説明

樹脂シートの製造方法

【課題】切り粉やバリを発生させずに、厚手のシートを連続的に加工できる樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】溶融した樹脂をダイ12からシート状に押し出す押出工程112と、押し出した樹脂シート14に対して、少なくとも一方に凸形状が形成された型ローラ16およびニップローラ18を用い、樹脂シート14を型ローラ16とニップローラ18で挟み、凸形状15を転写し切断溝26を形成し、冷却固化することによりシートを成形するシート成形工程114と、樹脂シート14を型ローラ16から剥離する剥離工程115と、切断溝26を、搬送方向に沿って超音波カッター174で切断する切断工程124と、を有し、樹脂シート14の切断部分の温度が、樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−50)℃以上(Tg+100)℃以下であることを特徴とする樹脂シートの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートの製造方法に係り、特に、各種表示装置の背面に配される導光版や各種光学素子に使用するのに好適な樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂シートの押出成形においては、Tダイから押し出された溶融樹脂シートは冷却ローラにより冷却され、その後、引取ローラにより引き取られながら搬送部での空冷により冷却・固化し、切断機で幅方向に切断されてシート状に成形される。このようにして得られたシートの幅方向の端部は、端の影響で反りや残留歪み、厚み変動などが発生しやすいため、シートの幅方向の端部を切断して所望の幅のシート状成形物を得る。切断された端部は、粉砕機により粉砕屑とされて押出機のホッパーに投入されて再利用される。
【0003】
特に、幅方向の厚み分布が大きい偏肉樹脂シートの押出成形の場合には、幅方向での温度分布も非常に大きくなるため、特に端部の影響が反りの大きな原因となる。さらに後工程で熱処理により反りを矯正する場合にも、シートの端部があると反りが直りにくいため、端部を切断する必要があった。
【0004】
端部を切断する場合は、通常は回転刃が用いられるが、回転刃で切断する場合には、切り粉が発生し、この切り粉が製品に付着して不良の発生原因となっていた。レーザーカッターを用いれば切り粉の発生を抑制することができるが、導入コストが高く、また、レーザーカッターでは、切断時にガスが発生したりシートが燃えたりする問題があった。
【0005】
この対策として、下記の特許文献1〜3では、外部を加熱してカッター刃などで切断することが開示されている。裁断部分を加熱することにより、切断性を向上させ、切断により切り粉や切り屑などの発生を抑制し、良好な切断処理部を得ることができた。
【0006】
また、樹脂の切断にウォータージェットが用いられている。ウォータージェットは、熱の影響がないため、材料に歪みが生じたり、熱により変形したりすることなく使用することができる。また、切り粉の発生もなく、切断することができる。
【特許文献1】特開平1−281896号公報
【特許文献2】特開平9−85680号公報
【特許文献3】特開2005−305637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されている方法では、1mm以下の薄手のフィルムに対しては切り粉の発生を抑制するのに効果的であるが、1mm以上の厚手のシートでは切断時に削れる量が多くなるため切り粉やバリが発生しやすくなる。そのため、発生した切り粉がシート表面に付着して押し傷など表面故障の原因となり、良好なシートを得ることは困難であった。バリは押し傷などの表面故障の原因にはなりにくいが、最終的な製品形態として無いことが望ましい。また、特にPMMAなどの厚手のシートの場合は、切断すると切断部から亀裂が生じてしまい、良好なシートを得ることは困難であった。また、ウォータージェットは導入コスト・ランニングコストが高く、実用化は困難であった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、切り粉やバリを発生させずに、厚手のシートを連続的に加工できる樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出工程と、押し出した樹脂シートに対して、型ローラおよびニップローラの少なくとも一方の表面の幅方向の両端部に凸形状が形成された型ローラおよびニップローラを用い、前記樹脂シートを前記型ローラと前記ニップローラで挟み、前記凸形状を前記樹脂シートに転写し切断溝を形成し、冷却固化することによりシートを成形するシート成形工程と、前記樹脂シートを前記型ローラから剥離する剥離工程と、前記切断溝を、搬送方向に沿って超音波カッターで切断する切断工程とを有し、前記樹脂シートの切断部分の温度が、樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−50)℃以上(Tg+100)℃以下であることを特徴とすることを特徴とする樹脂シートの製造方法を提供する。
