られた樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。実施例1−1〜1−10及び比較例1−1〜1−2で得られた評価結果を表1に示し、実施例2−1〜2−11及び比較例2−1で得られた評価結果を表2に示す。なお、溝加工できなかったことにより評価できなかった項目は、表中において「加工不可」と記載した。
【0191】
(1)熱膨張係数(50〜100℃)
熱膨張係数は、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、4mm×20mmの試験片を作製し、温度範囲30〜300℃、10℃/分、荷重5gの条件で2サイクル目の50〜100℃における線膨張係数(CTE)を測定した。尚、評価サンプルとしては、各実施例および比較例で得られた樹脂シートを2枚用いて、第2樹脂層を向かい合わせて、温度220℃、圧力1MPa、時間120分の条件でプレス積層したものを用いた。
【0192】
(2)埋め込み性
評価基板1−1及び評価基板2−1の外層銅箔を全面エッチングした後に、内層パターンへの埋め込み性を目視し、さらに断面観察を実施し、評価した。
符号は以下の通りである。
◎:全面埋め込み性問題なし
○:実質上問題なし(最終個片化後の非製品部分の基板端部に一部不良あり)
×:パターン埋め込み不良あり
【0193】
(3)細線加工性(L/S=8/8μm)
(実施例1−1〜1−10、比較例1−1〜1−2)
評価基板1−2の溝パターン部分を電子顕微鏡で観察(×2,000倍)し、残渣、形状の有無を評価した。また、評価基板1−3の断面から導体層の形状を確認した。なお、パターンマスクは、溝幅8μm、溝間隔8μmの格子状のものを用いた。
各符号は、以下の通りである。
◎:残渣が全く確認されず、形状は略台形であり、実用上全く問題ない。
○:残渣が若干確認できるが、形状は略台形であり、実用上問題ないレベルである。
△:残渣が比較的多く観察され、実用レベルではない。
×:残渣が多数確認され、実用レベルではない。
(実施例2−1〜2−11、比較例2−1)
評価基板2−2の溝パターン部分を電子顕微鏡で観察(×2,000倍)し、残渣の有無を評価した。また、評価基板2−3の断面から導体層の形状を確認したなお、パターンマスクは、溝幅8μm、溝間隔8μmの格子状のものを用いた。
各符号は、以下の通りである。
◎:残渣が全く確認されず、形状は略台形であり、実用上全く問題ない。
○:残渣が若干確認できるが、形状は略台形であり、実用上問題ないレベルである。
△:残渣が比較的多く観察され、実用レベルではない。
×:残渣が多数確認され、実用レベルではない。
【0194】
(4)導体層壁面の算術平均粗さ(Ra)と10点平均粗さ(Rz)
導体配線の断面から、JIS B0601に準じて、算術平均粗さ(Ra)と10点平均粗さ(Rz)を算出した。尚、評価サンプルは評価基板1−2および評価基板2−2を用いた。
【0195】
(5)線間絶縁信頼性(HAST)
印加電圧3.3VDC、温度130℃、湿度85%の条件で、線間絶縁信頼性試験を行った。尚、評価サンプルは、2−2−2基板の評価基板1−3および評価基板2−3を用いた。
絶縁抵抗値が、1x108Ω未満となると不良と判断して試験を終了した。
各符号は、以下の通りである。
◎:良好 500時間以上
○:実質上問題なし 200時間以上500時間未満
×:使用不可 200時間未満
【0196】
(6)半導体装置の評価
前記で得られた半導体装置を、IPC/JEDECのJ−STD−20に準拠して、温度30℃、湿度60%、時間192時間の前処理を行い、その後、260℃に達するリフロー炉に3回通し、後処理として−50℃30分、125℃30分の温度サイクルを500サイクル実施した。評価は、前処理後、と温度サイクルを500サイクル後処理後の半導体素子の導通抵抗評価、および断面観察を実施した。
各符号は以下の通りである。
◎:500サイクル後処理後の導通抵抗異常なし、および断面観察での導体回路、ビアの異常なし
○:500サイクル後処理後の導通抵抗が1〜10%未満の範囲で上がっているが、断面観察での導体回路、ビアの異常なし
×:500サイクル後処理後の導通抵抗が、10%上がっている。または、導体回路と樹脂間、ビアと樹脂間のいずれかに、マイクロボイド、剥離クラック発生
【0197】
(7)難燃性(参考例)
UL−94規格に従い、垂直法により測定した。尚、全面エッチングしたコア基板の両面に樹脂シートを介して12μm銅箔を配置し、温度200℃、1時間、圧力2MPaでプレス成形した後、銅箔をエッチングした厚み0.28mmをテストピースとした。難燃性の評価は、実施例2−1、2−2及び2−8で得られたサンプルでのみ行った。
【0198】
【表1】

【0199】
【表2】

【0200】
(評価結果)
比較例1−1は、第一樹脂層が含む硬化性樹脂として感光性樹脂を含まなかったため、フォトリソグラフィ法による溝加工はできなかった。
比較例1−2及び2−1は、第一樹脂層に含有される無機充填材中の2μm超過の粗粒が、3.3%と大き過ぎるため、導体層壁面の算術平均粗さ(Ra)が大きすぎて、細線加工性に劣り、また、導体層壁面の10点平均粗さ(Rz)が大きすぎて、線間絶縁信頼性に劣っていた。さらに、得られた半導体装置は、温度サイクルを500サイクル後処理後の半導体素子の導通抵抗が、10%上がり、断面観察では、導体回路と樹脂間、ビアと樹脂間のいずれかに、マイクロボイド、剥離クラック発生していた。
一方、実施例1−1〜1−10及び実施例2−1〜2−10は、第一樹脂層は、少なくとも硬化性樹脂を含み、前記第二樹脂層は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含み、厚みが5〜30μmであるため、第一樹脂層に形成される導体層壁面の凹凸が適切になり、細線加工性及び線間絶縁信頼性に優れ、第二樹脂層における回路埋め込み性にも優れ、低熱膨張性であり、半導体装置は温度サイクルを500サイクル後処理後の半導体素子の導通抵抗異常がなく、断面観察での導体回路、ビアの異常もなかった。
また、参考例として、実施例2−1、2−2及び2−8で得られたサンプルで難燃性の評価を行ったところ、実施例2−1は難燃性に優れていたが、実施例2−2及び2−8では実施例2−1よりも難燃性が劣っていた。これは、実施例2−2は、エポキシ樹脂としてナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂ではなく、ビスA型エポキシ樹脂を用いたことに起因し、実施例2−8では、シアネート樹脂を用いなかったことに起因する。
