説明

樹脂シートの熱処理装置

【課題】樹脂シートの熱処理による寸法変化の評価を行う樹脂シートの製造装置を提供する。
【解決手段】ロール状の樹脂シート10を引き出し、熱処理して、再びロール状に巻き取る、という樹脂シートの熱処理装置であって、熱処理後の樹脂シートから帯状の検査シートを連続的に分離する切断分離部51と、切断分離後の検査シートに所定長さの表示機能を有するマークを付与するマーキング部52と、マーク付与後の検査シートを加熱する検査用加熱部53と、加熱後の検査シートを冷却する検査用冷却部54と、冷却後の検査シートのマークを検出するマーク検出部55と、マーク検出結果と前記所定長さとの関係から検査シートの収縮率を求める演算部58と、検査用冷却部54から巻取用のロール57まで検査シートを案内する検査シート巻取案内部56と、を備えたことを特徴とする樹脂シートの熱処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートの熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂シートの製造方法としては、従来から、溶融状態の熱可塑性樹脂材を直線状スリットを有するダイから押し出す押出成型法が知られている。この場合、ダイから押し出された熱可塑性樹脂材は、冷却ロールに巻き付けられて冷却され、これによって熱可塑性樹脂シートが成膜される。
【0003】
そして、熱に対する寸法安定性を高めるために、成膜後に熱可塑性樹脂シートに熱処理を行うことが一般的である。具体的には、樹脂シートの成膜の直後に、当該樹脂シートの軟化点温度以下に低下する前に、アニール処理を施す方法が知られている(特許文献1参照)。あるいは、成膜後の樹脂シートの表面にニップローラの凹凸形状を転写した後で、アニール処理を施す方法も知られている(特許文献2参照)。
【0004】
アニール処理によって行われる性能、特に寸法安定性は、樹脂シート材料のロット間の差異によって現れる成分の微妙な差異やアニール処理のための加熱炉内の雰囲気、例えば温度、湿度、風速等の条件によって影響される。従って、樹脂シート材料の成分の微妙な差異にも関わらず、アニール処理によって所定の安定性を得るためには、加熱炉内の雰囲気の条件を適宜修正する必要がある。そのためには、熱処理後の樹脂シートの寸法安定性について、迅速な評価をすることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−84996号公報
【特許文献2】特開2007−216482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、熱処理が完全に終了した後に、樹脂シートからサンプル小片を採取し、検査用装置を用いて寸法安定性を評価していた。このため、不良となった樹脂シートは、ロール全体について、再度熱処理するか、廃棄することが必要であり、材料コスト及び熱処理コストのロスが大きかった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、ロール状の樹脂シートを引き出して熱処理している途中の段階で、熱処理が済んだ部分の樹脂シートの寸法安定性を評価することができる樹脂シートの熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ロール状の樹脂シートを引き出し、熱処理して、再びロール状に巻き取る、という樹脂シートの熱処理装置であって、樹脂シートを搬送しながら熱処理する熱処理部と、ロール状の樹脂シートを引き出して前記熱処理部まで案内するシート導入部と、熱処理後の樹脂シートを搬送しながら冷却する冷却部と、冷却部から巻取用のロールまで樹脂シートを案内するシート巻取案内部と、 熱処理後の樹脂シートを熱処理部による樹脂シートの搬送方向に平行に切断して、帯状の検査シートを連続的に分離する切断分離部と、切断分離後の検査シートに所定長さの表示機能を有するマークを付与するマーキング部と、マーク付与後の検査シートを加熱する検査用加熱部と、加熱後の検査シートを冷却する検査用冷却部と、冷却後の検査シートのマークを検出するマーク検出部と、マーク検出結果と前記所定長さとの関係から、検査シートの収縮率を求める演算部と、検査用冷却部から巻取用のロールまで検査シートを案内する検査シート巻取案内部と、を備えたことを特徴とする樹脂シートの熱処理装置である。
【0009】
本発明によれば、ロール状の樹脂シートを引き出して熱処理している途中の段階で、熱処理が済んだ部分の樹脂シートの寸法安定性としての収縮率を評価することができる。そのため、ロール状の樹脂シートを引き出して熱処理している途中の段階で、当該熱処理の条件の適否について判断することができる。従って、熱処理の条件を迅速に修正することが可能で、材料コスト及び熱処理コストのロスを削減することができる。