【0010】
請求項1によれば、凸形状が形成された型ローラまたはニップローラを用いて、樹脂シートに凸形状を転写し、切断溝を形成しているので、この切断溝を超音波カッターを用いて切断することにより、厚みのある樹脂シートに対しても、切断溝の厚みを薄くすることができるので、切り粉の発生を抑制して、樹脂シートの端部の切断を行うことができる。ニップローラ以降の工程で溝加工することも可能であるが、樹脂が十分に高温の状態である方が加工しやすいため、型ローラまたはニップローラで溝加工することが好ましい。
【0011】
さらに、切断工程において、超音波カッターを用いて行っているため、切り粉を発生させることなく、樹脂シートの端部の切断を行うことができる。また、樹脂シートの切断部分の温度範囲を上記範囲とすることにより切断部の樹脂を柔らかくすることができるので、PMMAなどの樹脂シートでも、亀裂を発生させずに切断することができる。
【0012】
請求項2は請求項1において、前記樹脂シートは幅方向に厚み分布を有し、最厚部と最薄部の厚みの差が0.5mm以上5mm以下であることを特徴とする。
【0013】
幅方向に厚み分布を有するシートは、冷却工程において、最厚部と最薄部で温度差が大きくなるので、反りの発生の原因となる。したがって、反りの抑制または矯正のため、シートの端部を切断することが重要となってくる。本発明においては、切り粉を発生させることなく、端部を切断することができるので、幅方向に厚み分布を有し、その最厚部と最薄部の厚みの差が上記範囲である樹脂シートの製造に対して特に効果的に行うことができる。
【0014】
請求項3は請求項2において、前記シート幅方向における厚み分布が200mm以上のピッチの周期性を有し、周期形状の継ぎ目を前記超音波カッターで搬送方向に沿って切断することを特徴とする。
【0015】
請求項3によれば、厚み分布が周期性を有するときに、この周期形状の継ぎ目を超音波カッターで切断することにより、周期形状の継ぎ目の部分についても、切り粉が発生することなく、シートを切断することができるので、良好なシートを製造することができる。
【0016】
請求項4は請求項1から3いずれかにおいて、前記樹脂シートの前記切断溝の厚みが1mm以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項4によれば、樹脂シートの切断溝の厚みを1mm以下とすることにより、樹脂シートの切断部のシートの厚みを薄くすることができるので、切り粉の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂フィルムの製造方法によれば、型ローラまたはニップローラに形成された凸形状をシート成形工程において、樹脂シートに転写することにより切断溝を形成し、この切断溝を切断工程において切断しているため、樹脂シートの切断部分を薄くすることができるので、切り粉の発生を抑制し、良好なシートの製造を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に従って、本発明に係る樹脂シートの製造方法の好ましい実施の形態について説明する。以下は、樹脂シートの幅方向に厚み分布を有する偏肉樹脂シートを例として説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る樹脂シートの製造方法の全体工程図であり、図2は各工程における装置構成を示す概念図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の樹脂シートの製造方法は、主として、原料の計量や混合を行う原料工程100、溶融した樹脂を連続してシート状(帯状)に押し出す押出工程112と、押し出した樹脂シート14を成形しながら冷却して固化するシート成形工程114と、樹脂シート14を剥離する剥離工程115と、固化した樹脂シート14を徐冷する徐冷工程116と、樹脂シート14を所定サイズ(長さ・幅)に裁切断する裁断・切断工程124と、裁切断された樹脂シート14を積載する積載工程126とで構成される。
【0022】
