説明

樹脂ベルトチェーン用スプロケット

【課題】加工コストが少なく、角シャフト用と丸シャフト用とを共用することができ、シャフトと軸穴のクリアランスを小さくすることができる樹脂ベルトチェーン用スプロケットを提供する。
【解決手段】丸シャフトと角シャフトとも挿入可能な軸穴を有する樹脂ベルトチェーン用スプロケットにおいて、軸穴が正方形の対角線上に中心を持ち且つ円周内に正方形の角部を含む4つの円と、4つの円のうち隣接する2つの円と正方形の各辺の中点に外接する円によって形取られた外形を有することにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビンや缶を搬送する搬送装置に用いられる樹脂ベルトチェーンを掛架するスプロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂チェーンを組み合わせてベルト状にした樹脂ベルトチェーン用のスプロケットは、熱によるベルト幅の変化に合わせてスプロケットがシャフトに沿ってスライドすることが望ましく、スライド性を考慮して、図5に示すような、軸穴が角穴のものがよく使われている。
【0003】
また、従動側には、専用アイドラホイールが少ないこともあり、スプロケットを使用し、シャフトを回転させて使用することが多い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−317853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に示すように、角シャフト510に対応した軸穴が角穴のスプロケット500の場合、シャフトの両端部は軸受520と組み合わせて使用するため丸く加工する必要があり、丸シャフトを使用する場合と比べ、加工コストが高いという課題があった。
【0006】
また、角シャフト用と丸シャフト用のスプロケットを別々に製作する必要があるという課題があった。
【0007】
さらに、シャフトと軸穴の接触が面接触となり、加工時の平行度や熱による変形により摺動抵抗が大きくなる可能性があるが、精度良く加工することが難しいため、シャフトと軸穴のクリアランスを大きく取る必要がある。そのため、シャフトと軸穴のガタが大きくなるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、加工コストが少なく、角シャフト用と丸シャフト用とを共用することができ、シャフトと軸穴のクリアランスを小さくすることができる樹脂ベルトチェーン用スプロケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず、本請求項1に係る発明は、丸シャフトと角シャフトとも挿入可能な軸穴を有する樹脂ベルトチェーン用スプロケットにおいて、前記軸穴が正方形の対角線上に中心を持ち且つ円周内に前記正方形の角部を含む4つの円と、該4つの円のうち隣接する2つの円と前記正方形の各辺の中点に外接する円によって形取られた外形を有することにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る樹脂ベルトチェーン用スプロケットにおいて、前記軸穴の四隅の円周内にキー溝加工を施した部品を装着したことにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0011】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1に係る樹脂ベルトチェーン用スプロケットにおいて、前記軸穴の四隅の円周内に摺動性の良い材料からなるアタッチを装着したことにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
本請求項1に係る発明によれば、丸シャフトと角シャフトとも挿入可能な軸穴を有する樹脂ベルトチェーン用スプロケットにおいて、軸穴が正方形の対角線上に中心を持ち且つ円周内に正方形の角部を含む4つの円と、4つの円のうち隣接する2つの円と正方形の各辺の中点に外接する円によって形取られた外形を有することにより、スプロケットの軸穴とシャフトとの接触が線接触になり、接触面積が小さくなるため、スプロケットとシャフトとの摺動抵抗が小さくなる。また、スプロケットの軸穴とシャフトとの接触が線接触になることにより、製作時の制約が少なくなり、精度良く製作できるため、スプロケットとシャフトとのクリアランスを小さくできる。
【0013】
本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る樹脂ベルトチェーン用スプロケットにおいて、軸穴の四隅の円周内にキー溝加工を施した部品を装着したことにより、軸穴の形状を変えることなくキー溝加工した部品、すなわち、キー溝用アタッチを挿入可能であるので、丸シャフト用スプロケットとして使用可能となる。
【0014】
本請求項3に係る発明によれば、請求項1に係る樹脂ベルトチェーン用スプロケットにおいて、軸穴の四隅の円周内に摺動性の良い材料からなるアタッチを装着したことにより、摺動性の良い異材質部品をシャフトとの接触部に組み込むことが可能であるため、シャフトと軸穴との摺動性が向上する。さらに、アイドラホイールとして使用する際の摺動抵抗や耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1である樹脂ベルトチェーン用スプロケットの正面図。
【図2】本発明の実施例1である樹脂ベルトチェーン用スプロケットの軸穴の説明図。
