説明

樹脂シート被覆製品の製造方法及び樹脂シート被覆製品

【課題】樹脂シート被覆製品の表面を、空気だまりや模様のムラがなく、平滑性の高いものにすること。
【解決手段】基材を樹脂シートで被覆した樹脂シート被覆製品の製造方法であって、前記基材表面を微細な凹凸面を形成するような表面加工をする段階と、前記基材表面に対して前記樹脂シートを当接させる段階と、前記基材及び前記樹脂シートを真空圧空成形によって張り合わせ樹脂シート被覆製品を形成する段階と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を樹脂シートで被覆した樹脂シート被覆製品の製造方法及びこれを用いて製造された樹脂シート被覆製品に関する。
【背景技術】
【0002】
基材を樹脂シートで被覆した樹脂シート被覆製品の製造方法として、基材に対して樹脂シートを当接させた後、真空成型と圧空成型を行い、樹脂シートを基材に張り付けるものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−67137
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂シートを基材に当接させて真空成型と圧空成型を行うとき、基材上の空気を樹脂シートで覆ってしまうと、基材と樹脂シートとの間に膨れという空気だまりができたり、樹脂シート被覆製品の表面の模様にムラができてしまったりする。
【0005】
そこで本発明の目的は、樹脂シート被覆製品の表面を、空気だまりや模様のムラがなく、平滑性の高いものにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための方法及び製品は、次のとおりである。
【0007】
(1)
基材を樹脂シートで被覆した樹脂シート被覆製品の製造方法であって、前記基材表面を微細な凹凸面を形成するような表面加工をする段階と、前記基材表面に対して前記樹脂シートを当接させる段階と、前記基材及び前記樹脂シートを真空圧空成形によって張り合わせ樹脂シート被覆製品を形成する段階と、を有することを特徴とする樹脂シート被覆製品の製造方法。
【0008】
(2)
前記表面加工における前記微細な凹凸面は、最大高さRyが、1.6≦Ry≦100であることを特徴とする(1)に記載の樹脂シート被覆製品の製造方法。
【0009】
(3)
(1)又は(2)に記載の樹脂シート被覆製品の製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂シート被覆製品。
【発明の効果】
【0010】
上記方法及び製品によれば、表面加工によって基材表面が微細な凹凸面となることで、樹脂シートを張り合わせるときに、樹脂シートと基材との間に介在する空気を前記微細な凹凸面から外部へ逃がすことができる。これにより、樹脂シートと基材とを張り合わせたときに、樹脂シートと基材との間に空気がたまることを防ぎ、樹脂シート被覆製品の表面を、空気だまりや模様のムラがなく、平滑性の高いものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
図を用いて本発明の第1実施形態を説明する。
【0012】
(樹脂シート被覆製品10の構成)
図1及び図2を用いて第1実施形態における樹脂シート被覆製品10の構成を説明する。図1は第1実施形態における樹脂シート被覆製品10の斜視図である。図2は第1実施形態における樹脂シート被覆製品10の断面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、樹脂シート被覆製品10は、樹脂シート11によって基材12を被覆することで構成される。
【0014】
樹脂シート11は、本実施形態においては表面・裏面とも平滑なものを用いる。樹脂シート11の基材12との対向面11aには、接着剤が塗布されている。
【0015】
基材12は、樹脂又は金属によって構成される。図2(a)に示すように、基材12の樹脂シート11との対向面12aは、表面加工によって微細な凹凸面となる。微細な凹凸面となることで、樹脂シート11を張り合わせるときに、樹脂シート11と基材12との間に介在する空気を前記微細な凹凸面から外部へ逃がすことができる。これにより、樹脂シート11と基材12とを張り合わせたときに、樹脂シート11と基材12との間に空気がたまることを防ぎ、樹脂シート被覆製品の表面を、空気だまりや模様のムラがなく、平滑性の高いものにすることができる。
【0016】
尚、微細な凹凸面は、最大高さRy〔μm〕が、1.6≦Ry≦100の範囲が好ましい。最大高さRyが1.6よりも小さいと空気を外部に逃がすことが困難となり、最大高さRyが100よりも大きいと樹脂シート11の接着剤の接着性が悪くなる。
【0017】
(樹脂シート被覆製品10の製造方法)
図3を用いて樹脂シート被覆製品10の製造方法を説明する。図3は樹脂シート被覆製品10の製造手順を説明する図である。
【0018】
まず、樹脂シート被覆製品10の製造装置50の概略構成を説明する。製造装置50は、上成型室51及び下成型室52を有する。上成型室51と下成型室52はそれぞれ、駆動装置51a、駆動装置52aを有する。
【0019】
下成型室52の底部には、基材12を固定するテーブル54が配設される。下成型室52の上成型室51側端部には、樹脂シート11を挟持するクランプ53が配設される。また、上成型室51と下成型室52の側面には、空気を吸引する真空タンク55と、圧縮空気を送る圧空タンク56とが配設される。また、上成型室51の内側上部にはヒーター57が配設される。
【0020】
ここで、基材12の樹脂シート11との対向面12aは、図2(a)に示すように、微細な凹凸面となっている。
【0021】
図3(a)に示すように、まず、上成型室51を開放した状態で、下成型室52のテーブル54に基材12を設置する。また、下成型室52の上端において、樹脂シート11をクランプ53で挟持する。
【0022】
図3(b)に示すように、駆動装置51aを起動させて上成型室51を降下させ、上成型室51を下成型室52に当接させる。これにより、上成型室51及び下成型室52で覆われた空間は機密状態になる。