以下、図2を参照に本発明が適用される樹脂シートの製造装置の主要な構成を説明する。
【0023】
図2に示すように、原料工程100では、原料サイロ128(又は原料タンク)及び添加物サイロ130(又は添加物タンク)から自動計量機132に送られた原料樹脂および添加物が自動計量され混合器134で原料樹脂と添加物が所定比率になるように混合される。
【0024】
本発明に適用される原料樹脂の樹脂材料としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられる。
【0025】
また、これらの熱可塑性樹脂に光拡散粒子を含んでもよく、光拡散粒子としては、例えば、シリコーンやシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウムなどの無機粒子やポリメチルメタクリレート粒子などが挙げられる。散乱粒子を添加する場合、最初に、原料樹脂に散乱粒子を所定濃度よりも高濃度に添加されたマスターペレットが造粒機で製造される。次いで、マスターバッチ方式を好適に採用することで、散乱粒子を所定濃度よりも高濃度に添加されたマスターペレットと散乱粒子が添加されていないベースペレットとが混合器134で所定比率混合される。散乱粒子以外の添加物を添加する場合も同様である。
【0026】
原料工程100で適切に計量・混合された原料樹脂は押出工程112に送られる。
【0027】
押出工程112では、混合器134で混合された原料樹脂がホッパー136を介して押出機138に投入される。原料樹脂が押出機138により混練りされながら溶融される。押出機138は単軸式押出機及び多軸式押出機の何れでもよく、押出機138の内部を真空にするベント機能を含むものが好ましい。押出機138で溶融された原料樹脂は、スクリューポンプ又はギアポンプなどの定量ポンプ140により供給管142を介してダイ12(例えばTダイ)に送られる。ダイ12からシート状に押し出された樹脂シート14は次にシート成形工程114に送られる。
【0028】
シート成形工程114では、ダイ12から押し出された樹脂シート14が、型ローラ16とニップローラ18とで挟まれる。樹脂シート14が幅方向に厚み分布を持つ形状に成形されながら、冷却・固化される。
【0029】
本発明においては、型ローラ16およびニップローラ18のいずれか一方の表面に、凸形状15が形成されたローラを用いる。凸形状15は、樹脂シートに対して幅方向の両端に形成されている。図3は型ローラ16の一例を示す側面図である。また、図4は、切断工程の前の樹脂シートの一例を示す断面図である。
【0030】
図3(a)に示す型ローラ16を用いて樹脂シートを成形することにより、図4(a)に示すように、幅方向に厚み分布を有し、両端に切断溝26が形成された樹脂シート14を製造することができる。図4(a)は幅方向の厚み分布が、中央部が厚肉で両端が薄肉の形状の樹脂シートである。また、図3(b)に示す型ローラ16を用いて、樹脂シートを成形することにより、図4(b)に示すように、幅方向に厚肉の部分が2箇所備える樹脂シート14を成形することができる。また、厚肉の部分は、特に限定されず製造条件により適宜変更が可能であり、3箇所以上有する樹脂シートの製造も可能である。幅方向に厚み分布がある樹脂シートは、最厚部と最薄部との厚みの差が、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以上3mm以下である。また、図4(b)に示すように、厚肉の部分が2箇所以上ある場合のピッチLは200mm以上の周期性を有することが好ましく、より好ましくは400mm以上である。そして、このピッチの周期形状の継ぎ目の位置にも切断溝26を設けることにより、後の切断工程において、搬送方向に切断し、所望のサイズとすることができる。
【0031】
また、凸形状が形成されたニップローラ18を用いて樹脂シートを成形することにより、図4(c)に示すように、樹脂シートの下面(平坦な面を有する面)に切断溝26が形成された樹脂シート14を製造することができる。樹脂シートの上面に切断溝26を形成しても、下面に切断溝26を形成しても、切断箇所の樹脂フィルムの厚さが薄くすることができるので、同様の効果を得ることができる。
【0032】
樹脂シート14は、シート成形工程114で所定の形状に成形されるが、樹脂シート14の両縁部は、残留歪みが発生しやすいため切断される。特に、樹脂シート14の幅方向に厚み分布を有する場合は、樹脂シート14の両端部は、シートの厚みが薄いため、シート中央部の厚みが厚い部分との温度差が大きくなり、反りの原因となる。そこで、樹脂シート14の両端部を切断する必要がある。切断部分は、樹脂シート14の両端部各20〜50mm切断することが好ましく、切断溝もこの位置に設けることが好ましい。また、搬送中にこの切断溝を目印として樹脂シート14のセンターを特定することで、搬送中の樹脂シート14の蛇行を防止することもできる。さらに、同様の溝を樹脂シート14の製品幅外の位置に加工しておくことで、後工程において樹脂シート14の寸法の目印とすることもできる。