【0010】
更に、前記切断分離部は、樹脂シートの幅方向端部を切断することが好ましい。これにより、従来廃棄処分していた端部を検査シートとして有効に活用でき、製品の有効面積を広く確保できる。
【0011】
好ましくは、前記熱処理部と前記シート導入部との間において、 熱処理前の樹脂シートを熱処理部による樹脂シートの搬送方向に平行に切断して、帯状の第二検査シートを連続的に分離する第二切断分離部と、切断分離後の第二検査シートに所定長さの表示機能を有するマークを付与する第二マーキング部と、マーク付与後の第二検査シートを加熱する第二検査用加熱部と、加熱後の第二検査シートを冷却する第二検査用冷却部と、冷却後の第二検査シートのマークを検出する第二マーク検出部と、マーク検出結果と前記所定長さとの関係から、第二検査シートの収縮率を求める第二演算部と、第二検査用冷却部から巻取用の第二ロールまで第二検査シートを案内する第二検査シート巻取案内部と、を更に備える。
【0012】
このような形態が採用されるならば、熱処理が済んだ部分の樹脂シートの寸法安定性を評価できることに加えて、熱処理が済む前の部分の樹脂シートの寸法安定性を評価することができる。従って、これらの寸法安定性の評価結果を対比することによって、より確実に熱処理の条件の適否について判断することができる。
【0013】
また、本発明は、ロール状の樹脂シートを引き出し、熱処理して、再びロール状に巻き取る、という樹脂シートの熱処理装置、によって熱処理される樹脂シートを検査する装置であって、 熱処理後の樹脂シートを熱処理部による樹脂シートの搬送方向に平行に切断して、帯状の検査シートを連続的に分離する切断分離部と、切断分離後の検査シートに所定長さの表示機能を有するマークを付与するマーキング部と、マーク付与後の検査シートを加熱する検査用加熱部と、加熱後の検査シートを冷却する検査用冷却部と、冷却後の検査シートのマークを検出するマーク検出部と、マーク検出結果と前記所定長さとの関係から、検査シートの収縮率を求める演算部と、検査用冷却部から巻取用のロールまで検査シートを案内する検査シート巻取案内部と、を備えたことを特徴とする樹脂シートの検査装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロール状の樹脂シートを引き出して熱処理している途中の段階で、熱処理が済んだ部分の樹脂シートの寸法安定性としての収縮率を評価することができる。そのため、ロール状の樹脂シートを引き出して熱処理している途中の段階で、当該熱処理の条件の適否について判断することができる。従って、熱処理の条件を迅速に修正することが可能で、材料コスト及び熱処理コストのロスを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態における熱処理装置の概略図である。
【図2】図1の熱処理装置における切断分離部を示す概略斜視図である。
【図3a】図1の熱処理装置におけるマーキング部によって付与されたマークの一例を示す概略図である。
【図3b】図1の熱処理装置におけるマーキング部によって付与されたマークの他の例を示す概略図である。
【図3c】図1の熱処理装置におけるマーキング部によって付与されたマークの更に他の例を示す概略図である。
【図4】熱処理温度毎の熱処理時間と収縮率との関係を表すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施の形態における熱処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における熱処理装置の概略図である。図2は、図1の熱処理装置における切断分離部を示す概略斜視図である。図3a乃至図3cは、それぞれ、図1の熱処理装置におけるマーキング部によって施されたマークの例を示す概略図である。図4は、熱処理温度毎の熱処理時間と収縮率との関係を表すグラフである。
【0017】
図1に示すように、樹脂シートの熱処理装置は、ロール状の樹脂シート10を引き出して熱処理部20まで案内するシート導入部11と、樹脂シート10を熱処理する熱処理部20と、熱処理をされた後の樹脂シート10を冷却する冷却部30と、冷却部30から巻取用のロールまで樹脂シート10を案内するシート巻取案内部40と、を備えている。この場合、シート導入部11は、樹脂シート巻出用ロール12と、樹脂シート巻出用ロール12から巻き出される樹脂シート10をガイドする樹脂シート引出用ガイドローラ13と、を有しており、シート巻取案内部40は、樹脂シート巻取用ロール41と、樹脂シート巻取用ロール41まで樹脂シート10をガイドする樹脂シート巻取用ガイドローラ42と、を有している。
【0018】