【図3】本発明の実施例2である樹脂ベルトチェーン用スプロケットの正面図。
【図4】本発明の実施例3である樹脂ベルトチェーン用スプロケットの正面図。
【図5】従来の樹脂ベルトチェーン用スプロケットの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の樹脂ベルトチェーン用スプロケットは、丸シャフトと角シャフトとも挿入可能な軸穴を有し、その軸穴が正方形の対角線上に中心を持ち且つ円周内に正方形の角部を含む4つの円と、4つの円のうち隣接する2つの円と正方形の各辺の中点に外接する円によって形取られた外形を有することにより、加工コストが少なく、角シャフト用と丸シャフト用とを共用することができ、シャフトと軸穴のクリアランスを小さくすることができるものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0017】
例えば、本発明の樹脂ベルトチェーン用スプロケットは、駆動軸に固定して使用する駆動側スプロケットとして使用することも出来るし、固定した軸の上で自由に回転させて使用する従動側スプロケット、すなわちアイドラホイールとして使用することも出来る。
【実施例1】
【0018】
本発明の一実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例1である樹脂ベルトチェーン用スプロケットの正面図であり、図2は、図1に示した樹脂ベルトチェーン用スプロケットの軸穴の説明図である。
【0019】
本発明の実施例1の樹脂ベルトチェーン用スプロケット100は、図1に示すように、丸シャフトと角シャフトとも挿入可能で両方のシャフトとの接触個所が線接触となるような軸穴110を有している。
【0020】
この軸穴110の形状について、図2に基づいて説明する。実施例1の軸穴110は、図2に示すように、ボス120の中央に設けられている。そして、その形状は、正方形Rの対角線上に中心を持ち且つ円周内に正方形Rの角部を含む4つの円C1と、これらの4つの円C1のうち隣接する2つの円C1と正方形Rの各辺の中点Mに外接する円C2にて形取られた外形を有している。軸穴110の形状をこのような形状にすることにより、丸シャフトと角シャフトとも挿入可能になるとともに、両方のシャフトとの接触個所が線接触とすることができる。
【実施例2】
【0021】
次に、本発明の別の実施形態について図3に基づいて説明する。
ここで、図3は、本発明の実施例2である樹脂ベルトチェーン用スプロケットの正面図である。
【0022】
実施例2の樹脂ベルトチェーン用スプロケット200の軸穴210の形状は、実施例1と同じであるので説明は省略する。実施例2の樹脂ベルトチェーン用スプロケット200は、図3に示すように、軸穴210の四隅の円周内にキー溝加工を施した部品、すなわち、キー用アタッチ230を装着している。このようにすることにより、キーを有する丸シャフトと係合させることが可能になり、丸孔スプロケットとして使用することが可能になる。
【実施例3】
【0023】
次に、本発明のさらに別の実施形態について図4に基づいて説明する。
ここで、図4は、本発明の実施例3である樹脂ベルトチェーン用スプロケットの正面図である。
【0024】
実施例3の樹脂ベルトチェーン用スプロケット300の軸穴310の形状は、実施例1と同じであるので説明は省略する。実施例3の樹脂ベルトチェーン用スプロケット300は、図4に示すように、軸穴310の四隅の円周内に摺動性の良い材料からなる摺動材アタッチ330を装着している。このようにすることにより、丸シャフトを軸穴310に貫通させたときに、丸シャフトの側面が摺動性の良い摺動材アタッチ330と接触するため丸シャフトと軸穴310との摺動性が向上する。そのため、スプロケットをアイドラホイールとして使用するときの摺動抵抗や耐摩耗性を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
100、200、300 ・・・ 樹脂ベルトチェーン用スプロケット
110、210、310 ・・・ 軸穴
120、220、320 ・・・ ボス
230 ・・・ キー用アタッチ
330 ・・・ 摺動材アタッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸シャフトと角シャフトとも挿入可能な軸穴を有する樹脂ベルトチェーン用スプロケットにおいて、
前記軸穴が正方形の対角線上に中心を持ち且つ円周内に前記正方形の角部を含む4つの円と、該4つの円のうち隣接する2つの円と前記正方形の各辺の中点に外接する円によって形取られた外形を有することを特徴とする樹脂ベルトチェーン用スプロケット。
【請求項2】
前記軸穴の四隅の円周内にキー溝加工を施した部品を装着したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂ベルトチェーン用スプロケット。
【請求項3】
前記軸穴の四隅の円周内に摺動性の良い材料からなるアタッチを装着したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂ベルトチェーン用スプロケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−275048(P2010−275048A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127817(P2009−127817)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】