【0033】
また、型ローラは、図3に示すように型ローラ自体に凸形状15を設ける構成とすることもでき、図5に示すように、凸形状15の大きさ、太さなどにより変更可能とできるように、取り外し可能とすることもできる。図5は、凸形状部を取り外し可能とした型ローラ16の側面図(a)および断面図(b)である。凸形状部を取り外し可能とするためには、図5に示すように、型ローラ本体16aの幅方向に凸形状15を有するキャップ16bをはめこみ、ネジなどの固定具17で固定することにより、型ローラ16を構成することができる。
【0034】
形成される切断溝の形状は特に限定されず、四角形状、三角形状、半円状などの形状を挙げることができるが、四角形状であることが好ましい。また、切断溝の幅は、後の切断工程で用いられる超音波カッターの刃のサイズにより、変更可能であるが、0.2mm以上5mm以下であることが好ましく、0.4mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
また、樹脂シートの切断溝の厚みは1mm以下とすることが好ましい。切断溝の厚みを1mm以下とすることにより、切り粉の発生を抑制して切断することができる。
【0036】
固化した樹脂シート14は剥離ローラ20で剥離される(剥離工程)。シート成形工程114を経た樹脂シート14は次に徐冷工程116に送られる。
【0037】
徐冷工程(又はアニーリング工程)116は、剥離ローラ20の下流における樹脂シート14の急激な温度変化を防止するために設けられたものである。樹脂シート14に急激な温度変化が生じた場合、例えば、樹脂シート14の表面近傍が弾性状態になっているにも拘わらず樹脂シート14の内部が塑性状態となり、この部分の硬化による収縮で樹脂シート14の表面形状が悪化するおそれがある。また、樹脂シート14の表裏面に温度差を生じた場合、樹脂シート14に反りが生じ易い。特に、図4に示すシート断面形状のように幅方向において厚み分布がある場合、幅方向での温度分布が大きくなり樹脂シート14に反りが発生しやすくなる。
【0038】
徐冷工程116には、入口と出口を有するトンネル状の徐冷ゾーン154(又はアニーリングゾーン)が設けられている。
【0039】
徐冷ゾーン154の前半部に設ける加熱手段としては、複数のノズルより温度制御されたエア(温風)を樹脂シート14に向けて噴出させる構成、ニクロム線ヒータ、赤外線ヒータ、誘電加熱手段等により、樹脂シート14を加熱する構成等、公知の各種手段を採用することができ、樹脂シートが急冷されるのを防ぐことができる。
【0040】
また、徐冷ゾーン154の前半部には、樹脂シート14が徐冷搬送される際に、搬送を阻害しないように樹脂シート14に外力を加えて、樹脂シート14を本来の反りのない形状に保持するため、形状保持手段(不図示)を設けることができる。
【0041】
徐冷工程116を経た樹脂シート14は切断工程124に送られる。切断工程124では、樹脂シート14の両縁部に形成された切断溝を、搬送中に超音波カッター174により切断される。
【0042】
また、切断手段として超音波カッターを用いているため、切断時の切り粉の発生を抑制することができるので、シートへの不純物の付着の少ない良好なシートを製造することができる。また、型ローラ16またはニップローラ18に形成された凸部側面の表面を鏡面にすることで、樹脂シート14に転写される端部側面を鏡面にし、良好なシート端面を得ることができる。樹脂シート14の端面の表面粗さはRy≦5μmが好ましく、Ry≦3μmであることがさらに好ましい。
【0043】
また、樹脂シート14に転写された切断溝を検知し、切断位置の変化に追従して超音波カッター174が移動して所定の切断位置を切断することで、搬送中に樹脂シート14が蛇行した場合でも所望の形状にシートを加工することができる。
【0044】
この時、樹脂シートの切断部分の温度が、樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−50)℃以上(Tg+100)℃以下であり、好ましくは(Tg−30)℃以上(Tg+50)℃以下である。樹脂シートの切断部分の温度を上記範囲として切断することにより、樹脂シートの切断部分を柔らかくすることができるので、切り粉の発生を抑制することができる。