更に、本装置は、本発明の特徴として、熱処理後の樹脂シート10を熱処理部20による樹脂シート10の搬送方向に平行に切断して帯状の検査シート50を連続的に分離する切断分離部51と、切断分離された検査シート50に所定長さの表示機能を有する所定のマークを付与するマーキング部52と、マーク付与後の検査シート50を加熱する検査用加熱部53と、加熱された検査シート50を冷却する検査用冷却部54と、冷却後の検査シート50のマークを検出するマーク検出部55と、検査用冷却部54から巻取用のロールまで検査シート50を案内する検査シート巻取案内部56と、を備えている。この場合、検査シート巻取案内部56は、検査シート巻取用ロール57を有している。
【0019】
先ず、熱処理対象の樹脂シート10について説明する。樹脂シート10としては、種々の熱可塑性樹脂シートが適用可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、トリアセチルセルロース等のセルロース、ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド、並びにポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフイン等を挙げることができる。これらの樹脂に、適宜各種の添加剤や添加樹脂を混合して用いてもよい。更に、太陽電池の封止膜として一般に使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等も挙げることができる。樹脂シート10の幅は特に限定されないが、1.0m〜2.5mの範囲が好ましい。樹脂シート10がエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である場合、樹脂シート10の厚さは、100〜600μmの範囲内であることが、熱処理による均一な寸法変化を得るために好ましい。
【0020】
次に、熱処理部20は、本実施の形態においては、加熱炉内で温風によって熱処理を行うタイプの装置として構成されている。もっとも、他の態様として、温水シャワーや温水バスを使用した態様も採用され得る。熱処理温度は、樹脂シート10がエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である場合、60℃〜80℃の範囲内であることが好ましい。80℃を超えると、樹脂シートが溶けて搬送に支障をきたす。一方、60℃未満であると、後に図4を用いて説明されるように、熱処理時間を長くしても樹脂シート製品としての収縮率を十分に低下させることができない。収縮率とは、樹脂シート製品の出荷後の熱加工時の熱収縮の比率を意味する指標であり、「収縮した長さ/元の長さ」を%表示したものである。例えば、所定のマークの熱加工前の長さがLであって、熱加工によってL‘に変化する時の収縮率(%)は、(L−L’)/L×100である。
【0021】
ここで、図4は、熱処理部20での熱処理時間と、それによって得られる収縮率変化と、の関係を熱処理温度毎に表したグラフである。図4に示すように、熱処理が行われなければ、その後の熱加工時の樹脂シートの収縮率は60%という高い値である。熱処理部20で熱処理が行われることにより、熱処理時間に応じて、収縮率は下がっていく。例えば、80℃での熱処理が100秒間行われると、収縮率は10%にまで下がる。当該熱処理条件では、さらに熱処理を継続しても、収縮率の低減効果はさらにはほとんど得られない。達成するべき収縮率は、樹脂シートの製品仕様に応じて決まるので、それに応じて、熱処理温度と熱処理時間とが決定される。必要以上に熱処理を行うことは、コストデメリットがあるので、避けるべきである。
【0022】
また、樹脂シート材料のロット間の差異によって現れる成分の微妙な差異やアニール処理のための加熱炉内の雰囲気、例えば温度、湿度、風速等の条件によっても、得られる収縮率に差異が生じる。そのため、これらの要因を考慮して温度条件を決定することが重要である。
【0023】
次に、冷却部30は、本実施の形態においては、大気温度下で空冷冷却を行う自然冷却装置として構成されている。もっとも、他の態様として、水冷シャワーや水冷バスを使用した態様も採用され得る。本実施の形態では、冷却温度は、樹脂シート10がエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である場合、20℃〜30℃の範囲内であることが好ましい。30℃を超えると、冷却時間が長くかかるという問題がある。一方、20℃未満であると、外気の湿度条件にもよるが、結露を生じるおそれがある。
【0024】