【0023】
図3(c)に示すように、下成型室52のテーブル54を上昇させると、テーブル54上の基材12の上面が樹脂シート11に当接する。そして、真空タンク55により、上成型室51及び下成型室52内から空気を抜くと、上成型室51及び下成型室52の内部は真空状態となる。ここで、ヒーター57を点灯し、樹脂シート11の加熱を行う。これにより、樹脂シート11が軟化し、また接着剤の接着性も向上する。
【0024】
図3(d)に示すように、上成型室51のみを大気圧にすると、図中実線のように空気が流れる。このとき、下成型室52が真空であるため、上成型室51にある樹脂シート11側から下成型室52基材12に対して圧力がかかる。また、圧空タンク56から圧縮空気を入れると、上成型室51から下成型室52に対して更に大きな圧力がかかる。
【0025】
ここで、樹脂シート11の基材12側の対向面11aには、接着剤が塗布されている。この接着剤により、上成型室51から下成型室52に圧力がかかったときに、樹脂シート11と基材12とが一体的に張り合わされ、樹脂シート被覆製品10が形成される。
【0026】
樹脂シート11と基材12とが張り合わされるとき、基材12の樹脂シート11との対向面12aには微細な凹凸面が形成されている。このため、樹脂シート11が基材12表面に張り合わされるとき、樹脂シート11と基材12との間の空気がこの微細な凹凸面から逃げる。すると、樹脂シート11の接着剤が塗布された面と基材12の対向面12aとが密着する。これにより、樹脂シート被覆製品10の表面を、空気だまりや模様のムラがなく、平滑性の高いものにすることができる。
【0027】
〔第2実施形態〕
図を用いて本発明の第2実施形態を説明する。
【0028】
(樹脂シート被覆製品20の構成)
図4及び図5を用いて第2実施形態における樹脂シート被覆製品20の構成を説明する。図4は第2実施形態における樹脂シート被覆製品20の斜視図である。図5は第2実施形態における樹脂シート被覆製品20の断面図である。
【0029】
図4及び図5に示すように、樹脂シート被覆製品20は、樹脂シート21によって基材22を被覆することで構成される。
【0030】
樹脂シート21は、本実施形態においては表面・裏面とも基材22と嵌合するように形成された模様が形成されたものを用いる。樹脂シート21の基材22との対向面21aには、接着剤が塗布されている。
【0031】
基材22は、樹脂又は金属によって構成される。図5(a)に示すように、基材22の樹脂シート21との対向面22aは、表面加工によって微細な凹凸面となる。微細な凹凸面となることで、樹脂シート21を張り合わせるときに、樹脂シート21と基材22との間に介在する空気を前記微細な凹凸面から外部へ逃がすことができる。これにより、樹脂シート21と基材22とを張り合わせたときに、樹脂シート21と基材22との間に空気がたまることを防ぎ、樹脂シート被覆製品の表面を、空気だまりや模様のムラがないものにすることができる。
【0032】
尚、微細な凹凸面は、最大高さRy〔μm〕が、1.6≦Ry≦100の範囲が好ましい。最大高さRyが1.6よりも小さいと空気を外部に逃がすことが困難となり、最大高さRyが100よりも大きいと樹脂シート21の接着剤の接着性が悪くなる。
【0033】
また、樹脂シート21と基材22とが互いに嵌合するように模様が形成されていることで、真空圧空成形によっても、確実に樹脂シート21と基材22とが当接する。これにより、樹脂シート被覆製品20の表面に立体的な模様を形成することができる。尚、真空圧空成形の方法は、前述の実施形態と同様であるため省略する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、基材を樹脂シートで被覆した樹脂シート被覆製品の製造方法及び製品に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態における樹脂シート被覆製品10の斜視図。
【図2】第1実施形態における樹脂シート被覆製品10の断面図。
【図3】樹脂シート被覆製品10の製造手順を説明する図。
【図4】第2実施形態における樹脂シート被覆製品20の斜視図。
【図5】第2実施形態における樹脂シート被覆製品20の断面図。
【符号の説明】
【0036】
10…樹脂シート被覆製品、11…樹脂シート、11a…対向面、12…基材、12a…対向面、20…樹脂シート被覆製品、21…樹脂シート、21a…対向面、22…基材、22a…対向面、50…製造装置、51…上成型室、51a…駆動装置、52…下成型室、52a…駆動装置、53…クランプ、54…テーブル、55…真空タンク、56…圧空タンク、57…ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を樹脂シートで被覆した樹脂シート被覆製品の製造方法であって、
前記基材表面を微細な凹凸面を形成するような表面加工をする段階と、
前記基材表面に対して前記樹脂シートを当接させる段階と、
前記基材及び前記樹脂シートを真空圧空成形によって張り合わせ樹脂シート被覆製品を形成する段階と、
を有することを特徴とする樹脂シート被覆製品の製造方法。
【請求項2】
前記表面加工における前記微細な凹凸面は、最大高さRyが、1.6≦Ry≦100であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂シート被覆製品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂シート被覆製品の製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂シート被覆製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−119728(P2009−119728A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296608(P2007−296608)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】