【0045】
切断された樹脂シート14の一部は回収ボックス176で回収され、回収された樹脂は廃棄又は再利用される。
【0046】
次に本発明に用いられる超音波カッターについて説明する。超音波カッターは、超音波振動を与えて摩擦を減少して切り込むことができ、断面に熱がかかるため、樹脂が溶融し、切り粉の発生を抑制し切断するカッターである。
【0047】
切断条件としては、発振周波数が20kHz以上であることが好ましく、より好ましくは40kHz以上であることが好ましい。また、出力が20W以上であることが好ましく、50W以上であることがより好ましい。切断する樹脂シートの搬送速度は、遅すぎると切断時の熱により切断したシートが再溶着してしまい、早過ぎると良好な切断面を得ることができないため、1m/min以上20m/min以下であることが好ましい。
【0048】
超音波カッターの材質としては、切断した樹脂がカッターに付着せず、長時間の切断にも耐えられる耐摩耗性を有することが好ましく、このような材質としては、ハイス、ステンレス、超硬、ダイヤモンド、チタンなどを挙げることができる。耐摩耗性を向上するためにDLCやSiN、CrNなどで表面を被覆してもよい。連続使用により切断屑が刃に付着して加工性能に影響を及ぼさないように、ブラシや圧縮空気などで物理的に除去することもできる。
【0049】
また、超音波カッターの形状としては、斜め刃、丸刃、鋸刃などを挙げることができる。刃先の形状は片刃でも両刃でも切断は可能だが、製品側の切断面へのバリの発生を抑制するためには片刃が良い。また、超音波カッターの刃が切断中に製品側に接する刃面を、樹脂シートの進行方向に対して平行となるように設置し、切断することが好ましい。樹脂シートの製品側の面と、超音波カッターの刃面を平行とすることにより、製品側の切断面のバリの発生を抑制することができる。超音波カッターの刃の厚みは、切断時に削れる量を少なくするため、刃の厚みは1mm以下であることが好ましく、0.6mm以下であることがさらに好ましい。
【0050】
また、使用により超音波カッターの刃が熱を有し、樹脂フィルムが溶融し、切断面が悪化するため、刃の冷却構造も重要である。刃の冷却構造としては、圧縮空気で空冷する構造が好ましい。
【0051】
図6に超音波カッター174が切断溝26に接触する図を示す。図6(a)が、切断溝26の幅より超音波カッター174の刃の幅が狭い状態である、(b)は、切断溝26の幅より超音波カッター174の刃の幅が広い状態である。本発明においては、いずれの場合においても、効果を発揮できるが、図6(b)のように、超音波カッター174の刃の幅を広くすることにより、樹脂シート14の切断面が切断溝により形成される面と切断工程により形成される面とで段差が形成されないため、後の加工工程を省略することができる。
【0052】
また、切断工程124においては、樹脂シート14を搬送方向と直交する方向に沿って切断し、所定長さに切り揃える工程を有することもできる。また、幅方向に厚みのある偏肉樹脂シートを例に説明したが、平版の樹脂シートにも適用することができる。
【0053】
樹脂シート14を所定長さに切り揃える(搬送方向と直交する方向に切断する)には、樹脂シート14の端部を切断する場合と同様に、超音波カッター174を用いることが好ましい。また、樹脂シートの切断部分の温度も、樹脂シートの端部を切断する場合と同様の温度とすることが好ましい。このようにすることで、樹脂シート14の端部を切断する場合と同様に切り粉の発生を抑制して切断することができる。
【0054】
樹脂シート14を搬送方向と直交する方向に沿って切断する場合は、超音波カッターを搬送方向に樹脂シート14の進行速度と同期して移動させることにより、樹脂シート14を搬送しながらの切断が可能となる。つまり、オンラインで樹脂シート14を所定長さに切り揃えることが可能となる。
【0055】
切断された枚葉の樹脂シート14は、ローラ194により駆動されるコンベアベルト196で、次の処理に搬送されると共に、樹脂シート14の幅方向から鼓状の部材192により走行中にズレない様に押さえられている。
【0056】
また、搬送方向に沿って切断するための切断機についても、樹脂シート14の端部の切断、搬送方向に対して垂直に切断する場合と同様に、超音波カッター174を用いることができる。
【0057】
本発明においては、超音波カッター174で切断された樹脂シート14の切断面は、切り口が滑らかであるため、導光板として使用する場合に必要な端面加工の工程を省略することができる。また、幅方向(搬送方向と直交する方向)の切断にも、超音波カッターを使用することにより、樹脂シートの側面の仕上げをすることなく、シートの成形を行うことができる。