切断分離部51は、図2に示すように、切断部51aと、ガイドローラ51bと、により構成される。切断部51aは、図2に示すように、金属円盤の外周部に刃を設けた丸刃で構成されている。もっとも、切り出しナイフ刃や超音波切断機等が採用されてもよい。
【0025】
次に、マーキング部52において付与されるマークは、具体的には、図3a、図3b、図3cに示すように、「所定長さ」の情報を黒い太い線分の長さで表現した線分マーク52a(図3a)、「所定長さ」の情報を2つの大きな黒丸の中心の間隔(中心間距離)として表現した黒丸間隔マーク52b(図3b)、直交する2軸方向の各々の「所定長さ」の情報を直交する2軸の黒い太い線分の長さで表現した直交線分マーク52c(図3c)、等が考えられる。
【0026】
また、マークを付与する形態としては、種々の形態が考えられるが、熱に対する安定性の観点からはインクジェット式の印刷が好ましい。例えば、線分マーク52aを「所定長さ」にて付与するためには、樹脂シート10の搬送速度をガイドローラ51bの回転軸に取り付けたロータリーエンコーダの信号から演算によって取得して、当該速度によって前記「所定長さ」を除算した値をインクジェットヘッドからのインク吐出時間として、樹脂シート10上へ印刷すればよい。これに代替的ないし付加的に、マーキング部52の後にマーク長さ測定部52mを設けて、樹脂シート上に印刷されたマークの熱処理前の長さを測定するようにしておけば、印刷時の印刷制御の精度自体がさほど高くなくても、高精度に収縮率を計算することができる。
【0027】
次に、検査用加熱部53の態様としては、加熱炉内での温風、温水シャワー、又は、水槽に温水を入れた温水バスを使用した態様等が挙げられるが、特に温水バスを使用した熱処理が、効率的な加熱ができるため好ましい。熱処理温度は、熱処理部20と同様に、樹脂シート10がエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である場合、60℃〜80℃の範囲内であることが好ましい。もっとも、所望の収縮率までより短時間で到達させるためには、なるべく上限値である80℃に近い温度を採用すべきである。熱処理部20よりも高い温度が採用される場合、急速加熱処理が実施されることとなる。
【0028】
次に、検査用冷却部54の態様としては、自然冷却、冷水シャワー、又は、水槽に冷水を入れた冷水バスを使用した態様等が挙げられるが、特に、冷水バスを使用した冷却処理が、効率的な冷却ができるため好ましい。冷却温度は、冷却部30と同じ20℃〜30℃の範囲の他、急速冷却処理を実施するためには冷却部30より低い温度、具体的には0℃〜20℃の範囲、も利用できる。検査シート50においては、結露が発生しても構わないからである。
【0029】
次に、マーク検出部55としては、カメラ撮影による画像処理装置、又は、レーザセンサを使用した計測装置等が用いられ得る。
【0030】
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0031】
図1に示すように、樹脂シート10は、ロール状の樹脂シート巻出用ロール12から樹脂シート引出用ガイドローラ13によって引き出されて、熱処理部20まで案内される。次に、樹脂シート10は、例えば水平姿勢にて搬送されながら熱処理部20において熱処理されて、その後、例えば水平姿勢にて搬送されながら冷却部30によって冷却される。そして、冷却された樹脂シート10は、樹脂シート巻取用ガイドローラ42によって樹脂シート巻取用ロール41まで案内される。
【0032】
熱処理後の樹脂シート10は、切断部51aにより、熱処理部20による樹脂シート10の搬送方向に平行に切断されて、帯状の検査シート50が連続的に分離される。好ましくは、樹脂シート10の幅方向端部が切断されることが望ましい。これにより、従来廃棄処分されていた端部が、検査シート50として有効に活用でき、製品の有効面積を広く確保できる。
【0033】
検査シート50は、ガイドローラ51bを介して、マーキング部52へ案内される。その後、検査シート50は、マーキング部52によって、「所定長さ」のマークが施される。そして、検査シート50は、例えば水平姿勢にて搬送されながら検査用加熱部53により加熱されて、その後、例えば水平姿勢にて搬送されながら検査用冷却部54によって冷却される。その後、検査シート50は、搬送されながらマーク検出部55によってマークが検出される。検査シート50は、その後、検査シート巻取用ロール57によって巻き取られる。
【0034】