【符号の説明】
【0201】
1 第一樹脂層
2 第二樹脂層
1a 第一キャリア材料
2a 第二キャリア材料
3 キャリアフィルム
4 キャリアフィルム
5 基材層
5a 基材
6 絶縁層
7 溝
8 導体層
9 内層回路基板
9a 導体回路
9b ガラスエポキシ基材
10 レーザー光
11 マスク
12 無電解めっき層
12’ 無電解めっき層
13 電解めっき層
13’ 電解めっき層
14 導体
15 別の絶縁層
100 樹脂シート
100’ 樹脂シート
101 ビルドアップ層
200 プリント配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側を形成する第一樹脂層と他面側を形成する第二樹脂層を含む多層構造を有する樹脂シートであり、
前記第一樹脂層は、少なくとも硬化性樹脂を含み、
前記第二樹脂層は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含み、厚みが5〜30μmであることを特徴とする、樹脂シート。
【請求項2】
少なくとも前記第一樹脂層の表面を高分子フィルム及び表面の10点平均粗さ(Rz)が4.0μm以下の銅箔よりなる群から選ばれるキャリアフィルムで被覆してなる、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
前記第一樹脂層が、さらに無機充填材を含み、当該無機充填材中の2μm超過の粗粒が500ppm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
前記第一樹脂層に含まれる無機充填材の含有量が1〜60重量%である、請求項3に記載の樹脂シート。
【請求項5】
前記第一樹脂層に含まれる無機充填材の平均粒径が0.01〜0.4μmである、請求項3又は4に記載の樹脂シート。
【請求項6】
前記無機充填材は球状のシリカである、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項7】
前記第一樹脂層が、無機充填材を含まない、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項8】
前記第一樹脂層に含まれる硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及び/又は感光性樹脂を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂およびベンゾシクロブテン樹脂の中から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項8に記載の樹脂シート。
【請求項10】
前記第二樹脂層は、エポキシ樹脂と、不定形の第1無機充填材と、前記第1無機充填材と平均粒子径が異なりかつその平均粒子径が10〜100nmである第2無機充填材とを含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項11】
前記第二樹脂層は、エポキシ樹脂と、平均粒子径1μm〜10μmのシリコーンゴム微粒子と、平均粒子径0.2μm〜5μmのベーマイト微粒子と、平均粒子径10nm〜100nmのシリカナノ粒子とを含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項12】
前記第一樹脂層と前記第二樹脂層の間に基材層を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項13】
前記第一樹脂層、前記基材層及び前記第二樹脂層からなる3層構造を有する、請求項12に記載の樹脂シート。
【請求項14】
前記基材層に用いられる基材がガラスクロスである、請求項12又は13に記載の樹脂シート。
【請求項15】
前記第一樹脂層の厚みが6〜28μmである、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項16】
前記第一樹脂層の厚さが、前記第一樹脂層の厚さ及び前記第二樹脂層の厚さを合計した厚さの15〜50%である、請求項15に記載の樹脂シート。
【請求項17】
全体厚みが60μm以下である、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項18】
前記請求項1乃至16のいずれか一項に記載の樹脂シートのみ、又は、少なくとも一面側の最外層の位置に当該樹脂シートをその第一樹脂層が表面側に向くように配置して積層されてなる積層板。
【請求項19】
前記請求項1乃至17のいずれか一項に記載の樹脂シートの硬化物からなる絶縁層、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝、及び、当該溝内部に設けられた導体層を有する導体路構造を備える電子部品。
【請求項20】
前記請求項1乃至17のいずれか一項に記載の樹脂シートの硬化物からなる絶縁層、当該絶縁層の第一樹脂層の表面に設けられた溝、及び、当該溝内部に設けられた導体層を有するビルドアップ層を少なくとも一層含むプリント配線板。
【請求項21】
前記溝の最大幅が1〜10μmである、請求項20に記載のプリント配線板。
【請求項22】
前記導体層と接する前記溝の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05〜0.45μmである、請求項20又は21に記載のプリント配線板。
【請求項23】
前記溝の深さが2〜20μmであり、
前記第一樹脂層の厚みが、前記溝の深さの1.2〜1.4倍である、請求項20乃至22のいずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項24】
前記ビルドアップ層で被覆される導体回路の高さが5〜20μmであり、
前記第二樹脂層の厚みが、前記導体回路の高さの1〜1.5倍である、請求項20乃至23のいずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項25】
前記請求項20乃至24のいずれか一項に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81586(P2012−81586A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226793(P2010−226793)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】