【0058】
[樹脂シートの製造方法]
次に、図7に示される樹脂シートの製造ラインによる樹脂シートの製造方法について、偏肉樹脂シートを例にして説明する。
【0059】
ダイ12より押し出したシート状の樹脂シート14を、型ローラ16と型ローラ16に対向配置されるニップローラとで挟圧し、型ローラ16表面の偏肉形状の反転型を樹脂シート14に転写して成形する。その際、型ローラ16またはニップローラ18の幅方向の端部には凸形状が形成されているため、この凸形状の反転型が転写されることにより、切断溝が形成される。成形された樹脂シート14は、型ローラ16に対向配置される剥離ローラ20に巻き掛けることにより徐冷し、歪みが除去された状態で、搬送される。
【0060】
この樹脂シートの製造において、ダイ12の樹脂シート14の押し出し速度は、0.1〜50m/分、好ましくは0.3〜30m/分の値が採用できる。したがって、型ローラ16の周速も略これに一致させる。なお、各ローラの速度ムラは、設定値に対して、1%以内に制御することが好ましい。
【0061】
ニップローラ18の型ローラ16への押し付け圧は、線圧換算(各ニップローラの弾性変形による面接触を線接触と仮定して換算した値)で、0〜200kN/m(kgf/cm)とすることが好ましく、0〜100kN/m(kgf/cm)とするのがより好ましい。
【0062】
剥離ローラ20により型ローラ16から剥離された樹脂シート14は、徐冷ゾーン154で、徐々に冷却される。冷却された樹脂シート14は、樹脂シート14の下側(偏肉樹脂シートの凸部が形成されていない側)から加熱装置22により必要に応じて加熱を行い、樹脂シート14の切断部である切断溝を柔らかくする。切断溝は、超音波カッター174により切断され、樹脂シート14の端部が切断される。その際、切断溝が柔らかくなっているため、切り粉の発生を抑制し切断を行うことができる。
【0063】
また、樹脂シート14の端部を切断した後も、加熱装置22により、樹脂シート14を加熱することにより、樹脂シート14の搬送方向に切断する場合、搬送方向と直交する方向に切断する場合においても、切り粉の発生を抑制して切断することができる。
【実施例】
【0064】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を具体的に説明する。以下の実施例に材料、処理内容、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0065】
[実施例1]
図7に示す装置を用いて樹脂シートの製造を行った。
【0066】
PMMA(旭化成(株)製、80NH、ガラス転移温度110℃)を、温度255℃に設定したTダイより押し出し、ニップローラ、図3(a)に示すような形状の型ローラ、剥離ローラを経てシート状にし、搬送部において遠赤外線ヒータで樹脂シートの薄肉部を加熱して幅方向の温度分布を均一化しながら徐冷し、樹脂シートの両端を切断して、シート幅方向の断面形状が図4(a)のような幅594mm、最薄部2.0mm、最厚部3.8mmの樹脂シートを得た。
【0067】
押出工程において、ダイのリップ幅は660mmであり、リップ開度(リップクリアランス)は4mmであり、幅方向の流量分布は、各位置でのニップローラと型ローラのクリアランス量に略比例するように、チョークバーで調整した。
【0068】
シート成形工程において、ニップローラ、型ローラ、剥離ローラの表面温度はそれぞれ70℃、75℃、80℃であり、ニップローラのローラ径はφ350mm、剥離ローラのローラ径はφ500mm、型ローラの厚肉形成部のローラ径はφ345.6mm、薄肉形成部のローラ径はφ350.2mm、樹脂シートと非接触部のローラ径(最外径)はφ350mmとした。
【0069】
樹脂シートの切断溝の型となる型ローラの凸形状の大きさは、幅1mm、高さ1mmとした。
【0070】
ニップローラと型ローラのクリアランスは、ローラ中央の最大部で3.90mm、ローラ端部の最小部で1.70mmであり、型ローラと剥離ローラのクリアランスはローラ中央の最大部で4.00mm、ローラ端部の最小部で1.80mmとした。ニップローラ、型ローラ、剥離ローラ、引取ローラの周速度(最外径)はそれぞれ1.205m/min、1.209m/min、1.230m/min、1.207m/minだった。ニップローラ、型ローラ、剥離ローラは硬質クロムメッキ処理されており、引取ローラの表面材質は、EPTゴムとした。
【0071】