そして、マーク検出部55による検出の結果から、演算部58によって、前記所定長さとの関係に基づいて、検査シート50の収縮率が求められる。具体的には、前述した通り、「所定長さ」のLが、検査用加熱部53による加熱によってL‘に変化した時の収縮率(%)は、(L−L’)/L×100である。直交線分マーク52cが採用される際には、樹脂シート10の搬送方向と垂直な方向の(W−W’)/W×100も求められる(図3c参照)。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、ロール状の樹脂シート10を引き出して熱処理している途中の段階で、熱処理が済んだ部分の樹脂シート10の寸法安定性を評価することができる。具体的には、検査シート50に検査用加熱部53によって加熱処理を施すことによって、熱処理部20による熱処理の結果として得られた収縮率を実際に確認ないし評価することができる。これにより、ロール状の樹脂シート10を引き出して熱処理している途中の段階で、当該熱処理の条件の適否について判断することができる。従って、熱処理の条件を迅速に修正することが可能で、材料コスト及び熱処理コストのロスを削減することができる。
【0036】
なお、熱処理に際して、樹脂シート10及び検査シート50に微張力(1〜10N/m)をかけた状態で処理を行うことが好ましいことが、経験上知見されている。樹脂シート10に微張力を付与するためには、供給側の樹脂シート引出用ガイドローラ13の周速を、巻取側の樹脂シート巻取用ガイドローラ42の周速より早く設定する(例えば1.05〜1.2倍程度)ことが有効である。この微張力は、熱処理後の樹脂シート10が巻取りによる張力によって寸法変化することをも防止する。一方、検査シート50に微張力をかけるためには、巻取側の検査シート巻取用ロール57のローラ速度を調整して、供給側の樹脂シート引出用ガイドローラ13の周速が、巻取側の検査シート巻取用ロール57の周速より早くなる(例えば1.05〜1.2倍程度)ように設定することが有効である。
【0037】
なお、切断分離部51と、マーキング部52と、検査用加熱部53と、検査用冷却部54と、マーク検出部55と、検査シート巻取用ロール57とを、樹脂シートの検査装置として、既存の樹脂シートの熱処理装置に対して取り外し可能に設置するということも、本発明の利用態様の一つである。
【0038】
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0039】
図5は、本発明の第2の実施の形態における熱処理装置の概略図である。図5において、熱処理装置は、熱処理部20と樹脂シート引出用ガイドローラ13との間において、熱処理をされる前の樹脂シート10から、帯状の第二検査シート60を連続的に分離する第二切断分離部61と、切断分離された第二検査シート60に所定のマークを付与する第二マーキング部62と、第二検査シート60を加熱する第二検査用加熱部63と、加熱された第二検査シート60を冷却する第二検査用冷却部64と、冷却後の第二検査シート60のマークを検出する第二マーク検出部65と、第二検査シート60を巻き取る第二検査シート巻取用ロール67と、第二検査シート60の収縮率を演算する第二演算部68と、を備えている点が異なるのみで、その他の構成は、第1の実施形態と略同様である。
【0040】
図5において、図1に示す第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。更に、切断分離部51と第二切断分離部61、マーキング部52と第二マーキング部62、検査用加熱部53と第二検査用加熱部63、冷却部54と第二検査用冷却部64、マーク検出部55と第二マーク検出部65、検査シート巻取用ロール57と第二検査シート巻取用ロール67は、構成が同一のため、詳細な説明は省略する。
【0041】
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0042】
図5に示すように、熱処理前の樹脂シート10が、第二切断部61aにより、熱処理部20による樹脂シート10の搬送方向に平行に切断されて、帯状の第二検査シート60が連続的に分離される。第二検査シート60は、第二ガイドローラ61bを介して、第二マーキング部62へ案内される。その後、第二検査シート60は、第二マーキング部62によって所定長さの表示機能を有するマークが施される。そして、第二検査シート60は、例えば水平姿勢にて搬送されながら第二検査用加熱部63により加熱されて、その後、例えば水平姿勢にて搬送されながら第二検査用冷却部64によって冷却される。その後、第二検査シート60は、搬送されながら第二マーク検出部65によってマークを検出される。第二検査シート60は、その後、第二検査シート巻取用ロール66によって巻き取られる。
【0043】
そして、第二マーク検出部65による検出の結果から、第二演算部68(演算部58と共通でもよい)によって、前記所定長さとの関係に基づいて、第二検査シート60の収縮率が求められる。
【0044】
以上のように、本実施の形態によれば、熱処理が済んだ部分の樹脂シート10の寸法安定性を評価できることに加えて、熱処理前の樹脂シート10の寸法安定性をも同時平行的に評価することができる。従って、これらの寸法安定性の評価結果を対比することによって、より確実に熱処理の条件の適否について判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
10 樹脂シート
11 シート導入部
12 樹脂シート巻出用ロール
13 樹脂シート引出用ガイドローラ
20 熱処理部
30 冷却部
40 樹脂シート巻取案内部
41 樹脂シート巻取用ロール
42 樹脂シート巻取用ガイドローラ
50 検査シート(切断された樹脂シートの端部)
51 切断分離部
51a 切断部
51b ガイドローラ
52 マーキング部
52a 線分マーク
52b 黒丸間隔マーク
52c 直交線分マーク
52m マーク長さ測定部
53 検査用加熱部
54 検査用冷却部
55 マーク検出部
56 検査シート巻取案内部
57 検査シート巻取用ロール
58 演算部
60 第二検査シート
61 第二切断分離部
61a 第二切断部
61b 第二ガイドローラ
62 第二マーキング部
63 第二検査用加熱部
64 第二検査用冷却部
65 第二マーク検出部
66 第二検査シート巻取案内部
67 第二検査シート巻取用ロール
68 第二演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の樹脂シートを引き出し、熱処理して、再びロール状に巻き取る、という樹脂シートの熱処理装置であって、
樹脂シートを搬送しながら熱処理する熱処理部と、
ロール状の樹脂シートを引き出して前記熱処理部まで案内するシート導入部と、
熱処理後の樹脂シートを搬送しながら冷却する冷却部と、
冷却部から巻取用のロールまで樹脂シートを案内するシート巻取案内部と、
熱処理後の樹脂シートを熱処理部による樹脂シートの搬送方向に平行に切断して、帯状の検査シートを連続的に分離する切断分離部と、
切断分離後の検査シートに所定長さの表示機能を有するマークを付与するマーキング部と、
マーク付与後の検査シートを加熱する検査用加熱部と、
加熱後の検査シートを冷却する検査用冷却部と、
冷却後の検査シートのマークを検出するマーク検出部と、
マーク検出結果と前記所定長さとの関係から、検査シートの収縮率を求める演算部と、
検査用冷却部から巻取用のロールまで検査シートを案内する検査シート巻取案内部と、
を備えたことを特徴とする樹脂シートの熱処理装置。
【請求項2】
前記切断分離部は、樹脂シートの幅方向端部を切断する
ことを特徴とする請求項1記載の樹脂シートの熱処理装置。
【請求項3】
前記熱処理部と前記シート導入部との間において、
熱処理前の樹脂シートを熱処理部による樹脂シートの搬送方向に平行に切断して、帯状の第二検査シートを連続的に分離する第二切断分離部と、
切断分離後の第二検査シートに所定長さの表示機能を有するマークを付与する第二マーキング部と、
マーク付与後の第二検査シートを加熱する第二検査用加熱部と、
加熱後の第二検査シートを冷却する第二検査用冷却部と、
冷却後の第二検査シートのマークを検出する第二マーク検出部と、
マーク検出結果と前記所定長さとの関係から、第二検査シートの収縮率を求める第二演算部と、
第二検査用冷却部から巻取用の第二ロールまで第二検査シートを案内する第二検査シート巻取案内部と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の樹脂シートの熱処理装置。
【請求項4】
ロール状の樹脂シートを引き出し、熱処理して、再びロール状に巻き取る、という樹脂シートの熱処理装置、によって熱処理される樹脂シートを検査する装置であって、
熱処理後の樹脂シートを熱処理部による樹脂シートの搬送方向に平行に切断して、帯状の検査シートを連続的に分離する切断分離部と、
切断分離後の検査シートに所定長さの表示機能を有するマークを付与するマーキング部と、
マーク付与後の検査シートを加熱する検査用加熱部と、
加熱後の検査シートを冷却する検査用冷却部と、
冷却後の検査シートのマークを検出するマーク検出部と、
マーク検出結果と前記所定長さとの関係から、検査シートの収縮率を求める演算部と、
検査用冷却部から巻取用のロールまで検査シートを案内する検査シート巻取案内部と、
を備えたことを特徴とする樹脂シートの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240405(P2012−240405A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116171(P2011−116171)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】