樹脂シートの製造は、図7に示すように、型ローラおよび剥離ローラと接触している面と反対側の樹脂シート面を、樹脂シート表面から50mm離れた位置に遠赤外線セラミックヒータを設置し、シートの両端からそれぞれ150mmの範囲を加熱した。このとき遠赤外線セラミックヒータの表面温度は500℃であり、型ローラとの接触中に20秒間、剥離ローラとの接触中に15秒間それぞれ加熱した。
【0072】
搬送部においても、剥離ローラから120mmの位置で樹脂シートから下面側に50mm離れた位置に遠赤外線セラミックヒータを設置してヒータの表面温度を500℃とし、シートの両端からそれぞれ150mmの範囲を20秒間ずつ加熱した。
【0073】
剥離ローラから200mmの位置に超音波カッターを設置し、樹脂シートの切断溝を切断した。切断部の樹脂シート表面温度を放射温度計(NEC 三栄株式会社製 TH9100MV)で測定したところ、シート表面は115℃であった。
【0074】
超音波カッターの刃の材質はハイス、厚みは0.6mm、形状は斜め刃、先端は片刃で、樹脂シートの製品側の面と接する側の刃面が樹脂シートの進行方向に対して平行となるように設置した。超音波出力は220W,振動周波数は22kHzとし、圧縮空気で刃および部品の接合部を空冷した。
【0075】
超音波カッターでの切断で切り粉は発生せず、切断により発生するバリの量も少なかった。さらにそのバリを、製品側ではなく不要となる両端側の切断面に集中的に発生させたため、良好な樹脂シートを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明が適用される樹脂シートの製造方法のフローを説明する工程図である。
【図2】本発明が適用される樹脂シートの製造装置の概念図である。
【図3】型ローラの形状の一例を示す断面図である。
【図4】樹脂シートの形状の一例を示す断面図である。
【図5】凸形状を取り外し可能とした型ローラの側面図および断面図である。
【図6】切断工程を説明する説明図である。
【図7】樹脂シートの製造装置のシート成形工程、剥離工程、徐冷工程および切断工程を示す構成図である。
【符号の説明】
【0077】
12…ダイ、14…樹脂シート、15…凸形状、16…型ローラ、16a…型ローラ本体、16b…キャップ、17…固定具、18…ニップローラ、20…剥離ローラ、22…加熱装置、24…周期形状の継ぎ目、26…切断溝、100…原料工程、112…押出工程、114…シート成形工程、115…剥離工程、116…徐冷工程、124…切断工程、126…積載工程、128…原料サイロ、130…添加物サイロ、132…自動計量機、134…混合器、136…原料樹脂がホッパー、138…押出機、140…定量ポンプ、142…供給管、154…徐冷ゾーン、174…超音波カッター、176…回収ボックス、192…鼓状の部材、194…ローラ、196…コンベアベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出工程と、
押し出した樹脂シートに対して、型ローラおよびニップローラの少なくとも一方の表面の幅方向の両端部に凸形状が形成された型ローラおよびニップローラを用い、前記樹脂シートを前記型ローラと前記ニップローラで挟み、前記凸形状を前記樹脂シートに転写し切断溝を形成し、冷却固化することによりシートを成形するシート成形工程と、
前記樹脂シートを前記型ローラから剥離する剥離工程と、
前記切断溝を、搬送方向に沿って超音波カッターで切断する切断工程とを有し、
前記樹脂シートの切断部分の温度が、樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−50)℃以上(Tg+100)℃以下であることを特徴とする樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂シートは幅方向に厚み分布を有し、最厚部と最薄部の厚みの差が0.5mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記シート幅方向における厚み分布が200mm以上のピッチの周期性を有し、周期形状の継ぎ目を前記超音波カッターで搬送方向に沿って切断することを特徴とする請求項2に記載の樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂シートの前記切断溝の厚みが1mm以下であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−58437(P2010−58437A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228289(P2008−228289)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】